(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光ファイバ回転工程は、前記光ファイバを巻き取るボビンまたは、前記光ファイバを繰り出すボビンの回転面を傾斜させて前記光ファイバを周方向に回転させることを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
前記光ファイバ回転工程は、前記光検知工程で光の漏れを検知する検知部の前または後ろに配置されたローラの回転面を傾斜させて前記光ファイバを周方向に回転させることを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる光ファイバについて説明する。
図1aは光ファイバであるマルチコアファイバ1の斜視図である。
【0035】
マルチコアファイバ1は、断面が円形であり、複数のコア5が所定の間隔で配置され、複数のコアよりも屈折率が低いクラッド3が複数のコアの外周に形成された光ファイバである。例えば、全部で7つのコア5は、マルチコアファイバ1の中心と、その周囲に正六角形の各頂点位置に配置される。すなわち、中心のコア5と周囲の6つのコア5とは全て一定の間隔となる。また、6つのコア5において、隣り合う互いのコア5同士の間隔も同一となる。コア5は、信号光の導波路となる。なお、コア5の配置は、図示した例には限られない。
【0036】
クラッド3の外周には、樹脂被覆部7が形成される。樹脂被覆部7の外面の周方向の一部には、着色部9が形成される。着色部9は、マルチコアファイバ1の長手方向に連続して形成される。着色部9は、マルチコアファイバ1の全長にわたって連続的に形成されることが望ましいが、所定の長さの範囲に形成されてもよい。
【0037】
マルチコアファイバ1の長手方向に対して垂直な断面の形態は、マルチコアファイバの長手方向を軸とする回転方向に対して方向性を有する。また、マルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面において、特定のコア5の位置と、着色部9が形成される位置とは、マルチコアファイバ1の長手方向にわたって略一定となる。すなわち、マルチコアファイバ1の長手方向の任意の位置(着色部9の形成範囲の任意の位置)において、この位置関係が維持される。
【0038】
例えば、特定のコア5が、マルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面において、クラッドの外面に最も近い位置に配置された1つのコア(以下、最外コアとする)とする。この場合において、着色部9が最外コアに最も近い位置(最外コアの直上)に形成されれば、特定のコア5の位置を容易に視認することができる。すなわち、着色部9は、コアの位置を認識するためのマーカとして機能する。
【0039】
なお、着色部9は、
図1(b)に示すマルチコアファイバ1aのように、長手方向に対して断続的に形成してもよい。この場合でも、着色部9が形成されている範囲のマルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面において、特定のコア5の位置と、着色部9が形成される位置とは、マルチコアファイバ1の長手方向にわたって略一定となる。
【0040】
次に、マルチコアファイバ1の製造方法について説明する。
図2は、着色樹脂塗布装置10を示す図である。着色樹脂塗布装置10は、主に、ボビン配置部11、21、ボビン制御部25、ガイド17、光ファイバ屈曲部15、光検知部23、樹脂塗布部19等から構成される。
【0041】
ボビン配置部11には、着色前のマルチコアファイバ1が巻き付けられたボビン12が配置されており、マルチコアファイバ1がボビン12から繰り出される。ボビン配置部11には、光導入部13が設けられる。光導入部13は、マルチコアファイバ1の端部に光を導入する光源である。なお、光導入部13は、全てのコアに光を導入することもできるが、特定のコアにのみ光を導入することもできる。
【0042】
ボビン12から繰り出されたマルチコアファイバ1は(図中矢印A)、一対のガイド17の間に配置された光ファイバ屈曲部15に送られる。光ファイバ屈曲部15はローラであって、ローラに接して通過するマルチコアファイバ1を所定の曲率に屈曲させる。ガイド17は、光ファイバ屈曲部15にマルチコアファイバ1を所定範囲接触させて屈曲させるために、マルチコアファイバ1の走行ルートをガイドするローラである。
【0043】
光ファイバ屈曲部15の近傍には、光検知部23が配置される。光検知部23は、マルチコアファイバ1からの漏れ光を連続して検出するセンサである。光検知部23で検知された漏れ光の光強度は、ボビン制御部25に送信される。ボビン制御部25は、ボビン12の姿勢を制御する。なお、光検知部23による漏れ光の検出と、これによるボビン12の制御方法については後述する。
【0044】
光ファイバ屈曲部15を通過したマルチコアファイバ1は、樹脂塗布部19を通過する。樹脂塗布部19では、マルチコアファイバ1の樹脂被覆部7の外周面の所定の位置に着色樹脂が塗布される。樹脂塗布部19は、例えば着色樹脂を保持するローラをマルチコアファイバ1の外周面に接触させることで、着色樹脂をマルチコアファイバ1の全長にわたって、連続的にまたは断続的に塗布することができる。なお、着色樹脂は、樹脂被覆部7に対して識別可能な色であれば色は問わない。
【0045】
樹脂塗布部19で塗布された着色樹脂は、必要に応じて、乾燥やUV照射によって硬化されて、着色部9が形成される。着色部9が形成されたマルチコアファイバ1は、ボビン配置部21に配置された巻き取り用のボビン22によって巻き取られる。以上により、マルチコアファイバ1が製造される。
【0046】
次に、光検知部23による漏れ光の検出と、ボビン12の制御方法について説明する。
図3は、光ファイバ屈曲部15近傍の拡大図(
図2のB部拡大図)である。前述した様に、マルチコアファイバ1は、光ファイバ屈曲部15に沿って屈曲する。また、マルチコアファイバ1の少なくとも一つのコア5には、光導入部13によって、光が導入されている(光導入工程)。したがって、所定の曲率以上の曲率でマルチコアファイバ1を屈曲させると、マルチコアファイバ1の歪に応じて、コア5に導入した光がマルチコアファイバの外部に漏洩する(図中D)(光漏洩工程)。光検知部23は、この漏れ光を検知する(光検知工程)。
【0047】
図4a、
図4bは、
図3のE部におけるF−F線断面図であり、光導入コア5aの位置がそれぞれ異なる状態を示す図である。図中の線Gは、マルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面における中心線であって、光ファイバ屈曲部15のローラ面に対して垂直な線である。なお、前述のように、光は全てのコア5に導入することもできるが、簡単のため、以下の説明では、図示した一つの光導入コア5aに光が導入された例について説明する。
【0048】
図4aにおいて、中心のコア5を通り、光ファイバ屈曲部15との接触面に平行な線L(すなわち中立軸)より上方(光ファイバ屈曲部15から遠い方向)が曲げ変形による引張領域となり、中立軸Lより下方(光ファイバ屈曲部15方向)が曲げ変形による圧縮領域となる。すなわち、
図4aは、光導入コア5aが、線G上に位置し、中立軸L(光ファイバ屈曲部15)から最も遠い部位に位置する状態を示す図である。したがって、この状態における光導入コア5aは、最も大きな引張歪が生じている状態となる。
【0049】
光導入コア5aが大きな歪を受けると、それに応じて漏れ光が生じる(図中D)。この漏れ光は、歪量に応じて変動し、歪量が大きくなると、漏れ光の光量も増加する。したがって、
図4aの状態では、漏れ光が最も多くなる。この漏れ光の光強度を光検知部23で検知する。
【0050】
一方、
図4bは、光導入コア5aが、垂線Gからずれた部位に位置した状態を示す図である。すなわち、マルチコアファイバ1が、断面中心を軸として、
図4aの状態からわずかに回転した状態である(図中H)。なお、以下の説明において、マルチコアファイバ1の中心軸を回転軸とした回転を、単に、マルチコアファイバ1の回転と称する場合がある。この状態では、
図4aの状態と比較して、光導入コア5aが中立軸Lにわずかに近くなる。このため、光導入コア5aの歪量が小さくなる。この結果、漏れ光Dの強度が低くなる。
【0051】
なお、例えば、複数の光検知部23をマルチコアファイバ1の周方向の異なる位置にそれぞれ配置し、それぞれの方向から漏れ光を検知することで、マルチコアファイバ1の回転方向をより確実に検知することができる。
【0052】
このように、光導入コア5aからの漏れ光の光強度を光検知部23で検知することで、最も漏れ光の光強度が大きいときが、光導入コア5aが
図4aの状態であることが分かる。また、漏れ光の光強度が弱くなると、マルチコアファイバ1が回転していることを認識することができる。
【0053】
なお、全てのコアに光を導入した場合であっても、コアからの漏れ光を検知することで、マルチコアファイバ1の回転を検知することができる。すなわち、このような回転を検知するための光導入コア5aとしては、最外コアを利用することが望ましい。特に、特定のコアにのみ光を導入する場合には、マルチコアファイバ1の中心コア以外のコアを特定のコアとして選択する必要があり、最外コアに光を導入することが望ましい。
【0054】
次に、ボビン配置部11(ボビン12)の制御方法について説明する。
図5a〜
図5cは、マルチコアファイバ1の断面における光導入コア5aの位置とボビン12の傾きを示す図である。なお、各図の左側は、
図3のE部におけるF−F線断面図であり、各図の右図は、
図2のC方向からみたボビン12の姿勢を示す図である。
【0055】
図5aに示すように、光導入コア5aが、線G上に位置し、光ファイバ屈曲部15から最も遠い部位に位置する状態を基準状態とすると、この基準状態では、ボビン12をまっすぐに維持する。したがって、ボビン12から繰り出されるマルチコアファイバ1は、上方に光導入コア5aが位置することとなる。
【0056】
一方、光検知部23による漏れ光の光強度が変化し、マルチコアファイバ1が回転していると判断されると、ボビン制御部25は、ボビン12の姿勢を制御する。例えば、
図5(b)に示すように、マルチコアファイバ1が回転しており、コア5の配置が、断面中心を軸として図中右方向(図中H)にずれていると判断されると、ボビン制御部25は、ボビン12の回転面を、マルチコアファイバ1の回転方向とは逆方向(図中I方向)に傾斜させる。
【0057】
同様に、
図5(c)に示すように、マルチコアファイバ1が回転しており、コア5の配置が、中心を軸として図中左方向(図中J)にずれていると判断されると、ボビン制御部25は、マルチコアファイバ1の回転方向とは逆方向(図中K方向)にボビン12の回転面を傾斜させる。すなわち、ボビン制御部25およびボビン12は、マルチコアファイバ1を回転させるための光ファイバ回転部として機能する。このように、光検知工程において検知される光の漏れ量が略一定となるように、光ファイバを周方向に回転させる(光ファイバ回転工程)。
【0058】
なお、ボビン12の傾斜角度は、マルチコアファイバ1の回転角度に応じて設定される。例えば、光検知部23によって検知された光強度から、回転角度を算出し、それを打ち消す角度だけボビン12を傾斜してもよいし、光検知部23での漏れ光の光強度が基準となる最大強度となるまで傾斜してもよい。
【0059】
樹脂塗布部19では、マルチコアファイバ1の樹脂被覆部の外面の周方向の所定の位置に、長手方向に対して連続的または断続的に着色樹脂が塗布される(樹脂塗布工程)。したがって、常に、特定のコア(光導入コア5a)が、マルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面における所定の周方向位置にくるように制御することで、着色部9と、特定のコアとの位置関係を、マルチコアファイバ1の長手方向にわたって略一定とすることができる。
【0060】
例えば、着色樹脂をマルチコアファイバ1の上方から塗布すれば、前述した光導入コア5a(特定の最外コア)の直上に着色部9を形成することができる。すなわち、特定のコアが、マルチコアファイバの長手方向と垂直な断面において、クラッドの外周部に最も近い最外コアである場合において、着色部9は、この最外コアに最も近い樹脂被覆部の外面の周方向位置に形成することができる。このため、特定のコアの位置を、マルチコアファイバ1の外面から容易に視認することができる。
【0061】
このように、マルチコアファイバ1の特定のコアの位置を容易に視認できるため、マルチコアファイバ1を他のファイバや素子と接続する際、その位置合わせが容易となる。
なお、マルチコアファイバ1同士を接続する方法としては、例えば、マルチコアファイバ1の側面から光を当て、コア5の位置によって生じる光の明暗模様を、互いに一致させることで、コア同士の配置を合わせることができる。または、一方のマルチコアファイバの特定のコアまたは全てのコアに光を導入し、他方のマルチコアファイバのコアから光を検出して、検出される光強度が最大となる位置に合わせることで、コア同士の配置を合わせることができる。
【0062】
マルチコアファイバ1同士を接続する方法として、いずれの方法においても、特定のコアの位置を着色部9によって把握することができるため、まず、マルチコアファイバ1の着色部9の位置同士を合わせて対向させた後に、微調整のみを行えばよい。このため、調芯が極めて容易である。
【0063】
以上、本実施の形態によれば、マルチコアファイバ1の特定のコア5の回転方向の位置を常に一定に保つことができる。このため、樹脂塗布部19に送られるマルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面における特定のコア5の位置を、常に一定に保つことができる。したがって、特定のコア5に対して、常に一定の位置に、着色樹脂を塗布することができる。このため、マルチコアファイバ1の長手方向に垂直な断面において、着色部9の位置と、特定のコア5との位置関係を略一定にすることができる。
【0064】
したがって、本発明によれば、マルチコアファイバ1の樹脂被覆部の外面から容易にコアの配置を特定することが可能となる。
【0065】
このため、例えば特定のコア同士を融着接続する場合に、マルチコアファイバ1の着色部9の位置を合わせて融着機にセットすれば、僅かな調整で、簡単に且つ正確にコアの位置合わせができる。このため、低損失での融着接続が容易に実現できる。
【0066】
また、マルチコアファイバ1の回転を検出するために光を導入するコアとして、最外コアを選択することで、より精度よく、マルチコアファイバ1の回転を検出することができる。
【0067】
また、光導入コアを特定のコアとして、この直上に着色部9を形成することで、特定のコアの位置の特定が容易となる。
【0068】
また、コネクタを製造する場合も、これと同じ方法をとれば、マルチコアファイバ1の着色部9の位置を合わせて、フェルール内へ挿入し、容易に組み立てが可能となる。また、テープ心線の製造時には、送り出すマルチコアファイバ1を、着色部9の位置を目印に一定の方向に並べることで、テープ断面においてコア5が決められた方向に配列されたテープ心線を得ることができる。
【0069】
図6は、テープ心線30を製造するための光ファイバテープ心線製造装置20を示す平面図である。光ファイバテープ心線製造装置20は、主に、ボビン配置部11a、ボビン制御部25a、ガイド24、ガイド24、着色部位検知部26、テープ樹脂被覆部28等から構成される。ボビン配置部11a、ボビン制御部25a、ガイド24、着色部位検知部26は、テープ心線30を構成するマルチコアファイバ1の本数分配置される。
【0070】
ボビン配置部11aにボビン12aが配置される。ボビン12aは、前述した着色部9が形成されたマルチコアファイバが巻き付けられており、マルチコアファイバ1を繰り出すボビンである。
【0071】
ボビン12aから繰り出されたマルチコアファイバ1は、それぞれ、ガイド24に送られる。ガイド24はローラであって、マルチコアファイバ1を所定の位置に誘導する。例えば、ガイド24にV溝を設け、マルチコアファイバ1が常に一定の位置を通過するように誘導する。
【0072】
それぞれのガイド24の近傍には、着色部位検知部26が配置される。着色部位検知部26は、マルチコアファイバ1の表面を撮像し、着色部9の位置を連続して検出するセンサである。着色部位検知部26は、例えば、CCDカメラである。着色部位検知部26で検知された着色部9の位置は、それぞれボビン制御部25aに送信される。
【0073】
ボビン制御部25aは、着色部9の位置が常に一定の位置になるように、ボビン12aの姿勢を制御する。具体的には、マルチコアファイバ1の画像において、着色部9が画像中央からずれたと判断すると、そのずれと反対向きに着色部9が移動するように、ボビン12aを傾斜させる。このようにすることで、常に着色部9が一定の方向に向いた状態で、マルチコアファイバ1をテープ樹脂被覆部28に送ることができる。なお、ボビン制御部25aによるボビン2aの傾斜は、前述したボビン制御部25によるボビン12の傾斜と同様である。
【0074】
すべて一定の向きに揃ったマルチコアファイバ1は、テープ樹脂被覆部28を通過する。テープ樹脂被覆部28では、複数本のマルチコアファイバ1が整列されて、外周部にテープ樹脂被覆が塗布される。テープ樹脂被覆部28は、例えば、整列ダイスや押出ダイスからなる押出機である。
【0075】
テープ樹脂被覆部28で塗布されたテープ樹脂被覆は、必要に応じて、乾燥やUV照射によって硬化する。複数本のマルチコアファイバ1が一体化されたテープ心線30は、図示を省略した巻き取り装置によって巻き取られる。以上により、テープ心線30が製造される。
【0076】
図7aは、テープ心線30の断面図である。前述した様に、テープ心線30は、複数のマルチコアファイバ1が併設されて、テープ樹脂被覆32で一体化されたものである。テープ心線30の長手方向に垂直な断面において、全てのマルチコアファイバ1のコア5の配置が、全て同じ向きに配列するようにマルチコアファイバ1が配置される。例えば、図示した例では、3つのコア5をつなぐそれぞれのマルチコアファイバ1の一つの中心線が、全て、テープ心線30の厚み方向(図の上下方向)に向くようにマルチコアファイバ1が配置される。また、テープ心線30は、テープ心線30の長手方向の全長にわたって、コア5の配列が略一定である。すなわち、テープ心線30の長手方向の任意の断面において、常に、コア5の配列が略一定となる。
【0077】
なお、テープ心線の長手方向に垂直な断面におけるコア5の配列は、
図7aに示した例には限られない。
図7bに示したテープ心線30aのように、3つのコア5をつなぐそれぞれのマルチコアファイバ1の一つの中心線を、全て、テープ心線30aの厚み方向(図の上下方向)から所定角度回転させてもよい。また、それぞれのマルチコアファイバ1の向きが、全て同一でなくてもよい。例えば、すべてのマルチコアファイバ1の内、一部のマルチコアファイバ1のコア5と、他のマルチコアファイバ1のコア5とが、それぞれのマルチコアファイバ1の長手方向を軸として互いに90度回転した配列となるようにマルチコアファイバ1を配置してもよい。いずれにしても、テープ心線30の長手方向の任意の断面において、常に、コア5の配列が略一定となればよい。
【0078】
このように、着色部9の位置をセンサなどで識別してマルチコアファイバ1を回転させながら整列させることで、コアの配置が長手方向にわたって一定となるテープ心線30を得ることができる。
【0079】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、光導入部13をマルチコアファイバ1の端部とした例について説明した。この方法によれば、特定のコアのみを選択して光を導入することができる。これに対し、他の方法でマルチコアファイバ1に光を導入することもできる。
【0080】
図8aは、着色樹脂塗布装置10aを示す図である。なお、以下の説明においては、着色樹脂塗布装置10と同一の構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。着色樹脂塗布装置10aは、着色樹脂塗布装置10と略同様であるが、光導入部13に代えて、光導入部13aを有する。
【0081】
光導入部13aは、一対のガイド29の間に光導入屈曲部27と光源を具備する。光導入屈曲部27はローラであって、ローラに接して通過するマルチコアファイバ1を所定の曲率に屈曲させる。ガイド29は、光導入屈曲部27にマルチコアファイバ1を所定範囲接触させて屈曲させるために、マルチコアファイバ1の走行ルートをガイドするローラである。
【0082】
光導入屈曲部27の近傍に配置された光源によって、光導入屈曲部27を通過するマルチコアファイバ1に光を照射すると、屈曲部からマルチコアファイバ1の内部のコアに光が導入される。すなわち、光ファイバ屈曲部15における漏れ光と逆の原理によって、光がマルチコアファイバ1に導入される。マルチコアファイバ1に導入された光の一部は、光ファイバ屈曲部15において漏れ光として光検知部23で検知される。
【0083】
以上のように、第2の実施形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、光導入部13aでは、特定のコアのみに光を導入することはできないため、複数コアあるいは略全てのコアに光が導入される。しかしながらのこの方法においても、中立軸から最も遠い最外コアには効率よく光を導入することができるとともに、漏れ光を検知することができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
図8(b)は、着色樹脂塗布装置10bを示す図である。着色樹脂塗布装置10bは、着色樹脂塗布装置10と略同様であるが、ボビン制御部25がボビン12ではなく、ボビン22を制御する点で異なる。
【0085】
着色樹脂塗布装置10bは、着色樹脂塗布装置10と同様に、光検知部23によって、光ファイバ屈曲部15で漏れる光の強度を検出し、マルチコアファイバ1の回転方向の捻じれを検出する。ボビン制御部25は、検出された漏れ光の強度から、マルチコアファイバ1の回転方向および回転量に応じて、ボビン22の姿勢を制御する。具体的には、ボビン22の回転面を傾斜させる。以上により、樹脂塗布部19に送られるマルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面におけるコア5の位置を、常に一定に保つことができる。
【0086】
なお、ボビン22の回転角度は、マルチコアファイバ1の回転角度に応じて設定される。例えば、光検知部23によって検知された光強度から、回転角度を算出し、それを打ち消す角度だけボビン22を傾斜させればよい。
【0087】
以上のように、第3の実施形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、樹脂塗布部19により近い部位でマルチコアファイバ1の位置を制御することができる。
【0088】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。
図9aは、着色樹脂塗布装置10cを示す図である。着色樹脂塗布装置10cは、着色樹脂塗布装置10と略同様であるが、ファイバ回転部31が設けられる点で異なる。
【0089】
ファイバ回転部31は、ボビン12と光ファイバ屈曲部15(ガイド17)との間に配置される。ファイバ回転部31は、例えばローラである。マルチコアファイバ1は、ファイバ回転部31と所定の範囲で接触する。したがって、マルチコアファイバ1とファイバ回転部31との間には所定の摩擦力が生じる。
【0090】
光検知部23で検知された漏れ光によって、回転部制御部25bは、ファイバ回転部31の姿勢を制御する。具体的には、前述したボビンを傾斜させるのと同じ要領でファイバ回転部31の回転面を傾斜させる。ファイバ回転部31がこの方向に傾斜することで、ファイバ回転部31と接触して通過するマルチコアファイバ1に回転を加えることができる。したがって、樹脂塗布部19に送られるマルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面におけるコア5の位置を、常に一定に保つことができる。
【0091】
以上のように、第4の実施形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ボビン12、22等と比較して小型のローラの姿勢を制御すればよいため、制御が容易である。
【0092】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。
図9(b)は、着色樹脂塗布装置10dを示す図である。着色樹脂塗布装置10dは、着色樹脂塗布装置10cと略同様であるが、ファイバ回転部31の設置箇所が異なる。
【0093】
着色樹脂塗布装置10dでは、ファイバ回転部31が、光ファイバ屈曲部15(ガイド17)と樹脂塗布部19との間に配置される。この場合には、ファイバ回転部31の回転角度は、マルチコアファイバ1の回転角度に応じて設定される。例えば、光検知部23によって検知された光強度から、回転角度を算出し、それを打ち消す角度だけファイバ回転部31を傾斜させればよい。
【0094】
以上のように、第5の実施形態によっても、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、樹脂塗布部19により近い部位でマルチコアファイバ1の周方向位置を制御することができる。
【0095】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。
図10は、着色樹脂塗布装置10eを示す図である。着色樹脂塗布装置10eは、着色樹脂塗布装置10と略同様であるが、ボビン12からマルチコアファイバ1を繰り出すのではなく、光ファイバ心線製造装置40と連続して配置される。
【0096】
光ファイバ心線製造装置40は、ヒータ43、樹脂被覆ダイス45、49、紫外線照射装置47、51等から構成される。
【0097】
マルチコアファイバ母材41はヒータ43で加熱溶融して延伸され、所定の径を有するガラスファイバ53が得られる。次に、一定温度に加温された液状樹脂が供給された樹脂被覆ダイス45にガラスファイバ53を通過させ、外周に液状樹脂を塗布する。次いで、紫外線照射装置47によって塗布した液状樹脂を硬化させ、樹脂1次被覆を形成させる。その後、樹脂被覆ダイス49および紫外線照射装置51により、さらにもう1層の樹脂2次被覆を形成させる。以上により、樹脂被覆部7が形成され、マルチコアファイバ1が製造される。
このとき樹脂1次被覆または樹脂2次被覆の少なくともいずれか一方に着色材を混ぜ、マルチコアファイバ1を着色心線としてもよい。
【0098】
得られたマルチコアファイバ1は、そのまま、着色樹脂塗布装置10eに送られる。着色樹脂塗布装置10eでは、光導入屈曲部27から光が導入され、光検知部23で漏れ光が検知される。得られた漏れ光の強度に応じて、マルチコアファイバ1の回転方向の位置を把握して、ファイバ回転部31によってマルチコアファイバ1を回転させる。以上により、樹脂塗布部19に送られるマルチコアファイバ1の長手方向と垂直な断面におけるコア5の位置を、常に一定に保つことができる。
【0099】
なお、ファイバ回転部31の位置は、光ファイバ屈曲部15の前工程側であってもよく、後工程側であってもよい。また、ファイバ回転部31に代えて、ボビン22を回転させてもよい。
【0100】
以上のように、第6の実施形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。このように、本願発明は、線引き工程、巻き返し工程、スクリーニング工程、着色工程、オーバーコート工程など、いずれの工程と同時に行うこともできる。
【0101】
(他のマルチコアファイバの実施形態)
本発明に適用可能なマルチコアファイバは、
図1a、
図1bに示したような形態には限られない。例えば、
図11aに示すマルチコアファイバ1bのように、長手方向と垂直な断面において複数のコアが対称性を有するように配置されている場合、コアの識別性の観点からは、任意の対称軸Lからずれた位置に着色部9を形成することが好ましい。
【0102】
これにより、複数コアのそれぞれと着色部9との距離が全て異ならせることができ、クラッド
の周回りの特定の方向を識別できる。したがって、マルチコアファイバ1bの両端の内、どちらの端部であるかも識別でき、誤った方向にマルチコアファイバ1bが接続されることを抑制することができる。
【0103】
また、
図11(b)に示すマルチコアファイバ1cのように、着色部9を2か所以上配置してもよい。この場合も、複数のコアが対称性を有するように配置されている場合、コアの識別性の観点からは、任意の対称軸Lからずれた位置に着色部9を形成することが好ましい。これにより、コアの識別がより明確にできるようになる。また、着色部9毎に色を変えてもよい。
【0104】
また、本発明の対象となるマルチコアファイバのコアの配置は、前述した例には限られない。例えば、
図12aに示すように、コア5が一列に配列したマルチコアファイバ1dにも適用が可能である。この場合には、着色部9は、長手方向と垂直な断面において、外周部に最も近い最外コアに最も近い周方向位置に形成してもよく、または、これと垂直な位置に配置してもよい。また、複数個所に着色部9を配置してもよく、任意の線対称軸からずれた位置に着色部9を配置してもよい。
【0105】
また、
図12(b)に示すように、オーバーコート樹脂35を有するマルチコアファイバ1eに適用することもできる。この場合には、樹脂被覆部7の外周に着色部9を形成し、その上にオーバーコート樹脂35を被覆してもよい。この場合には、オーバーコート樹脂35は、透明であることが望ましいが、オーバーコート樹脂35が、透明でない場合も、接続部近傍においてオーバーコート樹脂35を剥ぎ取り、着色部の位置が識別できるようにすることで、同様の効果を得ることができる。この場合でも、着色部9は、長手方向と垂直な断面において、最外コアに最も近い周方向位置に形成してもよく、または、これと垂直な位置に配置してもよい。また、複数個所に着色部9を配置してもよく、任意の線対称軸からずれた位置に着色部9を配置してもよい。
【0106】
また、図示を省略するが、対称ではないコア5の配置を有するマルチコアファイバに適用することもできる。この場合には、着色部9が1か所のみであっても、マルチコアファイバの向きを誤って接続することはない。
【0107】
また、着色部は目視で確認できるものに限らず、検知器等で確認できるものでもよい。
【0108】
なお、以上の説明において、光ファイバがマルチコアファイバである例について説明したが、本発明はこれに限られない。マルチコアファイバ以外であっても、光ファイバの長手方向に対して垂直な断面の形態が、光ファイバの長手方向を軸とする回転方向に対して方向性を有する光ファイバであれば、適用可能である。
【0109】
例えば、単心ファイバであっても、コアが光ファイバの中心から偏心した位置にある場合にも適用可能である。また、コアが中心にある偏波保持ファイバや偏平コア、あるいは偏心コアファイバの場合であって、信号光用のコアとは別にマーカが設けられる光ファイバにも適用が可能である。この場合には、マーカに光を導入して、前述した方法によって光ファイバの回転位置を定め、着色樹脂を塗布すればよい。当該光ファイバのマーカは、光を所定の長さだけ保持できればよく、信号光の伝送用に用いられるものではないため、光の伝送特性を考慮する必要がない。このため、コアと比較して光が漏れやすい構成とすることができ、この様にすると、本実施形態に特に好適である。
【0110】
このように、本実施形態によれば、光ファイバの長手方向と垂直な断面において、着色部の位置と、コアとの位置との関係が、長手方向にわたって略一定となるように設けられている光ファイバを得ることができる。
【0111】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0112】
例えば、各実施形態は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。