【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記実施例において、粘度はキャノンフェンスケ粘度計を用い、比重は浮秤計を用いて測定した。屈折率はデジタル屈折率計RX−5000(アタゴ社製)を用いて測定した。
1H−NMR分析は、JNM−ECP500(日本電子社製)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して実施した。
また、下記において化合物の純度は、以下の条件によるガスクロマトグラフィー(GC)測定により行ったものである。
ガスクロマトグラフィー(GC)測定条件
ガスクロマトグラフ:Agilent社製
検出器:FID、温度300℃
キャピラリーカラム:J&W社 HP−5MS(0.25mm×30m×0.25μm)
昇温プログラム:50℃(5分)→10℃/分→250℃(保持)
注入口温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム(1.0ml/分)
スプリット比: 50:1
注入量:1μl
【0046】
[合成例1]
エチレングリコールモノアリルエーテル76.5g(0.75mol)、トルエン100gを、攪拌機、ジムロート、温度計、及び滴下ロートを付けた1リットルフラスコに仕込み、70℃まで昇温した。塩化白金酸アルカリ中和物ビニルシロキサン錯体触媒トルエン溶液(白金含有量0.5%)0.38gを前記フラスコ中に添加した後、滴下ロートを用いて、1−ブチル−9−ヒドロ−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン206g(0.5mol)を1時間かけて前記フラスコ中へ滴下した。内温は85℃まで上昇した。100℃で1時間熟成後に反応物をGCで分析したところ、原料モノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサンのピークが消失し、反応が完結したことを示した。反応物に200gのイオン交換水を加え、攪拌しながら水洗し、静置して相分離させ、過剰のエチレングリコールモノアリルエーテルを含む水層を除去した。同様にして、200gイオン交換水で2回水洗し、有機層のトルエンを減圧ストリップして、無色透明液体であり下記式(6)で示されるシリコーン化合物242g(収率94%)を得た。GC測定による該シリコーン化合物の純度は99.4質量%であった。
【化13】
【0047】
[実施例1]
上記式(6)のシリコーン化合物128.5g(0.25mol)、ジオクチルスズオキサイド0.01g(0.01質量%)、アイオノール0.01g、4−メトキシフェノール0.01gを、攪拌機、ジムロート、温度計、滴下ロートを付けた、1リットルフラスコに仕込み、下記式(7)の(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物62.1g(0.26mol)を1時間かけて滴下した。内温は20℃から40℃まで上昇した。上記式(6)のシリコーン化合物のピークをGCでモニターしながら40℃で熟成した。4時間後に、式(6)のシリコーン化合物のピークが、GCでの検出限界以下になったことを確認し、反応液にメタノール4.0g(0.125mol)を加えた。更に、ヘキサン180g、イオン交換水180g加え水洗した。静置分離して水層をカットした後、さらに2回水洗した。有機層から溶媒のヘキサン等を減圧ストリップすることにより、無色透明液体の生成物150.6g(0.2mol、収率80%)を得た。
1H−NMR分析で、下記式(8)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物1という)。該シリコーン化合物のGCによる純度は97.5%であり、粘度90.0mm
2/s(25℃)、比重1.017(25℃)、屈折率1.4440であった。得られたシリコーン化合物の
1H−NMRスペクトルを
図1に示す。
【化14】
【化15】
【0048】
[合成例2]
実施例1で使用した上記式(6)のシリコーン化合物205.6g(0.4mol)、脱塩酸剤トリエチルアミン50.6g(0.5mol)、ヘキサン500gを、攪拌機、ジムロート、温度計、滴下ロートを付けた、2リットルフラスコに仕込み、フラスコを水浴中で冷却しながら、メタクリル酸クロライド48.1g(0.46mol)とヘキサン50gの混合物を1時間かけて滴下した。内温は20℃から30℃まで上昇した。水浴をはずし、上記式(6)のシリコーン化合物のピークをGCでモニターしながら室温で熟成した。10時間後に、上記式(6)のシリコーン化合物のピークが、GCでの検出限界以下になったので、反応液にイオン交換水500g加え水洗した。静置分離して水層をカットした後、さらに2回水洗した。有機層から溶媒のヘキサン等を減圧ストリップすることにより、無色透明液体の生成物206gを得た。
1H−NMR分析で、下記式(9)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(収率89%)(以下、シリコーン化合物2という)。GC測定による該シリコーン化合物の純度は98.5%であり、粘度は5.9mm
2/s(25℃)であり、比重は0.944(25℃)であり、屈折率は1.4260であった。
【化16】
【0049】
[合成例3]
実施例1において上記式(7)の(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物62.1g(0.26mol)の替わりに下記式(10)で示される(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物40.3g(0.26mol) を使用した以外は、実施例1を繰り返し、無色透明液体の生成物147g(0.22mol、収率88%)を得た。
1H−NMR分析で、下記式(11)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物3という)。GCによる該シリコーン化合物の純度は97.3%であり、粘度32.6mm
2/s(25℃)、比重0.993(25℃)、屈折率1.4381であった。
【化17】
【化18】
【0050】
[合成例4]
特許文献7の実施例1に記載のシリコーン化合物を合成した。
攪拌装置、温度計、還流冷却器のついた1Lガラスフラスコに、下記式
【化19】
で示される片末端水酸基含有ポリシロキサン234.4g、下記式
OCN−C(CH
3)[CH
2−O−CO−CH=CH
2]
2
で示されるイソシアネート化合物(昭和電工製:カレンズBEI)11.95g、トルエン246g、ジオクチルスズジアセテート0.25gを仕込み、100℃で8時間加熱攪拌を行なった。IRにてイソシアネートのピークが消失したことを確認し、100℃/10mmHgの条件にて減圧ストリップを行ない、トルエンを溜去し、無色透明な生成物を得た。
1H−NMR分析で、下記式(12)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物4という)。GPC測定の結果、下記式においてnが平均60である分布を有する混合物であった。粘度:87mm
2/s、揮発分(105℃/3時間):0.4%、屈折率:1.4082であった。
【化20】
【0051】
[合成例5]
エチレングリコールモノアリルエーテル76.5g(0.75mol)に代えてアリルアルコール43.5g(0.75mol)を用いた他は合成例1を繰り返し、無色透明液体であり下記式(13)で示されるシリコーン化合物223g(収率95%)を得た。GC測定による該シリコーン化合物の純度は99.6質量%であった。
【化21】
上記式(6)のシリコーン化合物128.5g(0.25mol)にかえて、上記式(13)のシリコーン化合物117.5g(0.25mol)を用いた他は実施例1を繰返し、無色透明液体の生成物145.3g(0.2mol、収率82%)を得た。
1H−NMR分析で、下記式(14)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物5という)。GCによる該シリコーン化合物の純度は97.8%であり、粘度75.6mm
2/s(25℃)、比重1.023(25℃)、屈折率1.4451であった。
【化22】
【0052】
[合成例6]
エチレングリコールモノアリルエーテル76.5g(0.75mol)に代えて、トリエチレングリコールモノアリルエーテル142.5g(0.75mol)を用いた他は合成例1を繰り返して、無色透明液体であり下記式(15)で示されるシリコーン化合物273.9g(収率91%)を得た。GC測定による該シリコーン化合物の純度は99.1質量%であった。
【化23】
上記式(6)のシリコーン化合物128.5g(0.25mol)にかえて、上記式(15)のシリコーン化合物150.5g(0.25mol)を用いた他は実施例1を繰返して無色透明液体の生成物168.2g(0.2mol、収率80%)を得た。
1H−NMR分析で、下記式(16)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物6という)。GCによる該シリコーン化合物の純度は97.8%であり、粘度96.2mm
2/s(25℃)、比重1.010(25℃)、屈折率1.437であった。
【化24】
【0053】
[評価試験]
実施例1で得られたシリコーン化合物1及び合成例2〜6で得られたシリコーン化合物2〜6を使用し、下記の評価試験を行った。比較例6ではシリコーン化合物に替えてトリエチレングリコールジメタクリレートを使用した。結果を表1に示す。
尚、下記において他の重合性モノマーとして、重合性基含有シリコーンモノマー、N,N−ジメチルアクリルアミド、トリフルオロエチルメタクリレートを使用した。重合性基含有シリコーンモノマーとしては上記合成例2で得たシリコーン化合物2を使用した。
【0054】
(1)他の重合性モノマーとの相溶性
重合性基含有シリコーンモノマー60質量部、N,N−ジメチルアクリルアミド35質量部、トリフルオロエチルメタクリレート5質量部、シリコーン化合物1〜6のいずれか1つまたはトリエチレングリコールジメタクリレート1質量部(架橋成分)、及びダロキュア1173(光重合開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.5質量部を混合し撹拌した。得られた混合物の外観を目視により観察した。シリコーン化合物と、シリコーンモノマーと、他の(メタ)アクリル化合物との相溶性が良好である混合物は無色透明になるが、相溶性が悪い混合物は濁りを生じる。
【0055】
(2)フィルム(重合体)の外観
上記(1)で調製した混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。該混合液を、石英ガラス板2枚をはさんだ鋳型に流し込み、超高圧水銀ランプで1時間照射して厚さ約0.3mmのフィルムを得た。該フィルムの外観を目視観察した。
【0056】
(3)フィルム(重合体)の水濡れ性(表面親水性)
上記(2)で製造したフィルムに対して、接触角計CA−D型(協和界面科学株式会社製)を用い、液適法にて水接触角°の測定を行った。
【0057】
(4)フィルム(重合体)の耐汚染性
上記(2)で製造したフィルムを37℃リン酸緩衝液(PBS(−))に24時間浸漬した。浸漬前および24時間浸漬した後の各フィルムを、公知の人工脂質液中にて、37℃±2℃にて8時間インキュベートした。その後、PBS(−)にて濯ぎ洗いをし、0.1%スダンブラック−胡麻油溶液に浸漬した。浸漬前後で染色状態に差異が確認されない場合を○、確認された場合を×とした。
【0058】
(5)機械的強度
上記(2)に従いフィルムを2枚作製し、その内の1枚の表面水分を拭き取った後に37℃リン酸緩衝液(PBS(一))に24時間浸漬した。PBS(一)浸漬前および24時間浸漬後のフィルム各々を幅2.0mmのダンベル形状にカットし、試験サンプルの上下端を冶具で挟み、一定速度で引張続けた際の破断強度および破断伸度を、破断試験機AGS−50NJ(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。PBS(一)に浸漬する前後での破断強度と破断伸度が10%以内の変化の場合は○とし、10%を超える減少が認められる場合は×とした。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示す通り、本発明のシリコーン化合物はシリコーンモノマー及び他の(メタ)アクリル系モノマーと良好に相溶し、無色透明な重合体を与える。特に、フッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーと良好に相溶するため、耐汚染性に優れる重合体を与える。また、得られる重合体は機械的強度に優れ水濡れ性も良好である。
【0061】
表1の比較例1の結果に示す通り、合成例2で得たシリコーン化合物2(シリコーンモノマー)は他の(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が悪く、透明な混合物及び重合体を得られない。これに対し、実施例1の結果に示す通り、シリコーンモノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの混合物に本発明のシリコーン化合物を混合すると、無色透明な混合物及び重合体を与えることができる。すなわち、本発明のシリコーン化合物は、架橋剤としての作用に加え相溶化剤としても作用する。
【0062】
シリコーン化合物3はメタクリル基を1つしか有さない。比較例2の結果に示す通り、シリコーンモノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの混合物にシリコーン化合物3を混合しても、透明な混合物及び重合体を与えることはできない。また、該重合体は耐汚染性及び水濡れ性に劣る。
【0063】
シリコーン化合物4は純度が低く、また、シリコーン鎖が長く親水性が低い。そのため他の(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が悪い。従って、比較例3の結果に示す通り、シリコーンモノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの混合物にシリコーン化合物4を混合すると白濁して透明な重合体を与えることはできない。また、該重合体は機械的強度、耐汚染性及び水濡れ性に劣る。
【0064】
シリコーン化合物5はスペーサー部分にエチレンオキサイドを有さない。該シリコーン化合物は親水性が低く、他の(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性に劣る。そのため比較例4の結果に示す通り透明な重合体を与えることができない。また、該重合体は耐汚染性及び水濡れ性に劣る。
【0065】
シリコーン化合物6はスペーサー部分にエチレンオキサイドを2個以上有する。該シリコーン化合物は親水性が高く、シリコーンモノマーとの相溶性に劣る。そのため比較例5の結果に示す通り透明な重合体を与えることができない。また、該シリコーン化合物6はポリエーテルスペーサー鎖長が長いため、得られる重合体は機械的強度に劣る。さらに該重合体は耐汚染性にも劣る。
【0066】
比較例6の結果に示す通り、トリエチレングリコールジメタクリレートはシリコーン鎖を含まずシリコーンモノマーとの相溶性に劣る。そのため、透明な重合体を与えることができない。