特許第6043870号(P6043870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043870
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】太陽熱発電システム用熱媒体組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20161206BHJP
   F16L 58/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C09K5/10 E
   F16L58/04
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-513914(P2015-513914)
(86)(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公表番号】特表2015-533857(P2015-533857A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】JP2013075394
(87)【国際公開番号】WO2014042289
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】61/701,311
(32)【優先日】2012年9月14日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康夫
(72)【発明者】
【氏名】バレンスエラ サルバドール ルビア
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス イポリト ロバト
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス アルフォンソ ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】リオス クリスティーナ プリエト
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−9465(JP,A)
【文献】 特開平1−261490(JP,A)
【文献】 特開2011−138133(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0172132(US,A1)
【文献】 実開平1−63889(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20、
F16L57/00−58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェニルエーテルを含む熱媒体と、次式(1)で表されるシランカップリング剤とを含むことを特徴とする太陽熱発電システム用熱媒体組成物。
【化1】
(式中、OR,OR,ORは同一又はそれぞれ異なってもよい炭素数1〜5のアルコキシル基であり、Xはビニル基、アリル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピル基からなる群から選択される1つの基である。)
【請求項2】
ジフェニルエーテルを含む熱媒体100質量部に対し、前記シランカップリング剤0.1〜10質量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽熱発電システム用熱媒体組成物。
【請求項3】
前記熱媒体は、ジフェニルエーテル−ビフェニル混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽熱発電システム用熱媒体組成物。
【請求項4】
次式(1)で表されるシランカップリング剤からなり、ジフェニルエーテルを含む熱媒体を流通させるパイプを保護するためのパイプ保護剤。
【化2】
(式中、OR,OR,ORは同一又はそれぞれ異なってもよい炭素数1〜5のアルコキシル基であり、Xはビニル基、アリル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピル基からなる群から選択される1つの基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱発電システムに用いられる熱媒体組成物に関し、該熱媒体がパイプ内で分解することがなく、パイプの劣化を防止することが可能な太陽熱発電システム用熱媒体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱発電(CSP)システムは、太陽光を集め、熱媒体を加熱してタービンを駆動させて電力を得る発電方式である。この太陽熱発電システムの一例として、太陽光を受ける凹面鏡とその焦点部に設置された熱媒体を流通させるパイプとを備えた集光モジュールを用い、前記パイプに熱媒体を流して加熱し、この熱媒体を発電用タービンに導き、その熱エネルギーを利用してタービンを駆動させて発電するとともに、冷却された熱媒体をパイプに循環供給する構成の発電システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
前記太陽熱発電システムに使用される熱媒体としては、ジフェニルエーテル、ジフェニルエーテル・ビフェニル混合物、ポリフェニルエーテル組成物(例えば、特許文献2〜6参照。)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0252030号明細書
【特許文献2】米国特許第3231497号明細書
【特許文献3】米国特許第3231497号明細書
【特許文献4】米国特許第3231497号明細書
【特許文献5】米国特許第3231497号明細書
【特許文献6】米国特許第3231497号明細書
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、ジフェニルエーテルを含む熱媒体を用いた太陽熱発電システムにあっては、熱媒体流通用のパイプ内で、パイプ内表面に露出した金属が触媒となり、ジフェニルエーテルが反応して反応生成物と水素ガスとを生じ、熱輸送流体が劣化したり、水素脆化によってパイプの強度が劣化する問題がある。
【0006】
図1は、パイプ1内で熱媒体2中に含まれるジフェニルエーテル(A)が、パイプ1内表面に露出した金属と接触することにより脱水素反応し、反応生成物(B)と水素ガス(H)を生じた状態を示す図である。
図示のように熱媒体2から水素ガスが生じると、この水素ガスによってパイプ1が水素脆化を起こし、強度低下や破損の原因となる可能性がある。また、この反応によって生じた水素ガスや反応生成物によって熱媒体が劣化し、熱媒体による熱輸送効率が悪くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、熱媒体がパイプ内で分解することがなく、パイプの劣化を防止することが可能な太陽熱発電システム用熱媒体組成物の提供を課題とする。
【0008】
前記課題を達成するため、本発明は、ジフェニルエーテルを含む熱媒体と、次式(1)で表されるシランカップリング剤とを含むことを特徴とする太陽熱発電システム用熱媒体組成物を提供する。
【0009】
【化1】
(式中、OR,OR,ORは同一又はそれぞれ異なってもよい炭素数1〜5のアルコキシル基であり、Xはビニル基、アリル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピル基からなる群から選択される1つの基である。)
【0010】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物において、ジフェニルエーテルを含む熱媒体100質量部に対し、前記シランカップリング剤0.1〜10質量部を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物において、前記熱媒体は、ジフェニルエーテル−ビフェニル混合物であることが好ましい。
【0012】
また本発明は、次式(1)で表されるシランカップリング剤からなり、ジフェニルエーテルを含む熱媒体を流通させるパイプを保護するためのパイプ保護剤を提供する。
【0013】
【化2】
(式中、OR,OR,ORは同一又はそれぞれ異なってもよい炭素数1〜5のアルコキシル基であり、Xはビニル基、アリル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピル基からなる群から選択される1つの基である。)
【0014】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物は、シランカップリング剤がパイプ内表面に被膜を形成し、ジフェニルエーテルを含む熱媒体がパイプ内で分解することがなく、パイプの劣化を防止することができ、太陽熱発電システムの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】パイプ内で熱媒体中に含まれるジフェニルエーテルが反応し、反応生成物(と水素ガスを生じた状態を示す模式図である。
図2】パイプ内表面に生じた被膜によってジフェニルエーテルの反応が防がれた状態を示す模式図である。
図3】実施例7〜9及び比較例5の熱媒体組成物のガスクロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物は、ジフェニルエーテルを含む熱媒体と、次式(1)で表されるシランカップリング剤とを含むことを特徴としている。
【0017】
【化3】
(式中、OR,OR,ORは同一又はそれぞれ異なってもよい炭素数1〜5のアルコキシル基であり、Xはビニル基、アリル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピル基からなる群から選択される1つの基である。)
【0018】
前記シランカップリング剤において、OR,OR,ORは、アルコキシル基であればよく、特に限定されないが、メトキシ基またはエトキシ基であることが好ましい。
前記シランカップリング剤としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明において、式(1)で表されるシランカップリング剤であってXがビニル基、3−グリシドキシプロピル基及びN−フェニル−3−アミノプロピル基から選ばれる基であるものが好ましく、式(1)で表されるシランカップリング剤であってXがビニル基であるものと式(1)で表されるシランカップリング剤であってXが3−グリシドキシプロピル基であるものとの混合物がより好ましい。
【0019】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物において、前記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、シランカップリング剤によるパイプの保護効果が十分に得られ、かつ熱媒体の粘度を低くするために、ジフェニルエーテルを含む熱媒体100質量部に対し、シランカップリング剤0.01〜10質量部の範囲とすることが好ましく、0.01〜5質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0020】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物において、熱媒体としては、ジフェニルエーテル単独の熱媒体、ジフェニルエーテルと他の成分との混合物からなる熱媒体を用いることができる。ジフェニルエーテルと混合可能な他の成分としては、ビフェニル、ビフェニル誘導体、ポリフェニルエーテルなどが挙げられ、それらの中でもジフェニルエーテル−ビフェニル混合物が好ましい。ジフェニルエーテル−ビフェニル混合物を用いる場合、混合物中のビフェニル含有量は、10〜40質量%の範囲とすることが好ましい。
【0021】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物は、必須成分である熱媒体と前記シランカップリング剤以外に、熱媒体に添加される周知の添加物を必要に応じて1種以上添加してもよい。
【0022】
図2は、本発明による太陽熱発電システム用熱媒体組成物を用いた場合に、パイプ1内壁に生じた被膜3によってジフェニルエーテル(A)の反応を防いでいる状態を示す図である。
パイプ1内に本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物2を流すと、パイプ1内壁にシランカップリング剤の被膜3が形成され、この被膜3によって熱媒体組成物2中のジフェニルエーテル(A)がパイプ1内壁の金属露出面に接触することが防がれ、金属との接触によるジフェニルエーテル(A)の反応とそれに伴う水素ガス発生が防止される。
【0023】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物は、ジフェニルエーテルを含む熱媒体がパイプ内で分解することがなく、パイプの劣化を防止することができ、太陽熱発電システムの耐久性を高めることができる。
【0024】
また本発明は、次式(1)で表されるシランカップリング剤からなり、ジフェニルエーテルを含む熱媒体を流通させるパイプを保護するためのパイプ保護剤を提供する。
【0025】
【化4】
(式中、OR,OR,ORは同一又はそれぞれ異なってもよい炭素数1〜5のアルコキシル基であり、Xはビニル基、アリル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピル基からなる群から選択される1つの基である。)
【0026】
このパイプ保護剤は、前述した太陽熱発電システム用熱媒体組成物のように、熱媒体中に添加することによって、パイプ内表面に被膜を形成せしめ、ジフェニルエーテルを含む熱媒体がパイプ内で分解することを防止し、パイプの劣化を防止するために使用することができる。さらに、このパイプ保護剤は、単独で、或いはジフェニルエーテルを含む熱媒体以外の適当な溶媒に添加した状態でパイプ内表面に接触させることによって、該パイプ内表面に被膜を形成し、このように被膜を形成したパイプを太陽熱発電システムのパイプとして使用するためのパイプ保護剤として使用することもできる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
シランカップリング剤として次式(2)
【0029】
【化5】
【0030】
で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−403」)を、ステンレス鋼(SUS304)板の表面に塗布し、120℃に加熱し反応させた後、アセトンで洗浄し、乾燥させ、前記シランカップリング剤塗布部分にジフェニルエーテルを滴下し、協和界面科学社製の接触角測定器を用いて接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0031】
[実施例2]
シランカップリング剤として次式(3)
【0032】
【化6】
【0033】
で表される3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−503」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0034】
[実施例3]
シランカップリング剤として次式(4)
【0035】
【化7】
【0036】
で表される3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−903」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0037】
[実施例4]
シランカップリング剤として次式(5)
【0038】
【化8】
【0039】
で表されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−573」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0040】
[実施例5]
シランカップリング剤として次式(6)
【0041】
【化9】
【0042】
で表される3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBE−503」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0043】
[実施例6]
シランカップリング剤として次式(7)
【0044】
【化10】
【0045】
で表されるN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−503」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0046】
[比較例1]
シランカップリング剤を用いず、アセトン洗浄したステンレス鋼板の表面に直接ジフェニルエーテルを滴下し、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0047】
[比較例2]
シランカップリング剤として次式(8)
【0048】
【化11】
【0049】
で表される3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−502」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0050】
[比較例3]
シランカップリング剤として次式(9)
【0051】
【化12】
【0052】
で表される3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBE−502」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0053】
[比較例4]
シランカップリング剤として次式(10)
【0054】
【化13】
【0055】
で表されるN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−602」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から、本発明に係る実施例1〜4のシランカップリング剤をステンレス鋼板に塗布した場合、シランカップリング剤を使用していない比較例1と比べて接触角が減少した。これは、被膜が形成されたことでジフェニルエーテルが金属表面に接触し難くなっていることを示している。
一方、アルコキシル基が2つである比較例2〜4のシランカップリング剤は、接触角が比較例1と同程度であった。
【0058】
シランカップリング剤を用いて、熱媒油(組成:0.02wt%−9.98wt%のジフェニル−ジフェニルエーテル共結晶)を調製した。各サンプルをるつぼに滴下し、加熱炉で最大温度400℃〜450℃まで約30分加熱した。
【0059】
熱安定性の検討の結果、比較により、分解は純粋な共結晶混合物(約370℃)より5℃高い約375℃から始まることが確認された。
【0060】
[実施例7〜9、比較例5]
表2に示す成分を混合し、熱媒体組成物を得た。
【0061】
【表2】
【0062】
表2中、各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は各成分の量(モル%)を表す。
(2):前記式(2)で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学社製)。
(5):前記式(5)で表されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−573、信越化学社製)。
(11):下記式(11)で表されるビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM−1003、信越化学社製)。
DPO/BP:ジフェニルエーテルとビフェニルとの混合物(ビフェニル含有量:27wt%)(ダウ社製)。
【0063】
【化14】
【0064】
[熱分解評価(1)]
実施例7〜9及び比較例5の各熱媒体組成物50gを試料容器に入れた。次いで、試料容器をオーブンに入れ、400℃又は425℃で20日間加熱した。その後、熱媒体組成物についてガスクロマトグラフィー分析(液相分析)を行い、分解化学物質の量(wt%)を評価した。結果を図3に示す。
【0065】
図3に示される結果より、400℃で加熱後、実施例8及び比較例5の熱媒体組成物においては分解化学物質の量はほぼ同等であり、実施例7及び9の熱媒体組成物においては更に少なかった。425℃で加熱後、実施例7〜9の熱媒体組成物は、比較例5の熱媒体組成物と比べて分解化学物質の量が抑制されていた。特に、ビニル基を有するシランカップリング剤を含む実施例9の熱媒体組成物においては、425℃で加熱後の分解化学物質の量が、400℃で加熱後の分解化学物質の量と比べてほとんど増えていなかった。
【0066】
[実施例10〜13]
表3に示す成分を混合し、熱媒体組成物を得た。
【0067】
【表3】
【0068】
表3中、各略号は前記で定義した通りである。また、[ ]内の数値は各成分の量(wt%)を表す。
【0069】
[熱分解評価(2)]
実施例10〜13の各熱媒体組成物20gをステンレススチール板(SUS304)の表面上に塗布し、400℃で3時間、初期圧力10barで加熱した。その後、熱媒体組成物についてガスクロマトグラフィー分析を行い、ジベンゾフラン濃度(ppm)を評価した。結果を表3に示す。
【0070】
表3に示される結果より、ビニル結合を0.2wt%含有するシランカップリング剤を含む実施例11の熱媒体組成物は、ジベンゾフラン濃度を大幅に低減できることが確認された。また、ビニル基を有するシランカップリング剤と3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤との組み合わせを用いることにより、ジベンゾフラン濃度を更に低減できることが確認された。
【0071】
[膜形成評価(1)]
実施例13の熱媒体組成物20gをステンレススチール板(SUS304)の表面上に塗布し、表4に示す温度で2時間、初期圧力10barで加熱した。その後、熱媒体組成物についてXPS分析を行い、形成された膜のSi:O比及びSi濃度を評価した。結果を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
表4に示される結果より、確実に膜が形成できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の太陽熱発電システム用熱媒体組成物は、太陽熱発電システム(CSP)に用いられる熱媒体組成物に関し、該熱媒体がパイプ内で分解することがなく、パイプの劣化を防止することが可能な太陽熱発電システム用熱媒体組成物に関する。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0076】
1…パイプ、2…熱媒体、3…被膜。
図1
図2
図3