特許第6045500号(P6045500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6045500チトクロームP450をコードする遺伝子及びその利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045500
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】チトクロームP450をコードする遺伝子及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161206BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20161206BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20161206BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20161206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20161206BHJP
   A01H 5/00 20060101ALI20161206BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A01H5/00 A
   A01H1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2013-538591(P2013-538591)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2012076459
(87)【国際公開番号】WO2013054890
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2011-226174(P2011-226174)
(32)【優先日】2011年10月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000000169
【氏名又は名称】クミアイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 啓明
(72)【発明者】
【氏名】田口 文緒
(72)【発明者】
【氏名】堀 清純
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀田 順子
(72)【発明者】
【氏名】角 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 力
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/000077(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/085221(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0103451(US,A1)
【文献】 " OsIFCC002559 Oryza sativa Express Library Oryza sativa Indica Group genomic, genomic survey sequence,CL959279, [online], National Center for Biotechnology Information, 2004年9月21日掲載, 2012年11月21日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucgss/CL959279
【文献】 " hypothetical protein OsI_02734 [Oryza sativa Indica Group]",EAY74842, EAY74842.1 , [online], National Center for Biotechnology Information, 2008年12月17日掲載,,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/125526728
【文献】 IMAISHI H. et al.,,Pesticide Biochemistry and Physiology, 2007, Vol.88, pp.71-77
【文献】 YUN MS. et al.,,Pesticide Biochemistry and Physiology, 2005, Vol.83, pp.107-114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
A01H 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)のいずれかに記載されたポリヌクレオチドを含み、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450をコードする遺伝子を導入した植物を培養又は栽培することを特徴とする、ビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)、ピリチオバックナトリウム塩(pyrithiobac-sodium)、ピリミノバック(pyriminobac)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ペノキススラム(penoxsulam)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、プロピリスルフロン(propyrisulfuron)およびピノキサデン(pinoxaden)からなる群より選ばれる1種以上の生育阻害物質に対する耐性を有する植物の製造方法。
(a) 配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(b) 配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の一致度を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードし、かつ上記生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
(c) 配列番号1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
【請求項2】
以下の(a)〜(c)のいずれかに記載されたポリヌクレオチドを含み、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450をコードする遺伝子を導入した植物を栽培している圃場にビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)、ピリチオバックナトリウム塩(pyrithiobac-sodium)、ピリミノバック(pyriminobac)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ペノキススラム(penoxsulam)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、プロピリスルフロン(propyrisulfuron)およびピノキサデン(pinoxaden)からなる群より選ばれる1種以上の生育阻害物質を処理することによる、該植物に対して有害な雑草を防除する方法。
(a) 配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(b) 配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の一致度を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードし、かつ上記生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
(c) 配列番号1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
【請求項3】
ビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)、ピリチオバックナトリウム塩(pyrithiobac-sodium)、ピリミノバック(pyriminobac)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ペノキススラム(penoxsulam)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、プロピリスルフロン(propyrisulfuron)およびピノキサデン(pinoxaden)からなる群より選ばれる1種以上の生育阻害物質からなる群より選ばれる1種以上の生育阻害物質に対する感受性を示す宿主に対して、以下の(a)〜(c)のいずれかに記載されたポリヌクレオチドを含み、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450をコードする遺伝子と、当該遺伝子とは異なる任意の遺伝子とが更に組み込まれた発現ベクターを導入する工程と
当該生育阻害物質の存在下で生育する細胞を形質転換体として選抜する工程とを含む形質転換方法。
(a) 配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(b) 配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の一致度を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードし、かつ上記生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
(c) 配列番号1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特徴的な活性を有するチトクロームP450をコードする遺伝子及びその利用に関し、より具体的には、当該遺伝子を有する発現ベクター、当該発現ベクターを有する形質転換体並びにトランスジェニック植物、植物の生育に有害な作用を有する物質に対して耐性を有する植物の製造方法、植物に対して有害な雑草を防除する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物にとって致死的に作用する物質や、植物の生育を遅延させるように作用する物質としては、多種多様なものが存在する。以下、植物にとって致死的に作用する物質や、植物の生育を遅延させるように作用する物質を総称して、植物の生育に有害な作用を有する物質又は生育阻害物質と呼ぶ。
【0003】
例えば、農園芸用に使用されている農薬類や生長調節剤、肥料、資材等においても、処理した植物に害作用を生じる場合があり、これらは一般に薬害や肥料焼けなどと呼ばれている。更には、微生物や節足動物、線虫等の動物、そして他の植物ですら、生育阻害物質を生産して害作用を及ぼす場合もあることが知られている。
【0004】
これらの生育阻害物質に対して、その害を避けるために植物側が持っている手段としては、該物質の解毒・代謝による無害化、取込み・移行の抑制、排出の促進等が挙げられる。その中でも、特に重要なものは、該物質の解毒・代謝機能の活性化である。このような解毒・代謝に関わっている分子種の例としては、モノオキシゲナーゼ活性を有するチトクロームP450が知られている(非特許文献1)。イネでは350種類以上、シロイヌナズナでも240種類以上ものP450が同定されている(非特許文献2)。しかしながら、チトクロームP450による生育阻害物質の解毒・代謝のメカニズムの全貌は解明されていない。
【0005】
したがって、チトクロームP450による生育阻害物質の解毒・代謝のメカニズムの一端を明らかにすることによって、例えば、所望の植物に対して生育阻害物質に対する耐性を付与することができる。また、特定の生育阻害物質の解毒・代謝に関与するチトクロームP450遺伝子を特定できれば、当該チトクロームP450遺伝子を選択マーカーとして利用した形質転換方法を提供できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Daniele Werck-Reichhartら, Trends in Plant Science, 5, 3, 116-123(2000)
【非特許文献2】David R. Nelsonら, Plant Physiology, 135, 756-772(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述したように、種々の異なる作用機序を有する多くの生育阻害物質について、チトクロームP450との関連で解毒・代謝のメカニズムは未解明のままである。よって、上述したように、チトクロームP450遺伝子を利用して、所望の植物に対して生育阻害物質に対する耐性を付与することや、当該チトクロームP450遺伝子を選択マーカーとして利用した形質転換方法を実現することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、特定の生育阻害物質の解毒・代謝に関与するチトクロームP450を特定し、当該チトクロームP450をコードする遺伝子を利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、植物の生育阻害物質に対する耐性に関与するチトクロームP450遺伝子を同定し、このチトクロームP450遺伝子を利用することで、当該生育阻害物質に耐性を有する植物の作出や当該チトクロームP450遺伝子を選択マーカー遺伝子として利用する形質転換方法などを構築することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
【0011】
(1)以下の(a)〜(c)のいずれかに記載されたポリヌクレオチドを含み、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450をコードする遺伝子。
【0012】
(a) 配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードし、かつ生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
(c) 配列番号1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ生育阻害物質に対する耐性を付与する遺伝子として機能するポリヌクレオチド
(2)上記(1)の遺伝子を含む発現ベクター。
【0013】
(3)上記遺伝子とは異なる任意の遺伝子が更に組み込まれた(2)記載の発現ベクター。
【0014】
(4)上記(2)又は(3)記載の発現ベクターを含む形質転換体。
【0015】
(5)上記(2)又は(3)記載の発現ベクターを含むトランスジェニック植物。
【0016】
(6)植物が、植物体、植物器官、植物組織又は植物培養細胞である(5)記載のトランスジェニック植物。
【0017】
(7)上記(5)又は(6)記載のトランスジェニック植物を培養又は栽培することを特徴とする、生育阻害物質に対する耐性を有する植物の製造方法。
【0018】
(8)上記(5)又は(6)記載のトランスジェニック植物を栽培している圃場に生育阻害物質を処理することによる、該植物に対して有害な雑草を防除する方法。
【0019】
(9)生育阻害物質に対する感受性を示す宿主に対して、上記(3)記載の発現ベクターを導入する工程と当該生育阻害物質の存在下で生育する細胞を形質転換体として選抜する工程とを含む形質転換方法。
【0020】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2011-226174号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、植物の生育阻害物質の解毒・代謝に関与するチトクロームP450をコードする遺伝子を利用することで、当該生育阻害物質に対する耐性を植物に付与することができる。また、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を選択マーカー遺伝子として利用することで、全く新規な形質転換方法を構築することができる。さらに、さらに、本発明に係るチトクロームP450遺伝子は、植物の生育阻害物質に対する耐性の指標となる耐性マーカー遺伝子として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】コシヒカリ、カサラス及びコシヒカリ/カサラス染色体断片置換系統のBS含有培地にて生育した結果を示す写真である。
図2】座上領域マッピングを利用して、BS耐性の原因遺伝子を検討した結果を示す特性図である。
図3】1番染色体上のマーカーRM9〜41834-50間に座上する3つのP450を示す特性図である。
図4】カサラスにおけるCYP72A31遺伝子と、日本晴におけるCYP72A31遺伝子を比較した結果を示す特性図である。
図5A】日本晴カルス及びカサラスカルスにおけるCYP72A31遺伝子の発現を解析した結果を示す特性図である。
図5B】日本晴カルス及びカサラスカルスにおけるCYP72A32遺伝子の発現を解析した結果を示す特性図である。
図5C】日本晴カルス及びカサラスカルスにおけるCYP72A33遺伝子の発現を解析した結果を示す特性図である。
図6】形質転換イネを作出するための8種類のベクタープラスミドを模式的に示す概略構成図である。
図7】GFP過剰発現コンストラクトを日本晴及びカサラスに導入した場合のBSによる生育阻害を示す写真である。
図8】カサラス由来CYP72A31過剰発現コンストラクトを日本晴に導入した場合のBSによる生育阻害を示す写真である。
図9】カサラス由来CYP72A31過剰発現コンストラクトをカサラスに導入した場合のBSによる生育阻害を示す写真である。
図10】日本晴由来のCYP72A32を過剰発現させた結果(a)、カサラス由来のCYP72A32を過剰発現させた結果(b)を示す写真である。
図11】日本晴由来のCYP72A33を過剰発現させた結果(a)、カサラス由来のCYP72A33を過剰発現させた結果(b)を示す写真である。
図12】実施例8及び9で実施した形質転換方法を説明する図である。
図13】形質転換イネをBSを含有する再分化培地で生育したときの写真である。
図14図13に示した再分化個体を、BS含有ホルモンフリー培地にて生育したときの写真である。
図15】実施例9で作製した再分化個体をBS含有ホルモンフリー培地にて生育し、根の成長を観察した結果を示す写真である。
図16A】カサラス由来CYP72A31遺伝子、カサラス由来CYP72A32遺伝子又はカサラス由来CYP72A33で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果を示す写真である。
図16B】カサラス由来CYP72A31遺伝子、カサラス由来CYP72A32遺伝子又はカサラス由来CYP72A33で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果を示す写真である。
図17A】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(発芽した個体の割合)を示す特性図である。
図17B】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(本葉が展開した個体の割合)を示す特性図である。
図17C】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(地上部の新鮮重)を示す特性図である。
図18A】カサラス由来CYP72A32遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(発芽した個体の割合)を示す特性図である。
図18B】カサラス由来CYP72A32遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(本葉が展開した個体の割合)を示す特性図である。
図18C】カサラス由来CYP72A32遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(地上部の新鮮重)を示す特性図である。
図19A】カサラス由来CYP72A33遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(発芽した個体の割合)を示す特性図である。
図19B】カサラス由来CYP72A33遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(本葉が展開した個体の割合を示す特性図である。
図19C】カサラス由来CYP72A33遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(Col-0)のBS含有培地での生育試験の結果(地上部の新鮮重)を示す特性図である。
図20】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(K31-4-2)と非形質転換シロイヌナズナ(NT)について薬剤無添加培地、BS添加培地、pyrithiobac-sodium添加培地を用いた生育試験の結果を示す写真である。
図21】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(K31-4-2)と非形質転換シロイヌナズナ(NT)について薬剤無添加培地、BS添加培地、pyriminobac添加培地を用いた生育試験の結果を示す写真である。
図22】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(K31-4-2)と非形質転換シロイヌナズナ(NT)についてbensulfuron-methyl添加培地、penoxsulam添加培地を用いた生育試験の結果を示す写真である。
図23】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(K31-4-2)と非形質転換シロイヌナズナ(NT)についてpyrazosulfuron-ethyl添加培地、amidosulfuron添加培地、imazosulfuron添加培地を用いた生育試験の結果を示す写真である。
図24】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したシロイヌナズナ(K31-4-2)と非形質転換シロイヌナズナ(NT)についてnicosulfuron添加培地、propyrisulfuron添加培地を用いた生育試験の結果を示す写真である。
図25】カサラス由来CYP72A31遺伝子で形質転換したイネ(K31-4-6-2)と非形質転換イネ(NT)についてBS添加培地、pinoxaden添加培地を用いた生育試験の結果を示す写真である。
図26】pCAMBIA1390-KasCYP72A31又はpSTARA-sGFPを導入したイネカルスについてBS含有N6D培地を用いた生育試験の結果を示す写真である。
図27】pCAMBIA1390-KasCYP72A31を導入したイネカルスをBSで選抜した後、再分化させた試験の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
1.チトクロームP450遺伝子
本発明に係るチトクロームP450遺伝子(以下、単にP450遺伝子と呼称する)は、インド型イネが持つビスピリバックナトリウム塩(BS)耐性に関与するP450遺伝子である。このP450は、CYP72A31に分類され、ゲノム配列が公開されている日本晴(日本型イネ)ではその5’末端が欠失している偽遺伝子として知られている。すなわち、本発明で特定したインド型イネ由来のCYP72A31は、日本型イネには機能するかたちでは保存されていない。なお、このCYP72A31に分類されるP450遺伝子は、他のチトクロームP450遺伝子であるCYP72A32遺伝子及びCYP72A33遺伝子と比較すると、80%程度のアミノ酸相同性を有するタンパク質をコードしている。ただし、これらCYP72A32遺伝子やCYP72A33遺伝子がコードするチトクロームP450は、BSに対する耐性を付与するような作用機序を示さない。したがって、本発明に係るP450遺伝子は、日本型イネには無く、インド型イネが持つBS耐性の原因遺伝子として特定できる。
【0025】
なお、インド型イネ由来のCYP72A31の塩基配列を決定して、これに基づいてDDBJのgenomic survey sequence (GSS)データベース(Other divisions中)及びSciFinderのデータベースを検索したところ、完全一致するaccession No. CL959279が検索される。しかし、このaccession No. CL959279は、インド型イネのゲノム解析の結果の一部としてGSSに登録しされたものである。また、accession No. CL959279には、アノテーションがついておらず、機能を推定することはできない。また、インド型イネ由来のCYP72A31の塩基配列から推定されるアミノ酸配列をクエリー配列としてblastp検索すると、完全一致するaccession No. EAY74842が検索される。このaccession No. EAY74842は、上述したインド型イネのゲノム解析からORFを予測して登録されたものである。また、accession No. EAY74842には、チトクロームP450と推定されるとのアノテーションがついているが、発現解析などの結果に基づいてチトクロームP450と確定するものではない。
【0026】
インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子の塩基配列及び当該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び2に示す。ただし、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子としては、配列番号1及び2にて特定されるものに限定されず、塩基配列やアミノ酸配列は異なるがパラログの関係又は狭義のホモログの関係にある遺伝子であっても良い。
【0027】
また、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子は、これら配列番号1及び2にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号2のアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列を有し、チトクロームP450として機能して、植物の生育阻害物質に対する耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードするものでも良い。配列類似性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、配列類似性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基と、物理化学的に機能が類似するアミノ酸残基との合計を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記合計数の割合として算出される。
【0028】
さらに、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子は、これら配列番号1及び2にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号2のアミノ酸配列に対して、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有し、チトクロームP450として機能して、植物の生育阻害物質に対する耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードするものでも良い。ここで、数個とは、例えば、2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、最も好ましくは2〜5個である。
【0029】
さらにまた、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子は、これら配列番号1及び2にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号1の塩基配列からなるDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチトクロームP450として機能して、植物の生育阻害物質に対する耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードするものでもよい。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる
【0030】
上述したように、配列番号1と異なる塩基配列からなる遺伝子、又は配列番号2とは異なるアミノ酸配列をコードする遺伝子が、チトクロームP450として機能して、植物の生育阻害物質に対する耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードするか否かは、当該遺伝子をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のNosプロモーターとターミネーター等の間に組み込んだ発現ベクターを用いて形質転換植物を作製し、形質転換していない植物を枯死させる生育阻害物質の存在下で当該形質転換植物が生育できるか否かを検討することによって確認することができる。なお、生育阻害物質としては、ビスピリバックナトリウム塩を使用することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0031】
なお、実施例にて詳細を述べるが、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子が、生育阻害物質に対する耐性を植物に付与する機能を有するものであることは、いわゆるマップベースクローニングにより明らかにされた。マップベースクローニングとは、類縁な生物種間で、生理活性物質等に対する感受性の違いを調べる手法としてしられる方法である。マップベースクローニングは、詳細な遺伝子地図をもとにDNAマーカーで候補染色体領域を絞り込み、目的遺伝子を特定する手法である。すなわち日本晴(日本型イネ)のゲノム配列は解読されていることから、日本型イネとインド型イネの掛け合わせた系統を作り、詳細なマッピングを行うことで日本型イネの遺伝子配列を基にして一部がインド型イネの遺伝子配列に置き換わった染色体断片置換系統群(Chromosome segment substitution lines、CSSL)を作出する。これらを用いて、生理活性物質等に対する感受性の違いを調べることで、生理活性物質等の感受性の違いが染色体のどの領域に座上しているかを特定できる。生理活性物質等の感受性試験は発芽試験や生育試験をゲランガム培地試験、寒天培地試験、水耕試験、またはポット試験等によって行うことができる。
【0032】
なお、染色体断片置換系統群としては、コシヒカリ/Kasalath染色体断片置換系統群((独)生物資源研究所ゲノムリソースセンター、http://www.rgrc.dna.affrc.go.jp/jp/ineKKCSSL39.html)やコシヒカリ/NonaBokra 染色体部分置換系統群(同、http://www.rgrc.dna.affrc.go.jp/jp/ineKNCSSL44.html)がある。
【0033】
2.発現ベクター
本発明の発現ベクターは、適当なベクターに本発明に係るチトクロームP450遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明のチトクロームP450遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミド、シャトルベクター、ヘルパープラスミドなどが挙げられる。
【0034】
プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
【0035】
ベクターに本発明のチトクロームP450遺伝子を挿入するには、まず、チトクロームP450遺伝子を含むDNA断片を精製し、精製された当該DNA断片を適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
【0036】
本発明においては、任意遺伝子を発現させるため、上記発現ベクターに、さらに当該任意遺伝子を挿入することができる。任意の遺伝子を挿入する手法は、ベクターに本発明のチトクロームP450遺伝子を挿入する方法と同様である。
【0037】
本発明のチトクロームP450遺伝子は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のNosプロモーターとターミネーター等の間に連結して用いて植物に導入後、除草剤耐性を調べることができる。なお、プロモーターとしては、Nosプロモーター以外にも、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)、各種アクチン遺伝子プロモーター、各種ユビキチン遺伝子プロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター、タバコのPR1a遺伝子プロモーター、トマトのリブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ・オキシダーゼ小サブユニット遺伝子プロモーター、ナピン遺伝子プロモーター、オレオシン遺伝子プロモーター等を挙げることができる。この中でも、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、アクチン遺伝子プロモーター又はユビキチン遺伝子プロモーターをより好ましく用いることができる。
【0038】
このように、本発明においては、様々なベクターを用いることができる。さらに、本発明のチトクロームP450遺伝子に目的の任意遺伝子をセンス又はアンチセンス方向で接続したものを作製し、これをバイナリーベクターと呼ばれるpBI101(Clonetech社)などのベクターに挿入することができる。
【0039】
3.形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、上述した本発明の発現ベクターを宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではないが、植物が好ましい。本発明の発現ベクターが宿主に導入されると、本発明に係るチトクロームP450遺伝子の発現により生育阻害物質に対する耐性を獲得することとなる。よって、上述した本発明の発現ベクターを宿主中に導入できたか否かの確認は、当該生育阻害物質に対する耐性を指標として評価できる。すなわち、本発明に係るチトクロームP450遺伝子は、他の遺伝子を導入する際の選抜マーカーとしても利用することができる。
【0040】
本発明において形質転換の対象となる植物は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)又は植物培養細胞のいずれをも意味するものである。形質転換に用いられる植物としては、アブラナ科、イネ科、ナス科、マメ科等に属する植物(下記参照)が挙げられるが、これらの植物に限定されるものではない。
【0041】
アブラナ科:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)
ナス科:タバコ(Nicotiana tabacum)
イネ科:トウモロコシ(Zea mays) 、イネ(Oryza sativa)
マメ科:ダイズ(Glycine max)
上記発現ベクターは、通常の形質転換方法、例えば電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法等によって植物中に導入することができる。
【0042】
例えばエレクトロポレーション法を用いる場合は、パルスコントローラーを備えたエレクトロポレーション装置により、電圧500〜1600V、25〜1000μF、20〜30msecの条件で処理し、遺伝子を宿主に導入する。
【0043】
また、パーティクルガン法を用いる場合は、植物体、植物器官、植物組織自体をそのまま使用してもよく、切片を調製した後に使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい。このように調製した試料を遺伝子導入装置(例えばBio-Rad社のPDS-1000/He等)を用いて処理することができる。処理条件は植物又は試料により異なるが、通常は1000〜1800psi程度の圧力、5〜6cm程度の距離で行う。
【0044】
また、植物ウイルスをベクターとして利用することによって、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を植物体に導入することができる。利用可能な植物ウイルスとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスが挙げられる。すなわち、まず、ウイルスゲノムを大腸菌由来のベクターなどに挿入して組換え体を調製した後、ウイルスのゲノム中に、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を挿入する。このようにして修飾されたウイルスゲノムを制限酵素によって組換え体から切り出し、植物宿主に接種することによって、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を植物宿主に導入することができる。
【0045】
アグロバクテリウムのTiプラスミドを利用する方法においては、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する細菌が植物に感染すると、それが有するプラスミドDNAの一部を植物ゲノム中に移行させるという性質を利用して、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を植物宿主に導入する。アグロバクテリウム属に属する細菌のうちアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)は、植物に感染してクラウンゴールと呼ばれる腫瘍を形成し、また、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacteriumu rhizogenes)は、植物に感染して毛状根を発生させる。これらは、感染の際にTiプラスミド又はRiプラスミドと呼ばれる各々の細菌中に存在するプラスミド上のT-DNA領域(Transferred DNA)と呼ばれる領域が植物中に移行し、植物のゲノム中に組み込まれることに起因するものである。
【0046】
Ti又はRiプラスミド上のT-DNA領域中に、植物ゲノム中に組み込みたいDNAを挿入しておけば、アグロバクテリウム属の細菌が植物宿主に感染する際に目的とするDNAを植物ゲノム中に組込むことができる。
【0047】
形質転換の結果得られる腫瘍組織やシュート、毛状根などは、そのまま細胞培養、組織培養又は器官培養に用いることが可能であり、また従来知られている植物組織培養法を用い、適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライド等)の投与などにより植物体に再生させることができる。
【0048】
ところで、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を導入した形質転換体を利用して、植物に対する新規な生育阻害物質をスクリーニングすることができる。すなわち、生育阻害物質の候補物質を、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を導入した形質転換体に接触させる。また、同じ生育阻害物質の候補物質を、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を導入していない細胞(上記形質転換体のもととなる宿主細胞が好ましい)にも接触させる。そして、上記形質転換体は生育し、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を導入していない細胞が致死となるような候補物質を選択する。選択された候補物質は、本発明に係るチトクロームP450遺伝子により解毒・代謝される生育阻害物質であると結論付けることができる。
【0049】
スクリーニングされた生育阻害物質は、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を有する植物に対しては毒性を有しないが、当該チトクロームP450遺伝子を有しない植物に対しては毒性を有する。このため、スクリーニングされた生育阻害物質は、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を有する植物を選択的に生育させる際の除草剤として使用することができる。
【0050】
ところで、本発明の発現ベクターは、上記植物宿主に導入するのみならず、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、又はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞、あるいはSf9等の昆虫細胞などに導入して形質転換体を得ることもできる。大腸菌、酵母等の細菌を宿主とする場合は、本発明の発現ベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、本発明のチトクロームP450遺伝子、リボソーム結合配列、目的遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、本発明のチトクロームP450遺伝子を制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0051】
細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0052】
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などが用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
【0053】
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞などが用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
【0054】
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
【0055】
遺伝子が宿主に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行われる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認する。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法も採用してもよい。
【0056】
4.植物の製造
本発明においては、上記形質転換植物細胞等から形質転換植物体に再生することができる。再生方法としては、カルス状の形質転換細胞をホルモンの種類、濃度を変えた培地へ移して培養し、不定胚を形成させ、完全な植物体を得る方法が採用される。使用する培地としては、LS培地、MS培地などが例示される。
【0057】
本発明の「植物体を製造する方法」は、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を挿入した植物発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換植物細胞を得て、該形質転換植物細胞から形質転換植物体を再生し、得られた形質転換植物体から植物種子を得て、該植物種子から植物体を生産する工程を含む。
【0058】
形質転換植物体から植物種子を得るには、例えば、形質転換植物体を発根培地から採取し、水を含んだ土を入れたポットに移植し、一定温度下で生育させて、花を形成させ、最終的に種子を形成させる。また、種子から植物体を生産するには、例えば、形質転換植物体上で形成された種子が成熟したところで、単離して、水を含んだ土に播種し、一定温度、照度下で生育させることにより、植物体を生産する。このようにして生産された植物は、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を発現するため、除草剤等の生育阻害物質に耐性を示す。ここで、「生育阻害物質に耐性を示す」とは、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を導入する前と比較して統計的な有意差をもって、生育阻害物質に対する耐性を示すことと同義である。生育阻害物質に対する耐性は、所定の濃度で当該生育阻害物質を接触させたときの、植物体の枯死率や茎葉部及び根部等の生育阻害率等に基づいて判断することができる。
【0059】
5.有害雑草の防除方法
本発明のチトクロームP450遺伝子を植物に導入し、トランスジェニック植物を上記の方法で生産することにより、生育阻害物質に対する耐性を有する植物を生産できる。したがって、例えば、有用植物についてこのトランスジェニック植物を作出し、当該トラスジェニック植物を圃場で栽培する際に、例えば除草剤のような雑草を枯死させる物質を該圃場全面に処理することで、トランスジェニック植物には薬害を引き起こすことなく、雑草だけを防除できる。
【0060】
6.生育阻害物質
本発明において、生育阻害物質とは、植物の生育に対して阻害的に作用する物質であれば特に限定されない。特に、本発明において、生育阻害物質とは、本発明に係るチトクロームP450遺伝子がコードするチトクロームP450が解毒・代謝に関連するものを意味する。例えば、生育阻害物質としては、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を本来的に有しない植物(例えば、日本型イネ)に対する阻害作用が、本発明に係るチトクロームP450遺伝子を本来的に有するインド型イネに対する阻害作用と比較して有意に高い物質であることが好ましい。
【0061】
具体的に、生育阻害物質とは、例えば除草剤、植物成長調整剤、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺そ剤等の農薬類、肥料、植物活性剤等の農園芸資材類、微生物が生産する植物に有害な物質、節足動物や線虫等の動物が生産する植物に有害な物質、アレロパシーの原因として知られている植物が生産する植物に有害な物質、その他の土壌中、水中、空気中に含まれる植物に有害な物質を含む。
【0062】
生育阻害物質に含まれる除草剤の一例としては、ビスピリバックナトリウム塩(BS)が挙げられる。BSは、商品名グラスショート(登録商標)及びノミニー(Nominee)(ノミニーおよびNomineeは登録商標)の主成分で、除草活性を有している。グラスショートは水田の畦畔及び非農耕地の抑草剤として使用されている。一方、ノミニーはインド型イネ(Indica rice)が栽培される水田の除草剤として使用されているが、日本型イネ(Japonica rice)に対しては薬害を引き起こすので、日本では水田の畦畔でのみ使用される。
【0063】
BSの標的酵素は、アセト乳酸合成酵素(acetolactate synthase(ALS)、EC 2.2.1.6、別称acetohydroxy acid synthase(AHAS))であり、これを阻害し植物を枯死に至らしめる。日本型イネとインド型イネでは、標的酵素のALSタンパク質のアミノ酸配列の内、4アミノ酸が異なるが、これらはALS阻害剤の抵抗性に関与するアミノ酸置換とは異なる。したがって、この相違点は、BSに対するインド型イネの耐性が高いことの理由にはならない(Aldo Merottoら, J. Agric. Food Chem., 57, 4, 1389-1398(2009))。
【0064】
一方、BSの日本型イネの解毒・代謝については、BSのピリミジン環上のメトキシ基が酸化を受け、ヒドロキシル基に変換され酵素阻害活性を失うことが知られている(松下ら、日本農薬学会第19回大会講演要旨集, C-115, 127(1994))。BSはピリミジニルサリチル酸系のALS阻害剤であるが、スルホニルウレア系ALS阻害型除草剤を代謝するチトクロームP450として、CYP81A6が知られている(特表2008-546419号公報)。しかしながら、CYP81A6がスルホニルウレア系ALS阻害型除草剤のどの部位を酸化して不活化しているのか未解明のままである。また、CYP81A6遺伝子は、インド型イネ及び日本晴型イネにもそれぞれ存在することが報告されている(CIB-DDBJ, NCBI, ENA/EBIアクセッション番号DQ341412(インディカ型イネ)、AK104825(日本型イネ))。インド型イネにおけるBS耐性は、CYP81A6に分類されるチトクロームP450遺伝子によるものとは結論できない。
【0065】
そして、後述する実施例に示すように、インド型イネにおけるBS耐性は、インド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子によるものと結論付けられる。また、このインド型イネ由来のCYP72A31に分類されるチトクロームP450遺伝子は、BSのみならず種々の除草剤の分解・代謝に関与していると言える。
【0066】
除草剤の具体例としては、例えば、2,3,6-TBA、2,4-D(アミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、イソプロピルアミン、ナトリウム又はリチウム等との塩を含む)、2,4-DB、2,4-PA、ACN、AE-F-150944(コード番号)、CAT、DBN、DCBN、DCMU、DCPA、DNOC(アミン又はナトリウム等の塩を含む)、DPA、EPTC、IPC、MCPA、MCPA・イソプロピルアミン塩、MCPA・エチル、MCPA・ナトリウム、MCPA・チオエチル、MCPB、MCPP、MDBA、MDBA・イソプロピルアミン塩、MDBA・ナトリウム塩、PAC、SAP、S-メトラクロール(S-metolachlor)、SYP-298(コード番号)、SYP-300(コード番号)、TCA(ナトリウム、カルシウム又はアンモニア等との塩を含む)、TCTP、アイオキシニル(ioxynil, ioxynil-octanoate)、アクロニフェン(aclonifen)、アクロレイン(acrolein)、アザフェニジン(azafenidin)、アシフルオルフェン(acifluorfen-sodium)、アジムスルフロン(azimsulfuron)、アシュラム(asulam)、アセトクロ−ル(acetochlor)、アトラジン(atrazine)、アニロホス(anilofos)、アミカルバゾン(amicarbazone)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、アミトロール(amitrole)、アミノピラリド(aminopyralid)、アミプロホスメチル(amiprofs-methyl)、アメトリン(ametryn)、アラクロール(alachlor)、アロキシジム(alloxydim)、アンシミドール(ancymidol)、イソウロン(isouron)、イソキサクロルトール(isoxachlortole)、イソキサフルトール(isoxaflutole)、イソキサベン(isoxaben)、イソプロツロン(isoproturon)、イプフェンカルバゾン(ipfencarbazone)、イマザキン(imazaquin)、イマザピク(imazapic)(アミン等との塩を含む)、イマザピル(imazapyr)(イソプロピルアミン等のと塩を含む)、イマザメタベンズ(imazamethabenz-methyl)、イマザモックス(imazamox)(アミン塩等との塩を含む)、イマゼタピル(imazethapyr)(アミン塩等との塩を含む)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、インダジフラム(indaziflam)、インダノファン(indanofan)、エスプロカルブ(esprocarb)、エタメトスルフロンメチル(ethametsulfuron-methyl)、エタルフルラリン(ethalfluralin)、エチジムロン(ethidimuron)、エトキシスルフロン(ethoxysulfuron)、エトキシフェン(ethoxyfen-ethyl)、エトフメセート(ethofumesate)、エトベンザニド(etobenzanid)、エンドタール二ナトリウム(endothal-disodium)、オキサジアゾン(oxadiazon)、オキサジアルギル(oxadiargyl)、オキサジクロメホン(oxaziclomefone)、オキサスルフロン(oxasulfuron)、オキシフルオルフェン(oxyfluorfen)、オリザリン(oryzalin)、オルトスルファムロン(orthosulfamuron)、オルベンカルブ(orbencarb)、カフェンストロール(cafenstrole)、カルフェントラゾンエチル(carfentrazone-ethyl)、カルブチレート(karbutilate)、カルベタミド(carbetamide)、キザロホップPエチル(quizalofop-P-ethyl)、キザロホップPテフリル(quizalofop-P-tefuryl)、キザロホップエチル(quizalofop-ethyl)、キノクラミン(quinoclamine)、キンクロラック(quinclorac)、キンメラック(quinmerac)、クミルロン(cumyluron)、グリホサート(glyphosate)(ナトリウム、カリウム、アミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン又はトリメシウム等との塩を含む)、グルホシネート(glufosinate)(アミン又はナトリウム等との塩を含む)、クレトジム(clethodim)、クロジナホップ(clodinafop-propargyl)、クロピラリド(clopyralid)、クロマゾン(clomazone)、クロメトキシフェン(chlomethoxyfen)、クロメプロップ(clomeprop)、クロランスラムメチル(cloransulam-methyl)、クロランベン(chloramben)、クロリダゾン(chloridazon)、クロリムロンエチル(chlorimuron-ethyl)、クロルスルフロン(chlorsulfuron)、クロルタルジメチル(chlorthal-dimethyl)、クロルチアミド(chlorthiamid)、クロルフタリム(chlorphthalim)、クロルフルレノール(chlorflurenol)(低級アルキルエステルを含む)、クロルプロファム(chlorpropham)、クロルブロムロン(chlorbromuron)、クロルメコート(chlormequat)、クロロクスロン(chloroxuron)、クロロトルロン(chlorotoluron)、サフルフェナシル(saflufenacil)、シアナジン(cyanazine)、ジウロン(diuron)、ジカンバ(dicamba)(アミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ジグルコールアミン、ナトリウム又はリチウム等との塩を含む)、シクロエート(cycloate)、シクロキシジム(cycloxydim)、ジクロスラム(diclosulam)、シクロスルファムロン(cyclosulfamuron)、ジクロベニル(dichlobenil)、ジクロホップメチル(diclofop-methyl)、ジクロルプロップ(dichlorprop)、ジクロルプロップ−P(dichlorprop-P)、ジクワット(diquat(-dibromide))、ジチオピル(dithiopyr)、シデュロン(siduron)、ジニトラミン(dinitramine)、シニドンエチル(cinidon-ethyl)、シノスルフロン(cinosulfuron)、ジノテルブ(dinoterb)、シハロホップブチル(cyhalofop-butyl)、ジフェナミド(diphenamid)、ジフェンゾコート(difenzoquat)、ジフルフェニカン(diflufenican)、ジフルフェンゾピル(diflufenzopyr)、ジフルメトリム(diflumetorim)、シマジン(simazine)、ジメタクロール(dimethachlor)、ジメタメトリン(dimethametryn)、ジメテナミド(dimethenamid)、シメトリン(simetryn)、ジメピペレート(dimepiperate)、ジメフロン(dimefuron)、シンメチリン(cinmethylin)、スルコトリオン(sulcotrione)、スルフェントラゾン(sulfentrazone)、スルホスルフロン(sulfosulfuron)、スルホメツロンメチル(sulfometuron-methyl)、セトキシジム(sethoxydim)、ターバシル(terbacil)、ダイムロン(daimuron)、ダラポン(dalapon)、チアゾピル(thiazopyr)、チエンカルバゾン(thiencarbazone)、チオカルバジル(tiocarbazil)、チオベンカルブ(thiobencarb)、チジアジミン(thidiazimin)、チジアズロン(thidiazuron)、チフェンスルフロンメチル(thifensulfuron-methyl)、デシルアルコール(n-decanol)、デスメディファム(desmedipham)、デスメトリン(desmetryne)、テトラピオン(tetrapion)、テニルクロール(thenylchlor)、テブタム(tebutam)、テブチウロン(tebuthiuron)、テプラロキシジム(tepraloxydim)、テフリルトリオン(tefuryltrione)、テルブチラジン(terbuthylazine)、テルブトリン(terbutryn)、テルブメトン(terbumeton)、テンボトリオン(tembotrione)、トプラメゾン(topramezone)、トラルコキシジム(tralkoxydim)、トリアジフラム(triaziflam)、トリアスルフロン(triasulfuron)、トリアレート(tri-allate)、トリエタジン(trietazine)、トリクロピル(triclopyr(-butotyl))、トリトスルフロン(tritosulfuron)、トリフルスルフロンメチル(triflusulfuron-methyl)、トリフルラリン(trifluralin)、トリフロキシスルフロンナトリウム塩(trifloxysulfuron-sodium)、トリベヌロンメチル(tribenuron-methyl)、ナプタラム(naptalam)(ナトリウム等との塩を含む)、ナプロアニリド(naproanilide)、ナプロパミド(napropamide)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、ネブロン(neburon)、ノルフルラゾン(norflurazon)、バーナレート(vernolate)、パラコート(paraquat dichloride)、ハロキシホップ(haloxyfop-methyl)、ハロキシホップPメチル(haloxyfop-P-methyl)、ハロスルフロンメチル(halosulfuron-methyl)、ビアラホス(bilanafos-sodium)、ピクロラム(picloram)、ピコリナフェン(picolinafen)、ビシクロピロン(bicyclopyrone)、ビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)、ピノキサデン(pinoxaden)、ビフェノックス(bifenox)、ピペロホス(piperophos)、ピラクロニル(pyraclonil)、ピラスルホトール(pyrasulfotole)、ピラゾキシフェン(pyrazoxyfen)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、ピラゾレート(pyrazolynate)、ピラフルフェンエチル(pyraflufen-ethyl)、ピリダフォル(pyridafol)、ピリチオバックナトリウム塩(pyrithiobac-sodium)、ピリデート(pyridate)、ピリフタリド(pyriftalid)、ピリブチカルブ(pyributicarb)、ピリベンゾキシム(pyribenzoxim)、ピリミスルファン(pyrimisulfan)、ピリミノバックメチル(pyriminobac-methyl)、ピロキサスルホン(pyroxasulfone)、ピロクススラム(pyroxsulam)、フェニュロン(fenuron)、フェノキサスルホン(fenoxasulfone)、フェノキサプロップPエチル(fenoxaprop-P-ethyl)、フェノキサプロップエチル(fenoxaprop-ethyl)、フェンクロリム(fenclorim)、フェンチアプロップエチル(fenthiaprop-ethyl)、フェントラザミド(fentrazamide)、フェンメディファム(phenmedipham)、フォラムスルフロン(foramsulfuron)、ブタクロール(butachlor)、ブタフェナシル(butafenacil)、ブタミホス(butamifos)、ブチレート(butylate)、ブトラリン(butralin)、ブトロキシジム(butroxydim)、フラザスルフロン(flazasulfuron)、フラムプロップメチル(flamprop-methyl)、フラムプロップMメチル(flamprop-M-methyl)、フラムプロップエチル(flamprop-ethyl)、フラムプロップイソプロピル(flamprop-isopropyl)、フラムプロップMイソプロピル(flamprop-M-isopropyl)、プリミスルフロン(primisulfuron-methyl)、フルアジホップ(fluazifop-butyl)、フルアジホップP(fluazifop-P-butyl)、フルアゾレート(fluazolate)、フルオメツロン(fluometuron)、フルオログリコフェン(fluoroglycofen-ethyl)、フルカルバゾンナトリウム塩(flucarbazone-sodium)、フルセトスルフロン(flucetosulfuron)、フルチアセットメチル(fluthiacet-methyl)、フルピルスルフロン(flupyrsulfuron-methyl-sodium)、フルフェナセット(flufenacet)、フルフェンピルエチル(flufenpyr-ethyl)、フルプロパネートナトリウム塩(flupropanate-sodium)、フルポキサム(flupoxam)、フルミオキサジン(flumioxazin)、フルミクロラックペンチル(flumiclorac-pentyl)、フルメツラム(flumetsulam)、フルリドン(fluridone)、フルルタモン(flurtamone)、フルルプリミドール(flurprimidol)、フルロキシピル(fluroxypyr)、フルロクロリドン(flurochloridone)、プレチラクロール(pretilachlor)、プロジアミン(prodiamine)、プロスルフロン(prosulfuron)、プロスルホカルブ(prosulfocarb)、プロパキザホップ(propaquizafop)、プロパクロール(propachlor)、プロパジン系(propazine)、プロパニル(propanil)、プロピザミド(propyzamide)、プロピソクロール(propisochlor)、プロピリスルフロン(propyrisulfuron)、プロファム(propham)、プロフルアゾール(profluazol)、プロポキシカルバゾンナトリウム塩(propoxycarbazone-sodium)、プロホキシジム(profoxydim)、ブロマシル(bromacil)、プロメトリン(prometryn)、プロメトン(prometon)、ブロモキシニル(bromoxyni)(酪酸、オクタン酸又はヘプタン酸等とのエステル体を含む)、ブロモブチド(bromobutide)、フロラスラム(florasulam)、ヘキサジノン(hexazinone)、ベスロジン(benefin)、ペトキサミド(pethoxamid)、ベナゾリン(benazolin)、ペノキススラム(penoxsulam)、ベフルブタミド(beflubutamid)、ペブレート(pebulate)、ベンカルバゾン(bencarbazone)、ベンズフェンジゾン(benzfendizone)、ベンスリド(bensulide)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ベンゾビシクロン(benzobicyclon)、ベンゾフェナップ(benzofenap)、ベンタゾン(bentazone)(ナトリウム等との塩を含む)、ペンタノクロール(pentanochlor)、ベンチオカーブ(benthiocarb)、ペンディメタリン(pendimethalin)、ペントキサゾン(pentoxazone)、ベンフルラリン(benfluralin)、ベンフレセート(benfuresate)、ホサミンアンモニウム(fosamine-ammonium)、ホメサフェン(fome
safen)、ホルクロルフェニュロン(forchlorfenuron)、マレイン酸ヒドラジド(maleic hydrazide)、メコプロップ(mecoprop-potassium)、メコプロップPカリウム塩(mecoprop-P)、メソスルフロンメチル(mesosulfuron-methyl)、メソトリオン(mesotrione)、メタザクロール(metazachlor)、メタベンズチアズロン(methabenzthiazuron)、メタゾスルフロン(metazosulfuron)、メタミトロン(metamitron)、メタミホップ(metamifop)、メチルダイムロン(methyldymron)、メトキスロン(metoxuron)、メトスラム(metosulam)、メトスルフロンメチル(metsulfuron-methyl)、メトブロムロン(metobromuron)、メトベンズロン(metobenzuron)、メトラクロール(metolachlor)、メトリブジン(metribuzin)、メピコート・クロリド(mepiquat-chloride)、メフェナセット(mefenacet)、モノリニュロン(monolinuron)、モリネート(molinate)、ヨードスルフロンメチルナトリウム塩(iodosulfulon-methyl-sodium)、ラクトフェン(lactofen)、リニュロン(linuron)、リムスルフロン(rimsulfuron)、レナシル(lenacil)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
植物成長調整剤の具体例としては、例えば、1-ナフチルアセトアミド(α-naphthalene acetamide)、1-メチルシクロプロペン(1-methylcyclopropene)、2,6‐ジイソプロピルナフタレン(2,6-diisopropylnaphthalene)、4-CPA、アビグリシン(aviglycine)、アブシジン酸(abscisic acid)、アンシミドール(ancymidol)、イナベンフィド(inabenfide)、インドール酢酸(indole acetic acid)、インドール酪酸(indole butyric acid)、ウニコナゾールP(uniconazole-P)、エチクロゼート(ethychlozate)、エテホン(ethephon)、オキシン硫酸塩(oxine-sulfate)、カルボネ(carvone)、ギ酸カルシウム(calcium formate)、クロキシホナック(cloxyfonac-sodium)、クロキシホナックカリウム塩(cloxyfonac-potassium)、クロプロップ(cloprop)、クロルメコート(chlormequat)、コリン(choline)、サイトカイニン(cytokinins)、シアナミド(cyanamide)、シクラニリド(cyclanilide)、ジクロルプロップ(dichlorprop)、ジケグラック(dikegulac)、ジベレリン(gibberellin)、ジメチピン(dimethipin)、シントフェン(sintofen)、ダミノジット(daminodide)、デシルアルコール(n-decyl alcohol)、トリアコンタノール(1-triacontanol)、トリネキサパックエチル(trinexapac-ethyl)、パクロブトラゾール(paclobutrazol)、パラフィン(paraffin)、ピラフルフェンエチル(pyraflufen-ethyl)、ブトルアリン(butralin)、フルメトラリン(flumetralin)、フルルプリミドール(flurprimidol)、フルレノール(flurenol)、プロヒドロジャスモン(prohydrojasmon)、プロヘキサジオンカルシウム塩(prohexadione-calcium)、ベンジルアミノプリン((6-)benzylaminopurine)、ペンディメタリン(pendimethalin)、ホルクロルフェニュロン(forchlorfenuron)、マレイン酸ヒドラジド(maleic hydrazide)、メピコートクロリド(mepiquat)、メフルイジド(mefluidide)、ワックス、MCPA・チオエチル、MCPB、4−CPA、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、過酸化カルシウム、クロレラ抽出物、混合生薬抽出物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
殺菌剤の具体例としては、例えば、BAG-010(コード番号)、BAF-045(コード番号)、copper dioctanoate、DBEDC、SYP-Z-048(コード番号)、TPTA、TPTC、TPTH、アシベンゾラルSメチル(acibenzolar-S-methyl)、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、アミスルブロム(amisulbrom)、アルジモルフ(aldimorph)、イソチアニル(isotianil)、イソピラザム(isopyrazam)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、イプコナゾール(ipconazole)、イプロジオン(iprodione)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、イプロベンホス(iprobenfos)、イマザリル(imazalil)、イミノクタジンアルベシル酸塩(iminoctadine-albesilate)、イミノクタジン酢酸塩(iminoctadine-triacetate)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、エクロメゾール(echlomezole)、エジフェンホス(edifenphos)、エタボキサム(ethaboxam)、エディフェンホス(edifenphos)、エトキシキン(ethoxyquin)、エトリジアゾール(etridiazole)、エネストロブリン(enestroburin)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、オキサジキシル(oxadixyl)、オキサジニラゾール(oxazinylazole)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、オキシテトラサイクリン(oxytetracycline)、オキスポコナゾールフマル酸塩(oxpoconazole-fumarate)、オキソリニック酸(oxolinic acid)、オクチリノン(octhilinone)、オフラセ(ofurace)、オリサストロビン(orysastrobin)、オルソフェニルフェノール(o-phenylphenol)、カスガマイシン(kasugamycin)、カプタホール(captafol)、カルプロパミド(carpropamid)、カルベンダジム(carbendazim)、カルボキシン(carboxin)、キノキシフェン(quinoxyfen)、キノメチオネート(chinomethionat)、キャプタン(captan)、キントゼン(quintozene )、グアザチン(guazatine)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、クロロネブ(chloroneb)、クロロタロニル(chlorothalonil)、シアゾファミド(cyazofamid )、ジエトフェンカルブ(diethofencarb )、ジクロシメット(diclocymet)、ジクロフルアニド(dichlofluanid)、ジクロメジン(diclomezine)、ジクロラン(dicloran)、ジチアノン(dithianon)、ジニコナゾール(diniconazole)、ジネブ(zineb)、ジノカップ(dinocap)、ジフェニール(diphenyl)、ジフェニルアミン(diphenylamine)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、ジフェンゾコート(difenzoquat metilsulfate)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、ジフルメトリム(diflumetorim)、シプロコナゾール(cyproconazole)、シプロジニル(cyprodinil)、シメコナゾール(simeconazole)、ジメトモルフ(dimethomorph)、シモキサニル(cymoxanil)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、ジラム(ziram)、シルチオファム(silthiofam)、ストレプトマイシン(streptomycin)、スピロキサミン(spiroxamine)、セダキサン(sedaxane)、ゾキサミド(zoxamide)、ダゾメット(dazomet)、チアジアジン(thiadiazin)、チアジニル(tiadinil)、チアベンダゾール(thiabendazole)、チラム(thiram)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、チフルザミド(thifluzamide)、テクナゼン(tecnazene)、テクロフタラム(tecloftalam)、テトラコナゾール(tetraconazole)、デバカルブ(debacarb)、テブコナゾール(tebuconazole)、テブフロキン(tebufloquin)、ドジン(dodine)、ドデモルフ(dodemorph)、トリアジメノール(triadimenol)、トリアジメホン(triadimefon)、トリアゾキシド(triazoxide)、トリシクラゾール(tricyclazole)、トリチコナゾール(triticonazole)、トリデモルフ(tridemorph)、トリフルミゾール(triflumizole)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、トリホリン(triforine)、トリルフルアニド(tolylfluanid)、トルクロホスメチル(tolclofos-methyl )、トルニファニド(tolnifanide)、ナーバム(nabam)、ニトロタルイソプロピル(nitrothal-isopropyl)、ヌアリモール(nuarimol)、バリダマイシン(validamycin)、バリフェナレート(valifenalate)、ビキサフェン(bixafen)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、ビテルタノール(bitertanol)、ヒドロキシイソキサゾール(hydroxyisoxazole)、ピペラリン(piperalin)、ヒメキサゾール(hymexazol)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、ピラゾホス(pyrazophos)、ピリオフェノン(pyriofenone)、ピリフェノックス(pyrifenox)、ピリブチカルブ(pyributicarb)、ピリベンカルブ(pyribencarb)、ピリメタニル(pyrimethanil)、ピロキロン(pyroquilon)、ビンクロゾリン(vinclozolin)、ファーバム(ferbam)、ファモキサドン(famoxadone)、フェナジンオキシド(phenazine oxide)、フェナミドン(fenamidone)、フェナリモル(fenarimol)、フェノキサニル(fenoxanil)、フェリムゾン(ferimzone)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、フェンフラム(fenfuram)、フェンプロピジン(fenpropidin)、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、フェンヘキサミド(fenhexamid)、フォルペット(folpet)、フサライド(phthalide)、ブピリメート(bupirimate)、フベリダゾール(fuberidazole)、ブラストサイジンS(blasticidin-S)、フラメトピル(furametpyr)、フララキシル(furalaxyl)、フルアジナム(fluazinam)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、フルオピコリド(fluopicolide)、フルオピラム(fluopyram)、フルオルイミド(fluoroimide)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フルジオキソニル(fludioxonil)、フルシラゾール(flusilazole)、フルスルファミド(flusulfamide)、フルチアニル(flutianil)、フルトラニル(flutolanil)、フルトリアホール(flutriafol)、フルモルフ(flumorph)、プロキナジド(proquinazid)、プロクロラズ(prochloraz)、プロシミドン(procymidone)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、ブロノポール(bronopol)、プロパモカルブ塩酸塩(propamocarb-hydrochloride)、プロピコナゾール(propiconazole)、プロピネブ(propineb)、プロベナゾール(probenazole)、ブロムコナゾール(bromuconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、ベナラキシル(benalaxyl)、ベナラキシルM(benalaxyl-M)、ベノミル(benomyl)、ペフラゾエート(pefurazoate)、ペンコナゾール(penconazole)、ペンシクロン(pencycuron)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、ペンフルフェン(penflufen)、ボスカリド(boscalid)、ホセチル(fosetyl-alminium)、ポリオキシン(polyoxin)、ポリカーバメート(polycarbamate)、マンカッパー(mancopper)、マンジプロパミド(mandipropamid)、マンゼブ(mancozeb)、マンネブ(maneb)、ミクロブタニル(myclobutanil)、ミルディオマイシン(mildiomycin)、メタスルホカルブ(methasulfocarb)、メタム(metam)、メタラキシル(metalaxyl)、メタラキシルM(metalaxyl-M)、メトコナゾール(metconazole)、メトミノストロビン(metominostrobin)、メトラフェノン(metrafenone)、メパニピリム(mepanipyrim)、メプロニル(mepronil)、硫酸オキシキノリン(oxyquinoline sufate)、銀(silver)、ボルドー液(Bordeaux mixture)、塩基性塩化銅(copper oxychloride)、酸化第一銅(cuprous oxide)、水酸化第二銅(copper hydroxide)、硫酸銅(copper sulfate)、オキシキノリン銅(oxine-copper)、ノニルフェノールスルホン酸銅(copper (nonylphenyl)sulphonate)等の銅化合物、硫黄(sulfur)化合物、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、脂肪酸グリセリド、シイタケ菌糸体抽出物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤の具体例としては、例えば、1,3ジクロロプロペン(1,3-dichloropropene)、BPMC、BPPS、BRP、CL900167(コード番号)、cryolite、CVMP、CYAP、DCIP、D-D、DCIP、DDVP、DEP、DMTP、DNOC、ECP、EPN、MEP、MIPC、MPP、NAC、N-メチルジチオカルバミン酸アンモニウム(NCS)、NI-30(コード番号)、NNI-0101、PAP、PHC、RU15525(コード番号)、thiazosulfen、XMC、ZXI-8901(コード番号)、アクリナトリン(acrinathrin)、アザメチホス(azamethiphos)、アジンホスエチル(azinphos-ethyl)、アジンホスメチル(azinphos-methyl)、アセキノシル(acequinocyl)アセタミプリド(acetamiprid)、アセタミプリド(acetamiprid)、アセトプロール(acetoprol)、アセフェート(acephate)、アゾシクロチン(azocyclotin)、アバメクチン(abamectin)、アミトラズ(amitraz)、アラニカルブ(alanycarb)、アルジカルブ(aldicarb)、アルファ−シペルメトリン(alpha-cypermethrin)、アレスリン(allethrin)、イソカルボホス(isocarbophos )、イソキサチオン(isoxathion)、イソフェンホス(isofenphos-methyl)、イソプロカルブ(isoprocarb)、イミシアホス(imicyafos)、イミダクロプリド(imidacloprid)、イミプロトリン(imiprothrin)、インドキサカルブ(indoxacarb)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、エチオン(ethion)、エチプロール(ethiprole)、エチルチオメトン(disulfoton)、エトキサゾール(etoxazole)、エトフェンプロックス(etofenprox)、エトプロホス(ethoprophos)、エマメクチン(emamectin)、エンドスルファン(endosulfan)、エンペントリン(empenthrin)、オキサミル(oxamyl)、オキシジメトンメチル(oxydemeton-methyl)、オメトエート(omethoate)、オレイン酸ナトリウム(sodium oleate)、カーバムナトリウム塩(metam-sodium)、カズサホス(cadusafos)、カデスリン(kadethrin)、カランジン(karanjin)、カルタップ(cartap)、カルバリル(carbaryl)、カルボスルファン(carbosulfan)、カルボフラン(carbofuran)、ガンマシハロトリン(gamma-cyhalothrin)、キシリルカルブ(xylylcarb)、キナルホス(quinalphos)、キノプレン(kinoprene)、キノメチオネート(chinomethionat)、クマホス(coumaphos)、クロチアニジン(clothianidin)、クロフェンテジン(clofentezine)、クロマフェノジド(chromafenozide)、クロルエトキシホス(chlorethoxyfos)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、クロルデン(chlordane)、クロルピクリン(chloropicrin )、クロルピリホス(chlorpyrifos)、クロルピリホスメチル(chlorpyrifos-methyl)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、クロフェンテジン(clofentezine)、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、クロマフェノジド(chromafenozide)、クロルメホス(chlormephos)、サノピラフェン(cyenopyrafen)、シアジピル(cyazypyr)、シアノホス(cyanophos)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、ジエノクロル(dienochlor)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、ジクロトホス(dicrotophos)、ジクロフェンチオン(dichlofenthion)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、ジコホル(dicofol)、ジシクラニル(dicyclanil)、ジスルホトン(disulfoton)、ジノテフラン(dinotefuran)、ジノブトン(dinobuton)、シハロトリン(cyhalothrin)、シフェノトリン(cyphenothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、ジフロビダジン(diflovidazin)、シヘキサチン(cyhexatin)、シペルメトリン(cypermethrin)、ジメチルビンホス(dimethylvinphos)、ジメトエート(dimethoate)、シラフルオフェン(silafluofen)、シロマジン(cyromazine)、スピノサド(spinosad)、スピネトラム(spinetoram)、スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロテトラマト(spirotetramat)(スピロテトラマト)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スルコフロン(sulcofuron-sodium)、スルフルラミド(sulfluramid)、スルプロホス(sulprofos)、スルホキサフロル(sulfoxaflor)、スルホテップ(sulfotep)、ゼタシペルメトリン(zeta-cypermethrin)、ダイアジノン(diazinon)、タウフルバリネート(tau -fluvalinate)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、チオジカルブ(thiodicarb)、チオシクラム(thiocyclam)、チオスルタップ(thiosultap)、チオファノックス(thiofanox)、チオメトン(thiometon)、テトラクロルビンホス(tetrachlorvinphos)、テトラジホン(tetradifon)テトラメスリン(tetramethrin)、テトラメスリン(tetramethrin)、テブピリムホス(tebupirimfos)、テブフェノジド(tebufenozide)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、テフルトリン(tefluthrin)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、デメトンSメチル(demeton-S-methyl)、テメホス(temephos)、デリス(rotenone)、デルタメトリン(deltamethrin)、テルブホス(terbufos)、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、トリアザメート(triazamate)、トリアゾホス(triazophos)、トリクロルホン(trichlorfon)、トリフルムロン(triflumuron)、トリメタカルブ(trimethacarb)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)、ナレッド(naled)、ニコチン(nicotine)、ニテンピラム(nitenpyram)、ネマデクチン(nemadectin)、ノバルロン(novaluron)、ノビフルムロン(noviflumuron)、ハイドロプレン(hydroprene)、バミドチオン(vamidothion)、パラチオン(parathion)、パラチオンメチル(parathion-methyl)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、ハロフェノジド(halofenozide)、ビオアレスリン(bioallethrin)、ビオレスメトリン(bioresmethrin)、ビストリフルロン(bistrifluron)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、ビフェナゼート(bifenazate)、ビフェントリン(bifenthrin)、ピメトロジン(pymetrozine)、ピラクロホス(pyraclofos)、ピリダフェンチオン(pyridaphenthion)、ピリダベン(pyridaben)、ピリダリル(pyridalyl)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、ピリミカルブ(pirimicarb)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、ピリミホスメチル(pirimiphos-methyl)、ピレトリン(pyrethrins)、ファムフル(famphur)、フィプロニル(fipronil)、フェナザキン(fenazaquin)、フェナミホス(fenamiphos)、フェニソブロモレート(phenisobromolate)、フェニトロチオン(fenitrothion)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、フェノチオカルブ(fenothiocarb)、フェノトリン(phenothrin)、フェノブカルブ(fenobucarb)、フェンチオン(fenthion)、フェントエート(phenthoate)、フェンバレレート(fenvalerate)、フェンピロキシメート(fenpyroximate)、フェンブタチンオキシド(fenbutatin oxide)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、ブトカルボキシム(butocarboxim)、ブトキシカルボキシム(butoxycarboxim)、ブプロフェジン(buprofezin)、フラチオカルブ(furathiocarb)、プラレトリン(prallethrin)、フルアクリピリム(fluacrypyrim)、フルシクロクスロン(flucycloxuron)、フルシトリネート(flucythrinate)、フルスルファミド(flusulfamide)、フルバリネート(fluvalinate)、フルピラゾホス(flupyrazofos)、フルフェネリム(flufenerim)、フルフェノクスウロン(flufenoxuron)、フルベンジアミド(flubendiamide)、フルメトリン(flumethrin)、フルリムフェン(flurimfen)(フルフェネリム)、プロチオホス(prothiofos)、フロニカミド(flonicamid)、プロパホス(propaphos)プロパルギット(propargite)プロフェノホス(profenofos)、プロピキスル(propoxur)、プロペタムホス(propetamphos)、プロポキスル(propoxur)、ブロモプロピレート(bromopropylate)、ベータ−シペルメトリン(beta-cypermethrin)、ベータ−シフルトリン(beta-cyfluthrin)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、ヘプテノホス(heptenophos)、ペルメトリン(permethrin)、ベンスルタップ(bensultap)、ベンゾエピン(endosulfan)、ベンゾキシメート(benzoximate)、ベンダイオカルブ(bendiocarb)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、ホキシム(phoxim)、ホサロン(phosalone)、ホスチアゼート(fosthiazate)、ホスファミドン(phosphamidon)、ホスメット(phosmet)、ホルメタネート(formetanate)、ホレート(phorate)、マシン油(petroleum oils)、マラチオン(malathion)、ミルベメクチン(milbemectin)メカルバム(mecarbam)、メカルバム(mecarbam)、メスルフェンホス(mesulfenfos)、メソミル(methomyl)、メタアルデヒド(metaldehyde)、メタフルミゾン(metaflumizon)、メタミドホス(methamidophos)、メタムカリウム(metham-potassium)、メタムアンモニウム(metham-ammonium)、メチオカルブ(methiocarb)、メチダチオン(methidathion)、メチルイソチオシアネート(methyl isothiocyanate)、メトキシクロル(methoxychlor)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、メトトリン(methothrin)、メトフルトリン(metofluthrin)、メトプレン(methoprene)、メトルカルブ(metholcarb)、メビンホス(mevinphos)、モノクロトホス(monocrotophos)、ラムダシハロトリン(lambda-cyhalothrin)、リナキシピル(chlorantraniliprole)、ルフェヌロン(lufenuron)、レスメトリン(resmethrin)、レピメクチン(lepmectin)、ロテノン(rotenone)、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル(propylene glycol monolaurate)、硫酸ニコチン(nicotine sulfate)、塩酸レバミゾール(levamisol)、酸化エチレン(ethylene oxide)、酸化フェンブタスズ(fenbutatin oxide)、脂肪酸グリセリド、酒石酸モランテル、なたね油、デンプン、大豆レシチン、Bacillus thuringiensis菌の産生する結晶タンパク質等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
肥料の具体例としては、例えば、窒素質肥料、りん酸質肥料、加里質肥料、有機質肥料、石灰質肥料、苦土肥料、マンガン質肥料、ほう素質肥料、化成肥料、配合肥料等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
微生物が生産する植物に有害な物質の具体例としては、例えば、病原細菌が生産するトロポロン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
植物が生産する植物に有害な物質の具体例としては、例えば、セイタカアワダチソウの根から放出されるシスデヒドロマトリカリアエステル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
これらの物質はすべて公知のものであり、市販されていたり、取得方法が公知文献に記載されている。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
〔実施例1〕ビスピリバックナトリウム塩に耐性を示すコシヒカリ/カサラスの戻し交雑系統SL202の選抜
コシヒカリ/カサラスの戻し交雑によって作成した39系統のコシヒカリ/カサラス染色体断片置換系統群(Chromosome segment substitution lines、CSSL、(独)農業生物資源研究所イネゲノムリソースセンター分譲、Ebitaniら, Breed. Sci., 55, 65-73(2005))を用いて、ビスピリバックナトリウム塩(BS)感受性試験を行った。BS感受性はBS 1μMを含むゲランガム培地での生育試験で調べた。
【0076】
ホグラントmix 1.6g(Sigma-Aldrich社)とゲルライト3g(和光化学)を1Lの蒸留水に懸濁させた後、電子レンジで加温溶解し、50〜60℃に温度を下げてからBSを終濃度1μMで添加した。これを30mL容の管ビンに15mL分注し、ゲランガム培地を作製した。CSSLのイネもみを0.5%次亜塩素酸ナトリウム中で20分間ほど浸した後、よく水洗いした。これを蒸留水中に浸し、27℃で3〜5日間ほど静置して催芽させた。催芽種子を芽の方を上にしてゲランガム培地中に軽く埋め込んだ。これと蒸留水を入れたビーカーと一緒に透明なケースに入れ、ラップで蓋をした。27℃、蛍光灯照明下 (明期14時間、暗期10時間) で7〜9日間生育させた。使用した39系統の種子の内、コシヒカリ1番染色体の一部分がカサラス1番染色体の当該部分と置換した系統SL201とSL202がBSに対してカサラスと同等の抵抗性を示した(図1)。
【0077】
〔実施例2〕SL202とコシヒカリとの戻し交雑によって得られたF2個体からのBS耐性個体の選抜とビスピリバックナトリウム塩耐性チトクロームP450遺伝子のデータマイニング
系統SL201とSL202がビスピリバックナトリウム塩耐性であったが、以下の実験では系統SL202を用いて行った。SL202とコシヒカリで戻し交雑を行い、得られた190系統のF2個体のBS感受性試験を実施例1に記載したゲランガムを用いたBS感受性検定の方法で行った。
【0078】
その結果、供試した190個体中、138個体がBS耐性を示したので、BS抵抗性に関わる遺伝子は1遺伝子座に座上しており、優性遺伝することがわかった。引き続き、BS耐性を示した80個体を用いて1番染色体上のマーカー部分(R2635、C122、R2417、C86)の遺伝子型がコシヒカリ型かカサラス型かを調べた結果、R2635ではカサラス型ホモかカサラス型とコシヒカリ型のヘテロであったのに対して、マーカーC122、R2417、C86ではコシヒカリ型ホモ、カサラス型ホモ及びカサラス型とコシヒカリ型のヘテロであった。系統SL202のマーカー、C161からC178の領域はコシヒカリ型でその他の領域はカサラス型かカサラス型とコシヒカリ型が混在する領域であるので、BS耐性遺伝子が系統SL202の1番染色体上のマーカーC178とC122間の遺伝子領域に存在すると考えられた。更に、C178とC122間の遺伝子領域がカサラス型とコシヒカリ型のヘテロ遺伝子型であると考えられた個体を自殖して得られた次世代(F3世代)の個体を用いて、BS感受性試験を実施例1に記載したゲランガムを用いたBS感受性検定の方法で行った。供試した925個体中、418個体がBS抵抗性を示した。このうち、BS耐性を示した258個体を用いて1番染色体上のマーカー部分 (RM7075、C178、RM5638、RM9、41834-50、R2635、RM2574、RM7266、RM1180、RM5919、RM3642、RM1349-1、RM3143、C122)の遺伝子型がコシヒカリ型かカサラス型かを調べた。その結果、マーカーRM9と41834-50ではカサラス型ホモかカサラス型とコシヒカリ型のヘテロのみが存在し、コシヒカリ型ホモの個体がなかったことから、原因遺伝子が1番染色体上のマーカーRM9〜41834-50間の約372kbに存在すると考えられた(図2)。日本晴の公開ゲノム情報 (The Rice Annotaion Project Database(RAP-BD)、http://rapdb.dna.affrc.go.jp/)からこの領域には3つのP450遺伝子(Os01g0602200、Os01g0602400、Os01g0602500)が座上していることがわかった(図3)。
【0079】
これら3つの遺伝子は、P450のアノテーション情報(Cytochrome P450 ホームページ、http://drnelson.uthsc.edu/rice.html)から、CYP72A31(偽遺伝子)、CYP72A32、CYP72A33であった。日本晴、カサラスについて、これらの遺伝子の比較解析を行ったところ、カサラスにおけるCYP72A31遺伝子は、開始コドンから終止コドンまで全ORFが存在し、機能的であると推定されたのに対し、日本晴では、CYP72A31遺伝子の第1、第2エキソンを含む約3.2kbが欠失し、偽遺伝子であることが分かった(図4)。なお、CYP72A32及びCYP72A33は、日本晴、カサラスとも機能的な遺伝子をコードしていた。以上の結果から、CYP72A31遺伝子がBS耐性に関与している可能性が強く示唆された。
【0080】
〔実施例3〕CYP72A31、72A32、72A33遺伝子発現解析
日本晴(NB)及びカサラス(Kas)の脱穎種子を滅菌後、MSHF培地(Toki et al., Plant J., 47, 969 (2006))に置床し、30℃、恒常明条件下で栽培した。7日目に茎葉部 (seedling) と根(root)をサンプリングし、液体窒素で急速凍結後、-80℃で保存した。また、日本晴(NB)及びカサラス(Kas)の脱穎種子を滅菌後、N6D培地(Toki et al., Plant J., 47, 969 (2006))に置床し、33℃明条件下10時間/30℃暗条件下14時間で培養した。培養7日目または21日目にカルス[7日目 (primary callus) 、播種後21日目 (secondary callus) ]をサンプリングし、液体窒素で急速凍結後、-80℃で保存した。これらを用いてCYP72A31、CYP72A32、CYP72A33遺伝子の発現解析を行った
各サンプルからRNeasy Plant mini kit (QIAGEN社, Piscataway, NJ, USA)を用いて全RNAを抽出した。cDNAは逆転写酵素ReverTra Ace (東洋紡社, Osaka, Japan)を用いて増幅した。全RNA1μg、10pmol/μL Oligo(dT)20 primer(Kit添付) 2μL、5×RT Buffer(ReverTra Ace添付) 4μL、dNTP mixture(各10mM、Kit添付) 1μL、10U/μL RNase Inhibitor(Kit添付) 1μL、ReverTra Ace(Kit添付) 1μLを含む20μLの反応液を作製し、42℃で20分間逆転写反応を行った後、99℃で5分間加熱し反応を停止した。これらは4℃で保存した。
【0081】
反応後のcDNA溶液を10倍希釈したものをリアルタイムPCRに使用した。リアルタイムPCRについてはPower SYBR Green PCR Master Mix (LIFE TECHNOLOGY社, Foster City, CA, USA)を用いて反応液を調製し、ABI7300 Real-Time PCR (Applied Biosystems社)を用いて転写産物の定量を行った。cDNA溶液 5μL、1μM primer 各1μL、Power SYBR Green PCR Master Mix 10μLを含む20μLの反応液を作製し、95℃で10分間で加熱後、95℃、15秒と60℃、1分の反応を40サイクル繰り返した。各遺伝子の転写産物量は、OsActin1遺伝子の発現量で補正した。CYP72A31遺伝子を増幅する際、フォワードプライマーとして5'-GAAGAACAAACCTGACTACGAAGGCT-3'(配列番号3)、リバースプライマーとして5'-CTCCATCTCTTTGTATGTTTTCCGACCAAT-3'(配列番号4)を使用した。CYP72A32遺伝子を増幅する際、フォワードプライマーとして5'-AGGACTATTTGGGAAGAACAAACCTGAG-3'(配列番号5)で、リバースプライマーとして5'-TTCATCTCCTTGTATGTTCTCCGCTTAAG-3'(配列番号6)を使用した。CYP72A33遺伝子を増幅する際、フォワードプライマーとして5'-GGAAGAATAAACCAGACTATGATGGCC-3'(配列番号7)、リバースプライマーとして5'-CTCCATCTCCTTGTATGTTTTTCGAGTAAG-3'(配列番号8)を使用した。また、OsActin1遺伝子を増幅する際、フォワードプライマーとして5'-AGGCCAATCGTGAGAAGATGACCCA-3'(配列番号9)、リバースプライマーとして5'-GTGTGGCTGACACCATCACCAGAG-3'(配列番号10)を使用した。
【0082】
結果を図5A図5Cに示した。図5A図5Cに示すように、日本晴では、CYP72A31遺伝子は偽遺伝子であるので遺伝子発現は確認されなかった。また、図5A図5Cに示すように、カサラスのカルスにおいては、CYP72A31遺伝子の発現量が低かった。これは、これは、カサラスのカルスはBS耐性を示さない事象と一致している(後述の図8参照)。また、CYP72A31遺伝子は茎葉部よりも根部での発現が多いことがわかった。
【0083】
一方、CYP72A32遺伝子は日本晴の茎葉部で特に高い発現パターンを示した。CYP72A33遺伝子は日本晴およびカサラスで発現パターンに大きな差は見られなかった。
【0084】
〔実施例4〕HptII::35Spro::カサラス CYP72A31::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A31)、HptII::35Spro:: カサラスCYP72A32::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A32)、HptII::35Spro:: カサラスCYP72A33::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A33)、HptII::35Spro::日本晴 CYP72A32::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-nbCYP72A32)、HptII::35Spro::日本晴 CYP72A33::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-nbCYP72A33)、HptII::35Spro::sGFP::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-sGFP及びpCAMBIA1302-sGFP)、OsALS(W548L/S627I)::OsAct-1pro::sGFP::Tnosベクタープラスミド(pSTARA-sGFP)のAgrobacterium tumefaciens EHA105株への導入
上述の8種類のベクタープラスミド(50ng、図6)を氷上で溶解した40μlのエレクトロポレーション用アグロバクテリウムコンピテントセル(EHA105株)に加え、穏やかに混和した。コンピテントセル混合液を、氷冷したキュベットに移し、Gene Pulser Xcell(Bio Rad社)を用いて25μF, 2.4kV, 200Ωの条件でエレクトロポレーションを行なった。その後、速やかに1mlのYM液体培地(培地1L中に0.4g yeast extract(DIFCO社製), 10g mannitol, 0.1g NaCl, 0.1g MgSO4, 0.5g K2HPO4-3H2Oを含む。pHは7.0に調整した。)をキュベットに加え混合した後、全量を1.5mlエッペンチューブに移して、27℃、250rpmで3時間震盪培養を行った。培養終了後、YM寒天培地(12.5ppm リファンピシン、25ppm クロラムフェニコール、50ppm カナマイシン含有(pSTARA-sGFP以外のベクタープラスミド)もしくは12.5ppm リファンピシン、25ppm クロラムフェニコール、50ppm スペクチノマイシンに50μl程を塗布し、27℃で2-3日間培養した。コロニーをYM液体培地(12.5ppm リファンピシン、25ppm クロラムフェニコール、50ppm カナマイシン含有(pSTARA-sGFP以外のベクタープラスミド)もしくは12.5ppm リファンピシン、25ppm クロラムフェニコール、50ppm スペクチノマイシンに接種し、27℃で2-3日間震盪培養した。グリセロールストックを作製後-85℃で保存した。
【0085】
〔実施例5〕形質転換イネの作出
次亜塩素酸ナトリウムで滅菌したイネ(Oryza sativa, cv. Nipponbareもしくは Oryza sativa, cv. Kasarath)の種子を用いてアグロバクテリウム菌による形質転換を行った(Toki et al., Plant J., 47, 969 (2006))。
【0086】
<アグロバクテリウムの前培養>
形質転換を行う3日前に、実施例4で調製したアグロバクテリウム菌 (Agrobacterium tumefaciens EHA105株)をAB固形培地(12.5ppm リファンピシン、25ppm クロラムフェニコール、50ppm カナマイシン含有(pSTARA-sGFP以外のベクタープラスミド)もしくは12.5ppm リファンピシン、25ppm クロラムフェニコール、50ppm スペクチノマイシン)に塗布し、24℃、暗黒条件下で3日間培養した。
【0087】
<アグロバクテリウム菌の感染と共存培養>
50mlファルコンチューブにAAM培地を40ml入れ、アセトシリンゴンを40mg/lとなるように加えた。前培養したアグロバクテリウムを200μlチップの先で少量かき取り、前述のAAM培地中に溶かし、暗黒条件下で30分間振とうした。N6D培地で5日間培養した胚盤由来カルスからシュートと胚乳部分を除去し、アグロバクテリウム菌を入れたAAM培地に入れ、1.5分間振とうした。AAM培地の上澄みをビーカーに空け、イネ種子に残った余分なAAM培地を滅菌したキムタオル(商品名:株式会社クレシア製)で除去した。2N6-AS培地(40mg/lアセトシリンゴン添加)にカルスを置いて24℃、暗黒条件下で3日間共存培養した。
【0088】
<アグロバクテリウムの除去と選抜>
共存培養したカルスを50mlファルコンチューブに移し、500mg/l カルベニシリンを含む滅菌水で7-8回洗浄し、余分な洗液を駒込ピペット等でできるだけ除去した。洗浄後、水が透きとおってきた時点で滅菌水中に10分間静置した。滅菌水500mlで10回程洗浄し、カルスを滅菌済キムワイプに乗せ余分な水分を除去した。カルスをN6D(50ppm ハイグロマイシン(pSTARA-sGFPベクター以外)もしくは0.25μM ビスピリバックナトリウム塩(pSTARA-sGFPベクター)、400mg/l カルベニシリン)培地に移植し、34℃、明所で二週間培養後、継代し、更に二週間培養した。
【0089】
<形質転換体の再分化>
選抜培養後、カルスをイネ再分化培地RE-III(50ppm ハイグロマイシンもしくは0.25μM ビスピリバックナトリウム塩含有)へと移植し27℃、16L/8Dで培養し、再分化を誘導した。2週間後に継代を行い、更に約2〜3週間で再分化した形質転換イネ(T0)が得られた。シュート、根が分化してきたらホルモンフリー(HF)培地(50ppm ハイグロマイシンもしくは0.25μM ビスピリバックナトリウム塩含有)へと移植した。各培地組成は表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
<形質転換体の栽培及びT1種子の採種>
ホルモンフリー(HF)培地で十分発根した個体を直径8cmのビニールポットに移植して閉鎖系温室(25-30℃、16L/8D)で育成し、T1種子を採種した。
【0092】
〔実施例6〕HptII::35Spro::カサラス CYP72A31::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A31)及びHptII::35Spro::sGFP::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-sGFP)で形質転換したイネカルス(日本晴、カサラス)のBS含有培地でのカルスの増殖試験
実施例5に従ってHptII::35Spro::カサラス CYP72A31::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A31、kasCYP72A31過剰発現コンストラクト)及び対照としてHptII::35Spro::sGFP::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-sGFP、sGFP過剰発現コンストラクト)をアグロバクテリウム法によってイネ (品種:日本晴及びカサラス) に導入した。50ppm ハイグロマイシンで選抜した形質転換カルスを単離し、ビスピリバックナトリウム塩(BS)を含む培地に移植しカルスの増殖を調べた。
【0093】
日本晴およびカサラスのカルスにGFP過剰発現コンストラクトを導入した場合、いずれの系統においても0.25, 0.5, 0.75 μMのBSを含む培地に置床することで、その生育が阻害された(図7)。一方、日本晴及びカサラスのカルスにCYP72A31過剰発現コンストラクトを導入し、同様に0.25, 0.5, 0.75 μMのBSを含む培地に置床した場合には、日本晴およびカサラス共にBSを含まない培地に置床したカルスと同様に増殖したカルスが確認できた(図8:日本晴、図9:カサラス)。また図7で非組換えカサラスのカルスがBS耐性を示さないのは、カサラスカルス中のCYP72A31遺伝子の発現量が少ないことに起因する(図5A図5C参照)。
【0094】
〔実施例7〕HptII::35Spro:: カサラスCYP72A32::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A32)、HptII::35Spro:: カサラスCYP72A33::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A33)、HptII::35Spro::日本晴 CYP72A32::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-nbCYP72A32)、HptII::35Spro::日本晴 CYP72A33::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-nbCYP72A33)で形質転換したイネカルス(日本晴、カサラス)のBS含有培地でのカルスの増殖試験
実施例5に従ってHptII::35Spro:: カサラスCYP72A32::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A32、kasCYP72A32過剰発現コンストラクト)、HptII::35Spro:: カサラスCYP72A33::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A33、kasCYP72A33過剰発現コンストラクト)、HptII::35Spro::日本晴 CYP72A32::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-nbCYP72A32、nbCYP72A32過剰発現コンストラクト)、HptII::35Spro::日本晴 CYP72A33::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-nbCYP72A33 nbCYP72A33過剰発現コンストラクト)をアグロバクテリウム法によってイネ (品種:日本晴) に導入した。50ppm ハイグロマイシンで選抜した形質転換カルスを単離し、ビスピリバックナトリウム塩(BS)を含む培地に移植しカルスの増殖を調べた。
【0095】
日本晴由来のCYP72A32を過剰発現させた結果、カサラス由来のCYP72A32を過剰発現させた結果をそれぞれ図10(a)及び(b)に示す。また、日本晴由来のCYP72A33を過剰発現させた結果、カサラス由来のCYP72A33を過剰発現させた結果をそれぞれ図11(a)及び(b)に示す。図10及び11に示すように、カサラス由来及び日本晴由来のCYP72A32及びCYP72A33のいずれを過剰発現させても、日本晴カルスはBS含有の培地で増殖しなかった。
【0096】
〔実施例8〕カサラス由来CYP72A31遺伝子形質転換イネカルスのBS含有再分化培地上での再分化試験
実施例5に従ってHptII::35Spro::カサラス CYP72A31::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A31、kasCYP72A31過剰発現コンストラクト)及び対照としてHptII::35Spro::sGFP::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1302-sGFP、sGFP過剰発現コンストラクト)及びOsALS(W548L/S627I)::OsAct-1pro::sGFP::Tnosベクタープラスミド(pSTARA-sGFP 、BS耐性コンストラクト)をアグロバクテリウム法によってイネ(品種:日本晴)に導入した。図12のA)に示したスケジュールに従って、50ppmのハイグロマイシンで形質転換したカルスを選抜した。pCAMBIA1390-KasCYP72A31コンストラクトでの形質転換効率は85% (83/98カルス)であった。このうち43カルスを0.25μMのBSを含む再分化培地に移植した結果、91% (39/43カルス)の再分化効率でカルスからシュートと根が分化した (図13)。引き続いて、0.25 μMのBSを含むホルモンフリー培地へ移植した結果、根部伸長する個体は再分化個体の73% (16/22再分化個体)であった(図14)。一方、BS耐性マーカーを持たないpCAMBIA1302-sGFPで形質転換したカルスは0.25 μMのBSを含む再分化培地上では再分化個体が確認できず、KLB-279 (pSTARAベクター) はカルスからシュートと根が分化し、再分化個体が確認できた(図13)。
【0097】
〔実施例9〕カサラス由来CYP72A31遺伝子形質転換イネ再分化個体のBS含有ホルモンフリー培地上での発根試験
実験例8でpCAMBIA1390-KasCYP72A31コンストラクトで形質転換されたイネ(日本晴)カルスが 50ppm ハイグロマイシン選抜により得られた。これらを50 ppmのハイグロマイシンを含む再分化培地に移植した場合、95% (38/40カルス) の再分化効率でカルスからシュートと根が分化した。引き続き、pCAMBIA1390-KasCYP72A31コンストラクトの再分化個体25個体を1 μMのBSを含むホルモンフリー培地へ移植した結果、7個体が根部伸長した(28%の根部伸長率、図15)。一方、対照としてpCAMBIA1302-sGFPコンストラクトで形質転換された再分化個体は1μMのBSを含むホルモンフリー培地で全く根の発根が見られず、植物体は枯死した。
【0098】
実施例8と実施例9から、カサラスCYP72A31遺伝子を用いて、イネ2点変異型ALS (W548L/S627I) 遺伝子と同様に0.25μMのBSを含む再分化培地で再分化個体を選抜でき、0.25、1μMのBSを含むホルモンフリー培地で根部が伸長することが明らかとなった。さらに1μMのBSを含むホルモンフリー培地を用いることで導入遺伝子のエスケープを防ぐことができることが明らかとなった。
【0099】
〔実施例10〕形質転換シロイヌナズナの作出
本実施例では、実施例4で作出したアグロバクテリウムを利用して、HptII::35Spro::カサラスCYP72A31::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A31)、HptII::35Spro::カサラスCYP72A32::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A32)、HptII::35Spro::カサラスCYP72A33::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A33)をfloral-dip法によってシロイヌナズナ(エコタイプ:Col-0)に導入した。floral-dip法は定法に従った。得られたT2種子を20ppmハイグロマイシンを含む培地上で栽培し、ハイグロマイシンに対して感受性を示した個体の割合を調べた。播種したすべての個体でハイグロマイシン耐性を示した系統をT-DNAがホモで固定されていると考えられる系統と考え、pCAMBIA1390-KasCYP72A31の固定系統としてK31-4-2、K31-6-5、pCAMBIA1390-KasCYP72A32の固定系統としてK32-1-1、K32-3-1、K32-5-1、pCAMBIA1390-KasCYP72A33の固定系統としてK33-1-3、K33-2-4を選抜した。これらの種子を各濃度のBSを含む培地に播種し、10日間栽培した。結果を図16A及び図16Bに示す。
【0100】
図16A及び図16Bから判るように、カサラス由来のCYP72A31を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナ系統では、非形質転換シロイヌナズナ(NT)の生育に障害がみられる高濃度のBS条件下においても、BSを処理しない条件と同様に生育することが示された。一方、カサラス由来のCYP72A32及びCYP72A33のいずれを過剰発現させた形質転換シロイヌナズナ系統では、このようなBS感受性の低下は認められなかった。
【0101】
次に、非形質転換シロイヌナズナ(NT(図17中A〜C中「Col-0」))及び形質転換個体(K31-4-2(図17中A〜C中「K31oe-4-2」)、K31-6-5(図17中A〜C中「K31oe-6-5」))について、各系統15粒の種子を各濃度のBSを含む培地上で栽培した。栽培開始から10日目に(a)発芽した個体(種子からの発根がみられた個体)の割合、(b)本葉が展開した個体の割合、(c)地上部の新鮮重(15個体の総和)を調べた。これら(a)〜(c)の測定結果をそれぞれ図17A〜Cに示す。なお、図17A〜Cに示すグラフは、3反復の平均±SE(n=3)を示している。図17A〜Cに示すように、(a)〜(c)いずれの指標においても、K31-4-2、K31-6-5では、NTと比較して有意にBS感受性が低下することが示された。
【0102】
次に、非形質転換シロイヌナズナ(NT(図18中A〜C中「Col-0」))及び形質転換個体(K32-1-1(図18中A〜C中「K32oe-1-1」)、K32-3-1(図18中A〜C中「K32oe-3-1」)、K32-5-1(図18中A〜C中「K32oe-5-1」))について、各系統15粒の種子を各濃度のBSを含む培地上で栽培した。栽培開始から10日目に(a)発芽した個体(種子からの発根がみられた個体)の割合、(b)本葉が展開した個体の割合、(c)地上部の新鮮重(15個体の総和)を調べた。これら(a)〜(c)の測定結果をそれぞれ図18A〜Cに示す。なお、図18A〜Cに示すグラフは、グラフは3反復の平均±SE(n=3)を示している。図18A〜Cに示すように、いずれの指標においても、K32-1-1、K32-3-1、K32-5-1では、NTと同程度のBS感受性を示すことが明らかとなった。
【0103】
次に、非形質転換シロイヌナズナ(NT(図19中A〜C中「Col-0」))及び形質転換個体(K33-1-3(図18中A〜C中「K33oe-1-3」)、K33-2-4(図18中A〜C中「K33oe-2-4」))について、各系統15粒の種子を各濃度のBSを含む培地上で栽培した。栽培開始から10日目に(a)発芽した個体(種子からの発根がみられた個体)の割合、(b)本葉が展開した個体の割合、(c)地上部の新鮮重(15個体の総和)を調べた。これら(a)〜(c)の測定結果をそれぞれ図19A〜Cに示す。なお、図19A〜Cに示すグラフは、グラフは3反復の平均±SE(n=3)を示している。図19A〜Cに示すように、いずれの指標においても、K33-1-3、K33-2-4では、NTと同程度のBS感受性を示すことが明らかとなった。
【0104】
〔実施例11〕 カサラス由来CYP72A31過剰発現コンストラクトを導入したシロイヌナズナ又はイネを用いた薬剤感受性試験
カサラス由来CYP72A31遺伝子がBS以外の薬剤に対しても耐性を示すかどうかを調べるため、実施例10に従って作出したHptII::35Spro::カサラスCYP72A31::Tnosベクタープラスミド(pCAMBIA1390-KasCYP72A31)で形質転換したシロイヌナズナのホモ系統(K31-4-2)又は実施例5で作出したイネの後代のホモ系統(T3)(K31-4-6-2)を用いて薬剤感受性を調べた。
【0105】
<形質転換シロイヌナズナを用いた薬剤感受性試験>
ムラシゲ・スクーグ(MS)培地用混合塩類(和光純薬工業株式会社製)を1袋、スクロースを20g、チアミン塩酸塩を3mg、ニコチン酸を5mg、ピリドキシン塩酸塩を0.5mgを蒸留水に溶解させ、蒸留水でメスアップし1Lとした。1MのKOHでpHを5.8〜6.3に調製した後、3gのゲルライトを加え、電子レンジでゲルライトを溶解させた。その後、オートクレーブし、無菌MS培地を調製した。この無菌MS培地に供試薬剤を終濃度1.3、4.1、12、37、110又は330nMとなるように添加した。種子滅菌したシロイヌナズナを薬剤含有MS培地に播種し、22℃、連続明期で12〜14日間栽培した。
【0106】
なお、本実施例では、薬剤としてビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)、ピリチオバックナトリウム塩(pyrithiobac-sodium)、ピリミノバック(pyriminobac)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ペノキススラム(penoxsulam)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、ニコスルフロン(nicosulfuron)及びプロピリスルフロン(propyrisulfuron)を使用した。
【0107】
薬剤としてビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)及びピリチオバックナトリウム塩(pyrithiobac-sodium)を使用して12日間栽培した結果を表2及び図20に示した。
【0108】
【表2】
なお、表2に示した「感受性比」とは、[K31-4-2で本葉展開率40%以上を示した最高薬剤濃度]/[NTで本葉展開率40%以上を示した最高薬剤濃度]で計算した値である。
【0109】
また、薬剤としてビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)、ピリミノバック(pyriminobac)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ペノキススラム(penoxsulam)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、ニコスルフロン(nicosulfuron)及びプロピリスルフロン(propyrisulfuron)を使用して14日間栽培した結果を表3及び図21〜24に示した。
【0110】
【表3】
なお、表3に示した「感受性比」とは、[K31-4-2で本葉展開率80%以上を示した最高薬剤濃度]/[NTで本葉展開率80%以上を示した最高薬剤濃度]で計算した値である。
【0111】
表2及び3並びに図20〜24から判るように、カサラス由来CYP72A31遺伝子を過剰発現するように導入したシロイヌナズナのホモ系統(K31-4-2)は、ビスピリバックナトリウム塩 (bispyribac-sodium)、ピリチオバックナトリウム塩(pyrithiobac-sodium)、ピリミノバック(pyriminobac)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、ペノキススラム(penoxsulam)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、プロピリスルフロン(propyrisulfuron)に対して耐性を示した。
【0112】
<形質転換イネを用いた薬剤感受性試験>
また、実施例1の方法に従い、供試薬剤濃度0.01、0.1、1又は10μM含有のゲランガム培地を作成し、イネ種子を滅菌・催芽・播種し、栽培した。その結果を表4及び図25に示した。
【0113】
【表4】
なお、表4に示した「感受性比」とは、[K31-4-6-2でCK比40%以上を示した最高薬剤濃度]/[野生型イネでCK比40%以上を示した最高薬剤濃度]で計算した値である。
【0114】
表4及び図25から判るように、カサラス由来CYP72A31遺伝子を過剰発現する形質転換イネは、ビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium)及びピノキサデン(pinoxaden)に対して耐性を示した
以上の結果より、CYP72A31遺伝子がBS以外の生育阻害物質に対しても耐性を示すことが明らかとなった。
【0115】
〔実施例12〕pCAMBIA1390-KasCYP72A31を導入したイネカルスのBSによる形質転換体の選抜
BSを選抜試薬として、カサラス由来CYP72A31遺伝子を形質転換の選抜マーカーとして利用できるかどうかを、pCAMBIA1390-KasCYP72A31で形質転換したイネを用いてで調べた。実施例5に従い、pCAMBIA1390-KasCYP72A31或いはpSTARA-sGFPを用いてアグロバクテリウム法でそれぞれイネ(日本晴)の形質転換を行った。
【0116】
<N6D培地での薬剤耐性カルスの選抜>
pCAMBIA1390-KasCYP72A31で形質転換したイネ(日本晴)カルスを0.1又は0.25μMのBS含有のN6D培地或いは50ppmのハイグロマイシン含有N6D培地で4週間培養し、薬剤耐性カルスの選抜を行った。また、pSTARA-sGFPで形質転換したイネカルスを0.25μMのBS含有N6D培地で同様に選抜を行った。
【0117】
結果を図26に示す。その結果、pCAMBIA1390-KasCYP72A31で形質転換したイネカルスをBS濃度0.1又は0.25μM含有N6D培地で培養した場合の選抜効率(得られた形質転換カルス/全カルスの割合)はそれぞれ71%、61%であった。同じ形質転換カルスを50ppmハイグロマイシン含有N6D培地で培養した場合の選抜効率は79%で、BSを選抜試薬とした場合とほぼ同等の選抜効率であった。なお、pSTARA-sGFPで形質転換したイネカルスのBS選抜の選抜効率は82%であった。
【0118】
<形質転換体の再分化>
次に、pCAMBIA1390-KasCYP72A31で形質転換し、0.1μMのBS含有N6D培地で選抜したカルスを、0.25μMのBS含有のイネ再分化培地RE-IIIで13日間培養を行い、その後、薬剤無添加の再分化培地RE-IIIで14日間培養を行った。
【0119】
その結果、図27に示すように、再分化個体が得られた。
【0120】
以上の結果より、BSを選抜試薬として、CYP72A31遺伝子を形質転換マーカーとして利用できることが明らかとなった。
【0121】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]