特許第6044941号(P6044941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6044941光学顕微鏡、および、光学顕微鏡のオートフォーカス装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044941
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光学顕微鏡、および、光学顕微鏡のオートフォーカス装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20161206BHJP
   G02B 7/28 20060101ALI20161206BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G02B21/00
   G02B7/28 J
   G03B15/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-548592(P2014-548592)
(86)(22)【出願日】2013年11月20日
(86)【国際出願番号】JP2013081259
(87)【国際公開番号】WO2014080932
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-257426(P2012-257426)
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(個人型研究(さきがけ))「光の利用と物質材料・生命機能/ナノサイズ高輝度バイオ光源の開発と生命機能計測への応用」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】永井 健治
(72)【発明者】
【氏名】新井 由之
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−159854(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025345(WO,A1)
【文献】 特開2007−148161(JP,A)
【文献】 特開2010−218232(JP,A)
【文献】 特開2011−123518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00
G02B 21/06 − 21/36
G02B 7/28 − 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズで得られた観察対象物の光像を撮像装置で撮像し、画像信号として送出可能な観察光学系と、
フォーカス用光源から照射されたオートフォーカス光に基づいて前記対物レンズの焦点位置を調整し、前記観察対象物に対してフォーカスさせるオートフォーカス装置とを備え、
前記撮像装置が、撮像期間と非撮像期間とを繰り返しながら前記撮像期間の撮像画像を連続して得ることで前記観察対象物の動画像を撮像するとともに、前記撮像期間と前記非撮像期間との動作タイミングを出力し、
前記動作タイミングに基づいて、前記撮像装置が前記観察対象物の画像を撮像していない前記非撮像期間に前記フォーカス用光源から前記オートフォーカス光が照射されることを特徴とする光学顕微鏡。
【請求項2】
前記オートフォーカス装置は、複数回の前記非撮像期間の内の所定の非撮像期間を選択し、選択された前記非撮像期間においてのみオートフォーカス動作を行う請求項1に記載の光学顕微鏡。
【請求項3】
前記撮像装置が、撮像素子としてCCDイメージセンサ、または、CMOSイメージセンサを備え、前記非撮像期間が前記撮像素子が撮像データを転送する読出期間である請求項1または2に記載の光学顕微鏡。
【請求項4】
前記フォーカス用光源が照射する前記オートフォーカス光が可視領域外の赤外光である請求項1〜3のいずれかに記載の光学顕微鏡。
【請求項5】
化学反応で発光する発光物質を前記観察対象物として観測する化学発光観察に用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の光学顕微鏡。
【請求項6】
前記観察対象物が載置されるガラス基板の界面から所定の距離離れた位置に存在する観測対象部分に対し、前記ガラス基板の界面で反射された前記オートフォーカス光によりオートフォーカスを行うフォーカス調整レンズを備えた請求項1〜5のいずれかに記載の光学顕微鏡。
【請求項7】
前記対物レンズが前記観察対象物の下方に位置する倒立型顕微鏡である請求項1〜6のいずれかに記載の光学顕微鏡。
【請求項8】
対物レンズで得られた観察対象物の光像を画像信号として送出可能な撮像装置を備えた光学顕微鏡に用いられ、フォーカス用光源から照射されるオートフォーカス光の反射光に基づいて前記対物レンズのフォーカス位置を調整するオートフォーカス装置であって、
前記撮像装置が、撮像期間と非撮像期間とを繰り返しながら前記撮像期間の撮像画像を連続して得ることで前記観察対象物の動画像を撮像するとともに、前記撮像期間と前記非撮像期間との動作タイミングを出力し、前記動作タイミングに基づいて、前記撮像装置が前記観察対象物の画像を撮像していない前記非撮像期間に前記フォーカス用光源から前記オートフォーカス光を照射することを特徴とする光学顕微鏡のオートフォーカス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置により撮像された観察対象物の光像を画像信号として送出可能な光学顕微鏡に関し、特に、オートフォーカス光を用いて対物レンズのフォーカス調整を行うオートフォーカス装置を備えた光学顕微鏡、および、光学顕微鏡のオートフォーカス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡とその周辺装置は、さまざまな分野での研究に貢献しているが、近年は特に観察対象物を撮像装置により撮像する機能を備え、撮像した静止画像や動画像の画像データをコンピュータや大型モニタなどの外部機器に送出して、画像解析や現象解析に供されるようになっている。また、光学顕微鏡により取得された画像を解析しながら光学顕微鏡の調整を行うために、観察対象物が載置されるステージの位置調整や装着された異なる倍率を有する複数の対物レンズの交換操作を遠隔操作として行うことができるなど、光学顕微鏡の全体の機能に対する自動化も進んでいる。
【0003】
例えば、生命科学研究の分野では、高解像度の光学顕微鏡を用いて細胞内部の微細構造の変化や細胞分化パターンの解析など行うために、高解像度な解析画像を長時間経過観察するタイムラプス観察が行われることが多い。光学顕微鏡は、その高倍率性故にレンズの焦点範囲が極めて狭く、わずかな振動や環境温度の変化により観察対象物が対物レンズの焦点位置から外れてしまうこととなる。また、上記のような細胞内部の構造変化を観察するためには、観察対象の細胞に外部から熱的な刺激が加えられることも多く、その結果として環境温度の変化が生じると観察対象物へのフォーカス状態が崩れてしまい、正確に細胞構造の変化が観察できないという不都合を生じる。
【0004】
このため、対物レンズのフォーカス状態を自動的に維持することができる、オートフォーカス装置を備えた光学顕微鏡が開発されている。光学顕微鏡の分野におけるオートフォーカス装置としては、高速追従性を備えたアクティブオートフォーカス方式が用いられている。このアクティブオートフォーカス方式は、観察対象物を載せるスライドガラスと観察対象物に被せられるカバーガラスとの界面に設けられた反射膜や界面自体によって、対物レンズを介して照射されるオートフォーカス光を反射させ、その反射光を受光して対物レンズと観察対象物との間隔を正確に測距し、この間隔を一定に保ち続けるというものである。
【0005】
近年では、生命科学研究分野で行われるような細胞中の一つの核のみを観測対象とする場合などの、スライドガラスの界面と観察対象物である細胞核とが、対物レンズとの間隔が微妙に異なる位置にある場合でも正確なオートフォーカスを行うことができる光学顕微鏡が提案されている。このような光学顕微鏡として、アクティブオートフォーカス方式によるスライドガラス等へのフォーカス操作と、操作者が観察光学系を用いて行う観察対象物へのフォーカス操作によって取得されるデータとに基づいて、アクティブオートフォーカス方式により得られたフォーカス位置から一定量シフトさせた位置にフォーカスさせる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、アクティブオートフォーカス方式において、オートフォーカス光学系内にフォーカス調整レンズ系を備え、アクティブオートフォーカス方式によるスライドガラス等への自動フォーカス操作が行われた状態で操作者によるフォーカス操作を行ってフォーカスオフセット量を設定し、以降はフォーカス調整レンズによってフォーカスオフセット量を保ったままアクティブオートフォーカス方式によるフォーカス操作が行われる技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−123518号公報
【特許文献2】特開2007−148161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の光学顕微鏡によれば、高速追従性と正確性とを備えたアクティブオートフォーカス方式によって、対物レンズと観察対象物が載置されたスライドガラス等との間隔を一定に保つことができるため、環境温度が変化しても良好なフォーカス状態を保つことができる。この結果、特に、動画像による観察や長時間にわたるタイムラプス観察を好適に行うことができる。
【0009】
従来のアクティブオートフォーカス方式では、オートフォーカス光学系のフォーカス用光源として可視光領域外の赤外光が用いられている。このため、観察光学系の照射光源としてタングステンランプやハロゲンランプなどが用いられる通常の光学顕微鏡や、励起光として近紫外光や青色光が照射される蛍光観察用の顕微鏡などにおいて、フォーカス用光源からの赤外光が観察光学系での監視や撮像装置による撮影画像に実用上の悪影響を及ぼすことが回避されている。
【0010】
しかし、バイオイメージングの一手法である化学発光観察を行う場合には、励起光発光を用いる蛍光発光観察に比べて観察対象物の発光輝度が弱いため、観察光学系内のフィルタなど減光要因を極力取り除いたうえで、さらに高感度な検出器を用いることが必要となる。この場合には、わずかな光でも検出してしまうため、従来のアクティブオートフォーカス方式に用いられる赤外光であっても、観察対象物の画像を得る上での妨害光となってしまう。一方、微弱な発光を検出するためには長時間露光が必要となるが、オートフォーカス装置を停止させた状態での光学顕微鏡で長時間露光を行うと、径時変化等によるフォーカスずれが生じることを回避できず、所望するクリアな撮像画像を得ることができない。
【0011】
そこで本願では、上記した従来の課題を解決して、微弱な発光を有する物質を観察対象物とする場合でも、撮像画像に悪影響を与えることなく対物レンズをフォーカス状態に保つことができる光学顕微鏡を得ること、また、光学顕微鏡に用いられて良好な化学発光観察を可能とすることができるオートフォーカス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願で開示する光学顕微鏡は、対物レンズで得られた観察対象物の光像を撮像装置で撮像し、画像信号として送出可能な観察光学系と、フォーカス用光源から照射されたオートフォーカス光に基づいて前記対物レンズの焦点位置を調整し、前記観察対象物に対してフォーカスさせるオートフォーカス装置とを備え、前記撮像装置が、撮像期間と非撮像期間とを繰り返しながら前記撮像期間の撮像画像を連続して得ることで前記観察対象物の動画像を撮像するとともに、前記撮像期間と前記非撮像期間との動作タイミングを出力し、前記動作タイミングに基づいて、前記撮像装置が前記観察対象物の画像を撮像していない前記非撮像期間に前記フォーカス用光源から前記オートフォーカス光を照射することを特徴とする。
【0013】
また、本願で開示する光学顕微鏡のオートフォーカス装置は、対物レンズで得られた観察対象物の光像を画像信号として送出可能な撮像装置を備えた光学顕微鏡に用いられ、フォーカス用光源から照射されるオートフォーカス光の反射光に基づいて前記対物レンズのフォーカス位置を調整するオートフォーカス装置であって、前記撮像装置が、撮像期間と非撮像期間とを繰り返しながら前記撮像期間の撮像画像を連続して得ることで前記観察対象物の動画像を撮像するとともに、前記撮像期間と前記非撮像期間との動作タイミングを出力し、前記動作タイミングに基づいて、前記撮像装置が前記観察対象物の画像を撮像していない前記非撮像期間に前記フォーカス用光源から前記オートフォーカス光を照射することを特徴とする。

【発明の効果】
【0014】
本願で開示する光学顕微鏡、および、光学顕微鏡のオートフォーカス装置によれば、撮像装置が観察対象物の画像を撮像しない非撮像期間にオートフォーカス光が照射されるため、高感度の検出器を用いた場合でも撮像画像にオートフォーカス光が影響するおそれを回避することができる。このため、観察対象物の発光輝度が弱い場合でも正しくフォーカスされた状態の観察対象物の観察画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態にかかる第1の構成例の光学顕微鏡の概略構成を示すブロック構成図である。
図2】本実施形態にかかる光学顕微鏡における、カメラの露光タイミングとオートフォーカス光の照射タイミングとの関係を示す図である。
図3】本実施形態にかかる第2の構成例の光学顕微鏡の概略構成を示すブロック構成図である。
図4】従来の光学顕微鏡により取得された、蛍光観察と化学発光観察との観察対象の画像例を示す図である。
図5】本実施形態にかかる光学顕微鏡により取得された、蛍光観察と化学発光観察との観察対象の画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従来のアクティブオートフォーカス形式においては、オートフォーカス光を常に照射して位置を検出し続けることで、常にフォーカス位置補正を行っている。しかし、必ずしも常にオートフォーカス動作を行う必要はなく、間欠的にオートフォーカス動作を行うことでも十分に観察対象物へのフォーカス状態を維持することができる。本願で開示する光学顕微鏡は、対物レンズで得られた観察対象物の光像を撮像装置で撮像し、画像信号として送出可能な観察光学系と、フォーカス用光源から照射されたオートフォーカス光に基づいて前記対物レンズの焦点位置を調整し、前記観察対象物に対してフォーカスさせるオートフォーカス装置とを備え、前記撮像装置が前記観察対象物の画像を撮像していない非撮像期間に、前記フォーカス用光源から前記オートフォーカス光が照射される。
【0017】
このようにすることで、撮像装置では、オートフォーカス光が照射されていない状態の観察対象物の画像を撮像することになる。このため、撮像された画像にオートフォーカス光が悪影響を与えることを効果的に回避することができる。
【0018】
本願で開示する光学顕微鏡では、前記撮像装置において前記観察対象物の画像を撮像する撮像期間と前記非撮像期間とが繰り返され、前記オートフォーカス装置が前記非撮像期間においてオートフォーカス動作を行いながら、前記撮像装置が前記撮像期間における前記観察対象物の画像を連続して撮像することが好ましい。このようにすることで、長期間の画像撮影時における焦点ドリフトの影響を回避して、正しくフォーカスされた状態での観察対象物の連続した撮像画像を得ることができる。
【0019】
また、前記オートフォーカス装置は、複数回の前記非撮像期間の内の所定の非撮像期間を選択し、選択された前記非撮像期間においてのみオートフォーカス動作を行うことが好ましい。このようにすることで、例えばフォーカス変動の度合いに応じて必要な間隔で間欠的にオートフォーカス動作を行うことができ、オートフォーカス光が観察対象試料や撮像画像な与え得る不所望な影響を効果的に回避することができる。
【0020】
本願で開示する光学顕微鏡において、前記撮像装置が、撮像素子としてCCDイメージセンサを備え、前記非撮像期間が前記撮像素子が撮像データを転送する読出期間であることが好ましい。このようにすることで、撮像素子として一般的なCCDイメージセンサを用いて、オートフォーカス光の影響の無い観察対象物の画像データを得ることができる。
【0021】
また、前記フォーカス用光源が照射する前記オートフォーカス光が可視領域外の赤外光であることが好ましい。
【0022】
さらに、本願で開示する光学顕微鏡を、化学反応で発光する発光物質を前記観察対象物として観測する化学発光観察に用いることが好ましい。観察対象物の発光輝度が弱く高感度な検知器を用いた場合でも、オートフォーカス光の影響のない観察対象物の画像を得ることができる。
【0023】
また、前記観察対象物が載置されるガラス基板の界面から所定の距離離れた位置に存在する観測対象部分に対し、前記ガラス基板の界面で反射された前記オートフォーカス光によりオートフォーカスを行うフォーカス調整レンズを備えることが好ましい。このようにすることで、培養液内に配置された細胞の細胞核など、観察対象物の観察対象部位がオートフォーカスの基準面から離れて位置する場合でも、良好なフォーカス状態を維持することができる。
【0024】
さらに、本願で開示する光学顕微鏡を、前記対物レンズが前記観察対象物の下方に位置する倒立型顕微鏡とすることができる。
【0025】
また、本願で開示する光学顕微鏡のオートフォーカス装置は、対物レンズで得られた観察対象物の光像を画像信号として送出可能な撮像装置を備えた光学顕微鏡に用いられ、フォーカス用光源から照射されるオートフォーカス光の反射光に基づいて前記対物レンズのフォーカス位置を調整するオートフォーカス装置であって、前記撮像装置が前記観察対象物の画像を撮像していない非撮像期間に、前記フォーカス用光源から前記オートフォーカス光を照射する。
【0026】
このようにすることで、撮像装置によってオートフォーカス光が照射されていない状態の観察対象物の画像を撮像することができ、撮像された画像に対して悪影響を与えることを効果的に回避したオートフォーカス装置を得ることができる。
【0027】
(実施の形態)
以下、本願にかかる光学顕微鏡、および、光学顕微鏡のオートフォーカス装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本実施形態にかかる光学顕微鏡の第1の構成例として、観察対象物の上方に対物レンズが配置された正立型の光学顕微鏡の概略構成を説明するためのブロック図である。
【0029】
図1に示す第1の構成例の光学顕微鏡では、観察対象物1は、ステージ2上に載置されたガラス基板としてのスライドガラス3に載せられ、観察対象物1を覆うカバーガラス4とに挟まれた状態で配置されている。
【0030】
ステージ2は、観察対象物1の上方に位置する対物レンズ5の光軸6に対し、垂直な平面内のX−Y方向において移動可能となっている。なお、ステージ2を対物レンズ5の光軸方向(Z方向)に移動可能とすることもできる。また、ステージ2のX方向およびY方向、場合によってはZ方向への移動を、モータを用いて電動とすることができ、その場合には、ステージ2の移動を制御するステージ制御部を設けて、光学顕微鏡全体を制御する制御部31から、他の部材の操作、例えば対物レンズ5の焦点位置の操作と連動してステージの移動を制御可能とすることができる。
【0031】
本構成例の光学顕微鏡は、対物レンズ5、光路切り替えミラー7、接眼レンズ8、カメラ用レンズ9、撮像装置であるカメラ10により構成される観察光学系と、オートフォーカス光源部11、ハーフミラー12,ダイクロイックミラー13、オートフォーカス集光部14、オートフォーカス受光部15により構成されるオートフォーカス光学系とを備えている。
【0032】
観察光学系は、対物レンズ5により得られた観察対象物1の光像を目視、若しくは、撮像装置であるカメラ10によって静止画像または動画像として観察可能とするものである。本構成例の光学顕微鏡では、観察光学系に光路切り替えミラー7を配置して、接眼レンズ8を介して目視する場合と、カメラ用レンズ9を経てカメラ10により画像データを得る場合とを切り替える構成としているが、目視と画像データの取得とを同時に行える構成とすることも可能である。
【0033】
カメラ10は、CCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image sensor)を撮像素子として備えた撮像装置である。本構成例にかかる光学顕微鏡のカメラ10は、後述するように、カメラ用レンズ9を介して得られた対物レンズ5による観察対象物1の光像を、多数個の受光素子がそれぞれ光の信号として受光する撮像期間と、それぞれの受光素子で得られた電荷を電気信号として外部に送出する読出期間との2つの動作期間が交互に繰り返されるものであり、光信号を電気信号に変換して送出可能なものである。また、カメラ10は、動作期間の内の読出期間と撮像期間との動作タイミングを、光学顕微鏡の制御部31に伝達する。
【0034】
カメラ10で得られた観察対象物1の撮像画像は、電気信号として、光学顕微鏡に付随する、若しくは、外部機器として別個に配置されるモニタ32に送出され、モニタ32において観察対象物1の拡大画像をリアルタイムで観察することができる。なお、モニタ32は、図1に示すようにコンピュータのモニタ部として、得られた画像信号に対してコンピュータによる画像処理を行った後の画像を表示してもよいし、光学顕微鏡に物理的に一体となって付随して、観察対象物1の画像をそのまま表示する機能のみを持つ表示部としてもよい。
【0035】
オートフォーカス光学系のオートフォーカス光源部11は、例えば近赤外光を発光する赤外LEDからなるフォーカス用光源16と、スリット17、コリメータレンズ18、図示しない瞳制限部などにより構成されていて、オートフォーカス光を照射する。
【0036】
オートフォーカス光源部11から照射されたオートフォーカス光は、ハーフミラー12、赤色光を反射するダイクロイックミラー13を介して対物レンズ5に入射し、観察対象物1と同じ平面位置にあるスライドガラス2とカバーガラス4の界面部分に集光する。スライドガラス2またはカバーガラス4の界面部分自体、もしくは、より正確にオートフォーカスを行うために設けられることがある反射膜で反射したオートフォーカス光は、ダイクロイックミラー13、ハーフミラー12を経て、オートフォーカス集光部14に入射する。
【0037】
オートフォーカス集光部14に入射したオートフォーカス光は、オートフォーカス対物レンズ19で集光されて、スリット部やリレーレンズを備えた結像部20でスリット像として一旦結像され、シリンドリカルレンズ21を経てオートフォーカス受光部15で再び結像する。
【0038】
オートフォーカス受光部15は、カメラ部10と同様CCDイメージセンサなどの受光素子により光信号を電気信号に変換するものであり、結像したオートフォーカス光のスリット像を電気信号として検知し、フォーカス状態を制御部31に伝達する。
【0039】
制御部31は、オートフォーカス受光部15から伝達されたオートフォーカス光におけるスリット像の状態から、対物レンズ5でのフォーカス状態を判断し、フォーカスにずれが生じているようであれば、対物レンズ5の焦点位置を修正して常にフォーカス状態であるように制御する。対物レンズ5の焦点位置を修正する方法としては、対物レンズ5自体の配置位置を光軸に沿って移動させる方法や、対物レンズ5が複数枚のレンズ群として構成されている場合には、レンズ同士の間隔を変更させる方法など、光学的に利用可能なさまざまな方法を用いることができる。
【0040】
このように、図1に示した光学顕微鏡においては、オートフォーカス光学系と、制御部31、対物レンズ5、および、その焦点位置の調整機構が、光学顕微鏡のオートフォーカス装置を構成することになる。
【0041】
なお、上記説明した本構成例における光学顕微鏡の観察光学系は、通常の光学顕微鏡の観察光学系の構成要素をそのまま適用できるものである。このため、図1では図示していないが、透過式の場合にはスライドガラス3の下方から、若しくは、落射式の場合には対物レンズ5を介してスライドガラス3の上方から観察光学系の一部を介して、観察対象物1を照射するように照射光源を配置することができる。また、図1においては、対物レンズ5として単体のものを例示したが、倍率の異なる複数の対物レンズをリボルバーによって交換可能に配置することができ、リボルバーを回転させるモータを配置することによって、制御部31からの信号によって、電動で対物レンズを交換可能として観察倍率を変更可能とすることができる。
【0042】
観察光学系と同様に、上記説明した本構成例にかかる光学顕微鏡のオートフォーカス光学系も、通常のアクティブフォーカス方式によるオートフォーカス光学系の構成要素をそのまま用いることができ、オートフォーカス受光部14で得られた画像データからフォーカス状態を判断し、対物レンズ5のフォーカス位置を修正してフォーカス状態を保つように制御する制御内容も、一般的なものである。したがって、本実施形態の光学顕微鏡にかかるオートフォーカス光学系は、上記図示説明した構成例に限定されるものではない。
【0043】
図2は、本実施形態の光学顕微鏡における、観察光学系のカメラ10における各撮像素子での露光タイミングと、オートフォーカス光学系のフォーカス光源16における、オートフォーカス光の照射タイミングとの関係を示すものである。
【0044】
図2に示すように、本実施形態の光学顕微鏡では、オートフォーカス光をカメラ10に用いられたCCDイメージセンサにおける、電気信号の読出期間の間に照射するものである。
【0045】
一般に、撮像素子としてCCDイメージセンサを用いた場合には、それぞれの受光素子で撮像期間にチャージされた電荷を、所定のタイミングの読出期間に転送電極を介して外部に読み出す。読出期間では、全ての受光素子の電荷を順次転送して読み出すため、読出期間の間受光素子は電荷をチャージせず、この期間は対物レンズ5で得られた光像は電気信号に変換されない。このため、この読出期間に観察対象物1にオートフォーカス光を照射しても、カメラ10で得られる撮像画像に悪影響を与えることはない。上記説明した、オートフォーカス光学系で得られたフォーカス画像に基づくフォーカス動作において、オートフォーカス光の照射タイミングをカメラ10の読出期間内に終了させることで、カメラ10では、オートフォーカス光が照射されていない期間のみの撮像期間の画像データを得ることができる。
【0046】
なお、カメラによっては読出期間の長さをユーザが調整可能なものがあるが、その場合には、光学顕微鏡が備えるオートフォーカス装置における、オートフォーカス光の照射時間とオートフォーカス動作の所要時間を勘案して、カメラがオートフォーカス光を受光しない範囲でなるべく短い読出期間を設定することで、観察対象物のより良好な画像観察が可能となる。
【0047】
本実施形態の光学顕微鏡では、オートフォーカス光の照射時間を一例として100μsと設定した。また、対物レンズの焦点位置を調整する手段として、ピエゾ素子やステッピングモータなどの高速追従性を備えた手段を用いることで、オートフォーカス動作の所要時間は極めて短時間に完了させることができるため、本実施形態の光学顕微鏡の場合にはカメラ10の非撮像期間にオートフォーカス動作を完了させることができた。なお、オートフォーカス光の照射タイミングは、読出期間内に照射が完了するように設定するのであれば、読出期間の期間中のどのタイミングに設定してもよい。
【0048】
なお、観察対象物1の動画像を撮像する場合には、撮像装置であるカメラ10において撮像期間と非撮像期間とが繰り返されながら、撮像期間の撮像画像を連続して得ることになる。この場合においても、非撮像期間にオートフォーカス動作を行うことで、常に正しいフォーカス状態の撮像画像を得ることができる。特に、長時間の撮像の場合には、環境条件の変化による焦点ドリフトと呼ばれるフォーカスのずれが生じやすいが、本開示の光学顕微鏡では、この焦点ドリフトに追従して良好な動画像を得ることができる。
【0049】
また、この場合において、複数の撮像期間と非撮像期間とが交互に現れるが、複数の非撮像期間の全てにおいてフォーカス動作を行うことができ、また、複数の非撮像期間の内のいずれか選択された非撮像期間においてのみフォーカス動作を行うことができる。例えば長時間の撮像時間における焦点ドリフト量が少ないことが予め判明している場合などでは、オートフォーカス動作を行うタイミングを選択された非撮像期間に限定して間引くことで、観察対象物1にオートフォーカス光が照射される頻度が低減する。この結果、オートフォーカス光が与える観察対象物1への刺激や、オートフォーカス光の撮像画像への不所望な混入があった場合でも、これを効果的に低減することができる。なお、オートフォーカス動作を行うタイミングは、所定回数の非撮像期間ごとに設定してオートフォーカス動作のタイミングを一定の間隔とすることができ、また、オートフォーカス動作を行う非撮像期間をランダムに選択して、オートフォーカス動作を行うタイミングを不定期間隔とすることもできる。
【0050】
上記のように、本実施形態の光学顕微鏡では、撮像装置における非撮像期間にオートフォーカス光を照射することで、例えば化学発光観察のように観察対象物の発光輝度が弱く、高感度の検出器を用いた撮像や長時間の撮像が必要な場合であっても、オートフォーカス光の影響を受けない観察対象物の画像データを得ることができる。
【0051】
図3は、本実施形態の光学顕微鏡の第2の構成例として、観察対象物の上方に対物レンズが配置された倒立型の構成における概略構成を説明するためのブロック図である。
【0052】
図3に示す本実施形態の第2の構成例の光学顕微鏡では、観察対象物51は、例えば試料52としての細胞の核であり、試料52である細胞はシャーレ53内の培養液54内に配置されている。シャーレ53は、載置台を兼ねるガラス基板としてのカバーガラス55上に載置されていて、シャーレ53とカバーガラス55との間に界面56が形成される。
【0053】
カバーガラス55は、対物レンズ装置57の上に、所定の光学的カップリング部材58を介して配置されている。なお、対物レンズ装置57内の図示しない対物レンズの光軸を、観察対象物51に対して相対的に移動可能とすることもできる。
【0054】
第2の構成例の光学顕微鏡は、対物レンズ装置57内の対物レンズ、第1ミラー58、ハーフミラー59、第2ミラー60、接眼レンズ61、カメラ用レンズ62、撮像装置であるカメラ63により構成される観察光学系と、オートフォーカス光源部71、ハーフミラー72,フォーカス光路調整部73、ダイクロイックミラー74、オートフォーカス集光部75、オートフォーカス受光部76により構成されるオートフォーカス光学系とを備えている。
【0055】
観察光学系は、対物レンズ装置57内の対物レンズにより得られた観察対象物51の光像を目視、若しくは、カメラ63で静止画像または動画像として観察可能とするものである。本構成例の光学顕微鏡では、観察光学系にハーフミラー59を配置して、接眼レンズ61を介する目視と、カメラ用レンズ62とを介するカメラ63による画像データの取得とを同時に行うことが可能である。
【0056】
カメラ63は、CCDイメージセンサを撮像素子として備えた撮像装置である。本構成例の光学顕微鏡のカメラ63も、図2で示したように、観察対象物51の光像を多数個の受光素子がそれぞれ受光する撮像期間と、それぞれの撮像素子で得られた電荷等の電気信号を外部に送出する読出期間との2つの動作期間を、露光タイミングとして持っている。また、カメラ63は、露光タイミング中の撮像期間と撮像期間との動作タイミングを、光学顕微鏡の制御部91に伝達する。
【0057】
カメラ63で得られた観察対象物51の撮像画像は、電気信号として、例えば外部機器であるコンピュータ92に送出され、所望の画像処理が行われた後にコンピュータモニタに表示される。なお、カメラ部63により得られた撮像画像のデータを、光学顕微鏡に付随するモニタ部に映出させることも可能であるのは、図1を用いて説明した第1の構成例の光学顕微鏡と同様である。
【0058】
オートフォーカス光学系のオートフォーカス光源部71は、図1で示した第1の構成例のものと同様、一例として近赤外光を発光する赤外LEDからなるフォーカス用光源77と、スリット78、コリメータレンズ79、図示しない瞳制限部などにより構成されていて、オートフォーカス光を、カメラ部63の非撮像期間である読み出し期間中に照射する。
【0059】
オートフォーカス光源部71から照射されたオートフォーカス光は、ハーフミラー72、フォーカス光路調整部73、赤色光を反射するダイクロイックミラー74を介して対物レンズ装置57の対物レンズに入射し、シャーレ53とカバーガラス54との間の界面56に集光される。シャーレ53とカバーガラス54との間の界面56で反射したオートフォーカス光は、ダイクロイックミラー74、フォーカス光路調整部73、ハーフミラー72を経て、オートフォーカス集光部75に入射する。
【0060】
オートフォーカス集光部75に入射したオートフォーカス光は、オートフォーカス対物レンズ80で集光されて、スリット部やリレーレンズを備えた結像部81でスリット像として一旦結像され、シリンドリカルレンズ82を経てオートフォーカス受光部76で再び結像する。
【0061】
オートフォーカス受光部76は、CCDイメージセンサなどの受光素子により光信号を電気信号に変換するものであり、結像したオートフォーカス光のスリット像を電気信号として検知し、フォーカス状態を制御部91に伝達する。
【0062】
制御部91は、オートフォーカス受光部76から伝達されたオートフォーカス光におけるスリット像の状態から、対物レンズ装置57でのフォーカス状態を判断し、フォーカスにずれが生じているようであれば、対物レンズ装置を調整して対物レンズの焦点位置を修正しフォーカス状態を保つように制御する。なお、第2の構成例の光学顕微鏡では、特許文献2に開示されたオートフォーカス装置と同様に、フォーカス光学系内にフォーカス調整レンズ73を備えていて、シャーレ53とカバーガラス54との間の界面56で反射したオートフォーカス光に所定のフォーカスオフセット量を設定することで、オートフォーカス光の実際の反射面である界面56から所定の間隔を隔てて位置する、観察対象物51に対するフォーカス状態を維持することができる構成となっている。
【0063】
図3に示す第2の構成例の光学顕微鏡においても、制御部91が、観察光学系のカメラ63における各撮像素子からの画像信号の読み出しのタイミングと、オートフォーカス光学系のフォーカス光源77におけるオートフォーカス光の照射タイミングとを、図2に示すように、オートフォーカス光がカメラ部63の受光素子からの電気信号の読出期間の間に照射されるように制御している。このため、図3に示した第2の構成例の光学顕微鏡においても、オートフォーカス光学系で得られたフォーカス画像に基づくフォーカス動作において、オートフォーカス光の照射をカメラ部63の撮像素子の読出期間内に終了させることで、カメラ部63では、オートフォーカス光が照射されていない期間のみの観察対象物51の画像データを得ることができる。
【0064】
なお、図1で示した第1の構成例と同様に、図3に示した倒立型の第2の構成例においても、観察光学系、オートフォーカス光学系として、従来公知の構成を用いることができる。このため、図3に示した構成はあくまで構成例に過ぎない。また、図3に示した第2の構成例の光学顕微鏡においても、図示していない照射光源を、観察光学系の一部を介して観察対象物51を照射するように配置することができる。また、図3に示した対物レンズ装置57内で、倍率の異なる複数の対物レンズを自動的に交換可能に配置することができる。これとは逆に、図3を用いて説明した第2の構成例で採用しているフォーカス調整レンズを、オートフォーカス光学系内に備えることで、図1を用いて説明した第1の構成例の光学顕微鏡においても、オートフォーカス光に所定のフォーカスオフセット量を設定可能とすることができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の光学顕微鏡では、オートフォーカスを行うために照射されるフォーカス光源からのオートフォーカス光の照射タイミングを、観察対象物の画像データを取得する撮像装置における、画像データを撮像しない非撮像期間に照射するように制御する。このようにすることで、撮像装置で撮像される観察対象物の撮像画像にオートフォーカス光の影響が及ぶことを確実に回避することができる。
【0066】
図4は、従来の光学顕微鏡によって得られた、細胞膜に蛍光タンパク質を発現するHeLa細胞の蛍光画像(図4(a))と、細胞膜に化学発光タンパク質を発現する同一細胞の化学発光画像(図4(b))とを比較するものである。なお、対物レンズとしては、60倍のものを用いている。図4に示すように、化学発光観察では観察対象物の輝度が小さいため、細胞の構成がほとんど観察できない。
【0067】
これに対して、図5は、化学発光タンパク質から高輝度蛍光タンパク質への高効率FRETにより高輝度化された発光タンパク質Nano-lanternによるミトコンドリアの、蛍光観察による画像(図5(a))と、化学発光観察による画像(図5(b))とを示すものである。なお、対物レンズとしては、60倍のものを用いている。
【0068】
図5に示すように、化学発光観察においても蛍光観察と同等の鮮明な観察画像を得ることができた。このため、励起光である紫外光を照射する必要があるため観察対象の細胞にダメージを与えてしまうおそれのある蛍光観察と比較して、より好適な細胞観察が可能となる。Nano-lanternは高輝度化学発光プローブであるため、ビデオレートでの観察が可能である。したがって本実施形態の光学顕微鏡と組み合わせることで、温度変化やステージ変動によるフォーカスずれを気にすることなく、高速な細胞観察が可能となる。
【0069】
なお、蛍光観察を行うための励起光を照射する構成を備えることで、本実施形態で説明した光学顕微鏡を蛍光観察に用いることができる。また、上記実施形態で説明したオートフォーカス照射光は、観察対象である細胞に刺激を与えるための照射エネルギー0.1〜1W/cm2と比較して照射エネルギーが十分に小さいため、オートフォーカス光の照射によって観察対象の細胞が不所望な反応を起こしてしまうおそれはない。
【0070】
さらに、本開示にかかる光学顕微鏡では、オートフォーカス光が照射されているタイミングが画像データの取得タイミングとは異なるため、オートフォーカス光として可視領域範囲外の光に限らず、可視光を用いることも可能である。このため、オートフォーカス光として、オートフォーカスを正確に、かつ、短時間で行うことができる所望の波長の光を用いることができ、オートフォーカス精度の向上を図ることが可能となる。また、化学発光観察の場合のように観察対象物の発する光量が小さい場合には、オートフォーカス光を照射するために観察光学系内に配置されるダイクロイックミラーを、より透過率の高いものを用いるようにして、観察対象物の発光をなるべく減光せずに検出できるようにすることが考えられる。
【0071】
さらにまた、上記本実施形態の光学顕微鏡では、撮像装置としてCCDイメージセンサを用いる例を開示したが、例えばCMOSイメージセンサなどの他の半導体型の撮像素子を備えた撮像装置を使用することができる。CMOSイメージセンサの場合には、CCDイメージセンサのように受光素子に蓄えられた電荷を一括して読み出す読出期間が設けられず、ライン順次方式での読み出しとなるが、いわゆるブランク期間が非撮像期間となるため、この非撮像期間にオートフォーカス光を照射することができる。さらに、本実施形態の光学顕微鏡に用いられる撮像装置は、これらの半導体型撮像素子を備えたものに限らない。例えばフォトマルなどの真空管方式の撮像素子、その他各種の撮像素子を備えた撮像装置を用いることができる。この場合、撮像装置によっては、CCDの読出期間のような非撮像期間を動作期間中に備えることが必須ではない場合もあり得るが、その場合には、動作期間中に強制的に非撮像期間を形成して、この非撮像期間にタイミングを合わせてオートフォーカス光を照射するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本願で開示する光学顕微鏡、および、光学顕微鏡のオートフォーカス装置は、化学発光観察をはじめとする各種方法での画像イメージ化ができる光学顕微鏡、そのオートフォーカス装置として、幅広い分野での用途が期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5