特許第6044822号(P6044822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044822
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】熱伝導性粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20161206BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J133/08
   C09J133/10
   C09J11/04
   C09J133/14
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-177061(P2012-177061)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-34652(P2014-34652A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】下岡 澄生
(72)【発明者】
【氏名】上川 由美
(72)【発明者】
【氏名】高野 博樹
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−227379(JP,A)
【文献】 特表2015−502988(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/062836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一面に熱伝導性粘着剤層を有する熱伝導性粘着テープであって、
前記基材が、10枚積層してJISP8117に準拠して測定されるガーレ式透気度が0.35sec/100ml以下であり、引張弾性率が3GPa以下であり、厚さが10〜50μmであり、前記熱伝導性粘着剤層が、(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分とするアクリル系共重合体と、無機フィラーとを含有する粘着剤組成物から形成される粘着剤層であり、前記粘着剤組成物中の無機フィラーの含有量が、アクリル系共重合体100質量部に対して200質量部以上であり、前記アクリル系共重合体が、モノマー成分として炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーを含有するものであることを特徴とする熱伝導性粘着テープ。
【請求項2】
前記基材の引張破断強度が、5〜50N/20mmである請求項1に記載の熱伝導性粘着テープ。
【請求項3】
前記無機フィラーが、金属水酸化物からなるフィラーである請求項又はのいずれかに記載の熱伝導性粘着テープ。
【請求項4】
LED光源ユニットの固定に使用する請求項1〜のいずれかに記載の熱伝導性粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な熱伝導性を有し、柔軟性や絶縁性に優れた熱伝導性両面粘着テープに関し、電子部品、OA機器部品、家電部品等の各種分野での部材の固定用途、特に発熱性のLEDの固定用途に有用である熱伝導性両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス技術の格段なる進歩により電気、電子、OA機器の高集積化・高性能化が進み、内部の高温化や蓄熱による不具合が生じやすくなっており、内部部品の固定に使用する接着部材にも高温化や蓄熱を防止するための高い熱伝導性が求められている。従来は内部部品の接合には、接着剤やビス止めが使用されてきたが、貼付の簡便さから基材を有しない厚さ100〜300μm程度の熱伝導性の粘着テープが使われることが多くなっている。
【0003】
熱伝導性を有する粘着性の組成物としては、例えば、アクリル系ポリマーに熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性感圧接着剤(特許文献1参照)や、(メタ)アクリレート系ポリマーと金属水酸化物とを有し、(メタ)アクリレート系ポリマーのトルエン不溶分の割合とトルエン可溶分の分子量とを特定の範囲とし、(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部に対する金属水酸化物の配合割合が80〜160質量部である感圧接着剤組成物が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
基材を有しない熱伝導性の粘着テープは、所定サイズへ断裁加工する際に粘着剤層が伸びて変形したり、部材への貼付作業で貼り直しをする際、粘着剤層が伸びたり切れたりする不具合が発生する。ポリエステル等のフィルム基材の両面に粘着剤層を積層した両面粘着テープの場合は、所定サイズへの断裁加工や部品への貼付作業の際、粘着剤層および粘着テープの伸びが抑制されるが、粘着剤層間にあるフィルム基材によって熱伝導のパスラインが隔離され、熱伝導性が悪化する。また、アルミ箔等の金属箔や熱伝導性フィラーを練り込んだ熱伝導性のある基材を使用した場合、絶縁性が不十分であったり、高価でかつ薄膜化が困難であるといった問題が発生する。
【0005】
一方、画像表示のバックライトやLED照明等に使用される、LEDチップがアルミ基板上に直列配列された長尺のLED光源ユニットは、作成工程等によってLEDチップ側へ凹状に湾曲している場合がある。湾曲した状態のままでLEDチップが配列されたアルミ基板裏面へ両面粘着テープが貼付され、アルミ基板を直線状へ曲げ戻されて画像表示本体へ貼付される際、熱伝導性粘着テープが波ジワになり、LED部品や画像表示本体と熱伝導性粘着テープの間が接触不十分となり、熱伝導性が悪化する。
【0006】
【特許文献1】特開2002−294192号公報
【特許文献2】特開2002−285121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決ようとする課題は、貼付後に被着体が変形した際にも波ジワが生じにくく、かつ断裁加工や粘着テープを貼り直す際、伸びや切れが生じにくい熱伝導性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、10枚積層して、JISP8117に準拠して測定されるガーレ式透気度が0.35sec/100ml以下、引張弾性率が3GPa以下、かつ厚さが10〜50μmの基材の少なくとも一面に、熱伝導性粘着剤層を有する熱伝導性粘着テープにより上記課題を解決する。当該熱伝導性粘着テープによれば、抜き加工や部材への貼り直しの際、粘着テープの伸びや切れが生じにくく、また貼付後に被着体が変形した際の波ジワが生じにくく良好な熱伝導性を実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱伝導性粘着テープは、貼付後に被着体が変形した際にも波ジワが生じにくいことから、粘着テープの浮きや剥がれにより被着体と粘着テープの接触が不十となることを抑制でき、被着体の変形による熱伝導性の低下を抑制できる。また、当該浮剥がれの抑制に加えて、加工時や貼り直しの際に伸びや切れが生じにくいことから、所望の形状、特に細幅や長尺状への加工に際しても、好適に抜き加工や切断加工が可能であり、また、貼り直しの際にも好適に剥離できる。このため、本発明の熱伝導性粘着テープは、高い信頼性が求められる各種の電子機器やOA機器等の電子部品の固定に好適に適用できる。なかでも、発熱量が大きく、画像表示部の輝度を確保するために高い実装密度が求められる画像表示のバックライト等に使用されるLED光源ユニットの固定に好適に使用でき、LED光源側へ凹み状に湾曲したLED部品を直線状に戻して画像表示装置へ貼付した場合にも波ジワが発生せず好適な熱伝導性を保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱伝導性粘着テープは、基材の少なくとも一面に熱伝導性粘着剤層を有する熱伝導性粘着テープであり、前記基材が、23℃50%RH下にて前記基材を10枚積層して、JISP8117に準拠して測定されるガーレ式透気度が0.35sec/100ml以下であり、引張弾性率が3GPa以下であり、厚さが10〜50μmの熱伝導性粘着テープである。本発明の熱伝導性粘着テープは、当該構成により粘着テープの抜き加工や部材への貼り直しの際、粘着テープが伸びたり切れたりせず、LED光源チップ側へ凹み状に湾曲したLED基板を直線状に曲げ戻して画像表示装置へ貼付した際に波ジワが発生せず、浮きが発生しない熱伝導性に優れる。
【0011】
[基材]
本発明の熱伝導性粘着テープに使用する基材は、当該基材を10枚積層した際のガーレ式透気度が0.35sec/100μm以下、好ましくは0.05〜0.2sec/100μm、より好ましくは、0.05〜0.1sec/100μmの基材である。ガーレ式透気度を当該範囲とすることで、粘着剤の含浸が良好となり、加工時や貼り直しの際の粘着テープの伸びや切れを好適に抑制できる。また、基材に熱伝導性粘着剤が含浸しやすいことから、良好に熱伝導性を発現しやすい。特に、粘着テープを両面粘着テープとする場合には、基材の両面に積層される熱伝導性粘着剤層同士が好適に接近、接触し、好適な熱伝導性を得やすくなる。
【0012】
基材のガーレ式透気度は、基材を10枚積層し、10枚重ねの基材を試料として、JIS P8117に準拠して測定される透気度である。測定は、23℃50%RH中にて中芯基材を10枚重ねてセットし、内径28.6mm、重さ567gの内筒が落下して100mlの空気が通過する時間を測定した場合の通過時間を計測する。
【0013】
本発明に使用する基材は、引張弾性率が3GPa以下、好ましくは0.5〜2.0GPaの基材を使用する。当該基材を使用することで、粘着テープに良好な柔軟性を付与でき、被着体への貼付後に被着体が変形した場合にも波ジワが生じにくい。当該引張弾性率は、MD(流れ方向)、TD(幅方向)共に、上記範囲とすることで、好適に波ジワを抑制でき、かつ熱伝導性両面粘着テープを断裁加工や被着体へ貼り直す際、粘着テープの伸びや切れを抑制できる。
【0014】
基材の引張弾性率は、幅20mm、長さ150mmの試験片を23℃50%RHの環境で、JIS K7161に規定の方法にて1mm/minの速度で引っ張り、50mm標線間の引張初期0.2%伸度時の引張伸度と引張強度の関係曲線の傾斜接線を、伸度100%まで外挿して求めた引張強度[Pa]である。
【0015】
本発明に使用する基材は、厚さが10〜50μm、好ましくは20〜45μmである。基材厚さを当該厚さとすることで、好適に波ジワを抑制できる。また、熱伝導性粘着剤層のアンカリング性が良好となる。このため両面粘着テープとした際の両面からの粘着剤層の接触が生じやすくなり、好適な熱伝導性を実現でき、かつ断裁加工時や粘着テープの貼り直しの際、粘着テープの伸びや切れを抑制できる。
【0016】
本発明に使用する基材は、上記透気度、引張弾性率及び厚さの基材であれば特に制限されないが、多孔質な基材を使用することで、これら透気度等を実現しやすいため好ましい。なかでも、不織布、織布、モノフィラメント糸で構成された繊維織物(メッシュ基材)等が挙げられる。なかでも、薄い厚さでも高い引張弾性率を得やすい不織布や、高いガーレ式透気度を得やすいメッシュ基材を好ましく使用できる。
【0017】
不織布の材質としては、粘着テープの不織布として用いられる公知慣用の不織布を用いることができる。代表的な例としては、マニラ麻等の麻、レーヨン、再生セルロース、木材パルプ等のセルロース系繊維、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維等の化学繊維及びこれらの混合物等が挙げられる。さらに、必要に応じて、ビスコース含浸や熱可塑性樹脂をバインダーとした含浸処理を施しても良い。
【0018】
なかでも、麻を含有する不織布が、薄い厚さでも高い引張破断強度を得やすいため好ましい。麻としては、強度の点からマニラ麻が好ましい。また、マニラ麻の含有率は30質量%以上であることが好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。マニラ麻を含有する不織布としては、マニラ麻単独、またはマニラ麻と、ビニロン、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、パルプ、再生セルロース等の一種以上を混抄したものを好ましく使用できる。なかでも10〜50μmの厚さで高い引張破断強度が得られる、ポリエステル繊維、または、レーヨン繊維、再生セルロース、木材パルプ等のセルロース系繊維を20〜40質量%含有するものを好ましく使用できる。
【0019】
また、不織布の強度を向上させる目的で、不織布製造工程で公知慣用の強化剤を添加することが好ましい。強化剤は、内添強化剤或いは外添強化剤を、単独または併用しても良い。内添強化剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、エポキシ−ポリアミド系樹脂等が使用できる。特に、エポキシ−ポリアミド系樹脂であるポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂が著しく不織布の層間強度を上げるため好ましい。内添強化剤の添加量としては、好ましくは不織布に対して0.2〜1質量%、さらに好ましくは0.3〜0.5質量%である。一方、外添強化剤としては、でんぷん;ビスコース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の熱可塑性樹脂が使用できる。中でも、不織布基材の層間強度を上げるために、上述の内添強化剤を使用することが好ましい。
【0020】
前述の不織布の坪量は5〜15g/mであることが好ましく、7〜12g/mであることが一層好ましい。また、密度は0.15〜0.35g/m2であることが好ましく、0.2〜0.3g/mであることがより好ましい。本範囲の場合、熱伝導性両面粘着テープの貼り直しの際の不織布の切断し難さ、湾曲したLED部品を直線状へ戻す場合の曲げへの追従性、不織布への粘着剤の含浸性をバランスよく向上させることができ、熱伝導性を一層向上させることができる。
【0021】
不織布の抄紙方法としては、特に限定されるものではないが、公知の湿式法により得られ、円網抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機、傾斜短網抄紙機等を使用した各種抄紙法が用いられる。
【0022】
メッシュ基材の材質としては、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、ポリアリレート樹脂等の公知のモノフィラメント繊維をスクリーン状に織ったメッシュ基材を用いることができる。中でも、モノフィラメントとして、引張弾性率や引張強度が高いポリエステル樹脂の使用が好ましい。メッシュ基材の形態としては、繊維径5〜25μmのモノフィラメント糸がMDおよびTDで1インチ当たり80〜300本交互に織り込まれた厚さ10〜50μmのメッシュ基材を用いる。好ましくは繊維径10〜20μmのモノフィラメント糸がMDおよびTDで1インチ当たり100〜200本交互に織り込まれた厚さ20〜40μmのメッシュ基材である。この範囲にあるメッシュ基材を用いると、熱伝導性両面粘着テープの貼り直しの際の不織布の切断し難さ、湾曲したLED部品を直線状へ曲げ戻した場合のLED基板への追従性、不織布への粘着剤の含浸性をバランスよく向上させることができ、熱伝導性を向上させることができる。
【0023】
前述の不織布、メッシュ基材は、熱伝導性両面粘着テープの構成にした際に、引張速度300mm/minの90°ピール粘着力より高い引張破断強度であり、23℃50%RH中での300mm/minの引張速度において、5〜50N/20mm幅の引張破断強度が好ましい。とくに粘着テープは流れ方向(MD)へ貼付されていくことが多く、粘着テープの貼り直しの際に流れ方向(MD)へ応力がかかるため、流れ方向(MD)の引張破断強度は10〜50N/20mm幅が好ましい。
【0024】
[熱伝導性粘着剤層]
本発明の熱伝導性粘着テープにおいては、粘着剤層として熱伝導性の粘着剤層を使用する。当該熱伝導性粘着剤層としては、通常の熱伝導性粘着テープに使用される熱伝導性の粘着剤層を使用でき、アクリル系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物等の粘着剤組成物に、導電性フィラーを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を好ましく使用できる。
【0025】
なかでも、(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分とするアクリル系共重合体と、熱伝導性の無機フィラーとを含有するアクリル系粘着剤組成物を好ましく使用できる。
【0026】
(アクリル系共重合体)
アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体は、(メタ)アクリレートモノマーを主たるモノマー成分とするアクリル系共重合体である。主たるモノマー成分として使用する(メタ)アクリレートとしては、粘着剤に使用する各種(メタ)アクリレートを使用でき、なかでもアルキル基の炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用できる。炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のモノマーがあげられ、これらの1種または2種以上が用いられる。なかでも、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレート、特にn−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートはフィラーを添加しても粘着性を確保しやすいため好ましい。
【0027】
炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の50質量%以上とすることが好ましく、60〜98質量%であることが好ましく、80質量%〜98質量%以上であることが更に好ましい。
【0028】
また、本発明に使用する粘着剤組成物においては、上記主たる(メタ)アクリレートモノマーに、架橋剤と架橋反応するビニルモノマーとして炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーを併用することも好ましい。当該炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーを使用することでアクリル系共重合体に無機フィラーを多量に含有しても凝集性と流動性とを特に好適に兼備できる。炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーは、側鎖が長いため架橋点の流動性に優れる。また、炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーは、ガラス転移温度が低いため、粘着剤層の損失正接のピークを示す温度が低くなり、流動性に優れる粘着剤組成物を実現できる。さらに、炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーは立体障害が少ないため末端のカルボキシ基と架橋剤が反応しやすく粘着剤組成物の凝集力を得ることができる。このように、当該(メタ)アクリレートモノマーを使用することで、樹脂の凝集力を低下させずに粘着剤の凝集性と流動性を両立でき、得られる粘着剤組成物は多量のフィラーを含有しても特に優れた粘着物性を示す。
【0029】
炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、下式(1)にて表わされる(メタ)アクリレートモノマーを例示できる。
【0030】
【化1】
(式(1)中、Rは水素又はメチル基であり、Rはアルキル基又は水酸基を側鎖に含んでもよい炭素数2以上のアルキレン基であり、Xはカルボキシ基又はジカルボン酸残基であり、nは1〜2である。)
【0031】
なお、上記ジカルボン酸残基とは、分子鎖末端にジカルボン酸の一方のカルボキシ基が結合した構造におけるジカルボン酸の残基を表し、例えば、HOOC−R−COOHとして表わされるジカルボン酸により形成されるジカルボン酸残基は−OOC−R−COOHである。当該ジカルボン酸残基を構成するジカルボン酸としては、上記Rが直接結合したジカルボン酸や、上記Rとして二価の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基を有するジカルボン酸を適宜使用でき、なかでも脂肪族炭化水素基、特に鎖状脂肪族炭化水素基を有するジカルボン酸は立体障害が生じにくいため好ましい。好適なジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を例示できる。
【0032】
上記式(1)で表わされる(メタ)アクリレートのなかでも、Rが炭素数2〜18のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が2〜5のアルキレン基であることが特に好ましい。また、Xがカルボキシ基であることが好ましい。具体的には、例えば、β−カルボキシアルキル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性コハク酸(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性コハク酸(メタ)アクリレート等が例示できる。これらのなかでも、β−カルボキシエチルアクリレートを特に好ましく使用できる。
【0033】
炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量を当該範囲とすることで、架橋点を好適に形成しやすくなり、粘着剤の凝集力や初期接着性を向上させやすくなる。
【0034】
アクリル系共重合体を構成するモノマー成分としては、上記以外のモノマー成分として、各種ビニルモノマーを使用できる。このようなビニルモノマーとしては、カルボキシ基含有モノマーを好ましく使用でき、当該カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、クロトン酸等の1種又は2種以上を使用できる。なかでもアクリル酸、メタクリル酸は、アクリル系共重合体の凝集性を好適に調整しやすいため好ましく使用できる。
【0035】
当該カルボキシ基含有ビニルモノマーの含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の10質量%以下であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。当該範囲で含有することにより、粘着剤の凝集力や保持力、接着性を、向上させやすい。
【0036】
また、その他のビニルモノマーとして、酢酸ビニル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有モノマー、炭素数1〜3の(メタ)アクリレート、炭素数13以上の(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、スチレン等、公知のビニルモノマーを使用してもよい。
【0037】
その他のビニルモノマーを使用する場合の含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。当該範囲で含有することにより、粘着剤の凝集力や保持力、接着性を好適な範囲に調整しやすい。
【0038】
上記アクリル系共重合は、溶液重合法、塊状重合法などの公知の重合方法により共重合させることにより得ることができる。重合開始方法も過酸化ベンゾイルや過酸化ラウリロイルなどの過酸化物系、アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾ系の熱重合開始剤を用いた熱による開始方法や、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルフォスフィンオキシド系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系の光重合開始剤を用いた紫外線照射による開始方法や、電子線照射による方法を任意に選択できる。
【0039】
上記範囲内で重合したアクリル系共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィのポリスチレン換算による重量平均分子量が30万〜80万、より好ましくは40万〜70万である。重量平均分子量が30万以上とすることで粘着剤の凝集力を確保しやすくなり、高温下での接着性を向上させやすい。また重量平均分子量が80万以下とすることで、熱伝導性フィラーの分散性や、粘着剤の塗工性、初期接着性を向上させやすい。
【0040】
(無機フィラー)
本発明に使用する無機フィラーは、熱伝導性を有する無機フィラーを使用でき、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属、セラミックス等を使用できる。具体的には、熱伝導性のフィラーとして、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、ホウ素化チタン、カーボン、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、金、銀等が挙げられる。これら無機フィラーは、アクリル系共重合体への分散性向上のため、シランカップリング処理、ステアリン酸処理などの表面処理を施してもよい。
【0041】
これら無機フィラーは、必要に応じて適宜選択して使用すればよいが、LEDの固定等の電子機器部品の固定に際しては、熱伝導性とともに難燃性も有する無機フィラーを使用することが好ましい。特に、LED固定用途においては、熱伝導に加えて難燃性を有するフィラーとして、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を使用することが特に好ましい。これらの金属水酸化物は熱伝導性を付与することができる。特に金属水酸化物の中で水酸化アルミニウムは、250℃程度から熱分解反応が起こり、難燃効果を発現するため使用することが好ましい。
【0042】
無機フィラーの形状は、規則的な形状又は不規則な形状のいずれであってもよく、例えば、多角形状、立方体状、楕円状、球状、針状、平板状、鱗片状又はこれらを組み合わせた形状等が挙げられ、これらが凝集したフィラーであってもよい。無機フィラーの大きさは、最大となる幅や長さの平均、例えば粒子状の場合にはその平均粒径が、0.5〜50μmであることが好ましい。より好ましくは1〜30μmである。なお、フィラーの大きさ、形状は、得られる粘着テープの厚さにより適宜選択される。粘着テープの厚さよりも無機フィラーの最大の幅や長さが小さい方が望ましい。
【0043】
粘着剤組成物への無機フィラーの添加量としては、良好な熱伝導性や難燃性を実現するために、アクリル系共重合体100質量部に対し200質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは220質量部〜280質量部、さらに好ましくは240〜260質量部である。上記粘着剤組成物のなかでも、架橋剤と架橋反応するビニルモノマーとして炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシ基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートモノマーを使用した粘着剤組成物は、多量の無機フィラーを含有しても好適な接着性を実現できるため好ましい。
【0044】
(粘着付与樹脂)
本発明の熱伝導性粘着剤には粘着物性を向上する目的で粘着付与樹脂を使用してもよい。粘着付与樹脂としては公知の脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂などの石油樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、重合ロジンエステル樹脂、ロジンフェノールなどのロジン系樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などが使用できる。また粘着付与樹脂は2種類以上の樹脂を併用することができる。
【0045】
粘着付与樹脂の添加量としては、アクリル系共重合体100質量部に対し20質量部以下が好ましい。より好ましくは10質量部以下である。当該範囲とすることで、良好な粘着付与効果や初期接着性を得られやすくなる。また、特に高い難燃性、例えばUL94V−0やVTM−0等の高い難燃性を要求される用途については、粘着付与樹脂を使用しないことも好ましい。
【0046】
また、粘着付与樹脂は、引火点が高い粘着付与樹脂を使用することが好ましく、引火点が200度以上の樹脂を使用することが特に好ましい。引火点が200度以上の粘着付与樹脂を使用すると、難燃性フィラーが燃焼時に熱分解して生じる難燃効果を特に効率的に発揮しやすくなる。
【0047】
(架橋剤)
本発明の粘着剤組成物にはエポキシ系架橋剤を使用することで、凝集力及び耐熱性を向上できる。エポキシ系架橋剤としては、1.3−ビス(N,N―グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製テトラッドC)、1.3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)ベンゼン(三菱ガス化学社製テトラッドX)など公知のエポキシ系架橋剤を使用できる。
【0048】
架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。本発明の粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、30質量%〜65質量%が好ましい。またより好ましくは40質量%〜55質量%である。尚、ゲル分率の値は、無機フィラーの添加量を差し引いた樹脂の不溶分をさす。当該範囲とすることで、架橋後の粘着剤層に応力が加わった際にも、アクリル系共重合体と無機フィラーとの間の剥離が生じにくく、良好な粘着物性を得やすく、また、好適な初期接着性を得やすくなる。
【0049】
(分散剤)
本発明の粘着剤組成物には、分散性を向上させるため各種分散剤を使用してもよい。特に、アミン系の分散剤は、エポキシ系架橋剤の架橋阻害を生じることなく好適な接着性を有する粘着剤層を形成できるため好ましい。また、アクリル系の粘着剤組成物中に多量の無機フィラーを使用した場合にも、好適に無機フィラーを分散でき、かつ、保管時に無機フィラーが沈降した場合にも、凝集して再分散できないケーキング状態の発生を好適に防止できる。なかでも、アミン化が5以上のアミン系分散剤を好ましく使用でき、10〜150がより好ましく、20〜80がさらに好ましい。アミン系の分散剤としては、例えば、ビックケミージャパン社製BYK−112、BYK−2008等が挙げられる。
【0050】
粘着剤組成物への分散剤の添加量としては、エポキシ系架橋剤の架橋阻害が無く、良好なケーキング防止効果や接着性を実現するために、アクリル系共重合体100質量部に対し固形分で3〜5質量部が好ましい。アミン系分散剤の添加量を当該範囲とすることで、得られる粘着剤層の凝集力を確保しやすく、また、無機フィラーの良好な分散性や耐ケーキング性を得やすいことから、特に好適な保持力や接着性を実現できる。
【0051】
また、本発明の粘着剤組成物は、熱伝導性、難燃性、粘着物性を大きく阻害しない範囲内で、老化防止剤、着色剤などの添加剤を適宜使用してもよい。
【0052】
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層は損失正接のピークを示す温度が−40℃以上、−10℃以下であることが好ましい。当該範囲とすることで、無機フィラーを多く配合しても粘着剤の流動性と凝集性を両立しやすくなる。なお、損失正接のピーク温度は、5mm厚にまで重ね合わせた粘着剤層を試験片とし、レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2kSTDに直径7.9mmのパラレルプレートを装着し、試験片を挟み込み周波数1Hz、温度分散法で測定した値である。
【0053】
(粘着剤製造方法)
本発明の粘着剤組成物の製造方法として、前述の製造方法でアクリル系共重合体を製造した後に、必要に応じて粘着付与樹脂及び粘度調整用に酢酸エチル、ヘキサン、MEKなどの有機溶剤を添加し、粘着付与樹脂を溶解させながら混合し、得られた樹脂組成物を取り出す。次に得られた樹脂組成物と無機フィラー及びその他添加剤とを、プラネタリーミキサーなどの低速攪拌機を用い、樹脂組成物、無機フィラー及びその他添加剤が均一になるまで混合し、粘着剤組成物を得る。
【0054】
[熱伝導性両面粘着テープ]
本発明の熱伝導性両面粘着テープは、基材の少なくとも一面に前述の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープである。粘着剤層の厚さは、1回の乾燥後塗工厚さで10μm〜150μmであることが好ましい。当該範囲とすることで、粘着物性を好適に確保しやすく、また、製造時の粘着剤中の希釈溶剤の乾燥が容易となり生産性を向上させやすくなる。
【0055】
粘着テープの厚さは、特に両面粘着テープの場合、50μm〜300μmであることが好ましい。接合させる部品と熱伝導性両面粘着テープ間に空隙を発生させないため、より好ましくは100μm〜280μmである。
【0056】
熱伝導性両面粘着テープの製造方法は、剥離ライナーなどの支持体に前記粘着剤組成物をロールコーターやダイコーターなどで一定の厚さで塗布し、ドライヤーで希釈溶剤を乾燥させ、基材の片側に貼合することで片面粘着テープが製造できる。更に別の剥離ライナーに前記粘着剤組成物を塗布、乾燥したものを基材のもう一方の側に貼合することで両面粘着テープが製造できる。
【0057】
粘着剤組成物中の無機フィラーとして、熱伝導性フィラーを使用した熱伝導性粘着剤組成物を使用した本発明の両面粘着テープは、特に液晶画像表示のバックライト等に使用されるLED光源の固定に特に好適に使用できる。具体的な使用態様の例としては、以下のような態様を例示できる。液晶画像表示のバックライトに使用されるLED光源ユニットとして、3〜20mm幅の細長いアルミ製などの板の上にLEDチップが多数実装されたLED基板を使用し、LED基板を画面の端の一辺または二辺に設置し、導光板と拡散板でLEDの光を画面全体に導き発光させる。LED基板はバックライト背面筐体にL字アングルで固定される。LED前述のLED基板とL字アングルの固定に本発明の熱伝導性両面粘着テープを使用することができる。LEDが発光することにより発生した熱は、熱伝導性両面粘着テープを介してL字アングル及び液晶バックライト背面筐体に放熱される。
【0058】
従来はLED光源ユニットの固定には、基材無しの熱伝導性粘着テープが使用されていたが、LED光源ユニットを本発明の粘着テープで固定する場合、基材無しの熱伝導性粘着テープに比べ粘着テープが伸びたり切断しにくく、貼り作業性に優れる。また、LED基板は製造工程および搬送工程等において、LEDチップ側へ凹み状に湾曲することがある。湾曲の程度としては、3〜20mm幅で100〜500mm長さのLED基板において、LEDチップ側を天面側にして平坦な場所へ置いた際、長手方向の両端が3〜30mm浮く状態となる。LED基板への熱伝導性両面粘着テープの貼付は、LED基板が湾曲した状態で貼付された後、バックライト背面筐体へ貼付される際、LED基板を直線状へ曲げ戻され貼付される。この際、熱伝導性両面粘着テープは長手方向へ圧縮され、LED基板の長さに対して基材が余りやすくなる。熱伝導性両面粘着テープの基材の弾性が不十分であると、LED基板への両面粘着テープの追従性が劣り、波ジワが発生する。波ジワが発生すると、LED基板あるいはバックライト背面筐体の間に空隙が発生し、熱伝導性が悪化する。本発明の熱伝導性両面粘着テープを使用することにより、LEDチップ側の長手方向へ凹み状に湾曲したLED基板を直線状へ曲げ戻されてバックライト背面筐体へ貼付される際、熱伝導性両面粘着テープに波ジワが発生しにくく、LED基板とバックライト背面筐体に密着し、熱伝導性が良好となる。
【0059】
熱伝導性フィラーを使用した粘着テープをLED光源の固定に使用する場合には、粘着テープの熱伝導率は0.6W/m・k以上であることが好ましい。また、難燃性はUnderwriters Laboratories Inc.社の規格において、UL94V−2またはVTM−2以上の性能であることが好ましい。さらに粘着物性として、23℃50%RH下でのアルミへの貼付1時間後の引張速度300mm/minの90°ピール粘着力が5〜10N/20mm幅、保持力は、5mm幅×30mm長の面積で100gの荷重をせん断方向にかけた際に24時間保持する性能であることが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下に実施例について具体的に説明をするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
(1−1)アクリル系共重合体の調整
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート96.4質量部、β−カルボキシエチルアクリレート2.4質量部、アクリル酸1.2質量部、酢酸エチル98質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。その後、予め酢酸エチルにて溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液2質量部(固形分5質量%)を添加した。その後、攪拌下75℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過した。不揮発分50質量%、粘度8000mPa・sの粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物中のアクリル重合体の重量平均分子量は50万であった。
【0062】
(1−2)粘着剤組成物の調整
プラネタリーミキサーの容器に、無機フィラーとして熱伝導の水酸化アルミニウム(昭和電工社製ハイジライトH32、平均粒径8μm)を上記(1−1)の粘着剤組成物固形分100質量部に対し250質量部を入れ、その後、上記(1−1)で得られた粘着剤組成物を加える。30分攪拌させ水酸化アルミニウと粘着剤組成物を均一に混合させた。酢酸エチルを加え固形分64質量%になるよう調整し、粘度6700mPa・sの熱伝導粘着剤組成物(A)を得た。
【0063】
(1−3)不織布の調整
マニラ麻50質量%、ポリエステル30質量%、再生セルロース19.5質量%、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂0.5質量%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機にて、坪量9.4g/m、密度0.25g/cm、厚さ30μmになるように抄紙し、引張破断強度がMDで11.2N/20mm、TDで5.1N/20mm、弾性率がMDで1.7GPa、TDで0.6GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が0.10秒であった。
【0064】
(1−4)粘着テープの調整
(1−2)で得られた熱伝導粘着剤組成物(A)へ、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製テトラッドC)を固形分2質量%になるよう酢酸エチルで溶解した溶液を熱伝導粘着剤組成物中のアクリル共重合体固形分100部に対して、0.42部配合し、ディゾルバー攪拌機で30分間攪拌する。得られた粘着剤組成物Aを剥離ライナーに乾燥後厚さが95μmになるようにロールコーターで塗布し、80℃ドライヤー中で3分間乾燥させる。同様にして計2枚の粘着シートを得る。(1−3)で得られた厚さ30μmの不織布の両側に粘着シートをラミネートし、厚さ200μmの両面粘着テープを作成した。架橋剤の架橋反応のため40℃乾燥機に48時間養生させ両面粘着テープを得た。
【0065】
[実施例2]
不織布として、マニラ麻40質量%、ポリエステル40質量%、再生セルロース19.5質量%、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂0.5質量%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機にて、坪量16.8g/m、密度0.28g/cm、厚さ45μmになるように抄紙し、引張破断強度がMDで17.6N/20mm、TDで7.6N/20mm、弾性率がMDで1.8GPa、TDで0.6GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が0.20秒であった。得られた不織布を基材として使用し、厚さ213μmにしたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0066】
[実施例3]
不織布として、マニラ麻50質量%、木材パルプ30質量%、レーヨン繊維17.5質量%、ポリビニルアルコール繊維2質量%、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂0.5質量%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機にて、坪量17.5g/m、密度0.34g/cm、厚さ40μmになるように抄紙し、引張破断強度がMDで12.4N/20mm、TDで11.2N/20mm、弾性率がMDで1.2GPa、TD1.2GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が0.30秒であった。得られた不織布を基材として使用し、厚さ212μmにしたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0067】
[実施例4]
不織布として、マニラ麻80質量%、再生セルロース20質量%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機にて、坪量17.0g/m、密度0.30g/cm、厚さ47μmになるように抄紙し、外添強化剤として尿素リン酸エステル化でんぷん水溶液を不織布に対し、ワイヤーバーにて100℃で3分間乾燥後、0.5g/mとなるよう塗布し、引張破断強度がMDで21.2N/20mm、TDで21.2N/20mm、弾性率がMDで1.6GPa、TD0.9GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が0.20秒であった。得られた不織布を基材として使用し、厚さ213μmにしたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0068】
[実施例5]
基材として、繊維径25μmのポリエステル製モノフィラメント糸を、MDとTDへ1インチ当たり132本となるよう交互に織り込んだ厚さ50μmのメッシュ基材を作成し、引張破断強度がMDで40.6N/20mm、TDで41.6N/20mm、弾性率がMDで0.5GPa、TD0.6GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が0.06秒であった。得られた不織布を使用し、厚さ208μmにしたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0069】
[実施例6]
実施例1における水酸化アルミニウム(昭和電工社製ハイジライトH32、平均粒径8μm)の添加量を、粘着剤組成物固形分100質量部に対し270質量部に変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導粘着剤組成物(B)を得た。得られた熱伝導粘着剤組成物(B)を用いて、実施例1と同様にして両面粘着テープを作成した。
【0070】
[実施例7]
実施例1における水酸化アルミニウム(昭和電工社製ハイジライトH32、平均粒径8μm)の添加量を、粘着剤組成物固形分100質量部に対し220質量部に変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導粘着剤組成物(C)を得た。得られた熱伝導粘着剤組成物(C)を用いて、実施例1と同様にして両面粘着テープを作成した。
【0071】
[実施例8]
実施例1における水酸化アルミニウム(昭和電工社製ハイジライトH32、平均粒径8μm)の添加量を、粘着剤組成物固形分100質量部に対し200質量部に変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導粘着剤組成物(D)を得た。得られた熱伝導粘着剤組成物(D)を用いて、実施例1と同様にして両面粘着テープを作成した。
【0072】
[実施例9]
粘着付与剤として、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製PX1250)をアクリル共重合体固形分100質量部に対し15質量部、重合ロジンペンタエリスリトール(ハリマ化成社製ハリタックPCJ)をアクリル共重合体固形分100質量部に対し5質量部を配合させた熱伝導粘着剤組成物(E)を用いたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。なお、粘着付与剤の配合は後述の粘着剤組成物の調整方法により行った。
【0073】
[実施例10]
粘着付与剤として、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製PX1250)の使用量15質量部を、アクリル共重合体固形分100質量部に対し5質量部とした熱伝導粘着剤組成物(F)を用いたこと以外は実施例9と同様に両面粘着テープを得た。
【0074】
[実施例11]
(11−1)アクリル系共重合体の調整
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート30.0質量部、ブチルアクリレート63.4質量部、アクリル酸3.0質量部、酢酸ビニル3.5質量部、β―ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、酢酸エチル98質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。その後、予め酢酸エチルにて溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液2質量部(固形分5質量%)を添加した。その後、攪拌下75℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過した。不揮発分50質量%、粘度8000mPa・s、の粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物中のアクリル重合体の重量平均分子量は50万であった。
【0075】
得られたアクリル共重合体溶液を用いて(1−2)粘着剤組成物の調整に記載の方法にて熱伝導粘着剤組成物の調整を行い、熱伝導性粘着剤組成物(G)を得た。得られた熱伝導粘着剤組成物(G)を用いて(1−3)粘着テープの調整に記載の方法にて両面粘着テープを得た。
【0076】
[実施例12]
(12−1)アクリル系共重合体の調整
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ブチルアクリレート93.4質量部、アクリル酸3.5質量部、酢酸ビニル3.0質量部、β―ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、酢酸エチル98質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。その後、予め酢酸エチルにて溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液2質量部(固形分5質量%)を添加した。その後、攪拌下75℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過した。不揮発分50質量%、粘度8000mPa・sの粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物中のアクリル重合体の重量平均分子量は50万であった。
【0077】
得られたアクリル共重合体溶液を用いて(1−2)粘着剤組成物の調整に記載の方法にて熱伝導粘着剤組成物の調整を行い熱伝導性粘着剤組成物(H)を得た。得られた熱伝導粘着剤組成物(H)を用いて(1−3)粘着テープの調整に記載の方法にて両面粘着テープを得た。
【0078】
[比較例1]
基材を使用しないこと意外は実施例1と同様にして厚さ190μmの基材無し両面粘着テープを得た。
【0079】
[比較例2]
基材として、厚さ6μmのPETフィルム(東レ社製ルミラーS)を使用し、厚さ196μmにしたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。用いた厚さ6μmのPETフィルムは、引張破断強度がMDで18.2N/20mm、TDで19.2N/20mm、弾性率がMDで4.3GPa、TDで4.7GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が10秒を超える値であった。
【0080】
[比較例3]
基材として、厚さ30μmのポリイミドコートPETフィルム(東レ社製ルミラーZV70)を使用し、厚さ220μmにしたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。厚さ30μmのポリイミドコートPETフィルムは、引張破断強度がMDで90N/20mm、TDで102N/20mm、弾性率がMDで3.6GPa、TDで4.2GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が10秒以上であった。
【0081】
[比較例4]
不織布として、マニラ麻50質量%、ポリエステル30質量%、再生セルロース19.5質量%、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂0.5質量%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機にて、坪量17.3g/m、密度0.25g/cm、厚さ55μmになるように抄紙し、引張破断強度がMDで26.5N/20mm、TDで23.6N/20mm、弾性率がMDで1.7GPa、TDで0.6GPaを得た。し、引張破断強度がMDで12.4N/20mm、TDで11.2N/20mm、弾性率がMDで1.2GPa、TD1.2GPaを得た。10枚重ねのガーレ式透気度が0.42秒であった。得られた不織布を基材として使用し、厚さ223μmにしたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0082】
実施例、比較例として作成した粘着テープについて、以下に示す方法で、波ジワ発生の有無、90°ピール粘着力、引張破断強度、弾性率、熱伝導性、保持力、粘着剤層損失正接ピーク温度、ゲル分率、を評価した。得られた結果を下表に示した。
【0083】
[ガーレ式透気度]
上記実施例及び比較例にて使用した中芯基材を、23℃50%RH中にて基材10枚を重ねてセットし、直径28.6mm、重さ567gの内筒が落下して100mlの空気が通過する時間を測定した。測定機器として、JIS P8117に準拠の東洋精機製作所製のガーレ式透過度を使用した。
【0084】
[引張弾性率]
上記実施例及び比較例にて得られた基材および粘着テープを、幅20mm、長さ150mmの試験片を準備する。23℃50%RHの環境で、JIS K7161に規定の方法にて引っ張り、引張弾性率を測定した。粘着テープの場合、粘着剤層の引張弾性率は無視できるほど小さいため、試料の厚みは基材の厚さとした。(引張速度:1mm/min、試験片の形状:JIS K7127の試験片タイプ2)。測定機器として、エー・アンド・ディ社製テンシロン万能試験機「RTA−100」を使用し、試験片の標線間距離50mm、つかみ間距離100mm、つかみ部分長さ50mmとした。
【0085】
[引張破断強度]
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープを、幅20mm、長さ150mmの試験片を準備する。23℃50%RHの環境で、JIS K7161に規定の方法にて引っ張り、破断時の強度を測定した。(引張速度:300mm/min、試験片の形状:JIS K7127の試験片タイプ2)。測定機器として、エー・アンド・ディ社製テンシロン万能試験機「RTA−100」を使用し、試験片の標線間距離50mm、つかみ間距離100mm、つかみ部分長さ50mmとした。
【0086】
[粘着剤層損失正接ピーク温度]
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープを5mm厚にまで重ね合わせて試験片とし、レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2kSTDに直径7.9mmのパラレルプレートを装着し、試験片を挟み込み周波数1Hz、温度分散法で測定した。
【0087】
[ゲル分率]
上記実施例および比較例にて得られた粘着テープを40mm×50mmに切断し、天秤で重量を測定後、トルエンに浸漬し常温下で24時間静置した。浸漬後に粘着テープを取り出し、乾燥機で105℃で1時間乾燥させ、室温で冷却した後に粘着テープの重量を測定した。トルエン浸漬前のフィラーを差し引いた粘着剤組成物重量に対するトルエン不溶分の粘着剤重量の割合を百分率で求めた。
【0088】
[熱伝導率]
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープを空気を巻き込まないように500μmになるまで貼り重ねせた。最外面は厚さ6μmのPETフィルムを貼合した。得られた試料を5cm×15cmに切断して測定用試料を作製した。得られた測定用試料を京都電子工業性熱伝導率測定機QTM−500と、薄膜法測定用ソフトQTM−5Wを使用し測定を行った。
【0089】
[90°ピール粘着力]
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープの片面に厚さ50μmのアルミ箔を貼合し20mm幅に切断した。23℃50%RH雰囲気下でもう一方の粘着面をアルミ板に2kgローラー1往復の加圧条件で貼付し、1時間静置後に90°方向へ300mm/分の引張速度で引き剥がした際の粘着力を測定した。
【0090】
[リワーク性]
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープの5mm幅×100mm長さとした試料を、片面の剥離ライナーを残した状態で23℃50%RH中で厚さ500μmのアルミ板へ貼付し、2kgローラー1往復1往復の加圧条件で貼付し、すぐに90°方向へ300mm/分の引張速度で引き剥がした。引き剥がした際に粘着テープが伸びたり、アルミ板上へ粘着剤が残留した場合を×とし、粘着テープが伸びなかったり、アルミ板上へ粘着剤が残留しなかった場合を○とした。
【0091】
[波ジワ発生の有無]
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープを、直径180mmの円筒に沿わせて湾曲させた1.2mm厚さ×7mm幅×150mm長さのアルミ板の凸面側へ貼付した。23℃50%RH中に1日放置後、1秒間でアルミ板を平坦な直線状へ曲げ戻し、波ジワ発生の有無を目視確認した。
◎:波ジワ発生無し
○:若干の波ジワが発生するが突起にならない
×:波ジワ発生し、波ジワ部が突起となる
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
上記表から明らかなように、実施例1〜12の本願発明の熱伝導性粘着テープは、好適な接着性とリワーク性とを有するものであった。また、実施例1〜12の熱伝導性粘着テープは、湾曲した被着体へ貼付した後、直線状に戻されても波ジワの発生がなく、あるいは若干の波ジワが発生しても波ジワ部が突起とならないことから、被着体との密着が良好であり、好適な熱伝導性を実現できるものであった。一方、比較例1の熱伝導性粘着テープは、リワーク性に乏しいものであった。また、比較例2〜4の熱伝導性粘着テープは、被着体が平らな直線状に曲げ戻された際に突起状に波ジワが発生し、被着体と接着した際に熱伝導のロスが生じるものであった。