(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045912
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】グルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを用いたグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 9/12 20060101AFI20161206BHJP
C12P 19/00 20060101ALI20161206BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
C12N9/12ZNA
C12P19/00
!C12N15/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-286731(P2012-286731)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128206(P2014-128206A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(72)【発明者】
【氏名】中井 博之
(72)【発明者】
【氏名】仁平 高則
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 由華
(72)【発明者】
【氏名】大坪 研一
(72)【発明者】
【氏名】北岡 本光
【審査官】
星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−210925(JP,A)
【文献】
Bacillus selenitireducens MLS10 chromosome, complete genome, NC_014219 REGION: 3048904..3051189. [online]. 2012-12-22. NCBI. [retrieved on 2014-01-27]. Retrieved from the Internet: <URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/297582338?sat=17&satkey=24217801>,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/297582338?sat=17&satkey=24217801
【文献】
仁平高則, 外6名, Bacillus selenitireducens 由来2-O-α-D-グルコシルグリセロールホスホリラーゼの発見, 日本農芸化学会2013 年度大会講演要旨集, 2013.03.05, 2C16p01
【文献】
T. Yamamoto et al., Acceptor recognition of kojibiose phosphorylase from Thermoanaerobacter brockii: syntheses of glycosyl glycerol and myo-inositol,Journal of Bioscience and Bioengineering,2006.05.30, 101(5), pp. 427-433
【文献】
C. Goedl et al., A High-Yielding Biocatalytic Process for the Production of 2-O-(alpha-d-glucopyranosyl)-sn-glycerol, a Natural Osmolyte and Useful Moisturizing Ingredient,Angewandte Chemie International Edition,2008.11.21, 47(52), pp. 10086-10089
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/12
C12N 15/09
C12P 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−グルコース1−リン酸と、グリセロールと、以下の酵素学的性質と配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを含む溶液中で酵素反応を行うステップと、グルコシル−α−1,2−グリセロールを回収するステップとを含むグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法:
a)作用
β−グルコース1−リン酸とグリセロールとに作用してグルコシル−α−1,2−グリセロールを生成する;
b)基質特異性
β−グルコース1−リン酸とグリセロールとに作用する;
c)至適pH
30℃の条件下で、pH7.5;
d)温度安定性
pH7.5の条件下で、40℃まで安定;
e)pH安定性
4℃、24時間の条件下で、pH5.5−9.5で安定。
【請求項2】
β−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びその基質となる糖と、グリセロールと、リン酸と、以下の酵素学的性質と配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを含む溶液中で酵素反応を行うステップと、グルコシル−α−1,2−グリセロールを回収するステップとを含むグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法:
a)作用
β−グルコース1−リン酸とグリセロールとに作用してグルコシル−α−1,2−グリセロールを生成する;
b)基質特異性
β−グルコース1−リン酸とグリセロールとに作用する;
c)至適pH
30℃の条件下で、pH7.5;
d)温度安定性
pH7.5の条件下で、40℃まで安定;
e)pH安定性
4℃、24時間の条件下で、pH5.5−9.5で安定。。
【請求項3】
β−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びその基質となる糖の組み合わせが、マルトースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.8)及びマルトースとの組み合わせ、トレハロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.64)及びトレハロースとの組み合わせ、コウジビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.230)及びコウジビオースとの組み合わせ、ニゲロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.279)及びニゲロースとの組み合わせ、よりなる群から選択される1つ以上の組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液がpH4.5〜9.5である請求項1又は2に記載のグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼ及びそれを用いたグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の伝統食品である清酒や味噌、味醂に微量に含まれるグルコシル−α−1,2−グリセロールは、がん細胞増殖抑制作用、抗アレルギー作用、血管内皮細胞増殖促進因子産生促進作用、血糖値上昇抑制作用、抗菌作用、細胞賦活作用、真皮マトリックス産生促進作用、中性脂肪蓄積抑制作用、メラニン産生抑制作用、皮膚刺激低減作用が報告されており、食品・化粧品・医薬品素材としての利用が期待されている(特許文献1及び2)。このように近年栄養面からだけでなく、オリゴ糖の機能性が注目されているが、その高純度調製の困難さ・高コストが当該研究の産業応用を妨げている。そのため、機能性オリゴ糖をはじめとする種々の有用糖質の選択的な低コスト大量調製法の確立が現在強く望まれている。
【0003】
しかし、従来のグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法には、以下の問題点があり、安価に製造することができなかった。化学的酸化法は、過ヨウ素酸を用いた酸化反応により、マルチトールから合成可能であるが、反応位置選択性は充分ではなく、収率が低かった(18%:重量比率)。また、酵素合成法は、α−グルコシダーゼ及びスクロースホスホリラーゼの糖転移反応により合成可能であるが、反応自体がこれら酵素の本来の反応ではないため、過剰なグリセロール存在下で行わざるを得ず、さらにα−グルコシダーゼを用いた際は反応位置選択性が低く副産物を生じるため、収率も低かった(5.9%:グリセロールを基準としたモル比率)。また、合成産物の分解も問題点として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−124457号公報
【特許文献2】特表2012−506882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、安価な材料から、グルコシル−α−1,2−グリセロールを簡便且つ選択的に大量製造することを可能にする、新規のグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼ及びそれを用いたグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため鋭意検討した結果、新規にグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを発見した。そして、β−グルコース1−リン酸と、グリセロールを出発原料としたグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼが触媒するオリゴ糖合成反応(加リン酸分解反応の逆反応)、またはβ−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素の加リン酸分解反応と新規に発見したグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼが触媒するオリゴ糖合成反応を組み合わせることで、グルコシル−α−1,2−グリセロールを簡便かつ選択的に大量製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明
で用いられるグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼは、以下の酵素学的性質
と配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する:
a)作用
β−グルコース1−リン酸とグリセロールとに作用してグルコシル−α−1,2−グリセロールを生成する;
b)基質特異性
β−グルコース1−リン酸とグリセロールとに作用する;
c)至適pH
30℃の条件下で、pH7.5;
d)温度安定性
pH7.5の条件下で、40℃まで安定;
e)pH安定性
4℃、24時間の条件下で、pH5.5−9.5で安定。
【0008】
そして、本発明のグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法は、β−グルコース1−リン酸と、グリセロールと、前記グルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを含む溶液中で酵素反応を行うステップと、グルコシル−α−1,2−グリセロールを回収するステップとを含む。
【0009】
また、本発明のグルコシル−α−1,2−グリセロールの製造方法は、β−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びその基質となる糖と、グリセロールと、リン酸と、前記グルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを含む溶液中で酵素反応を行うステップと、グルコシル−α−1,2−グリセロールを回収するステップとを含む。
【0010】
また、β−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びその基質となる糖の組み合わせが、マルトースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.8)及びマルトースとの組み合わせ、トレハロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.64)及びトレハロースとの組み合わせ、コウジビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.230)及びコウジビオースとの組み合わせ、ニゲロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.279)及びニゲロースとの組み合わせ、よりなる群から選択される1つ以上の組み合わせである。
【0011】
また、前記溶液がpH4.5〜9.5である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価な材料からグルコシル−α−1,2−グリセロールを簡便且つ選択的に大量製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で調製したグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼの至適pHを示した図である。
【
図2】実施例1で調製したグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼのpH安定性を示した図である。
【
図3】実施例1で調製したグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼの温度安定性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、(1)β−グルコース1−リン酸と、グリセロールと、前記グルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを含む溶液中で酵素反応を行うことで、グルコシル−α−1,2−グリセロールを簡便かつ選択的に大量製造することができる。(2)β−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びその基質となる糖と、グリセロールと、リン酸と、前記グルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼを含む溶液中で酵素反応を行うことで、グルコシル−α−1,2−グリセロールを簡便かつ選択的に大量製造することができる。
【0015】
β−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びその基質となる糖の組み合わせは、マルトースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.8)及びマルトースとの組み合わせ、トレハロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.64)及びトレハロースとの組み合わせ、コウジビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.230)及びコウジビオースとの組み合わせ、ニゲロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.279)及びニゲロースとの組み合わせ、よりなる群から選択される1つ以上の組み合わせであり、最も好ましい組み合わせはマルトースホスホリラーゼ及びマルトースとの組み合わせである。
【0016】
β−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼは特に限定されるものではなく、いかなる起源の酵素を用いることも可能である。反応液中でのβ−グルコース1−リン酸を生成する糖質加リン酸分解酵素及びグルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼの濃度は特に限定されないが、それぞれ、0.01〜1000μM、好ましくは、0.1〜100μMで使用することができる。これらの酵素の使用形態は特に限定されるものではなく、菌体抽出液、精製酵素、固定化酵素など種々のものを利用することができる。本発明の好適な実施形態によれば、上記反応に関わる全ての酵素を固定化したバイオリアクターカラムを用いて、固定化酵素リアクターとして反応を行うことも可能である。
【0017】
出発原料として用いる糖質の使用濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは約1〜約1000g/Lであり、より好ましくは約10〜約1000g/Lである。
【0018】
酵素反応に関わるリン酸はいかなる起源のものであっても良い。反応系に加えるリン酸濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは約0.1mM〜約1000mM、より好ましくは約1mM〜約100mM程度である。
【0020】
反応形態は特に限定されるものではないが、水溶液又は緩衝液中で行われるのが好適である。反応液のpHは好ましくは4.5〜9.5である。反応温度は特に限定されるものではないが、好ましくは5℃〜50℃、特に30℃が好ましい。また反応時間は特に限定されるものではないが、0.1〜100時間であることが好ましい。
【0021】
本発明により得られるグルコシル−α−1,2−グリセロールは任意の方法で精製することができる。例えば、本発明により得られるグルコシル−α−1,2−グリセロールは、カラムクロマトグラフィーや結晶化により単離することが可能である。カラムクロマトグラフィーとして、これに限定されるものではないが、サイズ排除クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過膜分離、逆浸透膜分離が含まれる。結晶化方法としては、これに限定されるものではないが、濃縮、温度低下、溶媒添加(エタノール、メタノール、アセトンなど)が含まれる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0023】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
バチルス・セレニティレデュセンスのゲノム情報を基に、Bsel2816遺伝子に対するフォーワードプライマー(配列番号3)及びリバースプライマー(配列番号4)を設計し、合成した。Bsel2816遺伝子の塩基配列を配列番号2に、またこの塩基配列にコードされているアミノ酸配列を配列番号1に示す。
【0025】
バチルス・セレニティレデュセンスのゲノムDNAを鋳型とし、上記のプライマー及びKOD plus polymerase(TOYOBO社製)を用い、95℃に2分間保持したのち、95℃で30秒間、60℃で30秒間、68℃で2分30秒間のサイクルを45回繰り返してPCR反応を行った。その結果、2300bpの増幅断片が得られた。このPCRで増幅されるDNA断片は、5’末端にNcoIサイトを、3’末端にXhoIサイトをそれぞれ有するBsel2816をコードするDNAである。
【0026】
得られた増幅断片を制限酵素NcoI及びXhoIで消化後、同様に処理した市販の遺伝子発現用プラスミドpET−28a(ノバジェン社製)に高効率ライゲーション試薬Ligation high(TOYOBO社製)を用いて連結した。さらに、ライゲーション反応液を用いて大腸菌コンピテントセルDH5α(TOYOBO製)を形質転換し、C末端に6残基のヒスチジンからなるHisタグが付加されたBsel2816をコードするDNAを含む発現ベクターpET−28aを回収した。
【0027】
この発現ベクターpET−28aを用いて、大腸菌BL21(DE3)をHanahanらの方法(J.Mol.Biol.、1983年、第166巻、第557−580頁)に従って形質転換した。形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地200mLに植菌し、IPTG濃度を0.1mMとして誘導培養を18℃で24時間行った。培養液から遠心分離で回収した菌体を10mLの500mM塩化ナトリウム及び10%グリセロールを含む20mM HEPES−NaOH緩衝液pH7.5に懸濁し、超音波処理により破砕した後、遠心分離後によって粗酵素液を得た。組換えタンパク質の精製は、Hisタグタンパク質精製用カラムHisTrapHP(GEヘルスケア社製)を用いたカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた精製酵素溶液を、10mM HEPES−NaOH緩衝液pH7.0に対して透析を行い、遠心式フィルターユニットアミコンウルトラ−30(ミリポア社製)を用いた限外濾過によって3mLに濃縮することで、Bsel2816精製酵素標品を調製した。
【実施例2】
【0028】
得られたBsel2816精製酵素標品を用い、以下に示す方法によってBsel2816を新規酵素グルコシル−α−1,2−グリセロールホスホリラーゼと同定し、グルコシル−α−1,2−グリセロールを生成した。
【0029】
500mMのβ−グルコース1−リン酸(糖供与体)、500mMのグリセロール(糖受容体)、1.3μMのBsel2816を含む反応液1mL(pH7.5)中で酵素反応を30℃、24時間行い、130μLの6N塩酸を添加することで反応を停止した。反応液をイオン交換樹脂アンバーライトMB3及びIRA402BL−CL(オルガノ社製)で脱塩及び還元糖を除去した後、トヨパールHW−40S(東ソー社製)による水を溶媒としたゲル濾過クロマトグラフィー(径2.6cm、長さ100cm)により二糖画分を単離した。精製後の収量は63mgであった。生成物をNMRにより分析したところ、グルコシル−α−1,2−グリセロールであることを確認した。
【0030】
40mM HEPES−NaOH緩衝液(pH7.5)中、10mMのβ−グルコース1−リン酸及びグリセロールを用いて、Bsel2816が合成反応時に生成するリン酸をモリブデンブルー法により定量した結果、グリセロールを糖受容体とした際のBsel2816の活性は62.5ユニット/mgであった。
【0031】
Bsel2816の30℃における至適pHは7.5付近であり(
図1)、安定pH範囲は4℃及び24時間の条件下でpH5.5−9.5であった(
図2)。本酵素のpH7.5における安定性は40℃までであった(
図3)。
【0032】
500mMのマルトース、500mMのグリセロール、10mMのリン酸、1.1μMのマルトースホスホリラーゼ、1.3μMのBsel2816を含む反応液1mL(pH7.5)中で酵素反応を30℃、24時間行った後、10μLの6N塩酸を添加することで反応を停止した。反応液をイオン交換樹脂アンバーライトMB3及びIRA402BL−CL(オルガノ社製)で脱塩及び還元糖を除去した後、トヨパールHW−40S(東ソー社製)による水を溶媒としたゲル濾過クロマトグラフィー(径2.6cm、長さ100cm)によりグルコシル−α−1,2−グリセロール画分を単離した。精製後の収量は57mgであった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように本発明は、食品・化粧品・医薬品産業で利用できる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]