特許第6044112号(P6044112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044112
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】磁気力場発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   H01F6/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-109943(P2012-109943)
(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公開番号】特開2013-239487(P2013-239487A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年3月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「先端計測分析技術・機器開発プログラム」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】501193218
【氏名又は名称】株式会社 清原光学
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲之
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 真治
(72)【発明者】
【氏名】清原 元輔
(72)【発明者】
【氏名】大出 孝博
(72)【発明者】
【氏名】清原 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】田之倉 優
(72)【発明者】
【氏名】中村 顕
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−339493(JP,A)
【文献】 特表2009−501329(JP,A)
【文献】 特開2006−124760(JP,A)
【文献】 特開2003−007525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸が鉛直方向を向いた超伝導マグネットの中空内部の、前記中心軸の軸方向中間位置の一方の側にそれぞれ強磁性体または前記超伝導マグネットの磁場と同じ向きに着磁した永久磁石からなる下記の
(A)前記中心軸と同軸に配置された回転対称部材、
(B)前記中心軸と同軸に配置され、前記回転対称部材の外径よりも大きな外径を有するとともに、前記回転対称部材とは鉛直方向の位置が異なるように配置された第1リング状部材
(C)前記中心軸と同軸に配置され、前記第1リング状部材の内径よりも大きな内径を有するとともに、前記第1リング状部材とは鉛直方向の位置が異なるように配置され第2リング状部材、及び
(D)前記中心軸と同軸に配置され、前記第2リング状部材の内径よりも大きな内径を有するとともに、前記第1リング状部材とは鉛直方向の位置が異なるように配置された第3リング状部材、
を備え
前記第2リング状部材は前記第1リング状部材に対して、鉛直方向に前記回転対称部材と同じ側に配置され、
前記第3リング状部材は前記第2リング状部材に対して、鉛直方向に前記第1リング状部材と同じ側に配置され、
前記回転対称部材は前記第2リング状部材の内周の内側に収容され、
前記第1リング状部材は前記第3リング状部材の内周の内側に収容されることを特徴とする磁気力発生装置。
【請求項2】
前記回転対称部材は円盤状であることを特徴とする請求項1に記載の磁気力場発生装置。
【請求項3】
前記第2リング状部材の内径よりも大きな内径を有する1つまたは複数の追加リング状部材を前記中心軸に同軸であってかつ前記中間位置の前記一方の側に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気力場発生装置。
【請求項4】
前記追加リング状部材は複数の互いに内径の異なる部材であることを特徴とする請求項に記載の磁気力場発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強い磁気力場を発生するための装置に関し、特定的には従来の磁気力場発生装置よりも大きな空間内に強力で一様な磁気力場を発生させる磁気力場発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重力場内の溶液中での結晶化、液体の混合等は、対流の影響を大きく受ける。例えば、結晶の作製においては対流によって不純物や欠陥等が導入されやすいので、対流の制御が望まれていた。しかし、地球上では液体内に温度や密度の分布が生じると重力により対流が容易に引き起こされる。宇宙での実験が可能になると、重力の非常に小さい環境の種々の利用が行われるようになった。特に、薬品等の開発にはタンパク質精密構造の決定がカギを握るため、良質なタンパク質結晶を得るための宇宙実験が多数行われてきた。その結果、宇宙実験で結晶品質の改善が報告され、微小重力による対流の抑制が結晶化に良い影響を与えることが判明した。しかし、宇宙実験は、費用、実験空間、実験期間、実験装置、実験中のアクセス等に非常に多くの制限があるため、より簡便な方法が望ましい。
【0003】
この問題を解決するため、磁気力により重力を相殺、抑制することで、地上において擬似的に宇宙の微小重力を提供する磁気力場発生装置が提案された(特許文献1〜3、非特許文献1)。この磁気力場発生装置は、重力を相殺するほど大きな磁気力を発生するため、本来は比較的小さな磁気力しか発生できないような通常の超伝導マグネット内に強磁性体や永久磁石を配することで大きな空間磁場変化を作り出す。本装置は超伝導装置であることから電力消費が極めて小さく、実験期間にはほとんど制限がない。従って、本装置を使用することにより、長期間に亘る微小重力下の実験が可能となり、また宇宙実験におけるような実験への制限も非常に少ない。本装置はタンパク質の結晶化以外にも重力の影響を抑制すると良い結果が出ると期待される混合等、他のプロセスへの応用も可能である。
【0004】
ここで、強力な磁気力場を発生することで微小重力を実現する原理を簡単に説明する。なお、この種の装置の更に具体的な構成は公知の技術であるため、ここでは詳細な説明は行わないが、必要に応じて特許文献1〜3及び非特許文献1等が参照できる。
【0005】
磁気力は
【0006】
【数1】
【0007】
で表すことができる。ここで、Bは磁束密度、χは体積磁化率、μ0 は真空の透磁率である。
【0008】
(1)式で垂直成分(z方向)だけを見ると、以下の(2)式を得る。
【0009】
【数2】
【0010】
この磁気力は以下の条件で重力と釣り合う。
【0011】
【数3】
【0012】
ここでρは密度、gは重力加速度である。
【0013】
この関係から、例えば、水滴に働く重力を相殺するには
【0014】
【数4】
【0015】
は約1,350T/mとなる。すなわち、重力を磁気力によって相殺することで、重力の影響が無視できる微小重力環境を作ることが可能となる。
【0016】
一方、この様な磁気力を発生するには、(1)式または(2)式より、非常に大きな磁束密度又は磁束密度の空間変化を必要とする。市販されている通常の超伝導マグネットの場合には、
【0017】
【数5】
【0018】
は数百T/m以下であるため、水滴を重力に逆らって浮かすほど磁気力は強くない。このため、上で言及した特許文献及び非特許文献では、超伝導マグネットの中空内部に設けられている室温ボア内の中心軸に沿って、円盤状の強磁性体または永久磁石とリング状の強磁性体または永久磁石とを間隔をあけて配置することにより、両者の間の空間内に形成される磁場を強化していた。
【0019】
しかしながら、従来の磁気力場発生装置では、強力かつ一様な磁気力場を生成することによって微小重力を提供できる空間は超伝導マグネットの室温ボア内の中心軸近傍に局限されるため、大規模な実験を行ったりあるいは条件を変えた複数の実験を並列に行うための大容積の微小重力空間を提供することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2003−7525号公報
【特許文献2】特開2005−353860号公報
【特許文献3】特開2006−339493号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Osamu Ozaki, Tsukasa Kiyoshi, Shinji Matsumoto, Jun-ichi Fujihira, Hitoshi Wada, "Development of a Magnetic Force Booster," IEEE TRANSACTIONS ON APPLIED SUPERCONDUCTIVITY, VOL. 14, NO. 2, JUNE 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は上述した従来技術の問題点を解消し、強力で一様な磁場を与えることによって微小重力を提供することができる空間を大きくした磁気力場発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一側面によれば、中心軸が鉛直方向を向いた超伝導マグネットの中空内部の、前記中心軸の軸方向中間位置の一方の側にそれぞれ強磁性体または前記超伝導マグネットの磁場と同じ向きに着磁した永久磁石からなる下記の(A)前記中心軸と同軸に配置された回転対称部材、(B)前記中心軸と同軸に配置され、前記回転対称部材の外径よりも大きな外径を有するとともに、前記回転対称部材とは鉛直方向の位置が異なるように配置された第1リング状部材(C)前記中心軸と同軸に配置され、前記第1リング状部材の内径よりも大きな内径を有するとともに、前記第1リング状部材とは鉛直方向の位置が異なるように配置され第2リング状部材、及び(D)前記中心軸と同軸に配置され、前記第2リング状部材の内径よりも大きな内径を有するとともに、前記第1リング状部材とは鉛直方向の位置が異なるように配置された第3リング状部材、を備え、前記第2リング状部材は前記第1リング状部材に対して、鉛直方向に前記回転対称部材と同じ側に配置され、前記第3リング状部材は前記第2リング状部材に対して、鉛直方向に前記第1リング状部材と同じ側に配置され、前記回転対称部材は前記第2リング状部材の内周の内側に収容され、前記第1リング状部材は前記第3リング状部材の内周の内側に収容されることを特徴とする磁気力発生装置が与えられる。
【0024】
また、前記回転対称部材は円盤状であってよい。
【0028】
また、前記第2リング状部材の内径よりも大きな内径を有する1つまたは複数の追加リング状部材を前記中心軸に同軸であってかつ前記中間位置の前記一方の側に配置してよい。
【0029】
さらに、前記追加リング状部材は複数の互いに内径の異なる部材であってよい。
【発明の効果】
【0030】
上記構成により、室温ボアの中心軸から外れた空間に強力で一様な磁場を生成することができるようになったので、より大きな容積の微小重力空間を実現するために好適な磁気力場発生装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】強磁気力発生部を構成する円盤及びリングを概念的に示す斜視図である。
図2】超伝導マグネット並びにその中空内部に設置された強磁気力発生部を構成する円盤及びリングを概念的に示す断面図である。
図3】実施例に使用される超伝導マグネットの特性を示す図である。
図4】円盤及びリングとして永久磁石を使用した場合の磁気力分布の計算結果を示す図である。
図5】円盤及びリングとして永久磁石を使用した場合の磁気力分布の計算結果を示す図である。
図6】円盤及びリングとして強磁性体(鉄)を使用した場合の磁気力分布の計算結果を示す図である。
図7】円盤及びリングとして強磁性体(鉄)を使用した場合の磁気力分布の計算結果を示す図である。
図8】円盤及びリングとして永久磁石と強磁性体(鉄)とを混在して使用した場合の磁気力分布の計算結果を示す図である。
図9】円盤及びリングとして永久磁石と強磁性体(鉄)とを混在して使用した場合の磁気力分布の計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
「発明を実施するための形態」の項では円盤及びリングの材料として強磁性体と超伝導マグネットの磁場と同じ向きに着磁した永久磁石とを互いにほぼ置換可能なものとして取り扱うが、表記上の煩雑さを回避するため、この項中では特に注記しない限り「強磁性体」により強磁性体と永久磁石の両者を代表させる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、中心軸が鉛直方向を向くように配置された超伝導マグネットの中空内部に強磁気力発生部が設置される。その概略斜視図である図1及び概略断面図である図2から判るように、強磁気力発生部においては、強磁性体の円盤1及びこの円盤1と中心軸に沿って上方に離間した強磁性体の第1のリング2が中心軸対称に配置されている。更に内径が円盤1の外径よりも大きな強磁性体の第2のリング3が円盤1の周囲に中心軸対称に配置され、また第1のリング2の周囲に、内径が第1のリング2の外径よりも大きいが第2のリング3の外径以下である、強磁性体の第3のリング4が中心軸対称に配置されている。これらのリング2、3、4及び円盤1は、超伝導マグネットの中心軸の軸方向中間位置の一方の側に配置される。なお、構造を見やすくするため、図1には強磁気力発生部を構成する強磁性体の円盤1及びリング2、3、4だけが示されているが、図2に示す断面図には、図1に示す強磁気力発生部をその内部に収容する超伝導マグネットも示す。
【0034】
この構成により、円盤1と第2のリング3との間、及び第1のリング2と第3のリング4との間に、それぞれ超伝導マグネット単独の場合に比べて強力で一様性の高い磁場を持つ2つの領域が形成される。そのうちの第1の領域は、中心軸上にある円盤1の上方であってその上に第1のリング2が存在しない領域であり、これに加えて、第2のリング3の上方であってその上方には第1のリング2も第3のリング4も存在しない第2の領域にも同様に強力で一様性の高い磁場が形成される。これら2つの領域のうち、第1の領域は中心軸上の従来と同様な領域であるので、その容積も従来と同様、比較的小さい。これに対して、第2の領域は厚みのあるリング状、つまりドーナツ状の領域であるため、その中心軸からの距離に比例して大きくなる。
【0035】
更に、第2のリング3の周囲及び第3のリング4の周囲にそれぞれ間隔をあけて追加の1つあるいは複数の更に大きなリングを同心状に設けることによって、第2の領域と同様であるが半径が更に大きな第3、第4、等の強力で一様性の高い磁場を有する領域を形成することもできる。従って、本発明は強磁性体のリングを第1〜第3のリング2、3、4の3つに限定するものではなく、これら3つのリング以外に更にリングを設ける場合も包含することに注意すべきである。なお、このような構成とした場合には、内周寄りのドーナツ状領域と外周寄りのドーナツ状とでは磁気力条件が異なるため、それぞれ大きな容積を有し、また互いに磁気力条件の異なる複数の領域を同時に提供することができるようになる。
【0036】
また、中心軸上に位置する比較的小さな第1の領域を使用しない場合には、第1の領域の上に置かれる第1のリングは、その中心部を強磁性体で埋めた円盤状の形状とすることもできる。あるいは、第1のリングはそのままにしておくかまたは円盤状の形状とした上で、下側の円盤を省略することもできる。
【0037】
このように、本発明では、中心軸から外れた位置にあるドーナツ状の領域に強力で一様性の高い磁場を発生させることができるため、この大きな領域内で微小重力を提供することができる。
【0038】
なお、従来構成の中心軸上にこのような領域を生成するものでも、そのような構造を中心軸に沿って縦方向に積上げていることで大きな容積の領域を提供することが考えられるが、それには以下のような問題がある。すなわち、縦方向に従来の構造を積上げた場合、その最上部以外の領域へのアクセスが困難となる。よって、例えば結晶成長を行おうとする場合を例に取れば、そのための器具の設置、取出しが非常に煩雑になるため、結晶成長作業の生産性が低下したり、また結晶成長の状況を観測するためにはそのための特殊な器具を狭い場所を通して挿入することが必要になるなどの不都合がある。
【実施例】
【0039】
以下では本発明の実施例を説明するが、当然ながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
なお、以下では特定のサイズ、及び各種要素間の大きさの比率や上下左右の位置関係、更には使用する材料等に基いた磁気力の計算結果を示すものであり、これらを変化させると磁気力の大きさや一様性が変化する。従って、各種要素間の上下、左右の位置関係等は例示であって、磁気力場発生装置を設計、製造するに当たっては、位置関係、相互の大きさ、使用材料等を個別に最適化することができる。
【0041】
超伝導マグネットとして、図3にその特性を示す、磁場中心で10.2Tの磁場を有する長さ30cmのソレノイドコイルを想定し、これに基いて以下に示す各場合についての磁気力分布を計算した結果を実施例として示す。
【0042】
図3において、横軸はソレノイドコイルの上下方向(z方向と呼ぶこともある)の中間点、つまり上端からも下端からも15cmの位置にある点からの距離(cm)を示す。また、右側の縦軸はその距離における中心軸上の磁場(T)(一点差線のグラフに対応)を、左側の軸は同じく中心軸上の垂直磁気力(T/m)(実線のグラフに対応)を示す。なお、以下に示す計算では、強磁気力発生部中の強磁気力発生領域の位置範囲(より具体的には強磁気力発生部中の円盤及び第2のリングの上面から第1のリング及び第3のリングの下面までの範囲にある領域の位置範囲)が、上に向かって11cmから12cmの範囲であるとしているが、重力キャンセルの程度や磁気力発生装置の具体的な構成によっては別の範囲とすることもできる。
(1)円盤及びリングとして永久磁石を使用した場合
ここでは超伝導マグネットの磁場と同じ向きに着磁した(つまり磁化の向きを超伝導マグネットの磁場と同じ方向に向けた)、磁化1.4Tの永久磁石を使用した場合の磁気力分布を計算した。図4は計算した磁気力分布全体を示す。ここで、1は円盤、2は第1のリング、3は第2のリング、4は第3のリング、5は最外周に置かれた鉄ブロックを示す。図5は上述した強磁気力発生領域の範囲(11cm〜12cm)前後(図の横軸z)について、中心軸上の垂直磁気力分布(centerと表記)、及び下側のリングの上面であって上側の2つのリングの間の隙間の下側である第2の強磁気力発生領域の中心部である、中心軸から2.44cm外側へずれた位置の垂直磁気力分布(24.4と表記)を示している。
【0043】
図5から判るように、垂直磁気力は、z=11〜12cmの第1の領域及び第2の領域では、中心軸上(つまり第1の領域)では約1450T/m、中心軸から水平方向に2.44cm離れた第2の領域ではそれよりはやや低いが約1250T/mで、何れもほぼ一様となる。なお、図5において、中心軸上の垂直磁気力のプロットがz=11cm付近から下で乱れているのは計算誤差によるものと考えられる。また、図4に示す、第2のリング3から離間して設置するとともに、上方向には第1のリング2及び第2のリング3の下面の高さまで伸びている鉄ブロック5によって、中心軸から水平方向に2.44cm離れた位置での磁気力の均一度は改善されたが、磁気力の大きさは減少した。
(2)円盤及びリングとして強磁性体を使用した場合
(1)の永久磁石を使用した場合と各部のサイズは同一だが、円盤、リングに永久磁石ではなく、全て強磁性体、具体的には鉄(飽和磁化21T)を使用した場合を計算した。上の図4及び図5に対応する結果をそれぞれ図6及び図7に示す。図7から判るように、垂直磁気力はこの場合には図5と比較するとz=11〜12cmであまり一定とはならなかった。
(3)円盤及びリングとして永久磁石と強磁性体を混在させた場合
上の2つの場合と各部のサイズは同一だが、下側の円盤及びリングに超伝導マグネットの磁場と同じ向きに着磁した永久磁石(磁化1.4T)を、また上側の2つのリングに鉄(飽和磁化19T)を使用した場合を計算した。上で説明した図4及び図6に対応する計算結果を図8に、また図5及び図7に対応する計算結果を図9に示す。この構成では、図9からわかるように、上述の2つの計算例に比較して、平坦度の高い垂直磁気力の分布が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、簡単な構成で大きな容積の微重力領域を実現することができるので、微重力環境を必要とする広範な分野への貢献には大きなものがある。
【符号の説明】
【0045】
1 円盤
2 第1のリング
3 第2のリング
4 第3のリング
5 鉄ブロック
図1
図2
図3
図5
図7
図9
図4
図6
図8