(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
過去の交通データを用い、事故発生度分布と対応付けた自己組織化マップを学習アルゴリズムとして事故発生パターンを学習し、この学習課程において前記事故発生度分布を更新する事故発生パターン学習手段と、
現在時刻の交通データ実測値または現在時刻以降の交通データ予測値と、前記事故発生パターン学習手段による学習結果である更新後の前記事故発生度分布とを基に、交通事故発生の傾向を定量的に出力する事故発生予報手段と、
を備え、
前記自己組織化マップは、
前記交通データが入力ベクトルとして入力される入力層と、
前記入力ベクトルの各成分に対応したユニットからなる競合層と、
前記入力層の各ユニットと前記競合層の各ユニットを全結合する重みベクトルと、からなり、
前記事故発生パターン学習手段は、前記自己組織化マップと、それぞれが事故発生度を有する、前記競合層の各ユニットに対応したユニットからなる前記事故発生度分布とを用いて、該事故発生パターン学習手段の学習過程において、前記重みベクトルと、前記競合層の勝者ユニットに対応する前記事故発生度分布上のユニットが有する前記事故発生度とを更新し、
前記事故発生予報手段は、予報演算時点における前記交通データからなる入力ベクトルに対する前記競合層の勝者ユニットに対応した前記事故発生度分布上のユニットが有する前記事故発生度を出力する、
交通事故発生予報装置。
前記事故発生パターン学習手段は、気象情報も含めて事故発生パターンを学習し、前記事故発生予報手段は、前記気象情報も考慮して、交通事故発生の傾向を定量的に出力する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の交通事故発生予報装置。
前記事故発生パターン学習手段は、時間帯および対象路線の勾配も含めて学習を行い、前記事故発生予報手段は、前記時間帯および対象路線の勾配も考慮して、交通事故発生の傾向を定量的に出力する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の交通事故発生予報装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
はじめに、第1の実施形態としての交通事故発生予報装置について
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態の交通事故発生予報装置は、その主要な機能部として、交通情報管理部1、交通情報DB2、事故発生パターン学習部3、および事故発生予報部4を備える。
【0014】
交通情報管理部1は、路側に設置されている交通状況を検出するセンサより、交通情報としての、時々刻々と交通状況を表わす計測結果と、管制情報としての、道路交通管制システムからの、管制員の施策入力や、事故情報、工事情報等の道路交通管制において管理されている情報とを入力とし、それらを交通情報および管制情報として交通情報DB2に蓄積するとともに管理する。交通情報DB2は、具体的には、HDD等の記憶装置を用いて構成されるデータベースである。なお、交通情報および管制情報を交通データとも称す。
【0015】
上記センサから得られる交通情報としては、例えば上記センサとして車両感知器が設置されている場合は、この交通情報は路線のある区間を代表する情報としてのデータであり、単位時間あたりの通過交通量積算値(単位時間あたりの走行車両台数;以下、交通量と記す)や、単位時間あたりの平均速度、占有率、大型車混入率などがあげられる。また、管制情報としては、事故発生時の発生フラグや、発生時刻、事故のタイプなどがあげられる。この管制情報は管制員がマンマシンインターフェースを用いて手入力したものでもよい。交通情報管理部1は、このような、交通状況を表す計測値(交通情報)と、交通管制システムが有する情報(管制情報)を入手して、交通情報DB2に蓄積し、必要に応じて、データを必要とする各部に対して必要データを交通情報DB2より抽出し、出力する機能をもつ。
【0016】
事故発生パターン学習部3は、交通情報管理部1から過去の交通情報および管制情報を入手し、事故発生時の交通情報をパターンとして学習する。学習の方法としては、交通情報管理部1より入手した管制情報のなかの事故発生時情報(事故発生地点、事故発生時刻、事故タイプ)を基本に、これに対応する時間帯、路線位置(車線)の交通情報(例えば交通量、平均速度、占有率、大型車混入率等)を入手し、これらの対応を事故発生時のパターンとして学習する。学習の最も簡単な方法は、これらの組合せを保持、蓄積する方法や、これらの組合せを統計処理でクラスタリングし、類似したケースのデータを作成する方法があるが、ニューラルネットワークを利用した方法も考えられる。ニューラルネットワークを利用した方法に関しては第3の実施形態にて説明する。
【0017】
事故発生予報部4は、交通情報管理部1にて入手した、予報演算時点の交通情報を、事故発生パターン学習部3にて学習された事故発生時の交通状況のパターンと比較し、類似度が高い場合に、事故となる確率が高いという予報演算結果を出力する。例えば予報演算時点の交通情報と、事故発生パターン学習部3にて学習された事故発生時のパターンのいずれかとの相関が例えば0.8以上である場合、事故発生度80%と演算するなど、学習された事故発生時のパターンのいずれかとの相関を事故発生可能性(事故発生傾向)ととらえ、これを予報演算結果として演算する。
【0018】
以上のようにして、上記相関で示される事故発生可能性を事故発生傾向として算出する。本実施形態の交通事故発生予報装置では、算出した事故発生傾向を基に、事故発生に備えてパトロールカーを待機させたりまたは事故の可能性が高い箇所を巡回させたり、情報板を用いて走行車両に対して注意を呼びかけたりすることが可能となる。
【0019】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態としての交通事故発生予報装置について
図2を用いて説明する。
図2は、第2の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0020】
本実施形態は、上記第1の実施形態の構成に、疎密波情報作成部5を追加した構成となっている。そのため、ここでは疎密波情報作成部5を中心に説明する。
【0021】
疎密波情報作成部5は、交通情報管理部1より交通情報(例えば交通量、平均速度、占有率、大型車混入率など)を入手し、これらの情報から、渋滞時の道路交通状況として、道路上の疎密状況に関する情報(疎密波情報)を作成する部である。一般に渋滞時においては、車両密度が疎となる部分と密となる部分が交互に現われていると言われている。このように疎密が交互に現れている場合、その渋滞箇所を走行する車両は、加速および減速を繰り返しており、通常走行に比べると事故が発生しやすい状況にあると言える。よって、この渋滞時の疎密状況に関する情報を事故発生パターン学習部3と、事故発生予報部4においてさらに考慮し、予報演算に用いることで、より精度が高い事故発生の予報が可能と考えられる。
【0022】
上記疎密状況に関する情報として疎密波情報を作成するには、例えば、車両感知器から得られる交通量、平均速度を用いて、密度=交通量/平均速度の関係式から密度情報を演算し、それにより疎密波情報を取得する方法がある。また、平均速度を時系列的、空間的に観察することにより、疎密状況に関連する情報を、過去から現在にわたり場所毎に取得することも可能である。この様にして得られた疎密波情報を、事故発生パターン学習部3に入力し、事故発生時のパターンとして、事故発生時の管制情報と、交通情報と、疎密波情報とを組でパターンとして学習することで、事故発生時のパターンをさらに特徴づけることが可能となる。従って、この事故発生時のパターンを用いて事故発生予報部4にて事故発生の可能性を予測することで、より精度が高い事故発生予報が可能となる。その他については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0023】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態としての交通事故発生予報装置について、
図3−1〜
図3−4を用いて説明する。はじめに、本実施形態の交通事故発生予報装置の構成について説明する。
図3−1は、第3の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0024】
本実施形態の交通事故発生予報装置の基本的な構成は、第1の実施形態と同様であるが、事故発生パターン学習部3’において、自己組織化マップを利用しているところが特徴的である。自己組織化マップはニューラルネットワークの一種であり、学習フェーズと出力フェーズに処理が分けられる。学習フェーズでは対象データの相関関係などの特徴を学習する。また、出力フェーズでは学習した結果をもとにして入力ベクトルに対する特徴を出力する。また、自己組織化マップは、高次元の入力データを、教師信号などの予備知識なしにクラスタリングできるため、プロセス解析、制御、検索システム、さらには経営のための情報分析など、実社会において重要な分野への応用もされているものである。
【0025】
自己組織化マップの構成は、
図3−2のようになる。この図に示す自己組織化マップは、入力ベクトルx=(x
1,・・・,x
i,・・・,x
n)、入力層、および競合層、ならびに重みベクトルw
j=(w
j1,・・・,w
ji,・・・,w
jn)から構成されており、また入力層の各ユニットと競合層の各ユニットは重みベクトルw
jを介して全結合されている。
【0026】
また、事故発生傾向を出力するための自己組織化マップの学習フェーズにおける構成図は、
図3−3のようになり、同自己組織化マップの出力フェーズにおける構成図は、
図3−4のようになる。これらの図に示すように、自己組織化マップの競合層と同じユニット数で構成された事故発生度分布を作成する。そして、自己組織化マップの学習により競合層を更新する際に事故発生度分布の更新も行うようにする。
【0027】
この事故発生傾向を出力するための自己組織化マップは、学習フェーズでは下記のSTEP11を実施後に、すべての入力ベクトルに対し、STEP12からSTEP15の処理を繰り返し、さらに後述の学習係数αを更新して(S16)、STEP12からSTEP15の処理を所定回数繰り返し実施する。これにより高次元の入力データから相関関係を学習することで低次元化し、競合層ユニットの出力として学習後の事故発生傾向を表すことが可能となる。つまり、出力フェーズにおいてSTEP21〜23を実施することで、学習後の事故発生傾向を出力するための自己組織化マップを用いて、入力ベクトルに対する事故発生度を出力することができる。
【0028】
ここで、事故発生の傾向を学習するために、入力ベクトルに例えば過去の事故発生時における交通量、速度、車両密度を与える。また、一般的な渋滞時の追突事故を分析すると、交通状況が変化したとき事故発生の傾向も変化すると考えられるため、事故発生時だけでなく事故発生時よりも前(交通状況が変化した際)の交通量、速度、車両密度も含めて学習を行うようにする。なお、事故発生度を事故の起こりやすさに関する指標とし、事故発生傾向を学習する際は、事故発生時の事故発生度を例えば1や100などのような値に設定し、事故発生時よりも前の事故発生度はそれよりも低い値で設定するものとする。そして、出力フェーズでは、この事故の起こりやすさを表す事故発生度を出力する。以下に、学習フェーズにおける処理の流れについて、
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0029】
<学習フェーズ>
STEP11:各競合層ユニットに対する重みベクトルwの初期化を行う(このとき各重みベクトルwはランダマイズされる)。
【0030】
STEP12:事故発生時および事故発生前(交通状況が変化した際)の例えば交通量、速度、車両密度(ここではオキュパンシと記す)などで構成する入力ベクトル集合の中から1つの入力ベクトルxを選択し、入力層に入力する。このとき、入力ベクトルの各成分は、対応する入力層ユニットに割り当てられる。なお、各入力層ユニットには番号i(i=1〜n)が割り振られている。
【0031】
STEP13:下式(1)により入力ベクトルとのユークリッド距離が最小となる重みベクトルを持つ競合層ユニットを決定してそれを勝者ユニットとする。また、競合層上で勝者ユニットの近傍に位置するユニット(例えば勝者ユニットの隣のユニット)を近傍ユニットとする。なお、各競合層ユニットには番号j(j=1〜N;ただし、N:競合層ユニットの数)が割り振られている。
【0033】
ただし、
c:勝者ユニット番号
n:入力層ユニットの数
i:入力層ユニットの番号(1〜n)
j:競合層ユニットの番号(1〜N)
x
i:入力ベクトルxの成分(i=1〜n)
w
ji:競合層ユニットjに対する重みベクトルw
jの成分(j=1〜N、i=1〜n)
【0034】
なお、式(1)における演算子(下記)は、パラメータjを含む被演算子(ここでは式中のユークリッド距離)を最小にするjを求める関数である。コンピュータ処理では、1〜Nのすべてのjについて被演算子の値を求め、その最小値のパラメータjがこの演算子により求めるものとなる。
【0036】
STEP14:次の式(2)より勝者ユニットおよび近傍ユニットの重みベクトルw
jを更新する。その際、事故発生度分布において競合層の勝者ユニットおよび近傍ユニットと同じ位置にあるユニットについても、それらのユニットがもつ事故発生度を同様に更新する(例えば、勝者ユニットに対応する事故発生度分布のユニットの事故発生度を、1加算したものとし、その近傍のユニットの事故発生度を、1より小さい値を加算したものとする)。
【0038】
ただし、
t:学習回数(初期値:0)
α:学習係数(例えば、0<α≦1)。
【0039】
STEP15:すべての入力ベクトルを入力済みか判断し、すべての入力ベクトルが入力済みでない場合(S15でNo)、STEP12に戻り、STEP12からSTEP14までを繰り返し行う。なお、このとき、すべての入力ベクトルに対する処理が完了するまでは、学習係数αは一定とする。一方、すべての入力ベクトルについて入力済みとなった場合(S15でYes)、つまり、すべての入力ベクトルに対してSTEP12からSTEP14までの処理が完了すると、次のSTEP16に移行する。
【0040】
STEP16:学習係数αの値を元の値より小さくする。なお、αをどの程度小さくするかは、下記の所定回数に応じて適宜定められる。
【0041】
STEP17:上記STEP12〜STEP15の一連の処理を所定回数処理済みであるか判断する。ここで所定回数の処理が達成されていない場合(S17でNo)、STEP12に戻り、より小さいα値の下で、STEP12からSTEP15の処理を繰り返す。つまり、STEP12からSTEP15の処理を、設定された回数分繰り返す。その間、学習係数αは、学習が進むにつれて小さくなる。一方、上記STEP12〜STEP15の一連の処理について、所定回数の処理が達成されると(S17でYes)、学習フェーズを終了する。なお、上記所定回数は、事前に設定されているものとする。
【0042】
<出力フェーズ>
続いて、出力フェーズにおける処理の流れについて
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
STEP21:事故発生の傾向を確認する時刻(予報演算時)の例えば交通量、速度、車両密度などの交通状況を示すパラメータを入力ベクトルとして、入力層に入力する。
【0044】
STEP22:学習フェーズにおけるSTEP13と同様にして、勝者ユニットを決定する。
【0045】
STEP23:事故発生度分布において、競合層の勝者ユニットと同じ位置にあるユニットが持っている、上記学習に応じて更新済みの事故発生度を、その時刻(予報演算時)における事故発生度として出力する。
【0046】
本実施形態の交通事故発生予報装置では、上記STEP23で出力される事故発生度を基に事故発生予報を行う。例えば、STEP23で出力される事故発生度が、所定の閾値以上である場合に、事故発生の可能性を予報する。
【0047】
なお、上記以外は
第1の実施
形態または
第2の実施
形態と同様である。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態としての交通事故発生予報装置について
図6を用いて説明する。
図6は、第4の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0049】
本実施形態は、前述の第1の実施形態の構成に交通流シミュレーション部6を追加し、交通流シミュレーションを行った上で、交通流シミュレーション応用事故発生予報部7において将来の交通状況をも予測し、この結果から交通流シミュレーション応用事故発生予報部7が将来の事故発生予報を行うものである。なお、交通流シミュレーション応用事故発生予報部7は、事故発生予報部4としても機能する。
【0050】
交通流シミュレーションに関しては、特開2004−258889号公報等に掲載されている既存技術が採用可能であり、交通流シミュレーション部6では、過去の交通情報と管制情報とから、予報演算時点より将来の交通状況をシミュレーションし、シミュレーション結果としての交通データを出力する。そのシミュレーション結果を踏まえて、交通流シミュレーション応用事故発生予報部7が将来予報を含む事故発生傾向を出力する。
【0051】
交通流シミュレーション部6は、交通情報管理部1からの交通情報(例えばある区間単位の交通量、平均速度、占有率、大型車混入率等)と管制情報(事故発生、工事情報、将来の車線制限や速度制限の見込みや、交通需要予測結果等)とを入力とし、予報演算時点より将来の、車線制限や速度制限等の影響を考慮した交通情報(例えば将来の交通量、平均速度、占有率、大型車混入率等)を予測結果(将来の交通状態の予測値)として出力するものである。交通流シミュレーションとしては、車両1台1台のレベルで予測するミクロシミュレーションなどがあるが、交通流シミュレーション部6は、最終的に交通情報管理部1の出力と同様の情報(例えばある区間単位の交通量、平均速度、占有率、大型車混入率等)として出力する。交通流シミュレーション応用事故発生予報部7では、そのパターンと事故発生パターン学習部3での学習結果のパターンとから、将来の事故発生傾向を出力する。本実施形態では、予報演算時点での事故発生予報のみならず、将来発生しうる事故についても事故発生予報を行うことが可能となる。その他については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0052】
ここでは、第1の実施形態の構成に対して交通流シミュレーション部6をさらに採用することで、将来の事故発生予報の演算を行う形を説明したが、第2の実施形態や第3の実施形態の構成に対して交通流シミュレーション部6を採用し、事故発生予報を行うことも可能である。
【0053】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態としての交通事故発生予報装置について
図7を用いて説明する。
図7は、第5の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0054】
本実施形態は、前述の第4の実施形態の構成において、交通情報管理部1に代えてプローブ情報応用交通情報管理部8を用いたものである。このプローブ情報応用交通情報管理部8は、交通情報管理部1に対し、入力として(特に上流側の)プローブ情報も用いる点が特徴的である。ここで言うプローブ情報とは、車両をプローブとみたて、各車両の時々刻々の車両の位置(GPSをもとにした緯度経度など)、速度、加速度(加減速情報)などの情報である。一部の車両についてのプローブ情報であっても、このプローブ情報をその入力とすることで、車両感知器のみでは取得できなかった詳細な情報が利用可能となる。
【0055】
このようなプローブ情報を、事故発生パターン学習部3に入力し、事故発生時のパターンとして、事故発生時の管制情報と、交通情報と、プローブ情報とを組でパターンとして学習することで、事故発生時のパターンをさらに特徴づけることが可能となる。従って、この事故発生時のパターンを用いて事故発生予報部4にて事故発生の可能性を予測することで、より精度が高い事故発生予報が可能となる。その他の点については、第4の実施形態と同様である。
【0056】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態としての交通事故発生予報装置について
図8を用いて説明する。
図8は、第6の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0057】
本実施形態は、前述の第5の実施形態の構成に、第2の実施形態の疎密波情報作成部5と同様の機能をもつ疎密波情報作成部5’を追加した構成となっている。ただし、疎密波情報作成部5’では、第5の実施形態において説明した交通流シミュレーション部6にて予測演算された将来の交通情報を基に、将来の疎密波情報も作成する。疎密波情報の作成方法は、第2の実施形態における疎密波情報の作成方法と同様である。さらに交通流シミュレーション応用事故発生予報部7では、交通流シミュレーション部6にて予測演算された時点より将来の交通情報と、疎密波情報作成部5’にて演算された時点より将来の疎密波情報を用いて、将来の事故発生予報の演算を行う。その他の点は、前述の第5の実施形態と同様である。
【0058】
本実施形態では疎密波情報を利用しているため、本実施形態の方が、前述の第5の実施形態よりも予報の精度が高くなる可能性がある(例えば渋滞時において、渋滞の中で加速減速が頻繁に繰り返される場合等は、本実施形態の方が事故発生予報の精度が高くなる)。
【0059】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態としての交通事故発生予報装置について
図9を用いて説明する。
図9は、第7の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0060】
本実施形態は、前述の第6の実施形態の構成のプローブ情報応用交通情報管理部8において、入力として外部から得られる気象の情報をさらに利用するようにしたものである。交通事故は、天候(例えば風雨や雪等)も影響していると考えられる。よって、プローブ情報応用交通情報管理部8にて気象情報を取り扱うことを可能とし、最終的に事故発生時のパターンの構成に気象情報を加味する。これによって、事故発生予報を行うことで、その精度をさらに向上させることができる。なお、上記以外の点は、前述の第6の実施形態と同様である。
【0061】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態としての交通事故発生予報装置について
図10を用いて説明する。
図10は、第8の実施形態の交通事故発生予報装置の機能構成を示すブロック図である。
【0062】
本実施形態は、前述の第7の実施形態の構成に車線情報分析部10を追加し、車線毎に交通情報、管制情報およびプローブ情報を分類し、車線毎の交通情報、管制情報およびプローブ情報を事故発生パターンに加味するところが特徴的である。このように情報を細かく分類し、分類した情報を、事故発生パターン学習部3に入力し、事故発生時のパターンとして、事故発生時の車線毎の交通情報と、管制情報と、プローブ情報とを組でパターンとして学習することで、事故発生時のパターンをさらに特徴づけることが可能となる。従って、この事故発生時のパターンを用いて事故発生予報部4にて事故発生の可能性を予測することで、より精度が高い事故発生予報が可能となる。その他の点については、第7の実施形態と同様である。
【0063】
(その他の実施形態)
その他の実施形態としては、管制情報として、時間帯や、道路のカーブや勾配などの路線の情報を有する場合は、これらの情報も交通情報管理部1で管理し、管制情報の一部として利用し、事故発生時のパターンを構成する情報の一部として取り扱うことで、太陽の方向やサグ部など対象路線特有の影響による交通事故発生リスクの変動も考慮して事故発生の予報を行うことが可能となる。それによって、さらなる事故発生予報の精度の向上が期待できる。その他の点については、前述の諸実施形態と同様である。
【0064】
以上に説明した諸実施形態の交通事故発生予報装置によれば、事故発生時のパターンを事前に学習し、学習済みの事故発生時のパターンを基に、リアルタイムに現在の道路交通状況を分析し、事故が発生しやすい状況になっている際には事故発生予報を行うことで、道路交通における安全性向上に貢献することができる。
【0065】
(各実施形態に共通する交通事故発生予報装置のハードウェア構成)
ここで、
図11に、各実施形態にかかる交通事故発生予報装置に共通するハードウェア構成を示す。交通事故発生予報装置は、そのハードウェア構成として、ブートプログラム等の初期プログラムが格納されているROM102と、OS(Operating System)や前述の各部の機能を実現する処理手順が記述された処理プログラムや交通情報DB2等が格納されているHDD103と、OSおよび処理プログラムに従って前述の各部の機能を実現する処理を実行するCPU101と、CPU101による処理に必要な種々のデータを一時的に記憶するRAM104と、前述の外部機器とデータの入出力を行う入出力I/F105と、各部を接続するバス110とを備えている。
【0066】
なお、上記処理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルとして、CD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)、DVD等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。