(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044955
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ウェーハ研磨ヘッドおよびウェーハ研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20161206BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B24B37/04 H
H01L21/304 622G
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-265701(P2012-265701)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-108511(P2014-108511A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年9月28日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度エネルギー使用合理化技術開発等に係る経済産業省プロジェクト「革新的製造プロセス技術開発(ミニマルファブ)」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100077621
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100146075
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100092819
【弁理士】
【氏名又は名称】堀米 和春
(74)【代理人】
【識別番号】100141634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 善博
(74)【代理人】
【識別番号】100141461
【弁理士】
【氏名又は名称】傳田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 由夫
(72)【発明者】
【氏名】大塚 美雄
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴史
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 和孝
(72)【発明者】
【氏名】布施 貴之
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
(72)【発明者】
【氏名】クンプアン ソマワン
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸一
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−013567(JP,A)
【文献】
特開2012−051037(JP,A)
【文献】
特開平09−029618(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0177394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 − 37/34
H01L 21/304
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面にウェーハを保持し、上面に研磨布が貼られて回転する定盤の研磨布にウェーハを押圧してウェーハを研磨するウェーハ研磨ヘッドにおいて、
下面側に押圧部を有するヘッド本体と、
該ヘッド本体下面側に、ヘッド本体に対して傾動可能に保持され、下面に研磨すべきウェーハを保持するウェーハ保持プレートと、
前記ヘッド本体の押圧部に取り付けられ、前記ウェーハ保持プレート上面を押圧する弾性リング体とを具備し、
前記ヘッド本体の押圧部により前記弾性リング体および前記ウェーハ保持プレートを介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、前記ウェーハ保持プレートが前記弾性リング体の弾性力に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能であり、
前記ウェーハ保持プレートの前記弾性リング体で囲まれる部位にウェーハ吸引用の貫通孔が形成され、前記ヘッド本体の押圧部に、前記弾性リング体で囲まれる空間内の気体を吸引する吸引通路が形成され、前記弾性リング体がシールリングを兼用することを特徴とするウェーハ研磨ヘッド。
【請求項2】
前記ヘッド本体の下面側に下方に開口する凹部が形成され、前記ウェーハ保持プレートが、該凹部内に、傾動可能に保持されていることを特徴とする請求項1記載のウェーハ研磨ヘッド。
【請求項3】
前記凹部の内壁面に内方に突出する係止部が設けられ、前記ウェーハ保持プレートの外壁面に外方に突出する係止部が設けられ、該両係止部が係止することによって、前記ウェーハ保持プレートが抜け止めされることを特徴とする請求項2記載の研磨ヘッド。
【請求項4】
下面にウェーハを保持し、上面に研磨布が貼られて回転する定盤の研磨布にウェーハを押圧してウェーハを研磨するウェーハ研磨ヘッドにおいて、
下面側に押圧部を有するヘッド本体と、
該ヘッド本体下面側に、ヘッド本体に対して傾動可能に保持され、下面に研磨すべきウェーハを保持するウェーハ保持プレートと、
前記ヘッド本体の押圧部に取り付けられ、前記ウェーハ保持プレート上面を押圧する弾性リング体とを具備し、
前記ヘッド本体の押圧部により前記弾性リング体および前記ウェーハ保持プレートを介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、前記ウェーハ保持プレートが前記弾性リング体の弾性力に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能であり、
前記ヘッド本体の下面側に下方に開口する凹部が形成され、前記ウェーハ保持プレートが、該凹部内に、傾動可能に保持され、
前記凹部の内壁面に内方に突出する係止部が設けられ、前記ウェーハ保持プレートの外壁面に外方に突出する係止部が設けられ、該両係止部が係止することによって、前記ウェーハ保持プレートが抜け止めされ、
前記ウェーハ保持プレートがリング状の側壁部を有する皿状に形成され、前記係止部が該側壁部の外壁面に設けられ、前記ヘッド本体の押圧部の下部が、前記ウェーハ保持プレートの側壁部で囲まれる空間内に進入していることを特徴とするウェーハ研磨ヘッド。
【請求項5】
前記弾性リング体は、断面V字状に形成され、断面Vの開口側を外側にして前記ヘッド本体の押圧部と前記ウェーハ保持プレート上面との間に介在されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のウェーハ研磨ヘッド。
【請求項6】
直径1/2インチのウェーハ用であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のウェーハ研磨ヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の研磨ヘッドがヘッド駆動機構に着脱自在に取り付けられ、
前記ウェーハ保持プレートは、上面に押圧される弾性リング体と接続されておらず、それらの間の摩擦力のみによって前記押圧部側の回転力が伝達されることを特徴とするウェーハ研磨装置。
【請求項8】
研磨ヘッドがヘッド駆動機構に研磨ヘッドの押圧部の軸線を中心に回転可能に取り付けられることを特徴とする請求項7記載のウェーハ研磨装置。
【請求項9】
下面にウェーハを保持し、上面に研磨布が貼られて回転する定盤の研磨布にウェーハを押圧してウェーハを研磨するウェーハ研磨ヘッドが、ヘッド駆動機構に着脱自在に取り付けられるウェーハ研磨装置において、
前記ウェーハ研磨ヘッドが、
下面側に押圧部を有するヘッド本体と、
該ヘッド本体下面側に、ヘッド本体に対して傾動可能に保持され、下面に研磨すべきウェーハを保持するウェーハ保持プレートと、
前記ヘッド本体の押圧部に取り付けられ、前記ウェーハ保持プレート上面を押圧する弾性リング体とを具備し、
前記ヘッド本体の押圧部により前記弾性リング体および前記ウェーハ保持プレートを介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、前記ウェーハ保持プレートが前記弾性リング体の弾性力に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能であり、
前記ウェーハ保持プレートは、上面に押圧される弾性リング体と接続されておらず、それらの間の摩擦力のみによって前記押圧部側の回転力が伝達されることを特徴とするウェーハ研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェーハ研磨ヘッドおよびウェーハ研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの研磨装置には、上面に研磨布を貼付した定盤の研磨布に、研磨ヘッドのウェーハ保持プレート(キャリア)に保持されたウェーハの研磨面を接触させ、定盤および研磨ヘッドを相対的に移動させてウェーハの研磨面を研磨するウェーハ研磨装置がある。
この種のウェーハ研磨装置における研磨ヘッドでは、ウェーハと定盤とが常に平行に接するように、ウェーハ保持プレートをヘッド本体に傾動可能に設けて、ウェーハ保持プレートが定盤の研磨布に追従して動けるようにしている。
【0003】
特許文献1におけるウェーハ研磨ヘッドでは、ヘッド本体下面側に剛性を有するリング状のダイヤフラムによりウェーハ保持プレートを吊持することによって、ウェーハ保持プレートをヘッド本体に対して傾動可能に設けている。ヘッド本体の回転トルクは、剛性を有するダイヤフラムによりウェーハ保持プレートに伝達される。
また、特許文献2におけるウェーハ研磨ヘッドでは、ヘッド本体下面側に、球面軸受を配置し、この球面軸受を介してウェーハ保持プレートをヘッド本体に対して傾動可能に設けている。ヘッド本体の回転トルクは、伝達ピンによりウェーハ保持プレートに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−29617
【特許文献2】特開平6−198561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体装置(半導体デバイス)の大量生産を可能にするため、ウェーハはどんどん大径化し、直径300mm以上の極めて大きな径のウェーハも出現している。この大径のウェーハに、研磨、洗浄、乾燥、CVD、露光、現像、エッチング等の必要な処理を連続して施し、最後に裁断して個片化する一連の工程を行うことによって生産性を高めている。このような一連の工程を一括して行うためには、数千億円規模の大規模な生産設備が必要となる。
【0006】
しかしながら、昨今、種々の用途に用いるため、多品種で少量必要とされる半導体装置も多くなってきている。このような多品種少量生産の半導体装置には、上記大規模な生産設備は不向きである。
そこで、昨今、直径1/2インチ程度の小さなウェーハ(半導体チップ1個取り程度)に、必要な加工処理を施していくミニマル(登録商標)ファブ構想が提案されている。このミニマルファブ構想によれば、研磨装置、CVD装置など、各工程毎に小型の処理装置を設け、これら処理装置を必要に応じて適宜組み合わせて使用することによって、多品種のウェーハに対応できるようにしている。各装置は小型のものでよいので、設備投資費を低く抑えることができる。
【0007】
前記のように、ウェーハ研磨装置における研磨ヘッドでは、ウェーハと定盤とが常に平行に接するように、ウェーハ保持プレートをヘッド本体に傾動可能に設けて、ウェーハ保持プレートが定盤の研磨布に追従して動けるようにしている。そしてこの場合にあっても、ウェーハ保持プレートの傾動中心が研磨布に対して高くなると、ウェーハ先端に研磨布が引っ掛かる現象が生じるので加工が不安定になりやすい。したがって、ウェーハ保持プレートの傾動中心を、研磨布面に接近するよう、できるだけ低くする(低重心化)のが好ましい。
【0008】
ウェーハ保持プレートの傾動中心の高さは、ウェーハの大きさとの相対関係できまる。すなわち、ウェーハの直径が小さくなると、ウェーハ保持プレートの傾動中心が従前と同じ高さであれば、ウェーハ先端に研磨布が引っ掛かり易くなる(ウェーハがつんのめる現象)。したがって、ウェーハが小さくなった場合、ウェーハ保持プレートの絶対的な高さをそれに応じて低くしなければならない。
【0009】
特許文献1の研磨ヘッドにおけるウェーハ保持プレートの傾動中心はほぼダイヤフラムの高さとなる。特許文献1のように、ウェーハ保持プレートをダイヤフラムで吊持する構造のものでは、ウェーハ保持プレートの傾動中心を低くするには、物理的(機械的)に限界があることが判明した。
また、特許文献2の研磨ヘッドにおけるウェーハ保持ヘッドの傾動中心は球面軸受となり、比較的低重心化は可能であるが、機械部品を用いた構成であるため、やはり低重心化には限界がある。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ウェーハ研磨ヘッドにおけるウェーハ保持プレートの傾動中心の高さを低くでき、小径のウェーハの研磨も良好に行えるウェーハ研磨ヘッドおよびウェーハ研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係るウェーハ研磨ヘッドは、下面にウェーハを保持し、上面に研磨布が貼られて回転する定盤の研磨布にウェーハを押圧してウェーハを研磨するウェーハ研磨ヘッドにおいて、下面側に押圧部を有するヘッド本体と、該ヘッド本体下面側に、ヘッド本体に対して傾動可能に保持され、下面に研磨すべきウェーハを保持するウェーハ保持プレートと、前記ヘッド本体の押圧部に取り付けられ、前記ウェーハ保持プレート上面を押圧する弾性リング体とを具備し、前記ヘッド本体の押圧部により前記弾性リング体および前記ウェーハ保持プレートを介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、前記ウェーハ保持プレートが前記弾性リング体の弾性力
に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能で
あり、前記ウェーハ保持プレートの前記弾性リング体で囲まれる部位にウェーハ吸引用の貫通孔が形成され、前記ヘッド本体の押圧部に、前記弾性リング体で囲まれる空間内の気体を吸引する吸引通路が形成され、前記弾性リング体がシールリングを兼用することを特徴とする。
【0011】
また本発明に係るウェーハ研磨ヘッドは、下面にウェーハを保持し、上面に研磨布が貼られて回転する定盤の研磨布にウェーハを押圧してウェーハを研磨するウェーハ研磨ヘッドにおいて、下面側に押圧部を有するヘッド本体と、該ヘッド本体下面側に、ヘッド本体に対して傾動可能に保持され、下面に研磨すべきウェーハを保持するウェーハ保持プレートと、前記ヘッド本体の押圧部に取り付けられ、前記ウェーハ保持プレート上面を押圧する弾性リング体とを具備し、前記ヘッド本体の押圧部により前記弾性リング体および前記ウェーハ保持プレートを介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、前記ウェーハ保持プレートが前記弾性リング体の弾性力に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能であり、 前記ヘッド本体の下面側に下方に開口する凹部が形成され、前記ウェーハ保持プレートが、該凹部内に、傾動可能に保持され、 前記凹部の内壁面に内方に突出する係止部が設けられ、前記ウェーハ保持プレートの外壁面に外方に突出する係止部が設けられ、該両係止部が係止することによって、前記ウェーハ保持プレートが抜け止めされ、前記ウェーハ保持プレートがリング状の側壁部を有する皿状に形成され、前記係止部が該側壁部の外壁面に設けられ、前記ヘッド本体の押圧部の下部が、前記ウェーハ保持プレートの側壁部で囲まれる空間内に進入していることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係るウェーハ研磨装置は、上記いずれかの研磨ヘッドがヘッド駆動機構に着脱自在に取り付けられ、前記ウェーハ保持プレートは、上面に押圧される弾性リング体と接続されておらず、それらの間の摩擦力のみによって前記押圧部側の回転力が伝達されることを特徴とする。
【0013】
また本発明に係るウェーハ研磨装置は、下面にウェーハを保持し、上面に研磨布が貼られて回転する定盤の研磨布にウェーハを押圧してウェーハを研磨するウェーハ研磨ヘッドが、ヘッド駆動機構に着脱自在に取り付けられるウェーハ研磨装置において、前記ウェーハ研磨ヘッドが、下面側に押圧部を有するヘッド本体と、該ヘッド本体下面側に、ヘッド本体に対して傾動可能に保持され、下面に研磨すべきウェーハを保持するウェーハ保持プレートと、前記ヘッド本体の押圧部に取り付けられ、前記ウェーハ保持プレート上面を押圧する弾性リング体とを具備し、前記ヘッド本体の押圧部により前記弾性リング体および前記ウェーハ保持プレートを介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、前記ウェーハ保持プレートが前記弾性リング体の弾性力に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能であり、前記ウェーハ保持プレートは、上面に押圧される弾性リング体と接続されておらず、それらの間の摩擦力のみによって前記押圧部側の回転力が伝達されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘッド本体の押圧部により弾性リング体およびウェーハ保持プレートを介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、ウェーハ保持プレートが弾性リング体の弾性力に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能に設けたので、ウェーハ保持プレートの研磨布に対する傾動中心が、ウェーハ保持プレートの上面と押圧部下面との間に介在される弾性リング体の位置となるので、傾動中心を研磨布に接近した低い位置とすることができ、小さなウェーハであっても、研磨布への引っ掛かりを防止でき、良好な研磨を行える。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は研磨ヘッド10の要部を示す断面図、
図2は研磨ヘッド10の断面図、
図3はヘッド駆動機構を含む研磨装置の正面図である。
なお、上面に研磨布を貼設した定盤機構は公知のものを用いることができるので、その説明を省略する。
図1および
図2において、14はヘッド本体である。
ヘッド本体14は、下部にフランジ15を有する取付ブロック部16と、取付ブロック部16の下面側に図示しないネジによって固定された押圧体17と、押圧体17を囲んで取付ブロック部16下面にボルト19によって固定されたリング状をなす係止体18を具備する。取付ブロック部16と押圧体17とは一体のものとしてもよい。
【0017】
係止体18の下部には、内方に突出する内方フランジ20が設けられている。この内方フランジ20が一方の係止部を構成する。内方フランジ20の上面と押圧体17の下面あるいは取付ブロック部16の下面との間には凹部21が形成されている。
押圧体17は、内方フランジ20の内径よりも小径の外径を有する円柱状の押圧部17aを有する。押圧部17aはその下部が内方フランジ20内に若干入り込む高さに形成されている。
【0018】
22は、側壁部23を有する浅い皿状をなすウェーハ保持プレートである。
ウェーハ保持プレート22の側壁部23は、押圧部17aの外壁面と内方フランジ20の外壁面との間の空間に進入している。側壁部23の上部外壁面には、凹部21内で外方に突出する外方フランジ25が形成されている。この外方フランジ25が他方の係止部を構成する。押圧部17aの下部はウェーハ保持プレート22内に進入し、その下面がウェーハ保持プレート22の上面に接近している。
【0019】
ウェーハ保持プレート22は、押圧部17aの外壁面と内方フランジ20の内壁面との間で上下動可能であり、かつ、ヘッド本体14に対して傾動可能になっている。ウェーハ保持プレート22は、内方フランジ20と外方フランジ25とが係止することによって、下方への抜け止めがなされる。
【0020】
また、押圧部17aの下部外周はリング状に切り欠かれ、この切欠部内に上半分が位置して、弾性リング体26が固定されている。弾性リング体26の下半部は押圧部17aの下方に突出し、ウェーハ保持プレート22の上面に当接する。
本実施の形態では、弾性リング体26は、断面V字状をなし、断面Vの開口側を外側にして押圧部17aに固定され、断面V字をなす一方のリップ部がウェーハ保持プレート22の上面に当接している。
【0021】
ウェーハ保持プレート22の弾性リング体26に囲まれる部位にウェーハ吸引用の複数の貫通孔28が形成されている。ヘッド本体14に、弾性リング体26に囲まれる空間内の空気を吸引する吸引通路30が形成されている。吸引通路30は図示しない真空装置に接続される。吸引通路30から気体が吸引されることによって形成される負圧力によりウェーハがウェーハ保持プレート22の下面に吸着保持されるようになっている。この場合、弾性リング体26はシールリングの役目もする。
【0022】
ウェーハ保持プレート22の下面には、ウェーハを収納保持する凹部31が形成されている。ウェーハがこの凹部31内に保持されることによって、研磨時、ウェーハの外方への飛び出しが防止される。
なお、ウェーハを吸引保持するのでなく、ウェーハ保持プレート22の下面にバッキング材(図示せず)を貼付し、バッキング材に水を含ませ、この水の表面張力によってウェーハをバッキング材下面側に保持するようにしてもよい。
【0023】
また、弾性リング体26は、断面V字状のものでなく、Oリング状のものであってもよく、あるいは、弾性を有する小片をリング状に並べたものであってもよい。
いずれにしても、弾性リング体26は、ヘッド本体14の押圧部17aにより弾性リング体26およびウェーハ保持プレート22を介してウェーハが定盤の研磨布に押圧される際、ウェーハ保持プレート22が弾性リング体26の弾性力に受けられて定盤の研磨布面に追従して傾動可能な弾性力を有していればよい。
【0024】
この弾性リング体26がウェーハ保持プレート22の傾動中心となる。弾性リング体26は、押圧部17a下面とウェーハ保持プレート22の上面との間に直接介在し、押圧部17aからの押圧力によって圧縮される関係にあり、ウェーハ保持プレート22の傾動中心を定盤の研磨布に接近して低くなるように設定できることが理解されよう。
【0025】
研磨ヘッド14は、取付ブロック部16の外周に形成した雄ネジ部にネジリング33が螺合されることによって、ヘッド駆動機構35側の回転軸36に着脱自在に取り付けられ、回転軸36によって軸線を中心として回転される。32は位置決めピンである。なお、ウェーハ保持プレート22は、上面に押圧される弾性リング体26との間の摩擦力によって押圧部17a側の回転力が伝達される。
回転軸36への取付ブロック部16の取付けは、ネジリング33でなく、コレットチャック構造、カップリング構造、マグネットを用いた構造など、他の適宜な機構を採用しうる。
【0026】
このように、弾性リング体26との間の摩擦力によってウェーハ保持プレート22が回転されるので、ウェーハ保持プレート22側に大きなトルクが発生した場合には、押圧部17a側が空転して、ウェーハに過大な力が加わらないので、小さく、薄いウェーハの研磨に好都合である。
なお、場合によっては、図示しないが、伝達ピンを介して、押圧部17a側の回転力を直接ウェーハ保持プレート22側に伝達してもよい。
【0027】
次にヘッド駆動機構35について、
図3により説明する。
40は回動アームであり、基台41に固定された正転、逆転可能な正逆モータ42の回転軸43に固定されて、水平面内で所要位置間に亘って往復回動できるようになっている。
回動アーム40上にシリンダ装置45が取り付けられ、シリンダ装置45のロッド46にステー48が固定されている。ステー48に、
図3上、L字状をなす取付アーム49が固定されている。
【0028】
取付アーム49の水平盤49aに、研磨ヘッド10が取り付けられる回転軸36が、軸受50を介して取り付けられている。この回転軸36を回転駆動するモータ51が、水平盤49aの上方に位置して取付アーム49の垂直盤49bに水平に固定された取付板52上に固定されている。53は、取付アーム49の垂直盤49bをガイドするガイド板である。
したがって、シリンダ装置45が駆動されてロッド46が上下動することによって、ステー48および取付アーム49を介して、研磨ヘッド10およびモータ51が上下動する。また、研磨ヘッド10およびモータ51は、回動アーム40の回動に伴われて水平面内で回動する。
【0029】
55a、55b、および55cは、回動アーム40に立設した取付棒54に上下方向に間隔をおいて配設されたセンサである。各センサは、ステー48の位置を検出する。センサ55aにより、研磨ヘッド10が所定上限位置まで上昇したことを検出し、この位置で研磨ヘッド10の上昇を停止する。センサ55cにより、研磨ヘッド10が、研磨開始前、搬入されているウェーハを吸着保持する下限位置まで下降したことを検出し、あるいは研磨時、研磨ヘッド10に保持されたウェーハが定盤の研磨布に当接する下限位置まで下降したことを検出し、この位置で研磨ヘッド10の下降を停止する。
【0030】
研磨ヘッド10を下降させる際、センサ50bで検出される位置までは研磨ヘッド10を高速で下降させ、この位置からセンサ50cで検出される位置までは研磨ヘッド10をゆっくり下降させる。これによりタクトタイムを短縮するとともに、ウェーハを搬入部や研磨布に衝突させないようにすることができる。
また、56は、回動アーム40の後端に取り付けたセンサであり、回動アーム40の回動によるセンサ56の移動経路上に配設したマーク(図示せず)を検出して、回動アーム40を所定回動位置で停止させるためのものである。
【0031】
本実施の形態に係る研磨ヘッド10、およびヘッド駆動機構35を含むウェーハ研磨装置は上記のように構成される。
次に、ウェーハを研磨する際の研磨動作について説明する。
まず、正逆モータ42を駆動して、回動アーム40を、研磨すべきウェーハが搬入されている搬入部(図示せず)の所要上方位置まで回動し、次いでこの位置でシリンダ装置45を駆動して研磨ヘッド10を下降してウェーハに当接させると共に、図示しない真空装置を作動させてウェーハをウェーハ保持プレート22の下面に吸着保持する。
【0032】
次いで、研磨ヘッド10を上昇させ、さらに回動アーム40を回動させて、研磨ヘッド10を定盤の上方位置まで回動させる。
次に、研磨ヘッド10を下降させ、研磨ヘッド10のウェーハ保持プレート22下面に保持されているウェーハを定盤の研磨布に当接させる。
そして、定盤を回転させ、さらにモータ51を駆動して研磨ヘッド10を回転させ、また、図示しないノズルから研磨液を定盤上に供給して、ウェーハの研磨をする。
研磨終了後は、研磨ヘッド10の上昇、回動アーム40の回動、研磨ヘッド10の下降という順に作動して、ウェーハを所要箇所に搬出する。
【0033】
なお、ウェーハを研磨布に押圧する力は、研磨ヘッド10側の自重(モータ51や取付アーム49側の重量も含む)から、シリンダ装置45側の上方への押し上げ力を差し引いた力によるものとし、所要一定の押圧力に調整した研磨圧によってウェーハの研磨を行うようにする。
上記一連の動作は、組み込まれているプログラムにしたがって制御部(図示せず)によって各部を駆動制御して行われる。
【0034】
前記のように、ミニマルファブ構想によるウェーハの研磨の場合には、直径1/2インチ程度の小さなウェーハの研磨を行うことになる。本実施の形態では、ウェーハ保持プレート22の研磨布に対する傾動中心が、ウェーハ保持プレート22の上面と押圧部17a下面との間に介在される弾性リング体26の位置となるので、傾動中心を研磨布に接近した低い位置とすることができ、上記のように小さなウェーハであっても、研磨布への引っ掛かりを防止でき、良好な研磨を行える。
【符号の説明】
【0035】
10 研磨ヘッド、14 ヘッド本体、15 フランジ、16 取付ブロック部、17 押圧体、17a 押圧部、18 係止体、20 内方フランジ、21 凹部、22 ウェーハ保持プレート、23 側壁部、25 外方フランジ、26 弾性リング体、28 貫通孔、30 吸引通路、31 凹部、32 位置決めピン、33 ネジリング、36 回転軸、40 回動アーム、41 基台、42 正逆モータ、43 回転軸、45 シリンダ装置、46 ロッド、48 ステー、49 取付アーム、49a 水平盤、49b 垂直盤、50 軸受、51 モータ、52 取付板、53 ガイド板、54 取付棒、55a、55b、55c センサ、56 センサ