特許第6043984号(P6043984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043984グラウンド・スプリング、BMAコネクタ及び試験測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043984
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】グラウンド・スプリング、BMAコネクタ及び試験測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/40 20110101AFI20161206BHJP
【FI】
   H01R24/40
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-285502(P2012-285502)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-140795(P2013-140795A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】61/582,967
(32)【優先日】2012年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/594,044
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・ジェスフォード
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・エム・レモン
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー・アール・シェーン
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−068389(JP,U)
【文献】 特開2000−277217(JP,A)
【文献】 特開2006−164916(JP,A)
【文献】 特開2001−307843(JP,A)
【文献】 特開平08−330005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/081321(US,A1)
【文献】 特開2007−071872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波数試験プローブのグラウンドを受けるためのグラウンド・スプリングであって、
おおよそ環状の環状ベース部と、
該ベース部から内側に向かっておおよそ放射状に伸び、内側端面を有する複数の細長いスプリング・フィンガーとを具え、
複数の上記内側端面が、上記グラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成し、上記スプリング・フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い上記内側端部を含むテイパード形状を有すると共に、上記スプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、上記グラウンド・スプリングの中心から上記フィンガー夫々の上記基部の中心へと伸ばした基準線に対して傾斜していることを特徴とするグラウンド・スプリング。
【請求項2】
BMAコネクタであって、
該BMAコネクタのメス部が、
適合するBMAコネクタのオス部を受けるおおよそ円筒形の受入部と、
適合する上記BMAコネクタの上記オス部のグラウンド端を受けるグラウンド・スプリングとを具え、
上記グラウンド・スプリングが、
おおよそ環状の環状ベース部と、
該ベース部から内側に向かっておおよそ放射状に伸び、内側端面を有する複数の細長いスプリング・フィンガーとを含み、
複数の上記内側端面が、上記グラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成し、上記スプリング・フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い上記内側端部を含むテイパード形状を有すると共に、上記スプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、上記グラウンド・スプリングの中心から上記フィンガー夫々の上記基部の中心へと伸ばした基準線に対して傾斜していることを特徴とするBMAコネクタ。
【請求項3】
入力信号を受けて出力を生成するよう構成されたプロセッサと、
該プロセッサからの出力を表示するよう構成された表示ユニットと、
BMAコネクタのメス部を含む入力ユニットとを具え、
上記BMAコネクタの上記メス部が、
適合するBMAコネクタのオス部を受けるおおよそ円筒形の受入部と、
適合する上記BMAコネクタの上記オス部のグラウンド端を受けるグラウンド・スプリングとを有し、
上記グラウンド・スプリングが、
おおよそ環状の環状ベース部と、
該ベース部から内側に向かっておおよそ放射状に伸び、内側端面を有する複数の細長いスプリング・フィンガーとを含み、
複数の上記内側端面が、上記グラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成し、上記スプリング・フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い上記内側端部を含むテイパード形状を有すると共に、上記スプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、上記グラウンド・スプリングの中心から上記フィンガー夫々の上記基部の中心へと伸ばした基準線に対して傾斜していることを特徴とする試験測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験測定装置と、これに使用するBMAコネクタ、そしてそのグラウンド・スプリングに関し、具体的には、試験測定装置が高周波数信号を正確に測定することを可能にする試験測定装置用の高精度グラウンド・スプリングを用いた技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2012年1月4日出願の米国仮出願第61/582,967号に基づく優先権を主張するものである。
【0003】
試験測定装置は、複数の試験リード線を通して信号を受け、それらについての試験を行う。リード線は、コネクタを介して試験測定装置に結合される。コネクタの1形態に、BMAリード線と呼ばれるものがあり、これは、「ブラインド・メイトA(BlindMate A)」コネクタを表しており、3GHzから300GHzのレンジのマイクロウェーブ無線周波数のような高周波数の試験信号を受けるRF(無線周波数)コネクタである。
【0004】
グラウンド・スプリングは、BMAコネクタのグラウンド(接地)と接触するスプリングである。グラウンド・スプリングの機能は、BMAコネクタへ電気的な接続を提供することであり、これによって、このグラウンドに対して信号を測定可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−71872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のグラウンド・スプリングは、信頼性の点で問題がある。グラウンドに充分に接続しないことが度々発生し、これによって被試験信号に関するデータの欠落が生じる。特に、約20GHzよりも高い周波数の信号において、これが著しい。また、現在のグラウンド・スプリングは、コネクタを数回脱着しただけで、スプリング機能が喪失する傾向がある。
【0007】
本発明による実施形態は、従来技術のこうした課題等を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高周波数試験プローブのグラウンド端子を受けるグラウンド・スプリングに関する。グラウンド・スプリングは、おおよそ環状のベース部と、ベース部から伸びる複数の細長いスプリング・フィンガーとを有している。細長いスプリング・フィンガーは、内側に向かっておおよそ放射状に伸び、また、グラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成する複数の内側端面を有している。フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い内側端部を含んでおり、先が細くなる形状(tapered shape:テイパード形状)を有している。フィンガーの夫々には長手軸があり、これは、グラウンド・スプリングの中心から各フィンガーの基部の中心へと伸ばした基準線に対して傾斜している。
【0009】
隣接するフィンガー間には間隙があり、これは、間隙が環状ベース部から、グラウンド・スプリングの中心に向かって進むに従って狭くなっている。グラウンド・スプリングは、おおよそ凹んだ形状となっており、その高さは約0.017インチ(約4.4ミリ・メータ)である。基部から伸びる細長いスプリング・フィンガーの夫々は、ほぼ平面である。グラウンド・スプリングは、好ましくは、細長い複数のスプリング・フィンガーを有する金めっきしたベリリウム銅から形成され、約0.0025インチ(約0.64ミリ・メータ)の厚さがある。細長いスプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、グラウンド・スプリングの中心から各フィンガーの基部の中心へと伸ばした基準線から約40度傾斜している。
【0010】
グラウンド・スプリングは、BMAコネクタのオス部を受けるためのおおよそ円筒状の受入部を有するBMAコネクタのメス部に配置される。グラウンド・スプリングは、適合するBMAコネクタのオス部のグラウンド端を受ける。グラウンド・スプリングは、おおよそ環状のベース部と、このベース部から伸びる複数の細長いスプリング・フィンガーを有する。これら細長いスプリング・フィンガーは、内側に向かっておおよそ放射状に広がると共に、夫々が内側端面を有し、これらはグラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成する。フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い内側端部を含む先が細くなる形状(tapered shape:テイパード形状)を有している。細長いスプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、グラウンド・スプリングの中心から各フィンガーの基部の中心へと伸ばした基準線に対して約40度傾斜している。
【0011】
グラウンド・スプリングは、プロセッサを有し、入力信号を受けて出力信号を生成する試験測定装置において実施される。試験測定装置は、プロセッサからの出力信号を表示する表示装置と、BMAコネクタのメス部を含む入力ユニットとを有している。BMAコネクタのメス部は、適合するBMAコネクタのオス部を受けるためのおおよそ円筒状の受入部と、適合するBMAコネクタのオス部のグラウンド端を受けるグラウンド・スプリングとを有する。グラウンド・スプリングは、おおよそ環状のベース部と、このベース部から伸びる複数の細長いスプリング・フィンガーを有する。これら細長いスプリング・フィンガーは、内側に向かっておおよそ放射状に広がると共に、夫々が内側端面を有し、これらはグラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成する。フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い内側端部を含んでおり、先が細くなる形状(tapered shape:テイパード形状)を有している。細長いスプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、グラウンド・スプリングの中心から各フィンガーの基部の中心へと伸ばした基準線に対して約40度傾斜している。
【0012】
より具体的には、本発明の概念1は、高周波数試験プローブのグラウンドを受けるためのグラウンド・スプリングであって、
おおよそ環状の環状ベース部と、
該ベース部から内側に向かっておおよそ放射状に伸び、内側端面を有する複数の細長いスプリング・フィンガーとを具え、
複数の上記内側端面が、上記グラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成し、上記スプリング・フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い上記内側端部を含むテイパード形状を有すると共に、上記スプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、上記グラウンド・スプリングの中心から上記フィンガー夫々の上記基部の中心へと伸ばした基準線に対して傾斜していることを特徴としている。
【0013】
本発明の概念2は、上記概念1のグラウンド・スプリングであって、隣接する上記フィンガー間の間隙が、上記環状ベース部から上記グラウンド・スプリングの上記中心に向かうほど狭くなることを特徴としている。
【0014】
本発明の概念3は、上記概念1のグラウンド・スプリングであって、上記グラウンド・スプリングがおおよそ凹んだ形状を有することを特徴としている。
【0015】
本発明の概念4は、上記概念3のグラウンド・スプリングであって、凹みの高さが約0.017インチ(約4.4ミリ・メータ)であることを特徴としている。
【0016】
本発明の概念5は、上記概念1のグラウンド・スプリングであって、上記グラウンド・スプリングがベリリウム銅から形成されることを特徴としている。
【0017】
本発明の概念6は、上記概念1のグラウンド・スプリングであって、上記グラウンド・スプリングが約0.0025インチ(約0.64ミリ・メータ)の厚さであることを特徴としている。
【0018】
本発明の概念7は、上記概念1のグラウンド・スプリングであって、更に、金めっきされていることを特徴としている。
【0019】
本発明の概念8は、上記概念1のグラウンド・スプリングであって、上記フィンガーがほぼ平面であることを特徴としている。
【0020】
本発明の概念9は、上記概念1のグラウンド・スプリングであって、上記長手軸が上記基準線から約40度傾斜していることを特徴としている。
【0021】
本発明の概念10は、BMAコネクタであって、
該BMAコネクタのメス部が、
適合するBMAコネクタのオス部を受けるおおよそ円筒形の受入部と、
適合する上記BMAコネクタの上記オス部のグラウンド端を受けるグラウンド・スプリングとを具え、
上記グラウンド・スプリングが、
おおよそ環状の環状ベース部と、
該ベース部から内側に向かっておおよそ放射状に伸び、内側端面を有する複数の細長いスプリング・フィンガーとを含み、
複数の上記内側端面が、上記グラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成し、上記スプリング・フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い上記内側端部を含むテイパード形状を有すると共に、上記スプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、上記グラウンド・スプリングの中心から上記フィンガー夫々の上記基部の中心へと伸ばした基準線に対して傾斜していることを特徴としている。
【0022】
本発明の概念11は、上記概念10のBMAコネクタであって、隣接する上記フィンガー間の間隙が、上記環状ベース部から上記グラウンド・スプリングの上記中心に向かうほど狭くなると共に、上記フィンガーがほぼ平面であることを特徴としている。
【0023】
本発明の概念12は、上記概念10のBMAコネクタであって、上記グラウンド・スプリングが、約0.017インチ(約4.4ミリ・メータ)のおおよそ凹んだ形状を有することを特徴としている。
【0024】
本発明の概念13は、上記概念10のBMAコネクタであって、上記グラウンド・スプリングが、金めっきされたベリリウム銅から形成されることを特徴としている。
【0025】
本発明の概念14は、上記概念10のBMAコネクタであって、上記フィンガーが約0.0025インチ(約0.64ミリ・メータ)の厚さであることを特徴としている。
【0026】
本発明の概念15は、試験測定装置であって、
入力信号を受けて出力を生成するよう構成されたプロセッサと、
該プロセッサからの出力を表示するよう構成された表示ユニットと、
BMAコネクタのメス部を含む入力ユニットとを具え、
上記BMAコネクタの上記メス部が、
適合するBMAコネクタのオス部を受けるおおよそ円筒形の受入部と、
適合する上記BMAコネクタの上記オス部のグラウンド端を受けるグラウンド・スプリングとを有し、
上記グラウンド・スプリングが、
おおよそ環状の環状ベース部と、
該ベース部から内側に向かっておおよそ放射状に伸び、内側端面を有する複数の細長いスプリング・フィンガーとを含み、
複数の上記内側端面が、上記グラウンド・スプリングの中心にほぼ円形の開口を形成し、上記スプリング・フィンガーの夫々は、相対的に広い基部と、相対的に細い上記内側端部を含むテイパード形状を有すると共に、上記スプリング・フィンガーの夫々の長手軸は、上記グラウンド・スプリングの中心から上記フィンガー夫々の上記基部の中心へと伸ばした基準線に対して傾斜していることを特徴としている。
【0027】
本発明の概念16は、上記概念15の試験測定装置であって、隣接する上記フィンガー間の間隙が、上記環状ベース部から上記グラウンド・スプリングの上記中心に向かうほど狭くなると共に、上記フィンガーがほぼ平面であることを特徴としている。
【0028】
本発明の概念17は、上記概念15の試験測定装置であって、上記グラウンド・スプリングが、約0.017インチ(約4.4ミリ・メータ)のおおよそ凹んだ形状を有することを特徴としている。
【0029】
本発明の概念18は、上記概念15の試験測定装置であって、上記グラウンド・スプリングが、金めっきされたベリリウム銅から形成されることを特徴としている。
【0030】
本発明の概念19は、上記概念15の試験測定装置であって、上記フィンガーが約0.0025インチ(約0.64ミリ・メータ)の厚さであることを特徴としている。
【0031】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の実施形態によるグラウンド・スプリングを含むBMAコネクタの等角断面図である。
図2図2は、図1のBMAコネクタの等角断面図であり、グラウンド・スプリングの詳細を拡大した図である。
図3図3は、従来のグラウンド・スプリングの上面図である。
図4図4は、本発明の実施形態によるグラウンド・スプリングの上面図である。
図5図5は、図3のグラウンド・スプリングの側面図である。
図6図6は、本発明の実施形態によるグラウンド・スプリングを含む試験測定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1及び図2は、本発明の実施形態によるグラウンド・スプリングを含むBMAコネクタ10の等角断面図である。
【0034】
BMAコネクタ10は、オス部12及びメス部14を含み、これらは手作業で互いに着脱可能となっている。典型的には、メス部14が試験測定装置に装着され、オス部12はメス部に着脱可能に連結される。BMAコネクタのオス部12は、プローブとも呼ばれる。
【0035】
BMAコネクタ10のオス部12をメス部14に連結すると、オス部はメス部に挿入又は差し込まれる。オス部12のオス・ピン20は、メス部14の対応する受入部22で受け止められる。オス部12のグラウンド30には、側部グラウンド32及び端部グラウンド34が含まれる。挿入されたとき、側部グラウンド32は、図1に示すように、樽型スプリング42に接触する。オス部12の端部グラウンド34は、グラウンド・スプリング44に接触する。上述のように、グラウンド・スプリング44は、BMAコネクタ10のオス部12と良好なグラウンド接続を確立することが重要で、それによって、BMAコネクタ10に結合された試験測定装置がグラウンド信号を正しく読み取ることができる。
【0036】
図2に詳しく示すように、BMAコネクタ10のオス部12がメス部に完全に挿入されると、端部グラウンド34がグラウンド・スプリング44に物理的に接触する。詳しくは後述するように、これによって、グラウンド・スプリング44のフィンガー(指)が変形する。グラウンド・スプリング44のフィンガーの復元力により、BMAコネクタのオス部12の端部グラウンド34とグラウンド・スプリングとの接触が一定に維持され、これによって、試験測定装置が利用する電気的接続が強固なものとなる。
【0037】
図3は、従来のグラウンド・スプリング70の上面図である。グラウンド・スプリング70は、環状部72と、一連の伸張部74を含む。図示しないが、伸張部74は、環状部72よりも凹んでいる。BMAコネクタ10のオス部12がメス部14に挿入され、従来のグラウンド・スプリング70が受け止めると、伸張部74が折り曲がる。言い換えると、BMAコネクタのオス部が挿入されることによる応力によって、伸張部74がその弾性限界を超えて、つまり、負荷がない場合のオリジナルの状態に戻れる限界を超えて、曲げられる。伸張部74がこの限界を超えて曲げられると、伸張部74は永続的に変形し、BMAコネクタ10のオス部12と良好なグラウンド接触を確立しなくなる。これは、被測定信号中の信号が欠落する原因となる。先の屈曲が原因で、全ての伸張部74がBMAコネクタ10のオス部12に必ずしも接触できないことが、この信号欠落の原因となり得るのである。
【0038】
図4は、本発明の実施形態によるグラウンド・スプリング100の上面図である。グラウンド・スプリング100は、従来のスプリング70と同じ外部形状及び外形寸法を有しており、変更無しで標準のBMAコネクタ内に収まる。
【0039】
グラウンド・スプリング100は、おおよそ環状のベース部102、ベース部102から伸びる多数の細長いスプリング・フィンガー110を含んでいる。フィンガー110は、ベース部102から内側に向かっておおよそ放射状に伸びると共に、内側端面112を有する。複数の内側端面112によって、グラウンド・スプリング100の中心部分に、ほぼ円形の開口が形成される。フィンガー110の夫々は、相対的に広い基部114と、相対的に細い内側端部115を含んでおり、先が細くなる形状(tapered shape:テイパード形状)を有している。
【0040】
フィンガー110の夫々の長手軸120は、グラウンド・スプリング100の中心130から、各フィンガーの基部114の中心へと伸ばした基準線125に対して傾斜している。好ましい実施形態では、基準線125及び長手軸120間の角度は、30度から50度の間であり、好ましくは約40度である。もちろん、本願で開示するものと同じ原理に従って、その他のオフセット角度でも動作するのであって、特定角度の選択は、設計事項に過ぎない。
【0041】
図2の伸張部74と比較すると、グラウンド・スプリング100のフィンガー110は、大幅に長くなっており、これによって、BMAコネクタ10のオス部12が挿入されて、スプリング100に接触した場合において、フィンガー110にかかる応力が低減される。
【0042】
グラウンド・スプリング100は、好ましくは、ベリリウム銅から形成され、更に、従来技術を用いて金(ゴールド)の層でコーティングしても良い。グラウンド・スプリングは、好ましくは、基部114及び内側端部115の両方において、約0.0025インチ(約0.64ミリ・メータ)の厚さがある。グラウンド・スプリング100は、適切な方法を用いて形成しても良く、好ましくは、放電加工(EDM)技術を用いて形成しても良い。EDMによってスプリング100のおおよその形状が切り出された後は、凹ませることなどによって整形し、図5を参照して後述するような形状とする。凹ませた後、グラウンド・スプリング100は化学的にエッティングされ、続いて、スプリングの総合的な強度を増加させるために加熱処理される。最後に、グラウンド・スプリング100は、ニッケルを下地にめっきをした上で、金でめっきをしても良い。
【0043】
隣接するフィンガー110間の間隙(ギャップ)121には、丸端部122と、グラウンド・スプリング100の中心部分に向かって開かれた開放端124が含まれる。間隙121は、環状ベース部102から、グラウンド・スプリングの中心130に向かって進むに従って狭くなっている。
【0044】
図5に示すように、グラウンド・スプリング100は、遷移(Transition)リング104(図4)においてフィンガー110を曲げることによって、おおよそ凹んだ形状を形成するようにしても良い。1つの実施形態では、凹み形状の厚さ140は、約0.014インチ(約3.6ミリ・メータ)から約0.017インチ(約4.4ミリ・メータ)である。遷移リング104の内側エッジからは、フィンガー110は、好ましくは、おおよそ平らである。言い換えると、フィンガー110は、遷移リング104の内側エッジからグラウンド・スプリング100の中心130に向かって平面に沿って伸びており、グラウンド・スプリングの凹み形状は、遷移リング104においてスプリングを変形させることによって生じる。好ましくは、フィンガー110は、各フィンガーの幅方向についても平らであり、複数のフィンガー110を横断する面についても丸い形状にはなっていない。この形状によれば、BMAコネクタ10のオス部12の挿入による応力が、スプリング100全体に効果的に広がり、このため、フィンガー110を、そのばねの弾性限界内にとどめておけるようになる。これによって、スプリング100を数百回又は数千回使用することが可能になり、BMAコネクタを外した後には、元の屈曲状態に戻る。
【0045】
図6は、本発明の実施形態によるグラウンド・スプリングを含む試験測定装置600のブロック図である。試験測定装置は、BMAコネクタ610を含み、この中にプローブ620、つまり、BMAコネクタのオス部を挿入できる。BMAコネクタ610は、図4のグラウンド・スプリング100を含み、これはBMAコネクタのオス部と接触すると共に、グラウンドに接続される。試験測定装置で試験される信号は、試験リード線に沿って、種々の被試験対象から受け入れるBMAコネクタ610へと運ばれる。
【0046】
いったん試験測定装置600が被試験信号を受けると、プロセッサ640が、その信号やその他の信号(図示せず)に対して種々の動作及び処理を実行する。これら処理は、周知の手段を使って、ユーザがユーザ・インタフェース630を介して制御するようにしても良い。試験測定装置600の出力は、表示装置650に送っても良いし、装置600のユーザの使用に適した他の形態で出力しても良い。
【0047】
図示した実施形態を参照しながら、本発明の原理を説明及び図示してきたが、こうした原理から離れることなく、説明した実施形態の形状や細部を変更しても良いし、また、所望の形態に組み合わせても良いと理解すべきである。また、上述の説明は、特定の実施形態に絞っているが、その他の構成を考えても良い。特に、本願では「本発明の実施形態による」などの表現が用いられているが、これら言い回しは、基本となる実施形態の可能性を意味しているのであり、特定の実施形態の構成に本発明を限定することは意図していない。本願で用いたように、これら用語は、同じ又は異なる実施形態を組み合わせて他の実施形態とすることが可能なことにも言及している。
【0048】
従って、本願で説明したきた実施形態に対して種々の変更が幅広く可能であるという観点から、本願の詳細な説明は、単に説明の都合で行ったものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0049】
10 BMAコネクタ
12 オス部(プローブ)
14 メス部
44 グラウンド・スプリング
100 グラウンド・スプリング
102 環状ベース部
104 遷移(トランジション)リング
110 スプリング・フィンガー
112 内側端面
114 スプリング・フィンガーの基部
115 スプリング・フィンガーの内側端部
120 スプリング・フィンガーの長手軸
121 スプリング・フィンガー間の間隙
125 基準線
130 グラウンド・スプリングの中心
600 試験測定装置
610 BMAコネクタ
620 プローブ(BMAコネクタのオス部)
630 ユーザ・インタフェース
640 プロセッサ
650 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6