(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水が20〜60重量%、前記湿潤剤が10〜50重量%、前記着色剤が0.1〜20重量%含有されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
前記インクジェット記録用インクは、下記測定方法により算出される粘度変化率が30%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
測定方法:前記インクジェット記録用インクの液温を25℃に調整し、初期粘度を測定した後、HCL水溶液(20重量%)を滴下しpH8.5にしたときの粘度を測定し、下記式により粘度変化率を算出する。
式:粘度変化率(%)=[(pH調整後粘度−初期粘度)/初期粘度]×100
前記共重合体における前記式(1)で表される構造単位と前記一般式(2)で表される構造単位との重量の比率が40:60〜80:20であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録用インクにインク飛翔手段を介して刺激を印加し、記録ヘッドから該インクジェット記録用インクを飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを記録ヘッドから飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るインクジェット記録用インクは、水と、湿潤剤と、着色剤と、共重合体と、を含有するインクジェット記録用インクであって、前記共重合体が、少なくとも下記式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位との共重合体から成ることを特徴とする。
【0018】
[前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、M
+は半数以上または全てが、アルカリ金属イオン、有機アミンイオンであり残りはプロトンを表す。]
【0019】
また、前記一般式(2)で表される構造単位が下記一般式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
【0021】
[前記一般式(3)中、M
+は半数以上または全てが、アルカリ金属イオン、有機アミンイオンであり残りはプロトンを表す。]
【0022】
ここで、前記一般式(2)、(3)は、その一部もしくは全てが塩基で中和されることにより、イオン化されていることが好ましい。中和に用いる塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニウム、モノ,ジ或いはトリメチルアミン、モノ,ジ或いはトリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、コリン、アミノエタンプロパンジオール、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、アミノエチルプロパンジオール、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の有機アミン、モノホリン、N−メチルモノホルリン、N−メチル−2ピロリドン、2−ピロリドン等の環状アミン等の有機アミンが挙げられる。
なお、前記共重合体にその他の重合体成分を追加しても良い。
【0023】
次に、本発明に係るインクジェット記録用インク、並びに該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法およびインク記録物についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
<インクジェット記録用インク>
本実施形態のインクジェット記録用インク(以下、「インク」と称することがある。)は、水と、湿潤剤と、着色剤と、pHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体とを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有して成る。
本発明に係るインクジェット記録用インクは、前記共重合体が普通紙などの記録媒体上に着弾した際に水不溶化による凝集増粘を起こし、インクの紙中への浸透が抑制されて高い画像濃度を得ることができる。
なお、pHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体とは前述のとおり、前記式(1)で表される構造単位と、前記一般式(2)で表される構造単位との共重合体である。
以下、本発明のインクジェット記録用インクを構成する組成分について更に詳しく説明する。
【0025】
(共重合体)
本発明で使用される共重合体は、インクジェット記録用インクが普通紙などの記録媒体上に着弾した際にpHの変化(酸性側へ変化)に応答して水不溶化による凝集増粘する特性を有するものである。この機能により、インクが紙中に浸透するのが抑制されて高い画像濃度を得ることができる。
本発明では特に前記共重合体を分散剤として使用することで高画像濃度及びノズルからの吐出安定性が良好なインクを提供することができる。
【0026】
本発明で用いられる化合物の重合方法については、特に限定しなく公知の重合方法を使用することが可能である。
例えば、水を媒体にして下記式(4)で表されるモノマーと、下記一般式(5)で表されるモノマーとを、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤を加え、常温乃至100℃にて重合させ前記式(1)で表される構造単位と、前記一般式(2)で表される構造単位との共重合体を得るが、本発明は特にこれに限定されない。
【0029】
[前記一般式(5)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0030】
本発明に係るインクジェット記録用インクは、初期pHが9から11、好ましくは9.5から10に調整することが好ましい。インクの初期pHをこの範囲とすることにより、インクの粘度(初期粘度)を低くすることができ、充分な流動性、保存安定性を有するインクとすることができる。
本発明に係るインクジェット記録用インクは、インクのpHが8.5以下になるとポリマーの疎水性が高くなり、水に溶けにくくなるため樹脂が析出し、凝集増粘するという特徴を有する。これは従来のインクにはない本発明の特徴である。
【0031】
本発明に係るインクジェット記録用インクを用いた画像形成は、記録媒体として普通紙を好適に用いることができる。普通紙の紙面(紙の表面)のpHは、一般的に6.5〜7.5の範囲にある。この様な紙面上にインクが着弾すると、インクは紙面のpHの影響を受ける。すなわち、紙面そのもの、及びまたは紙面に存在する酸性成分の影響を受ける。吐出する前の初期pHが9〜11にあるインクが普通紙の紙面上に着弾した場合、インクのpHは、インクの初期pHと、紙面のpHの値との間の値まで低下する。着弾後のインクのpHは、8.5以下まで低下すると考えられる。
【0032】
そのため、本発明に係るインクジェット記録用インクは、紙面上に着弾すると、凝集、増粘し、それによって紙の内部への浸透が押さえられ、着色剤(顔料)が紙面上に多く残存する。本発明によれば、着色剤(顔料)を紙面上に多く残存させることが可能となることから、画像形成した場合に、高い画像濃度が得られるインクの提供が可能となる。
【0033】
本発明に係るインクジェット記録用インクは、吐出する前においては、pHを高くすることで低い粘度を有し充分な流動性、保存安定性を有するインクとすることができ、吐出して紙面上に着弾させ、インクのpHを低下させた後においては、増粘するインクである。
したがって、本発明に係るインクジェット記録用インクは、pHの低下に伴う高い粘度変化率を有する。ここで下記の方法によって測定される粘度変化率は、30%以上あることが好ましく、更に好ましくは50%以上である。粘度変化率が小さすぎるとインクが紙中に浸透してしまい充分な画像濃度が得られない。
【0034】
本発明において、粘度変化率は以下の方法によって求める事が出来、これを本発明における粘度変化率と定義する。
【0035】
(粘度変化率)
粘度変化率は初期インク粘度に対し、HCl水溶液等でインクのpHを8.5に調整した時の粘度変化率として下記式より求める。
【0036】
粘度変化率(%)=[(pH調整後粘度−初期粘度)/初期粘度]×100
【0037】
測定方法:インク液温を25℃に調整し、初期粘度を測定した後、HCL水溶液(20重量%)を滴下しpH8.5にしたときの粘度を測定し、上記式により粘度変化率を算出する。
粘度計:東機産業株式会社製 粘度計MODEL RC−500
【0038】
本発明において、共重合体を構成する前記式(1)で表される構造単位、前記一般式(2)で表される構造単位の比率は特に制限されないが、pH低下に伴う水不溶化による凝集増粘の観点から、式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位の繰り返し単位との比率が40:60〜80:20の範囲が好ましく、50:50〜75:25がより好ましい。
【0039】
本発明に用いられる共重合体を分散剤として使用する場合の共重合体の量は、着色剤(顔料)の種類により適宜選択すればよく、着色剤1重量部に対し0.005〜5重量部である。好ましくは着色剤1重量部に対し0.01〜2重量部であり、更に好ましくは着色剤1重量部に対し0.02〜0.5重量部である。0.005〜5重量部の範囲であると、着色剤の分散性が向上すると共にインクの経時安定性が向上し、0.01〜2重量部の範囲であるとよりこれらの効果が高まる。特に0.02〜0.5重量部の範囲では、更にインクの経時安定性が向上する。
また、上記効果を損なわない範囲で、後に記載する分散剤を共重合体と併用してもよい。
【0040】
(水)
本発明で使用される水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。
水の含有量は、インク総量に対して20〜60重量%が好ましい。
【0041】
(湿潤剤)
本発明で使用される湿潤剤は、インク組成物において、保湿効果の付与による吐出安定化の向上に必要である。含有量は、インク総量に対して10〜50重量%が好ましい。前記含有量が10重量%未満であると、インクが水分蒸発し易くなり、インクジェット記録装置内のインク供給系でインクの水分蒸発により増粘インク詰まり等が生じることがある。前記含有量が50重量%より多いと、インクジェット記録装置内では増粘インク詰まりは発生しにくくなるが、インクを所望の粘度にするために顔料や樹脂等の固形分の減量が必要なことがあり、その場合記録物の画像濃度が低下することがある。
【0042】
本発明で用いられる湿潤剤としては、以下のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブチルグリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネイト、炭酸エチレン等である。
これらの湿潤剤は、単独または2種類以上混合して使用することができる。 上記の中でも、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリエチレングリコールおよび/またはグリセリンを含むことが水分蒸発による吐出不良を防止する上で優れた効果が得られる。
【0043】
(着色剤)
本発明で用いられる着色剤としての顔料の前記記録用インクにおける含有量は、0.1重量%以上、20.0重量%以下が好ましい。顔料の体積平均粒子径(D50)は、150nm以下が好ましい。
ここで、前記顔料の体積平均粒子径(D50)は、23℃、55%RHの環境下において、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定したものである。
これらの顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料、および有機顔料のいずれであってもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0045】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ローダミンBレーキ顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0046】
黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
前記カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15nm〜40nm、BET法による比表面積が、50m
2/g〜300m
2/g 、DBP吸油量が40ml/100g〜150ml/100g、揮発分が0.5%〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
前記カーボンブラックとして市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(いずれも、三菱化学株式会社製);Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(いずれも、コロンビア社製);Regal400R、同330R、同660R、Mogul L、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(いずれも、キャボット社製);カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(いずれも、デグッサ社製)などが挙げられる。
【0047】
前記カラー用のものでイエローインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、などが挙げられる。
【0048】
前記カラー用のものでマゼンタインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット19、などが挙げられる。
【0049】
前記カラー用のものでシアンインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:34、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー66;C.I.バットブルー4、C.I.バットブルー60、などが挙げられる。
【0050】
また、本発明で使用する各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
なお、イエロー顔料として、ピグメントイエロー74、マゼンタ顔料として、ピグメントレッド122、ピグメントバイオレッド19、シアン顔料として、ピグメントブルー15:3を用いることにより、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクを得ることができる。
更に本発明で使用される顔料は、分散剤等の界面活性剤や樹脂で被覆したグラフト処理やカプセル化処理した物を使用することも可能であるが、本発明の化合物を分散剤に使用した方がより好ましい。
また効果を損なわない範囲で上述した顔料を併用してもよい。
【0051】
(その他の成分)
本発明のインクジェット記録用インクの組成分に用いられるその他の成分としては特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができる。その他の成分としては、例えば、分散剤、浸透剤、pH調整剤、水分散性樹脂、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0052】
(分散剤)
前記分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤や高分子型の分散剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0054】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0056】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤;
ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系界面活性剤;
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系界面活性剤等が例示される。
【0057】
(浸透剤)
前記浸透剤としては、炭素数8〜11のポリオール化合物および炭素数8〜11のグリコールエーテル化合物のいずれかを含有することが好ましい。
前記浸透剤は、前記湿潤剤とは別なものであり、前記湿潤剤よりも湿潤性が比較的少ないので、「非湿潤剤性である媒質」ということができる。これら非湿潤剤性である浸透剤は、25℃の水中において0.2〜5.0重量%の間の溶解度を有するものが好ましい。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2重量%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0重量%(25℃)]が特に好ましい。
その他のポリオール化合物として、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
【0058】
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類、などが挙げられる。
【0059】
前記浸透剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、0.1〜4.0重量%が好ましい。前記含有量が、0.1重量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0重量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また記録用メディア(記録媒体)への浸透性が必要以上に高くなったり、画像濃度の低下や裏抜けが発生したりすることがある。
【0060】
(pH調整剤)
前記pH調整剤としては、調合されるインクジェット用インクに悪影響を及ぼさずにpHを8.5〜11、好ましくはpHを9〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。前記pHが8.5未満および11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。8.5未満の時には、インク保管中にインクpHが低下して高分子微粒子が粒子径の増大により凝集することがある。
前記pHは、例えば、pHメータHM−30R(TOA−DKK社製)により測定することができる。
【0061】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオール等が挙げられる。前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0062】
(水分散性樹脂)
前記水分散性樹脂としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。
前記水分散性樹脂の具体例としては、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
この中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子およびフッ素系樹脂微粒子が好ましい。
【0063】
前記水分散性樹脂の体積平均粒子径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インクが過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の体積平均粒子径(D50)は50nm以上であることが好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出安定性を悪化させる。そこで、インク吐出安定性を阻害させないために体積平均粒子径(D50)は200nm以下がより好ましい。
ここで、前記水分散性樹脂の体積平均粒子径(D50)は、23℃、55%RHの環境下において、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定したものである。
【0064】
また、前記水分散性樹脂は、前記水分散着色剤を紙面に定着させる働きを有し、常温で被膜化して色材の定着性を向上させることが好ましい。そのため、前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は30℃以下であることが好ましい。
また、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度が−30℃以上の水分散性樹脂であることが好ましい。 前記水分散性樹脂の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で1〜15重量%が好ましく、2〜7重量%がより好ましい。
【0065】
(防腐防黴剤)
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
【0066】
(キレート試薬)
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0067】
(防錆剤)
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0068】
(酸化防止剤)
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0069】
(紫外線吸収剤)
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0070】
(インクジェット用インク製造方法)
本実施形態のインクジェット用インクは、水、湿潤剤、着色剤、及び
pHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体、更に必要に応じて他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。
なお、pHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体とは前述のとおり、前記式(1)で表されるモノマーと、前記一般式(2)で表されるモノマーとの共重合体である。
前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0071】
本発明のインクジェット用インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力等が以下の範囲であることが好ましい。
前記インクジェット用インクの25℃での粘度は3mPa・s〜20mPa・sが好ましい。前記インク粘度が3mPa・s以上とすることによって、印字濃度や文字品位を向上させる効果が得られる。一方、インク粘度を20mPa・s以下に抑えることで、吐出性を確保することができる。
前記粘度は、例えば、粘度計(RL−550、東機産業株式会社製)を使用して、25℃で測定することができる。
前記インクジェット用インクの表面張力としては、25℃で、40mN/m以下が好ましい。前記表面張力が、40mN/mを超えると、記録用メディア上のインクのレベリングが起こり難く、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
【0072】
(インクカートリッジ)
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクジェット記録用インクを容器中に収容するものであり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を構成することもできる。
前記容器としては、その形状、構造、大きさ、材質に特に制限無く、目的に応じて適宜選択できる。例として、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルムなどで形成されたインク袋を少なくとも有するものなどが好適に挙げられる。
【0073】
本発明のインクカートリッジの一態様について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は本発明のインクカートリッジの一例を説明するための概略平面図である。
図2は
図1のインクカートリッジのケース(外装)を含めた概略平面図である。
【0074】
インクカートリッジ200は、
図1に示すように、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、
図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0075】
(インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば刺激発生手段、制御手段等を有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば刺激発生工程、制御工程等を含む。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0076】
前記インク飛翔工程は、前記本発明のインクジェット用インクに、刺激を印加し、該インクジェット用インクを飛翔させて画像を形成する工程である。
前記インク飛翔手段は、前記本発明のインクジェット用インクに、刺激を印加し、該インクジェット用インクを飛翔させて画像を形成する手段である。該インク飛翔手段としては、特に制限はなく、例えば、インク吐出用の各種のノズル、などが挙げられる。
【0077】
前記刺激は、例えば、前記刺激発生手段により発生させることができ、該刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動、光、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。なお、前記刺激発生手段としては、例えば、過熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。具体的には、圧電素子などの圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ、などが挙げられる。
【0078】
前記インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
【0079】
なお、前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0080】
ここで、本発明のインクジェット記録装置により本発明のインクジェット記録方法を実施する一の態様について、図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明のシリアル型インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103と、装置本体101の前面112の一端部側には、前面112から前方側に突き出し、上カバー111よりも低くなったインクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ200の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。
【0081】
装置本体101内には、
図4および
図5(
図3に示すインクジェット記録装置における一部拡大断面図)に示すように、図示を省略している左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータによって
図5に示すように矢示方向に移動走査する。
【0082】
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、図示しないインク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部104に装填された本発明のインクカートリッジ200から前記インクが供給されて補充される。
【0083】
一方、給紙トレイ103の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ143)、及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、用紙142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられる。
【0084】
また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト151は、例えば、抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材161が配置されている。
なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配されている。
【0085】
装置本体101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱自在に装着されている。
両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
【0086】
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト157が帯電されており、用紙142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次行の記録を行う。
【0087】
記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。そして、サブタンク135内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ200から所要量のインクがサブタンク135に補給される。
【0088】
このインクジェット記録装置においては、本発明のインクカートリッジ201中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ200における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ200は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、装置本体101の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したりする場合、あるいは装置本体101の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ200の交換を容易に行うことができる。
なお、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
【0089】
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【0090】
(インク記録物)
本発明のインクジェット記録方法により記録されたインク記録物は、本発明のインク記録物である。すなわち、本発明のインク記録物は、本発明のインクジェット記録用インクにより記録された画像を記録媒体(記録メディア)上に有してなる。
前記記録メディアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、普通紙、印刷用塗工紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、普通紙および印刷用塗工紙の少なくともいずれかが好ましい。前記普通紙は安価である点で有利である。また、前記印刷用塗工紙は光沢紙に比べ比較的安価でしかも平滑な光沢ある画像を与える点で有利である。しかし、乾燥性が悪く一般にインクジェット用には使用困難であったが、本発明のインクにより乾燥性が向上し使用可能となった。
本発明のインク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、例中で用いられた%は重量基準である。
【0092】
<実施例>
(化合物Aの作成)
四口フラスコに温度計、攪拌機、還流冷却機を設置し、水500g及び過硫酸アンモニウム15gを仕込み、80〜90℃の加熱条件下で、スチレン100g、マレイン酸(N、N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)100gを、それぞれ攪拌しながらゆっくり滴下した。スチレン、マレイン酸(N、N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比(%)は、50:50である。
続いて4時間反応させた後、冷却し、NaOHを用いて中和し、さらに蒸留水を加えて固形分を20%に調整して、スチレン−マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)共重合体Na塩(化合物A)の水溶液を得た。
【0093】
(化合物Bの作成)
化合物Aの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比(重量%)を、67:33に変えた点以外は化合物Aの作成と同様にして化合物Bを得た。
【0094】
(化合物Cの作成)
化合物Aの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比(重量%)を、75:25に変えた点以外は化合物Aの作成と同様にして化合物Cを得た。
【0095】
(化合物Dの作成)
化合物Cの作成におけるマレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)をマレイン酸(N、N−ジブチルプロピレンジアミンモノアミド)に変えた点以外は化合物Cの作成と同様にして化合物Dを得た。
【0096】
(化合物Eの作成)
化合物Cの作成におけるNaOHをKOHに変えた点以外は、化合物Cの作成と同様にして化合物Eを得た。
【0097】
(化合物Fの作成)
化合物Cの作成におけるNaOHをトリエタノールアミンに変えた点以外は、化合物Cの作成と同様にして化合物Fを得た。
【0098】
(化合物Gの作成)
化合物Dの作成におけるNaOHをトリエタノールアミンに変えた点以外は、化合物Dの作成と同様にして化合物Gを得た。
【0099】
(化合物Hの作成)
化合物Bの作成における中和剤の量を変えて中和率を85%にした他は、化合物Bの作成と同様にして化合物Hを得た。
【0100】
<顔料分散液の調整>
(調整例1):顔料分散液A
下記処方(1)にて、下記カーボンブラック顔料、共重合体および純水の混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)で周速10m/sで10分間循環分散してブラック顔料分散液を得た。
【0101】
処方(1)
・カーボンブラック顔料 NIPEX150 20重量部
(degussa社製:ガスブラック)
・化合物Aの水溶液(固形分 12.5重量%) 64重量部
・純水 16重量部
【0102】
(調整例2〜10):顔料分散液B〜H
調整例1の化合物Aの水溶液を化合物B〜Hの水溶液に変えた点以外は調整例1と同様にして顔料分散液B〜Hを得た。
【0103】
(調整例11):シアン顔料分散液
調整例1のカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変えた点以外は調整例1と同様にしてシアン顔料分散液を得た。
【0104】
(調整例12):マゼンタ顔料分散液
調整例1のカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変えた点以外は調整例1と同様にしてマゼンタ顔料分散液を得た。
【0105】
(調整例13):イエロー顔料分散液
調整例1のカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変えた点以外は調整例1と同様にしてイエロー顔料分散液を得た。
【0106】
<比較例>
(化合物Iの作成)
化合物Aの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)をスチレン、アクリル酸に変え、スチレン、アクリル酸の重量比率を43:57とした点以外は、化合物Dの作成と同様にして化合物Iを得た。
【0107】
(化合物Jの作成)
化合物Cの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)をスチレン、マレイン酸に変え、スチレン、マレイン酸の重量比率を43:57とした点以外は、化合物Dの作成と同様にして化合物Iを得た。
【0108】
<顔料分散液の調整>
(比較調整例1):顔料分散液I
調整例1の化合物Aの水溶液を化合物Iの水溶液に変えた点以外は調整例1と同様にして顔料分散液Iを得た。
【0109】
(比較調整例2):顔料分散液J
調整例1の化合物Aの水溶液を化合物Jの水溶液に変えた点以外は調整例1と同様にして顔料分散液Jを得た。
【0110】
(比較調整例3):顔料分散液K
調整例1の化合物Aの水溶液をナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の水溶液に変えた以外は調整例1と同様にして顔料分散液Kを得た。
【0111】
[実施例1〜11、比較例1〜3]
<インクジェット用インクの製造方法>
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インクを作成した。
【0112】
(実施例1)
・調整例1の顔料分散液A(顔料濃度20%) 40.0重量部
・グリセリン 5.5重量部
・1,3−ブタンジオール 16.5重量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
・フッ素系界面活性剤(固形分40%) 2.5重量部
(DuPont社製:Zonyl FS−300)
・フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体(固形分50%) 6.0重量部
(旭硝子社製:ルミフロンFE4300、平均粒子径150nm、
MFT30℃以下)
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液 1.5重量部
(固形分40%)
・純水 26.0重量部
【0113】
(実施例2〜8)
実施例1において、顔料分散液Aを顔料分散液B〜Hに変えた点以外は同様にして実施例2〜8のインクを得た。
【0114】
(実施例9)
実施例3において、顔料分散液Aをシアン顔料分散液変え、シアン顔料分散液を33.0重量部とし、純水を33.0重量部とした点以外は同様にして実施例9のインクを得た。
【0115】
(実施例10)
実施例3において、顔料分散液Aをシアン顔料分散液変え、マゼンタ顔料分散液を33.0重量部とし、純水を33.0重量部とした点以外は同様にして実施例10のインクを得た。
【0116】
(実施例11)
実施例3において、顔料分散液Aをシアン顔料分散液変え、イエロー顔料分散液を33.0重量部とし、純水を33.0重量部とした点以外は同様にして実施例11のインクを得た。
【0117】
(比較例1〜3)
実施例1のインクAの顔料分散液Aを顔料分散液I〜Kに変えた点以外は同様にして比較例1〜3のインクを得た。
【0118】
次に、以下に示す評価方法にて、実施例1〜10および比較例1〜3の各インクジェット用インクを評価した。結果を下記表1示す。
【0119】
<画像濃度>
23℃50%RH環境下で、インクジェットプリンター(リコー製IPSiO GX5000)に作成したインクを充填し、Microsoft Word2000(Microsoft社製)にて作成した64point文字「■」の記載のあるチャートをMyPaper(株式会社リコー製)に打ち出し、印字面の「■」部をX−Rite938にて測色し、下記評価基準により判定した。
印字モードはプリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定より「普通紙−標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。
【0120】
〔評価基準〕
◎:ブラック:1.2以上、マゼンタ:0.95以上、
シアン:0.95以上、イエロー:0.8以上、
○:ブラック:1.15以上、マゼンタ:0.9以上、
シアン:0.9以上、イエロー:0.75以上、
△:ブラック:1.1以上、マゼンタ:0.85以上、
シアン:0.85 以上、イエロー:0.7以上、
×:ブラック:1.1未満、マゼンタ:0.85未満、
シアン:0.85 未満、イエロー:0.7未満、
【0121】
<インク保存安定性>
各インクをインクカートリッジに充填して60℃で2週間保存し、保存前の粘度に対する保存後の粘度の変化を下記基準により評価した。
【0122】
[評価基準]
◎:粘度の変化が±5%未満
○:粘度の変化が±5%以上±10%未満
△:粘度の変化が±10%以上±30%未満
×:粘度の変化が30%以上
【0123】
<インク吐出安定性>
吐出安定性については、印刷物を印刷した後、プリンタヘッドにキャップした状態でプリンタを50℃の環境下で1ヶ月放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを下記のクリーニング動作回数によって、下記評価基準に従い評価した。
【0124】
○:クリーニング無しで印刷できた。
△:1〜5回の動作により回復した。
×:6回以上の動作によっても回復がみられなかった。
【0125】
なお、以上の3項目の評価はいずれも、◎、○が合格、△、×が不合格である。
【0126】
【表1】
【0127】
(実施例の内容)
実施例1〜3は、本発明のスチレン、マレイン酸(N、N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比率を変えたもので塩はNaを使用し、カーボンブラック顔料を用いたもの。
実施例4は、マレイン酸アミド化合物のアルキル基をブチルに変えたもの。
実施例5〜7は、塩をKまたはトリエタノールアミンに変更したもの。
実施例8は、実施例2の中和率を100%から85%に変えたもの。
実施例9、10、11は、それぞれシアン顔料分散液、マゼンタ顔料分散液、イエロー顔料分散液を使用したもの。
【0128】
上記評価結果から、少なくとも前記式(1)で表されるモノマーと、前記一般式(2)で表されるモノマーとの共重合体をインク組成分として含有する本発明のインクでは、いずれも画像濃度、インク保存安定性、インク吐出安定性が優れており、実用において問題となる特性は見られない。
例えば、実施例1〜8と比較例1〜3との比較で、本発明のインクは、画像濃度が高く保存安定性、吐出安定性が同等以上であることが分かる。
また、実施例3と4との比較、及び実施例6と7との比較から、アルキルとしてメチル基が保存安定性で優れていることが分かる。
実施例5〜7より塩の種類を変えても同等の効果があることが分かる。
更に、実施例9〜11より、本発明の共重合体をカラー顔料に使用してもカーボンブラックと同様の効果があることが分かる。
本発明のインクでは、pH低下により水不溶化による凝集増粘の効果により、各色インクで、画像濃度が明らかに優れ、インク保存安定性及びインク吐出安定性について同等以上であることが分かる。
【0129】
すなわち、本発明は、インクの保存安定性が良好で、しかも乾燥性が良好であり普通紙や印刷用塗工紙で高い画像濃度が得られ、記録ヘッドからのインクの吐出安定性が良好で、かつノズル周辺にインク固着がないため、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができる。本発明のインク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用できる。インクジェット記録方式による記録装置としては、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などが適用できる。