(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の複合線束の幅方向両端に配置された前記第1の繊維線の線径は、前記第1の繊維線よりも幅方向内側に配置された前記第1の金属線の線径より大きく構成されており、
前記第2の複合線束の幅方向両端に配置された前記第2の繊維線の線径は、前記第2の繊維線よりも幅方向内側に配置された前記第2の金属線の線径より大きく構成されている請求項1に記載の電気ケーブル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の電気ケーブルは、特許文献1に記載の電気ケーブルと比較して、引張強度や耐屈曲性では優れるが、シールド特性では劣ることがあった。
【0005】
本発明の目的は、引張強度、耐屈曲性が優れていながらも、シールド特性を向上させた電気ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
絶縁層により外周が被覆された導体を有する導体コアと、
前記導体コアの外周に形成された編組層と、を備える電気ケーブルであって、
前記編組層は、
第1の金属線と第1の繊維線とを前記導体コアの長手方向に沿って配列させ、前記導体コアの外周に螺旋状に巻き回してなる第1の線群と、
第2の金属線と第2の繊維線とを前記導体コアの長手方向に沿って配列させ、前記第1の線群とは逆向きに前記導体コアの外周に螺旋状に巻き回してなる第2の線群と、
を編み合わせることで形成されている電気ケーブルが提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、
前記第1の線群は、
前記第1の金属線が複数配列して束となっている第1の金属線束と、前記第1の繊維線が複数配列して束となっている第1の繊維線束とを、前記導体コアの長手方向に沿って交互に配列させ、前記導体コアの外周に螺旋状に巻き回してなる第1の線束群を備え、
前記第2の線群は、
前記第2の金属線が複数配列して束となっている第2の金属線束と、前記第2の繊維線が複数配列して束となっている第2の繊維線束とを、前記導体コアの長手方向に沿って交互に配列させ、前記第1の線束群とは逆向きに前記導体コアの外周に螺旋状に巻き回してなる第2の線束群を備え、
前記編組層は、
前記第1の線束群と前記第2の線束群とを編み合わせることで形成されている
第1の態様に記載の電気ケーブルが提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、
前記第1の線群は、
前記第1の金属線と前記第1の繊維線とが複数配列して束となっている第1の複合線束を、前記導体コアの長手方向に沿って複数配列させ、前記導体コアの外周に螺旋状に巻き回してなる第1の複合線束群を備え、
前記第2の線群は、
前記第2の金属線と前記第2の繊維線とが複数配列して束となっている第2の複合線束を、前記導体コアの長手方向に沿って複数配列させ、前記第1の複合線束群とは逆向きに前記導体コアの外周に螺旋状に巻き回してなる第2の複合線束群を備え、
前記編組層は、
前記第1の複合線束群と前記第2の複合線束群とを編み合わせることで形成されている第1の態様に記載の電気ケーブルが提供される。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、
前記第1の複合線束の幅方向両端には前記第1の繊維線が配置されており、前記第2の複合線束の幅方向両端には前記第2の繊維線が配置されている第3の態様に記載の電気ケーブルが提供される。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、
前記第1の複合線束の幅方向両端に配置された前記第1の繊維線の線径は、前記第1の繊維線よりも幅方向内側に配置された前記第1の金属線の線径より大きく構成されており、
前記第2の複合線束の幅方向両端に配置された前記第2の繊維線の線径は、前記第2の繊維線よりも幅方向内側に配置された前記第2の金属線の線径より大きく構成されている第4の態様に記載の電気ケーブルが提供される。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、
前記第1の複合線束は前記第1の金属線を複数備え、複数の前記第1の金属線の間には前記第1の繊維線が配置されており、
前記第2の複合線束は前記第2の金属線を複数備え、複数の前記第2の金属線の間には前記第2の繊維線が配置されている第3〜第5のいずれかの態様に記載の電気ケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引張強度、耐屈曲性が優れていながらも、シールド特性を向上させた電気ケーブルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の第1実施形態>
以下に、本実施形態に係る電気ケーブルの構成を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る電気ケーブル10は、導体コア11と、導体コア11の外周に形成された編組層13と、を備えている。導体コア11と編組層13との間には、介在12が設けられている。介在12は、例えば、シリコン、ETTE(ポリテトラフルオロエチレン)、複数のステープル・ファイバ糸等から構成される。介在12は、スポンジ状或いは液状の埋め込み材等であってもよい。なお、導体コア11と編組層13との間は、空隙であってもよい、つまり、導体コア11と編組層13との間に、介在12を設けなくともよい。
【0016】
導体コア11は、絶縁層により外周が被覆された導体を有する。詳しくは、導体コア11は、
図2に横断面図を示すように、複数(
図2中では2本を図示)の電力線101と、複数(
図2中では2本を図示)の信号線102と、を撚り合わせることで構成されている。電力線101は、複数の導体素線(図示せず)を撚り合わせることにより形成された中心導体101aと、中心導体101aの外周に形成された絶縁層101bと、を備えた絶縁被覆電線として構成されている。信号線102は、2本の信号線コア102aを撚り合わせてなる対撚線と、この対撚線の外周に形成された編組シールド102dと、を備えたシールド付きツイストペアケーブルとして構成されている。信号線コア102aは、複数の導体素線(図示せず)を撚り合わせることにより形成された中心導体102bと、中心導体102bの外周に形成された絶縁層102cと、により構成されている。編組シールド102dは、複数の金属線を対撚線の外周に編み合わせることで構成されている。中心導体101a,102bを形成する導体素線は、例えばSn含有銅合金(Cu−0.15〜0.7wt%Sn合金)等により構成されている。絶縁層101b,102cは、例えば架橋ポリエチレン等により構成されている。
【0017】
編組層13は、本実施形態では、第1の金属線16mと第1の繊維線15fとを電気ケーブル10の長手方向に沿って所定の順序で複数配列させ、導体コア11の外周に螺旋状に巻き回してなる第1の線群13aと、第2の金属線16mと第2の繊維線15fとを電気ケーブル10の長手方向に沿って所定の順序で複数配列させ、上述の第1の線群13aとは逆向きに導体コア11の外周に螺旋状に巻き回してなる第2の線群13bと、を編み合わせることで形成されている。
【0018】
具体的には、
図1(b)に部分拡大図を示すように、第1の線群13aは、第1の金属線16mが並列に複数(本実施形態では、4本)配列してなる帯状の第1の金属線束16aと、第1の繊維線15fが並列に複数(本実施形態では、4本)配列してなる帯状の第1の繊維線束15aと、をそれぞれ複数備えた第1の線束群として構成されている。第1の金属線束16aと第1の繊維線束15aとは、導体コア11の長手方向に沿って交互に配列している。交互に配列したこれらの線束群が、導体コア11の外周に螺旋状に巻き回されることで、第1の線群13aが形成されている。なお、本実施形態では、第1の金属線束16aが複数本の第1の金属線16mから構成され、第1の繊維線束15aが複数本の第1の繊維線15fにより構成される例について説明したが、本発明は係る態様に限定されない。例えば、第1の金属線束16aが1本の第1の金属線16mから構成されていてもよく、第1の繊維線束15aが1本の第1の繊維線15fにより構成されていてもよい。
【0019】
また、第2の線群13bは、第2の金属線16m’が並列に複数(本実施形態では、4本)配列してなる帯状の第2の金属線束16bと、第2の繊維線15f’が並列に複数(本実施形態では、4本)配列してなる帯状の第2の繊維線束15bと、をそれぞれ複数備
えた第2の線束群として構成されている。第2の金属線束16bと第2の繊維線束15bとは、導体コア11の長手方向に沿って交互に配列している。交互に配列したこれらの線束群が、第1の線群13aとは逆向きに、つまり、第1の金属線束16a及び第1の繊維線束15aとは逆向きに導体コア11の外周に螺旋状に巻き回されることで、第2の線群13bが形成されている。なお、本実施形態では、第2の金属線束16bが複数本の第2の金属線16m’から構成され、第2の繊維線束15bが複数本の第2の繊維線15f’により構成される例について説明したが、本発明は係る態様に限定されない。例えば、第2の金属線束16bが1本の第2の金属線16m’から構成されていてもよく、第2の繊維線束15bが1本の第2の繊維線15f’により構成されていてもよい。
【0020】
編組層13は、第1の線群13aを構成する各線束(第1の金属線束16a及び第1の繊維線束15a)を例えば縦糸とし、第2の線群13bを構成する各線束(第2の金属線束16b及び第2の繊維線束15b)を例えば横糸とし、これらを交互に編み合わせる(織る)ことで、形成されている。
上述の「交互に編み合わせる」とは、第1の金属線束16aの一つ(
図1(b)点線内参照)を例にとると、第2の繊維線束15bの下側を通過させ、この第2の繊維線束15bの隣の繊束である第2の金属線束16bの上側を通過させ、そして、また第2の繊維線束15bの下側を通過させて編み合わせることである。
【0021】
上述のように構成することで、つまり、複数の第1の金属線束16aと複数の第2の金属線束16bとを、それぞれ導体コア11の外周に互いに逆向きに巻き回しつつ編み合わせることで、複数の金属線束16a,16bを、所定の角度(挟角)で繰り返し交差させることが可能となる。これにより、編組層13のシールド性能、つまり、電気ケーブル10のシールド特性(耐ノイズ特性)を向上させることが可能となる。これは、例えば、第1の金属線束16aを流れる電流が発生させる磁束と、第2の金属線束16bを流れる電流が発生させる磁束とが、これらの金属線束16a,16bが交差することで互いに打ち消し合うようになること等が一つの理由として挙げられる。
【0022】
第1の金属線束16aと第2の金属線束16bとが交差する角度(挟角)が狭すぎると、つまり、金属線束16a,16bと、導体コア11と、の関係が平行に近くなると、編組層13のシールド性能、つまり、電気ケーブル10のシールド特性が低下し易くなる。第1の金属線束16aと第2の金属線束16bとの挟角を40°以上とすることで、編組層13のシールド性能を充分に高めることが可能となる。第1の金属線束16aと第2の金属線束16bとの挟角を60°以上、好ましくは80°以上とすることで、編組層13のシールド性能をさらに高めることが可能となる。
【0023】
また、第1の金属線束16aと第2の金属線束16bとが交差する角度(挟角)が広すぎると、つまり、金属線束16a,16bと導体コア11との関係が直交に近くなると、金属線束16a,16bを編み合わせて編組層13を形成する速度、つまり、電気ケーブル10の生産性が低下し易くなる。第1の金属線束16aと第2の金属線束16bとの挟角を140°以下とすることで、電気ケーブル10の生産性を充分に高めることが可能となる。第1の金属線束16aと第2の金属線束16bとの挟角を120°以下、好ましくは100°以下とすることで、電気ケーブル10の生産性をさらに高めることが可能となる。
【0024】
従って、第1の金属線束16aと第2の金属線束16bとが交差する角度(挟角)は、40°〜140°、好ましくは60°〜120°より好ましくは80°〜100°とするのがよい。
【0025】
第1の金属線16m、第2の金属線16m’としては、それぞれ、金属素線の単線材や
金属素線の束材等を用いることができる。金属素線としては、編組シールド層の構成材として慣用的に用いられている線材を好適に用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、金属素線としては、Snめっき銅線、合金銅線等を用いることができる。金属線材の断面形状は特に限定されるものではなく、円形状、楕円形状、平角形状などが挙げられる。
【0026】
第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’としては、それぞれ、例えば綿糸、絹糸等の天然繊維材や、人工繊維材を用いることができる。特に、人工繊維材は、天然繊維材よりも特性のばらつきが少ないことから、好適に用いることができる。人工繊維材としては、電気ケーブル10の引張強度、耐屈曲性、耐環境性等を考慮すると、ブレーキホース用として実績のある材料、例えば、ポリビニールアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等を用いることが好ましく、特に、ポリビニールアルコールを用いることが好ましい。繊維材の断面形状は特に限定されるものではなく、円形状、楕円形状、平角形状などが挙げられる。
【0027】
シース14の構成材としては、耐熱性、耐候性、耐油性、耐水性が良好な材料を用いるのが好ましく、例えば、ブレーキホース用のゴム材料として慣用的に用いられている材料を用いるのが好ましい。シース14の構成材としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、プロロプロピレンゴム等のゴム材料を用いることが好ましく、特に、エチレンプロピレンジエンゴムを用いることが好ましい。また、これらのゴム材料は、シース14の目的、機能を損なわない範囲で、補強剤、充填剤、可塑剤、軟化剤、加工助剤、活性剤、スコーチ防止剤、老化防止剤等の配合剤を適宜含んでいてもよい。さらに、これらのゴム材料は、シース14の目的、機能を損なわない範囲で、他のポリマを適宜含んでいてもよい。
【0028】
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0029】
(a)複数の第1の金属線束16aと、複数の第2の金属線束16bと、をそれぞれ導体コア11の外周に互いに逆向きに巻き回すことで、導体コア11の外周上で、複数の金属線束16a,16bを所定の角度(挟角)で繰り返し交差させることが可能となる。これにより、電気ケーブル10のシールド特性(耐ノイズ特性)を向上させることが可能となる。
【0030】
参考までに、従来の電気ケーブルの構成を
図4に示す。
図4に示す電気ケーブル50は、複数の金属線束56と、複数の繊維線束55とを、導体コア11の外周に互いに逆向きに巻き回すことで形成した交織編組層53を備えている。
図4に示す電気ケーブル50は、一般的な電気ケーブルと比較して、つまり、金属線を編み合わせて形成したシールド層(金属編組層)を有するが、繊維線を編み込んで形成した補強層(繊維編組層)を有さない電気ケーブルと比較して、引張強度や耐屈曲性では優れるものの、シールド特性では劣ることがある。これは、
図4に示す電気ケーブル50においては、複数の金属線束56が、全て同じ方向に巻き回されており、導体コアの外周上で、これらが繰り返し交差するようには構成されていないためである。これに対し、本実施形態に係る電気ケーブル10は、複数の金属線束16a,16bが、導体コア11の外周上で繰り返し交差することから、
図4に示す電気ケーブル50と比較して、高いシールド特性を有することとなる。
【0031】
(b)複数の繊維線束15a,15bを、上述の金属線束16a,16bと共に導体コア11の外周に巻き回し、編組層13中に一体に織り込むことで、編組層13の優れた引張強度を得ることが可能となる。つまり、本実施形態に係る電気ケーブル10は、補強層(繊維編組層)を有さない一般的な電気ケーブルと比較して、高い引張強度を有することとなる。また、電気ケーブル20を固定金具を用いて自動車等に固定する際、電気ケーブル
20の外周、つまり、シース14の外周を加締めることで固定を行う。この際、シース14の内周が編組層13の編み目に食い込むことで、電気ケーブル10の把持力を向上させることが可能となる。また、シース14の内周が編組層13の編み目に食い込むことで、電気ケーブル20を引っ張った際、シース14のみが単独で伸びてしまうことも抑制できるようになる。
【0032】
(c)金属線束16a,16bと繊維線束15a,15bとを一体に編み込んで編組層13を形成することで、電気ケーブル10の優れた耐屈曲性を得ることが可能となる。というのも、仮に、上述のシールド層(金属編組層)と補強層(繊維編組層)との2層構造を採用した場合、電気ケーブルを屈曲させた際に、これらの層間で摩擦が生じ易くなり、その結果、特に金属線が断線し易くなる。これに対し、金属線束16a,16bと繊維線束15a,15bとを編み込んで一体化させた本実施形態では、金属線束16a,16bと繊維線束15a,15bとの間の摩擦を回避することができ、結果として、第1の金属線16mや第2の金属線16m’の断線を抑制することが可能となる。
【0033】
(d)金属線束16a,16bと繊維線束15a,15bと一体に編み込んで編組層13を形成することで、電気ケーブル10の外径を小さくしたり、軽量化を実現することが可能となる。つまり、本実施形態によれば、シールド層(金属編組層)と補強層(繊維編組層)との2層構造を採用することなく、編組層13のみでこれら2つの層の機能(シールド、補強)を同時に実現できることから、電気ケーブル10の構造を単純化させることができ、その外径を小さくしたり、軽量化を実現することが可能となる。
【0034】
(e)上述の電気ケーブル10を、例えば自動車や産業用ロボット用の電気ケーブルとして用いると、これらの機器の信頼性や安全性を大きく向上させることができる。例えば、ハイブリッド自動車等の車体側に配置される機器(電源、インバータ、制御装置など)と、サスペンションのバネ下部品に配置される機器(インホイールモータ、ブレーキ機器、センサ機器など)との間を電気的に接続するバネ下配線用の電気ケーブルは、複数の取付金具により、車体と、サスペンションアームなどの可動部品と、に固定される。そのため、バネ下配線用の電気ケーブルには、シールド特性だけでなく、繰り返しの屈曲に耐える耐屈曲性や、引っ張りに耐える引張強度が併せて求められる。本実施形態に係る電気ケーブル10は、引張強度、耐屈曲性が優れていながらも、シールド特性を向上させることができるため、このような環境で好適に用いることができる。
【0035】
<本発明の第2実施形態>
本実施形態に係る電気ケーブル20は、編組層23の構成のみが、上述の第1実施形態と異なる。その他の各構成は、第1実施形態の電気ケーブル10と同様である。以下、本実施形態に係る編組層23の構成について、
図3を用いて説明する。
【0036】
編組層23は、本実施形態では、第1の金属線16mと第1の繊維線15fとを電気ケーブル10の長手方向に沿って所定の順序で複数配列させ、導体コア11の外周に螺旋状に巻き回してなる第1の線群23aと、第2の金属線16m’と第2の繊維線15f’とを電気ケーブル10の長手方向に沿って所定の順序で複数配列させ、上述の第1の線群23aとは逆向きに導体コア11の外周に螺旋状に巻き回してなる第2の線群23bと、を編み合わせることで形成されている。
【0037】
具体的には、
図3(b)に部分拡大図を示すように、第1の線群23aは、第1の金属線16mと第1の繊維線15fとが所定の順序で複数配列(本実施形態では、3本の第1の金属線16mと2本の第1の繊維線15fとが交互に配列)してなる帯状の第1の複合線束25aを複数備えた第1の複合線束群として構成されている。第1の複合線束25aを導体コア11の長手方向に沿って複数配列させ、導体コア11の外周に螺旋状に巻き回
すことで、第1の線群23aが形成されている。なお、本実施形態では、第1の複合線束25aが第1の金属線16mと第1の繊維線15fとをそれぞれ複数本ずつ有する例について説明したが、本発明は係る態様に限定されない。例えば、第1の複合線束25aが第1の金属線16mを1本のみ有していてもよく、第1の繊維線15fを1本のみ有していてもよい。
【0038】
また、第2の線群23bは、第2の金属線16m’と第2の繊維線15f’とが所定の順序で複数配列(本実施形態では、3本の第2の金属線16m’と2本の第2の繊維線15f’とが交互に配列)してなる帯状の第2の複合線束25bを複数備えた第2の複合線束群として構成されている。第2の複合線束25bを導体コア11の長手方向に沿って複数配列させ、第1の線群23aとは逆向きに、つまり、第1の複合線束25aとは逆向きに導体コア11の外周に螺旋状に巻き回すことで、第2の線群23bが形成されている。なお、本実施形態では、第2の複合線束25bが第2の金属線16m’と第2の繊維線15f’とをそれぞれ複数本ずつ有する例について説明したが、本発明は係る態様に限定されない。例えば、第2の複合線束25aが第2の金属線16m’を1本のみ有していてもよく、第2の繊維線15f’を1本のみ有していてもよい。
【0039】
編組層23は、第1の線群23aを構成する各線束(第1の複合線束25a)を例えば縦糸とし、第2の線群23bを構成する各線束(第2の複合線束25b)を例えば横糸とし、これらを交互に編み合わせる(織る)ことで、形成されている。上述の「交互に編み合わせる」とは、
図3(b)に示した3本の第1の複合線束25aのうち中央の複合線束25aを例にとると、第2の複合線束25bの上側を通過させ、この第2の複合線束25bの隣の繊束である第2の複合線束25bの下側を通過させ、そして、また第2の複合線束25bの上側を通過させて編み合わせることである。
【0040】
上述のように構成することで、つまり、複数の第1の複合線束25aと複数の第2の複合線束25bとを、それぞれ導体コア11の外周に互いに逆向きに巻き回しつつ編み合わせることで、複数の複合線束25a,25bを、つまり、複合線束25a,25bに含まれる複数の第1の金属線16m、第2の金属線16m’を、所定の角度(挟角)で繰り返し交差させることが可能となる。これにより、編組層23のシールド性能、つまり、電気ケーブル20のシールド特性(耐ノイズ特性)を向上させることが可能となる。これは、例えば、第1の複合線束25a(に含まれる金属線16m)を流れる電流が発生させる磁束と、第2の複合線束25b(に含まれる金属線16m)を流れる電流が発生させる磁束とが、これらの複合線束25a,25bが交差することで互いに打ち消し合うようになること等が一つの理由として挙げられる。
【0041】
第1の複合線束25aと第2の複合線束25bとが交差する角度(挟角)が狭すぎると、第1の実施形態と同様の理由から、電気ケーブル20のシールド特性が低下し易くなる。複合線束25a,25bの挟角を40°以上とすることで、電気ケーブル20のシールド特性を充分に高めることが可能となり、複合線束25a,25bとの挟角を60°以上、好ましくは80°以上とすることで、電気ケーブル20のシールド特性をさらに高めることが可能となる。
【0042】
また、第1の複合線束25aと第2の複合線束25bとが交差する角度(挟角)が広すぎると、第1の実施形態と同様の理由から、電気ケーブル20の生産性が低下し易くなる。複合線束25a,25bの挟角を140°以下とすることで、電気ケーブル20の生産性を充分に高めることが可能となる。複合線束25a,25bとの挟角を120°以下、好ましくは100°以下とすることで、電気ケーブル20の生産性をさらに高めることが可能となる。
【0043】
従って、第1の複合線束25aと第2の複合線束25bとが交差する角度(挟角)は、40°〜140°、好ましくは60°〜120°より好ましくは80°〜100°とするのがよい。
【0044】
第1の複合線束25a,第2の複合線束25bを構成する第1の金属線16m、第2の金属線16m’、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’の本数、線径、配列順序等は、電気ケーブル20の要求仕様に基づいて適宜設定することができる。例えば、複合線束25a,25bのそれぞれに含まれる第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’の本数に対する第1の金属線16m、第2の金属線16m’の本数をそれぞれ増やすことで、編組層23のインピーダンスを低下させることができ、編組層23のシールド性能、つまり、電気ケーブル20のシールド特性を向上させることができる。また、複合線束25a,25bのそれぞれに含まれる第1の金属線16m、第2の金属線16m’の本数に対する第1の繊維線15fの、第2の繊維線15f’の本数をそれぞれ増やすことで、編組層23の引張強度、つまり、電気ケーブル20の引張強度を向上させることができる。
【0045】
但し、第1の複合線束25aの幅方向両端には、それぞれ、第1の金属線16mではなく、第1の繊維線15fを配置することが好ましい。また、第2の複合線束25bの幅方向両端にも、それぞれ、第2の金属線16m’ではなく、第2の繊維線15f’を配置することが好ましい。また、この場合、複合線束25aの幅方向両端に配置された第1の繊維線15fの線径は、この第1の繊維線15fよりも幅方向内側に配置された第1の金属線16mの線径よりも大きくすることが好ましい。また、この場合、複合線束25bの幅方向両端に配置された第2の繊維線15f’の線径は、この第2の繊維線15f’よりも幅方向内側に配置された第2の金属線16m’の線径よりも大きくすることが好ましい。ここで、複合線束25a,25bの「幅方向」とは、複合線束25a,25bを構成する各線(第1の金属線16m、第2の金属線16m’、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’)が並列に配列する方向であって、複合線束25a,25bの長手方向に直交する方向を意味する。
【0046】
また、第1の複合線束25aが複数の第1の金属線16mを含む場合、これら複数の第1の金属線16mの間には、第1の繊維線15fをそれぞれ配置することが好ましい。また、第2の複合線束25bが複数の第2の金属線16m’を含む場合、これら複数の第2の金属線16m’の間には、第2の繊維線15f’をそれぞれ配置することが好ましい。すなわち、第1の複合線束25aを構成する全ての第1の金属線16mは、第2の繊維線15fによって、複合線束25aの幅方向の両側から挟まれていることが好ましい。また、第2の複合線束25bを構成する全ての第1の金属線16m’は、第2の繊維線15f’によって、複合線束25bの幅方向の両側から挟まれていることが好ましい。
【0047】
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0048】
(a)複数の複合線束25aと、複数の複合線束25bと、をそれぞれ導体コア11の外周に互いに巻き回すことで、導体コア11の外周上で、複数の複合線束25a,25bを所定の角度(挟角)で繰り返し交差させることが可能となる。これにより、電気ケーブル20のシールド特性(耐ノイズ特性)を向上させることが可能となる。つまり、本実施形態に係る電気ケーブル20は、複数の第1の金属線16m、第2の金属線16m’が、導体コア11の外周上で繰り返し交差することから、
図4に示す電気ケーブル50と比較して、高いシールド特性を有することとなる。
【0049】
(b)複合線束25a,25bを編み合わせて編組層23を形成することで、つまり、第1の金属線16m、第2の金属線16m’、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’を編組層23中に一体に織り込むことで、編組層23の優れた引張強度を得ることが可能
となる。つまり、本実施形態に係る電気ケーブル20は、補強層(繊維編組層)を有さない一般的な電気ケーブルと比較して、高い引張強度を有することとなる。また、シース14の外周を加締めることで電気ケーブル20を自動車等に固定する際、シース14の内周が編組層23の編み目に食い込むことで、電気ケーブル20の把持力を向上させることが可能となる。また、シース14の内周が編組層13の編み目に食い込むことで、電気ケーブル20を引っ張った際、シース14のみが単独で伸びてしまうことも抑制できるようになる。
【0050】
(c)複合線束25a,25bを編み合わせて編組層23を形成することで、つまり、第1の金属線16m、第2の金属線16m’、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’を一体に編み込んで編組層23を形成することで、電気ケーブル20の耐屈曲性を向上させることができる。つまり、本実施形態によれば、シールド層(金属編組層)と補強層(繊維編組層)との2層構造を採用した場合と比較して、第1の金属線16m、第2の金属線16m’、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’間の摩擦を回避し易くなり、第1の金属線16mや第2の金属線16m’の断線を抑制することができる。
【0051】
特に、複合線束25a,25bの幅方向両端に、第1の金属線16mや第2の金属線16m’ではなく、第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’を配置することで、電気ケーブル20の優れた屈曲耐性を得ることが可能となる。というのも、電気ケーブル20を屈曲させた際、第1の複合線束25aの幅方向両端部と、これと交差する第2の複合線束25bの主面との間では、摩擦が生じ易くなる。同様に、第2の複合線束25bの幅方向両端部と、これと交差する第1の複合線束25aの主面との間でも、摩擦が生じ易くなる。そのため、仮に、複合線束25a,25bの幅方向両端にそれぞれ第1の金属線16mや第2の金属線16m’を配置した場合、幅方向両端に配置された第1の金属線16mや第2の金属線16m’が、摩擦によって断線し易くなる。これに対し、複合線束25a,25bの幅方向両端に第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’を配置した場合、これらの第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’よりも幅方向内側に配置された第1の金属線16mや第2の金属線16m’は、第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’によってそれぞれ保護されることとなり、結果として、摩擦による第1の金属線16mや第2の金属線16m’の断線をさらに抑制できるようになる。
【0052】
また、複合線束25a,25bの幅方向両端に配置した第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’の線径を、この第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’よりも幅方向内側に配置した第1の金属線16mや第2の金属線16m’の線径よりも大きくすることで、電気ケーブル20の屈曲耐性を更に向上させることができる。つまり、幅方向両端に配置された第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’の線径を上述のように設定することで、この第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’よりも幅方向内側に配置された第1の金属線16mや第2の金属線16m’は、第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’によって確実に保護されるようになる。結果として、摩擦による第1の金属線16mや第2の金属線16m’の断線をより確実に抑制できるようになる。なお、複合線束25a,25bの幅方向両端に配置した第1の繊維線15fや第2の繊維線15f’を、例えばテフロン(登録商標)等の滑り性のよい材料で構成すると、摩擦による断線を更に確実に抑制できるようになり、電気ケーブル20の屈曲耐性を更に向上させることができる。
【0053】
また、複合線束25a,25bがそれぞれ複数の第1の金属線16m、第2の金属線16m’を含む場合、複数の第1の金属線16mの間や複数の第2の金属線16m’の間にそれぞれ第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’を配置することで、電気ケーブル20の屈曲耐性を更に向上させることができる。つまり、各第1の金属線16m、各第2の金属線16m’を、それぞれ、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’によって両側から挟むようにすることで、電気ケーブル20を屈曲させた際、第1の繊維線15fや第
2の繊維線15f’を、第1の金属線16mや第2の金属線16m’に加わる圧力を低減させる緩衝材(クッション材)として作用させることができる。その結果、屈曲による第1の金属線16mや第2の金属線16m’の断線を抑制できるようになる。
【0054】
(d)複合線束25a,25bを編み合わせて編組層23を形成することで、つまり、第1の金属線16m、第2の金属線16m’、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’を一体に編み込んで編組層23を形成することで、電気ケーブル20の外径を小さくしたり、軽量化を実現することが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、編組層23のみでこれら2つの層の機能(シールド、補強)を同時に実現できることから、電気ケーブル20の構造を単純化させることができ、その外径を小さくしたり、軽量化を実現することが可能となる。
【0055】
(e)本実施形態に係る電気ケーブル20は、引張強度、耐屈曲性が優れていながらも、シールド特性を向上させることができるため、第1実施形態に係る電気ケーブル10と同様、例えば、自動車や産業用ロボット用の電気ケーブルとして好適に用いることができる。特に、本実施形態に係る電気ケーブル20を、シールド特性だけでなく、耐屈曲性や引張強度が併せて求められるバネ下配線用の電気ケーブルとして用いた場合、ハイブリット自動車等の信頼性や安全性を大きく向上させることができる。
【0056】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、複合線束25a,25bの幅方向両端部に、それぞれ、第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’を配置する例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、複合線束25a,25bのうちいずれか一方のみを、上述のように構成してもよい。この場合においても、電気ケーブル20の耐屈曲性を向上させることができる。但し、複合線束25a,25bのいずれか一方だけでなく、両方を上述のように構成する方が、電気ケーブル20の耐屈曲性を向上させ易くなり、より好ましい。
【0058】
また例えば、上述の実施形態では、複合線束25a,25bの幅方向両端に配置した第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’の線径を、この第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’よりも幅方向内側に配置した第1の金属線16m、第2の金属線16m’の線径よりも大きく構成した例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、複合線束25a,25bのうちいずれか一方のみを上述のように構成しても、電気ケーブル20の耐屈曲性を向上させることができる。但し、複合線束25a,25bのいずれか一方だけでなく、両方を上述のように構成する方が、電気ケーブル20の耐屈曲性を向上させ易くなり、より好ましい。
【0059】
また例えば、上述の実施形態では、複合線束25a,25bがそれぞれ複数の第1の金属線16m、第2の金属線16m’を含む場合、これら複数の第1の金属線16m、第2の金属線16m’の間に第1の繊維線15f、第2の繊維線15f’をそれぞれ配置する例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、複合線束25a,25bのうちいずれか一方のみを上述のように構成しても、電気ケーブル20の耐屈曲性を向上させることができる。但し、複合線束25a,25bのいずれか一方だけでなく、両方を上述のように構成する方が、電気ケーブル20の耐屈曲性を向上させ易くなり、より好ましい。
【0060】
また例えば、上述の実施形態では、導体コア11を、2本の電力線101と2本の信号
線102とを撚り合わせて構成する例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、電力線101と信号線102とをそれぞれ1本づつ有する構成としてもよく、それぞれを3本以上有する構成としてもよい。また、これらを撚り合わせなくてもよい。また、電力線101を絶縁被覆電線の単線とする場合に限らず、例えば複数の絶縁被覆電線を撚り合わせて得られたリッツ線としてもよい。また、信号線102もシールド付きツイストペアケーブルとする場合に限らず、シールドのないツイストペアケーブルとしてもよいし、同軸ケーブルとしてもよい。また、これら複数種の電力線、信号線を組み合わせて構成してもよいし、電力線や信号線以外の電線を含んでいてもよい。