【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
シランカップリング剤として次式(2)
【0029】
【化5】
【0030】
で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−403」)を、ステンレス鋼(SUS304)板の表面に塗布し、120℃に加熱し反応させた後、アセトンで洗浄し、乾燥させ、前記シランカップリング剤塗布部分にジフェニルエーテルを滴下し、協和界面科学社製の接触角測定器を用いて接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0031】
[実施例2]
シランカップリング剤として次式(3)
【0032】
【化6】
【0033】
で表される3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−503」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0034】
[実施例3]
シランカップリング剤として次式(4)
【0035】
【化7】
【0036】
で表される3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−903」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0037】
[実施例4]
シランカップリング剤として次式(5)
【0038】
【化8】
【0039】
で表されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−573」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0040】
[実施例5]
シランカップリング剤として次式(6)
【0041】
【化9】
【0042】
で表される3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBE−503」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0043】
[実施例6]
シランカップリング剤として次式(7)
【0044】
【化10】
【0045】
で表されるN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−503」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0046】
[比較例1]
シランカップリング剤を用いず、アセトン洗浄したステンレス鋼板の表面に直接ジフェニルエーテルを滴下し、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0047】
[比較例2]
シランカップリング剤として次式(8)
【0048】
【化11】
【0049】
で表される3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−502」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0050】
[比較例3]
シランカップリング剤として次式(9)
【0051】
【化12】
【0052】
で表される3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBE−502」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0053】
[比較例4]
シランカップリング剤として次式(10)
【0054】
【化13】
【0055】
で表されるN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−602」)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、接触角を測定した。その結果を表1に記す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から、本発明に係る実施例1〜4のシランカップリング剤をステンレス鋼板に塗布した場合、シランカップリング剤を使用していない比較例1と比べて接触角が減少した。これは、被膜が形成されたことでジフェニルエーテルが金属表面に接触し難くなっていることを示している。
一方、アルコキシル基が2つである比較例2〜4のシランカップリング剤は、接触角が比較例1と同程度であった。
【0058】
シランカップリング剤を用いて、熱媒油(組成:0.02wt%−9.98wt%のジフェニル−ジフェニルエーテル共結晶)を調製した。各サンプルをるつぼに滴下し、加熱炉で最大温度400℃〜450℃まで約30分加熱した。
【0059】
熱安定性の検討の結果、比較により、分解は純粋な共結晶混合物(約370℃)より5℃高い約375℃から始まることが確認された。
【0060】
[実施例7〜9、比較例5]
表2に示す成分を混合し、熱媒体組成物を得た。
【0061】
【表2】
【0062】
表2中、各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は各成分の量(モル%)を表す。
(2):前記式(2)で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学社製)。
(5):前記式(5)で表されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−573、信越化学社製)。
(11):下記式(11)で表されるビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM−1003、信越化学社製)。
DPO/BP:ジフェニルエーテルとビフェニルとの混合物(ビフェニル含有量:27wt%)(ダウ社製)。
【0063】
【化14】
【0064】
[熱分解評価(1)]
実施例7〜9及び比較例5の各熱媒体組成物50gを試料容器に入れた。次いで、試料容器をオーブンに入れ、400℃又は425℃で20日間加熱した。その後、熱媒体組成物についてガスクロマトグラフィー分析(液相分析)を行い、分解化学物質の量(wt%)を評価した。結果を
図3に示す。
【0065】
図3に示される結果より、400℃で加熱後、実施例8及び比較例5の熱媒体組成物においては分解化学物質の量はほぼ同等であり、実施例7及び9の熱媒体組成物においては更に少なかった。425℃で加熱後、実施例7〜9の熱媒体組成物は、比較例5の熱媒体組成物と比べて分解化学物質の量が抑制されていた。特に、ビニル基を有するシランカップリング剤を含む実施例9の熱媒体組成物においては、425℃で加熱後の分解化学物質の量が、400℃で加熱後の分解化学物質の量と比べてほとんど増えていなかった。
【0066】
[実施例10〜13]
表3に示す成分を混合し、熱媒体組成物を得た。
【0067】
【表3】
【0068】
表3中、各略号は前記で定義した通りである。また、[ ]内の数値は各成分の量(wt%)を表す。
【0069】
[熱分解評価(2)]
実施例10〜13の各熱媒体組成物20gをステンレススチール板(SUS304)の表面上に塗布し、400℃で3時間、初期圧力10barで加熱した。その後、熱媒体組成物についてガスクロマトグラフィー分析を行い、ジベンゾフラン濃度(ppm)を評価した。結果を表3に示す。
【0070】
表3に示される結果より、ビニル結合を0.2wt%含有するシランカップリング剤を含む実施例11の熱媒体組成物は、ジベンゾフラン濃度を大幅に低減できることが確認された。また、ビニル基を有するシランカップリング剤と3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤との組み合わせを用いることにより、ジベンゾフラン濃度を更に低減できることが確認された。
【0071】
[膜形成評価(1)]
実施例13の熱媒体組成物20gをステンレススチール板(SUS304)の表面上に塗布し、表4に示す温度で2時間、初期圧力10barで加熱した。その後、熱媒体組成物についてXPS分析を行い、形成された膜のSi:O比及びSi濃度を評価した。結果を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
表4に示される結果より、確実に膜が形成できることが確認された。