(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
1次粒子径50〜150nmの乾式シリカ微粒子は、半導体保護剤や半導体実装用接着剤などに添加される充填剤として、また、電子写真用トナー粒子の外添剤として使用される。
【0003】
即ち、近年、半導体デバイスの小型化、薄型化に伴い、エポキシ樹脂組成物あるいはシリコーン樹脂組成物である半導体保護剤や半導体実装用接着剤などに添加される充填剤の粒子径は小さくなっていく傾向が進み、1次粒子径50〜150nmのシリカ微粒子が好適に用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
上記シリカ微粒子は、クロロシランの火炎加水分解法によって製造されるヒュームドシリカに比して、1次粒子径が大きく、1次粒子が構成する凝集粒子の構造は単純でかつ弱く、これを樹脂充填剤として用いた場合、樹脂組成物の粘度は低いものとなる。このため、当該シリカ微粒子を樹脂に充填した場合に期待される増粘効果が小さく、樹脂組成物の粘度を高めるために、樹脂への充填率を不必要に高くする必要があった。
【0005】
また、上記樹脂として疎水的な樹脂が用いられることがある。この樹脂に対する添加剤として、表面が水酸基で覆われた親水性乾式シリカ微粒子を用いた場合、乾式シリカ微粒子の表面が当該樹脂で濡れないため、両者のなじみが悪く、添加したシリカ微粒子が樹脂に全く分散せず、相分離を起こし、添加剤としての機能を発現できないことがあった。
【0006】
一方、1次粒子径が50〜150nmである疎水化乾式シリカ微粒子は、電子写真用トナー粒子の外添剤として使用されたとき、長期の使用でもトナー樹脂粒子へ埋没することがないため、長期の使用にわたって優れた流動性をトナー粒子に付与できることが知られている(特許文献1参照)。
【0007】
上記電子写真用トナー粒子の外添剤には、良好に目的の粒度に分散される特性が要求され、十分に分散されない場合、上記の効果が発現しない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<疎水化乾式シリカ微粒子>
本発明の疎水化乾式シリカ微粒子は、後述するように、珪素化合物の燃焼によって生成し、火炎中および火炎近傍において成長、凝集せしめる方法、所謂、「乾式法」によって得られたシリカ微粒子を表面にトリメチルシリル基を有するよう疎水化表面処理することで得られるシリカ微粒子であり、前記条件(1)に示されるBET比表面積が15〜50m
2/gの範囲にありながら、
前記条件(2)に示されるように、適度な凝集構造を有し、
前記条件(3)に示されるように、分散性に優れ、
前記条件(4)、(5)に示されるように、表面がトリメチルシリル基で十分に修飾され、疎水化されている
という特性を有する。
【0018】
尚、前記条件(1)は1次粒子径が50〜150nmであることを特定しているが、疎水化処理された乾式シリカ微粒子に対してはそのBET比表面積の値が疎水度に応じて、比表面積が低下する現象が存在し、前記条件(4)、(5)と合わせた総合指標として特定される。
【0019】
このように、前記条件(1)に示すBET比表面積が15〜50m
2/gの範囲にある疎水化乾式シリカ微粒子であって、前記条件(2)、(3)に示す適度な凝集構造を有しながら、分散性に優れ、更に、前記条件(4)、(5)に示すように、表面がトリメチルシリル基で完全に修飾され、疎水化された乾式シリカ微粒子は、従来製造された例は無く、本発明によって初めて提供されるものである。
【0020】
本発明の疎水化乾式シリカ微粒子は、上記特性を有することにより、疎水的な樹脂への充填剤として、また電子写真用トナー外添剤として、好適に使用される。
【0021】
即ち、本発明の疎水化乾式シリカ微粒子は、特性(1)のBET比表面積が、15〜50m
2/g、好ましくは、20〜40m
2/g、さらに好ましくは、20〜30m
2/gの範囲内であることにより、電子写真用トナー外添剤として適用した場合は、トナー樹脂粒子に埋没すること無く、また、トナー樹脂表面からシリカ微粒子が脱落することもなく、安定した付着性を有する。
【0022】
また、本発明の疎水化乾式シリカ微粒子において、前記条件(2)のジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)が疎水化乾式シリカ微粒子100gあたり32〜45g、特に、32〜40gであるということは、1次粒子が適度な凝集構造を有していることを意味し、かかる特性により、疎水的な樹脂に添加した場合、得られる樹脂組成物に適度な増粘作用を付与することができ、硬化後の樹脂組成物に十分な強度を与えることができる。さらに、硬化前の液状樹脂組成物中の充填剤の沈降を抑止し、樹脂組成物の組成均一性を保証できる。即ち、前記DBP吸油量が32g(シリカ100g当り)よりも小さいと凝集構造が発達しておらず、増粘効果が発現しない。また、45g(シリカ100g当り)よりも大きいと凝集構造が発達しすぎて、樹脂への分散性が低下する結果、均一分散性の効果が低下する傾向にある。
【0023】
さらに、本発明の疎水化乾式シリカ微粒子において、特性(3)のD
CS/D
USAXSが1.00以上、1.60未満であることは、1次粒子で構成されるシリカ微粒子が1次粒子のレベルまで分散される優れた分散性能を有することを意味する。
【0024】
尚、上記遠心沈降法の粒度分布は、実施例において具体的に説明するが、疎水化乾式シリカ微粒子を分散可能な媒体中に分散された分散粒子の粒度分布を表し、超小角X線散乱法の粒度分布は1次粒子の粒度分布を表す。
【0025】
本発明において、前記D
CS/D
USAXSが1.60以上であると、樹脂添加用途においては、強固に結合した凝集粒子が単一粒子として樹脂組成物内で振舞うため、増粘効果が発現しない。トナー用途においては、トナー樹脂表面上でシリカ微粒子が分散しない結果、シリカ微粒子がトナー樹脂表面から脱落し、機能を発現し難くなる。
【0026】
本発明の疎水化乾式シリカ微粒子は、前記条件(2)に示す適度な凝集性と、前記条件(3)に示す優れた分散性能により、疎水的な樹脂に添加した場合、シリカ微粒子が形成する凝集構造が強固過ぎない結果、増粘効果を発現できる。一方、電子写真用トナー外添剤として用いた場合、トナー樹脂表面上でシリカ微粒子が埋没抑止を発揮する粒子径まで分散され、トナー樹脂に対して、良好な流動性を付与できる。
【0027】
加えて、本発明の疎水化乾式シリカ微粒子において、前記条件(4)に示す、炭素量が0.24重量%以上、前記条件(5)に示す、メタノール滴定法による疎水化度が65容量%以上、特に、69〜76容量%であることは、該疎水化乾式シリカ微粒子の表面がトリメチルシリル基で十分修飾され、表面が疎水化されていることを意味し、該疎水化乾式シリカ微粒子を疎水的な樹脂に添加した場合、シリカ微粒子の表面が完全に濡れて、相分離といった不均一性無く樹脂に分散されることを保証する。一方、電子写真用トナー外添剤として用いた場合、良好な帯電特性をトナー樹脂に付与する。
【0028】
上記炭素量の値は、トリメチルシリル基に基づくものであり、後述する疎水化処理により、トリメチルシリル基が、乾式シリカ微粒子の表面に結合している量を示すものである。
【0029】
トリメチルシリル基が該シリカ微粒子の表面に結合しているか否かは、該シリカ微粒子をヘキサンあるいはクロロホルムで一度洗浄した後、完全に乾燥させて、炭素量あるいは疎水化度を測定し、洗浄前後で測定値が変化しないことで確かめることができる。
【0030】
<疎水化乾式シリカ微粒子の製造方法>
本発明の疎水化乾式シリカ微粒子の製造方法は特に制限されないが、以下に示すように、珪素化合物を用いた特定条件下の燃焼反応で得られた親水性乾式シリカ微粒子を得た後、例えば、ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理を行う方法が好適である。
【0031】
(親水性乾式シリカ微粒子の製造方法)
本発明において、基材にあたる親水性乾式シリカ微粒子(以下、「基材」ともいう)は珪素化合物の燃焼反応によりシリカ微粒子を生成後、同火炎中および同火炎近傍で1次粒子の成長及び1次粒子の軽度な凝集をさせることにより得られる。より具体的には、上記燃焼反応において、最高火炎温度としてシリカの融点(約2000K)を超え、なおかつ、燃焼火炎の冷却を抑止することで、基材にあたる親水性乾式シリカ微粒子を得ることができる。
【0032】
本発明の基材は同心円多重管構造を有するバーナを用いて製造することができる。以下、その典型例として、同心円4重管バーナを使用する場合について詳述する。
【0033】
この同心円4重管バーナは中心管を有し、この中心管の外周に第1環状管を配置、第1環状管の外周に第2環状管を配置、第2環状管の外周に第3環状管を配置したバーナである。
【0034】
前記中心管に、シリカ源として気化した珪素化合物と酸素を予め混合して導入する。この際、窒素等の不活性ガスも合わせて混合してもよい。また、珪素化合物の加水分解反応でシリカ微粒子を生成させる場合は、酸素と反応すると水蒸気を生成する燃料、例えば水素、炭化水素等を合わせて混合する。
【0035】
また、第1環状管には、補助火炎形成のための燃料、例えば水素、炭化水素を導入する。この際、窒素等の不活性ガスを合わせて混合して導入してよい。さらに、酸素も合わせて混合してもよい。
【0036】
更に、第2環状管には、補助火炎形成のための酸素を導入する。この際、窒素等の不活性ガスを合わせて混合してもよい。
【0037】
更にまた、第3環状管には、酸素と窒素等の不活性ガスの混合ガスを導入する。空気導入は容易で安価であるため、空気を導入するのが好適である。
【0038】
火炎中ならびに火炎近傍で生成・成長・凝集して得られる親水性乾式シリカ微粒子の特性は、該シリカ微粒子が受ける温度履歴を非常に強く反映する。
【0039】
本発明の基材の製造方法においては、最高火炎温度はシリカの融点(約2000K)を超えることが必須である。火炎の最高温度がシリカの融点を下回ると、分散性能が悪くなり、本発明における基材を得ることは不可能になる。
【0040】
最高火炎温度は中心管のガス組成と中心管のガス温度によって調整される。具体的には、最高火炎温度は中心管のガス組成とガス温度から計算される。すなわち、まず中心管の温度が298Kにあるとして、断熱火炎温度を計算する。その後、中心管の実際のガス温度と298Kとの温度差、例えばガス温度が473Kの場合473K−298K=175K、を断熱火炎温度に足し合わせる。これが最高火炎温度である。なお、断熱火炎温度の計算で必要となる物質の比熱に関しては、その表式として、2000Kを境界にして、2000K未満、2000K以上それぞれの範囲で“JANAF Thermochemiical Table SECOND Edition”,堀越研究所(1975)の値を最小2乗法でフィッティングした温度の6次多項式を用いればよい。
なお、前記調整法では、中心管に導入する化学成分だけで反応が完結する組成、すなわち、未反応の珪素化合物と燃料が残留しない組成を選択することが必須である。例えば、中心管に珪素化合物と酸素のみを導入した場合、その酸素導入量は導入珪素化合物が完全燃焼するに必要な酸素量以上であることが必須である。
【0041】
本発明の基材を得るには、燃焼安定性に支障のない範囲で、燃焼火炎の冷却を最小限とすることが特に重要である。
【0042】
即ち、燃焼火炎の冷却を最小限にすることで、基材である親水性乾式シリカ微粒子をシリカ融点以上の温度領域に長く滞在させることができるため、該シリカ微粒子に1次粒子のレベルまで分散される優れた分散性能を付与できる。さらに、該シリカ微粒子の凝集が終了する温度までの時間も合わせて長くできるため、すなわち該シリカ微粒子を凝集領域に長く滞在させることができるため、強固すぎない適度な凝集構造を該シリカ微粒子に付与できる。この基材の分散性能と凝集構造は、疎水化処理された後も、履歴として明確に残る。
【0043】
上記燃焼火炎の冷却は、珪素化合物の燃焼反応によって生成するシリカ量に合わせて第3環状管に導入するガス量を調整することでなされる。詳述すると、第3環状管導入ガス量を、下記式(I)を満足するように調整することでなされる。
【0045】
第3環状管導入ガス量が上記範囲を外れる場合、燃焼火炎が急速に冷却される結果、成長領域および凝集領域に留まる時間が短くなり、優れた分散性能と適度な凝集構造を有する乾式シリカ微粒子を得ることが困難となる。
【0046】
前記乾式シリカ微粒子の製造において、原料となる珪素化合物としては、常温でガス状または液状であるものが特に制限なく使用される。例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン類、ヘキサメチルジシロキサン等の鎖状シロキサン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン類、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のクロロシラン類を珪素化合物として使用することができる。
【0047】
上記珪素化合物と酸素の燃焼当量炎の断熱火炎温度を、珪素化合物と酸素を298Kで導入したとして算出すると、シロキサン類では5500〜6000K、アルコキシシラン類では4500K〜5100K、クロロシラン類では3000〜4000Kとなる。ここで、クロロシラン類はクロロシラン−水素−酸素の当量炎とした。尚、酸素燃焼当量炎より低い断熱火炎温度にするには当量炎を不活性ガスで希釈しさえすればよい一方で、酸素燃焼当量炎より高い火炎を得ることは不可能である。
【0048】
乾式シリカ微粒子が1次粒子径の水準まで分散され、なおかつ適度な凝集構造を有するように調整できるためには、使用する珪素化合物として高い断熱火炎温度にできる珪素化合物が調整範囲の点で好ましく、このため珪素化合物としてシロキサン類を使用するのが好ましい形態である。
【0049】
これまで述べたように、基材である乾式シリカ微粒子は、火炎中および火炎近傍で生成・成長・凝集させることで得られるが、その回収は金属フィルター、セラミックフィルター、バックフィルター等によるフィルター分離やサイクロン等による遠心分離で燃焼ガスと分離させて、回収することでなされる。
【0050】
(疎水化処理方法)
本発明の疎水化乾式シリカ微粒子は前記で得られた乾式シリカ微粒子を、水蒸気の存在下でヘキサメチルジシラザンと反応させ、表面にトリメチルシリル基を付与し、疎水化する方法により得ることができる。
【0051】
尚、疎水化表面処理反応の形式は特に制限されず、例えば、バッチ式、連続式のいずれでもよい。また、反応装置も流動床式、固定床式、あるいは攪拌器、混合器、さらには静置式であってもよい。ただし、反応の均一性や促進性を考慮すれば、流動床式、攪拌器などでシリカ微粒子を流動させて反応させることがより好ましい態様である。
【0052】
疎水化表面処理の具体的な手順を例示すれば、以下に示す方法が挙げられる。
【0053】
反応装置に乾式シリカ微粒子を投入し、基材を200〜300℃に加熱する。この際、同時に窒素ガスを流通して反応装置内を窒素雰囲気に置換する。
【0054】
上記加熱・置換後、反応装置を密閉し、水蒸気を反応装置内圧が50〜150kPaGになるまで導入し、その後、ヘキサメチルジシラザンをスプレー噴霧し、基材表面にトリメチルシリル基を付与する。ここで、ヘキサメチルジシラザン量は基材100重量部に対し、1〜35重量部とすればよい。また、水蒸気量はヘキサメチルジシラザン1重量部当り、0.05〜0.2重量部とすればよい。
【0055】
尚、反応後、未反応物や副生物を窒素でパージして乾燥することが、得られる疎水化乾式シリカ微粒子のアンモニア含有量を低減させることができるため好ましい態様である。
【実施例】
【0056】
本発明を具体的に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
なお、以下の実施例および比較例における各種の物性測定等は以下の方法による。
【0058】
(1)比表面積
柴田理化学社製比表面積測定装置SA−1000を用い、窒素吸着BET1点法により測定した。
【0059】
(2)ジブチルフタレート(DBP)吸油量
120℃で24時間乾燥させたシリカを5g秤取し、ビュレットを用いてジブチルフタレートをシリカ試料に滴下し、ヘラで混合した。滴下・混合を繰り返し、シリカが粉体からペーストに変化した点を終点とした。その後、下記式を用いて、シリカ100g当りのジブチルフタレート(DBP)吸油量を算出した。
【0060】
【数2】
【0061】
遠心沈降法による粒度分布
(測定サンプルの調製)
測定試料であるシリカ濃度1.5質量%のイソプロピルアルコール懸濁液を以下のように調製した。
【0062】
シリカ試料0.3gとイソプロピルアルコール20gをガラス製のサンプル管瓶(アズワン社製、内容量30ml、外径約28mm)にいれ、超音波細胞破砕器(BRANSON社製超音波SonifierII Model 250D、プローブ:1.4インチ)のプローブチップ下面がイソプロピルアルコール液面下15mmになるように試料入りサンプル管瓶を設置し、出力20W、分散時間15分の条件でシリカ微粒子をイソプロピルアルコールに分散させ、測定試料であるシリカ濃度1.5質量%のイソプロピルアルコール懸濁液を調製した。
【0063】
(粒度分布測定)
CPS Instruments Inc.製のディスク遠心式粒度分布測定装置(DC24000)を用いて、重量基準粒度分布を測定した。なお、測定条件は、測定粒子径範囲50nm〜1000nm、回転数10000rpm、温度26.2℃、シリカ真密度2.2g/cm
3とした。
【0064】
超小角X線散乱による粒度分布
(測定サンプルの調製)
遠心沈降法による粒度分布における測定サンプルと全く同一とした。
【0065】
(超小角X線散乱測定)
超小角X線散乱スペクトルを得るために、リガク製全自動水平型多目的X線回折装置SmartLabに、光学系として超小角X線散乱仕様の透過法小角散乱を適用して、測定サンプルの超小角X線散乱スペクトルを測定した。X線の波長は0.154187nmであった。ホルダーはスペーサー1mmの透過小角用試料ホルダーを用い、試料の入射側と散乱側をポリイミドフィルム(カプトン膜)で挟んだ。検出器はシンチレーション カウンターとした。
【0066】
(粒度分布の算出)
試料の超小角X線散乱スペクトルを、試料の体積基準粒度分布としてガンマ分布、粒子形状として球形として、リガク製解析ソフトNANO−Solverを用いてスペクトルフィッティングを実施し、試料の体積基準粒度分布を得た。なお、スペクトルフィッティングに際しては、フィッティング対象粒子径範囲が0.5×平均粒子径〜2×平均粒子径となるようにBraggの式とX線波長を使って、フィッティング対象角度範囲を定めた。即ち、フィッティング対象角度範囲を、
sin
−1{X線波長/(4×平均粒子径)}〜sin
−1{X線波長/(平均粒子径)}
とした。
【0067】
(5)炭素量
NC量測定装置(住化分析センター製スミグラフNC−22F)を用い、炭素量を測定した。なお、測定シリカ試料は50〜100mgとした。
【0068】
(6)疎水化度
容量200mlのビーカーに水50mlを秤取後、シリカ微粒子試料0.2gを投入した。これをマグネティックスターラーで攪拌しながら、ビュレットにてメタノールを滴下、投入したシリカ微粒子の全量がビーカー内の溶媒に濡れて懸濁した点を終点とする滴定を実施した。この際、メタノールが直接投入シリカ微粒子試料に接触しない様に、チューブで溶媒内へ導入した。そして、滴定終点におけるメタノール−水混合溶媒中のメタノールの体積%の値を疎水化度とした。
【0069】
増粘指数
(シリコーン樹脂組成物の調製)
東レ・ダウコーニング社製シリコーンオイルSH200を21.42g秤取し、これにシリカ14.28gを添加した。その後、シンキー社製のプラネタリーミキサーAR−500を用いて、回転数1000rpmで8分間攪拌、その後、回転数2000rpmで2分間脱泡することで混練し、シリコーン樹脂組成物を得た。その後、該樹脂組成物を25℃の恒温槽に1時間以上静置した。
【0070】
(樹脂組成物の粘度)
樹脂組成物の粘度を、Haake社製レオメータ レオストレスRS600を用いてせん断速度10s
−1で粘度を測定した。なお、測定温度は25℃、使用センサーはC35/1(コーンプレート型 直径35mm、角度1°、材質チタン)とし、せん断速度10s
−1の状態を3分間保持した後での粘度の値を樹脂組成物の粘度とした。
【0071】
(増粘指数)
増粘指数[g
2/m
4]を下記式で求めた。
【0072】
増粘指数[g
2/m
4] = 100×η×η
0−1×S
−2
ここで、ηは樹脂組成物の粘度[Pa・s]、η
0は東レ・ダウコーニング社製シリコーンオイルSH200の粘度[Pa・s]、SはシリカのBET比表面積である。
【0073】
なお、増粘指数は1次粒子の大きさの影響を除去した真の増粘効果を表す指数である。
【0074】
実施例1〜3、比較例1〜6
下記のように、親水性乾式シリカ微粒子を製造した後、その表面を疎水化処理し、疎水化乾式シリカ微粒子を得た。
【0075】
(親水性乾式シリカ微粒子の製造)
オクタメチルシクロテトラシロキサンを同心円4重管バーナで燃焼させ、親水性乾式シリカ微粒子を得た。以下、オクタメチルシクロテトラシロキサンを原料と記す。
【0076】
加熱気化させた原料と酸素と窒素を混合した後、バーナ中心管に導入した。また、水素と窒素を混合し、これを中心管の外周に配置した第1環状管に導入した。加えて、酸素を第1環状管の外周に配置した第2環状管に導入した。さらに、空気を第2環状管の外周に配置した第3環状管に導入した。原料の燃焼によって得られた親水性乾式シリカ微粒子は金属フィルターを用いて捕集し、回収した。
【0077】
実施例1〜3では同一バーナを使用した。比較例1〜4では中心管、第1環状管、第2環状管は実施例1と同一で第3環状管は実施例1より拡大したバーナを使用した。さらに、比較例5〜6では、中心管径が実施例1の1/2、第1環状管のクリアランス(スペース)と第2環状管の断面積は実施例1と同一、第3環状管の外径は実施例1の1.1倍のバーナを使用した。
【0078】
表1に実施例1〜3と比較例1〜6の基材となった親水性乾式シリカ微粒子の製造条件を示す。
【0079】
なお、表1の酸素濃度は(中心管に導入した酸素のモル数)/(中心管に導入した酸素のモル数+中心管に導入した窒素のモル数)をパーセント表示したものであり、酸素比は(中心管に導入した酸素のモル数)/(16×中心管に導入した原料のモル数)である。T
maxは最高火炎温度であり、最高火炎温度の算出に関わる比熱の表式として2000Kを境界にして、それぞれの温度範囲で、”JANAF Thermochemical Tables SECOND EDITION”, 堀越研究所(1975)を元に最小2乗法で求めた温度の6次多項式を用いた。原料であるオクタメチルシクロテトラシロキサンの標準生成モルエンタルピーの値は”J. Lipowitz, J. Fire & Flammability 7, 482 ( 1976 )”の値を採用し、それ以外の物質の標準生成モルエンタルピーの値はThermochemical Tables SECOND EDITION”, 堀越研究所(1975)の値を使った。またR
SFLは(第1環状管に導入した水素のモル数)/(32×中心管に導入した原料のモル数)であり、R
cmbtsは(第2環状管に導入した酸素のモル数)/(16×中心管に導入した原料のモル数)である。V
3は第3環状管に導入した空気量を生成シリカ量で割ったものである。
【0080】
(疎水化乾式シリカ微粒子)
上述で得られた親水性乾式シリカ微粒子を表面処理反応装置に100重量部投入後、窒素置換しながら、250℃に昇温した。その後、反応装置を密閉し、水蒸気を0.4重量部導入した。そして、ヘキサメチルジシラザンを4重量部添加した。1時間保持し、窒素置換を行なった後、室温まで冷却し、疎水化乾式シリカ微粒子を得た。得られた該シリカ微粒子の特性を表1に示す。
【0081】
なお、表1の増粘指数を求めるために測定した東レ・ダウコーニング社製シリコーンオイルSH200の粘度は1.02Pa・sであった。
【0082】
【表1】