特許第6046073号(P6046073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6046073-半導体ウエハ表面保護用粘着テープ 図000004
  • 特許6046073-半導体ウエハ表面保護用粘着テープ 図000005
  • 特許6046073-半導体ウエハ表面保護用粘着テープ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046073
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】半導体ウエハ表面保護用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20161206BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01L21/304 622J
   C09J7/02 Z
   C09J133/14
   C09J175/04
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-59710(P2014-59710)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-185641(P2015-185641A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100122242
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 多香子
(72)【発明者】
【氏名】横井 啓時
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−199623(JP,A)
【文献】 特開2002−155248(JP,A)
【文献】 特開2013−142138(JP,A)
【文献】 特開2011−151163(JP,A)
【文献】 特開2013−229563(JP,A)
【文献】 特開2013−201263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/02
C09J 133/14
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粘着剤層と基材フィルムとを有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、
前記粘着剤層がエネルギー線の照射により硬化することがなく、
23℃における剥離速度50mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力Aと、23℃における剥離速度500mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力Bとの比B/Aが4.0未満であり、
剥離速度300mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力について、23℃における粘着力が1.2〜4.5N/25mmであり、50℃における粘着力が23℃における粘着力の50%以下であり、
前記粘着剤層は、有機溶媒中で合成された(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とし、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、水酸基及びカルボキシル基を有し、酸価が40〜70mgKOH/gであることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項2】
少なくとも粘着剤層と基材フィルムとを有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、
前記粘着剤層がエネルギー線の照射により硬化することがなく、
23℃における剥離速度50mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力Aと、23℃における剥離速度500mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力Bとの比B/Aが4.0未満であり、
剥離速度300mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力について、23℃における粘着力が1.2〜4.5N/25mmであり、50℃における粘着力が23℃における粘着力の50%以下であり、
前記粘着剤層は、水溶液中で合成された(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とし、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対してイソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤の含有量が0〜0.1質量部であることを特徴とするウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項3】
表面に10μm以上の段差がある半導体ウエハに貼合され、前記半導体ウエハを300μm以下まで研削することに用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ表面保護用粘着テープに関する。さらに詳しくは、半導体ウエハを薄膜に研削する際に使用される半導体ウエハ表面保護用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、高純度シリコン単結晶等をスライスして半導体ウエハとした後、イオン注入、エッチング等により該ウエハ表面に集積回路を形成して製造される。集積回路が形成された半導体ウエハの裏面を研削、研削等することにより、半導体ウエハは所望の厚さにされる。この際、半導体ウエハ表面に形成された集積回路を保護するために、半導体ウエハ表面保護用粘着テープが用いられる。裏面研削された半導体ウエハは、裏面研削が終了した後にウエハカセットへ収納され、ダイシング工程へ運搬され、半導体チップに加工される。半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、一般的に、基材フィルムに粘着剤層が積層されてなり、半導体ウエハの裏面に粘着剤層を貼付して用いるようになっている。
【0003】
従来は、裏面研削により半導体ウエハの厚さを200〜400μm程度まで薄くすることが行われていた。しかし、近年の高密度実装技術の進歩に伴い、半導体チップを小型化する必要が生じ、半導体ウエハの薄厚化が進んでいる。半導体チップの種類によっては、100μm程度まで薄くすることが必要となっている。また、一度の加工によって製造できる半導体チップの数を多くするためウエハの直径についても大型化される傾向にある。これまでは直径が5インチや6インチのウエハが主流だったのに対し、近年では直径8〜12インチの半導体ウエハから半導体チップに加工することが主流となっている。
【0004】
半導体ウエハの薄厚化及び大径化の流れは、特に、NAND型やNOR型が存在するフラッシュメモリの分野や、揮発性メモリであるDRAMなどの分野で、顕著な傾向を示している。例えば、直径12インチの半導体ウエハを用いて、150μmの厚さ以下まで研削することも珍しくない。
【0005】
通常、半導体ウエハはロボットアームによりウエハカセットと呼ばれる専用のケースから一枚ごとに取り出され、研削機器内にある半導体ウエハ固定用治具で保持されて、裏面研削が行われる。裏面研削された半導体ウエハは、ロボットアームにより、ウエハカセットに収納され、次の工程へ搬送される。大口径の半導体ウエハを薄厚まで研削すると、半導体ウエハの剛性が低下し、反りが生じやすくなる。その際に半導体ウエハの反りが大きいと、次の工程への搬送時に吸着不良が発生したり、最悪の場合は搬送の途中で吸着アームから外れて半導体ウエハが落下したりしてしまうなどの問題が発生していたが、裏面研削工程からダイシングテープマウント工程まで一括して実施するようなインラインシステムと呼ばれる薄膜研削専用機の登場や、特殊な半導体ウエハ表面保護用粘着テープ(例えば、特許文献1,2、参照)の開発により、解決されつつある。これらの半導体ウエハ表面保護用粘着テープや薄膜研削専用装置の導入により、半導体ウエハ搬送時の搬送エラーの問題が解消され、今後も研削厚みが益々薄膜へとシフトしていくと考えられている。
【0006】
ところが、研削後の薄型ウエハはダイシングテープやダイシング・ダイボンディングフィルムへのマウントが行われ、その後、半導体ウエハ表面保護用粘着テープは装置内で剥離される。上記のように、半導体ウエハ表面保護用粘着テープの剥離の際に半導体ウエハが、大径で薄膜であるため、剥離力が高いと半導体ウエハに負荷がかかってしまい容易に割れてしまうといおう問題が発生している。
【0007】
更に、近年ではフリップチップ実装方式などが増えてきており、半田バンプや金バンプなどによる接合方式が増えてきている。特にこれらのウエハはアンダーフィルと呼ばれる樹脂で封止するのでアンダーフィルとの密着性向上のため、ウエハ表面の活性化を行いアンダーフィルとの密着性を強化する傾向にある。しかし、アンダーフィルとの密着性向上に伴い、半導体ウエハ表面保護用粘着テープとの密着性も向上し、必要な剥離力が高くなってしまい剥離不良の問題を発生させている。
【0008】
特に金バンプ付の半導体ウエハは、液晶ドライバーとして用いられており、テレビの普及と共に成長しているデバイスである。また、近年ではスマートフォンやタブレット端末の爆発的な普及につれて、更なる高性能化及び生産工程の高効率化が進んでおり、それに伴って半導体ウエハの大口径化及びチップの薄膜化が格段に進んでいる。具体的には、これまでは6インチの金バンプ付の半導体ウエハは、300μm厚までしか研削しなかったが、近年では12インチの金バンプ付の半導体ウエハを50μm以下まで研削することも珍しくない。
【0009】
半導体ウエハ表面保護用粘着テープには、研削工程中は半導体ウエハを保持する保持力が必要であり、他方で剥離時には低い粘着力が要求されることから、従来、薄膜の半島体ウエハには、紫外線硬化型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープが多く使われている。紫外線硬化型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、半導体ウエハへの貼合時は高い粘着力を有するため密着性に優れ、剥離前に紫外線を照射することによりオリゴマー又はポリマーが架橋することで粘着力を低下させるため、容易に剥離することができる(例えば、特許文献3、参照)。
【0010】
紫外線硬化型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、紫外線照射工程を必須とするため、工程管理が煩雑であり、また反応性が高いため、特殊な表面処理が行われた半導体ウエハの活性な面と反応して、剥離不良や半導体ウエハの割れを発生させてしまうという問題が度々発生していた。さらに金バンプ付きの半導体ウエハについては、紫外線照射を嫌う回路が形成されていることが多いためか、紫外線硬化型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープはほとんど使用されておらず、紫外線のようなエネルギー線の照射により硬化することのない、いわゆる感圧型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを用いて、薄膜研削されている。
【0011】
ところが、金バンプの表面は非常に荒れていることが多いため、感圧型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、剥離後に金バンプ表面に粘着剤層の残渣が付着してしまう、いわゆる糊残りを発生させるという問題を多く発生させていた。そこで、糊残りが生じないようにすると、半導体ウエハに半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合した後、経時により半導体ウエハから半導体ウエハ表面保護用粘着テープが浮いてしまい、研削後の厚み精度の悪化や研削時のダストの浸入が発生してしまう。金バンプに対する研削時の密着性と研削後の剥離性についてはトレードオフの関係にあり、両立することは出来なかった。
【0012】
これに対して、ジヨードメタンに対する接触角の値等を調整することによって剥離性を向上させた紫外線硬化型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープや(例えば、特許文献4、参照)、同様にヨウ化メチレンに対する接触角の値等を調整することにより剥離性を向上させた感圧型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ(例えば、特許文献5、参照)が開発されており、これらの半導体ウエハ表面保護用粘着テープによれば、活性面に対する糊残りの問題は解決できてきたが、やはり金バンプに対する密着性と剥離性の両方を満たすことは出来ていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−151355号公報
【特許文献2】特開2003−261842号公報
【特許文献3】特開平9−298173号公報
【特許文献4】特開2009−242776号公報
【特許文献5】特開2011−129605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを、表面に段差のある半導体ウエハ、特に金バンプを有する半導体ウエハに貼合したままで放置しても、浮きが発生せず、更に該半導体ウエハの裏面を研削しても、ダストや水が浸入することなく150μm程度の厚さまで半導体ウエハを研削することができ、半導体ウエハの割れや糊残りが無く容易に剥離することができる半導体ウエハ表面保護用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本願発明による半導体ウエハ表面保護用粘着テープは少なくとも粘着剤層と基材フィルムとを有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、前記粘着剤層がエネルギー線の照射により硬化することがなく、23℃における剥離速度50mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力Aと、23℃における剥離速度500mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力Bとの比B/Aが4.0未満であり、剥離速度300mm/minでのSUS280研磨面に対する粘着力について、23℃における粘着力が1.2〜4.5N/25mmであり、50℃における粘着力が23℃における粘着力の50%以下であることを特徴とする。
【0016】
上記半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、前記粘着剤層が、有機溶媒中で合成された(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とし、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、水酸基及びカルボキシル基を有し、酸価が40〜70mgKOH/gであることが好ましい。
【0017】
また、上記半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、前記粘着剤層が、水溶液中で合成された(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とし、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対してイソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤0.1質量部以下を用いて少なくとも一部を架橋させてなることが好ましい。
【0018】
また、上記半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、表面に10μm以上の段差がある半導体ウエハに貼合され、前記半導体ウエハを300μm以下まで研削することに用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを、表面に段差のある半導体ウエハ、特に金バンプを有する半導体ウエハに貼合したままで放置しても、浮きが発生せず、更に該半導体ウエハの裏面を研削しても、ダストや研削水が浸入することなく150μm程度の厚さまで半導体ウエハを研削することができ、半導体ウエハの割れや糊残りが無く容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の一般的な半導体ウエハ表面保護用粘着テープの粘着力の剥離速度依存性の例を示すグラフである。
図2】本発明の実施形態に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープの粘着力の剥離速度依存性の例を示すグラフである。
図3】本発明におけるSUS280研磨面に対する粘着力測定法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の実施形態に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、基材フィルムの少なくとも片面に、少なくとも1種類の粘着剤が塗布され、粘着剤層が形成されている。以下、本実施形態の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの各構成要素について詳細に説明する。
【0023】
(基材フィルム)
基材フィルムとしては、特開2004−186429に記載のものなど公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のエンジニアリングプラスチック、またはポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。またはこれらの群から選ばれる2種以上が混合されたものもしくは複層化されたものでもよい。基材フィルムの厚さは50〜200μmが好ましい。
【0024】
(粘着剤層)
粘着剤層は、紫外線などのエネルギー線で硬化させることなく、そのまま剥離可能な感圧型である。粘着剤層がエネルギー線硬化型である場合は、ラジカル重合等をさせるための光反応開始剤を含有させることが必須となる。しかし、半導体ウエハ表面がプラズマクリーニングなどにより活性化されていると、光反応開始剤と反応してしまう場合があり、この場合、剥離の際に糊残りの問題を発生させたり、剥離不良を発生させたりしてしまうことが多い。これに対して、本願発明による半導体ウエハ表面保護用粘着テープの粘着剤層は、感圧型であるため光反応開始剤等の反応性物質を含有していないため、活性面に対する相性が比較的よく、接着現象などを起こしにくい。
【0025】
粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、ウエハ表面保護用粘着テープの#280で研磨されたステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)に対する粘着力が後述の範囲となるものであれば、特に限定されるものではないが、主成分のポリマーは、(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。主成分のポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを用いることにより、粘着力の制御が容易になり、ゲル分率等をコントロールできるため、半導体ウエハが有機物によって汚染されることや、半導体ウエハ表面保護用粘着テープの剥離後に半導体ウエハに粘着剤が残存する糊残りを低減することができる。主成分とするとは(メタ)アクリル系ポリマーの共重合体を90質量%以上、好ましくは95質量%以上99.9質量%以下であることをいう。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、アクリル、メタクリルの両方を含む意味で使用するものであって、これらの混合のものをも含む。
【0026】
(メタ)アクリル系ポリマーの共重合体としては、例えば特開2003−82307に記載されているように(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー混合物と、ラジカル重合性官能基を含みエチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤と、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体を主成分とすることができる。
【0027】
また、アクリルエマルション系重合体を主成分とするものであって、主モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルと必要に応じてこれら主モノマーと共重合可能な他のモノマーをエマルション重合して得られる重合体を用いることができる。
【0028】
主モノマーとして用いられる(メタ)アクリル酸のアルキルエステル系モノマーの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシルなどがあげられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。2種以上を混合して用いられることが好ましく、2種以上を混合することで様々な粘着剤としての機能を発揮させることができる。3種以上を混合することが更に好ましく、(メタ)アクリル酸メチル(メチルアクリレート)、アクリル酸ブチル(ブチルアクリレート)及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル(2−エチルヘキシルアクリレート)の3種を少なくとも共重合することが特に好ましい。3種類のモノマーを共重合することで、半導体ウエハの表面段差への追従性が向上するとともに、半導体ウエハ表面保護用粘着テープの剥離後の糊残りを含む半導体ウエハの汚染を低減することができる。
【0029】
更に、上記主モノマーの他に必要に応じてエマルション粒子の安定化、粘着剤層の基材への密着性の向上、また被着体への初期接着性の向上などを目的として、共重合性モノマーを併用することができる。
【0030】
上記の共重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどがあげられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
また、粘着剤層のゲル分率の調整のため、アクリルエマルション系共重合体を重合する際に多官能モノマー成分を共重合することができる。この他の方法として、水分散性の架橋剤を混ぜることによってもゲル分率を調整することができる。水分散性架橋剤としては、主にエポキシ系の架橋剤が用いられる。水分散性架橋剤を用いることなくアクリルエマルション系共重合体を重合することが好ましく、残留した架橋剤による汚染を無くすことができる。
【0032】
多官能モノマーとしては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジビニルベンゼンなどがあげられる。
【0033】
上記モノマー混合物に重合開始剤および界面活性剤(乳化剤)などを加え、通常のエマルション重合方法を用いてアクリルエマルション系重合体を合成する。エマルション重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合など任意の方法を用いることができ、その方法は特に限定されるものではない。
【0034】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系界面活性剤などを併用することができる。これらの界面活性剤の中から、1種または2種以上が用いられるが、好ましくは2種以上の界面活性剤が併用して用いられる。ポリプロピレングリコール系化合物及びポリエチレンオキサイドアルキルフェニルエーテルを併用することが特に好ましく、これによって半導体ウエハへの有機物汚染を減らすことができる。
【0035】
界面活性剤の配合量は全モノマー混合物100質量部に対して0.5〜10質量部、好ましくは1〜7質量部程度である。界面活性剤の配合量が10質量部を超えると粘着剤の凝集力が低下して被着体への汚染量が増加し、また界面活性剤が粘着剤層の表面にブリードすることによる汚染も起こる場合がある。また乳化剤の配合量が0.5質量部未満では安定した乳化が維持できない場合がある。
【0036】
重合開始剤としては、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2´‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´‐アゾビス(N,N´‐ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系化合物やその他に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t‐ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系化合物、過酸化水素水とアスコルビン酸、過酸化水素水と塩化第一鉄、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドックス系重合開始剤などが挙げられる。
【0037】
重合開始剤は、全モノマー混合物100重量部あたり、0.01〜1.0重量部の範
囲で使用するのが望ましい。
【0038】
また、本発明において好ましく用いられる(メタ)アクリル系ポリマーの共重合体は上記アクリルエマルション系重合体以外に、アクリル酸アルキルエステル等のモノマー(1)と、後述する架橋剤と反応しうる官能基を有するモノマー(2)を有機溶剤中で共重合してなる方法がある。溶液重合により(メタ)アクリル系ポリマーを共重合する場合は、エマルション系と異なり界面活性剤を添加しなくても良いため、非汚染性に優れるといった特徴を有する。また、架橋剤も溶剤系材料が多いため、粘着剤の凝集力のコントロールが容易であるという利点を有する。
【0039】
モノマー(1)としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
モノマー(2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
(メタ)アクリル系ポリマーは上記モノマー(1)と(2)を常法により溶液重合法によって共重合させることによって得られる。
【0042】
アクリルエマルション系重合体の場合は、架橋剤無しでも使用できるが、溶剤中で重合した(メタ)アクリル系モノマーは、更に架橋剤を配合することによって粘着力が制御される。架橋剤の配合部数を調整することで所定の粘着力を得ることができる。
【0043】
架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマーが有する官能基と反応させて粘着力および凝集力を調整するために用いられるものである。例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ系化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。
【0044】
ウエハ表面保護用粘着テープの#280で研磨されたステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)に対する粘着力が後述の範囲となるようにするためには、アクリル系ポリマーは、主鎖に対して、未反応の水酸基及びカルボキシル基を含有する基を有するものであることが好ましく、また、架橋剤はエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物であることが好ましい。配合割合は、水溶液中で合成されたアクリルエマルション系重合体の場合は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対してイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤0.1質量部以下であることが好ましい。また、有機溶媒中で合成された溶剤系重合体の場合は、アクリル系ポリマーが、酸価40〜70mgKOH/gとなるようなカルボキシル基を有することが好ましい。
【0045】
粘着剤層は、上述のような粘着剤組成物を、基材樹脂フィルム上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。粘着剤層の厚さは、10〜300μmであることが好ましく、半導体ウエハの表面段差よりも10μm以上厚いことが好ましい。半導体ウエハの表面段差とは、半導体ウエハの集積回路が形成されていない部分の表面から、集積回路が形成されている部分の表面までの長さ、すなわち集積回路の高さである。粘着剤層の厚さを半導体ウエハの表面段差よりも10μm以上厚くすることにより、この表面段差に対して粘着剤層が追従しやすくなる。本実施の形態による半導体ウエハ表面保護用粘着テープの粘着剤層は、表面段差30μm以下の半導体ウエハに好適に追従させることができる。なお、粘着剤層は複数の層が積層された構成であってもよい。また、基材フィルムと粘着剤層の間に、必要に応じてプライマー層などの中間層を設けてもよい。
【0046】
また、必要に応じて、実用に供するまでの間、粘着剤層を保護するため通常セパレータとして用いられる合成樹脂フィルムを粘着剤層側に貼付しておいても良い。合成樹脂フィルムの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムや紙などが挙げられる。合成樹脂フィルムの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていても良い。合成樹脂フィルムの厚みは、通常10〜100μm、好ましくは25〜50μm程度である。
【0047】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを適用しうる半導体ウエハは、特に限定は無いが、金バンブの付いたLCD系ウエハの加工に好ましく用いられる。金バンプ付きの半導体ウエハは、表面に20μm程度の段差があるため、一般的な半導体ウエハ表面保護用粘着テープの場合、貼合後、時間の経過により半導体ウエハ表面保護用粘着テープが浮き易い。通常、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼合してから剥離するまで24時間程度要するため、経時による浮きを防ぐことができる本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを使用することが好適である。
【0048】
本実施形態の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、23℃における剥離速度50mm/minでのステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)に対する粘着力Aと、23℃における剥離速度500mm/minでのステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)に対する粘着力Bとの比B/Aが4.0未満であり、 剥離速度300mm/minでのステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)に対する粘着力について、23℃における粘着力が1.2〜4.5N/25mmであり、50℃における粘着力が23℃における粘着力の50%以下である。ここで、ステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)は、JIS G 4305に規定されているSUS304鋼板で、鏡面仕上げのものを研磨紙で磨いたものである。磨き方についてはJIS Z 0237に基づき仕上げられており、研磨紙は280番の粗さのものを用いている。
【0049】
B/Aが4.0以上になると、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハの表面に貼合した後に、金バンプから半導体ウエハ表面保護用粘着テープが浮きやすくなる。剥離速度が上昇すると、粘着剤層にかかる負担は増加するため、一般的に、剥離時の粘着力は上がる傾向にある。また、図1に示すように、剥離速度の上昇と共に粘着力は直線的に上昇するのが一般的であり、剥離速度が10倍変化すると粘着力の比も4.0以上となる。
【0050】
一方、剥離速度に対する粘着力の比が4.0未満になると、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハの表面に貼合した後の金バンプからの半導体ウエハ表面保護用粘着テープの浮きが十分に抑制される。粘着力の比が4.0未満であると半導体ウエハ表面保護用粘着テープの浮きが抑制されるメカニズムについては次のように推測される。すなわち、粘着力の比が4.0未満である場合、図2に示すように、剥離速度が高くなると粘着力の上昇率が鈍化する。これは、高剥離速度になるほど粘着剤層への負荷が増加するが、粘着剤層には架橋または擬似的に架橋されたポリマーが存在し、粘着剤層にかかる力による該ポリマーの変形を、分子間相互作用等により熱や光エネルギーに変換することで、粘着剤層が全体として緩和することによるものと考えられる。この現象が金バンプを有するウエハに貼合した粘着剤層でも発生しており、凸部によって変形した粘着剤層が戻ろうとする力を粘着剤内のポリマーの運動で緩和するため、浮きが発生しないと推測される。より好ましい剥離速度に対する粘着力の比は3以下であり、更に好ましくは2.5以下である。
【0051】
また、剥離速度300mm/minでのステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)に対する23℃における粘着力は。1.2〜4.5N/25mmであり、好ましくは1.7〜4.5N/25mmである。このときの粘着力が小さすぎると、研削時に半導体ウエハ表面保護用粘着テープと半導体ウエハとの間からダストや研削水が浸入してしまい、半導体ウエハを汚染してしまう。特にスクライブラインがウエハエッジまで切れ込んでいる半導体ウエハはその傾向が顕著となる。一方、上記粘着力が大きすぎると、凝集破壊による糊残りや有機物汚染などが発生しやすくなり、剥離力も高くなるため薄膜ウエハではウエハ割れが起こってしまう。
【0052】
また、剥離速度300mm/minでのステンレス鋼(Steel Use Stainless、SUS)に対する粘着力について、50℃における粘着力が23℃における粘着力の50%以下、好ましくは20%以下である。この比率の下限は特に制限はないが、5%以上であるのが実際的である。通常、感圧型の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは剥離される際に、50℃程度の熱がかけられる。加熱された際に粘着力を低下させることで剥離を容易にすることができる。従って、50℃における加熱剥離時のSUS280研磨面に対する粘着力が通常剥離時での粘着力と比較して50%以下となれば容易に剥離可能である。
【0053】
本発明における、SUS280研磨面に対する粘着力測定方法を、図3の説明図を参照して説明する。すなわち、半導体ウエハ表面保護用粘着テープから幅25mm×長さ300mmの試験片1を3点採取し、それをJIS R 6253に規定する280番の耐水研磨紙で仕上げた厚さ1.5mm〜2.0mmのSUS304鋼板2上に、2kgのゴムローラを3往復かけ圧着し、1時間放置後、測定値がその容量の15〜85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機3を用いて粘着力を測定する。測定は、180度引きはがし法によるものとし、測定湿度は50%である。
【0054】
<使用方法>
次に、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの使用方法について説明する。
【0055】
本発明の半導体ウエハの加工方法は、まず、半導体ウエハの回路パターン面に、粘着剤層が貼合面となるように、本発明の半導体ウエハ表面保護テープを貼合する。次に、半導体ウエハの回路パターンの無い面側を半導体ウエハの厚さが所定の厚さ、例えば10〜100μmになるまで研削する。その後、この半導体ウエハ表面保護テープの貼合された面を下側にして加熱吸着台に載せ、その状態で、半導体ウエハの回路パターンの無い研削した面側に、ダイシング・ダイボンディングフィルムを貼合用ロールを使用して貼合してもよい。その後、半導体ウエハ表面保護テープの基材フィルムの背面に、ヒートシールタイプ(熱融着タイプ)の剥離テープを接着して半導体ウエハから半導体ウエハ表面保護テープを剥離するとよい。
【0056】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
アクリル酸及び2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする酸価57.8mgKOH/g、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体ポリマー100質量部に対して、架橋剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)を0.5質量部配合して溶剤系の粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、実施例1に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0058】
<実施例2>
アクリル酸及び2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする酸価23.2mgKOH/g、重量平均分子量70万のアクリル系共重合体ポリマー100質量部に対して、架橋化剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)を0.5質量部配合して溶剤系の粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、実施例2に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0059】
<実施例3>
アクリル酸及び2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする酸価46.6mgKOH/g、重量平均分子量90万のアクリル系共重合体ポリマー100質量部に対して、架橋剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)を0.5質量部配合して溶剤系の粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、実施例3に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0060】
<実施例4>
脱イオンを行った純水中に界面活性剤としてアリル基を付加させたポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルのアンモニウム塩化合物及びポリプロピレングリコール化合物を加え、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを加えて加熱しながら攪拌した。次いでアクリル酸メチル、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを攪拌溶液に滴下し、さらに攪拌を続け重合を行い、酸価0mgKOH/g、重量平均分子量80万のアクリルエマルション粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、実施例4に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0061】
<実施例5>
アクリル酸及びブチルアクリレートを主成分とする酸価33.3mgKOH/g、重量平均分子量50万のアクリル系共重合体ポリマー100質量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系硬化剤コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)を1.0質量部配合して溶剤系の粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、実施例5に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0062】
<比較例1>
アクリル酸及び2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする酸価48.9mgKOH/g、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体ポリマー100質量部に対して、紫外線反応性樹脂として6官能のウレタンアクリレートオリゴマーを100質量部及び3官能のウレタンアクリレートオリゴマーを50質量部、架橋剤としてコロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)を4.0質量部、光反応開始剤としてイルガキュア184(BASF社製)を10質量部、添加剤としてEbecryl350(ダイセル・オルネクス株式会社製)を0.5質量部配合し粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、比較例1に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0063】
<比較例2>
アクリル酸及び2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする酸価32.3mgKOH/g、重量平均分子量40万のアクリル系共重合体ポリマー100質量部に対して、架橋剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)を0.6質量部配合して溶剤系の粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、比較例2に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0064】
<比較例3>
アクリル酸及び2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする酸価32.3mgKOH/g、重量平均分子量40万のアクリル系共重合体ポリマー100質量部に対して、架橋剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)を4.5質量部配合して溶剤系の粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、比較例3に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0065】
<比較例4>
脱イオンを行った純水中に界面活性剤としてアリル基を付加させたポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルのアンモニウム塩化合物及びポリプロピレングリコール化合物を加え、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを加えて加熱しながら攪拌した。 メタクリル酸、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを攪拌溶液に滴下し、さらに攪拌を続け重合を行い、酸価31.2mgKOH/g、重量平均分子量100万のアクリルエマルション粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、比較例4に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0066】
<比較例5>
2−エチルヘキシルアクリレートを96質量部、アクリル酸を4質量部をトルエン溶液中で重合することにより酸価3.3mgKOH/g、重量平均分子量50万のポリマー溶液を得た。更に、得られたポリマー溶液に対して架橋剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)を3.0質量部配合して溶剤系の粘着剤組成物を得た。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のセパレータ上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、厚み120μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層して、比較例6に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0067】
上記の実施例及び比較例に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、各種SUSに対する粘着力を測定した。その結果を表1及び表2に記載する。
【0068】
(SUSに対する粘着力)
実施例および比較例に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープから幅25mm×長さ300mmの試験片を3点採取した。JIS R 6253に規定する280番の耐水研磨紙で仕上げたJIS G 4305に規定する厚さ2.0mmのSUS鋼板上に、各試験片を2kgのゴムローラを3往復かけて圧着し、1時間放置後、測定値がその容量の15〜85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いて25℃での粘着力を測定した。測定は、180度引きはがし法によるものとした。23℃における剥離速度50mm/minでの粘着力Aと剥離速度500mm/minでの粘着力Bを測定し、比B/Aお求めた。また、剥離速度300mm/minでの23℃での粘着力と50℃における粘着力を測定した。50℃における粘着力は、試験片をSUS板側からホットプレートで加熱し、50℃に安定させた状態で測定した。
【0069】
また、上記の実施例及び比較例に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、以下の試験を行い、その性能を評価した。評価結果を表1及び表2に記載する。
【0070】
(密着性試験)
幅13μm、長さ95μm、高さ20μm、バンプ間距離20μmの金バンプが表面に形成された8インチウエハに対して、貼り付け機として日東精機株式会社製DR8500III(商品名)を用いて、実施例及び比較例に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合圧0.35MPaの条件で貼合した。その後、光学顕微鏡にてウエハ表面に対する密着性を確認した。エアーを巻き込むことなくバンプに密着しているものを良品として「○」で評価し、エアーを巻き込んでいる箇所が観察され、完全に密着できていないもの不良品として「×」で評価した。
【0071】
(経時によるテープ浮き評価)
密着性試験で実施例及び比較例に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合したウエハを48時間放置し、その後、光学顕微鏡にて再びウエハ表面に対する密着性を確認した。ウエハ表面から半導体ウエハ表面保護用粘着テープが浮いている箇所が存在せずバンプに密着しているものを良品として「○」で評価し、貼合直後からウエハ表面から半導体ウエハ表面保護用粘着テープが浮いているもの若しくは48時間経過時点で半導体ウエハ表面保護用粘着テープが浮いている箇所が観察されたものを「×」で評価した。
【0072】
(糊残り評価)
幅13μm、長さ95μm、高さ20μm、バンプ間距離20μmの金バンプが表面に形成された8インチウエハに対して、ラミネータ(日東精機株式会社製DR8500III(商品名))を用いて、実施例及び比較例に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合圧0.35MPaの条件で貼合した。その後、インライン機構を持つグラインダー(株式会社ディスコ製DFG8760(商品名))を使用して厚さ300μmまでそれぞれ5枚のウエハの研磨を行った。研削後、剥離機(日東精機株式会社製HR8500III(商品名))を用いて50℃で加熱しながら半導体ウエハ表面保護用粘着テープを剥離し、剥離後のウエハ表面について光学顕微鏡を用いて糊残りの観察を行った。糊残りがなかったものを良品として「○」で評価し、糊残りが観察されたものを不良品として「×」で消化した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1及び表2で示すように、実施例1〜5は、粘着剤層が感圧型であり、剥離速度比B/Aが2.58〜3.97と4.0未満であり、剥離速度300mm/minでの23℃における粘着力が1.27〜4.49N/25mmと1.2〜4.5N/25mmの範囲に入っており、50℃における粘着力が23℃における粘着力の20〜39%と50%以下であるため、初期及び48時間経過後において密着性が良好であり、糊残りも見られなかった。
【0076】
一方、比較例1は、粘着剤層が紫外線硬化型であるため、糊残りが発生した。比較例2,3,5は、比B/Aが4.0以上であるため、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼合した後、経時による半導体ウエハ表面保護用粘着テープの浮きが見られた。比較例4は、23℃での粘着力が4.5N/25mmより高いため糊残りが発生した。
【符号の説明】
【0077】
1 粘着テープ試験片
2 SUS鋼板
3 引張試験機
図1
図2
図3