特許第6045515号(P6045515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6045515-眼科デバイス製造用モノマー 図000032
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045515
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】眼科デバイス製造用モノマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/28 20060101AFI20161206BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C08F20/28
   G02C7/04
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-13623(P2014-13623)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-140393(P2015-140393A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宗夫
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−019402(JP,A)
【文献】 国際公開第03/052003(WO,A1)
【文献】 国際公開第06/109496(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0216488(US,A1)
【文献】 特表2008−511870(JP,A)
【文献】 特開2013−112776(JP,A)
【文献】 特開2000−319398(JP,A)
【文献】 特開昭59−229524(JP,A)
【文献】 特開2010−159386(JP,A)
【文献】 特表2012−514231(JP,A)
【文献】 特開2012−093396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00、301/00
C08F 283/01、290/00−290/14
C08F 299/00−299/08
G02C 1/00−13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物
【化1】
(式(1)において、mは2〜10の整数であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは(メタ)アクリル基を含まない非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又はメチル基である)。
【請求項2】
式(1)において各特定の一のm、R、R、R、R及びRを有する1種が、化合物の質量全体のうち95質量%超を成す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
mが3である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物と、これと重合性の基を有する他の化合物の少なくとも1種とを重合して得られる重合体。
【請求項5】
該他の化合物がシリコーンモノマーを包含する、請求項4記載の重合体。
【請求項6】
シリコーンモノマー100質量部に対し請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の量が0.1〜50質量部である、請求項5記載の重合体。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項記載の重合体を用いてなる眼科デバイス。
【請求項8】
下記式(1)で表される化合物を製造する方法であって、
【化2】
(式(1)において、mは2〜10の整数であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは互いに独立に、水素原子又はメチル基である。Rは(メタ)アクリル基を含まない非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基であり、Rは水素原子及びメチル基のうちの一つ、Rは水素原子及びメチル基のうちの一つである)
下記式(2)で表されるシリコーン化合物と
【化3】
(m、R及びRは上述のとおりである)
下記式(3)で表される(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物を
【化4】
(R、R、Rは上述のとおりである)
反応させる工程を含む、製造方法。
【請求項9】
式(1)において各特定の一のm、R、R、R、R及びRを有する1種が、化合物の質量全体のうち95質量%超を成す、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
mが3である、請求項9記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼科デバイス、例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜を製造するための化合物(以下、「眼用モノマー」ともいう)及びその製造方法に関する。詳細には、所定分子量を有するシリコーン構造と(メタ)アクリル基を有する化合物であり、重合性基を有する他のモノマーと共重合して、透明度及び酸素透過率の高い、眼に適用するのに好適な重合体を与える化合物、及びその製造方法に関する。特には、重合性シリコーンモノマーの架橋成分となる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼用モノマーとして、下記のシリコーン化合物が知られている。
【化1】
【化2】
【0003】
上記TRIS(3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート)は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のような親水性モノマーとの相溶性に劣り、これらの親水性モノマーと共重合した場合、透明ポリマーが得られないという欠点がある。一方、上記SiGMAはHEMAのような親水性モノマーとの相溶性に優れ、その共重合ポリマーは、比較的高酸素透過性で高親水性であるという特徴を有する。しかしながら、近年眼用ポリマーには、長時間の連続装用を可能にすべく、より高い酸素透過性が要求されるようになり、SiGMAから得られるポリマーでは、酸素透過性が不十分だった。
【0004】
この問題を解決すべく、特許文献1には、下記式(a)で表される化合物が記載されている。
【化3】
SiGMAにおいてビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル部分をSi部分とし、全体に占めるSi部分の質量割合を求めると52%となる。一方、上記式(a)において、トリス(トリメチルシロキシ)シリル部分をSi部分とし、全体に占めるSi部分の質量割合を求めると60%となる。即ち、上記式(a)の化合物は、Si部分の質量割合が多い。その為、得られる眼科デバイスに高い酸素透過性をもたらすことができる。
【0005】
しかし、酸素透過率を上げるためにSi部分の質量割合を増やすと、重合性基あたりの分子量が大きくなるため共重合ポリマーの強度が低下するという問題があった。また、特許文献2は上記式(a)で示される化合物をエポキシ前駆体にメタクリル酸を反応させて調製されると記載しているが、該反応は、副反応が多く、得られる共重合ポリマーの物性のブレが大きいという問題もあった。
【0006】
特許文献5の背景技術の欄に記載されているように、酸素透過性の観点からは4量体シリコーン以上が好ましく、酸素透過性と共重合ポリマーの強度とを両立させるためには4量体シリコーン及び5量体シリコーンが好ましいと考えられている。そのため、4量体以上のシリコーンを有するシリコーンモノマーを高純度で得る方法の開発が要求されている。
【0007】
特許文献3には、リチウムトリアルキルシラノレートを開始剤として環状シロキサンをアニオン重合させたものに、3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)プロピルジメチルクロロシラン等の(メタ)アクリル基を有するクロロシランを反応させて、下記式(b)で表されるシリコーン化合物を調製する方法が記載されている。
【化4】
該方法で得られた生成物は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の親水性モノマーと混合した時に白濁する場合がある。さらに、クロロシランによる該シリコーン鎖の末端封鎖率が高くない。
【0008】
特許文献4には、片末端水酸基含有オルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル酸(エステル)のエステル化またはエステル交換によって下記式(c)で表されるシリコーン化合物を調製する方法が記載されている。
【化5】
(rは3以上の整数)
しかし、上記方法では、エステル化率が不十分で末端封鎖率が低く、また、シリコーンの重合度に分布ができる。
【0009】
特許文献5は、片末端水酸基含有オルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル酸ハライドのエステル化によって、下記式(d)で表されるシリコーン化合物を製造する方法を記載している。特許文献5は、該方法により、下記式(d)で表され、特定のm、n、R及びRを有する1種のシリコーン化合物を95重量%超で含む高純度シリコーン化合物を製造できると記載している。
【化6】
(ここでmは3〜10の整数のうちの一つ、nは1または2のうちの一つ、Rは炭素数1〜4のアルキル基のうちの一つ、Rは水素及びメチル基のうちの一つである)
【0010】
また、特許文献6には、下記式で表されるシリコーン化合物、及び該化合物を重合成分として含むポリマーを用いてなる眼用レンズが記載されている。
【化7】
【0011】
さらに、特許文献7は下記式(I)で示される(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンを記載している。
[式中、Rは(メタ)アクリル基を含まない非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基又はアルコキシ基である。Qは下記A又はXの何れかであり、異なったものを含んでもよく、ただし、Qの少なくとも1つはAである。Aは式:−R−CONH−C(R)[CH−O−CO−CH=CH又は−R−CONH−C(R)[CH−O−CO−C(CH)=CH(Rは2価有機基であり、Rは(メタ)アクリル基を含まない非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基又はアルコキシ基である。)であり、XはR又は(メタ)アクリル基を含まない活性水素含有の1価有機基である。a、bは、0≦a≦1,000、0≦b≦100である。]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−186709号公報
【特許文献2】特開2007−1918号公報
【特許文献3】特開昭59−78236号公報
【特許文献4】特開2001−55446号公報
【特許文献5】特許第4646152号公報
【特許文献6】特許第4882136号公報
【特許文献7】特開2013−112776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
眼用シリコーンモノマーを重合成分とする重合体の架橋度を高めて機械的強度を向上させるために、他の重合性モノマーを架橋成分として使用することが行われる。例えば、エチレングリコールジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが使用される。しかし、これらの重合性モノマーはシリコーン鎖を含んでいないため、得られる重合体の酸素透過性を低下させる場合や、架橋密度が高まりすぎて硬化収縮が生じ寸法安定性が悪化する場合がある。
【0014】
そのため重合性シリコーンモノマーの架橋成分として好適に機能し、且つ、酸素透過性、機械的強度、及び寸法安定性等に優れた重合体を与えるシリコーン化合物が求められている。しかし、特許文献5に記載のシリコーン化合物は(メタ)アクリル基を一つしか有さないため架橋成分とならない。また、該モノマーから得られた重合体は機械強度が不足することがある。特許文献6に記載のモノマー化合物も(メタ)アクリル基を一つしか有さないため架橋成分とならない。また、特許文献6に記載のシリコーン化合物は、シロキサン構造と(メタ)アクリレート構造の間にエチレンオキサイド−エチレンオキサイド構造を有する。該構造では親水性が高すぎ、(メタ)アクリル系モノマー、特に耐汚染性を付与するフッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーに対して相溶性が悪い場合がある。
【0015】
特許文献7に記載のシリコーン化合物は分子中に複数の(メタ)アクリル基を有するため架橋効率が高い。しかし該シリコーン化合物は他の重合性モノマーとの相溶性に劣る。また、該シリコーン化合物はシロキサン単位数が多い。該シリコーン化合物は、活性水素含有の1価有機基で変性されたオルガノポリシロキサンと2つのアクリル基あるいはメタクリル基を有する炭化水素基置換イソシアネート化合物とを反応させて製造されるが、オルガノポリシロキサンのシロキサン単位数が多く分子量分布が大きいため純度が低い。その為、得られるモノマーは混合物となる。また該モノマーを重合成分として得られる重合体は透明性が劣る。さらに、重合度の高いシリコーン鎖を含むモノマーは他の重合性モノマーとの相溶性が悪く白濁する場合がある。
【0016】
そこで、本発明は、重合性モノマーの架橋成分として好適に機能するシリコーン化合物を提供することを目的とする。より詳細には、重合性シリコーンモノマー及びその他の重合性モノマーに対して相溶性が良好であり、酸素透過性、機械的強度及び寸法安定性に優れる重合体を提供できるシリコーン化合物を提供することを目的とする。更には、高純度を有するシリコーン化合物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物が、重合性シリコーンモノマーとの相溶性、及びその他の重合性モノマーとの相溶性が良好であり、無色透明の重合体を与えることを見出し、本発明を成すに至った。
【0018】
即ち、本発明は、下記式(1)で表される化合物、及び該化合物の製造方法を提供する。
【化8】
(式(1)において、mは2〜10の整数であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは(メタ)アクリル基を含まない非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又はメチル基である)。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシリコーン化合物は、他の重合性モノマー、特には重合性シリコーンモノマーとの相溶性が高く、さらに架橋成分として好適に作用する。さらに、該シリコーン化合物は純度が高い。そのため、重合性モノマーと共重合することにより、無色透明であり機械的強度に優れる重合体を与える。特に、耐汚染性を付与するフッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーに対して相溶性が良好であり、親水性及び耐汚染性に優れる重合体を与える。さらに、本発明のシリコーン化合物は高い酸素透過性を有する。また、本発明の製造方法によれば、末端封鎖率が高く高純度を有するシリコーン化合物を与えることができる。従って、本発明のシリコーン化合物及び該化合物の製造方法は眼科デバイス製造用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1において得られたシリコーン化合物のH−NMRスペクトルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のシリコーン化合物は上記式(1)で表され、シロキサン構造と(メタ)アクリル構造の間のスペーサー部分にエチレンオキサイドを一つ有すること、該スペーサー部分にウレタン結合を有すること、及び(メタ)アクリル基を2つ有することを特徴とする。これらの特徴により、重合性基を有するシリコーンモノマーとの相溶性及び他の重合性モノマーとの相溶性が良好になる。またウレタン結合が重合体間で水素結合を形成するため、機械的強度により優れる重合体を与えることができる。さらに2つの(メタ)アクリル基により架橋成分として好適に作用することができ、機械的強度及び寸法安定性に優れた重合体を提供する。
【0022】
本発明のシリコーン化合物はスペーサー部分にエチレンオキサイドを一つだけ有することにより、化合物の親水性のバランスが良好である。エチレンオキサイドがないと親水性が不十分となる。また、エチレンオキサイドを2つ以上有すると親水性が高すぎ、(メタ)アクリル系モノマー、特に耐汚染性を付与するフッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーに対して相溶性が悪くなる。また、エチレンオキサイドではなくプロピレンオキサイドを有すると、フッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーに対する化合物の相溶性は良いが、重合体の疎水性が高くなりすぎ親水性が損なわれる。また、エチレンオキサイドではなくポリアルキレンオキサイド構造を有すると得られる共重合体の強度が低くなる。
【0023】
上記式(1)において、mは2〜10、好ましくは3〜7の整数、最も好ましくは3である。mが上記範囲内にあると、化合物が所望のケイ素原子量を有する鎖状シロキサン構造を有するため、重合体としたときの酸素透過率、あるいは形状回復性が良好となる。mが上記下限値未満では酸素透過率が低くなる。一方、mが上記上限値超では化合物の親水性が低くなるため好ましくない。また、mが上記上限値超では原料となるシロキサンが分子量分布を有するため得られる化合物の純度が低くなる恐れがある。
【0024】
上記式(1)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、好ましくはブチル基であり、Rは水素原子またはメチル基である。Rは、(メタ)アクリル基を含まない非置換又は置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜10の1価炭化水素基、又は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基である。1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、及びトリル基等のアリール基;ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基が好ましく、特にはメチル基が好ましい。Rは水素原子及びメチル基のうちの一つであり、Rは水素原子及びメチル基のうちの一つである。
【0025】
本発明は、後述する方法により、上記式(1)で表され、特定の構造を有する1種類の化合物を高純度で含有する化合物を提供することができる。特定の構造を有する一種とは、即ち、特定の一のm、R、R、R、R及びRを有する1種類の化合物を意味する。高純度とは、化合物の質量全体のうち、特定の一のm、R、R、R、R及びRを有する1種類の化合物が95質量%超、好ましくは99質量%以上を成すことである。本発明において、純度はガスクロマトグラフィー(以下「GC」とする)分析により求められる。詳細な条件は後述する。化合物が上記高純度を有することにより、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の非シリコーン系モノマーと混合したときに、濁りを生じず透明な重合体を得ることができる。
【0026】
特には、mが3である化合物が好ましく、更には、mが3であり、Rがブチル基である化合物が好ましい。式(1)において、Rがブチル基であり、R、R、及びRが水素であり、Rがメチル基であり、mが3であるとき、該化合物の分子量は753であり、化合物全体の質量に対するジメチルポリシロキサン鎖部分の質量割合は約47%である。即ち、該化合物はSi含量が高いため、得られる共重合体は高い酸素透過性を有する。
【0027】
本発明はさらに、上記式(1)で示される化合物の製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、下記式(2)で表されるシリコーン化合物と
【化9】
(m、R及びRは上述のとおりである)
下記式(3)で表される(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物を
【化10】
(R、R、Rは上述のとおりである)
反応させる工程を含む。該反応は、式(2)のポリオルガノシロキサンの、無溶媒下あるいはトルエンまたはヘキサン等の溶液中に、式(3)の(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物を、徐々に添加して、水浴等で冷却しながら0〜50℃の温度で行なうことが好ましい。
【0028】
式(3)の(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物の量は、式(2)のポリオルガノシロキサン1molに対して、1〜3mol、好ましくは、1.05〜2molである。上記下限値未満では式(2)のポリオルガノシロキサンが未反応物として残存し、高純度化ができない。また上記上限値を超えると経済的に不利である。
【0029】
該反応は必要に応じて触媒を使用してもよい。触媒は一般に使用されるイソシアネートの反応触媒でよく、好ましくはスズ化合物、アミン触媒である。スズ触媒としては、スズ(II)のカルボン酸塩化合物が触媒活性の点より好ましく、アミン触媒としては、トリエチルアミンやトリブチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンなどの3級アミンが好ましい。触媒の使用量は式(2)のポリオルガノシロキサンに対して0.001から0.1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.05質量%である。上記上限値を超えて使用する場合には効果が飽和し、非経済的である。上記下限値未満である場合には触媒効果が不足し、反応速度が低く、生産性が低下する。
【0030】
本発明の方法の好ましい態様は、GC測定で残存シリコーン化合物(式(2))の有無をモニタリングし、そのピーク消失を確認した後に、反応物にメタノール、エタノール等のアルコールを投入して、残存する(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物のイソシアネートを不活性化させる。有機溶媒、水を加え攪拌した後、静置させて有機層と水層に分離する。上記反応において副反応はほぼ認められない。有機層を数回水洗した後、有機層中の溶剤をストリップすることで、高純度な式(1)のシリコーン化合物が得られる。
【0031】
上記式(2)のシリコーン化合物は、下記式(4)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
【化11】
(m及びRは上述のとおりである)
下記式(5)で表されるエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルを付加反応させて、調製することができる。
【化12】
(Rは上述のとおりである)
【0032】
該付加反応は従来公知の方法に従えばよい。例えば、白金族化合物等の付加反応触媒の存在下で行う。その際、溶剤を使用してもよく、例えばヘキサン、トルエン等の脂肪族、芳香族系溶剤、エタノール、IPA等のアルコール系溶剤が好適に使用出来る。ポリオルガノハイドロジェンシロキサン1モルに対しアリルエーテル化合物を1.2モル以上、好ましくは1.5モル以上使用する。
【0033】
エチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノメタリルエーテルが挙げられる。
【0034】
付加反応の好ましい態様としては、例えば、アリルエーテル化合物を必要に応じて溶剤で希釈し、そこへ白金系ヒドロシリル化触媒を添加する。白金系ヒドロシリル化触媒の種類は特に制限されず、従来公知のものが使用できる。さらに、室温もしくはそれ以上の温度でポリオルガノハイドロジェンシロキサンを滴下して反応させる。滴下終了後、加温下で熟成した後、原料ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの有無を、例えばGC測定においてピークが消失したことで確認する。反応終点をGC測定により確認することにより、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが生成物中に残存しないため高純度のシリコーン化合物を得ることができる。尚、上記反応は一括で行っても良い。
【0035】
付加反応終了後に、反応液から過剰のアリルエーテル化合物を除去する。該方法としては、減圧下ストリップ、または、イオン交換水もしくはぼう硝水で反応物を水洗してアリルエーテル化合物を水層へ抽出し除去する方法が挙げられる。この際、良好な2層分離を得る為に、トルエン、ヘキサン等の溶剤を適当量使用するのが好ましい。特には、有機層から溶剤を減圧ストリップすることで、上記式(2)のシリコーン化合物を、95質量%超、更には約97質量%以上の高純度で得ることができる。より純度を高めるために、蒸留を複数回行なってもよい。
【0036】
上記式(4)で示されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、公知の方法で調製することができる。例えば、式(4)においてRがブチル基でありm=3の化合物(モノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサン)は、先ずBuLiを使用してBuMeSiOLiを合成し、これを開始剤として、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを開環し、ジメチルクロロシランで反応停止させる。これを蒸留精製して純度99%以上のモノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサンを得る。また、モノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサンを式(5)で表されるエチレンプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルと付加反応した後に蒸留してもよい。しかしモノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサンの沸点は110℃/2mmHgであり、付加反応生成物はより高沸点になるので、付加反応させる前に蒸留してモノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサンの純度を高めておくことが好ましい。これにより上記式(2)のシリコーン化合物も高純度で得ることができる。
【0037】
また、エチレンプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル中の水酸基をヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤によりシリルエステルにし、上記付加反応後にシリルエステルを加水分解して、式(2)のシリコーン化合物を得ても良い。
【0038】
本発明の化合物は、(メタ)アクリル基など、上記シリコーン化合物と重合する基を有する他の化合物(以下、重合性モノマーという)との相溶性が良好である。そのため、重合性モノマーと共重合することにより無色透明の重合体を与えることができる。特には、耐汚染性を付与するフッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーに対して相溶性が良好であり、親水性及び耐汚染性に優れる重合体を与えることができる。
【0039】
重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3―ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリル系モノマー;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メチル(メタ)アクリルアミド等のアクリル酸誘導体;その他の不飽和脂肪族もしくは芳香族化合物、例えばクロトン酸、桂皮酸、ビニル安息香酸;及び(メタ)アクリル基などの重合性基を有するシリコーンモノマーが挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明のシリコーン化合物は(メタ)アクリル基を2つ有するため架橋成分として好適に機能する。その為、重合性モノマーに対する架橋成分として好適に使用することができ、無色透明であり機械的強度の高い重合体を与える。特に、本発明の化合物は、(メタ)アクリル基などの重合性基を有するシリコーンモノマーとの相溶性が良好である。重合性シリコーンモノマーは、眼用モノマーとして従来公知のものを使用することができる。特には、1の末端に(メタ)アクリル基を有し、他の末端にシロキサン構造を有するシリコーンモノマーである。例えば特許文献1〜6に記載のシリコーンモノマーが挙げられる。
【0041】
本発明のシリコーン化合物を架橋成分として使用する場合、重合性モノマーの合計100質量部に対し本発明のシリコーン化合物が0.1〜50質量部であるのが好ましく、更に好ましくは0.5〜20質量部である。特には、重合性シリコーンモノマー100質量部に対し本発明のシリコーン化合物の量が0.1〜50質量部であるのが好ましく、更に好ましくは0.5〜20質量部である。本発明のシリコーン化合物はそれ自体の純度が高いため透明度の高い重合体を与える。
【0042】
本発明のシリコーン化合物と上記重合性モノマーとの重合体には、架橋成分となるその他の化合物の1種あるいは2種以上をさらに重合させることができる。該化合物としては2官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。2官能アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、イソシアヌレートジアクリレートなどが挙げられる。多官能アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。2官能メタクリレートとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1.4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1.6−ヘキサンジオールジメタクレート、1.9−ノナンジオールジメタクリレート、1.10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジメタクリレートなどが挙げられる。多官能メタクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレートやエトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。該架橋成分の量は、重合性モノマー100質量部に対し0.1〜50質量部が好ましく、更に好ましくは0.5〜20質量部である。
【0043】
本発明の化合物と上記他の重合性モノマーとの共重合は従来公知の方法により行えばよい。例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤など既知の重合開始剤を使用して行うことができる。該重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられる。これら重合開始剤は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。重合開始剤の配合量は、重合成分の合計100質量部に対して0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部であるのがよい。
【0044】
本発明の化合物を重合成分として含む重合体は酸素透過性、機械的強度、及び寸法安定性に優れる。従って、眼科デバイス、例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜を製造するのに好適である。該重合体を用いた眼科デバイスの製造方法は特に制限されるものでなく、従来公知の眼科デバイスの製造方法に従えばよい。例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズなどレンズの形状に成形する際には、切削加工法や鋳型(モールド)法などを使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記実施例において、粘度はキャノンフェンスケ粘度計を用い、比重は浮秤計を用いて測定した。屈折率はデジタル屈折率計RX−5000(アタゴ社製)を用いて測定した。H−NMR分析は、JNM−ECP500(日本電子社製)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して実施した。
また、下記において化合物の純度は、以下の条件によるガスクロマトグラフィー(GC)測定により行ったものである。
ガスクロマトグラフィー(GC)測定条件
ガスクロマトグラフ:Agilent社製
検出器:FID、温度300℃
キャピラリーカラム:J&W社 HP−5MS(0.25mm×30m×0.25μm)
昇温プログラム:50℃(5分)→10℃/分→250℃(保持)
注入口温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム(1.0ml/分)
スプリット比: 50:1
注入量:1μl
【0046】
[合成例1]
エチレングリコールモノアリルエーテル76.5g(0.75mol)、トルエン100gを、攪拌機、ジムロート、温度計、及び滴下ロートを付けた1リットルフラスコに仕込み、70℃まで昇温した。塩化白金酸アルカリ中和物ビニルシロキサン錯体触媒トルエン溶液(白金含有量0.5%)0.38gを前記フラスコ中に添加した後、滴下ロートを用いて、1−ブチル−9−ヒドロ−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン206g(0.5mol)を1時間かけて前記フラスコ中へ滴下した。内温は85℃まで上昇した。100℃で1時間熟成後に反応物をGCで分析したところ、原料モノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサンのピークが消失し、反応が完結したことを示した。反応物に200gのイオン交換水を加え、攪拌しながら水洗し、静置して相分離させ、過剰のエチレングリコールモノアリルエーテルを含む水層を除去した。同様にして、200gイオン交換水で2回水洗し、有機層のトルエンを減圧ストリップして、無色透明液体であり下記式(6)で示されるシリコーン化合物242g(収率94%)を得た。GC測定による該シリコーン化合物の純度は99.4質量%であった。
【化13】
【0047】
[実施例1]
上記式(6)のシリコーン化合物128.5g(0.25mol)、ジオクチルスズオキサイド0.01g(0.01質量%)、アイオノール0.01g、4−メトキシフェノール0.01gを、攪拌機、ジムロート、温度計、滴下ロートを付けた、1リットルフラスコに仕込み、下記式(7)の(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物62.1g(0.26mol)を1時間かけて滴下した。内温は20℃から40℃まで上昇した。上記式(6)のシリコーン化合物のピークをGCでモニターしながら40℃で熟成した。4時間後に、式(6)のシリコーン化合物のピークが、GCでの検出限界以下になったことを確認し、反応液にメタノール4.0g(0.125mol)を加えた。更に、ヘキサン180g、イオン交換水180g加え水洗した。静置分離して水層をカットした後、さらに2回水洗した。有機層から溶媒のヘキサン等を減圧ストリップすることにより、無色透明液体の生成物150.6g(0.2mol、収率80%)を得た。H−NMR分析で、下記式(8)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物1という)。該シリコーン化合物のGCによる純度は97.5%であり、粘度90.0mm/s(25℃)、比重1.017(25℃)、屈折率1.4440であった。得られたシリコーン化合物のH−NMRスペクトルを図1に示す。

【化14】
【化15】
【0048】
[合成例2]
実施例1で使用した上記式(6)のシリコーン化合物205.6g(0.4mol)、脱塩酸剤トリエチルアミン50.6g(0.5mol)、ヘキサン500gを、攪拌機、ジムロート、温度計、滴下ロートを付けた、2リットルフラスコに仕込み、フラスコを水浴中で冷却しながら、メタクリル酸クロライド48.1g(0.46mol)とヘキサン50gの混合物を1時間かけて滴下した。内温は20℃から30℃まで上昇した。水浴をはずし、上記式(6)のシリコーン化合物のピークをGCでモニターしながら室温で熟成した。10時間後に、上記式(6)のシリコーン化合物のピークが、GCでの検出限界以下になったので、反応液にイオン交換水500g加え水洗した。静置分離して水層をカットした後、さらに2回水洗した。有機層から溶媒のヘキサン等を減圧ストリップすることにより、無色透明液体の生成物206gを得た。H−NMR分析で、下記式(9)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(収率89%)(以下、シリコーン化合物2という)。GC測定による該シリコーン化合物の純度は98.5%であり、粘度は5.9mm/s(25℃)であり、比重は0.944(25℃)であり、屈折率は1.4260であった。
【化16】
【0049】
[合成例3]
実施例1において上記式(7)の(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物62.1g(0.26mol)の替わりに下記式(10)で示される(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物40.3g(0.26mol) を使用した以外は、実施例1を繰り返し、無色透明液体の生成物147g(0.22mol、収率88%)を得た。H−NMR分析で、下記式(11)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物3という)。GCによる該シリコーン化合物の純度は97.3%であり、粘度32.6mm/s(25℃)、比重0.993(25℃)、屈折率1.4381であった。
【化17】
【化18】
【0050】
[合成例4]
特許文献7の実施例1に記載のシリコーン化合物を合成した。
攪拌装置、温度計、還流冷却器のついた1Lガラスフラスコに、下記式
【化19】
で示される片末端水酸基含有ポリシロキサン234.4g、下記式
OCN−C(CH)[CH−O−CO−CH=CH
で示されるイソシアネート化合物(昭和電工製:カレンズBEI)11.95g、トルエン246g、ジオクチルスズジアセテート0.25gを仕込み、100℃で8時間加熱攪拌を行なった。IRにてイソシアネートのピークが消失したことを確認し、100℃/10mmHgの条件にて減圧ストリップを行ない、トルエンを溜去し、無色透明な生成物を得た。H−NMR分析で、下記式(12)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物4という)。GPC測定の結果、下記式においてnが平均60である分布を有する混合物であった。粘度:87mm/s、揮発分(105℃/3時間):0.4%、屈折率:1.4082であった。
【化20】
【0051】
[合成例5]
エチレングリコールモノアリルエーテル76.5g(0.75mol)に代えてアリルアルコール43.5g(0.75mol)を用いた他は合成例1を繰り返し、無色透明液体であり下記式(13)で示されるシリコーン化合物223g(収率95%)を得た。GC測定による該シリコーン化合物の純度は99.6質量%であった。
【化21】
上記式(6)のシリコーン化合物128.5g(0.25mol)にかえて、上記式(13)のシリコーン化合物117.5g(0.25mol)を用いた他は実施例1を繰返し、無色透明液体の生成物145.3g(0.2mol、収率82%)を得た。H−NMR分析で、下記式(14)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物5という)。GCによる該シリコーン化合物の純度は97.8%であり、粘度75.6mm/s(25℃)、比重1.023(25℃)、屈折率1.4451であった。
【化22】
【0052】
[合成例6]
エチレングリコールモノアリルエーテル76.5g(0.75mol)に代えて、トリエチレングリコールモノアリルエーテル142.5g(0.75mol)を用いた他は合成例1を繰り返して、無色透明液体であり下記式(15)で示されるシリコーン化合物273.9g(収率91%)を得た。GC測定による該シリコーン化合物の純度は99.1質量%であった。
【化23】
上記式(6)のシリコーン化合物128.5g(0.25mol)にかえて、上記式(15)のシリコーン化合物150.5g(0.25mol)を用いた他は実施例1を繰返して無色透明液体の生成物168.2g(0.2mol、収率80%)を得た。H−NMR分析で、下記式(16)で表されるシリコーン化合物であることが確認された(以下、シリコーン化合物6という)。GCによる該シリコーン化合物の純度は97.8%であり、粘度96.2mm/s(25℃)、比重1.010(25℃)、屈折率1.437であった。
【化24】
【0053】
[評価試験]
実施例1で得られたシリコーン化合物1及び合成例2〜6で得られたシリコーン化合物2〜6を使用し、下記の評価試験を行った。比較例6ではシリコーン化合物に替えてトリエチレングリコールジメタクリレートを使用した。結果を表1に示す。
尚、下記において他の重合性モノマーとして、重合性基含有シリコーンモノマー、N,N−ジメチルアクリルアミド、トリフルオロエチルメタクリレートを使用した。重合性基含有シリコーンモノマーとしては上記合成例2で得たシリコーン化合物2を使用した。
【0054】
(1)他の重合性モノマーとの相溶性
重合性基含有シリコーンモノマー60質量部、N,N−ジメチルアクリルアミド35質量部、トリフルオロエチルメタクリレート5質量部、シリコーン化合物1〜6のいずれか1つまたはトリエチレングリコールジメタクリレート1質量部(架橋成分)、及びダロキュア1173(光重合開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.5質量部を混合し撹拌した。得られた混合物の外観を目視により観察した。シリコーン化合物と、シリコーンモノマーと、他の(メタ)アクリル化合物との相溶性が良好である混合物は無色透明になるが、相溶性が悪い混合物は濁りを生じる。
【0055】
(2)フィルム(重合体)の外観
上記(1)で調製した混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。該混合液を、石英ガラス板2枚をはさんだ鋳型に流し込み、超高圧水銀ランプで1時間照射して厚さ約0.3mmのフィルムを得た。該フィルムの外観を目視観察した。
【0056】
(3)フィルム(重合体)の水濡れ性(表面親水性)
上記(2)で製造したフィルムに対して、接触角計CA−D型(協和界面科学株式会社製)を用い、液適法にて水接触角°の測定を行った。
【0057】
(4)フィルム(重合体)の耐汚染性
上記(2)で製造したフィルムを37℃リン酸緩衝液(PBS(−))に24時間浸漬した。浸漬前および24時間浸漬した後の各フィルムを、公知の人工脂質液中にて、37℃±2℃にて8時間インキュベートした。その後、PBS(−)にて濯ぎ洗いをし、0.1%スダンブラック−胡麻油溶液に浸漬した。浸漬前後で染色状態に差異が確認されない場合を○、確認された場合を×とした。
【0058】
(5)機械的強度
上記(2)に従いフィルムを2枚作製し、その内の1枚の表面水分を拭き取った後に37℃リン酸緩衝液(PBS(一))に24時間浸漬した。PBS(一)浸漬前および24時間浸漬後のフィルム各々を幅2.0mmのダンベル形状にカットし、試験サンプルの上下端を冶具で挟み、一定速度で引張続けた際の破断強度および破断伸度を、破断試験機AGS−50NJ(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。PBS(一)に浸漬する前後での破断強度と破断伸度が10%以内の変化の場合は○とし、10%を超える減少が認められる場合は×とした。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示す通り、本発明のシリコーン化合物はシリコーンモノマー及び他の(メタ)アクリル系モノマーと良好に相溶し、無色透明な重合体を与える。特に、フッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーと良好に相溶するため、耐汚染性に優れる重合体を与える。また、得られる重合体は機械的強度に優れ水濡れ性も良好である。
【0061】
表1の比較例1の結果に示す通り、合成例2で得たシリコーン化合物2(シリコーンモノマー)は他の(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が悪く、透明な混合物及び重合体を得られない。これに対し、実施例1の結果に示す通り、シリコーンモノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの混合物に本発明のシリコーン化合物を混合すると、無色透明な混合物及び重合体を与えることができる。すなわち、本発明のシリコーン化合物は、架橋剤としての作用に加え相溶化剤としても作用する。
【0062】
シリコーン化合物3はメタクリル基を1つしか有さない。比較例2の結果に示す通り、シリコーンモノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの混合物にシリコーン化合物3を混合しても、透明な混合物及び重合体を与えることはできない。また、該重合体は耐汚染性及び水濡れ性に劣る。
【0063】
シリコーン化合物4は純度が低く、また、シリコーン鎖が長く親水性が低い。そのため他の(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が悪い。従って、比較例3の結果に示す通り、シリコーンモノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの混合物にシリコーン化合物4を混合すると白濁して透明な重合体を与えることはできない。また、該重合体は機械的強度、耐汚染性及び水濡れ性に劣る。
【0064】
シリコーン化合物5はスペーサー部分にエチレンオキサイドを有さない。該シリコーン化合物は親水性が低く、他の(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性に劣る。そのため比較例4の結果に示す通り透明な重合体を与えることができない。また、該重合体は耐汚染性及び水濡れ性に劣る。
【0065】
シリコーン化合物6はスペーサー部分にエチレンオキサイドを2個以上有する。該シリコーン化合物は親水性が高く、シリコーンモノマーとの相溶性に劣る。そのため比較例5の結果に示す通り透明な重合体を与えることができない。また、該シリコーン化合物6はポリエーテルスペーサー鎖長が長いため、得られる重合体は機械的強度に劣る。さらに該重合体は耐汚染性にも劣る。
【0066】
比較例6の結果に示す通り、トリエチレングリコールジメタクリレートはシリコーン鎖を含まずシリコーンモノマーとの相溶性に劣る。そのため、透明な重合体を与えることができない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の化合物は、他の重合性モノマー、特には、(メタ)アクリル系シリコーンモノマー及びフッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーと良好に相溶する。本発明の化合物を重合成分として含む重合体は、酸素透過性を有し、無色透明であり、機械的強度に優れる。さらには、親水性(水濡れ性)及び耐汚染性に優れる重合体となる。また、本発明の製造方法によれば、特定の構造を有する1種類の化合物を高純度で含有する化合物を提供することができ、透明度の高い重合体を与えることができる。従って、本発明の化合物及び該化合物の製造方法は、コンタクトレンズ材料、眼内レンズ材料、及び人工角膜材料など、眼科デバイスの製造のために有用である。
図1