(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化合物Aが、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを貯蔵するための装置から再循環される4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
流れO及び化合物Aの、加水分解性の塩素の含有量は、ASTM D4663−10に従い、それぞれ50ppm以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
流れO中の、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量は、混合物I中のものよりも、少なくとも10ppm少ないことを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
混合物Iは、カラムK1に導入される前に、第2のカラムK2から取り出され、該第2のカラム中で、粗製の2核のメチレンジフェニルジイソシアネートが、全て、又は部分的にその異性体に分離されることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)はポリウレタン及び関連するポリマー(これらは例えば、フォーム及び塗装に使用される)の製造に使用される重要な出発材料である。純粋な4,4’−MDIは、室温では固体状の化合物であり、そしてこれは38℃で融解する。
【0003】
アニリン及びホルムアルデヒドから出発して、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を、酸触媒的に製造する方法が公知であり、及びこの方法では、最初にポリアミンの錯体混合物がもたらされ、そして次にホスゲンと反応されている。ここで、最初に、2−、及び複数核のMDIの混合物が得られるが、これは以降、粗製のメチレンジフェニルジイソシアネート(粗製−MDI)と称される。粗製−MDIは特に、2核の異性体4,4’−MDI、2,4’−MDI、及び少量の2,2’−MDI(一緒にして、以降、二核MDIと称される)、及び3−、及び複核MDI(これらは以降、ポリマー性MDI(PMDI)と称される)から構成される。
【0004】
公知の方法では、粗製MDIは、PMDI−リッチの混合物と粗製の二核MDIに分けられる。次に通常、第1に4,4’−MDIの分離が、及び第2に2,4’−リッチの混合物の分離が、粗製二核MDIから行われる。対応する方法は、例えば、特許文献1(DE1923214)、特許文献2(DE102005004170)、特許文献3(DE102005055189)、特許文献4(CN101003497)及び特許文献5(DE10333929)に記載されている。
【0005】
上述したポリマー性システムに更に使用するため、ある場合では、高い純度、特に高い異性体純度が必要である。この理由は、4,4’−MDIからの高度の直鎖状のポリマーのみが、所望の特性を有するからである。他の場合には、上述した異性体の混合物は、複数核MDIの存在下、又は不存在下で使用される。
【0006】
更に処置する前に、このように製造された、液状のメチレンジフェニルジイソシアネート−生成物は、一時的に保管され、及び/又は貯蔵される必要がある。
【0007】
メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、特に2核MDIは、所定の時間の経過後、すなわち貯蔵の間に、液相中に二量体の副生成物を形成する。ここで、(2つのイソシアネート基の二量化による、4−環形成による)ウレトジオンの形成、及び(1つのカルボジイミド基と1つのイソシアネート基からの4−環形成による)ウレトンイミンの形成が重要な役割を担う。4−環の形成は、基本的に平衡反応であり、この平衡反応は、温度を上昇させることにより、イソシアネート又はカルボジイミドの側にずらすことができる。ウレトジオンの形成は、触媒化されていない芳香族イソシアネートにおいても発生する。いわゆるイソシアヌレート(1,3,5−トリジン−2,4,6−トリオン)への三量化も同様に可能であるが、しかし通常、適切な触媒を加えた場合にのみ、特記するべき速度で進行する。
【0008】
メチレンジフェニルジイソシアネートに対して非溶解性の二量体副生成物の形成は、不利な濁りと沈殿をもたらし、及び以降の更なる処理で、特に配管、装置、及び機器の詰まりによって品質の低下をもたらす。
【0009】
更なる問題は、MDI中に含まれる芳香族ハロゲン化合物である。塩酸で触媒化される、ホルムアルデヒドとアニリンの縮合物(濃縮物)は、塩素を含む副生成物を形成し、これは最初は分離されておらず、更にホスゲンと反応される。錯体ポリアミン−含有混合物のホスゲンとの反応で、更に塩素を含む化合物、特にN,N−
二置換の(二次的な)カルバモイルクロリド及び塩素化されたフェニルイソシアネートが形成される。
【0010】
芳香族ハロゲン化合物は、これらが高い温度で、容易に加水分解されるハロゲンを有する化合物に変換される場合には、特に回避する必要がある。加水分解可能なハロゲン化合物は、特にこれらが変動する(不安定な)濃度で生じる場合には、イソシアネートとポリオールのポリウレタンへの反応を阻害する。この理由は、ハロゲン化合物によって、反応速度に影響が及ぼされるからである。更にこれらは、最初には水のように透明で、及び無色に得られたイソシアネートに、迅速な黄色化をもたらす。このような種々の芳香族ハロゲン化合物から、次のものが例示される:N,N−ジメチルアニリンヒドロクロリド、N−クロロホルミルアニリン、N−メチル−N−クロロホルミルアニリン、及び以下の式の化合物。
【0011】
【化1】
【0012】
及び
【0013】
【化2】
【0014】
従って、4,4’−MDIを含む混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量を低減する方法、又は芳香族ハロゲン化合物の含有量が少ない、このような混合物を生成する方法が望ましい。
【0015】
塩素化合物の含有量が少ないメチレンジフェニルジイソシアネートを製造する方法は、従来技術から公知である。
【0016】
特許文献6(DE−OS2631168)には、その塩素含有量を調節することができるジイソシアネートの製造方法が記載されている。ここで、基本的に2,4’−及び4,4’−MDIから構成される異性体混合物が、最初に、蒸留カラム内で、4,4’−MDIの沸点よりも高い沸点の不純物の主要量から除去され、そして次に、ここで得られた蒸留物が、2,4’−MDIの沸点よりも低い沸点を有する化合物から、蒸留によって除去される。しかしながら提案された技術的解法は、装置面で非常に高価(複雑)である。更に、得られた4,4’−MDIの、二次的なカルバモイルクロリドの減少は、しばしば不十分である。
【0017】
特許文献7(DE−OS2933601)には、ウレトジオン及び加水分解性の塩素化合物の量が少ないポリマー性MDI及びモノマー性MDIの製造方法が記載されている。第1の工程では、二核MDIがPMDIから分離されている(薄膜蒸留器175〜210℃)。薄膜蒸留器からのこの蒸留物は、不活性ガスの存在下に濃縮され、そしてMDI−異性体が蒸留によって互いに分離される。しかしながら、このように得られた4,4’−MDIは、4,4’−MDIの沸点よりも沸点が高い、望ましくない化合物をなお含んでいる。更に、この方法は、(常に)経済的な方法で全体工程に統合することができない。
【0018】
特許文献8(DD−P288599A5)には、カルボジイミドと混合し、そして次にストリップすることによって、イソシアネート中の塩素含有化合物の含有量を低減するための方法が記載されている。しかしながら、熱的な脱ハロゲン化は、ハロゲン化合物の完全な分解に至っていない。このために、二次的なカルバモイルクロリドを完全に除去することができない。得られた生成物の高い熱負荷のために、更に望ましくない分解生成物が形成される。カルボジイミドの添加は、上述した塩素の低減に加え,三量化反応による分子量の増加をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来技術の方法では、加水分解することがかなり難しい(4,4−MDIよりも沸点が高い)所定の芳香族ハロゲン化合物を、4,4’−MDI含有混合物から除去することができないか、又は十分に除去することができなかった。更に、従来技術から公知の方法では、十分な範囲で、MDIを製造するための方法に常に統合することができるものではなかった。
【0021】
従って、本発明の課題は、上述した短所を有しないか、少ない範囲で有する4,4’−MDIを含む混合物を精錬する方法を見出すことにある。
【0022】
本発明の課題は、特にMDI−異性体の混合物、特に2,4’−及び4,4’−MDIの混合物、及び純粋な4,4’−MDIを、ウレトジオン及びウレトンイミン、及び加水分解性の塩素化合物の含有量を少なくして製造することである。この方法は、少ない装置費用で実施可能であるべきであり、及びMDIに対して温和なものであるべきである。
【0023】
本課題は特に、加水分解性の塩素化合物の含有量が少ない、4,4’−MDIを含む混合物を得ることである。特に、塩素化されたフェニルイソシアネート、及び(アニリン−ホルムアルデヒド縮合物の分離されなかった副生成物からホスゲン化に侵入した)塩素化された副生成物の含有量は、可能な限り少なくあるべきである。
【0024】
この方法は、方法を行う技術の費用を可能な限り少なくして、2核MDIを製造するための既存の技術に統合されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前述した課題は、本発明の方法によって解決される。好ましい実施の形態は、請求項に、及び以下の記載に記載されている。好ましい実施の形態の組合せは、本発明の範囲内のものである。
【0026】
本発明に従う、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精錬するための方法は、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量が100ppmを超え、好ましくは150ppmを超え、及び4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを、カラムK1を使用して蒸留して精錬する工程を含み、及び混合物Iから成るガス状流を、カラムK1内で、沸点が4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート以上であり、及びASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下である、少なくとも1種の液状の化合物Aと接触させ、及びカラムの頂部で得られ、且つ4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含むガス状流Oは、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下であることを特徴とする。
【0027】
「4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精錬する」という概念は、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む第1の混合物を、(4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートの含有量(質量%で)が、第1の混合物のものよりも高い)第2の混合物に変換することを意味する。蒸留による精錬は、おのおの、単−、又は複数段の精錬を含む(この中の、少なくとも1工程で蒸留が含まれる)。
【0028】
「蒸留」ないしは「蒸留的(蒸留による)」という概念は、蒸留による分離法を使用した混合物の精錬を意味する。蒸留による分離法は、分離作用が、沸騰した液体とガス状の蒸気の、異なる化合物に基づくことを特徴とする。
【0029】
ppmでの含有量は基本的に、本発明の範囲内で、混合物の全質量(全重量)に対する、質量部分を示す。
【0030】
芳香族ハロゲン化合物は、化学的な化合物で、少なくとも1つの芳香族環、及び少なくとも1つのハロゲン原子を含むものである。
【0031】
カラムは、混合物を蒸留して精錬するための装置である。本発明の範囲内で、カラムは、精留塔(rectification column)であると理解される。カラム自体は、この技術分野の当業者にとって公知である。
【0032】
カラムは、好ましくは、分離要素を有する縦長の容器を含む。分離要素は、熱交換及び物質伝達を強める内部構造体である。更にカラムは、最下部の分離要素の下側に所定の領域(この領域で濃縮物を(底部相に)受けることができる)、及び最上部の分離要素の上側に所定の領域、頂部を含む。分離される物質混合物の蒸発を目的として、精留塔の底部相の下側に蒸発器を設けることができる。頂部で分離されるガス状の流れを凝縮(濃縮)するために、カラム頂部の下流側に凝縮器を接続することができる。
【0033】
使用される分離要素の態様(種類)に従い、トレイカラム、パックド−ベッドカラム、及び
パッキングカラムの間で区別がなされる。しばしばカラムの底部に設けられる供給手段によって、分離される物質の蒸発した混合物が供給される。頂部には、沸点が低い成分が集積され、そしてこの場所で取り出すことができ、この一方で、沸点の高い成分は、再循環される。底部相では、沸点の高い成分がエンリッチ(量が増すこと)され、そしてその場所で取り出すことができる。
【0034】
通常、3タイプの分離要素が区別される。トレイカラム中には、篩トレイ、バブル−キャップトレイ、又はバルブトレイが導入される(この上部に液体が存在する)。特定のスロット又は孔によって、蒸気が液体中に泡立ち、バブリング層(噴出層)が発生する。これらの各トレイの上で、液相と気相の間に、新しい、温度に依存した平衡が生じる。
【0035】
パックド−ベッドカラムは、液体の良好な分配とガス流の良好な渦流をもたらす種々のパッキング要素で充填することができる。表面積の拡大によって、熱−、及び物質交換が最適化され、従ってカラムの分離性能が向上する。公知の例は、Rachingリング(空洞のシリンダー)、Pallリング、Hiflowリング、Intalox saddle、Berl saddle、及びヘッジホッグパッキングである。パッキング要素は、秩序的に配置可能であるが、(床として)無秩序にカラム中に導入することもできる。
【0036】
分離体(パッキング要素)としてパッキングを有する
パッキングカラムは、配置されるパッキング体が更に発展したものである。これらは規則的に形成された構造を有する。これによって、パッキングで、ガス流が圧迫される(狭まる)ことを(圧力損失の大きな影響と一緒に)低減できる。パッキングには種々の態様が有り、例えば織布、又は金属シートパッキングが存在する。
【0037】
本発明の範囲内で、加水分解性の塩素の含有量の測定は、基本的にASTM D4663−10に従い行われ、及びASTM D4663−10の条件下に加水分解可能な(しばしば「DHC」又は難加水分解性塩素と称される)芳香族塩素化合物の含有量を特徴付ける(特性化する)。これとは区別されるもので、ASTM D 4661−09に従う、環−置換された塩素化合物、例えばモノクロロベンゼンをも測定する全塩素含有量、及びASTM D 5629−05に従う、HClの状態の酸性度を特性化する、(容易に加水分解する)加水分解性の塩素(EHC−、「容易に加水分解する塩素」)の含有量がある。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の方法の好ましい実施の形態を以下に説明する。
【0040】
4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む適切な出発混合物の製造は、この技術分野の当業者にとって公知である。
【0041】
本方法は、(混合物が蒸留による精錬を許容するのであれば)基本的に、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、どの混合物にも適用することができる。しかしながら、使用される混合物Iの、化合物4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートの含有量は、少なくとも95質量%、特に98質量%である。しかしながら、本発明に従う方法は、(異性体分離で、4,4’−MDIが分離されて得られない場合には、)基本的に2,4’−MDI及び4,4’−MDIの混合物にも使用することができる。
【0042】
この技術分野の当業者にとって、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、上述した混合物を得る方法は公知である。最初に、第1の工程で、アニリンとホルムアルデキドの凝縮(縮合)が行われ、そして次に、得られたポリアミン混合物(ポリアミノポリフェニルポリメタン)のホスゲン化が行われる。
【0043】
アニリンとホルムアルデキドの凝縮、及びポリアミノポリフェニルポリメタンのホスゲン化は、従来技術から十分に公知である。ポリアミノポリフェニルポリメタンのホスゲ化の後、最初にホスゲンが完全に除去される。次に、メチレンジフェニルジイソシアネート(PMDI)の多核同族体が分離され、ここで、上述した粗製の2核MDIが得られる。粗製の2核のメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)は、この技術分野の当業者にとって公知であり、これは、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートに加え、少なくとも1種の異性体2,2’−及び2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートをも含む。粗製の2核のメチレンジフェニルジイソシアネート中の4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートの含有量は、通常、80質量%未満、特に60質量%未満である。
【0044】
粗製(未製錬)の2核のメチレンジフェニルジイソシアネートから、次に、純粋な4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートが分離される。分離のために、蒸留、又は結晶化、又は蒸留と結晶化の組合せに基づく種々の方法が公知である。
【0045】
本発明に従う方法は、4,4’− MDIを含む混合物を製造するための公知の方法に、(特に、これと、上述した異性体の(2核の)メチレンジフェニルジイソシアネートを分離するための蒸留とを組合せることによって)有利な態様で統合することができる。このことについては、以下に詳述する。
【0046】
本発明に従えば、カラムI内で、混合物Iで構成されるガス状の流れが、少なくとも1種の液状の化合物Aと接触され、ここで化合物Aは、その沸点が、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートの沸点以上である。好ましくは、化合物Aは、ASTM D4663−10に従う、加水分解性の塩素の含有量が、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下、特に20ppm以下、極めて好ましくは10ppm以下である。
【0047】
基本的に、液状の化合物Aとして、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートに対して不活性なもの、又は4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート自体が考慮される。
【0048】
適切な不活性化合物Aは、特に、ジベンジルエーテル、ターフェニル、フタル酸とネフタレン誘導体の高級エステルである。当然、上述した不活性の化合物の混合物も考慮される。
【0049】
しかしながら化合物Aは、特に好ましくは、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートである。特に好ましくは、化合物Aとして、純度が97質量%以上、特に好ましくは98質量%(重量%)以上、特に98.5質量%以上の4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートが使用される。しかしながら基本的に、上述した純度の4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートと少なくとも1種の上述した不活性化合物の混合物を使用することもできる。各場合において、化合物A中の、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量は、100ppm以下である。
【0050】
特に好ましくは、化合物Aは、本発明に従う蒸留による精錬が既に行われている4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートである。これにより、本発明に従う蒸留による精錬が既に行われており、及び適切な方法で保管される必要のある(ここで、冒頭に述べた2量体副生成物が形成される)4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートが、部分的に新たに工程に加えられる。これより、2つの長所を同時に得ることができる:一方では、芳香族ハロゲン化合物が少ない4,4’−MDIが許容され、及び他方では、保管した結果、副生成物に部分的に変換された、保管された4,4−MDIが再度、循環され、そして純度のより高い状態で貯蔵(保管)に送られ、これにより保管された4,4−MDIを最適化することができる。ここで、保管−還流割合(保管へと新たに導かれた(追加的に得られた)4,4’−MDIの量に対する、再循環された4,4’−MDIの量の割合)は、好ましくは0.05〜0.4、特に0.1〜0.3である。
【0051】
極めて好ましくは、化合物Aは、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを保管するための設備から循環された4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートである。ここで保管のための設備(装置)は、保管される物質、又は物質混合物の一時的な受け入れのために設けられた、任意の設備であり、例えば容器(コンテナ)、特に保管タンクである。
【0052】
液状の化合物Aの添加は、好ましくはカラムK1の最上分離要素の上側から行われる。好ましい一実施の形態では、カラムK1は、
パッキングカラムである。ここで
パッキングの比表面積は、好ましくは100〜1000m
2/m
3、特に好ましくは150〜800m
2/m
3、特に200〜750m
2/m
3、極めて好ましくは250〜600m
2/m
3である。
【0053】
基本的に、発生する圧力損失が少ない
パッキングが好ましい。適切な
パッキングは、特に、織布パッキング、シートメタルパッキング、及び構造化パッキングである。織布パッキングが特に好ましい。
【0054】
ここで液状化合物Aの添加は、好ましくは、カラムK1の最上部のパッキング要素の上側から行われる。
【0055】
本発明に従い、混合物Iから成るガス状流は、カラムK1内で、少なくとも1種の液状化合物Aと接触される。基本的に、接触についての複数の方法が考えられる。ここで、ガス流と液状化合物Aの強い(密接な)接触が行われ、及び液状の化合物Aが導かれる方法が好ましい。このために、液体Aは、適切な方法で分配される必要がある。対応する方法は、この技術分野の当業者にとって公知である。
【0056】
接触の効果は、特に、均一な、表面を覆う、液体の供給に依存している。液体分配器は、カラムの断面にわたり広範囲に及ぶ均一な液体分配を保証し、及びこの技術分野の当業者にとって公知である。
【0057】
液体の事前分配を、1つ又は複数の供給チューブによって、又は複数の流出開口部を下側に有する分配チャンネルによって行うことができる。
【0058】
重要な設計変数は、カラム断面に対する供給個所の数(=滴下個所密度)である。以下の液体分配器のタイプが考慮される:分配トレイ、チャンネルディストリビューター、チューブディストリビューター、及びノズルディストリビューター。液体分配の以下の原理が考慮される:分配器のトレイの孔からのせき止め高さ分配、又は側部に孔が設けられた供給チューブ、オーバーフロー分配、例えば側部のスロット、オーバーフロー口、及びノズルからのもの。
【0059】
適切な液体分配器は特に、ボックスチャンネルディストリビューターである。液体が、ガス状流Iに対する対向流として接触されることが有利である。これによって、得られた混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量がより低くなる。
【0060】
カラムK1中への混合物の供給は、基本的に種々の方法(態様)で、及びより正確には、液状状態で、又はガス状状態で行うことができる。液体状態でのある供給について、適切な蒸発器の使用が有利である。好ましくは、混合物Iのカラム1への供給は、ガス状の状態で行われる。
【0061】
カラムK1の頂部中の絶対圧は、好ましくは50mbar以下、特に好ましくは1〜30mbar、特に2〜20mbarである。カラムK1の頂部と底部相の間の圧力差(圧力降下)は、好ましくは0.5〜30mbar、好ましくは0.5〜20mbar、特に好ましくは1〜10mbar、特に2〜5mbarである。圧力降下が小さいと、(底部相温度がより低くなるために)熱負荷が小さくなる。
【0062】
カラムK1の底部相の温度は、140〜270℃、好ましくは150℃〜240℃、特に好ましくは170〜230℃、特に好ましくは190〜230℃、極めて好ましくは200〜225℃である。これにより、精錬の与えられた効率で、熱負荷が最小限にされる。
【0063】
ここで、液体(スクラッビングリキッド)の蒸気に対する割合W:B[w/w]で定義される還流割合、W:B=0.01〜2.0、好ましくはW:B=0.05〜0.5、特に好ましくはW:B=0.1〜0.3である。
【0064】
カラムK1は、使用される材料が、与えられた温度で、使用される混合物に対して不活性であるならば、種々の材料から製造することができる。適切な材料は特に、1.4541又は1.4571等のオーステナイトステンレス鋼である。高級合金材料、例えばフェライト/オーステナイト1.4462も適切である。好ましくは、材料は1.4541が使用される。
【0065】
カラムK1の頂部では、流れOが得られ、この流れOは、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む精錬(精製)された混合物から成り、及びASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量が、100ppm以下、特に50ppm以下である。次に、流れOは冷却処理を受け、該冷却処理は、流れOを好ましくは10〜100℃、特に20〜80℃、特に20〜60℃に冷却するものである。
【0066】
流れOの冷却処理は、カラムK1の頂部の温度から出発して、好ましくは流れOを5秒以内に、20〜60℃、好ましくは30〜50℃に冷却するものである。迅速な冷却によって、副生成物の形成、特に二量体副生成物の形成が更に低減される。このような副生成物は望ましくなく、そして生成物の保管機能を損なう。
【0067】
MDIを含有し、最初はガス状である流れの急速な冷却(クエンチング)を行うための対応する方法は、この技術分野の当業者にとって公知である。基本的に、直接クエンチング及び間接クエンチングが考慮される。直接クエンチングでは、流れOは、対応する低い温度を有する液状化合物A
*に導入される。好ましい第1の実施の形態では、化合物A
*は、イソシアネート、好ましくはMDI、特に2核MDIである。特に好ましくは、化合物A
*は、4,4’−MDI、特に本発明に従う方法に既に通されたものである。第2の好ましい実施の形態では、化合物A
*は、後に除去する必要のある不活性溶媒である。対応する方法はこの技術分野の当業者にとって公知である。
【0068】
ガス状の流れOの、直接的、あるいは間接的クエンチングを行うための装置への導入について、この技術分野の当業者は、本発明に従う冷却が5秒以内に行われるように、好ましくは4秒以内、特に好ましくは3秒以内に行われるように調節する。
【0069】
間接的なクエンチングでは、クエンチングは熱交換器内で行われ、該熱交換器内で、熱を受け取る液体が、好ましくは、最初はガス状の流れOに対して(流れOと直接的な接触なして)向流で導入される。冷却によって、流れOが凝縮される。従って熱交換器は、凝縮器とも称される。適切な熱交換器は、この技術分野の当業者にとって同様に公知である。好ましくは、熱交換器は特に、直立式凝縮器、管束凝縮器、直立式管束凝縮器、及び直立式プレート凝縮器である。「直立式(upright)」という用語は、垂直な配置を示す。本発明の範囲内で、間接的クエンチングが特に好ましい。
【0070】
特に好ましい実施の形態では、クエンチングの前に、本発明に従い冷却されるガス状流Oに、不活性のガス状媒体、特に窒素が混合される。
【0071】
好ましくは、不活性なガス状媒体の混合(添加)は、凝縮器(熱交換器)のクエンチングが行われる底部相(bottom phase)で行われる。ここで、この混合は、好ましくは、凝縮器を通る向流で行われる。
【0072】
この替りに、この混合は、ガス状の流れOをクエンチングのための設備中への供給する前に、適切な混合装置を使用して、又はクエンチングのための設備中のガス状の流れOを供給する領域内で行われる。
【0073】
不活性媒体との混合によって、望ましくない低沸点の含有量が、本発明に従う方法において更に低減される。
【0074】
一方では本発明に従う蒸留による精錬(精製)の処理の組合せによって、及び他方では本発明に従うクエンチングによって、(加水分解性の塩素化合物も、二量体についても高い純度を有する)4,4’−MDIを含む混合物が得られる。
【0075】
本発明に従い、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、得られた混合物は、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素を100ppm以下で含む。好ましくは、流れO中の、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量は、80ppm以下、特に50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下、特に20ppm以下、極めて好ましくは10ppm以下である。
【0076】
4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、得られた混合物は、好ましくは、ASTM D4661−09に従う全塩素含有量が、200ppm以下である。特に好ましくは、流れO中で、ASTM D4661−09に従う全塩素含有量は、150ppm以下、特に100ppm以下、特に好ましくは70ppm以下、特に40ppm以下、極めて好ましくは20ppm以下である。ASTM D4661−09に従う全塩素含有量は、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量とは、基本的に、環状−塩素化芳香族塩素化合物を考慮することで区別される。
【0077】
4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、得られた混合物は、好ましくは、ASTM D5629−05に従う酸性度を40ppm以下の値で有する。ASTM D5629−05に従う酸性度の値は、特に好ましくは30ppm以下、特に20ppm以下、極めて好ましくは10ppm以下、特に5ppm以下である。
【0078】
4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、精錬される混合物Iの、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量は、本発明に従い、少なくとも100ppm、好ましくは少なくとも120ppm、特に好ましくは少なくとも150ppm、特に好ましくは少なくとも200ppm、特に少なくとも250ppmである。
【0079】
本発明に従う方法によって、(たとえ実施する特徴的構成が、塩素化合物についてのものであっても、)対応する臭素化合物の含有量も低減されることは、この技術分野の当業者にとって明らかである。
【0080】
基本的に、芳香族塩素化合物として種々の化合物が考慮され、これは、二次過程における、その他ホスゲン化の間に生じるアニリン/ホルムアルデヒド−縮合物の分離されない副生成物から発生するものである。
【0081】
ASTM D4661−09に従う全塩素含有量の上述した低減は特に、一般式Iのハロゲン化されたフェニルイソシアネートに関する。ハロゲン化されたフェニルイソシアネートは、単−又は2−核(環)塩素化、又は臭素化フェニルイソシアネートであると理解され、特に単環の塩素化フェニルイソシアネートであると理解される。好ましくは、流れO中のハロゲン化フェニルイソシアネートの含有量は、25ppm以下、特に好ましくは15ppm以下、特に10ppm以下である:
【0083】
精錬された4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート中に比較的高い割合で存在することが望ましくない、更なる芳香族ハロゲン化化合物は、一般式IIの、N,N−2置換基の(二次)カルバモイルクロリドで、流れO中のその含有量は、好ましくは25ppm以下であり、特に好ましくは15ppm以下、特に10ppm以下である:
【0085】
これらは特に、粗製―MDAのホスゲン化で形成される以下の化合物を含む:4−イソシアナート−4’−N−メチルカルバモイルクロリドジフェニルメタン、2−シソシアナート−4’−N−メチルカルバモイルクロリドジフェニルメタン、及び2−イソシアナート−2’−N−メチルカルバモイルクロリドジフェニルメタン。
【0086】
一般式IIIのN−フェニル−N−イソシアナートベンジルカルバモイルクロリド、特に(ホスゲン化において、リアレンジされていないアミノベンジルアニリンから発生する)N−フェニル,N−4−イソシアナートベンジルカルバモイルクロリド、及びN−フェニル,N−2−イソシアナートベンジルカルバモイルクロリドも同様に、二次的なカルバモイルクロリドのクラスである:
【0088】
精錬された4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート中に比較的高い割合で存在することが望ましくない、更なる芳香族ハロゲン化合物は、一般式IVのイソシアナートベンジルハロゲン化物、特に4−イソシアナートベンジルクロリド、及び2−イソシアナートベンジルクロリドで、これらの流れO中の含有量は、好ましくは25ppm以下であり、特に好ましくは15ppm以下、特に10ppm以下である:
【0090】
一般式I、II、III及びIVの上述した化合物の含有量は、本発明に従う方法によって低減される。好ましくは、流れO中の一般式I、II、III及びIVの芳香族ハロゲン化合物の含有量は、混合物I中のものよりも、合計して、少なくとも10ppm、好ましくは少なくとも50ppm、特に好ましくは少なくとも100ppm、特に少なくとも150ppm少ない。好ましくは、流れO中の一般式I、II、III及びIVの芳香族ハロゲン化合物の含有量は、合計して、40ppm以下、特に好ましくは30ppm以下、極めて好ましくは20ppm以下、特に10ppm以下である。
【0091】
既に冒頭に述べたように、本発明に従う方法は、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を製造するための公知の方法に、有利に統合することができ、ここで2核メチレンジフェニルジイソシアネートの蒸留による分離との結合が特に好ましい。特に好ましくは、第1に、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、第2に2,4’−及び4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートの混合物の、蒸留による分離との組合せである。
【0092】
本発明に従う方法に有利に組合せることができる、4,4’−ジイソシアナートジフェニルメタンの蒸留による分離のための一例は、DE−OS2631168に記載されており、これにより、この文献の内容は全てここに導入される。DE−OS2631168には、ポリイソシアナートポリフェニルポリメタンの混合物を複数工程で処理してジイソシアナートジフェニルポリメタン異性体を得る構成が記載されている。高官能性のイソシアネートの蒸留による分離の後、これの工程で発生した、(基本的に2,2’−MDI、2,4’−MDI及び4,4’−MDIから構成される)第1の蒸留流が、第1のカラムに供給され、そして更なる蒸留流と底部相流に分離される。底部相流は、第1の蒸留流の10質量%以下であり得る。第2の蒸留流は、第2のカラム内で、(揮発性不純物、2,2’−ジイソシアナートジフェニルメタン、及び2,4’−MDIを含む)頂部流、及び(2,4’−MDI及び4,4’−ジイソシアナートジフェニルメタンの主要部分を含む)底部相流に分留される。この底部流は、第3のカラム内で、4,4’−MDIと、2,4’−MDIの含有量が増した(エンリッチした)蒸留物部分とに分離される。後者の蒸留工程では、4,4’−MDIは、2質量%未満の2,4’−MDIの含有量と一緒に蒸留される。
【0093】
4,4’−MDIないしは4,4’−及び2,4’−MDIの混合物を、蒸留して得る(蒸留的に得る)ための更なる方法が、例えばDE−A−2933601、及びDE−A−3145010に記載されている。DE−A−3145010には、ジイソシアナートジフェニルメタンの異性体混合物から、第1に、2,2’−及び2,4’−ジイソシアナートジフェニルメタンが頂部生成物として取り出され、及び異性体が実質的に(十分に)除去された4,4’−MDIが底部相生成物として得られる。これらの底部相生成物は、熱負荷の間に形成された重合生成物から、最終蒸留で除去されるもので、この一方で、頂部生成物を、本発明に従う更なる蒸留による処理に導入することができる。
【0094】
好ましい一実施の形態では、対応して、本発明に従いカラム1に導入される混合物1は、第2のカラムK2から由来し、このカラム内で、2核のメチレンジフェニルジイソシアネートが完全に、又は部分的に、その異性体に分離され、これは好ましくは、4,4’−MDIが異性体2,4’−MDI、及び/又は2,2’−MDIから、完全に、又は大部分が分離され、ここで、分離される混合物の4,4’−MDIの含有量は、混合物の全質量に対して、好ましくは少なくとも90質量%4,4’−MDIであり、特に好ましくは少なくとも95質量%、特に少なくとも98質量%である。
【0095】
カラムK2は、好ましくは分離要素を含み、ここで分離要素は
パッキングが特に適切である。有用なものは、基本的に、パックドベッド、又はトレイでもある。カラムK2は、好ましくは、側流カラムである。側流カラムは、少なくとも1つの底部相取出部、少なくとも1つの側部取出部、及び少なくとも1つの頂部取出部を有するカラムであると理解される。
【0096】
混合物の組成に依存して、カラムK2の頂部温度は、好ましくは165〜200℃である。底部相圧は、210〜225℃の好ましい温度範囲で、好ましくは11〜20mbarである。カラムK2は、底部相圧が好ましくは0.1〜50mbar、好ましくは1〜30mbar、特に好ましくは2〜15mbarで、及び底部相温度が好ましくは150〜250℃、特に好ましくは180〜240℃、特に200〜225℃で運転される。これにより、高い分離性、及び同時に少ない熱負荷が達成される。
【0097】
カラムK2中の異性体のメチレンジフェニルジイソシアネートの混合物の蒸留で、好ましくは側部流として4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートが異性体単位で、すなわち3種の異性体2,2’−MDI、2,4’−MDI及び4,4’−MDIに対して、少なくとも97質量%(重量%)の純度で取り出される(以降、第1の側部流、又は第1の側部取出)。
【0098】
更に、カラムK2中の異性体のメチレンジフェニルジイソシアネートの混合物の蒸留で、(第1の側部取出部の上側に存在する)第2の側部取出部として又は頂部流として、(質量割合が85:15〜15:85の)2,4’−ジイソシアナートジフェニルメタン及び4,4’−ジイソシアナートジフェニルメタンの混合物が得られる。第1の側部取出部の上側に位置する第2の側部取出部を有する実施形態が好ましい。この理由は、これにより、所望の2核異性体の高い純度が得られるからである。更にカラムK2の頂部流は、供給物と一緒に供給された低沸点成分、例えばモノクロロベンゼンをも含む。
【0099】
カラムK2の第2の側部取出部、ないしは頂部で得られる流は、それぞれメチレンジフェニルジイソシアネートの2核異性体の全質量(これは100質量%になる)に対して、2,4’−MDIの含有量が好ましくは20〜95質量%(重量%)であり、及び4,4’−MDIの含有量が5〜80質量%である。
【0100】
カラムK2の頂部でのカラム−還流割合(戻ってくる物質流の取出される物質流に対する割合)は特に5〜250の範囲に調整され、しかし特に好ましくは10〜120の範囲に調整され、ここで、蒸留流は、供給に対して1〜5質量%である。底部相流は、供給流の、60〜90質量%、好ましくは75〜85質量%である。
【0101】
第1の好ましい実施の形態では、カラムK2は、分離壁カラム(隔壁カラム)である。このようなカラムK2の構成は、この技術分野の当業者にとって公知であり、そして例えばEP1475367A1に記載されている。分離壁カラムは、好ましくは、カラムK2のために記載された上述した条件したに運転される。異性体の2核のメチレンジフェニルジイソシアネートの混合物は、分離壁カラムに、好ましくは分離壁(隔壁)の範囲に側面において供給される。分離壁の範囲は、カラムK2の中央領域に存在する。分離壁の長さは、工程条件及び使用する物質交換要素の特性に依存して選ばれる。分離壁(dividing wall)は、カラムを予備分別領域と、主要分別領域に分ける。分離要素としては、
パッキングが特に適切である。しかしながら、パックドベッド、又はトレイも原則として有用である。
【0102】
この替りに、2核MDI−異性体の蒸留による分離は、2工程で設計することもでき、ここで、第1の蒸留工程では、分離壁のない蒸留カラム内で、及び第2の工程は、分離壁カラムで行わるか、又はここで2個の分離壁カラムが使用される。対応する方法は、EP1475367A1の、段落[0024]〜 [0031]に記載されている。
【0103】
第2の好ましい実施の形態では、カラムK2は、分離壁の無い側流カラム(side stream column)である。側流カラムの好ましいパラメーターについては上述した。ここで、頂部取出部を使用して、好ましくは2,2’−MDI及び低沸点物が、及び底部相取出部を使用して、好ましくは4,4’−MDI及び高沸点物が分離され、ここで底部相−及び頂部取出部からの流れは、本発明に従う方法の工程(b)に再度使用することができる。側流カラムは好ましくは、上述したように、第1の側部取出部で4,4’−MDIが、物質流の全質量に対して少なくとも97質量%の純度で取出され、及び第1の側部取出部の上側で、第2の側部取出部で、4,4’−MDI及び2,4’−MDIの、上述した混合物が取出される。
【0104】
混合物Iは、カラムK2から、好ましくは側部流として取り出され、及びガス状の状態で、カラムK1に加えられる。混合物Iは、混合物Iの全質量に対して、好ましくは少なくとも98質量%、特に好ましくは98.5〜99.0質量%の純度の4,4’−MDIである。
【0105】
混合物Iから成るガス状の流れは好ましくは、カラムK1内で、少なくとも1種の液状の化合物Aと接触され、ここで、化合物Aは本発明に従い、その沸点が、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートの沸点以上であり、及び化合物Aは、好ましくは、ASTM D4663−10に従い加水分解性の塩素の含有量が、1000ppm以下である。
【0106】
好ましい一実施の形態では、カラムK1の底部相に得られた生成物は、第2のカラムK2に再循環される。これにより、第1に廃棄物の形成を回避することができ、これにより、方法全体の収量を最適化することができる。第2に、同時に、特に純粋な4,4’−MDIを得ることが保証される。
【0107】
カラムK2の頂部で得られる流れは、それぞれ、メチレンジフェニルジイソシアネートの2核異性体の全質量(100質量%になる)に対して、好ましくは2,4’−MDIの含有量が、20〜95質量%であり、及び4,4’−MDIの量が5〜80質量%である。更に、カラムK2の頂部流は、供給物と一緒に加えられた低沸点成分、例えばクロロベンゼンを含む。
【0108】
本発明に従い製造される、ジフェニルメタンジイソシアネート−異性体、特に2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートの混合物は、特にポリウレタン接着剤、及び−被覆物を製造するために適切である。純粋な4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートは、好ましくはポリウレタン−エラストマー、−フィラメント、及び−ブリストルを製造するために使用される。加水分解性の塩素化合物の含有量が少ないために、ポリウレタンは、空気と光の影響下での黄色化に対して安定性が比較的良好である。
【0109】
本発明の更なる課題は、MDIs(MDIの複数形)の反応性を安定化することである。温度が>120℃の熱いイソシアネートラインを、腐食に対する耐性が比較的高い材料(ニッケル−ベース合金)で構成された設備部分の間に形成することによって、運転の過程で、MDIにおける反応の変化性(変動性)が少なくなることがわかった。このことは、温度が180℃〜220℃の範囲のラインに該当する。
【0110】
「設備部分の間」は、例えば、隣り合う設備区分の間の輸送ライン、2つのカラムの間の生成物輸送、又はカラム出口から生成物タンク内への生成物冷却器への輸送を意味する。これらのラインで、イソシアネート含有量は、DIN ISO14896:2009に従って測定して、20質量%を超える。
【0111】
このための適切な材料は、Hastelloy又はInconel合金である。ここで、これらの合金中のニッケル含有量は、少なくとも50質量%である。これらの合金のために適切な材料は、例えば、Alloy200(2.4066)、Alloy400(2.4360)、AlloyC−276(2.4819)、AlloyC−22(2.4602)、Alloy59(3.4605)、HastelloyC−4(2.4610)、HastelloyC−22(2.4602)、及び全ての標準Hastelloyサブグループである。
【0112】
本発明の好ましい実施の形態を、
図1に概略的に示す。ここで
図1は、本発明の説明をするもので、及び本発明は、これに限定されるものではない。以下に説明する実施の形態の個々の要素は、上述した実施の形態と有利に結合することができる。
1−カラムK2
2−カラムK1
3a−カラムK2の上側側部取出部
3k−カラムK2からの頂部流
3s−カラムK2からの底部相流
4−2−核MDI−異性体の流れ2(カラムK2に供給)
5−カラムK1の頂部流O
6a−カラムK2の下側側部取出部
6b−混合物Iからの流れ
6c−混合物Iからの蒸気
7−カラムK1からの底部相流
8−凝縮器(コンデンサー)
9−液体状の4,4’−MDIのための貯蔵タンク
10−貯蔵タンクからの再循環
11−液体分配器
12−
パッキング要素
【0113】
図1に従う好ましい実施の形態の説明:
MDIの2核異性体の混合物を含む流れ(4)をカラムK2(1)に導入する。カラムK2(1)の底部相で、底部相流(3s)が得られ、及び頂部で頂部流(3k)が得られる。第1の側部取出部(6a)から、流れ(6b)が取り出され、これは好ましくは、少なくとも98質量%の4,4’−MDIを含み、及び第1の側部取出部の上側から、4,4’−MDI及び2,4’−MDIから構成される流れ(3a)が取り出される。流れ(6b)は、流れIを形成し、該流れIはカラムK1(2)にガス状の状態で導入され、及び混合物I(6c)から成る蒸気としてカラムK1(2)の
パッキング要素(12)を通される。流れ6cの方向に対して向流して、4,4’−MDIが通され、該4,4’−MDIは、液状4,4’−MDIのための貯蔵タンク(9)から取出され、及び再循環(10)を介して、カラムK1の頂部で、液体分配器(11)に供給される。液体分配器(11)は、上昇するガス状の流れ6c及び向流して動く(流れる)4,4’−MDIから構成される液状流の間で、高い接触面積を提供する。カラムK1(2)の底部相では、流れ(7)が得られ、該流れ(7)はカラムK2(1)に再循環される。カラムK1の頂部では、頂部流O(5)が得られ、該頂部流(5)は、精錬(精製)された4,4’−MDIから構成される。ガス状の流れ(5)は、凝縮器(8)に供給され、凝縮器(8)内で流れ(5)が凝縮される。次に、このようにして得られた高純度の液状4,4’−MDIは貯蔵タンク(9)に貯蔵される。
【0114】
実施例1(本発明に従う)
図1に概略的に示した装置を使用した。カラムK2へのイソシアネートライン(流れ4)、及び複数流、流れ3s、7を、Hastelloy−C4で作成した。
【0115】
50.2質量%の4,4’−MDI、6.8質量%の2,4’−MDI、21.2質量%の3−環MDIを含む、2.0kg/hの粗製−MDIを、材料1.4571でできた落下フィルム蒸発器(falling-film evaporator)内で、5mbarの圧力で蒸発させた。
【0116】
凝縮の後、85.1質量%の4,4’−MDI、12.6質量%の2,4’−MDI、2.3質量%の3−環−MDIを含んだ蒸留物が得られた。凝縮器で結露した蒸留物の質量流は、0.690kg/hであった。
【0117】
蒸留物を液体状態で、側流カラムK2(側部取出カラムK2)に供給した。カラムK2及び底部相蒸発器は、材料1.4571でできていた。カラムは、圧力損失が小さい構造パッキングで構成されていた。カラムの頂部圧は、5mbarであった。
【0118】
カラムK2は、エンリッチメント部分(増加部分)とストリッピング部分で構成されていた。カラムK2のストリッピング部分では、流れIは、ガス状態で、オーダードパッキング要素の下方の第1の側部取出部(6a)を使用して取出され、そしてカラムK1に供給された(混合物Iの流れ)。カラムK1(7)の底部相流出は、カラムK2への供給(フィード)部の下側で、カラムK2に供給された。供給部の上側では、上側の側部取出部(3a)で、液状フラクション(留分)が取り出された。
【0119】
流れI(6b)は、98.7質量%の4,4’−MDI及び1,3質量%の2,4’−MDIを含んでいた。3−環化合物は530ppmであった。質量流(6)は、0.79kg/hであった。流れ(3k)で、47質量%の4,4’−MDI、及び53質量%の2,4’−MDIの混合物が取出された。質量流は0.14kg/hであった。
【0120】
精錬側部流(6):ガス状の側部流(混合物Iの蒸気、6c)をカラムK1(2)に供給した。材料1.4571でできたカラムK1は、表面積が500m
2/m
3の低圧力損失のオーダードパッキング(構造化)を備えていた。カラムの頂部圧力は15mbarであった。
【0121】
液状化合物Aの供給:カラムK1の頂部で、98.5質量%の4,4’−MDI及び1.5質量%の2,4’−MDIで構成された化合物Aを、液状状態で、最上部のオーダードパッキング要素の上側から供給し、そしてボックスチャンネル液体分配器(11)を使用して分配した。化合物Aの質量流は、0.17kg/hであった。液体Aは、42℃で貯蔵された(高純度の4,4’−MDIが取り込まれた貯蔵タンク(9)からの、及び本発明の方法が既に行われた)4,4’−MDIで構成されていた。化合物Aの二量体含有量は、0.13質量%であった。カラムK1に再循環された生成物(10)の、貯蔵タンク(9)に供給された生成物に対する質量割合は、連続的に0.26g/gであった。
【0122】
カラムK1の頂部では、生成物として、ガス状の流れO(5)が得られ、流れO(5)は、98.5質量%の4,4’−MDI及び1.5質量%の2,4’−MDIで構成されていた。ここで質量流は0.65kg/hであった。流れO(5)は、凝縮器(8)内で5秒以内に、42℃に冷却され、そして貯蔵タンク(9)に供給された。
【0123】
ガス状の流れO中には、ASTM D4663−10に従う加水分解性の塩素の含有量は、本発明の範囲内であり、及び流れI中の含有量に対して、相当に低減された。
【0124】
上述したサンプルで、ガスクロマトグラフィー(GC)−調査を行った。フレームイオン化ディテクター(FID)及び電子簡易ディテクター(ECD)を使用して、及びGCと質量スペクトロメトリーの結合(GC/MS)を使用した調査によって、成分の分類を行った。式IIのN,N−2置換基のカルバモイルクロリドは検知できなかった。環−塩素化MDIの含有量は、0.020面積%(クロマトグラム中の評価された全面積に対する上述した化合物の面積)であった。
【0125】
同時に、ASTM D4661−09に従う全塩素含有量が低く、及びASTM D5629−05に従う酸性度が低い混合物が得られた。
【0126】
実施例2(本発明に従わない)
カラムK1の頂部で、成分Aの質量流を0kg/hに低減したこと以外は、手順を実施例1に記載したように行った。上述したサンプルから、実施例1に類似して、GC−調査を行った。式IIのN,N−2置換基のカルバモイルクロリドは、0.00047面積%であった。環−塩素化MDIの含有量は、0.024面積%であった。