(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の前記接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハ。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物によって、半導体素子と、半導体素子搭載用支持部材又は他の半導体素子とが接着された構造を有する、半導体装置。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と、半導体素子搭載用支持部材又は他の半導体素子とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)放射線重合性化合
物と、(C)光開始剤と、(D)1分間半減期温度が120℃以上である熱ラジカル発生剤、及び(E)熱硬化性樹脂を含有する。以下、各成分について説明する。
【0031】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、又はそれらの共重合体、それらの前駆体(ポリアミド酸)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、及びフェノール樹脂、並びに、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖にエーテル基及び/又はカルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
また、(A)アルカリ可溶性樹脂としては、良好な現像性が得られる点で、アルカリ可溶性基を有する樹脂が好ましく、アルカリ可溶性基を末端又は側鎖に有する樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性基としては、例えば、エチレングリコール基、カルボキシル基、水酸基、スルホニル基、及びフェノール性水酸基等が挙げられる。このような官能基を有するアルカリ可溶性樹脂は、上記官能基を1種又は2種類以上有することができる。
【0033】
後述の本発明のフィルム状接着剤のウェハ裏面への貼り付け温度は、半導体ウェハの反りを抑えるという観点から、20〜150℃であることが好ましく、25〜100℃であることが特に好ましい。上記温度での貼り付けを可能にするためには、フィルム状接着剤のガラス転移温度(以下、「Tg」と記す。)を150℃以下にすることが好ましい。このような観点から、(A)アルカリ可溶性樹脂のTgは、150℃以下であることが好ましく、−20℃〜150℃であることがより好ましい。アルカリ可溶性樹脂のTgが150℃を超えると、ウェハ裏面への貼り付け温度が150℃を超える可能性が高くなり、ウェハ裏面への貼合せ後の反りが発生し易くなる傾向にあり、Tgが−20℃未満であると、Bステージ状態でのフィルム表面のタック性が強くなり過ぎて、取り扱い性が悪くなる傾向にある。後述するポリイミド樹脂の組成を決定する際には、Tgが150℃以下となるように設計することが好ましい。
【0034】
また、(A)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で制御されていることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましく、10000〜100000であることが更に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好なものとなり、また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差への良好な埋込性を確保することが可能となる。なお、上記重量平均分子量が5000未満であると、フィルム形成性が悪くなる傾向があり、500000を超えると、熱時流動性が悪くなり、基板上の凹凸に対する埋込性が悪くなる傾向があり、また、樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。
【0035】
(A)アルカリ可溶性樹脂のTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ウェハ裏面への貼り付け温度を低く抑えることができるとともに、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、半導体素子の反りをより有効に抑制することができる。また、ダイボンディング時の接着性を左右する流動性や現像性をより有効に付与することができる。
【0036】
なお、上記のTgは、(A)アルカリ可溶性樹脂をフィルム化したものについて、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」(商品名)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件でtanδピーク温度(主分散ピーク温度)を測定し、これをTgとした。また、上記の重量平均分子量とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量である。
【0037】
(A)アルカリ可溶性樹脂は、耐熱性、接着性、フィルムの成膜性の点で、ポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルで、又は必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0モルに対して、ジアミンの合計を好ましくは0.5〜2.0モル、より好ましくは0.8〜1.0モルの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応をさせる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0038】
なお、上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0モルに対して、ジアミンの合計が2.0モルを超えると、得られるポリイミド樹脂中に、アミン末端を有するポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、感光性接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。一方、ジアミンの合計が0.5モル未満であると、酸末端を有するポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、感光性接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。
【0039】
ポリイミド樹脂は、上記反応物であるポリアミド酸を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0040】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、及び下記一般式(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【化2】
[式中、aは2〜20の整数を示す。]
【0041】
上記一般式(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができる。なお、ジオールは特に制限されない。上記一般式(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、及び1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0042】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶媒への良好な溶解性及び耐湿信頼性、365nm光に対する透明性を付与する観点から、下記式(6)又は(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【化3】
【化4】
【0043】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
ポリイミド樹脂がカルボキシル基及び/又は水酸基を有するものである場合、そのポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては、下記式(8)、(9)、(10)又は(11)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。これら下記式(8)〜(11)で表されるジアミンは、ポリイミド樹脂の原料として使用するジアミン全体の1〜100モル%とすることが好ましく、3〜80モル%とすることがさらに好ましく、5〜50モル%とすることが最も好ましい。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0045】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(13)で表される脂肪族ジアミン、及び下記一般式(14)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0046】
【化9】
(式中、Q
1、Q
2及びQ
3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n
1は1〜80の整数を示す。)
【0047】
【化10】
(式中、cは5〜20の整数を示す。)
【0048】
【化11】
[式中、Q
4及びQ
9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q
5、Q
6、Q
7及びQ
8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【0049】
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性、有機溶媒に対する可溶性、及びアルカリ可溶性を付与できる点で、上記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが好ましい。さらに、上記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンは、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンであることがさらに好ましい。このような脂肪族エーテルジアミンとしては、具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2000,EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、ポリイミド樹脂の原料として使用するジアミン全体の1〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることがより好ましい。この割合が1モル%未満であると、低温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が損なわれる傾向にある。
【0050】
また、室温でのフィルム状接着剤に密着性、接着性を付与する観点から、上記一般式(14)で表されるシロキサンジアミンを用いることが好ましい。これらのジアミンは、ポリイミド樹脂の原料として使用するジアミン全体の0.5〜80モル%とすることが好ましく、1〜50モル%とすることがさらに好ましい。1モル%未満であるとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなる傾向があり、50モル%を超えると他成分との相溶性、高温接着性及び現像性が低下する傾向がある。
【0051】
上記一般式(14)で表されるシロキサンジアミンとしては、具体的には、式(14)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、又は1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、及び1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0052】
上述したジアミンは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
また、上記ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種類以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0054】
また、上述したように、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが好ましい。
【0055】
本発明の感光性接着剤組成物において、(A)アルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として5〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が、5質量%未満であると、パターン形成性が損なわれる傾向があり、90質量%を超えると、パターン形成性及び接着性が低下する傾向がある。
【0056】
(A)アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶液への溶解性が乏しい場合、溶解補助剤として、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂及び/又は親水性基を有する樹脂を添加しても良い。親水性基を有する樹脂とは、アルカリ可溶性の樹脂であれば特に限定はしないが、エチレングリコール、プロピレングリコール基のようなグリコール基等が挙げられる。
【0057】
(B)放射線重合性化合物としては、多官能アクリレートであることが好ましい。このようなアクリレートとしては制限がないが、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(16)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【化12】
[式中、R
41及びR
42は各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、f及びgは各々独立に、1〜20の整数を示す。]
【0058】
以上のような化合物の他、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、及びカルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等を使用することができる。
【0059】
これらの放射線重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、上記一般式(16)で示されるグリコール骨格を有する放射線重合性化合物は、アルカリ可溶性、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、イソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及びメタクリレートは硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
【0060】
これらの放射線重合性化合物のうち、配合する放射線重合性化合物を官能基当量の高い放射線重合性化合物を選定することで低応力化、低反り化を確保することが可能となる。官能基当量の高い放射線重合性化合物とは、重合官能基当量が200eq/g以上であることが好ましく、300eq/g以上であることがより好ましく、400eq/g以上であることがさらに好ましい。本発明の感光性接着剤組成物において、現像性、接着性が良好であり、かつ低応力化、低反り化が必要な場合、(B)放射線重合性化合物として重合官能基当量が200eq/g以上のグリコール骨格及び/又はウレタン基及び/又はイソシアヌル基を有する放射線重合性化合物を用いるのが好ましい。
【0061】
本発明の感光性接着剤組成物において、(B)放射線重合性化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して20〜300質量部であることが好ましく、30〜250質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、20質量部未満であると、露光による光硬化後の耐アルカリ性が低くなりパターンを形成するのが困難となる、つまり現像前後の膜厚変化が大きくなる及び/又は残渣が多くなる傾向にある。
【0062】
本発明で用いられる(C)光開始剤は、光に対する感度の向上といった点で波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/(g・cm)以上であることが好ましく、2000ml/(g・cm)以上であることがより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。
【0063】
感光性接着剤組成物を膜厚30μm以上の接着剤層とする場合には、感度向上、内部硬化性向上の観点から、光照射によってブリーチングするものがより好ましい。このような光開始剤としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド等の中からUV照射によって光退色する化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
本発明の感光性接着剤組成物が後述する(E)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、放射線の照射によりエポキシ樹脂の重合を促進する機能を発現する光開始剤を含有させてもよい。放射線照射によりエポキシ樹脂の重合を促進する機能を発現する光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤等が挙げられる。
【0065】
本発明の感光性接着剤組成物においては、さらに光塩基発生剤を用いることが好ましい。この場合、感光性接着剤組成物の被着体への高温接着性及び耐湿信頼性を更に向上させることができる。この理由としては、上記化合物から生成した塩基がエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用することにより、架橋密度をより一層高めることができるため、また生成した硬化触媒が基板等を腐食することが少ないためと考えられる。
【0066】
また、感光性接着剤組成物に光塩基発生剤を含有させることにより、架橋密度を向上させることができ、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。また、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができる。
【0067】
ところで、感光性接着剤組成物に含有される(A)アルカリ可溶性樹脂におけるカルボキシル基及び/又は水酸基の含有割合が高くなると、硬化後の吸湿率の上昇及び吸湿後の接着力の低下が懸念される。これに対して、上記の感光性接着剤組成物(光塩基発生剤を含むもの)によれば、放射線の照射により塩基を発生する化合物が配合されることにより、上記のカルボキシル基及び/又は水酸基とエポキシ樹脂との反応後に残存するカルボキシル基及び/又は水酸基を低減させることができ、耐湿信頼性、接着性、及びパターン形成性をより高水準で両立することが可能となる。
【0068】
また、光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標としてpHが使用され、発生する塩基は水溶液中でのpH値が7以上の塩基が好ましく、さらに9以上の塩基がより好ましい。
【0069】
このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、及びベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0070】
放射線照射によって上記のような塩基を発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314頁(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176頁(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0071】
また、光塩基発生剤としては、Journal of the American Chemical Society 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体を用いることができる。
【0072】
また、活性光線の照射により1級のアミノ基を発生する下記一般式(21)で表されるオキシム誘導体や光ラジカル発生剤として市販されている2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、及びベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0073】
【化13】
(式中、R
51及びR
52はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は芳香族系炭化水素基を含む有機基を示し、R
53は、炭素数1〜7のアルキル基、又は芳香族系炭化水素基を含む有機基を示す。)
【0074】
上記芳香族系炭化水素基としては、特に制限はしないが、例えば、フェニル基及びナフチル基などが挙げられる。また、芳香族系炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0075】
また、光塩基発生剤は、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いても良い。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性の観点から重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0076】
上記の光塩基発生剤は、室温で放射線を照射しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での保存安定性は非常に優れているという特徴を持つ。
【0077】
本発明の感光性接着剤組成物においては、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキサイド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、及びアジド基を含む化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
【0078】
(D)熱ラジカル発生剤は、1分間半減期温度が120℃以上のものを使用するが、150℃以上のものであることがより好ましい。(D)熱ラジカル発生剤としては、例えば、アゾ化合物や過酸化物、フェニル置換エタン系、ジチオカルバメート系、ニトロキシル系などが挙げられる。熱時のラジカル発生効率の観点から、熱ラジカル発生剤は(D1)有機過酸化物であることが好ましい。(D1)有機過酸化物としては、感光性接着剤組成物の調製条件、製膜温度、硬化(貼り合せ)条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及びビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0079】
また、1分間半減期温度が120℃以上である熱ラジカル発生剤として、例えば、パーヘキサ25B:日油社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD:日油社製、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)等が商業的に入手可能である。
【0080】
(D)熱ラジカル発生剤の添加量は、配合している(B)放射線重合性化合物の全量に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%がさらに好ましく、0.5〜5重量%が最も好ましい。添加量が0.01重量%未満であると硬化性が低下し、(D)熱ラジカル発生剤成分の効果が小さくなり、20重量%を超えると熱ラジカル発生剤から発生するアウトガス量の増加、保存安定性低下が見られる。
【0081】
本発明で用いられる(E)熱硬化性樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、硬化性や硬化物特性の点からフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキサイド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキサイド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、及びナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
また、(E)熱硬化性樹脂は、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0083】
本発明の感光性接着剤組成物において、(E)熱硬化性樹脂の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が50質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が0.1質量部未満であると、高温接着性が低くなる傾向がある。
【0084】
本発明の感光性接着剤組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂の硬化剤を含有させることができる。この硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、又は第3級アミン等が挙げられる。これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、及びフェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜4000の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0085】
更に、本発明の感光性接着剤組成物には、必要に応じて、加熱によってエポキシの硬化/重合を促進する硬化促進剤を含有させることができる。この硬化促進剤としては、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、マスクイソシアネート、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。感光性接着剤組成物における硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。この含有量が0.01質量部未満であると効果が現れにくい傾向にあり、一方、50質量部を超えると、保存安定性が低下する傾向がある。
【0086】
更に、本発明の感光性接着剤組成物においては、フィラーを使用することもできる。上記フィラーとしては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、及びゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0087】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、感光性接着剤組成物に導電性、熱伝導性、及びチキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、及び低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、及び絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー、又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好でかつ、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラーがより好ましい。
【0088】
上記フィラーの平均粒子径は、好ましくは10μm以下、最大粒子径は30μm以下であり、平均粒子径が5μm以下、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、かつ最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が得られ難い傾向がある。下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0089】
上記フィラーは、平均粒子径10μm以下、及び最大粒子径は30μm以下の両方を満たすことが好ましい。最大粒子径が30μm以下であるが平均粒子径が10μmを超えるフィラーを使用すると、高い接着強度が得られ難くなる傾向がある。また、平均粒子径は10μm以下であるが最大粒子径が30μmを超えるフィラーを使用すると、粒径分布が広くなり接着強度にばらつきが出やすくなる傾向があるとともに、感光性接着剤組成物をフィルム状に加工して使用する際、表面が粗くなり接着力が低下する傾向がある。
【0090】
上記フィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、200個程度のフィラーの粒径を測定する方法等が挙げられる。SEMを用いた測定方法としては、例えば、接着剤層を用いて半導体素子と半導体搭載用支持部材とを接着した後、加熱硬化(好ましくは150〜200℃で1〜10時間)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を切断して、その断面をSEMで観察する方法等が挙げられる。このとき、粒子径30μm以下のフィラーの存在確率が全フィラーの80%以上であることが好ましい。
【0091】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記フィラーの含有量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーとの合計に対して1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。フィラーを増量させることにより、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度、信頼性を有効に向上できる。フィラーを必要以上に増量させると、熱圧着性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、及びボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0092】
本発明の感光性接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、又はアルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基等の熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレート等の放射線重合性基を有する化合物がより好ましい。また、上記シラン系カップリング剤の沸点及び/又は分解温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらにより好ましい。本発明においては、200℃以上の沸点及び/又は分解温度で、かつエポキシ基等の熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレート等の放射線重合性基を有するシラン系カップリング剤が最も好ましく用いられる。
【0093】
上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0094】
本発明の感光性接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。具体例としては、特に限定はしないが東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤であるIXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等(いずれも商品名)が挙げられる。これらは単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0095】
上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0096】
さらに、本発明の感光性接着剤組成物には、保存安定性、プロセス適応性、及び酸化防止性を付与するために、重合禁止剤及び酸化防止剤として、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤及び酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で予め添加してもよい。
【0097】
図1は、本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すフィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。
図2は、本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示す接着シート100は、基材3と、この一方の面上に設けられたフィルム状接着剤1からなる接着剤層とから構成される。
図3は、本発明に係る接着シートの他の実施形態を示す模式断面図である。
図3に示す接着シート110は、基材3と、この一方の面上に設けられたフィルム状接着剤1からなる接着剤層とカバーフィルム2とから構成される。
【0098】
フィルム状接着剤1は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)放射線重合性化合物、(C)光開始剤、(D)1分間半減期温度が120℃以上である熱ラジカル発生剤、及び(E)熱硬化性樹脂、並びに、必要に応じて添加される他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥させた後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100、110の状態で保存及び使用することもできる。
【0099】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、及びボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。なお、乾燥中に(E)熱硬化性樹脂等が十分には反応しない温度及び/又は熱ラジカル発生剤の1分間半減期温度より20℃以上低い温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。乾燥前の上記ワニス層の好ましい厚みは1〜200μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が損なわれる傾向にあり、200μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向にある。
【0100】
得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が損なわれる傾向にあり、また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料、あるいは部材を汚染する可能性も高くなる傾向がある。なお、上記の残存揮発成分の算出方法は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、〔(M2−M1)/M1〕×100=残存揮発分(%)とした時の値である。
【0101】
また、上記の熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0102】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0103】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、又はメチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種類以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤等で処理されたものであってもよい。
【0104】
また、本発明のフィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は放射線硬化型のどちらでも良い。また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0105】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、
図4に示すように、基材フィルム7、粘着剤層6及び本発明のフィルム状接着剤1がこの順に形成されてなる接着シート120が挙げられる。
【0106】
図5は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、
図6は
図5のIV−IV線に沿った端面図である。
図5、6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、この一方の面上に設けられた上記感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0107】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。フィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物からなるフィルムであるため、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。
【0108】
図7、
図9は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、
図8は
図7のV−V線に沿った端面図であり、
図10は
図9のVI―VI線に沿った端面図である。
図7、8、9、10に示す接着剤パターン1a及び1bは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0109】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなる接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ8上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を得、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。また、これにより、接着剤パターン1a,1bが形成された接着剤層付半導体ウェハ20a,20bが得られる。
【0110】
本発明のフィルム状接着剤の用途として、フィルム状接着剤を備える半導体装置について図面を用いて具体的に説明する。なお、近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明のフィルム状接着剤の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0111】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図11に示す半導体装置において、半導体素子12は本発明のフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0112】
また、
図12は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図12に示す半導体装置210において、一段目の半導体素子12aは本発明のフィルム状接着剤1を介して、端子16が形成された半導体素子搭載用支持部材13に接着され、一段目の半導体素子12aの上に更に本発明のフィルム状接着剤1を介して二段目の半導体素子12bが接着されている。一段目の半導体素子12a及び二段目の半導体素子12bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ14を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。このように、本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0113】
図11及び
図12に示す半導体装置(半導体パッケージ)は、例えば、
図9に示す半導体ウェハ20bを破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後のフィルム状接着剤付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃が好ましく、荷重は、通常、0.01〜20kgfが好ましく、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間が好ましい。
【0114】
また、
図13は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す断面図である。半導体装置201は、接続端子(第1の接続部:図示せず)を有する基板(第1の被着体)203と、接続用電極部(第2の接続部:図示せず)を有する半導体素子(第2の被着体)205と、本発明の感光性接着剤組成物を硬化させてなる絶縁樹脂層207と、導電材からなる導電層209とを備えている。基板203は、半導体素子205と対向する回路面211を有しており、半導体素子205と所定の間隔をおいて配置されている。絶縁樹脂層207は、基板203及び半導体素子205の間において、基板203及び半導体素子205それぞれと接して形成されており、所定のパターンを有している。導電層209は、基板203及び半導体素子205の間における、絶縁樹脂層207が配置されていない部分に形成されている。半導体素子205の接続用電極部は、導電層209を介して基板203の接続端子と電気的に接続されている。
【0115】
図14〜
図18は、
図13に示す半導体装置201の製造方法の一実施形態を示す断面図である。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、接続端子を有する基板203上に本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207(ここでは、パターン形成及び硬化がなされていない接着剤層)を設ける工程(第1の工程:
図14及び
図15)と、絶縁樹脂層207を露光及び現像により、接続端子が露出する開口213が形成されるようにパターニングする工程(第2の工程:
図16及び
図17)と、開口213に導電材を充填して導電層209を形成する工程(第3の工程:
図18)と、接続用電極部を有する半導体素子205を、基板203と絶縁樹脂層207(ここでは、パターン形成された接着剤層)との積層体の絶縁樹脂層207に直接接着すると共に、基板203の接続端子と半導体素子205の接続用電極部とを導電層209を介して電気的に接続する工程(第4の工程)と、を備える。
【0116】
図14に示される基板203の回路面211上に、本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207(ここでは、パターン形成及び硬化がなされていない接着剤層)が設けられる(
図15)。本実施形態においては、予め本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤を準備し、これを基板203に貼り付ける方法が簡便である。なお、絶縁樹脂層は、スピンコート法などを用いて本発明の感光性接着剤組成物を含有する液状のワニスを基板203に塗布し、加熱乾燥する方法により設けてもよい。
【0117】
本発明の感光性接着剤組成物からなる上記絶縁樹脂層207は、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤として機能することができ、露光及び現像によってパターニングされた後に半導体素子及び基板等の被着体に対する低温熱圧着性を十分有することができる。例えば、レジストパターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、レジストパターンと被着体とを接着することが可能である。係る機能を有する本発明の感光性接着剤組成物の詳細については前述のとおりである。
【0118】
基板203上に設けられた本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207に対して、所定の位置に開口が形成されているマスク215を介して活性光線(典型的には紫外線)を照射する(
図16)。これにより絶縁樹脂層207が所定のパターンで露光される。
【0119】
露光後、絶縁樹脂層207のうち露光されなかった部分を、アルカリ現像液を用いた現像によって除去することにより、基板203の接続端子が露出する開口213が形成されるように絶縁樹脂層207がパターニングされる(
図17)。
【0120】
得られたレジストパターンの開口213に導電材を充填して導電層209を形成する(
図18)。導電材の充填方法は、グラビア印刷、ロールによる押し込み、減圧充填等各種の方法が採用できる。ここで使用する導電材は、半田、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属、又は、金属酸化物等からなる電極材料、上記金属のバンプの他、例えば、導電性粒子と樹脂成分とを少なくとも含有してなるものが挙げられる。前記導電性粒子としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属若しくは金属酸化物、又は有機金属化合物等の導電性粒子が用いられる。また、樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂及びその硬化剤等の熱硬化性樹脂組成物が用いられる
【0121】
基板203上の絶縁樹脂層207(ここでは、パターン形成された接着剤層)に対して、半導体素子205が直接接着される。半導体素子205の接続用電極部は、導電層209を介して基板203の接続端子と電気的に接続される。なお、半導体素子205における絶縁樹脂層207と反対側の回路面上に、パターン化された絶縁樹脂層(バッファーコート膜)が形成されていてもよい。
【0122】
半導体素子205の接着は、例えば、パターン形成された接着剤層が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により絶縁樹脂層207を加熱して更に硬化を進行させる。
【0123】
半導体素子205における絶縁樹脂層207と反対側の回路面(裏面)には、裏面保護フィルムを貼り付けることが好ましい。
【0124】
以上により、
図13に示すような構成を有する半導体装置201が得られる。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0125】
例えば、本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層は、最初に基板203上に設けられることに限られるものではなく、半導体素子205上に最初に設けることもできる。この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、接続用電極部を有する半導体素子205上に本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207を設ける第1の工程と、絶縁樹脂層207を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口213が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口213に導電材を充填して導電層209を形成する第3の工程と、接続端子を有する基板203を、半導体素子205と絶縁樹脂層207との積層体の絶縁樹脂層207に直接接着すると共に、基板203の接続端子と半導体素子205の接続用電極部とを導電層209を介して電気的に接続する第4の工程と、を備える。
【0126】
上記製造方法では、それぞれ個片化された基板203及び半導体素子205間の接続であるため、基板203上の接続端子と半導体素子205上の接続用電極部との接続が容易である点において好ましい。
【0127】
また、本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層は、複数の半導体素子205から構成される半導体ウェハ上に最初に設けることもできる。この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、接続用電極部を有する複数の半導体素子205から構成される半導体ウェハ217上に本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207を設ける第1の工程(
図19)と、絶縁樹脂層207を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口213が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口213に導電材を充填して導電層29を形成する第3の工程と、接続端子を有するウェハサイズの基板(半導体ウェハと同程度の大きさを有する基板)203を、半導体ウェハ217と絶縁樹脂層207との積層体の絶縁樹脂層207に直接接着すると共に、基板203の接続端子と半導体ウェハ217を構成する半導体素子205の接続用電極部とを導電層209を介して電気的に接続する第4の工程と、半導体ウェハ217と絶縁樹脂層207と基板203との積層体を半導体素子205ごとに切り分ける(ダイシング)第5の工程と、を備える。
【0128】
また、上記製造方法は、第1の工程において、ウェハサイズの基板203上に本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207を設け、第4の工程において、半導体ウェハ217を、基板203と絶縁樹脂層207との積層体の絶縁樹脂層207に直接接着すると共に、基板203の接続端子と半導体ウェハ217を構成する半導体素子205の接続用電極部とを導電層209を介して電気的に接続し、第5の工程において、半導体ウェハ217と絶縁樹脂層207と基板203との積層体を半導体素子205ごとに切り分けてもよい。
【0129】
上記製造方法では、半導体ウェハ217と基板203との接続までの工程(第4の工程)をウェハサイズでできるので作業効率の点において好ましい。なお、半導体ウェハ217における絶縁樹脂層207と反対側の回路面(裏面)には、裏面保護フィルムを貼り付けることが好ましい。
【0130】
また、他の半導体装置の製造方法は、接続用電極部を有する複数の半導体素子205から構成される半導体ウェハ217上に本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207を設ける第1の工程と、絶縁樹脂層207を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口213が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口213に導電材を充填して導電層209を形成する第3の工程と、半導体ウェハ217と絶縁樹脂層207との積層体を半導体素子205ごとに切り分ける(ダイシング)第4の工程と、接続端子を有する基板203を、個片化された半導体素子205と絶縁樹脂層207との積層体の絶縁樹脂層207に直接接着すると共に、基板203の接続端子と半導体素子205の接続用電極部とを導電層209を介して電気的に接続する第5の工程と、を備える。
【0131】
また、上記製造方法は、第1の工程において、ウェハサイズの基板203上に本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207を設け、第4の工程において、ウェハサイズの基板203と絶縁樹脂層207との積層体を半導体素子205ごとに切り分け、第5の工程において、半導体素子205を、個片化された基板203と絶縁樹脂層207との積層体の絶縁樹脂層207に直接接着すると共に、基板203の接続端子と半導体素子205の接続用電極部とを導電層209を介して電気的に接続してもよい。
【0132】
上記製造方法では、感光性接着剤として機能する絶縁樹脂層の形成から導電材の充填工程(第3の工程)までをウェハサイズで行え、またダイシング工程(第4の工程)をスムーズにできる点において好ましい。
【0133】
また、本発明の感光性接着剤組成物を用いて、半導体ウェハ同士又は半導体素子同士を接着することにより半導体積層体を構成することができる。この積層体には、貫通電極を形成することも可能である。
【0134】
この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、貫通電極の接続用電極部を有する第1の半導体素子205上に本発明の感光性接着剤組成物からなる絶縁樹脂層207を設ける第1の工程と、絶縁樹脂層207を露光及び現像により、上記接続用電極部が露出する開口213が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口213に導電材を充填して貫通電極接続を形成する第3の工程と、接続用電極部を有する第2の半導体素子205を、第1の半導体素子205と絶縁樹脂層207との積層体の絶縁樹脂層207に直接接着すると共に、第1及び第2の半導体素子205の接続用電極部同士を導電層209を介して電気的に接続する第4の工程と、を備える。上記製造方法において、半導体素子に替えて、半導体ウェハを用いてもよい。
【0135】
図20、21、22、23、24及び25は、本発明に係る半導体装置の製造方法の他の一実施形態を示す端面図又は平面図である。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体ウェハ302内に形成された半導体素子320の回路面325上に本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層301を設ける工程(
図20(a)、(b))と、半導体素子320の回路面325上に設けられた接着剤層301を露光及び現像によってパターニングする工程(
図20(c)、
図21(a))と、半導体素子302を回路面325とは反対側の面から研磨して半導体素子302を薄くする工程(
図21(b))と、半導体ウェハ302をダイシングにより複数の半導体素子320に切り分ける工程(
図21(c)、
図23(a))と、半導体素子320をピックアップして半導体装置用の板状の支持基材307にマウントする工程(
図23(b)、
図24(a))と、支持基材307にマウントされた半導体素子320の回路面上でパターニングされた接着剤層301に2層目の半導体素子321を直接接着する工程(
図24(b))と、各半導体素子320,321を外部接続端子と接続する工程(
図25)とを備える。
【0136】
図20(a)に示される半導体ウェハ302内には、ダイシングライン390によって区分された複数の半導体素子320が形成されている。この半導体素子320の回路面325側の面に接着剤層301が設けられる(
図20(b))。本実施形態においては、予め本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤を準備し、これを半導体ウェハ302に貼り付ける方法が簡便である。なお、接着剤層は、スピンコート法などを用いて本発明の感光性接着剤組成物を含有する液状のワニスを半導体ウェハ302に塗布し、加熱乾燥する方法により設けてもよい。
【0137】
本発明の感光性接着剤組成物からなる上記接着剤層301は、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤として機能することができ、露光及び現像によってパターニングされた後に半導体素子及び基板等の被着体に対する低温熱圧着性を十分有することができる。例えば、レジストパターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、レジストパターンと被着体とを接着することが可能である。係る機能を有する本発明の感光性接着剤組成物の詳細については前述のとおりである。
【0138】
半導体ウェハ302上に設けられた接着剤層301に対して、所定の位置に開口を形成しているマスク303を介して活性光線(典型的には紫外線)を照射する(
図20(c))。これにより接着剤層301が所定のパターンで露光される。
【0139】
露光後、接着剤層301のうち露光されなかった部分をアルカリ現像液を用いた現像によって除去することにより、開口311が形成されるように接着剤層301がパターニングされる(
図21(a))。
【0140】
図22は、接着剤層301がパターニングされた状態を示す平面図である。なお、
図22におけるII−II線に沿った端面図が
図21(a)である。開口311において半導体素子320のボンディングパッドが露出する。すなわち、パターニングされた接着剤層301は、半導体素子320のバッファーコート膜である。矩形状の開口311は、各半導体素子320上に複数並んで形成されている。開口311の形状、配置及び数は本実施形態のような形態に限られるものではなく、ボンディングパッド等の所定の部分が露出するように適宜変形が可能である。
【0141】
パターニングの後、半導体ウェハ302の接着剤層301とは反対側の面を研磨して、半導体ウェハ302を所定の厚さまで薄くする(
図21(b))。研磨は、例えば、接着剤層301上に粘着フィルムを貼り付け、粘着フィルムによって半導体ウェハ302を研磨用の治具に固定して行われる。
【0142】
研磨後、半導体ウェハ302の接着剤層301とは反対側の面に、ダイボンディング材330及びダイシングテープ340を有しこれらが積層している複合フィルム305が、ダイボンディング材330が半導体ウェハ302に接する向きで貼り付けられる。貼り付けは必要により加熱しながら行われる。
【0143】
次いで、ダイシングライン390に沿って半導体ウェハ302を複合フィルム305とともに切断することにより、半導体ウェハ302が複数の半導体素子320に切り分けられる(
図23(a))。このダイシングは、例えば、ダイシングテープ340によって全体をフレームに固定した状態でダイシングブレードを用いて行われる。
【0144】
ダイシングの後、半導体素子320及びその裏面に貼り付けられたダイボンディング材330とともにピックアップされる(
図23(b))。ピックアップされた半導体素子320は、支持基材307にダイボンディング材330を介してマウントされる(
図24(a))。
【0145】
支持基材307にマウントされた半導体素子320上の接着剤層301に対して、2層目の半導体素子321が直接接着される(
図24(b))。言い換えると、半導体素子320と、その上層に位置する半導体素子321とが、それらの間に介在するパターニングされた接着剤層301(バッファーコート膜)によって接着される。半導体素子321は、パターニングされた接着剤層301のうち開口311は塞がれないような位置に接着される。なお、半導体素子321の回路面上にもパターニングされた接着剤層301(バッファーコート膜)が形成されている。
【0146】
半導体素子321の接着は、例えば、接着剤層301が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により接着剤層301を加熱して更に硬化を進行させる。
【0147】
その後、半導体素子320はそのボンディングパッドに接続されたワイヤ380を介して支持基材307上の外部接続端子と接続され、半導体素子321はそのボンディングパッドに接続されたワイヤ381を介して支持基材307上の外部接続端子と接続される。そして、複数の半導体素子を含む積層体を封止樹脂層360によって封止して、半導体装置300が得られる(
図25)。
【0148】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、接着剤層の形成若しくはフィルム状接着剤の貼り付け、ダイシング、露光及び現像、並びに半導体ウェハの研磨の各工程の順序を適宜入れ替えることが可能である。
図26に示すように、接着剤層301が設けられた半導体ウェハ302を研磨により薄くした後、ダイシングを行ってもよい。この場合、ダイシング後、露光及び現像によって接着剤層301をパターニングして、
図23(a)と同様の積層体が得られる。あるいは、研磨により薄くし半導体ウェハをダイシングしてから、接着剤層301の形成とその露光及び現像を行ってもよい。また、3層以上の半導体素子が積層されていてもよく、その場合、少なくとも1組の隣り合う半導体素子同士が、パターニングされた感光性接着剤(下層側のバッファーコート膜)によって直接接着される。
【0149】
図27〜
図34は、本発明に係る半導体装置の製造方法の他の一実施形態を示す端面図又は平面図である。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、互いに対向する表面(第1の主面)403a及び裏面(第2の主面)403bを有するガラス基板403の表面403a上に本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層407を設ける工程(
図27及び
図28)と、裏面403b側から光を照射して接着剤層407を露光し、現像により接着層407をパターニングする工程(
図29〜
図31)と、パターニングされた接着剤層407に半導体素子405をその回路面がガラス基板403側に向くように直接接着する工程(
図32)と、互いに接着されたガラス基板403と半導体素子405とをダイシングして複数の半導体装置401に切り分ける工程(
図33及び
図34)と、を備える。
【0150】
図27に示されるガラス基板403の表面403a上に、本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層407が設けられる(
図28)。本実施形態においては、予め本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤を準備し、これをガラス基板403に貼り付ける方法が簡便である。
【0151】
本発明の感光性接着剤組成物からなる上記接着剤層407は、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤として機能することができ、露光及び現像によってパターニングされた後に半導体素子及びガラス基板等の被着体に対する低温熱圧着性を十分有することができる。例えば、レジストパターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、レジストパターンと被着体とを接着することが可能である。係る機能を有する本発明の感光性接着剤組成物の詳細については前述のとおりである。
【0152】
ガラス基板403の表面403a上に設けられた接着剤層407に対して、所定の位置に開口が形成されているマスク411をガラス基板403の裏面403b上に配置し、マスク411を介して裏面403b側から活性光線(典型的には紫外線)を照射する(
図29)。これにより、活性光線はガラス基板403を透過して接着剤層407に照射され、接着剤層407は光硬化が進行して所定のパターンで露光される。
【0153】
露光後、接着剤層407は、アルカリ現像液を用いた現像によって、接着剤層407の露光されなかった部分を除去することによりパターニングされる(
図30)。接着剤層407は略正方形の辺に沿ったパターンを有するように形成されている(
図31)。なお、ネガ型に代えてポジ型の感光性接着剤を用いることも可能であり、その場合は接着剤層407のうち露光された部分が現像により除去される。
【0154】
半導体素子405の回路面上に設けられた複数の有効画素領域415が、略正方形の辺に沿ったパターンに形成された接着層407にそれぞれ囲まれ、半導体素子405の回路面がガラス基板403側に向くように、半導体素子405が接着剤層407に直接接着される(
図32)。接着剤層407は、半導体素子405を接着すると共に、有効画素領域415を囲む空間を確保するためのスペーサとしても機能している。半導体素子405の接着は、例えば、接着剤層407が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により接着剤層407を加熱して更に硬化を進行させる。
【0155】
半導体素子405を接着した後、破線Dに沿ったダイシングにより(
図33)、
図34に示される半導体装置401が複数得られる。この場合、半導体素子405の回路面とは反対側の面にダイシングフィルムを貼り付け、ガラス基板403及び半導体素子405をダイシングフィルムと共に切断することにより複数の半導体装置401が得られる。このダイシングは、例えば、ダイシングフィルムによって全体をフレームに固定した状態でダイシングブレードを用いて行われる。
【0156】
本発明に係る半導体装置の製造方法は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0157】
半導体装置401は、CMOSセンサ、CCDセンサ等の電子部品を製造するために好適に用いられる。
図35は、本発明に係る半導体装置の製造方法により製造された半導体装置を用いたCMOSセンサを示す端面図である。CMOSセンサ430は、固体撮像素子としての半導体装置401を備える電子部品である。半導体装置401は、複数の導電性バンプ432を介して半導体素子搭載用支持基材434上の接続端子(図示せず)と電気的に接続されている。なお、導電性バンプ432を用いて半導体装置401が接着された構成に代えて、導電性ワイヤを介して半導体装置401が半導体素子搭載用支持基材434上の接続端子に接続された構成を有していてもよい。
【0158】
CMOSセンサ430は、有効画素領域415の真上に位置するように設けられたレンズ438と、レンズ438と共に半導体装置401を内包するように設けられた側壁440と、レンズ438が嵌め込まれた状態でレンズ438及び側壁440の間に介在する嵌め込み用部材442とが半導体素子搭載用支持基材434上に搭載された構成を有する。
【0159】
CMOSセンサ430は、上記のように半導体装置401を製造した後、半導体装置401を半導体素子搭載用支持基材434上の接続端子と半導体素子405を導電性バンプ432介して接続し、半導体装置401を内包するようにレンズ438、側壁440及び嵌め込み用部材442を半導体素子搭載用支持基材434上に形成することにより製造される。
【実施例】
【0160】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0161】
(ポリイミドPI―1の合成)
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(分子量286.3、以下「MBAA」と略す)2.16g(0.0075mol)、ポリオキシプロピレンジアミン(商品名「D−400」(分子量:452.4)、BASF製)15.13g(0.0335mol)、及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン(商品名「BY16−871EG」、東レ・ダウコーニング(株)製)1.63g(0.0065mol)を入れ、NMP115gを加えて溶解させた。
【0162】
次いで、ODPA(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)16.51g(0.051mol)を、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。
【0163】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加えた。該フラスコに窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−1」という)を得た。得られたポリイミド樹脂の分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で、30000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは31℃であった。
【0164】
(ポリイミドPI−2の合成)
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(分子量410.5、以下「BAPP」と略す)20.5gを入れ、NMP101gを加えて溶解させた。
【0165】
次いで、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)(分子量410.3、以下「EBTA」と略す。)20.5gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。
【0166】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン67gを加えた。該フラスコに窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−2」という。)を得た。得られたポリイミド樹脂の分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で、98000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは180℃であった。なお、ポリイミドPI−2は、アルカリ可溶性を有していなかった。
【0167】
上記のポリイミドPI−1〜2をそれぞれ用い、表1及び表2に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
【0168】
なお、表1及び表2中の各成分の記号は下記のものを意味する。
BPE−100:新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート。
BPE−500:新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート。
A―9300:新中村化学工業社製、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート。
U−2PPA:新中村化学工業社製、2官能ウレタンアクリレート。
VG−3101:プリンテック社製、3官能エポキシ樹脂。
YDF−870GS:東都化成社製、ビスフェノールAビスグリシジルエーテル。
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェノル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)。
R972:日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)。
I−819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド。
パーヘキサ25B:日油社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)。
パークミルD:日油社製、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)。
パーロイルL:日油社製、ジラウロイルパーオキサイド(1分間半減期温度:116℃)。
NMP:関東化学社製、N−メチル−2−ピロリジノン。
【表1】
【表2】
【0169】
得られた接着剤層形成用ワニスを、乾燥後の膜厚が50μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間、続いて、120℃で20分間加熱し、基材上に接着剤層が形成されてなる実施例1〜5及び比較例1〜5の接着シートを得た。
【0170】
<低温貼付性の評価>
支持台上に載せたシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた接着シートを、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロール(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。次いで、基材(PETフィルム)を剥がし、接着剤層上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、「ユーピレックス」(商品名))を上記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。このようにして準備したサンプルについて、レオメータ(東洋製機製作所社製、「ストログラフE−S」(商品名))を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着剤層−ユーピレックス間のピール強度を測定した。その測定結果に基づいて、ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをBとして評価した。その結果を表3及び表4に示す。
【0171】
<低温熱圧着性の評価>
ロール加圧の温度を50℃とし、額縁状6インチサイズマスクパターン(中空部2mm、線幅0.5mm)をシリコンウェハ上に載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm
2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%水溶液を現像液とし、温度26℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度25℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗して、シリコンウェハ上に、感光性接着剤組成物の接着剤パターンを形成した。形成された接着剤パターンのシリコンウェハとは反対側の面上に、ガラス基板(15mm×40mm×0.55mm)を積層し、0.5MPaで加圧しながら、150℃で10分間圧着し、シリコンウェハ、接着剤パターン及びガラス基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。得られたサンプルを観察し、未接着部分(空隙)がガラス基板と接着剤パターンとの接着面積に対して20%以下であるものをA、20%以上であるものをBとして、熱圧着性の評価を行った。評価結果を表3及び表4に示す。
【0172】
<パターン形成性の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5及び比較例1〜4の接着シートは温度100℃で、比較例5の接着シートは温度200℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0173】
次いで、基材(PETフィルム)上にネガ型パターン用マスク(日立化成社製、「No.G−2」(商品名))を載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))で500mJ/cm
2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0174】
その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%水溶液を現像液とし、温度26℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度25℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗した。現像後、ライン幅/スペース幅=400μm/400μmのパターンが形成されているかを目視にて確認し、パターン形成されていた場合をA、パターン形成されていなかった場合をBとして評価した。その結果を表3及び表4に示す。
【0175】
<260℃接着強度の測定(高温時の接着性の評価)>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5及び比較例1〜4の接着シートは温度50℃で、比較例5の接着シートは温度200℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。その後、高精度平行露光機で1000mJ/cm
2露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機を用いて、TMAH2.38質量%水溶液を現像液とし、温度26℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度25℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で6分間水洗した。現像後、接着材付きウェハを150℃で1分間乾燥させ、5mm×5mmの大きさに個片化した。
【0176】
個片化した接着剤層付きシリコンウェハを150℃で10分間乾燥させた後、ガラス基板(10mm×10mm×0.55mm)上に、接着剤層をガラス基板側にして載せ、2kgfで加圧しながら、実施例1〜5及び比較例1〜4の接着シートは温度150℃で、比較例5の接着シートは温度300℃で10秒間圧着した。こうして得られた試験片を、オーブン中で150℃、3時間の条件で加熱硬化した。その後、試験片を260℃の熱盤上で10秒間加熱し、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて接着力を測定した。それらの結果を表3及び表4に示す。
【0177】
<耐湿信頼性の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1〜5、比較例1〜4の接着シートは温度50℃で、比較例5の接着シートは温度200℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0178】
そして、得られたサンプルを額縁状6インチサイズマスクパターン(中空部2mm□、線幅0.5mm)を介して、高精度平行露光機で500mJ/cm
2露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を除去し、コンベア現像機を用いて、TMAH2.38質量%水溶液を現像液とし、温度26℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度25℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で6分間水洗した。接着剤層付きシリコンウェハを150℃で10分間乾燥させた後、ガラス基板(15mm×40mm×0.55mm)を、接着剤層をガラス基板側にして載せ、0.5MPaで加圧しながら、実施例1〜5及び比較例1〜4の接着シートは温度150℃で、比較例5の接着シートは温度300℃で10分間圧着した。こうして得られた試験片を、オーブン中で150℃、3時間の条件で加熱硬化した。
【0179】
得られた評価用サンプルを用いて、加速信頼性試験をおこなった。温度85℃、湿度85%の条件下で、48時間処理したあと、温度25℃、湿度50%の環境に出し、評価用サンプルのガラス内部が結露するか顕微鏡で観察した。結露が観測されなかったものをA、結露が観測されたものをBとして評価した。結果を表3及び表4に示す。
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
*:塗工時に熱ラジカル発生剤が分解し、放射線重合性化合物が重合した。そのため低温貼付性、低温熱圧着性及びパターン形成性の評価結果はBであった。