特許第6044361号(P6044361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6044361ジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044361
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20161206BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
   C07F7/12 P
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-8200(P2013-8200)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139144(P2014-139144A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 泰文
(72)【発明者】
【氏名】久保田 透
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−532927(JP,A)
【文献】 米国特許第03399222(US,A)
【文献】 国際公開第2010/004948(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
1SiCl3 (1)
(式中、R1は炭素数2〜20の非置換又はケイ素原子のα位以外に置換基を有する置換一価炭化水素基である。)
で表されるトリクロロオルガノシラン化合物と、下記一般式(2)
HSiR2mCl3-m (2)
(式中、R2は炭素数1〜20の非置換又は置換一価炭化水素基であり、mは1、2又は3である。)
で表されるモノヒドロシラン化合物とを、触媒の存在下に反応させて、下記一般式(3)
HSiR1Cl2 (3)
(式中、R1は上記の通りである。)
で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物を製造した後、未反応のモノヒドロシラン化合物、上記反応により生成した下記一般式(4)
2mSiCl4-m (4)
(式中、R2、mは上記の通りである。)
で表されるクロロシラン化合物、及び副生したクロロジヒドロシラン化合物を反応液から分離除去することで、上記一般式(3)で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物を、未反応のトリクロロオルガノシラン化合物との混合物としてることを特徴とするジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【請求項2】
触媒が、4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項1記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【請求項3】
常圧下で反応を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【請求項4】
トリクロロオルガノシラン化合物が、3−クロロプロピルトリクロロシランである請求項1〜3のいずれか1項記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【請求項5】
モノヒドロシラン化合物が、クロロジメチルシラン又はジクロロメチルシランである請求項1〜4のいずれか1項記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【請求項6】
上記一般式(1)及び(2)の化合物の反応により生成する下記一般式(4)
2mSiCl4-m (4)
(式中、R2、mは上記の通りである。)
で表されるクロロシラン化合物の沸点が、上記一般式(3)で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物の沸点よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【請求項7】
上記混合物中の未反応のトリクロロオルガノシラン化合物とジクロロモノヒドロシラン化合物の組み合わせが、
3−クロロプロピルトリクロロシランと3−クロロプロピルジクロロシラン、
2−シアノエチルトリクロロシランと2−シアノエチルジクロロシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランと3−メタクリロキシプロピルジクロロシラン、又は
フェニルトリクロロシランとフェニルジクロロシラン
である請求項1〜6のいずれか1項記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法によって得られた混合物を用いてヒドロシリル化反応を行った後、未反応のトリクロロオルガノシラン化合物を留去するジクロロモノヒドロシラン化合物のヒドロシリル化物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法によって得られた混合物を用いてオルガノオキシ化を行った後、トリオルガノオキシシラン化合物を留去するジオルガノキシモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法に関し、更に詳述すると、トリクロロオルガノシラン化合物とモノヒドロシラン化合物とを触媒の存在下、特にアンモニウム塩又はホスホニウム塩の存在下反応させて、ジクロロモノヒドロシラン化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジクロロモノヒドロシラン化合物は、Si−H結合を有しており、官能基を有する各種オレフィンやアルキン類と反応させることができるため、各種シランカップリング剤や機能性シリコーンオイル等の各種シラン化合物の合成原料として有用な化合物である。特に、オルガノ基として反応性基を有するジクロロモノヒドロシラン化合物は、反応性基を有するオレフィン化合物とヒドロシリル化反応を行うことにより、同一の又は異なる反応性基を2つ有するシラン化合物を合成することができるため、特に有用である。
【0003】
ジクロロモノヒドロシラン化合物の筆頭であるジクロロメチルシランは、金属ケイ素とメチルクロライドとを反応させる直接法(非特許文献1:J.Am.Chem.Soc,1945年、第67巻、1772頁)により製造されている。
【0004】
反応性基を有するオルガノ置換基を有するジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法としては、オルガノトリクロロシラン化合物とアルキルトリヒドロシラン化合物を、三級アミンを触媒として反応させる方法が知られている(特許文献1:米国特許第3465019号明細書)。
【0005】
また、α位へテロ置換アルキルジクロロシラン化合物の製造方法としては、α位ヘテロ置換アルキルトリクロロシラン化合物とモノヒドロシラン化合物とを触媒存在下に反応させて、α−ヘテロ置換アルキルジクロロヒドロシラン化合物を製造する方法が知られている。このα位へテロ置換アルキル基を有するシラン化合物は、ケイ素上の基の反応性が高くなっていることが記載されている(特許文献2:国際公開第2010/4948号)。例えば、ケイ素上の反応性が高いクロロメチルトリクロロシランは、容易にヒドロシラン化合物と反応して、ジクロロモノヒドロシランが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3465019号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/4948号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc,1945年、第67巻、1772頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、ヒドロシラン化合物として用いるアルキルトリヒドロシラン化合物は、アルキルトリクロロシラン化合物を金属水素化物等を用いて還元して製造する必要があり、高価であって、工業的に入手が難しいため、この方法を工業的規模で実施することは困難である。
【0009】
また、上記特許文献2のクロロメチルトリクロロシランは、入手が難しい一方、α位の置換基は反応性が高いため、クロロメチル基のクロル基が還元されてメチル基になってしまう副反応が多く起こるという問題があった。更に、ヒドロシラン化合物として、トリエチルシランや、フェニルジメチルシラン等の高価なトリオルガノシラン化合物を用いた場合には、クロロメチルトリクロロシランの反応率が高く、目的のクロロメチルジクロロシランの生成比を高くすることができる。しかし、安価で、入手容易なジクロロメチルシランを用いて反応を行った場合には、クロロメチルジクロロシランの生成比を高くするために、オートクレーブを用いる加圧下又はガラスチューブ型反応器を用いて脱気封管して加圧下に反応を行う必要があり、常圧での反応ではクロロメチルジクロロシランの生成比が低くなるという問題があった。また、ヒドロシラン化合物としてクロロジメチルシランを用いた場合には、ガラスチューブ型反応器を用いて、脱気封管して加圧下に反応を行っても、クロロメチルジクロロシランの生成比が低いという問題があった。更に、工業的規模で加圧下に実施する場合には、特殊な反応装置が必要であるという問題点がある。
【0010】
一方、非特許文献1の方法では、反応温度が高いために官能基を有するヒドロシラン化合物の製造は困難である。
【0011】
以上のことから、安価で入手容易なモノヒドロシラン化合物を用いてジクロロモノヒドロシラン化合物、特にα位以外に反応性基を有するジクロロモノヒドロシラン化合物を製造する方法の開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記要望に応えたもので、α位に置換基を有さないオルガノ基を有するトリクロロシラン化合物と、モノヒドロシラン化合物、特に安価で、入手容易なクロロジメチルシラン又はジクロロメチルシランを用いて反応を行い、ジクロロモノヒドロシラン化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、α位が無置換のトリクロロオルガノシラン化合物と、モノヒドロシラン化合物とを触媒の存在下に反応させることにより、ジクロロモノヒドロシラン化合物を製造できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0014】
従って、本発明は、下記のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法を提供する。
[1]
下記一般式(1)
1SiCl3 (1)
(式中、R1は炭素数2〜20の非置換又はケイ素原子のα位以外に置換基を有する置換一価炭化水素基である。)
で表されるトリクロロオルガノシラン化合物と、下記一般式(2)
HSiR2mCl3-m (2)
(式中、R2は炭素数1〜20の非置換又は置換一価炭化水素基であり、mは1、2又は3である。)
で表されるモノヒドロシラン化合物とを、触媒の存在下に反応させて、下記一般式(3)
HSiR1Cl2 (3)
(式中、R1は上記の通りである。)
で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物を製造した後、未反応のモノヒドロシラン化合物、上記反応により生成した下記一般式(4)
2mSiCl4-m (4)
(式中、R2、mは上記の通りである。)
で表されるクロロシラン化合物、及び副生したクロロジヒドロシラン化合物を反応液から分離除去することで、上記一般式(3)で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物を、未反応のトリクロロオルガノシラン化合物との混合物としてることを特徴とするジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
[2]
触媒が、4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩であることを特徴とする[1]記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
[3]
常圧下で反応を行うことを特徴とする[1]又は[2]記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
[4]
トリクロロオルガノシラン化合物が、3−クロロプロピルトリクロロシランである[1]〜[3]のいずれかに記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
[5]
モノヒドロシラン化合物が、クロロジメチルシラン又はジクロロメチルシランである[1]〜[4]のいずれかに記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
[6]
上記一般式(1)及び(2)の化合物の反応により生成する下記一般式(4)
2mSiCl4-m (4)
(式中、R2、mは上記の通りである。)
で表されるクロロシラン化合物の沸点が、上記一般式(3)で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物の沸点よりも低いことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
[7]
上記混合物中の未反応のトリクロロオルガノシラン化合物とジクロロモノヒドロシラン化合物の組み合わせが、
3−クロロプロピルトリクロロシランと3−クロロプロピルジクロロシラン、
2−シアノエチルトリクロロシランと2−シアノエチルジクロロシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランと3−メタクリロキシプロピルジクロロシラン、又は
フェニルトリクロロシランとフェニルジクロロシラン
である[1]〜[6]のいずれかに記載のジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法。
[8]
1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法によって得られた混合物を用いてヒドロシリル化反応を行った後、未反応のトリクロロオルガノシラン化合物を留去するジクロロモノヒドロシラン化合物のヒドロシリル化物の製造方法。
[9]
[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法によって得られた混合物を用いてオルガノオキシ化を行った後、トリオルガノオキシシラン化合物を留去するジオルガノキシモノヒドロシラン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シランカップリング剤や機能性シリコーンオイル等の各種シラン化合物の合成原料として有用なジクロロモノヒドロシラン化合物を、安価で入手容易なモノヒドロシラン化合物を用いて製造でき、加圧下で反応を行う特殊な反応装置等を必要としないため、安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の下記一般式(3)で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表されるトリクロロオルガノシラン化合物と、下記一般式(2)で表されるモノヒドロシラン化合物とを、触媒の存在下に反応させることを特徴とする。また、本発明の製造方法においては、一般式(3)で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物と共に、下記一般式(4)で表されるクロロシラン化合物が副生する。
【化1】
(式中、R1は炭素数2〜20の非置換又はケイ素原子のα位以外に置換基を有する置換一価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の非置換又は置換一価炭化水素基であり、mは1、2又は3である。)
【0017】
ここで、上記一般式(1)及び(3)におけるR1の炭素数2〜20、特に2〜10の非置換又は置換一価炭化水素基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、テキシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。
【0018】
また、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていても良く、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のオルガノオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、イソシアネート基、オルガノチオ基、オルガノスルホニル基、オルガノカルボニルオキシ基、オルガノオキシカルボニル基、ジオルガノアミノ基、ビス(トリオルガノシリル)アミノ基、アルキルシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることができる。これらの置換基を有する場合、ケイ素原子のα位の置換基による副反応を抑えるため、またトリクロロオルガノシラン化合物の入手容易性の点から、ケイ素原子のα位以外に置換基を有するものがよい。
【0019】
上記一般式(1)で表されるトリクロロオルガノシラン化合物としては、具体的には、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、オクタデカトリクロロシラン等の直鎖状アルキルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、tert−ブチルトリクロロシラン等の分岐状アルキルトリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等の環状アルキルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン等のアルケニルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、o−トリルトリクロロシラン、m−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン等のフェニル基含有トリクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、4−クロロブチルトリクロロシラン、6−クロロヘキシルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、3−ヨードプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン等のハロアルキルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン等のシアノアルキルトリクロロシラン、3−イソシアナトプロピルトリクロロシラン、3−メチルチオプロピルトリクロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン等のオルガノオキシアルキルトリクロロシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリクロロシラン、3−ビス(トリメチルシリルアミノ)プロピルトリクロロシラン、3−トリメチルシリルプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の一般式(3)で表されるジクロロモノヒドロシラン化合物としては、具体的には、エチルジクロロシラン、プロピルジクロロシラン、ブチルジクロロシラン、ヘキシルジクロロシラン、オクチルジクロロシラン、デシルジクロロシラン、ドデシルジクロロシラン、オクタデカジクロロシラン等の直鎖状アルキルジクロロシラン、イソプロピルジクロロシラン、イソブチルジクロロシラン、tert−ブチルジクロロシラン等の分岐状アルキルジクロロシラン、シクロペンチルジクロロシラン、シクロヘキシルジクロロシラン等の環状アルキルジクロロシラン、ビニルジクロロシラン、アリルジクロロシラン等のアルケニルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、o−トリルジクロロシラン、m−トリルジクロロシラン、p−トリルジクロロシラン、ベンジルジクロロシラン等のフェニル基含有ジクロロシラン、3−クロロプロピルジクロロシラン、4−クロロブチルジクロロシラン、6−クロロヘキシルジクロロシラン、3−ブロモプロピルジクロロシラン、3−ヨードプロピルジクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン等のハロアルキルジクロロシラン、2−シアノエチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジクロロシラン等のシアノアルキルジクロロシラン、3−イソシアナトプロピルジクロロシラン、3−メチルチオプロピルジクロロシラン、3−アクリロキシプロピルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジクロロシラン等のオルガノオキシアルキルジクロロシラン、3−ジメチルアミノプロピルジクロロシラン、3−ビス(トリメチルシリルアミノ)プロピルジクロロシラン、3−トリメチルシリルプロピルジクロロシラン等が挙げられる。
【0021】
更に、上記一般式(2)及び(4)におけるR2の炭素数1〜20、特に1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、テキシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。
【0022】
また、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていても良く、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のオルガノオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、イソシアネート基、オルガノチオ基、オルガノスルホニル基、オルガノカルボニルオキシ基、オルガノオキシカルボニル基、ジオルガノアミノ基、ビス(トリオルガノシリル)アミノ基、アルキルシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記一般式(2)で表されるモノヒドロシラン化合物としては、具体的には、ジクロロメチルシラン、クロロジメチルシラン、ジクロロエチルシラン、ジエチルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ジフェニルクロロシラン等のクロロシラン類、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、tert−ブチルジメチルシラン、トリイソプロピルシラン、フェニルジメチルシラン、ジフェニルメチルシラン、トリフェニルシラン等のトリオルガノシラン類が挙げられる。反応性が高く、入手が容易なことから、ジクロロメチルシラン、クロロジメチルシランを用いることが好ましい。
【0024】
一般式(2)で示される本発明のモノヒドロシラン化合物の使用量は特に限定されないが、トリクロロオルガノシラン化合物1モルに対して、好ましくは0.3〜4.0モル、更に好ましくは0.4〜3.0モル、特に好ましくは0.6〜2.0モルである。モノヒドロシラン化合物の使用量が少なすぎると、反応が充分に進行せず、ジクロロモノヒドロシラン化合物の生成量が少なくなる場合があり、モノヒドロシラン化合物の使用量が多すぎると、ジクロロモノヒドロシラン化合物が更に反応して生成するクロロジヒドロシラン化合物の副生量が増加して、収率が低下する場合がある。クロロジヒドロシラン化合物の副生量を、ガスクロマトグラフィーやNMR等により確認しながら反応を行い、モノヒドロシラン化合物の使用量を決定することができる。クロロジヒドロシラン化合物の副生量を抑えるために、反応に用いるモノヒドロシラン化合物の使用量を1.0モル以下とした場合には、未反応のトリクロロシラン化合物が残留する。
【0025】
ここで、一般式(2)で示されるモノヒドロシラン化合物としてジクロロシラン化合物を用いた場合には、反応で生成する一般式(4)で表されるクロロシラン化合物はトリクロロシラン化合物である。このため、反応の進行に従って、一般式(4)で表されるトリクロロシラン化合物と、一般式(1)で表されるトリクロロオルガノシラン化合物の競争となり、未反応の一般式(2)のモノヒドロシラン化合物が残留していても一般式(1)のトリクロロオルガノシラン化合物との反応が進行しなくなる場合がある。
【0026】
この場合、一般式(4)のクロロシラン化合物の沸点が、ジクロロモノヒドロシラン化合物(3)の沸点よりも低い場合には、未反応のモノヒドロシラン化合物(2)と生成したクロロシラン化合物(4)を常圧又は減圧下に蒸留により留去した後に、再度モノヒドロシラン化合物(2)を添加して反応を行うことにより、トリクロロオルガノシラン化合物(1)の反応率を高めることができる。
【0027】
また、反応により生成するクロロシラン化合物(4)がトリクロロシラン化合物以外の場合でも、生成したクロロシラン化合物(4)とトリクロロオルガノシラン化合物(1)が競争して、トリクロロオルガノシラン化合物(1)の反応率が上がらない場合があるため、同様の操作を行うことが好ましい場合がある。
【0028】
従って、クロロシラン化合物(4)の沸点がジクロロモノヒドロシラン化合物(3)の沸点よりも低いことが好ましい。ジクロロモノヒドロシラン化合物(3)とクロロシラン化合物(4)の沸点差は、好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、特に好ましくは30℃以上である。このような沸点差があるジクロロモノヒドロシラン化合物(3)とクロロシラン化合物(4)が生成する反応の合成原料トリクロロオルガノシラン化合物(1)とモノヒドロシラン化合物(2)の組み合わせの例としては、
3−クロロプロピルトリクロロシランとジクロロメチルシラン、
3−クロロプロピルトリクロロシランとクロロジメチルシラン、
2−シアノエチルトリクロロシランとジクロロメチルシラン、
2−シアノエチルトリクロロシランとクロロジメチルシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランとジクロロメチルシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランとクロロジメチルシラン、
フェニルトリクロロシランとジクロロメチルシラン、
フェニルトリクロロシランとクロロジメチルシラン、
フェニルトリクロロシランとトリエチルシラン、
フェニルトリクロロシランとtert−ブチルジメチルシラン
等の組み合わせが挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる触媒としては、4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩が挙げられる。具体的には、メチルトリブチルアンモニウムクロリド、メチルトリブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、トリエチルアンモニウムクロリド、トリプロピルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラフェニルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩が挙げられる。反応中、蒸留精製中に分解反応を起こしにくいことから、4級ホスホニウム塩を用いることがより好ましい。
【0030】
本発明の触媒の使用量は特に限定されないが、式(1)のトリクロロオルガノシラン化合物1モルに対して好ましくは0.00001〜0.5モル、更に好ましくは0.001〜0.2モル、特に好ましくは0.005〜0.05モルである。0.00001モルよりも少ないと、反応が充分に進行しない場合がある一方、0.5モルより多くても反応速度の向上がなく、経済性に乏しい場合がある。
【0031】
本発明の反応温度は特に制限されないが、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは50〜150℃、特に好ましくは90〜130℃である。20℃より低い温度では、反応が充分進行しない場合があり、200℃より高い場合には、触媒の分解が起こり、反応が進行しなくなる場合がある。反応時間は、1〜30時間、特に2〜15時間が好ましい。
【0032】
本発明の反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が挙げられる。また、これらの溶媒は1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。本発明の反応に用いるトリクロロオルガノシラン化合物及びモノヒドロシラン化合物の沸点が低く、常圧では反応が進行するのに必要な温度を達成できない場合には、高沸点の溶媒中で反応を行うことにより、反応を進行させることができる。
【0033】
本反応は、常圧下又は加圧下に実施することができるが、特殊な反応装置を必要としないことから、常圧下で行うことが好ましい。
【0034】
本発明の反応雰囲気としては特に限定されないが、クロロシラン化合物の加水分解を避けるため、また安全上から、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下に行うことが好ましい。
【0035】
本発明で得られた反応液を精製して、目的のジクロロモノヒドロシラン化合物を得る方法は特に制限されないが、蒸留により精製することが好ましい。蒸留精製を行う場合に、反応液には触媒成分が溶解した状態であるため、蒸留中に蒸留釜内の温度が高くなると、触媒で用いた4級アンモニウム塩が分解して3級アミン化合物が留分中に混入する場合や、ジクロロモノヒドロシラン化合物が不均化反応により、クロロジヒドロシラン化合物とトリクロロシラン化合物が生成する場合がある。従って、減圧下に低温にて、好ましくは反応温度以下の温度(例えば、30〜90℃)にて蒸留を行って、反応混合物を触媒と分離して粗蒸留液を得た後に精留を行い、目的のジクロロモノヒドロシラン化合物を分離することができる。
【0036】
粗蒸留液の蒸留精製では、ジクロロモノヒドロシラン化合物(3)を反応液中未反応の他の成分と分離して高純度の化合物を得ることもできるし、未反応のモノヒドロシラン化合物(2)及びモノヒドロシラン化合物(2)が反応して生成したクロロシラン化合物(4)、副生したクロロジヒドロシラン化合物を分離し、未反応のトリクロロオルガノシラン化合物(1)とは分離しないで蒸留留分を得て、次工程に使用した後にトリクロロオルガノシラン化合物(1)を分離することもできる。例えば、ジクロロモノヒドロシラン化合物(3)を、次工程でヒドロシリル化反応に使用する場合であって、ヒドロシリル化生成物が蒸留可能な物質である場合には、トリクロロオルガノシラン化合物(1)とヒドロシリル化生成物の沸点差がトリクロロオルガノシラン化合物(1)とジクロロモノヒドロシラン化合物(3)との沸点差よりも大きくなる場合があり、トリクロロオルガノシラン化合物(1)を分離しやすくなる場合がある。
【0037】
また、本発明で得られたジクロロモノヒドロシラン化合物のクロル基をオルガノオキシ基に変化させてジオルガノオキシモノヒドロシラン化合物とした後に、ヒドロシリル化反応や、各種シリコーン化合物の製造原料として利用することができる。この場合にも、ジクロロモノヒドロシラン化合物とトリクロロシラン化合物の混合物を用いてオルガノオキシシラン混合物とした場合に、ジオルガノオキシモノヒドロシラン化合物としてトリオルガノオキシシラン化合物の沸点差が、ジクロロモノヒドロシラン化合物とトリクロロシラン化合物の沸点差より大きくなり、精製が容易になる場合がある。オルガノオキシ基がメトキシ基よりも分子量が大きい場合に、そのようなオルガノオキシシラン化合物とした後の方が、沸点差が大きくなる。従って、ジクロロモノヒドロシラン化合物とトリクロロシラン化合物の混合物として分離して、次工程に利用することができる。
【0038】
ジクロロモノヒドロシラン化合物とトリクロロシラン化合物を混合物として他の反応液中の成分と分離することにより、蒸留が容易になり、蒸留時のロスも少なくなり、ジクロロモノヒドロシラン化合物の蒸留収率が向上して好ましい。特に、反応により生成する上記一般式(4)のクロロシラン化合物が、ジクロロモノヒドロシラン化合物の沸点より低い場合には、未反応のモノヒドロシラン化合物(2)、クロロシラン化合物(4)及び副生するクロロジヒドロシラン化合物を蒸留分離した残りのジクロロモノヒドロシラン化合物とトリクロロシラン化合物の混合物をそのまま次工程の反応に利用することもできる。
【0039】
このように、蒸留精製を行う工程でも、ジクロロモノヒドロシラン化合物(3)の沸点よりもクロロシラン化合物(4)の沸点が低いことが好ましい。ジクロロモノヒドロシラン化合物(3)とクロロシラン化合物(4)の沸点差は、10℃以上であることが好ましく、更に好ましくは20℃以上であり、特に好ましくは30℃以上である。このような、沸点差にあるジクロロモノヒドロシラン化合物(3)とクロロシラン化合物(4)が生成する反応の合成原料である、トリクロロオルガノシラン化合物(1)とモノヒドロシラン化合物(2)の組み合わせの例としては、上記したものが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び参考例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
参考例1]
フェニルジクロロシランの製造
500mLの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、フェニルトリクロロシラン211.5g(1.0モル)と、テトラブチルホスホニウムクロリド5.9g(0.02モル)を仕込んだ。内温を100〜120℃に温調しながら、トリエチルシラン69.0g(0.6モル)を2時間掛けて滴下した後、そのままの温度で1時間熟成した。得られた反応液を減圧下に、内温が90℃を超えないよう調整しながら、反応液混合物を流出させて、触媒と分離した。得られた留分を、精留することにより、フェニルジクロロシラン90.3g(0.508モル、トリエチルシランに対する収率84.7%)及びトリエチルクロロシラン88.2g(0.585モル、トリエチルシランに対する収率97.5%)を得た。
【0042】
参考例2]
フェニルジクロロシランの製造
500mLの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、フェニルトリクロロシラン211.5g(1.0モル)と、テトラブチルホスホニウムクロリド2.9g(0.01モル)を仕込んだ。内温を80〜110℃に温調しながら、ジクロロメチルシラン207.0g(1.8モル)を4時間掛けて滴下した後、そのままの温度で2時間熟成した。得られた反応液を減圧下に蒸留を行い、未反応のジクロロメチルシラン、反応で生成したトリクロロメチルシラン等の低沸点成分をドライアイストラップで捕集した後に、内温が90℃を超えないよう調整しながら、フェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシランの混合物を流出させて、触媒と分離した。得られた留分を精留して、フェニルジクロロシラン79.7g(0.45モル、フェニルトリクロロシランに対する収率45%)を得た。
【0043】
参考例3]
3−クロロプロピルジクロロシランの製造
1,000mLの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、3−クロロプロピルトリクロロシラン742.0g(3.5モル)とテトラブチルホスホニウムクロリド20.6g(0.07モル)を仕込んだ。内温を95〜120℃に温調しながら、クロロジメチルシラン264.9g(2.8モル)を10時間掛けて滴下した後、そのままの温度で3時間熟成した。得られた反応液を減圧下に蒸留を行い、未反応のクロロジメチルシラン、反応で生成したジクロロジメチルシラン等の低沸点成分をドライアイストラップで捕集した後に、内温が90℃を超えないよう調整しながら、3−クロロプロピルクロロシラン、3−クロロプロピルジクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物を流出させて、触媒と分離した。得られた留分を精留して、3−クロロプロピルジクロロシラン357.8g(2.02モル、クロロジメチルシランに対する収率72.0%)を得た。
【0044】
参考例4]
3−クロロプロピルジクロロシランの製造
1,000mLの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、3−クロロプロピルトリクロロシラン565.1g(2.67モル)とテトラブチルホスホニウムクロリド7.9g(0.027モル)を仕込んだ。内温を80〜120℃に温調しながらジクロロメチルシラン460.6g(4.0モル)を6時間掛けて滴下した後、そのままの温度で2時間熟成した。得られた反応液を減圧下に蒸留を行い、未反応のジクロロメチルシラン、反応で生成したジクロロジメチルシラン等の低沸点成分をドライアイストラップで捕集した後に、内温が90℃を超えないよう調整しながら、3−クロロプロピルクロロシラン、3−クロロプロピルジクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物を流出させて、触媒と分離した。得られた留分を精留して、3−クロロプロピルジクロロシラン227.5g(1.28モル、クロロジメチルシランに対する収率48.0%)を得た。
【0045】
[実施例
3−クロロプロピルジクロロシランの製造
200mLの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、3−クロロプロピルトリクロロシラン106.0g(0.5モル)とテトラブチルホスホニウムクロリド2.9g(0.01モル)を仕込んだ。内温を95〜120℃に温調しながらクロロジメチルシラン37.8g(0.4モル)を9時間掛けて滴下した後、そのままの温度で3時間熟成した。得られた反応液を減圧下に蒸留を行い、未反応のクロロジメチルシラン、反応で生成したジクロロジメチルシラン等の低沸点成分をドライアイストラップで捕集した後に、内温が90℃を超えないよう調整しながら、3−クロロプロピルクロロシラン、3−クロロプロピルジクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物を流出させて、触媒と分離した。得られた留分を蒸留して、3−クロロプロピルジクロロシランと3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物110.8g(3−クロロプロピルジクロロシランの純度51.9%、純分57.5g、0.324モル、クロロジメチルシランに対する収率81.0%)を得た。
【0046】
実施
3−クロロプロピルジクロロシランと3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物を用いたヒドロシリル化反応
100mLの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、アリルクロライド11.1g(0.145モル)と塩化白金酸の2質量%イソプロパノール溶液28.3mg(2.9×10-6モル)を仕込んだ。内温を45〜110℃に温調しながら、3−クロロプロピルジクロロシランと3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物49.8g(3−クロロプロピルジクロロシランの純度51.9%、純分25.8g、0.145モル)を4.5時間掛けて滴下した後、そのままの温度で1時間熟成した。3−クロロプロピルトリクロロシランに伴う副生成物は生成しなかった。反応液を減圧蒸留して、ビス(3−クロロプロピル)ジクロロシラン22.8g(0.09モル、収率61.9%)を得た。蒸留により、3−クロロプロピルトリクロロシランは容易に分離することができた。
これにより、3−クロロプロピルトリクロロシランを含有する3−クロロプロピルジクロロシランを用いて、ヒドロシリル化反応を行うことができた。
【0047】
実施
3−クロロプロピルジエトキシシランの製造
300mLの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、3−クロロプロピルジクロロシランと3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物95.5g(3−クロロプロピルジクロロシランの純度93.0%、純分88.8g、0.5モル)を仕込んだ。氷水でフラスコを冷却しながら、オルトギ酸トリエチル88.9g(0.6モル)を3時間掛けて滴下した後、内温を50℃まで上げて2時間熟成した。得られた反応液を蒸留して、3−クロロプロピルジエトキシシラン83.6g(0.425モル、収率85.0%)を得た。3−クロロプロピルトリクロロシランとオルトギ酸トリエチルの反応により生成した3−クロロプロピルトリエトキシシランは、蒸留により容易に分離することができた。
これにより、3−クロロプロピルジクロロシランと3−クロロプロピルトリクロロシランの混合物を用いても、オルガノオキシシランの合成が可能であり、3−クロロプロピルトリクロロシラン由来の不純物も容易に分離可能であった。