(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、上記本発明1)について詳しく説明するが、本発明の実施の態様には次の2)〜5)も含まれるので、これらについても併せて説明する。
2) 前記共重合体が、その構成モノマーとして更に、下記一般式(3)〜一般式(6)から選ばれた少なくとも一種のモノマーを含むことを特徴とする1)に記載のインクジェット記録用インク。
<一般式(3)>
【化3】
R3は水素原子又はメチル基、A3は−CO−O−、又は−CO−NH−、B3は炭素数1〜4のアルキレン基、Mは水素原子、無機カチオン又は有機カチオンを表す。
<一般式(4)>
【化4】
R4は水素原子又はメチル基、A4は−CO−O−、又は−CO−NH−、B4は炭素数1〜12のアルキル基を表す。
<一般式(5)>
【化5】
R5は水素原子又はメチル基、A5は−CO−O−、又は−CO−NH−、B5は炭素数1〜4のアルキレン基、Dは同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
<一般式(6)>
【化6】
R6は水素原子又はメチル基、A6は−CO−O−、又は−CO−NH−、B6は炭素数1〜4のアルキレン基、Eは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、lは1〜100の整数を表す。
3) 1)又は2)に記載のインクジェット記録用インクを容器中に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
4) 3)に記載のインクカートリッジを搭載したことを特徴とするインクジェット記録装置。
5) 1)又は2)に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像が形成されたことを特徴とする画像形成物。
【0010】
本発明のインクジェット記録用インク(以下、インクということもある)に用いる共重合体は、その構成モノマーとして、少なくとも前記一般式(1)及び一般式(2)で表されるモノマーを含むことを特徴とする。
共重合体中の一般式(1)のモノマーからなる部位は、疎水部分として炭素数4〜23のアルキレン基、親水部分としてカルボン酸基を有しており、pHの変動により親水性と疎水性が変化する(pH応答性がある)ので、pH7〜8付近を変動点として、酸性側では疎水性、アルカリ側では親水性を示す。
従って、前記共重合体をアルカリ性のインクに使用し、受容紙上(pH7付近)に着弾した際のインクのpH変動を利用して共重合体を疎水性とし、インクを受容体の表面に留まらせて画像濃度を向上させる効果が期待できる。しかしながら、受容紙との接触によるpH変動は、酸性紙又は前処理液などにより受容紙を酸性処理した場合でなければせいぜい1以下であり、また親水化速度も遅く、更に共重合体自身が疎水化しても、顔料を巻き込んで凝集しないため、画像濃度向上効果は十分満足できるレベルではない。
【0011】
そこでこの問題を解決すべく検討したところ、一般式(1)のモノマーと共に、一般式(2)のモノマーを用いることにより、画像濃度を向上させ且つ保存安定性を確保できることが分かった。これらのモノマーを組み合わせると何故画像濃度が向上するかについては、以下のように推測される。
共重合体中の一般式(2)のモノマーからなる部位は、疎水部分としてフェニレン基及びアルキレン基、親水部分としてカルボン酸基を有しており、一般式(1)のモノマーからなる部位よりも疎水性が高い。また、一般式(1)のモノマーからなる部位と同様に、pHの変動により親水性と疎水性が変化し(pH応答性がある)、pH11〜12付近を変動点として、酸性側では疎水性、アルカリ側では親水性を示す。
従って、これらの2種のモノマーを組み合わせることにより、親水性と疎水性が変化するpHを適正範囲にコントロールできると共に、一般式(2)のモノマーの芳香族環は、顔料の構造に類似しているため顔料に強く吸着でき、インクが受容体へ着弾しpH変動により疎水化する際に、顔料を巻き込んで凝集させるため、受容体の表面に顔料がより多く留まり、画像濃度が向上すると考えられる。
【0012】
一般式(1)のモノマーと一般式(2)のモノマーの構成比率は、1:9〜9:1が好ましく、より好ましくは3:7〜7:3である。一般式(2)のモノマーの比率が大きくなると、より画像濃度向上効果が上がるが、保存安定性が低下する傾向にある。また一般式(1)のモノマーの比率が大きくなると、画像濃度向上効果は下がるが、保存安定性は向上する傾向にある。なお、一般式(1)のモノマーを2種類以上、一般式(2)のモノマーを2種類以上選択して使用することも可能である。
更に本発明のインクでは、共重合体の構成モノマーとして一般式(3)〜一般式(6)のモノマーから選ばれた少なくとも一種を加えると、保存安定性が一層向上する。特に、一般式(3)のモノマーは効果が高い。
一般式(1)及び一般式(2)のモノマーと、一般式(3)〜一般式(6)のモノマーの構成比率は、8:2〜9.9:0.1が好ましく、より好ましくは8:2〜9:1である。一般式(3)〜一般式(6)のモノマーの比率が高くなると、親水性が高くなって、画像濃度向上効果が低下する傾向にある。
【0013】
上記一般式(1)〜一般式(6)の各モノマーについて更に詳細に説明する。
一般式(1)のモノマーは、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、アクリルアミド、アルキル置換アクリルアミドのいずれかに脂肪酸が結合した化合物、又は末端に炭素−炭素二重結合を有する脂肪酸である。R1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。A1は−CO−O−又は−CO−NH−である。B1は炭素数4〜23のアルキレン基であり、アルキレン基は直鎖状でも分岐状でも良い。Mは水素原子、無機カチオン又は有機カチオンであり、無機又は有機カチオンとしてはカルボン酸塩を形成するものであればよく、例えば無機カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオン、有機カチオンとしては、アンモニウムイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
特にB1のアルキレン基の炭素数は重要であり、4〜23とする必要があるが、好ましくは7〜11である。炭素数が大きいほど画像濃度向上効果が大きく、炭素数が小さいほどインクの保存安定性が向上する傾向にある。
【0014】
一般式(1)のモノマーとしては、アクリルアミド骨格のアミノ部位に長鎖アルキル鎖のカルボン酸がついているものが好ましく、例えば次のようなものが挙げられるが、特に11−(メタ)アクリルアミドウンデカン酸、12−(メタ)アクリルアミドドデカン酸が好ましい。
5−(メタ)アクリルアミド吉草(ペンタン)酸、
6−(メタ)アクリルアミドヘキサン酸
7−(メタ)アクリルアミドヘプタン酸
8−(メタ)アクリルアミドオクタン(オクチル)酸
9−(メタ)アクリルアミドノナン酸
10−(メタ)アクリルアミドデカン酸
11−(メタ)アクリルアミドウンデカン酸
12−(メタ)アクリルアミドドデカン酸
14−(メタ)アクリルアミドテトラデカン酸
15−(メタ)アクリルアミドペンタデカン酸
16−(メタ)アクリルアミドヘキサデカン酸
17−(メタ)アクリルアミドヘプタデカン酸
18−(メタ)アクリルアミドオクタデカン酸
19−(メタ)アクリルアミドノナデカン酸
20−(メタ)アクリルアミドノナエイコ酸
22−(メタ)アクリルアミドドコサン酸
23−(メタ)アクリルアミドトリコサン酸
【0015】
一般式(2)のモノマーは、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、アクリルアミド、アルキル置換アクリルアミドのいずれかに、ベンゼン環を有するカルボン酸が結合した化合物、又は末端が炭素−炭素二重結合である置換基をパラ位に備えたベンゼン環を有するカルボン酸である。R2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。A2は直接結合、−CO−O−又は−CO−NH−である。B2は炭素数1〜2のアルキレン基である。
Mは水素原子、無機カチオン又は有機カチオンであり、無機及び有機カチオンとしてはカルボン酸塩を形成するものであればよく、例えば無機カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオン、有機カチオンとしては、アンモニウムイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)のモノマーの好ましい例としては、下記化合物A〜Eが挙げられる。なお、これらの式中、R7はH又はCH
3である。
<化合物A> (メタ)アクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステル
【化7】
<化合物B> (メタ)アクリル酸−p−ヒドロキシ安息香酸エステル
【化8】
<化合物C> (メタ)アクリル酸−p−ヒドロキシフェニル酢酸エステル
【化9】
<化合物D> (メタ)アクリル酸−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸
エステル
【化10】
<化合物E> p−(メタ)アクリルアミド安息香酸
【化11】
また、炭素−炭素二重結合に直接ベンゼン環を有するカルボン酸が結合したものとしては、下記化合物Fが挙げられる。
<化合物F> p−エテニル安息香酸
【化12】
【0017】
一般式(3)のモノマーは、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、アクリルアミド、アルキル置換アクリルアミドのいずれかに、アルキルスルホン酸が結合した化合物、又は末端に炭素−炭素二重結合を有するスルホン酸である。R3は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。A3は−CO−O−又は−CO−NH−である。B3は炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基は直鎖状でも分岐状でも良い。
Mは水素原子、無機カチオン又は有機カチオンであり、無機及び有機カチオンとしてはスルホン酸塩を形成するものであればよく、例えば無機カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、等のアルカリ金属イオン、有機カチオンとしては、アンモニウムイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
一般式(3)のモノマーの好ましい例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−メタクリロキシプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0018】
一般式(4)のモノマーは、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、アクリルアミド、アルキル置換アクリルアミドのいずれかに、アルキル基が結合した化合物である。R4は水素原子又はメチル基を示し、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。A4は−CO−O−又は−CO−NH−である。B4は炭素数1〜12のアルキル基であり、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。
一般式(4)のモノマーの例としては、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2,2,2−トリフルオロプロピル、メタクリル酸−2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−ジメチルアミノエチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、アクリル酸ラウリルエステル等が挙げられる。
【0019】
一般式(5)のモノマーは、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、アクリルアミド、アルキル置換アクリルアミドのいずれかに、アルキルアミンが結合した化合物、又は末端に炭素−炭素二重結合を有するアミン化合物である。R5は水素原子又はメチル基であり、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。A5は−CO−O−又は−CO−NH−である。B5は炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基は直鎖状でも分岐状でも良い。Dは同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である
一般式(5)のモノマーの例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、N,N−ジメチルアミノアクリルアミドメチルクロライド、2−アクリルアミド−(N,N−ジメチルアミノ)エチル等が挙げられる。
【0020】
一般式(6)のモノマーは、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、アクリルアミド、アルキル置換アクリルアミドのいずれかに、又はビニル骨格に直接、ポリオキシアルキレン基が結合した化合物である。R6は水素原子又はメチル基であり、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。A6は−CO−O−又は−CO−NH−である。B6は炭素数1〜4のアルキレン基であり、Eは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。lは1〜100の整数である。
一般式(6)のモノマーの例としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0021】
上記共重合体の重合は公知の方法で行えばよく、必要に応じて更に一般式(1)〜一般式(6)以外のモノマーを加えて共重合させてもよい。
共重合体の平均分子量は特に限定されず、オリゴマー以上の重合度を有していれば目的とする効果を発揮できるが、特に重量平均分子量3000〜10万程度が好ましい。分子量は、重合時間、温度、重合禁止剤などによって制御が可能である。
インク中の上記共重合体の添加量はモノマー構成によって適宜調整する必要があるが、顔料の重量に対し0.01〜3重量%の範囲内とすることが好ましい。
また、上記共重合体は、インク中に添加剤として配合するよりも、顔料の分散剤として使用する方が、顔料の周囲を覆うことができ、より画像濃度が向上するので好ましい。
【0022】
本発明のインクは色材として顔料を含有する。光による褪色や水系インクの面から顔料を用いる。
また、必要に応じて、樹脂、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤は顔料分散体の添加剤と共通しているので、詳細については後述する。
【0023】
黒色顔料としてはカーボンブラックが好ましい。その例としてはケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、カーボンブラック表面を酸化処理やアルカリ処理したものも好ましい。樹脂で被覆したり、グラフト処理やカプセル化処理したカーボンブラックも使用可能である。
またカーボンブラックとしては、BET比表面積100〜400m
2/gで、一次粒子径10〜30nmのものが、印字画像の濃度が高く安定しており特に好ましい。
【0024】
マゼンタ顔料としては、ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン顔料としては、ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、バットブルー4、60等が挙げられる。
イエロー顔料としては、ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180等が挙げられる。
なお、イエロー顔料としてピグメントイエロー74、マゼンタ顔料としてピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19、シアン顔料としてピグメントブルー15を用いることにより、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクを得ることができる。
【0025】
通常の場合、顔料は顔料分散体としてインク中に配合する。顔料分散体中の顔料濃度は0.1〜50重量%が好ましい。
顔料を分散させるための分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤や高分子型の分散剤を使用することが可能である。
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0026】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0027】
ノニオン界面活性剤としては、次のようなものが挙げられる。
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル等のエーテル系
・ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系
・2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系
【0028】
顔料がカーボンブラックの場合には、分散能力を考えるとアニオン界面活性剤のナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が最も好ましい。特に顔料固形分が20重量%以上の場合には、他の分散剤と比較してその効果は顕著である。しかしながら、画像濃度向上を考えた場合は、前述したように、本発明の共重合体を分散剤として用いた方がよい。
分散剤の添加量は顔料の種類により適宜選択する必要があるが、顔料1重量部に対し、0.005〜5重量部が好ましい。顔料がカーボンブラックの場合には、顔料1重量部に対し0.01〜2重量部でも実用上問題のない均一な分散が得られるが、最も好ましいのは顔料1重量部に対し0.02〜0.5重量部である。0.01〜2重量部の範囲であれば、顔料の分散性が向上すると共に顔料分散体やインクの経時安定性が向上する傾向にある。特に0.02〜0.5重量部の範囲では、顔料分散体及びインクの経時安定性が最も向上する。
【0029】
顔料分散体の分散媒としては水を用いるが、必要に応じて各種有機溶媒を併用してもよい。例えば、水溶性有機溶剤としてメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン誘導体、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0030】
顔料分散体には、必要に応じて、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。
前記湿潤剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤などが挙げられる。これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0031】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、などが挙げられる。
【0032】
含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン、などが挙げられる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、などが挙げられる。
【0033】
その他の湿潤剤としては糖類が好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖〔例えば、一般式:HOCH
2(CHOH)nCH
2OH(n=2〜5の整数)で表わされる糖アルコールなど〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
上記湿潤剤の中でも、保存安定性、吐出安定性の点から、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0034】
顔料と湿潤剤との配合比は、ヘッドからのインク吐出安定性に大きく影響する。顔料固形分が多いのに湿潤剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことがある。
インク中の湿潤剤の含有量は20〜35重量%程度が好ましく、22.5〜32.5重量%がより好ましい。この範囲であれば、インクの乾燥性、保存試験、信頼性試験などの結果が非常に良好である。含有量が20重量%未満では、ノズル面上でインクが乾燥し易くなって吐出不良が生じることがあり、35重量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣るため普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0035】
前記界面活性剤としては、顔料の種類や湿潤剤との組み合わせに応じて、分散安定性を損なわず、表面張力が低く、レベリング性の高いものを用いる。例えばフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられるが、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素が置換した炭素数が2〜16のものが好ましく、4〜16のものがより好ましい。フッ素置換炭素数が2未満では、フッ素の効果が得られないことがあり、16を超えると、インク保存性などの問題が生じることがある。
フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、特に好ましい。
【0036】
パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH
4、NH
3CH
2CH
2OH、NH
2(CH
2CH
2OH)
2、NH(CH
2CH
2OH)
3などが挙げられる。
【0037】
フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばDuPont社製のFS−300、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のPF−151Nなどが挙げられる。
【0038】
シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高pHでも分解しないものが好ましい。例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては適宜合成したものを用いても市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社などから容易に入手できる。
【0039】
界面活性剤のインク中の含有量は、0.01〜3.0重量%が好ましく、0.5〜2重量%がより好ましい。含有量が0.01重量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0重量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0040】
前記浸透剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.2〜5.0重量%のポリオール化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。このようなポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが特に好ましい。
【0041】
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類などが挙げられる。
【0042】
浸透剤のインク中の含有量は、0.1〜4.0重量%が好ましい。含有量が0.1重量%未満では、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0重量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりし易くなったり、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0043】
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、などが挙げられる。pHが7未満又は11を超えると、インクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きくなり、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオール等が挙げられる。
アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
ホスホニウムの水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0044】
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
【0045】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0046】
本発明のインクは、公知の方法、例えば顔料分散体、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤等を、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子を濾過し、必要に応じて脱気することによって得られる。
インク中の顔料濃度はインク全量に対して0.01〜30重量%が好ましい。0.01重量%以上であれば、画像濃度が低くて印字の鮮明さに欠けるようなことはなく、30重量%以下であれば、インクの粘度が高くなりすぎたりノズルの目詰まりが発生したりすることはない。
水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して50重量%以下、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは10〜35重量%である。
【0047】
<画像形成方法、画像形成装置(インクジェット記録装置)>
本発明のインクを用いて画像を形成する際には、インクに刺激(エネルギー)を印加し飛翔させて記録媒体に画像を形成するインク飛翔工程を設ける。画像濃度、裏抜け、にじみ等の画像品質向上のため、前記媒体にインクを付着させる前後の少なくとも一方において、前処理液又は後処理液を塗布する工程を設けることも可能である。
【0048】
−インク飛翔工程及びインク飛翔手段−
インク飛翔工程は、インクに刺激(エネルギー)を印加して飛翔させ、記録媒体に記録を行う工程である。
インク飛翔手段は、インクに刺激(エネルギー)を印加して飛翔させ、記録媒体に記録を行う手段である。該インク飛翔手段としては特に制限はなく、例えばインク吐出用の各種のノズル、などが挙げられる。
本発明のインクジェット記録装置においては、インクジェットヘッドの液室部、流体抵抗部、振動板、ノズル部材の少なくとも一部がシリコン及びニッケルの少なくとも一方を含む材料から形成されることが好ましい。またインクジェットノズルの直径は、30μm以下が好ましく、1〜20μmがより好ましい。
【0049】
前記刺激(エネルギー)は、例えば刺激発生手段により発生させることができる。該刺激としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動及び光などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適である。
なお、前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられる。具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等、などが挙げられる。
【0050】
インクの飛翔の態様には特に制限はなく、前記刺激の種類等に応じて異なるが、例えば刺激が「熱」の場合には、記録ヘッド内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーによりインクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔からインクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。また、刺激が「圧力」の場合には、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加して圧電素子を撓ませ、圧力室の容積を縮小させて、前記記録ヘッドのノズル孔からインクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
飛翔させるインクの液滴の大きさは、例えば、3×10
−15〜40×10
−15m
3(3〜40pL)が好ましく、その吐出噴射の速さは、5〜20m/sが好ましく、その駆動周波数は、1kHz以上が好ましく、その解像度は300dpi以上が好ましい。
なお、前記各手段は制御手段により制御するが、該制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0051】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクを容器中に収容し、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋を有するものなどが好適である。
図1は、本発明のインクカートリッジのインク袋241の一例を示す概略図であり、
図2は、
図1のインク袋241をカートリッジケース244内に収容したインクカートリッジ200を示す概略図である。
図1に示すように、インク注入口242からインクをインク袋241内に充填し、該インク袋中に残った空気を排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺してインクを装置に供給する。インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成する。このインク袋241は、
図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース244内に収容し、インクカートリッジ200として、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いる。本発明のインクカートリッジ201は、後述する本発明のインクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることが特に好ましい。
【0052】
続いて、前記インクカートリッジを搭載した本発明のインクジェット記録装置の一例について、図面を参照しつつ説明する。
図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に装填され画像が形成(記録)された用紙をストックするための排紙トレイ103と、インクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ200の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。111は上カバー、112は前カバーの前面である。
【0053】
図4に示すように、装置本体101内には、左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータによって移動走査する。
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0054】
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、インク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部104に装填されたインクカートリッジ201からインクが供給されて補充される。
【0055】
一方、給紙トレイ102の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ143)、及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、用紙142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられる。また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
【0056】
搬送ベルト151は無端状ベルトであり、搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト151は、例えば抵抗制御を行っていない厚み40μm程度の樹脂材、例えばテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材161が配置されている。なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配されている。
【0057】
装置本体101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0058】
このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト157が帯電されており、用紙142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。
そして、サブタンク135内のインクの残量ニヤエンドが検知されると、インクカートリッジ201から所要量のインクがサブタンク135に補給される。
【0059】
このインクジェット記録装置では、インクカートリッジ201中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ201における筐体を分解して内部のインク袋241だけを交換することができる。また、インクカートリッジ201は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、装置本体101の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納する場合、あるいは装置本体101の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ201の交換を容易に行うことができる。
なお、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
【0060】
<画像形成物>
上記インクカートリッジを搭載したインクジェット記録装置を用いて記録媒体に印字し画像形成物を得ることができる。印字方法としては連続噴射型やオンデマンド型があり、オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は重量基準である。また、表中の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーHLC−8220 GPC(東ソー社製)を用いて算出した重量平均分子量である。カラムには、Shodex Asahipak GF−7M HQ(昭和電工社製)を用い、移動相には過塩素酸リチウムを100mM添加したメタノールを用い、標準物質にはポリエチレンオキシドを用いた。得られた重量平均分子量はポリエチレンオキシド換算となっている。
【0062】
実施例1
<実施例1の共重合体の合成>
5−メタクリルアミド吉草酸/メタクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステル共重合体の合成例
5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウム1.83g(9mmol)、メタクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステル2.01g(9mmol)、水酸化ナトリウム360mg(9mmmol)、アゾビスイソブチロニトリル7.4mg(0.045mmol)をメタノール32.4mLと水3.6mLの混合溶媒に溶解した。30分間アルゴンガスを吹き込んで脱気し、セプタムで容器に蓋をし、60℃で12時間重合させた。重合反応終了後に大過剰のエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引濾過で回収した。この沈殿物を水に溶解し、1週間純水に対して透析を行い、凍結乾燥を行って、5−メタクリルアミド吉草酸/メタクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステル共重合体を得た。重量平均分子量は35000であった。
<実施例1の顔料分散体1の作成>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型バッチ式)により、0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で5分間分散した。次いで、遠心分離機(久保田商事社製Model−3600)により粗大粒子を分離し、平均粒子径約120nm、標準偏差51.2nmのカーボンブラック顔料分散体1を得た。
(顔料分散体処方)
・カーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、NIPEX150)
20部
・ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩(10%水溶液) 30部
・蒸留水 50部
<実施例1のインクの作成>
下記処方の材料を混合撹拌した後、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(40%水溶液)を添加し、インクpHを9.5に調整し、30分間混合攪拌して、実施例1のインクを作成した。
(インク処方)
・顔料分散体1(顔料濃度20%) 40.0部
・実施例1の共重合体の20%水溶液 20.0部
・グリセリン 5.5部
・1,3−ブタンジオール 16.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・フッ素系界面活性剤(固形分40%) 2.5部
(DuPont社製:Zonyl FS−300)
・フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体(固形分50%) 6.0部
(旭硝子社製:ルミフロンFE4300、平均粒子径150nm、
MFT30℃以下)
・蒸留水 7.5部
【0063】
実施例2〜11
<実施例2〜11の共重合体の合成>
実施例1の共重合体の合成で用いた5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウム及びメタクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステルに代えて、表1の実施例2〜11の欄に示す構成モノマーXのナトリウム塩及び構成モノマーYを用い(ただし、実施例2〜7の構成モノマーYは同じ)、添加量が各々9mmolになるように調整した点以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11の共重合体を得た。各共重合体の重量平均分子量を表1に示す。
<実施例2〜11の顔料分散体の作成>
カーボンブラックの種類を表1の実施例2〜11の各欄に示すものに変えた点以外は、顔料分散体1の作成と同様にして、顔料分散体2〜11を得た。
<実施例2〜11のインクの作成>
実施例1の共重合体及び顔料分散体1に代えて、実施例2〜11の共重合体及び顔料分散体2〜11を用いた点以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11のインクを作成した。
【0064】
実施例12
<実施例12の共重合体の合成>
実施例1の共重合体の合成で用いた5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウムに代えて、表1の実施例12の欄に示す構成モノマーXのナトリウム塩を用い、モノマーXが1.8mmol、モノマーYが14.4mmolになるように調整した点以外は、実施例1と同様にして、実施例12の共重合体を得た。この共重合体の重量平均分子量を表1に示す。
<実施例12の顔料分散体12の作成>
カーボンブラックの種類を表1の実施例12の欄に示すものに変えた点以外は、顔料分散体1の作成と同様にして、顔料分散体12を得た。
<実施例12のインクの作成>
実施例1の共重合体及び顔料分散体1に代えて、実施例12の共重合体及び顔料分散体12を用い、インクpHを11.5に調整した点以外は、実施例1と同様にして、実施例12のインクを作成した。
【0065】
実施例13〜15
<実施例13〜15の共重合体の合成>
実施例1の共重合体の合成で用いた5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウムに代えて、表1の実施例13〜15の欄に示す構成モノマーAのナトリウム塩を用い、モノマーの合計が18mmolで、表1に示すモノマー比になるように調整した点以外は、実施例1と同様にして、実施例13〜15の共重合体を得た。これらの共重合体の重量平均分子量を表1に示す。
<実施例13〜15の顔料分散体13〜15の作成>
カーボンブラックの種類を表1の実施例13〜15の各欄に示すものに変えた点以外は、顔料分散体1の作成と同様にして、顔料分散体13〜15を得た。
<実施例13〜15のインクの作成>
実施例1の共重合体及び顔料分散体1に代えて、実施例13〜15の共重合体及び顔料分散体13〜15を用い、インクpHを表1に示すように調整した点以外は、実施例1と同様にして、実施例13〜15のインクを作成した。
【0066】
実施例16〜20
<実施例16〜20の共重合体の合成>
実施例1の共重合体の合成で用いた5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウム及びメタクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステルに代えて、表1の実施例16〜20の欄に示す構成モノマーXのナトリウム塩、構成モノマーY及び構成モノマーZを用い、モノマーの合計が18mmolで、表1に示すモノマー比になるように調整した点以外は、実施例1と同様にして、実施例16〜20の共重合体を得た。これらの共重合体の重量平均分子量を表1に示す。
<実施例16〜20の顔料分散体16〜20の作成>
カーボンブラックの種類を表1の実施例16〜20の各欄に示すものに変えた点以外は、顔料分散体1の作成と同様にして、顔料分散体16〜20を得た。
<実施例16〜20のインクの作成>
実施例1の共重合体及び顔料分散体1に代えて、実施例16〜20の共重合体及び顔料分散体16〜20を用いた点以外は、実施例1と同様にして、実施例16〜20のインクを作成した。
【0067】
実施例21
実施例1におけるカーボンブラックを、ピグメントブルー15:3〔大日精化社製、クロモファインブルー(シアン)〕に変更した点以外は、実施例1と同様にして実施例21のインクを作成した。
【0068】
実施例22
実施例1におけるカーボンブラックを、ピグメントレッド122〔クラリアント社製、トナーマゼンタEO02(マゼンタ)〕に変更した点以外は、実施例1と同様にして実施例21のインクを作成した。
【0069】
実施例23
実施例1におけるカーボンブラックを、ピグメントイエロー〔大日精化社製、ファーストイエロー531(イエロー)〕に変更した点以外は、実施例1と同様にして実施例23のインクを作成した。
【0070】
比較例1〜2
<比較例1〜2の共重合体の合成>
実施例1の共重合体の合成で用いた5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウムに代えて、表2の比較例1〜2の欄に示す構成モノマーXのナトリウム塩を用い、モノマーXの添加量が9mmolになるように調整した点以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜2の共重合体を得た。各共重合体の重量平均分子量を表2に示す。
<比較例1〜2のインクの作成>
実施例1〜2の共重合体に代えて、上記比較例1〜2の共重合体を用いた点以外は、実施例1〜2と同様にして、比較例1〜2のインクを作成した。
【0071】
比較例3
<比較例3の共重合体の合成>
実施例1の共重合体の合成で用いた5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウム及びメタクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステルに代えて、表2の比較例3の欄に示す構成モノマーXのナトリウム塩を用い、添加量が18mmolになるように調整した点以外は、実施例1と同様にして、比較例3の共重合体を得た。共重合体の重量平均分子量を表2に示す。
<比較例3のインクの作成>
実施例3の共重合体に代えて、上記比較例3の共重合体を用いた点以外は、実施例3と同様にして、比較例3のインクを作成した。
【0072】
比較例4
<比較例4の共重合体の合成>
実施例1の共重合体の合成で用いた5−メタクリルアミド吉草酸ナトリウム及びメタクリル酸−p−ヒドロキシ桂皮酸エステルに代えて、表2の比較例4の欄に示す構成モノマーXのナトリウム塩及びモノマーZを用い、各添加量が9mmolになるように調整した点以外は実施例1と同様にして、比較例4の共重合体を得た。共重合体の重量平均分子量を表2に示す。
<比較例4のインクの作成>
実施例3の共重合体に代えて、上記比較例4の共重合体を用いた点以外は、実施例3と同様にして、比較例4のインクを作成した。
【0073】
比較例5
<比較例5のインクの作成>
実施例4の共重合体に代えて、Balance47(アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体:アクアノーベル社製)を用いた点以外は、実施例4と同様にして、比較例5のインクを作成した。
【0074】
上記実施例及び比較例の各インクについて、以下のようにして保存安定性と画像濃度を調べた。結果を表1、表2に示す。
(1)保存安定性
粘度計(東洋精機社製 RE500)を用いてインクの初期粘度を測定した。次いで、インク50gを、日電理化社製サンプル瓶SV−50に入れて密閉し、70℃の環境下で2週間保管した後、再度粘度を測定した。そして、下記式により粘度変化率を計算した。粘度変化率の数値が小さい方が良好である。
粘度変化率(%)=(保管後粘度−保管前粘度)×100/保管前粘度
【0075】
(2)画像濃度
23℃50%RH環境下で、インクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GX5000)の専用カートリッジに、作成した各インクを充填し、プリンターに装着した。
次いで、Microsoft Word2003を用いて作成した64pointのJIS X 0208(1997),2223の一般記号が記載されているチャートを、ゼロックス社製PPC用紙4024(非平滑紙)に印字した後、X−Rite938(X−Rite社製)を用いて前記記号の画像濃度を測定した。印字モードは、プリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定により「普通紙−標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。なお、JIS X 0208(1997),2223は、外形が正四方形であって、記号全面がインクにより塗りつぶされている記号である。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】