(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同軸導波管を伝送されたマイクロ波を処理容器内に放射し、前記処理容器内の金属面に伝搬させてガスをプラズマ化し、表面波プラズマを生成するためのプラズマ発生用アンテナであって、
前記プラズマ発生用アンテナ内にガスを流すガス経路と、
前記ガス経路に連通し、前記ガス経路を通過したガスを前記処理容器内に導入する複数のガス孔と、
前記ガス経路と分離した状態で前記ガス経路を貫通し、前記同軸導波管を介して遅波板を透過したマイクロ波を通して前記処理容器内に放射する複数のスロットと、を備え、
隣接するスロット間は、前記ガス経路を貫通する部分の第1の間隔が前記処理容器内のプラズマ生成空間へ開口する部分の第2の間隔よりも広くなっていることを特徴とするプラズマ発生用アンテナ。
前記ガスは、前記円周方向に配置された複数のスロットの外周側から、前記第1の間隔でオーバーラップするスロット間の前記ガス経路の領域を通って該複数のスロットの内周側に供給される請求項4に記載のプラズマ発生用アンテナ。
前記隣接するスロット間のオーバーラップ部分の外周側のスロットと内周側のスロットの位置関係と、右側のスロットと左側のスロットの位置関係とはすべてのスロットにおいて同じ関係であることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ発生用アンテナ。
前記オーバーラップ部分のスロット間隔は、前記ガス経路と前記複数のガス孔の境界面の段差により、前記ガス経路側の第1の間隔が前記複数のガス孔側の第2の間隔よりも広くなっていることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ発生用アンテナ。
各スロットは円周方向に向かって左外側部、中央部及び右外側部の3つの部分からなり、隣接するスロットは、前記中央部以外がオーバーラップすることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ発生用アンテナ。
前記オーバーラップしているスロット間の所定の間隔は、前記ガス経路側の第1の間隔において5mm〜15mmであることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ発生用アンテナ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
[プラズマ処理装置の概略構成]
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置10の概略構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置10の概略構成を示した縦断面図である。
【0015】
本実施形態では、半導体ウエハW(以下、ウエハWと称呼する。)にプラズマ処理の一例としてエッチング処理を施すエッチング装置を例に挙げてプラズマ処理装置10を説明する。プラズマ処理装置10は、気密に保持された処理室にてウエハWをプラズマ処理する処理容器100を有する。処理容器100は円筒状で、例えばアルミニウム等の金属から形成されている。処理容器100は接地されている。
【0016】
処理容器100の底部には、ウエハWを載置する載置台105が設けられている。載置台105は、支持部材115により支持され、絶縁体110を介して処理容器100の底部に設置されている。これにより、載置台105は電気的に浮いた状態となっている。載置台105及び支持部材115の材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウム等が挙げられる。
【0017】
載置台105には、整合器120を介してバイアス用の高周波電源125が接続されている。高周波電源125は、載置台105にバイアス用の高周波電力を印加し、これにより、ウエハW側にプラズマ中のイオンを引き込むようになっている。なお、図示していないが、載置台105には、ウエハWを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、ウエハWの裏面に熱伝達用のガスを供給するためのガス流路、ウエハWを搬送する際に昇降する昇降ピン等が設けられている。
【0018】
処理容器100の底部には排気口130が設けられている。排気口130には、真空ポンプを含む排気装置135が接続されている。排気装置135を作動させると、処理容器100内が排気され、所望の真空度まで減圧される。処理容器100の側壁には、ウエハWの搬入及び搬出のためのゲートバルブ145が設けられている。
【0019】
処理容器100の天井部の蓋体150には、同一面内からガスの導入とマイクロ波の供給が可能なプラズマ発生用アンテナ200(以下、アンテナ200と称呼する。)が設けられている。アンテナ200の上部には、マイクロ波を伝送するマイクロ波伝送機構400が連結されている。
【0020】
マイクロ波伝送機構400は、アンテナモジュール410とマイクロ波導入機構450とを有している。マイクロ波出力部300から出力されたマイクロ波は、アンテナモジュール410を介してマイクロ波導入機構450からアンテナ200に伝送されるようになっている。
【0021】
(アンテナの構成)
ここで、本実施形態に係るマイクロ波導入機構450及びアンテナ200の構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本実施形態に係るマイクロ波導入機構450及びアンテナ200の拡大図(左半分)である。
【0022】
マイクロ波導入機構450は、マイクロ波を伝送する同軸構造の導波管(以下、同軸導波管455と称呼する。)を有している。同軸導波管455は、筒状の外部導体455a及び同軸に設けられた内部導体455bを有している。同軸導波管455は、内部導体455bが給電側、外部導体455aが接地側となっている。同軸導波管455の下端には、遅波板480を介してアンテナ200が設けられている。遅波板480は、円板状の誘電部材から形成されている。マイクロ波は、同軸導波管455を伝送し、遅波板480を透過し、アンテナ200へと導かれる。
【0023】
同軸導波管455には、チューナ470が設けられている。チューナ470は、2つのスラグ470aを有し、スラグチューナを構成している。スラグ470aは、円板状であり誘電体で形成されている。スラグ470aは、内部導体455bと外部導体455aとの間に円環状に設けられている。チューナ470は、
図1に示した制御装置500からの指令に基づき図示しないアクチュエータによりスラグ470aを上下動させることによって、インピーダンスを調整するようになっている。制御装置500は、例えば同軸導波管455の終端で50Ωの特性インピーダンスになるようにインピーダンスを調整し、これにより、マイクロ波の出力を最大限に制御する。
【0024】
アンテナ200は、シャワーヘッド(ガスシャワーヘッド)210及びシャワーヘッド210に直流電流を流すDC供給機構250を有する。シャワーヘッド210は、遅波板480の下面に隣接して設けられている。シャワーヘッド210は、円板状であり、アルミニウムや銅等の電気伝導率が高い導電体から形成されている。シャワーヘッド210は、処理容器100内のプラズマ空間U側に露出し、シャワーヘッド210下面に表面波を伝搬させる。
【0025】
シャワーヘッド210は、ガス経路225と、ガス経路225に連通する複数のガス孔215と、ガス経路225及び複数のガス孔215と分離した位置にてマイクロ波を通す複数のスロット220を有する。複数のスロット220は、同軸導波管455を介して遅波板480を透過したマイクロ波を通し、処理容器100内に放射する。複数のスロット220は、ガス経路225を貫通する導波路にて段差を有している。本実施形態では、複数のスロット220は、ガス経路225と複数のガス孔215の境界面であるシャワーヘッド210の下部部材605の上面605cにて段差BUを有している。以下では、ガス経路を貫通する部分の隣接するスロット間の間隔を「間隔WA」(第1の間隔に相当)で示し、処理容器100内のプラズマ生成空間へ開口する部分の間隔を「間隔WB」(第2の間隔に相当)で示す。隣接するスロット220間は、ガス経路225を貫通する部分の間隔WAが処理容器100内のプラズマ生成空間Uへ開口する部分の間隔WBよりも広くなっている。
【0026】
ガス経路225は、複数のスロット220と分離して設けられ、アンテナ200内にガスを流す空間を形成する。複数のガス孔215は、ガス経路225に連通し、ガス経路225を通過したガスを処理容器100内に導入する。シャワーヘッド210のプラズマ側に露出した面は、例えば耐プラズマ性の高いアルミナAl
2O
3や酸化イットリウムY
2O
3の溶射皮膜290で覆われ、導体面がプラズマ空間側に露出しないようになっている。溶射皮膜290には、複数のスロット220及び複数のガス孔215に連通する開口が形成される。
【0027】
遅波板480とシャワーヘッド210との接触面にはOリング485、495が設けられ、大気側に配置されたマイクロ波伝送機構400からシャワーヘッド210及び処理容器100内を真空シールする。これにより、スロット220、ガス経路225、ガス孔215及び処理容器100内を真空状態に保つことができる。
【0028】
図1の制御装置500は、アンテナ200に印加するDC電圧やプラズマプロセスを制御する。制御装置500は、制御部505、記憶部510を有している。制御部505は、記憶部510に記憶されたレシピに従い、プロセス毎にマイクロ波から出力するパワーやアンテナ200に印加する電圧を制御する。なお、制御装置500への指令は、専用の制御デバイスあるいはプログラムを実行するCPU(図示せず)により実行される。プロセス条件を設定したレシピは、ROMや不揮発メモリ(ともに図示せず)に予め記憶されていて、CPUがこれらのメモリからレシピの条件を読み出し実行する。
【0029】
本実施形態のように、シャワーヘッド210が導電体にて形成されている場合、シャワーヘッド210にDC電圧を印加できる。具体的には、制御部505の指令に従い、DC電源255から出力されたDC電圧は、DC印加機構250に供給される。DC印加機構250は、DC電極260、絶縁部材265及び絶縁シート270を有する。DC電極260は、筒状の導電体260aを有し、導電体260aを介してシャワーヘッド210に電気的に接続され、これにより、シャワーヘッド210にDC電圧を印加する。DC電極260は、導電体260aの下端に設けられた図示しない絶縁ソケットによりシャワーヘッド210にネジ止めされている。
【0030】
DC電極260は、同軸導波管455の外部導体455a及び蓋体150に近接している。そのため、DC電極260と外部導体455a、及びDC電極260と蓋体150を電気的に絶縁する必要がある。そこで、DC電極260を絶縁部材265で覆い、DC電極260と外部導体455a、及びDC電極260と蓋体150を絶縁する。更にシャワーヘッド210と蓋体150との間に絶縁シート270を挟む。このようにして、DC電極260と外部導体455a、及びDC電極260と蓋体150を電気的に絶縁することにより、DC電圧がシャワーヘッド210のみに印加される。これにより、DC電圧のかかる部材をできるだけ少なくすることができる。
【0031】
以上のように、本実施形態では、シャワーヘッド210にDC電圧を印加しながら、同一のシャワーヘッド210にマイクロ波を印加することができるため、プラズマ処理装置10を多様なプロセスに適用できる。例えば、マイクロ波が印加されると、シャワーヘッド210の表面に表面波が伝搬する。このとき、シャワーヘッド210の表面にはシース領域が発生し、シース中を表面波が伝搬する。DC電圧は、そのシースの厚さを制御する。例えば、DC電圧をシャワーヘッド210に印加するとシースを厚く制御することができ、その結果、シャワーヘッド210の表面を伝搬する表面波の伝搬距離を長くすることができる。このようにDC電圧の制御によりプラズマシース電圧を操作することによって、表面波の伝搬距離を制御し、プラズマの電子密度分布、イオン密度分布、ラジカル密度分布を最適化することができる。
【0032】
なお、シャワーヘッド210が絶縁体で形成されている場合、DC電圧をシャワーヘッド210に印加することはできない。その場合にはRF電圧を印加することにより、上述したDC電圧をかけた場合と同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上に説明したように、
図1及び
図2に示した本実施形態に係るプラズマ処理装置10によれば、同軸導波管455から導入されたマイクロ波は、遅波板480を透過し、シャワーヘッド210の複数のスロット220を通って処理容器100内へ放射される。そのとき、シャワーヘッド210の表面にはプラズマシースを境界条件として分散関係で特徴付けられる波長をもった定在波の金属表面波が発生し、表面波プラズマに吸収される。ガス供給源600から供給されたガスは、ガス供給管602を介して、複数のスロット220と分離してアンテナ200内に設けられたガス経路225に通され、複数のガス孔215から処理容器100内に導入される。複数のスロット220の開口と複数のガス孔215の開口とは同一面内に形成されている。よって、ガスとマイクロ波は同じ天井面から供給される。これにより、ガスの流れを容易に制御し、マイクロ波の表面波により良好なプラズマ制御が可能となり、低電子温度かつ高プラズマ密度のプラズマが生成される。生成された表面波プラズマは、ウエハW上へのエッチング処理に使われる。表面波プラズマは低電子温度であるため、ウエハWはダメージを受けにくく、また、高プラズマ密度であるため処理速度が速くなる。また、シャワーヘッド210が導電体で形成されているため、反応性エッチング等のプロセスを実行することができる。
【0034】
通常の表面波プラズマの場合、アンテナ200は誘電体で形成され、誘電体を機械加工してシャワーヘッドを製作する。この場合、マイクロ波は誘電体を透過するため、その内部でガスがプラズマ化し、放電を生じる可能性が高い。よって、通常の表面波プラズマではシャワーヘッド構造を採用することは困難であった。例えば、アルゴンプラズマにおいて、シャワーヘッド空間内に10mmの空間が空いている場合、約120ボルトの電圧をシャワーヘッド内にかけると、圧力が1Torr(133Pa)のシャワーヘッド内部で異常放電が発生する可能性は高くなる。
【0035】
これに対して、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、シャワーヘッド210が導電体で形成されている。このため、シャワーヘッド210内部にマイクロ波は進入できない。よって、シャワーヘッド210内でガスがプラズマ化しないため、シャワーヘッド210内部で放電現象は生じない。また、本実施形態に係るシャワーヘッド210では、ガスの経路とマイクロ波の経路とは完全に分離されているため、ガスとマイクロ波とはシャワーヘッド210内で接触することはなく、処理容器100内に入って初めて接触する。そのため、本実施形態に係るプラズマ処理装置10を用いれば、ガス孔215で放電が生じてマイクロ波パワーを損失したり、異常放電が生じたりすることを回避できる。
【0036】
図2に拡大して示したように、複数のスロット220は、ガスの供給経路であるガス経路225及び複数のガス孔215と分離した位置に設けられている。複数のスロット220は、上部222にてシャワーヘッド210の上部を縦方向に貫通し、ガス経路225と分離した状態でガス経路225を貫通し、更に段差部BUを有しながら下部221にて下部部材605を縦方向に貫通する。このようにして、スロット220は導波路を形成する。また、スロット220の一端部は遅波板480に隣接し、他端部は処理容器内に形成されたプラズマ空間U側に開口している。
【0037】
図3の上部図は、マイクロ波導入機構450及びアンテナ200を示し、
図3の下部図は、
図3の上部図のA−A断面を示す。複数のスロット220は、その長手方向が円周方向に位置するように配置されている。隣接するスロット220間は、径方向に所定の間隔を設けてオーバーラップする。ここでは、4つのスロット220a〜220dが円周方向に均等に配置されている。スロットの数は4つに限らず、2つ以上であればいくつであってもよい。複数のスロット220は、アンテナ200の中心軸Oに対して対称に配置されている。
【0038】
シャワーヘッド210には、図示しない冷却路が設けられ、シャワーヘッド210を冷却する。シャワーヘッド210は電気伝導率が高い導電体であり、また、スロットを複数に分割して形成しているため、マイクロ波の伝送経路であって加熱され易い複数のスロット220からの熱をスロット220間から効率よく処理容器100本体側へと逃すことができる。なお、スロット形状については、後程詳述する。
【0039】
ガス孔215は、円周方向に形成された複数のスロット220の内側及び外側に均等に複数形成されている。これにより、複数のガス孔215から導入されるガスを、同一面内に位置する複数のスロット220から供給されるマイクロ波パワーによりプラズマ化する。これによって、プラズマを均一に生成することができる。
【0040】
(マイクロ波出力部及びマイクロ波伝送機構)
次に、マイクロ波出力部300及びマイクロ波伝送機構400の構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4の左側はマイクロ波出力部300の構成を示し、
図4の右側はマイクロ波伝送機構400の構成を示す。
【0041】
マイクロ波出力部300は、マイクロ波電源305、マイクロ波発振器310、アンプ315及び分配器320を有する。マイクロ波電源305は、8.35GHz、5.8GHz、2.45GHz、1.98GHz、又はそれ以下の周波数のマイクロ波を出力する。マイクロ波発振器310は、例えば、2.45GHzの所定周波数のマイクロ波をPLL発振させる。アンプ315は、発振されたマイクロ波を増幅する。分配器320は、増幅されたマイクロ波を複数に分配する。分配器320は、マイクロ波ができるだけ損失せずに伝送されるように入力側と出力側のインピーダンス整合を取りながら、アンプ315で増幅されたマイクロ波を分配する。分配されたマイクロ波は、各アンテナモジュール410に伝送される。本実施形態では、アンテナモジュール410は7つ設けられている。
【0042】
アンテナモジュール410は、位相器412、可変ゲインアンプ414、メインアンプ416、アイソレータ418を有し、マイクロ波出力部300から出力されたマイクロ波をマイクロ波導入機構450に伝送する。
【0043】
マイクロ波は、各アンテナモジュール410に接続された同軸導波管455から処理容器100内に放射され、その内部でマイクロ波を空間合成する。アイソレータ418は小型のものでよく、メインアンプ416に隣接して設けることができる。
【0044】
位相器412は、スラグチューナ(チューナ470)によりマイクロ波の位相を変化させるように構成され、これを調整することにより放射特性を変調させる。例えば、アンテナモジュール410毎に位相を調整することにより、指向性を制御してプラズマ分布を変化させることや、隣接するアンテナモジュール410において90°毎に位相をずらすようにして円偏波を得ることができる。なお、このような放射特性の変調が不要な場合には位相器を設けなくてもよい。
【0045】
可変ゲインアンプ414は、メインアンプ416へ入力するマイクロ波の電力レベルを調整し、個々のアンテナモジュール410のバラつきの調整やプラズマ強度の調整を行う。可変ゲインアンプ414をアンテナモジュール410毎に変化させることにより、発生するプラズマに分布を生じさせることもできる。
【0046】
メインアンプ416は、ソリッドステートアンプを構成する。ソリッドステートアンプは、図示しない入力整合回路、半導体増幅素子、出力整合回路及び高Q共振回路を有することも可能である。
【0047】
アイソレータ418は、アンテナ200で反射してメインアンプ416に向かうマイクロ波の反射波を分離するものであり、サーキュレータとダミーロード(同軸終端器)とを有している。サーキュレータは、アンテナ200で反射したマイクロ波をダミーロードへ導き、ダミーロードはサーキュレータによって導かれたマイクロ波の反射波を熱に変換する。このようにしてアンテナモジュール410から出力されたマイクロ波は、マイクロ波導入機構450に伝送され、アンテナ200に導かれる。
【0048】
[スロット形状]
次に、
図5及び
図6を参照しながら、スロット形状と電界強度分布について説明する。本実施形態では、
図5に示したように、4つのスロット220a〜220dが円周方向に均等に配置されている。これらのスロット220a〜220dは、すべて同一形状であり、円周方向に細長い形状に形成されている。また、本実施形態では、4つのスロット220a〜220dは、アンテナ200の中心軸Oに対して対称に配置されている。
【0049】
4つのスロット220a〜220dの円周方向の長さは、(λg/2)−δであり、スロット220a、220b、220c、220dの中心位置PA、PB,PC、PDにマイクロ波の電界強度のピークがくるように設計されている。ただし、スロット220の円周方向の長さは、(λg/2)−δに限らず、n(λg/2)−δ(nは1以上の整数)であればよく、この長さであれば、スロット220の円周方向の長さはスロット毎に異なっていてもよい。
【0050】
なお、λgは管内波長(実効的な波長)であり、δは、微調整成分(0を含む)である。管内波長λgは、λ
0/√ε
rで示される。λ
0は、自由空間における波長、ε
rは、誘電部材の誘電率である。例えば、スロット内に充填される誘電部材が石英の場合、管内波長λgは、λ
0/√3.78で示される値となる。スロット内は、石英に限らず、アルミナAl
2O
3やテフロン(登録商標)等で充填されてもよい。
【0051】
隣接するスロット220間は、径方向に所定の間隔を設けてオーバーラップしている。また、隣接するスロット220間は各スロット220の両側にてオーバーラップして設けられている。これにより、周方向にスロット220のない部分が生じないようにし、周方向の放射特性が均一になるように設計されている。スロットはすべて同じ形状である。ここではスロット220aを例に挙げて説明すると、スロット220aは、円周方向に向かって左外側部220a1、中央部220a2及び右外側部220a3と3つの部分からなり、左外側部220a1は、所定の間隔を設けて隣接スロット220dの右外側部とオーバーラップしている。ここでは、スロット220aの左外側部220a1が外周側、スロット220dの右外側部が内周側に位置する。同様に、スロット220aの右外側部220a3は、所定の間隔を設けてスロット220bの左外側部とオーバーラップしている。ここでは、スロット220aの右外側部220a3が内周側、スロット220bの左外側部が外周側に位置する。スロット220aの中央部220a2はオーバーラップしていない。左外側部220a1、中央部220a2及び右外側部220a3は円周上の約45°の角度に形成される。
【0052】
左外側部220a1及び右外側部220a3は概ね扇型である。一方、スロット220aの中央部220a2は直線形状を有し、中央部PAを中心として外周側に位置する左外側部220a1と内周側に位置する右外側部220a3とを斜めに結ぶようになっている。
【0053】
スロット220bに示したように左外側部220b1、中央部220b2及び右外側部220b3の円周方向の長さは、(λg/6)−δ
1、(λg/6)−δ
2、(λg/6)−δ
3であり、ほぼ均等な長さを有している。なお、δ
1、δ
2、δ
3は、微調整成分(0を含む)である。隣接するスロット間のオーバーラップ部分は等しい方が電界強度の分布が均一になるため、δ
1とδ
3とは等しい方が好ましい。なお、
図6では、説明を簡単にするために、δ
1、δ
2、δ
3で示した微調整成分を0とする。
【0054】
スロット220a〜220dは、その内周が、アンテナ200の中心から(λg/4)+δ’の位置になるように形成されている。δ’は、経方向の電界強度分布を均一にするために微調整する微調整成分(0を含む)である。なお、中心からスロット内周までの長さは、λg/4に限られず、λg/4の整数倍に微調整成分(0を含む)を加えたものであればよい。
【0055】
図5に示したスロットの形状及び配置によれば、
図6に示したように、スロット220a、220b、220c、220dの中心位置PA,PB,PC,PDの位置にマイクロ波のパワー(電界強度)のピークがくるように設計されている。すなわち、複数のスロットの円周方向のピッチは、λg/2に設計されている。また、本実施形態におけるスロットの長さは、λg/2であるから各スロットの両端部の電界強度は0となる。そうすると、中央部では電界強度が強く、左外側部及び右外側部では電界強度が弱くなる。よって、両外側部では隣接するスロットをオーバーラップさせる。これによりスロットの両側において放射されるマイクロ波のパワーを大きくすることができる。この結果、中央部と両外側部において電界強度分布を均一にすることができる。また、隣接するスロット220間のオーバーラップ部分の外周側のスロットと内周側のスロットの位置関係と、右側のスロットと左側のスロットの位置関係とは、前記複数のスロットのすべてにおいて同じ関係になっている。例えば、時計回りに見ると、すべてのスロットにおいて、右側のスロットが左側のスロットの外周側に位置するようにオーバーラップする。
【0056】
かかるスロット形状及び配置により、円周方向及び径方向の電界強度の分布の均一性を図ることができる。これにより、期待通りのマイクロ波の放射特性及び放射均一性を実現することができる。
【0057】
[ガス経路]
次に、上記のように配置された複数のスロット220に対するガス経路の最適化について説明する。シャワーヘッド210では、プラズマを均一に生成するためにガス流速の均一性が求められる。しかしながら、シャワーヘッド210にスロット220と分離してガス経路を設ける場合、スロット220の配置によりガスの通り道に制約が生じる、特に、総ガス流量の大きいプロセスにおいては、シャワーヘッド210の構造上ガス流速の均一性が損なわれる場合がある。たとえば、パターンを形成し、それをマスクにして下層の膜を酸素系エッチングガスでエッチングし、トレンチを形成する場合、処理容器内の圧力80mTorr(10.6Pa)、ガス種及びガス流量C
4F
8/Ar/N
2/O
2=30/1200/70/23sccmのプロセスでは、ガスの総流量は約1400sccmにもなる。このようなプロセスにおいても、本実施形態では、
図1のB−B断面である
図7に示したように、プラズマ処理装置10に配置された7つのアンテナ200の下面a,b,c,d,e,f,gに均一に開口されたガス孔(
図3のA−A断面図に図示されたガス孔215参照)から最大で約1400sccmのガスを、ガス流速の均一性を保ちながら処理容器100内に導入しなければならない。ここで、ガス流速の均一性を向上させるために、スロット角度や位置を変えてしまうと、ガス流速は向上するものの、マイクロ波の放射特性及び放射均一性が損なわれてしまう。
【0058】
本実施形態の場合、
図8に示したように、ガス供給管602に接続されたガス導入口602aは、スロット220の外周側に配置される。このように、マイクロ波の漏洩のリスクを減らすためにガス導入口602aはスロット220の内周側に設けず、外周側に設けている。よって、ガスは、スロット220の外周側からスロット間のオーバーラップ部分に設けられた所定の間隔を通ってスロット220内部まで運ばれ、スロット220内部のガス孔215から処理容器100内に導入される。従って、オーバーラップ部分において、ガスの通り道が狭くなる。そのような場合であっても、本実施形態では、総流量が約1400sccmのガスをスロット220内のガス孔215までスムーズに流し、処理容器100に均一に導入するように、ガス流速の均一性を損なわないシャワーヘッド210構造を提案する。
【0059】
[スロットの段差]
すなわち、本実施形態に係るシャワーヘッド210は、導波路も兼ねているスロット220に段差を設け、ガスコンダクタンスの増大とマイクロ波の放射特性の均一性の維持とを両立する構造を有する。
図9及び
図10に、2つの異なるプラズマ発生用アンテナを示す。
図9及び
図10の左側のプラズマ発生用アンテナ900(以下、アンテナ900と称呼する。)では、ガス経路を貫通するスロット920の間隔は、プラズマ生成空間へ開口する部分の間隔WBと同じである。一方、
図9及び
図10の右側のアンテナ200では、ガス経路を貫通するスロット220の間隔WAが、プラズマ生成空間へ開口する部分の間隔WBより広い。なお、アンテナ200,900のプラズマ生成空間へ開口する部分の間隔、及びアンテナ900のガス経路を貫通するスロット920の間隔はすべて同一間隔であるため、間隔WBと同一名称をつける。
【0060】
以上の2つのアンテナ200,900について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。
【0061】
マイクロ波のプラズマへの放射特性はプラズマと接するスロット形状(つまり、
図5に示したスロット形状及び配置)のみで決まり、それに至る導波路の形状には依存しない。つまり、処理容器内のプラズマ生成空間Uへ開口する部分のスロット形状やスロット間の間隔WBを変えなければマイクロ波の伝送特性は損なわれない。そして、マイクロ波の伝送特性が損なわれなければ、スロット220にて形成される導波路の形状、構造を設計上変更することができる。そこで、アンテナ900,200では、シャワーヘッドの下部部材905、605に形成されたスロット921、221の形状及び配置は同じであり、プラズマ生成空間への開口部分の間隔WBも同じである。これにより、処理容器100内に放射されるマイクロ波の放射特性及び放射均一性を維持することができる。
【0062】
一方、ガスコンダクタンスを増大させるために、導波路の形状、構造を次のように変更する。すなわち、アンテナ900では、複数のスロット920は、ガス経路995a、995b、995cと複数のガス孔915との境界面で段差を有しない。よって、アンテナ900では、ガス経路を貫通した隣接するスロット920の間隔WB(ガス経路995bの幅)は、プラズマ生成空間へ開口する部分の間隔WBと同じ間隔である。
【0063】
これに対して、アンテナ200では、複数のスロット220は、ガス経路225a、225b、225cと複数のガス孔215との境界面で段差を有する。これにより、アンテナ200では、ガス経路を貫通した隣接するスロット220の間隔WAを開口部分の間隔WBよりも広く形成することができる。
【0064】
図10は、
図9のスロットの段差部分を拡大した図である。
図10を参照すると、アンテナ900では、各スロット920a、920bは垂直方向に段差を有することなくシャワーヘッドの下部部材905を貫通する。一方、アンテナ200では、スロット220a、220bは、ガス経路225a、225b、225cと複数のガス孔215の境界面で段差BUを有している。つまり、オーバーラップ部分の内周側に位置するスロット(ここでは、スロット220b)は、段差によりシャワーヘッドの下部部材605にて外周側に突出し、オーバーラップ部分の外周側に位置するスロット(ここでは、スロット220a)は、段差によりシャワーヘッドの下部部材605にて内周側に入り込む。
【0065】
このようにしてガス経路225と複数のガス孔215の境界面の段差により、オーバーラップ部分のスロット間隔のうち、ガス経路に設けられたスロット220a、220b間の間隔WA(ガス経路225bの幅)は、スロット220a、220bの開口部分の間隔WB(複数のガス孔215側の幅)より広くなる。これにより、
図9及び
図10に示したアンテナ200のガス経路225bの間隔WAをアンテナ900のガス経路995bの間隔WBよりも広くすることができ、ガスコンダクタンスを増大させることができる。この結果、ガス流速の均一性を高めることができる。
【0066】
特に、ガスは、
図8に示したように複数のスロット220の外周側に設けられたガス導入口602aから供給され、複数のスロット220の外周側のガス経路225aの領域から、間隔WAでオーバーラップするスロット220間のガス経路225bの領域を通って複数のスロット220の内周側のガス経路225cの領域に供給される。このため、スロット220がオーバーラップしている部分では、ガス経路が狭くなり、構造的にガスの流れが悪くなる。しかしながら、スロット220をオーバーラップさせる形状や開口部分の間隔WBは、マイクロ波の放射特性を良好にするために必要な形状及び間隔である。
【0067】
よって、本実施形態のように段差BUを設けて、ガス経路225bの間隔WAをスロットの開口部における間隔WBより広くすることにより、スロット220がオーバーラップしている部分でのガス経路225bのガスコンダクタンスを増大させ、
図8及び
図10に示したようにガス流量F1>ガス流量F2とし、複数のスロット220の外周側のガス経路225aの領域からガス経路225bを経て、内周側のガス経路225cの領域にスムーズにガスを供給する効果は大きい。なお、ガス孔215は差圧をつけるために、上部の径が1〜1.5mm、下部の径が0.5mm程度となっている。
【0068】
発明者らは、電磁界シミュレーション解析を行ったところ、スロットの導波路が段差形状になったにも関わらず、マイクロ波放射特性が維持され、かつ、ガス流速の均一性が高まったことを証明することができた。
【0069】
オーバーラップ部分のスロット間の高さ、幅(間隔)については、本実施形態ではスロット220に段差を設けることにより、間隔を広げてガス経路を広くした。しかし、ガス経路を広くする場合、高さ方向Hを広げることも考えられる。しかしながら、高さ方向Hを広げるのは、マイクロ波のパワーが減衰するため避けたほうがよい。たとえば、高さHが1.2倍になると表面積は1.44倍になりマイクロ波のパワーを約50%ロスすることになる。
【0070】
特に、本実施形態では、マイクロ波のモードはTE10であり、スロットを通りやすいモードである。それでもなお、ガス経路を高さ方向Hを広げた場合、マイクロ波の伝送経路が長くなるためマイクロ波のパワーが減衰する。TE10より高次のモードのマイクロ波では、さらにマイクロ波のパワーの減衰量は大きくなる。この結果、処理室内に放射されるマイクロ波のパワーは弱まってしまう。以上から、高さ方向Hを広げることは避けるべきである。
【0071】
また、段差部分BUでは、スロットの横方向の幅の1/2弱の段差まで許容され、マイクロ波の伝送特性を損なわない。すなわち、段差により最も狭くなった部分のスロット幅は1〜2mmであってもよい。段差部分以外のスロット幅は3〜5mmである。
【0072】
かかる構成のシャワーヘッド210によれば、ガスコンダクタンスの増大とマイクロ波の放射特性の均一性の維持とを両立することができる。
【0073】
(スロットの変形例)
図11に一実施形態の変形例に係る複数のスロットの配置を示す。本変形例では、スロットの個数が6つである点が、上記実施形態と異なる。この場合においても、6つのスロット220a〜220fの円周方向の長さは、λg/2−δであり、スロット220a〜220fの中心位置にマイクロ波の電界強度のピークがくるように設計される。ただし、スロット220の円周方向の長さは、λg/2−δに限らず、n(λg/2)−δ(nは1以上の整数)であればよい。なお、δは、微調整成分(0を含む)である。
【0074】
隣接するスロット220間は、径方向に所定の間隔を設けてオーバーラップしている。隣接するスロット220間は各スロット220の両側にてオーバーラップしている。スロットはすべて同じ形状である。たとえば、スロット220cは、中心軸からみて左外側部220c1、中央部220c2及び右外側部220c3と3つの部分からなり、左外側部220c1は、所定の間隔を設けてスロット220bの右外側部とオーバーラップしている。ここでは、スロット220cの左外側部220c1が内周側、スロット220bの右外側部が外周側に位置する。同様に、スロット220cの右外側部220c3は、所定の間隔を設けてスロット220dの左外側部とオーバーラップしている。ここでは、スロット220cの右外側部220c3が外周側、スロット220dの左外側部が内周側に位置する。スロット220cの中央部220c2はオーバーラップしていない。
【0075】
スロット220の左外側部、中央部及び右外側部の円周方向の長さは、λg/6−δ
2、λg/6−δ
1、λg/6−δ
3であり、ほぼ均等な長さを有している。なお、δ
1、δ
2、δ
3は、微調整成分(0を含む)である。左外側部、右外側部は扇型であり、左外側部と右外側部とは中央部によって斜めに直線上に結ばれている。
【0076】
[アンテナの変形例]
最後に一実施形態の変形例1〜3に係るアンテナ200について、
図12〜
図14を参照しながら説明する。
【0077】
(アンテナの変形例1)
まず、一実施形態の変形例1に係るアンテナ200について、
図12を参照しながら説明する。
図12に示した変形例1に係るアンテナ200は、上記実施形態に係るアンテナ200に替えて本実施形態に係るプラズマ処理装置10に適用され得る。
【0078】
図12に示したアンテナ200では、複数のスロット220には誘電部材800が充填されている。誘電部材800としては、石英等を用いることができる。これにより、スロット220内にプラズマが進入することを防ぐことができる。これにより、異常放電を回避するとともに、プラズマの均一性を高めることができる。更に、スロット220内の誘電部材800により、スロット内を通るマイクロ波の管内波長λg(実効的な波長)を短くすることができる。これにより、シャワーヘッド210の厚さを薄くすることができる。
【0079】
また、変形例1に係るアンテナ200では、例えばアルミニウムで形成されたシャワーヘッド210のプラズマ空間への露出面(下面)には、シリコンの天板700がネジ止めされている。これにより、プラズマによりダメージを受けた天板700を適宜交換することができ、シャワーヘッド210の寿命を延ばすことができる。天板700には、複数のスロット220及び複数のガス孔215に連通する開口が形成され、スロット220と連通する開口には、スロット220と同様に誘電部材800が充填される。
【0080】
(アンテナの変形例2)
次に、一実施形態の変形例2に係るアンテナ200について、
図13を参照しながら説明する。
図13に示した変形例2に係るアンテナ200では、シャワーヘッド210がシリコンで形成されている。変形例2に係るアンテナ200は、上記実施形態に係るアンテナ200に替えて本実施形態に係るプラズマ処理装置10に適用され得る。また、変形例2に係るアンテナ200では、シャワーヘッド210に溶射皮膜を形成することや、天板700を設けることなく、
図13に示したようにシャワーヘッド210のシリコン表面をそのままプラズマ空間に露出してもよい。
【0081】
なお、アンテナの変形例1,2の場合にも、シャワーヘッド210のDC電圧を印加しながら、マイクロ波を放射することができ、これにより、多様なプロセスを実行することができる。
【0082】
(アンテナの変形例3)
次に、一実施形態の変形例3に係るアンテナ200について、
図14を参照しながら説明する。
図14に示した変形例3に係るアンテナ200では、ガス経路が2系統設けられている。変形例3に係るアンテナ200も、上記実施形態に係るアンテナ200に替えて本実施形態に係るプラズマ処理装置10に適用され得る。変形例3の場合、シャワーヘッド210のガス経路225は、ガス経路225a及びガス経路225bに分離されている。所望のガス1は、ガス供給源600(
図1参照)から出力され、ガス経路225aを通って複数のガス孔215に入り、ガス孔215から処理容器100内に導入される。所望のガス2もまた、ガス供給源600(
図1参照)から出力され、ガス経路225bを通って所望のガス1が通過したガス孔215とは別の複数のガス孔215に入り、ガス孔215から処理容器100内に導入される。これにより、隣接するガス孔215から異なる種類のガスを交互に導入することができる。これによれば、2系統のガスの流れを制御することができ、処理容器内の空間にて2種類以上のガスを反応させることができる(ポストミックス)。なお、ガス経路は2系統に限らず、3種類以上のガスを混合せずに別々に供給可能な3系統以上のガス経路に分かれていてもよい。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態及び複数の変形例に係るアンテナ200及びそのアンテナ200を用いたプラズマ処理装置10によれば、ガス及びマイクロ波を同一面内から供給することができる。具体的には、アンテナ200の放射特性を損なうことなく、ガスのコンダクタンスを増加させ、ガスの流速の均一性を高めることができる。これにより、多様なプロセス条件においても均一なプラズマを生成し、多様なプロセスを実行することができる。
【0084】
なお、オーバーラップ部分のスロットの間隔は、ガス経路側(すなわち、
図10の間隔WA)において5mm〜15mmであってもよい。
【0085】
また、マイクロ波の伝送特性を損なわなければ、導波路の段差は、テーパ形状であってもよい。
【0086】
また、ガス孔215は均等に配置されていなくてもよい。例えば、スロット220の外周側とスロット220の内周側のガス経路225の差圧に応じて、スロット220の外周側に配置されたガス孔215の径を、スロット220の内周側に配置されたガス孔215の径より小さく形成してもよい。
【0087】
また、スロット220の外周側とスロット220の内周側のガス経路225の差圧に応じて、スロット220の外周側に配置されたガス孔215の数を、スロット220の内周側に配置されたガス孔215の数より少なくしてもよい。
【0088】
また、いわゆるポストミックスにより、2種類のガスをスロット220の外周側に配置されたガス孔215と内周側に配置されたガス孔215とから別々に導入する場合には、外周側に配置されたガス孔215のガス流速と内周側に配置されたガス孔215のガス流速とを変えるようにして、各ガスを別々に制御してもよい。
【0089】
<おわりに>
以上、添付図面を参照しながら本発明のプラズマ発生用アンテナ、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法について好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明のプラズマ発生用アンテナ、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明のプラズマ発生用アンテナ、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法の技術的範囲に属するものと了解される。また、上記実施形態及び変形例が複数存在する場合、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0090】
たとえば、本発明に係るプラズマ処理装置は、
図15に示したようにアンテナ200を1つ有してもよい。
図15は、一実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す。この場合においても、スロットに段差を設けることにより、アンテナ200の放射特性を損なうことなく、ガスのコンダクタンスを増加させ、ガスの流速の均一性を高めることができる。これにより、多様なプロセス条件においても均一なプラズマを生成し、多様なプロセスを実行することができる。
【0091】
また、本発明に係るプラズマ処理装置のアンテナ200の数は、いくつであってもよい。例えば、
図16は、一実施形態の変形例に係るマイクロ波出力部とマイクロ波伝送機構の構成を示す。本発明に係るプラズマ処理装置のアンテナ200が1つの場合、
図16のようにマイクロ波出力部300内に分配器320を設ける必要はない。また、マイクロ波伝送機構400内のアンテナモジュール410は1つあればよい。
【0092】
また、本発明に係るプラズマ処理装置に供給されるパワーは、マイクロ波に限られず、100MHzのRF帯から3GHzのマイクロ波帯の電磁波であればよい。
【0093】
また、本発明に係るプラズマ処理装置で実行可能なプラズマプロセスはエッチングプロセスに限られず、成膜、アッシング、スパッタリング等、いかなるプロセスでもよい。
【0094】
前記複数のスロットは、前記ガス経路を貫通する導波路にて前記段差を有してもよい。
【0095】
前記複数のスロットは、前記ガス経路と前記複数のガス孔の境界面で段差を有してもよい。
【0096】
前記複数のスロットは、誘電体で充填されてもよい。
【0097】
前記複数のスロットは、その長手方向が円周方向に位置するように配置され、隣接するスロット間は、径方向に所定の間隔を設けてオーバーラップし、前記オーバーラップしたスロット間の所定の間隔は、前記ガス経路を貫通する部分の第1の間隔が前記プラズマ生成空間へ開口する部分にてオーバーラップした第2の間隔よりも広くなっていてもよい。
【0098】
前記ガスは、前記円周方向に配置された複数のスロットの外周側から、前記第1の間隔でオーバーラップするスロット間の前記ガス経路の領域を通って該複数のスロットの内周側に供給されてもよい。
【0099】
前記隣接するスロット間のオーバーラップ部分の外周側のスロットと内周側のスロットの位置関係と、右側のスロットと左側のスロットの位置関係とはすべてのスロットにおいて同じ関係であってもよい。
【0100】
前記複数のスロットは、円周方向に均等に配置されてもよい。
【0101】
前記複数のスロットは、前記プラズマ発生用アンテナの中心軸に対して対称に配置されてもよい。
【0102】
前記複数のスロットの円周方向のピッチは、n(λg/2)−δ(nは1以上の整数)であってもよい。
【0103】
前記複数のスロットの円周方向の長さは、n(λg/2)−δ(nは1以上の整数)であってもよい。
【0104】
前記オーバーラップ部分のスロット間隔は、前記ガス経路と前記複数のガス孔の境界面の段差により、前記ガス経路側の第1の間隔が前記複数のガス孔側の第2の間隔よりも広くなってもよい。
【0105】
各スロットは円周方向に向かって左外側部、中央部及び右外側部の3つの部分からなり、隣接するスロットは、前記中央部以外がオーバーラップしてもよい。
【0106】
前記オーバーラップしているスロット間の所定の間隔は、前記ガス経路側の第1の間隔において5mm〜15mmであってもよい。
【0107】
本国際出願は、2011年12月12日に出願された日本国特許出願2011−271435号に基づく優先権及び2011年12月15日に出願された米国仮出願61/576042号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を本国際出願に援用する。