【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度 独立行政法人科学技術振興機構「次世代鉄道システムを創る超伝導技術イノベーション」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定方向に延在する超電導ケーブルに沿って寒剤が流れるように、前記超電導ケーブルの上流側に設けられた寒剤供給部から第1の冷凍機によって冷却された寒剤を供給し、前記寒剤供給部より下流側に設けられた寒剤排出部から排出された寒剤を前記第1の冷凍機に回収して冷却すると共に、前記超電導ケーブルから外部負荷に電力を供給するための複数のパワーリードに対して前記超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の一部を導入することにより、前記超電導ケーブル及び前記複数のパワーリードを冷却する超電導給電システム用冷却装置において、
前記複数のパワーリードに導入された寒剤の気化ガスを回収し、該回収した気化ガスを冷却することにより寒剤を液化生成する第2の冷凍機と、
前記液化生成された寒剤の温度が所定値に冷却されるように前記第2の冷凍機を制御する制御部と
を備え、
前記第2の冷凍機によって液化生成された寒剤を、前記超電導ケーブルの前記寒剤供給部及び前記寒剤排出部間に設けられた寒剤補充部に供給することを特徴とする超電導給電システム用冷却装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の超電導ケーブルの応用分野として、電車のように大容量電力を動力源とする移動体に電力を供給する給電システムがある。
図5は電車用の給電供給システムに超電導ケーブルを適用した超電導給電システム1の概要を示す模式図である。
【0007】
超電導給電システム1は、寒剤で冷却された超電導ケーブルである超電導饋電線50、超電導饋電線50の給電先である外部負荷としてのトロリー線(架線)80、並びに超電導饋電線50及びトロリー線(架線)80間を電気的に接続するパワーリード20を備える。パワーリード20は、電車10の進行方向に沿って一定間隔毎に超電導饋電線50とトロリー線(架線)80との間を接続するように複数設置されている。パワーリード20を介してトロリー線(架線)80に供給された電力は、電車10の上部に設置されたパンダグラフ11を介して電車10に供給される。
【0008】
トロリー線(架線)80にパンダグラフ11が接触する箇所は、電車10の走行位置に応じて時々刻々と変化し、当該接触する箇所の近傍に位置するパワーリード20を介して、超電導饋電線50からトロリー線(架線)80、そして電車10のルートで電流が流れる。つまり、電車10の走行時には、パンダグラフ11が接触する箇所の近傍に位置する特定のパワーリード20についてのみ大容量の電流が流れ、それ以外のパワーリード20にはトロリー線(架線)の電気抵抗のために電流は流れない。
【0009】
ここで、パワーリード20は負荷側の常温部と超電導饋電線50側の極低温部とを接続しているため、電車10が走行しない待機状態でも、常に100W前後の侵入熱がある。更に、近くを電車10が通過する際には大電流が流れることによって、トータルの熱損失は100〜1kWにも達する。このような電車10への給電システムでは、超電導饋電線50は数kmオーダーという長距離に亘って設置されるため、パワーリード20の本数も必然的に多くなる。そのため、超電導饋電線50が受ける熱負荷は相当大きいものとなる。
【0010】
このような熱負荷の大きな超電導システムにおける冷却技術としては、特許文献1及び2に示すようなサブクール冷媒の循環経路を利用した超電導饋電線50の冷却に加えて、パワーリード20をいかに効率的に冷却するかが重要である。その一つの解決手段として、例えば
図6に示すように、各パワーリード20に対して冷却用の冷凍機81(以下、第2の冷凍機81と称する)を設置することが考えられる。
【0011】
図6に示す例では、超電導饋電線50の延在方向に沿って寒剤が流れるように循環経路60が形成されている。循環経路60は、超電導饋電線50の上流側に設けられた寒剤供給部51から寒剤が供給され、超電導饋電線50に沿って流れた後、寒剤供給部51より下流側に設けられた寒剤排出部52から排出され、第1の冷凍機70に回収されるように形成されている。循環経路60を流れる寒剤は、第1の冷凍機70においてサブクール状態に冷却された後、寒剤供給部51から供給されることで超電導饋電線50の冷却を行う。超電導饋電線50に供給された寒剤は、超電導饋電線50に沿って流れるに従い、次第に温度が上昇していく。寒剤排出部52から排出される寒剤は、このように温度が上昇しているため、第1の冷凍機70に戻されることにより、再びサブクール状態に冷却されるというサイクルを繰り返す。
【0012】
このように循環経路60を流れる寒剤の一部はパワーリード20内部に導入されることによりパワーリード20を冷却する。この際に、パワーリード20から熱量を受け取った寒剤は、気化ガスとなる。発生した気化ガスは、各パワーリード20の排出口45から排出される。排出された気化ガスは、各パワーリード20に対応して設けられた第2の冷凍機81で冷却されることにより寒剤に液化され、第1の冷凍機81に送られる。そして、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤(循環経路60を流れる寒剤)と共に、寒剤供給部51から超電導饋電線50に供給される。
【0013】
しかしながら、この例ではパワーリード20の本数分だけ第2の冷凍機81を設置する必要があるため、各第2の冷凍機81のトータル消費電力もまた膨大な量となってしまい、効率が悪い。そのため、電車10の給電用の超電導饋電線50には長距離化の要請があるが、このような長距離化に対応することができないという問題点がある。
【0014】
また、仮に第2の冷凍機81の性能改善によって消費電力の削減を図ったとしても、多数のパワーリード20に対応して設けられた第2の冷凍機81のうちいずれか一台でも停止すると、超電導饋電線50に多大な熱量が侵入してしまう。このように故障等により停止する機器がシステムの中に多数含まれると、システム全体の信頼性が低下する。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、長距離に亘って配備された超電導ケーブルを効率的に冷却可能であり、且つ、高い信頼性を有する超電導給電システム用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る超電導給電システム用冷却装置は上記課題を解決するために、所定方向に延在する超電導ケーブルに沿って寒剤が流れるように、前記超電導ケーブルの上流側に設けられた寒剤供給部から第1の冷凍機によって冷却された寒剤を供給し、前記寒剤供給部より下流側に設けられた寒剤排出部から排出された寒剤を前記第1の冷凍機に回収して冷却すると共に、前記超電導ケーブルから外部負荷に電力を供給するための複数のパワーリードに対して前記超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の一部を導入することにより、前記超電導ケーブル及び前記複数のパワーリードを冷却する超電導給電システム用冷却装置において、前記複数のパワーリードに導入された寒剤の気化ガスを回収し、該回収した気化ガスを冷却することにより寒剤を液化生成する第2の冷凍機と、前記液化生成された寒剤の温度が所定値に冷却されるように前記第2の冷凍機を制御する制御部とを備え、前記第2の冷凍機によって液化生成された寒剤を、前記超電導ケーブルの前記寒剤供給部及び前記寒剤排出部間に設けられた寒剤補充部に供給することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、超電導ケーブルを冷却するために流れる寒剤の一部をパワーリードに導入することによって、複数のパワーリードに対して個別に冷凍機を設けることなく、各パワーリードを冷却できるので効率的である。また、各パワーリードの冷却に用いられた寒剤は気化ガスとして回収され、超電導ケーブル冷却用の第1の冷凍機とは別に設けられた第2の冷凍機によって冷却されることにより、寒剤が液化生成される。第2の冷凍機において液化生成された寒剤は、制御部からの指令に基づいた所定温度値に冷却されており、超電導ケーブルの寒剤供給部及び寒剤排出部間に設けられた寒剤補充部に供給される。一般的に、超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度は、寒剤供給部から寒剤排出部に向うにつれて上昇するが、このように第2の冷凍機において液化生成された寒剤をその途中に供給することによって、超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度を低下させることができる。そのため、超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度を長距離に亘って低温に保つことができるので、超電導ケーブルの長距離化が可能となる。このように、超電導ケーブルの長距離化の要請にも対応可能な冷却装置を提供することができる。
更に、超電導ケーブルとLN2の熱伝達効率をあげるため、通常ポンプの動力を上げて流量を増大させる必要があるが、第2の冷凍機によって超電導ケーブルを冷却することが可能となるため、第1のポンプの動力が小さくなり、冷却システム全体の効率が向上する。
【0018】
本発明の一態様としては、前記寒剤補充部において、前記超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度を検出する温度検出手段を更に備え、前記制御部は、前記液化生成された寒剤の温度が、前記温度検出手段によって検出された温度より低くなるように前記第2の冷凍機を制御することが好ましい。この態様によれば、各パワーリードに接続された外部負荷が時間的に変動することによって寒剤補充部における寒剤の温度が変化する場合であっても、超電導ケーブルの冷却長が十分に得られるように、適切な温度に冷却された寒剤を供給できる。
【0019】
【0020】
また、前記第2の冷凍機の停止時に、前記回収された気化ガスを前記第1の冷凍機に導入することにより寒剤を液化生成し、該液化生成した寒剤を前記寒剤排出部から回収した寒剤と共に、前記寒剤供給部より前記超電導ケーブルに供給するとよい。この態様によれば、第2の冷凍機が何らかの原因によって停止した場合であっても、超電導ケーブルの冷却用である第1の冷凍機に気化ガスを導入して寒剤を液化生成できる。この場合、液化生成された寒剤は、寒剤排出部から回収した寒剤と共に寒剤供給部より超電導ケーブルに供給されるため、超電導ケーブルの途中(即ち、寒剤供給部及び寒剤排出部間)に導入することができない。そのため、上述したような、超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度抑制効果は低減するものの、気化ガスを第1の冷凍機によって冷却することで寒剤を液化生成することができるので、第2の冷凍機の停止時においても、超電導給電システムの動作を停止させることなく、継続させることができる。このように、本態様では、信頼性の高い冷却装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、超電導ケーブルを冷却するために流れる寒剤の一部をパワーリードに導入することによって、複数のパワーリードに対して個別に冷凍機を設けることなく、各パワーリードを冷却できるので効率的である。また、各パワーリードの冷却に用いられた寒剤は気化ガスとして回収され、超電導ケーブル冷却用の第1の冷凍機とは別に設けられた第2の冷凍機によって冷却されることにより、寒剤が液化生成される。第2の冷凍機において液化生成された寒剤は、制御部からの指令に基づいた所定温度値に冷却されており、超電導ケーブルの寒剤供給部及び寒剤排出部間に設けられた寒剤補充部に供給される。一般的に、超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度は、寒剤供給部から寒剤排出部に向うにつれて上昇するが、このように第2の冷凍機において液化生成された寒剤をその途中に供給することによって、超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度を低下させることができる。そのため、超電導ケーブルに沿って流れる寒剤の温度を長距離に亘って低温に保つことができるので、超電導ケーブルの長距離化が可能となる。このように、超電導ケーブルの長距離化の要請にも対応可能な冷却装置を提供することができる。更に、第2の冷凍機を用いることで第1の冷媒を送り出すために必要なポンプのパワーを小さく出来るため、システム全体の効率が良い。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
ここでは、本発明に係る超電導給電システム用冷却装置を、背景技術にて
図5を参照して説明した超電導給電システムに適用した場合を例に説明する。尚、以下の説明では、背景技術と共通する箇所については共通の符号を付すこととし、重複する説明は適宜省略することとする。
【0025】
図7は本発明に係る超電導給電システム用冷却装置が適用される超電導給電システムにおけるパワーリード20の内部構成を示す断面図である。パワーリード20は、内部に長さ方向に沿って延在する内空部21が形成された円筒形状を有し、一端が超電導饋電線50に電気的に接続され、且つ、他端がトロリー線(架線)80に電気的に接続された導体部22と、内空部21に長さ方向に沿って延在するように棒状に形成され、超電導饋電線50側の先端にスリット部が設けられた棒状部材23と、内空部21を超電導饋電線50側から塞ぎ、且つ、棒状部材23を長さ方向に沿って移動可能に周囲から保持するシール部材24とを備えてなる。
【0026】
導体部22が連結されている外装壁40の内側空間41は、図不示の真空ポンプによって減圧されることによって真空状態になっており、外装壁40の内側に配置された超電導饋電線50への外部からの熱侵入を断熱により抑制している。また、超電導饋電線50の内側も空洞状になっており(即ち、超電導饋電線50は内部に空洞を有するように円筒形状を有しており)、当該空洞に圧入された寒剤(即ち、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤)26によって、超電導饋電線50が冷却されている。超電導饋電線50は、このような冷却断熱構造によって低温状態に置かれることで超電導状態が維持されている。
【0027】
導体部22は、超電導饋電線50からトロリー線(架線)80に給電される際に電流が流れる部分であり、例えば高純度のOFCu(Oxygen
Free Copper)から形成されている。棒状部材23は、導体部22に比べて線熱膨張率の小さい材料から形成されている。シール部材24は、安定性、耐熱性及び耐薬品性に優れたフッ素樹脂(商品名:テフロン(登録商標))から形成されている。
【0028】
導体部22及び棒状部材23のトロリー線(架線)80側の端部は、固定部材27に固定されている。固定部材27は導電性材料から形成されており、超電導饋電線50から導体部22を介して供給される電力をトロリー線(架線)80側に伝達する。尚、固定部材27は導電部材28に連結されており、導電部材28は
図7において不示のトロリー線(架線)に電気的に連結されている。
【0029】
図8及び
図9は、それぞれ非発熱時及び発熱時におけるスリット部25付近の構造を拡大して示す断面図である。棒状部材23の先端には、スリット部25が設けられており、
図8に示す非発熱時(即ち、導体部22の温度が所定の閾値以下である場合)には、スリット部25は寒剤26に浸されている。このとき、スリット部25は、シール部材24から内空部21側に露出しておらず、シール材24は内空部21を寒剤26から隔離しており、内空部21に寒剤26は導入されない。
【0030】
上述のように、導体部22は電気抵抗値の小さいOFCuから形成されているが、有限の電気抵抗値を有するため、導体部22に電流が流れるとジュール熱が発生し、発熱が起こる。棒状部材23は、導体部22に比べて線熱膨張率が小さい材料から形成されているため、発熱時には
図9に示すように、棒状部材23は導体部22に対して相対的に押し下げられるように熱変形する。そして、パワーリード20の温度が所定の閾値より大きくなるタイミングで、棒状部材23の超電導饋電線50側の先端に設けられたスリット部25がシール部材24から内空部21側に露出する。
【0031】
上述したように、超電導饋電線50の内側にある寒剤26は圧入されているため、スリット部25が内空部21側に露出すると、寒剤26と内空部21との間の差圧に基づいて、寒剤26が内空部21内に導入される。その結果、寒剤が内空部21に導入され、内空部21に面した部材(例えば、導体部22の内壁)が寒剤によって冷却される。尚、
図9では、内空部21に導入された寒剤を符号26´で示してある。
【0032】
導体部22には排出口45が設けられており、内空部21に導入された寒剤26の気化ガスは、当該排出口45から外部に排出されるように構成されている。
【0033】
このように寒剤26が内空部21に導入されると、やがて導体部22の温度は低下に転じる。すると、棒状部材23は導体部22に対して相対的に押し上げられるように変形する。その結果、内空部21に露出していたスリット部25は無くなり、内空部21への寒剤26の導入もまた停止する。
【0034】
このように、温度変化に伴い、導体部22に対する棒状部材21の位置が相対的に変化することによって、寒剤26の内空部21への導入が制御される。このような寒剤26の導入は、別途電源や制御装置等を設けることなく、専ら導体部22の温度変化に伴う熱変形によって自動的に行われるため、当該動作に余分なエネルギーを消費せずに済む。また、このような寒剤26の導入は導体部22の温度変化に応じて間欠的に行われるため、無駄に寒剤26を消費することがなく、寒剤26の消費量を効果的に抑制することができる。
【0035】
続いて
図1を参照して、本発明に係る超電導給電システム用冷却装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明に係る超電導給電システム用冷却装置の全体構成を示すブロック模式図である。尚、
図1では上記説明したパワーリード20の構成を簡略的に省略して図示している。
【0036】
本発明に係る超電導給電システム用冷却装置では、循環経路60を流れる寒剤の一部は、パワーリード20の発熱時にスリット部25を介してパワーリード20内部に導入されることにより、パワーリード20の冷却を行う。そしてパワーリード20を冷却した際に発生した寒剤の気化ガスが、各パワーリード20の排出口45から排出される。
【0037】
各パワーリード20の排出口45から排出された気化ガスは、ライン46を通って合流点47に収集される。合流点47に達した気化ガスが進行可能な経路は2種類用意されている。先ず、バルブ85によって開閉可能なライン48がある。ライン48上には、第2の冷凍機81の上流側を流れる気化ガスの流量を取得するための流量センサ80、気化ガスを寒剤として液化生成するための第2の冷凍機81、液化生成された寒剤を寒剤補充部90に向かって圧送するためのポンプ82、第2の冷凍機81とポンプ82との間を流れる寒剤(第2の冷凍機81によって液化生成された寒剤)の温度を取得するための温度センサ83、第2の冷凍機81の上流側を流れる寒剤の流量を取得するための流量センサ84、及びライン48の寒剤補充部90への接続をON/OFF切り替えするために開閉されるバルブ85が設けられている。また、ライン48においてバルブ85より下流側を流れる寒剤(寒剤補充部90に圧送される寒剤)の温度及び圧力を取得するための温度センサ86及び圧力センサ87が設けられている。また、寒剤補充部90の付近には、循環経路60を流れる寒剤の温度を取得するための温度センサ91が設けられている。
【0038】
一方、合流点47にはライン49は第1の冷凍機70に向かって接続されており、その途中に第1の冷凍機70への接続をオン/オフするためのバルブ88、及びライン49を流れる気化ガスの流量を取得するための流量センサ89が設けられている。
【0039】
制御部100は本実施例に係る冷却装置の動作を統括制御するためのコントロールユニットである。具体的には、流量センサ80、84、89、温度センサ83、86、及び圧力センサ87から取得した各種信号に基づいて、第2の冷凍機81、バルブ85、88を操作する。
【0040】
続いて、本実施例に係る超電導給電システム用冷却装置において制御部100が行う処理内容について具体的に説明する。
図2は本実施例に係る超電導給電システム用冷却装置において制御部100が行う処理内容を示すフローチャート図である。
【0041】
まず制御部100は時刻を監視することにより、現在時間が動作開始時刻Tsに達したか否かを判定する(ステップS101)。ここで動作開始時刻Tsとは、本発明に係る冷却装置の動作を開始する時刻であり、例えば、超電導給電システム1の給電先である電車10の営業開始時間(始発時刻)である。営業開始時間以前はパワーリード20に電流は流れないので冷却装置の動作は不要であり、電車10の営業時間帯に限って冷却装置を動作させることによって、省エネルギーに貢献することができる。より好ましくは、動作開始時刻Tsは、電車10の営業開始時間(始発時刻)より所定時間だけ前に設定することにより、パワーリード20を予冷できるように設定しておくとよい。
【0042】
現在時刻が動作開始時刻Tsに達していない場合(ステップS101:NO)、制御部100はステップS101を繰り返し実行し、待機する。一方、現在時刻が動作開始時刻Tsに達した場合(ステップS101:YES)、制御部100は第2の冷凍機81を始動する(ステップS102)。これにより、各パワーリード20の排出口45から排出された気化ガスは、第2の冷凍機81において寒剤として液化生成される。
【0043】
続いて、制御部100は第2の冷凍機81において寒剤が液化生成されたことを確認するために、温度センサ83及び91から温度値をそれぞれ取得し、温度センサ83の温度T1が温度センサ91の温度より低いか否かを判定する(ステップS103)。温度センサ83の温度T1が温度センサ91の温度より低い(ステップS103:YES)、第2の冷凍機81によって液化生成された寒剤を寒剤補充部に供給すべく、制御部100はステップS104以下の処理を進める。一方、温度センサ83の温度T1が温度センサ91の温度以上である場合(ステップS103:NO)、第2の冷凍機81によって寒剤が十分に液化生成されていないとして、ステップS103を再度実行し、待機する。
【0044】
続いて制御部100はポンプ82を起動すると共に(ステップS104)、バルブ85を開くことにより(ステップS105)、第2の冷凍機81において液化生成された寒剤を、寒剤補充部90に供給する。このように第2の冷凍機81において液化生成された寒剤は、制御部100からの指令に基づいた所定温度値に冷却されており、超電導饋電線50の寒剤供給部51及び寒剤排出部52間に設けられた寒剤補充部90に供給される。一般的に、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の温度は、寒剤供給部51から寒剤排出部52に向うにつれて上昇するが、このように第2の冷凍機81において液化生成された寒剤をその途中に設けられた寒剤補充部90に供給することによって、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の温度を低下させることができる。
【0045】
その後、制御部100は温度センサ83及び86、圧力センサ87、並びに流量センサ80及び84をモニタすることによって、寒剤補充部90に供給される寒剤の温度、圧力及び流量を監視する(ステップS106)。具体的には、制御部100は取得した寒剤の温度、圧力及び流量が予め設定された閾値との大小を比較することによって、異常の有無を判定するとよい。
【0046】
ここで、制御部100は時刻を監視することにより、現在時間が動作終了時刻Teに達したか否かを判定する(ステップS107)。ここで動作終了時刻Teとは、本発明に係る冷却装置の動作を終了する時刻であり、例えば、超電導給電システム1の給電先である電車10の営業終了時間(終電時刻)である。営業終了時間以降はパワーリード20に電流は流れないので冷却装置の動作は不要であり、このように必要な時間帯に限って冷却装置を動作させることによって、省エネルギーに貢献することができる。
【0047】
現在時間が動作終了時刻Teに達していない場合(ステップS107:NO)、制御部100はステップS106における監視の結果、温度センサ83及び86、圧力センサ87、並びに流量センサ80及び84が異常な状態(予め設定された閾値を超えるなどの異常な状態)であるか否かを判定する(ステップS108)。異常が無い場合(ステップS108:NO)、制御部100は、処理をステップS106に戻し、上記動作を繰り返す。
【0048】
一方、異常が有る場合(ステップS108:YES)、第2の冷凍機81に何らかの異常が発生したと判定し、第2の冷凍機81を停止させる(ステップS109)。そして、バルブ85を閉じると共にバルブ88を開けることにより、パワーリード20から排出された気化ガスの経路をライン48からライン49に変更する(ステップS110)。すると、パワーリード20から排出された気化ガスは、ライン49の先に接続された第1の冷凍機70に供給される。第1の冷凍機70にて冷却されることにより液化生成された寒剤は、寒剤排出部52から回収した寒剤と共に、寒剤供給部51より超電導饋電線50に供給される。これにより、第2の冷凍機81が停止した場合であっても、超電導饋電線50の冷却用である第1の冷凍機70に気化ガスを導入して寒剤を液化生成できる。この場合、第1の冷凍機70で液化生成された寒剤は、寒剤排出部52から回収した寒剤と共に寒剤供給部51より超電導ケーブル50に供給されるため、超電導饋電線50の途中(即ち、寒剤供給部51及び寒剤排出部52間)に設けられた寒剤補充部90に導入することができない。そのため、
図3の故障時の計算結果が示すように、上述したような、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の温度抑制効果は低減するものの、気化ガスを第1の冷凍機によって冷却することで寒剤を液化生成することができるので、第2の冷凍機81の停止時においても、超電導給電システム1の動作を停止させることなく、継続させることができる。このように、信頼性の高い冷却装置を実現することができる。
【0049】
続いて制御部100は、流量センサ89からライン49における流量を取得し(ステップS111)、当該取得した流量に基づいて第2の冷凍機81が異常な状態から復旧したか否かを判定する(ステップS112)。第2の冷凍機81が復旧していない場合(ステップS112:NO)、制御部100は処理をステップS111に戻し、上記処理を繰り返して待機する。一方、第2の冷凍機81が復旧した場合(ステップS112:YES)、制御部100は処理をステップS102に戻し、上記処理を繰り返す。
【0050】
現在時間が動作終了時刻Teに達していない場合(ステップS107:YES)、制御部100はバルブ85を閉じ(ステップS113)、ポンプ82及び第2の冷凍機81を停止させ(ステップS114&S115)、一連の動作を終了する(END)。
【0051】
次に超電導饋電線50の延在方向に沿った温度分布について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は本実施例に係る超電導給電システム用冷却装置における超電導饋電線50の延在方向に沿った温度分布を示すグラフ図であり、
図4は寒剤補充部90に第2の冷凍機81により液化生成された寒剤が供給されない参考例における超電導饋電線50の延在方向に沿った温度分布を示すグラフ図である。尚、ここで言う参考例は、寒剤補充部90に第2の冷凍機81により液化生成された寒剤が供給されない点を除いて、本実施例に係る超電導給電システム用冷却装置とその構成を同じにするものとして説明する。
【0052】
まず
図4に示す参考例では、超電導饋電線50の延在方向に沿って温度が距離に比例して上昇する。ここでは、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の流速がQ=20L/m、40L/m、60L/mの場合について、それぞれ示しているが、流速が遅くなるに従い温度上昇の傾きは大きくなる。特に、流速がQ=20L/mの場合は、超電導饋電線50の温度が距離3km未満の箇所で80K以上に達してしまい、下流側に置いて超電導饋電線50を超電導状態に維持することが困難になっている。
【0053】
一方、
図3に示すように、本発明では、寒剤補充部(この例では5kmの地点)90に第2の冷凍機81によって液化生成された寒剤が供給される。そのため、寒剤供給部51から下流側に向かって次第に上昇する温度は、寒剤補充部90にて一端下げられ、温度の上昇が抑制される。即ち、超電導饋電線50に沿った温度分布が寒剤補充部90において鋸状の分布となり、超電導饋電線50の冷却長を大幅に伸ばすことができる。このように、長距離に亘って温度を低温に維持することができるので、超電導饋電線50の長距離化の要請に対応することが可能とすることができる。
【0054】
尚、超電導饋電線50が更に長距離に亘って設置されている場合には、第2の冷凍機81は、その性能に応じて、所定本数のパワーリード20毎に設置するとよい。例えば超電導饋電線50に沿ってパワーリード20が200m毎に配置されている場合には、2km毎に第2の冷凍機81を配置すると、各第2の冷凍機81は10本のパワーリード20から排出される気化ガスから、寒剤を液化生成することとなる。このように、本発明では、超電導饋電線50の全長を10kmとすると、必要となる第2の冷凍機81は合計5台となる。従って、各パワーリード20に対してそれぞれ排出された気化ガスを液化するための冷凍機を設ける場合に比べて、冷凍機の台数を格段に少なく抑えることができる。そのため、冷却装置を維持する消費電力も少なくて済み、更に保守管理も容易である。
【0055】
また第2の冷凍機81の冷却能力を、各パワーリード20から排出される気化ガスを液化するために必要な能力以上にすることにより、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の冷却を行うようにしてもよい。
【0056】
また、本発明に係る冷却装置では、一端常温になった気化ガスも、一定間隔毎に超電導饋電線50に戻されるので、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の流量もほぼ一定である。
【0057】
尚、理想的には、上記原理に基づいて、寒剤補充部90を超電導饋電線50に沿って所定間隔毎に設けることによって冷却長を限りなく長距離化することが可能であるが、実際には超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の圧力は下流側に向かうに従い低下するため、実際の超電導饋電線50の冷却長は寒剤の圧力降下度合に依存すると考えられる。
【0058】
以上説明したように、本実施例に係る冷却装置によれば、超電導饋電線50を冷却するために流れる寒剤の一部をパワーリード20に導入することによって、複数のパワーリード20に対して個別に冷凍機を設けることなく、各パワーリード20を冷却できるので効率的である。また、各パワーリード20の冷却に用いられた寒剤は気化ガスとして回収され、超電導饋電線50の冷却用の第1の冷凍機70とは別に設けられた第2の冷凍機81によって冷却されることにより、寒剤が液化生成される。第2の冷凍機81において液化生成された寒剤は、制御部100からの指令に基づいた所定温度値に冷却されており、超電導饋電線50の寒剤供給部51及び寒剤排出部52間に設けられた寒剤補充部90に供給される。一般的に、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の温度は、寒剤供給部51から寒剤排出部52に向うにつれて上昇するが、このように第2の冷凍機81において液化生成された寒剤をその途中に設けられた寒剤補充部90に供給することによって、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の温度を低下させることができる。そのため、超電導饋電線50に沿って流れる寒剤の温度を長距離に亘って低温に保つことができるので、超電導饋電線50の長距離化が可能となる。このように、超電導饋電線50の長距離化の要請にも対応可能な冷却装置を提供することができる。