(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る混炭燃料の燃焼方法を実現するボイラを概念的に示す説明図である。同図に示すように、ローラミル2で粉砕されて燃焼燃料となる微粉炭は、搬送用の空気を兼用する1次空気とともに微粉炭搬送管路4およびバーナ3を介してボイラIの火炉1に供給される。ボイラIは、火炉1の下流側に二段燃焼用空気が供給される二段燃焼ボイラであり、さらにバーナ3からは1次空気の他に2次空気および3次空気が旋回流として噴射される、例えばCI−α・WRバーナを具備するものである。
【0020】
図2はバーナ3の一例である、CI−α・WRバーナを抽出・拡大して示す構造図、
図3はそのA線矢視図である。
図2に示すように、バーナ3は、微粉炭搬送管路4に接続された1次空気管30と2次空気導入口31と3次空気導入口32とを備えている。ここで、バーナ3にはバーナ点火用のオイルバーナ37がさらに設けられている。1次空気管30は、外側管34とその内部に設けられた内側管33とからなる2重管構造をしており、内側管33と外側管34とで挟まれた空間内を通って微粉炭を含んだ1次空気を火炉1に供給することができるようになっている。また、2次空気導入口31及び3次空気導入口32には、
図3に特に明示するように、2次空気旋回羽根311及び3次空気旋回羽根321が2次空気導入口31及び3次空気導入口32に沿って複数取付けられている。そして、これらの2次空気旋回羽根311や3次空気旋回羽根321を調整することにより、2次空気や3次空気の流量と共にそれらの旋回角度を幅広い範囲で制御することができるようになっている。ここで、旋回角度とは、火炉1の中心軸21に対する2次空気旋回羽根311の傾斜角をいい、旋回角度は2次空気旋回羽根311により旋回させられる空気(旋回流)の火炉1の軸に対する傾斜角度と等しくなる。したがって、旋回角度が0度(deg)では旋回流は生じないことになる。そして、このように構成されたバーナ3を用いて、以下に示すように微粉炭を火炉1内で燃焼させている。
【0021】
まず、微粉炭搬送管路4を通ってきた微粉炭は、1次空気(搬送用空気)とともに1次空気管30内を通って火炉1内へ噴射される。火炉1内に噴射された微粉炭は、1次空気と、2次空気導入口31及び3次空気導入口32から旋回流として送り込まれた2次空気及び3次空気とともに燃焼する。なお、火炉1に旋回流として送り込まれた2次空気及び3次空気の旋回方向は時計回りであっても、反時計回りであってもよく、互いに同じ方向に旋回してもよいし、互いに異なる方向に旋回してもよい。
【0022】
ここで、亜瀝青炭の高比率混炭運用時の燃焼性を調べるために行った実験およびその検討結果について説明しておく。本実験は
図1に示す火炉1による燃焼試験により得たものである。
【0023】
<亜瀝青炭の混炭率を高めるために有効な1次空気の運用条件の検討>
ローラミル2における粉砕前後の石炭の熱物質収支を用いれば、ボイラIでの運用条件を考慮して亜瀝青炭の水分濃度や、亜瀝青炭の混炭率が異なる場合のローラミル2の入口温度への影響を試算できる。このときの1次空気の運用条件は、表1に示す通り、瀝青炭運用時の一般的な運用条件(1次空気温度80℃、Air/Coal=2.2)とする。また、石炭中水分の試算条件は表2に示すが、亜瀝青炭の水分濃度を、通常用いられる水分条件(20%〜30%)とした。
【0026】
上述の条件での亜瀝青炭混炭率とローラミル2の入口温度との関係を
図4に示す。同図に示すように、亜瀝青炭の水分濃度が高くなると、亜瀝青炭の混炭率に応じてローラミル2の入口温度が増加する。また、ローラミル2の入口温度の上限を250℃と仮定し、
図4よりローラミル2の入口温度が250℃となる混炭率を亜瀝青炭の最大混炭率とすると、亜瀝青炭水分濃度が20%のときは亜瀝青炭の最大混炭率は約45%となり、亜瀝青炭の水分濃度が30%のときは亜瀝青炭の最大混炭率は約20%となる。
【0027】
次に、1次空気温度およびAir/Coalが、亜瀝青炭の最大混炭率に及ぼす影響を調べた。1次空気温度の条件を80℃、70℃、60℃と変化させ、Air/Coalの条件を2.2、2.4、2.6と変化させた。その結果を表3に示す。
【0029】
表3中の数値については、下限が亜瀝青炭の水分濃度が30%のときの最大混炭率で、上限が亜瀝青炭の水分濃度が20%のときの最大混炭率である。
【0030】
この結果から、1次空気温度を下げること、Air/Coalを高めることが亜瀝青炭の混炭率を高めるために有効な運用方策であることがわかる。現在、主に使用されている亜瀝青炭の水分濃度20%の結果を見ると、基準となる1次空気の運用条件(1次空気温度80℃、Air/Coal=2.2)では、亜瀝青炭の混炭率は50%を達成できないが、本検討の試算の範囲内で、亜瀝青炭の混炭率を50%から75%以上にまで高めていくことができる。
【0031】
以上の検討により、亜瀝青炭の混炭率の上限については石炭中の水分濃度に依存するが、水分条件がわかれば運用可能な亜瀝青炭の混炭率が試算できる。また、亜瀝青炭を高い比率で混炭するためには、1次空気の温度(=ローラミル2の出口温度)を下げること、Air/Coal(乾燥用空気量)を高めることが有効であることがわかった。
【0032】
かかる検討結果を踏まえ、次に1次空気温度を低下させた際の燃焼性への影響を調べた。
【0033】
<1次空気温度を低下させた際の燃焼性への影響>
亜瀝青炭の高比率混炭運用を想定して亜瀝青炭の混炭率を50%とした場合に、1次空気温度を低下させた際の燃焼特性への影響を検討した。燃焼条件については、1次空気の温度以外の燃焼条件は表4および表5に示した基準条件にて行い、1次空気温度のみを基準条件の80℃から10℃ごとに低下させた際の燃焼試験を実施した。このときの亜瀝青炭の水分条件は20%である。
【0034】
なお、表4は基準条件におけるボイラIの火炉1の操作条件、表5はバーナ3の操作条件を示している。ここで、基準条件とは、瀝青炭単味の微粉炭を
図1に示すボイラIを用いて燃焼させた場合に最適となる条件である。したがって、各ボイラはそれぞれ固有の基準条件を有している。
【0037】
ボイラIにおける燃焼試験結果として、バーナ3の出口直後の着火状況を
図5に、火炉内の酸素濃度分布を
図6に示す。
図5(a)および
図6(a)が1次空気が80℃の場合、
図5(b)および
図6(b)が1次空気が70℃の場合である。
【0038】
なお、本実験では1次空気温度の条件を60℃まで低下させると、1次空気管内で水分が凝縮して配管が詰まるため、70℃の場合のみで検討した。
【0039】
図6に示す結果より、今回検討した1次空気の温度範囲内では、条件によらず酸素の濃度分布に違いが見られず燃焼性への影響はほとんどないことがわかった。
【0040】
次に、1次空気温度の違いがNOxの排出量および灰中未燃分濃度に及ぼす影響を検討するためボイラIでの燃焼試験を行った。火炉1の出口のNOx濃度および灰中未燃分濃度を
図7に示す。同図を参照すれば、1次空気温度を70℃まで低下させても、火炉1の出口のNOx濃度および灰中未燃分濃度への影響は少なく、この結果からも1次空気温度を80℃から70℃まで低下させても燃焼性への影響が少ないことが示された。
【0041】
このことは、ローラミル2の出口側温度を下げることが亜瀝青炭の混炭率を高めるために有効であると云い得る。
【0042】
<Air/Coalを増加させた際の燃焼性への影響>
亜瀝青炭をさらに高い比率で混炭するため、1次空気温度70℃の条件でAir/Coalを増加させた場合の燃焼性への影響を評価した。Air/Coalの運用条件については、基準条件である2.2と、2.4、2.6とした。ボイラIにおけるAir/Coalの変化時のバーナ3の出口直後の着火状況を
図8に示す。同図(a)、(b)、(c)はAir/Coalが2.2、2.4、2.6の場合をそれぞれ示している。
【0043】
図8から明らかな通り、Air/Coalを増加させると、バーナ3の出口直後で着火できず、バーナ3から離れた位置で着火していた。
【0044】
次に、
図8(a)〜(c)の条件に対応する火炉1内の酸素濃度分布を
図9(a)〜(c)に示す。同図に示す結果から、着火の遅れによりバーナ3の近傍での酸素の濃度が高く、酸素の消費が遅れていることがわかる。さらに、火炉1の外周部での酸素濃度が高いため火炉1の外周部での燃焼促進が図れていないことが考えられる。すなわち、Air/Coalを高めることにより、1次空気流速が高くなり微粉炭の着火の遅れを引き起こし、火炉1の後流側で火炎が拡がりにくくなると考えられる。ただ、混炭率の向上に寄与するAir/Coalを2.6まで高めても失火することはなく、火炉1内での燃焼は継続し得る。
【0045】
次に、ボイラIを用いて、同様にAir/Coalを変化させた条件で燃焼試験を行い、火炉1の出口のNOx濃度および灰中未燃分濃度への影響を検討した。この結果を
図10に示す。同図に示すように、火炉1出口のNOx濃度はいずれの条件でも違いがほとんどみられないが、灰中未燃分濃度はAir/Coalの増加とともに単調に増加していった。これは、バーナ3の近傍での着火が遅れ、火炎が拡がりにくくなったことで火炉1の全体での燃焼性が悪化してしまったことによるものと考えられる。
【0046】
以上より、Air/Coalを高めた運用を行う際には燃焼条件の適正化を図ることが好ましいことが確認できた。
【0047】
Air/Coalを高めると、バーナ3の近傍で着火しなくなり灰中未燃分濃度が増加する。火炉1の出口のNOx濃度を増加させずに灰中未燃分濃度を低減するためには、バーナ3の近傍で速やかに着火させた上で、火炎の拡がりを適正化し還元領域を広く形成させることが重要である。そこで、亜瀝青炭の混炭率を75%としてさらに混炭率を高めた上でAir/Coalが2.6の条件で燃焼条件の適正化を行った。
【0048】
<二段燃焼率の変化による燃焼改善策の検討>
Air/Coalを高めていくと1次空気量が増加するが、二段燃焼率が一定の条件であれば、その増分の空気量は2次・3次空気量から減らすことになる。2次・3次空気量が減ったことにより、バーナ3の近傍での1次空気と2次・3次空気の混合がうまく図れなくなり着火が遅れるとともに、火炉1外周部に火炎が広がらなくなったと考えられる。そこで、二段燃焼率を下げ、2次・3次空気量を上げることによる効果を検討した。
【0049】
ボイラIを用いて、亜瀝青炭の混炭率75%を想定した1次空気の運用条件の下(1次空気の温度70℃、Air/Coalを2.6)、二段燃焼率を基準条件の30%と、25%、20%の条件で燃焼試験を行った。なお、二段燃焼率が25%での2次・3次空気量は、瀝青炭専焼時の基準条件(Air/Coalが2.2、二段燃焼率が30%)での2次・3次空気量とほぼ同等となる。
【0050】
二段燃焼率を変化させた際のバーナ3の出口直後での着火状況を
図11に、火炉1内の酸素濃度分布を
図12に示す。両図中(a)、(b)、(c)が二段燃焼率をそれぞれ30%、25%、20%とした場合である。
【0051】
両図に示すように、二段燃焼率を下げると、バーナ3の近傍で着火し、バーナ3の出口直後での酸素濃度が低くなり酸素の消費が速くなっていることから、着火性が改善されていることがわかった。ただし、二段燃焼率が25%ではバーナ3の近傍の着火位置が変動し、比較的不安定な状態にあった。バーナ3の近傍での着火性を安定させるためには二段燃焼率を20%まで下げるのが望ましい。
【0052】
次に、火炉1の出口のNOx濃度および灰中未燃分濃度への影響を
図13に示す。同図に示すように、二段燃焼率を下げると、着火性が改善できるため灰中未燃分濃度を減少させることができたが、NOx排出量は増加した。
図14に示す火炉1の中心軸上のNOx濃度変化から二段燃焼率を下げることにより、着火位置が前方に移り、バーナ3から近い位置ではNOxの発生が早まるが、同時にNOxが還元される領域もバーナ3側に移ることから、バーナ3からの距離が1mの位置では二段燃焼率が低い方がNOx濃度は低くなる。
【0053】
しかしながら、二段燃焼率を下げたことによって、二段燃焼用空気注入位置手前の領域の還元雰囲気が弱まり、その領域ではNOxが分解されにくくなったため、二段燃焼率が低い条件の方が、分解されるNOxの量が少なくなり火炉1の出口のNOx濃度は高くなったと考えられる。特に、二段燃焼率の供給条件が20%の場合では、バーナ空気比(完全燃焼に必要な空気流量に対してバーナ3で供給する1次・2次・3次空気流量の合算値の割合)が0.99であり、ほぼ1に近いため、還元雰囲気が形成されにくい。
【0054】
<2次空気分配率、2次旋回角の変化による燃焼改善策の検討>
前述の如く、二段燃焼率を下げることで着火性をある程度改善させることは可能である。しかし、バーナ3の空気比が高まることで火炉1の出口のNOx濃度は増加してしまう。火炉1の出口のNOx濃度と灰中未燃分濃度の同時低減の観点からは、還元雰囲気を形成できる二段燃焼用空気条件を維持しながら、さらに燃焼性を改善することが有効であると考えた。そこで、バーナ3の近傍で着火でき、かつ、ある程度の還元雰囲気を形成できる二段燃焼率が25%の条件(バーナ空気比0.93)で燃焼改善策を検討することとした。
【0055】
1次空気によって搬送された微粉炭は、バーナ3の出口直後で、2次空気と接するため、2次空気の供給条件の適正化が重要であると考えた。そこで、2次空気のバーナ旋回角と2次空気の供給量(2次空気分配率)の影響を調べた。2次空気の操作条件として、基準条件の旋回角81degから63degまで弱めた条件と、2次空気分配率を基準条件の14.5%から30%まで高めた条件での燃焼試験を実施した。
【0056】
2次空気旋回角および2次空気分配率を変化させた際のバーナ3の出口直後での着火状況を
図15に、火炉1内の酸素濃度分布を
図16に示す。両図中(a)〜(c)は二段燃焼率を25%に固定し、(a)が2次空気旋回角を81degで、2次空気分配率を14.5%、(b)が2次空気旋回角を63degで、2次空気分配率を14.5%、(c)が2次空気旋回角を81degで、2次空気分配率を30%とした場合をそれぞれ示している。
【0057】
図15および
図16に示すように、2次空気旋回角を弱めた条件、2次空気分配率を高めた条件の双方でバーナ3の近傍での着火性がよくなった。しかし、火炉1内の酸素の消費に及ぼす影響から火炉1内の燃焼状態を考察すると、2次空気旋回角を弱めた条件では火炉1の外周部での酸素濃度が高く、火炉1の外周部の燃焼促進が図れていないことがわかった。
【0058】
2次空気旋回角を弱めたことでバーナ3の出口直後の中心軸上のごく狭い領域での燃焼性は向上したが、バーナ3側から後流側に向かう燃焼用空気(1次+2次空気)の直進性が増すため、火炉1の外周部まで火炎が広がらなかったと考えられる。
【0059】
これに対して、2次空気分配率を高めた際には、バーナ3の出口直後、特に火炉1外周部分の酸素濃度が低く酸素の消費がさらに速くなっており、後流の方でも火炉1の外周部での酸素濃度が低い領域が広がっている。
【0060】
2次空気分配率を高めたことでバーナ3の出口直後での着火性がさらに向上し、かつ、火炎もより外周部に広がっているものと判断できる。さらに、その際の火炉1の出口NOx濃度と灰中未燃分濃度への関係を
図17に示す。同図を参照すれば、2次空気旋回角を弱めて運用することは、上記考察の通り、火炉1内全体での燃焼促進が図れないため火炉1の出口のNOx濃度は低下するものの、灰中未燃分濃度は大幅に増加した。これに対し、2次空気分配率を上げた条件では、バーナ3の近傍での着火性が増し、かつ火炉1内全体での燃焼改善が図れたため、火炉1の出口のNOx濃度と灰中未燃分濃度の双方を低減できた。
【0061】
以上より、亜瀝青炭高比率混炭運用時にAir/Coalを高めていく際には、バーナ3の近傍での着火性が悪化し灰中未燃分濃度が増加する。その対策として、二段燃焼率を下げることで着火性の向上を図ることができる。さらに2次空気分配率を高めることによって、着火性がより向上し、かつ火炎が外周部に拡がり、還元領域を広げることができる。かかる検討による亜瀝青炭高比率混炭運用時に空気供給条件の適正化を図った際の火炉1の出口のNOx濃度および灰中未燃分濃度への影響は
図18に示す。これらの運用策を講じることによって燃焼用空気の供給条件の適性化を図ることができ、火炉1の出口のNOx濃度を増加させずに、灰中未燃分濃度を効果的に低減できることが示された。
【0062】
亜瀝青炭の混炭率を高めていくために有効な1次空気の運用条件を検討し、さらに、上述の如き実験結果に基づき亜瀝青炭高比率混炭運用時の適正な燃焼条件を検討した結果をまとめると下記の通りである。
【0063】
1) 粉砕前後の石炭の熱物質収支に関する検討により、亜瀝青炭の混炭率の上限については、前提となる水分条件に強く依存するが、水分条件がわかれば、運用可能な亜瀝青炭の混炭率が試算でき、亜瀝青炭の混炭率を高めるためには、1次空気温度(ローラミル2の出口温度)を下げること、Air/Coal(乾燥用空気量)を高めることが有効である。
【0064】
瀝青炭と亜瀝青炭の水分濃度を一般的な条件として、20%として検討すると、混炭率50%程度まではローラミル2の出口の1次空気温度を下げること、もしくは、Air/Coalを高めることが亜瀝青炭の混炭率を高めるために有効であり、混炭率を75%程度まで高める際には、双方の対策をとることが好ましいことが明らかとなった。ただ、Air/Coalを高めることのみによっても50%以上の高い混炭率での燃焼が、バーナ3での失火を伴うことなく可能であることが分った。
【0065】
2) 亜瀝青炭高比率混炭時に1次空気温度を70℃程度まで下げても火炉1の出口のNOx濃度、灰中未燃濃度への影響は少なく、1次空気温度を下げることは、亜瀝青炭の混炭率を高めるために有効な対応策であることが明らかとなった。Air/Coalを高めると、1次空気流速の増加により、バーナ3の近傍での着火が遅れ、灰中未燃分濃度が増加するため、かかる燃焼状態を改善するためには、燃焼条件の適正化を図ることが必要であることがわかった。
【0066】
3) 亜瀝青炭の高比率混炭運用時にAir/Coalを高めていった際の燃焼性が悪化することの対策としては、二段燃焼率を下げることで、着火性の向上を図ることができる。すなわち、2次空気分配率を高めることで、着火性がより向上し、かつ、火炎が外周部に拡がり還元領域を広げることができた。
【0067】
かかる知見に基づく本発明の実施の形態では、瀝青炭に対する亜瀝青炭の混炭率を50%〜75%の微粉炭を火炉1に供給することにより燃焼させる。このときのボイラIの運用条件等は次の通りである。
【0068】
1) Air/Coalは、基準条件におけるAir/Coalの値(2.2)を越える、例えば2.4や2.6とする。
2) ローラミル2の出口側の1次空気温度は、基準条件における1次空気温度(80℃)よりも低温の、例えば70℃とする。
3) 二段燃焼率が基準条件における二段燃焼率の基準値未満である、例えば25%や20%とする。
4) 2次空気分配率を基準条件における2次空気分配率を超える値である、例えば30%とする。
【0069】
上記1)および2)の条件により、混炭率を少なくとも75%程度まで高めることができる。この場合、このままではバーナ3の近傍での着火が遅れ、灰中未燃分濃度の上昇が懸念されるが、かかる燃焼状態の悪化は上記条件3)のように二段燃焼率を基準の二段燃焼率よりも小さい25%や20%とすることにより改善される。特に、
図13を参照すれば、25%程度が最適である。
【0070】
また、上記1)および2)の条件により、混炭率を高めた場合、二段燃焼率を下げることで着火性をある程度改善させることは可能であるとしてもバーナ3の空気比が高まることで火炉1の出口のNOx濃度は増加してしまうことが懸念される。かかる燃焼状態の悪化は、火炉1の出口のNOx濃度と灰中未燃分濃度の同時低減の観点から、還元雰囲気を形成できる二段燃焼用空気条件を維持しながら、さらに燃焼性を改善することが有効であるので、バーナ3の近傍の2次空気分配率を高めることでバーナ3の出口直後での着火性の向上を図ることで改善される。
【0071】
かかる本形態によれば、亜瀝青炭の混炭率を高くすることができるので、安価な亜瀝青炭の割合が増加する分、コストの低減を図ることができる。
【0072】
なお、上記実施の形態では、基準条件に対し1)1次空気の温度を低下させ、2)Air/Coalの値を大きくして1次空気の量を増大させ、3)二段燃焼率を小さくし、4)2次空気分配率を大きくしたが、少なくとも2)の条件が成立していれば、従来よりも混炭率を向上させることができる。
【0073】
したがって、1)二段燃焼率が基準条件における二段燃焼率の基準値未満になるように調整する燃焼方法、2)2次空気分配率を基準条件における2次空気分配率を超える値となるように調整する燃焼方法、3)ローラミル2の出口側の1次空気の温度が基準条件における温度よりも低温になるように調整し、これらのうちの何れか一つを、Air/Coalの値を大きくして1次空気の量を増大させる燃焼方法と組み合わせることによっても、また何れか二つを、Air/Coalの値を大きくして1次空気の量を増大させる燃焼方法と組み合わせることによっても混炭率を向上させる燃焼方法を実現し得る。