特許第6046470号(P6046470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許6046470害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤
<>
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000002
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000003
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000004
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000005
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000006
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000007
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000008
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000009
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000010
  • 特許6046470-害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046470
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/90 20060101AFI20161206BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20161206BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20161206BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20161206BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20161206BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20161206BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20161206BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A01N43/90 101
   A01P19/00
   A01P17/00
   A01N25/04
   A01N27/00
   A01N31/14
   A01N37/02
   A01N35/02
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-265265(P2012-265265)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2013-139429(P2013-139429A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年11月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-270132(P2011-270132)
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】石橋 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】左口 龍一
(72)【発明者】
【氏名】北條 達哉
(72)【発明者】
【氏名】福本 毅彦
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−077113(JP,A)
【文献】 特開平02−207002(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0148202(US,A1)
【文献】 特開2006−265558(JP,A)
【文献】 特許第5898053(JP,B2)
【文献】 特許第5898054(JP,B2)
【文献】 特表2006−511633(JP,A)
【文献】 特開平07−267809(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00572743(EP,A1)
【文献】 特表2009−534031(JP,A)
【文献】 特開2001−064102(JP,A)
【文献】 特開昭63−222104(JP,A)
【文献】 特表平09−509399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/000−65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するテルペン系化合物を除く揮発性物質と油性ゲル化剤を少なくとも含むが、溶媒を含まない害虫用ゲル組成物であって、前記揮発性物質が、前記害虫用ゲル組成物中に70.0〜99.0質量%含まれ、前記油性ゲル化剤が、アミノ酸誘導体、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の多価金属塩、糖誘導体及びワックスからなる群から選ばれ、かつ前記揮発性物質が前記油性ゲル化剤と非流動性のゲルを形成可能である害虫用ゲル組成物。
【請求項2】
前記揮発性物質が、フェロモン物質、誘引剤及び忌避剤からなる群から選ばれる請求項1に記載の害虫用ゲル組成物。
【請求項3】
開口部を備え、前記揮発性物質が浸透しない材質からなる容器と
前記容器内に導入された請求項1又は請求項2に記載の害虫用ゲル組成物と
を少なくとも含む徐放性製剤。
【請求項4】
前記開口部を覆う、前記揮発性物質を透過するフィルムをさらに含む請求項に記載の徐放性製剤。
【請求項5】
前記害虫が、オリーブフルーツフライ(オリーブミバエ)である請求項又は請求項に記載の徐放性製剤。
【請求項6】
前記揮発性物質が、1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカンである請求項に記載の徐放性製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェロモン物質、誘引剤、忌避剤等を徐放することにより、交信撹乱、発生予察、大量誘殺、特定エリアからの害虫の防除等を行うことが可能である。これらの害虫防除に有効な揮発性物質を長期間に亘って徐放する方法として、液状の揮発性物質を徐放化させる方法、揮発性物質をゲル化させ徐放化させる方法等が知られている。例えば、特許文献1には揮発性物質をポリマー容器に封入し、ポリマー壁を浸透させてポリマー表面から徐放させる方法が、特許文献2には揮発性物質を流動性ゲルとし、ポリマーフィルムを介して徐放させる方法が、特許文献3には揮発性物質をポリマー格子に閉じ込めて固形又はゲル状にして徐放させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−313035号公報
【特許文献2】特開2002−306584号公報
【特許文献3】特開昭64−055136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に挙げられているような液状の揮発性物質をポリマー容器に封入する製剤の場合、製剤を使用する際、使用者が粗雑に扱うことで、容器に穴、切れ目等が生じ、容器内に封入された揮発性物質が漏れ出て徐放期間が極端に短くなってしまうという問題がある。また、特許文献2に挙げられているような流動性ゲルの場合にも、漏れの恐れがあるほか、流動性を持たせるために大量の希釈剤を添加する必要があるため、揮発性物質の徐放速度が時間と共に低下してしまうという問題がある。そのため、揮発性物質が漏れ出る恐れがなく、徐放速度が一定に保たれる徐放性製剤が望まれていた。
更に、特許文献3に見られるようなポリマーゲルの場合、揮発性物質が漏れ出る恐れはないが、揮発性物質共存下で重合して製造するため、重合条件下で反応してしまうような不安定な官能基を有する揮発性物質への適用は困難であった。そのため、揮発性物質を重合のような過酷な条件に曝させることなく製造可能なゲル状の徐放性製剤が強く望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、揮発性物質が漏れ出たり、反応したりする恐れがなく、揮発性物質の徐放速度が一定に保たれる害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題の解決のため、害虫防除に有効な揮発性物質を長期間に亘って一定の速度以上で安定して徐放する害虫用ゲル組成物を検討した結果、意外にも揮発性物質と油性ゲル化剤を少なくとも含む害虫用ゲル組成物であって、前記揮発性物質が、前記害虫用ゲル組成物中に70.0〜99.0質量%含まれる害虫用ゲル組成物及びこれを導入した徐放性製剤を作ることによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、水酸基を有するテルペン系化合物を除く揮発性物質と油性ゲル化剤を少なくとも含むが、溶媒を含まない害虫用ゲル組成物であって、前記揮発性物質が、前記害虫用ゲル組成物中に70.0〜99.0質量%含まれ、前記油性ゲル化剤が、アミノ酸誘導体、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の多価金属塩、糖誘導体及びワックスからなる群から選ばれ、かつ前記揮発性物質が前記油性ゲル化剤と非流動性のゲルを形成可能である害虫用ゲル組成物が提供できる。また、本発明によれば、開口部を備え、前記揮発性物質が浸透しない材質からなる容器と、前記容器内に導入された前記害虫用ゲル組成物とを少なくとも含む徐放性製剤が提供できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の害虫用ゲル組成物によれば、揮発性物質が漏れ出る恐れを低減し、温和な条件でゲル化させるため、ゲル化時に揮発性物質の反応による損失を抑えることが可能である。また、溶媒等の希釈成分を添加しないため、一定以上の徐放速度を長期間、安定して維持することが可能である。更に、ゲル組成物の表面積や開口部の大きさ又は開口部を覆うポリマーフィルムの材質や厚さ等によって、徐放速度を調整することも可能である。また、揮発性が高く、従来では徐放製剤化が困難な揮発性物質も、本発明の徐放性製剤にすることで安定した徐放が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】徐放性製剤の例を示す。
図2】開口部が揮発性物質を透過するフィルムで覆われた容器を備える徐放性製剤の例を示す。
図3】実施例1及び2の経過日数による放出速度のグラフを示す。
図4】実施例3〜5の経過日数による放出速度のグラフを示す。
図5】実施例6及び7の経過日数による放出速度のグラフを示す。
図6】実施例8の経過日数による放出速度のグラフを示す。
図7】実施例9の経過日数による放出速度のグラフを示す。
図8】実施例10〜12の経過日数による放出速度のグラフを示す。
図9】実施例13〜15の経過日数による放出速度のグラフを示す。
図10】実施例16〜18の経過日数による放出速度のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の害虫用ゲル組成物は、揮発性物質と油性ゲル化剤を少なくとも含む害虫用ゲル組成物であって、前記揮発性物質が、前記害虫用ゲル組成物中に70.0〜99.0質量%含まれる。本発明で用いられる揮発性物質としては、フェロモン物質、誘引剤、忌避剤等が挙げられ、これらの混合物も含む。
【0009】
本発明のフェロモン物質としては、炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アルデヒド、飽和又は二重結合を一つ又は二つ以上有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテート、炭素数7〜20の脂肪族直鎖状アルコール、炭素数7〜15のスピロアセタール、炭素数10〜25の脂肪族直鎖状ケトン、炭素数10〜30の脂肪族炭化水素、炭素数10〜20のカルボン酸等が挙げられ、特に、炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アルデヒド、飽和又は二重結合を一つ又は二つ以上有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテート、炭素数7〜20の脂肪族直鎖状アルコール及び炭素数7〜15のスピロアセタールが好ましい。具体的には、ピンクボールワーム(ワタアカミムシ)の性フェロモン物質であるZ7Z11−ヘキサデカジエニルアセテート及びZ7E11−ヘキサデカジエニルアセテート、オリエンタルフルーツモス(ナシヒメシンクイ)の性フェロモン物質であるZ−8−ドデセニルアセテート、ピーチツイッグボーラー(モモキバガ)の性フェロモン物質であるE−5−デセニルアセテート、グレープベリーモス(ホソヒメハマキ)の性フェロモン物質であるZ−9−ドデセニルアセテート、ヨーロピアングレープヴァインモス(ブドウホソハマキ)の性フェロモン物質であるE7Z9−ドデカジエニルアセテート、ライトブラウンアップルモス(リンゴウスチャイロハマキ)の性フェロモン物質であるE−11−テトラデセニルアセテート、コドリングモス(コドリンガ)の性フェロモン物質であるE8E10−ドデカジエノール、リーフローラー(ハマキガ)の性フェロモン物質であるZ−11−テトラデセニルアセテート、ピーチツリーボーラー(コスカシバ)の性フェロモン物質であるZ3Z13−オクタデカジエニルアセテート及びE3Z13−オクタデカジエニルアセテート、アメリカンボールワーム(オオタバコガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセナール、オリエンタルタバコバッドワーム(タバコガ)の性フェロモン物質であるZ−9−ヘキサデセナール、ソイビーンポッドボーラー(マメシンクイガ)の性フェロモン物質であるE8E10−ドデカジエニルアセテート、ダイアモンドバックモス(コナガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセニルアセテート及びZ−11−ヘキサデセナール、キャベッジアーミーワーム(ヨトウガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセニルアセテート、Z−11−ヘキサデセノール及びn−ヘキサデシルアセテート、ビートアーミーワーム(シロイチモジヨトウ)の性フェロモン物質であるZ9E12−テトラデカジエニルアセテート及びZ−9−テトラデセノール、コモンカットワーム(ハスモンヨトウ)の性フェロモン物質であるZ9E11−テトラデカジエニルアセテート及びZ9E12−テトラデカジエニルアセテート、フォールアーミーワームの性フェロモン物質であるZ−9−テトラデセニルアセテート、トマトピンワームの性フェロモン物質であるE−4−トリデセニルアセテート、ライスステムボーラー(ニカメイガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセナール及びZ−13−オクタデセナール、コーヒーリーフマイナーの性フェロモン物質である5,9−ジメチルペンタデカン及び5,9−ジメチルヘキサデカン、ピーチリーフマイナー(モモハモグリガ)の性フェロモン物質である14−メチル−1−オクタデセン、ピーチフルーツモス(モモシンクイガ)の性フェロモン物質であるZ−13−イコセン−10−オン、ジプシーモス(マイマイガ)の性フェロモン物質である7,8−エポキシ−2−メチルオクタデカン、パインプロセッショナリーモスの性フェロモン物質であるZ−13−ヘキサデセン−11−イニルアセテート、ケブカアカチャコガネの性フェロモン物質である2−ブタノール、イエローウィッシュエロンゲイトチェイファー(ナガチャコガネ)の性フェロモン物質であるZ−7,15−ヘキサデカジエン−4−オリド、シュガーケインワイヤーワーム(オキナワカンシャクシコメツキ)の性フェロモン物質であるn−ドデシルアセテート、シュガーケインワイヤーワーム(サキシマカンシャクシコメツキ)の性フェロモン物質であるE−9,11−ドデカジエニルブチレート及びE−9,11−ドデカジエニルヘキサネート、カプレアスチェイファー(ドウガネブイブイ)の性フェロモン物質である(R)−Z−5−(オクト−1−エニル)−オキサシクロペンタン−2−オン、ライスリーフバグ(アカヒゲホソミドリカスミカメ)の性フェロモン物質であるヘキシルヘキサノエート、E−2−ヘキセニルヘキサノエート及びオクチルブチレート、ソルガムプラントバグ(アカスジカスミカメ)の性フェロモン物質であるヘキシルブチレート、E−2−ヘキセニルブチレート及びE−4−オキソ−2−ヘキセナール、ホワイトピーチスケール(クワシロカイガラムシ)の性フェロモン物質である(6R)−Z−3,9−ジメチル−6−イソプロペニル−3,9−デカジエニルプロピオネート及び(6R)−Z−3,9−ジメチル−6−イソプロペニル−3,9−デカジエノール、バインミリーバグ(ブドウコナカイガラムシ)の性フェロモン物質である(S)−5−メチル−2−(1−プロペン−2−イル)−4−ヘキセニル3−メチル−2−ブテノエート、ハウスフライ(イエバエ)の性フェロモン物質であるZ−9−トリコセン、ジャーマンコックローチ(チャバネゴキブリ)の性フェロモン物質であるジェンティシルキノンイソバレレート、オリーブフルーツフライ(オリーブミバエ)の性フェロモン物質である1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0010】
その他、本発明で用いられるフェロモン物質は、上記に例示した以外の炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アルデヒド、飽和又は二重結合を一つ又は二つ以上有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテート、炭素数7〜20の脂肪族直鎖状アルコール、炭素数7〜15のスピロアセタール、炭素数10〜25の脂肪族直鎖状ケトン、炭素数10〜30の脂肪族炭化水素、炭素数10〜20のカルボン酸等が挙げられる。
【0011】
炭素数10〜20の脂肪族直鎖状アルデヒドの具体例としては、Z−5−デセナール、10−ウンデセナール、n−ドデカナール、Z−9−ドデセナール、E5Z10−ドデカジエナール、E8E10−ドデカジエナール、n−テトラデカナール、Z7−テトラデセナ−ル、Z9−テトラデセナール、Z11−テトラデセナール、Z9E11−テトラデカジエナール、Z9Z11−テトラデカジエナール、Z9E12−テトラデカジエナール、Z9E11,13−テトラデカトリエナール、Z10−ぺンタデセナール、E9Z11−ぺンタデカジエナール、n−ヘキサデカナール、Z7−ヘキサデセナール、E6Z11−ヘキサデカジエナール、E4Z6−ヘキサデカジエナール、E4E6Z11−ヘキサデカトリエナール、E10E12E14−ヘキサデカトリエナール、n−オクタデカナール、Z9−オクタデセナール、E14−オクタデセナール、E2Z13−オクタデカジエナ−ル、Z3Z13−オクタデカジエナール、Z9Z12−オクタデカジエナ−ル、Z9Z12Z15−オクタデカトリエナール等が挙げられる。
【0012】
飽和又は二重結合を一つ有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテートの具体例としては、デシルアセテート、Z3−デセニルアセテート、Z4−デセニルアセテート、ウンデシルアセテート、Z7−ウンデセニルアセテート、Z8−ウンデセニルアセテート、E9−ウンデセニルアセテート、ドデシルアセテート、E7−ドデセニルアセテート、Z7−ドデセニルアセテート、E8−ドデセニルアセテート、E9−ドデセニルアセテート、11−ドデセニルアセテート、10−メチルドデセニルアセテート、トリデシルアセテート、Z4−トリデセニルアセテート、E6−トリデセニルアセテート、E8−トリデセニルアセテート、Z8−トリデセニルアセテート、テトラデシルアセテート、Z7−テトラデセニルアセテート、E8−テトラデセニルアセテート、Z8−テトラデセニルアセテート、E9−テトラデセニルアセテート、Z9−テトラデセニルアセテート、E10−テトラデセニルアセテート、Z10−テトラデセニルアセテート、E12−テトラデセニルアセテート、Z12−テトラデセニルアセテート、12−メチルテトラデセニルアセテート、ペンタデシルアセテート、Z8−ペンタデセニルアセテート、E9−ペンタデセニルアセテート、ヘキサデシルアセテート、Z3−ヘキサデセニルアセテート、Z5−ヘキサデセニルアセテート、E6−ヘキサデセニルアセテート、Z7−ヘキサデセニルアセテート、Z9−ヘキサデセニルアセテート、Z10−ヘキサデセニルアセテート、Z12−ヘキサデセニルアセテート、ヘプタデシルアセテート、Z11−ヘプタデセニルアセテート、オクタデシルアセテート、E2−オクタデセニルアセテート、Z11−オクタデセニルアセテート、E13−オクタデセニルアセテート等が挙げられる。
【0013】
二重結合を二つ以上有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテートの具体例としては、Z3E5−デカジエニルアセテート、Z3E5−ドデカジエニルアセテート、E3Z5−ドデカジエニルアセテート、E4Z10−ドデカジエニルアセテート、Z5E7−ドデカジエニルアセテート、E5Z7−ドデカジエニルアセテート、Z8Z10−ドデカジエニルアセテート、9,11−ドデカジエニルアセテート、E4Z7−トリデカジエニルアセテート、11−メチル−Z9,12−トリデカジニルアセテート、E3E5−テトラデカジエニルアセテート、E8E10−テトラデカジエニルアセテート、Z10Z12−テトラデカジエニルアセテート、Z10E12−テトラデカジエニルアセテート、E10Z12−テトラデカジエニルアセテート、E10E12−テトラデカジエニルアセテート、E11,13−テトラデカジエニルアセテート、Z8Z10−ぺンタデカジエニルアセテート、Z8E10−ぺンタデカジエニルアセテート、Z8Z10−ヘキサデカジエニルアセテート、Z10E12−ヘキサデカジエニルアセテート、Z11Z13−ヘキサデカジエニルアセテート、Z11E13−ヘキサデカジエニルアセテート、E11Z13−ヘキサデカジエニルアセテート及びZ11E14−ヘキサデカジエニルアセテート等の共役ジエン及び/又は1,4−ペンタジエン系のアセテート化合物が挙げられる。
【0014】
炭素数7〜20の脂肪族直鎖状アルコールの具体例としては、n−ヘプタノール、Z4−ヘプテノール、Z6−ノネノール、Z6,8−ノナジエノール、E6,8−ノナジエノール、n−デカノール、Z5−デセノール、E5−デセノール、n−ウンデカノール、ウンデセノール、11−クロロ−E8E10−ウンデカジエノール、n−ドデカノール、Z5−ドデセノール、Z7−ドデセノール、E7−ドデセノール、Z8−ドデセノール、E8−ドデセノール、Z9−ドデセノール、E9−ドデセノール、E10−ドデセノール、11−ドデセノール、Z5E7−ドデカジエノール、E5Z7−ドデカジエノール、E5E7−ドデカジエノール、Z7Z9−ドデカジエノール、Z7E9−ドデカジエノール、E7Z9−ドデカジエノール、8,9−ジフロロ−E8E10−ドデカジエノール、10,11−ジフロ−E8E10一ドデカジエノール、8,9,10,11−テトラフルオロ−E8E10−ドデカジエノール、Z9,11−ドデカジエノール、E9,11−ドデカジエノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、Z5−テトラデセノール、E5−テトラデセノール、Z7−テトラデセノール、Z8−テトラデセノール、Z11−テトラデセノール、E11−テトラデセノール、Z9Z11−テトラデカジエノール、Z9E11−テトラデカジエノール、Z9Z12−テトラデカジエノール、Z9E12−テトラデカジエノール、Z10Z12−テトラデカジエノール、E10E12−テトラデカジエノール、n−ぺンタデカノール、6,10,14−トリメチル−2−ぺンタデカノール、n−ヘキサデカノール、Z9−ヘキサデセノール、Z11−ヘキサデセノール、E11−ヘキサデセノール、Z7Z11−ヘキサデカジエノール、Z7E11−ヘキサデカジエノール、E10Z12−ヘキサデカジエノール、E10E12−ヘキサデカジエノール、Z11Z13−ヘキサデカジエノール、Z11E13−ヘキサデカジエノール、E11Z13−ヘキサデカジエノール、E11Z13−ヘキサデカジエノール、E4Z6Z10−ヘキサデカトリエノール、E4E6Z10−ヘキサデカトリエノール、n−オクタデカノール、Z13−オクタデセノール、E2Z13−オクタデカジエノール、Z3Z13−オクタデカジエノール、E3Z13−オクタデカジエノール及びn−エイコサノール等の飽和脂肪族直鎖状アルコール又は二重結合を一つ又は二つ以上有する脂肪族直鎖状アルコールが挙げられる。
【0015】
炭素数7〜15のスピロアセタールの具体例としては、1,6−ジオキサスピロ[4.5]デカン、2−エチル−1,6−ジオキサスピロ[4.4]ノナン、3−ヒドロキシ−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4−ヒドロキシ−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、7−メチル−1,6−ジオキサスピロ[4.5]デカン、2−メチル−1,6−ジオキサスピロ[4.5]デカン、2,7−ジメチル−1,6−ジオキサスピロ[4.4]ノナン、2,4,8−トリメチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−メチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,7−ジオキサスピロ[5.6]ドデカン、2,8−ジメチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2,8−トリメチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−エチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−メチル−1,7−ジオキサスピロ[5.6]ドデカン、2−エチル−7−メチル−1,6−ジオキサスピロ[5.6]デカン、7−エチル−2−メチル−1,6−ジオキサスピロ[5.6]デカン、2,7−ジエチル−1,6−ジオキサスピロ[4.4]ノナン、2,7−ジメチル−1,6−ジオキサスピロ[4.6]ウンデカン、2−メチル−7−プロピル−1,6−ジオキサスピロ[4.4]ノナン、3−ヒドロキシ−2,8−ジメチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−プロピル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−エチル−8−メチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、8−エチル−2−メチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,7−ジエチル−1,6−ジオキサスピロ[4.5]デカン、2,7−ジプロピル−1,6−ジオキサスピロ[4.4]ノナン、7−ブチル−2−メチル−1,6−ジオキサスピロ[4.5]デカン、8−メチル−2−プロピル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−プロピル−8−メチル−1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0016】
炭素数10〜25の脂肪族直鎖状ケトンの具体例としては、ヘプタデカン−2−オン、Z12−ノナデセン−9−オン、Z6Z9−ノナデカジエン−3−オン、Z13−イコセン−10−オン、Z6−ヘネイコセン−11−オン、Z6−ヘネイコセン−9−オン、Z6E8−ヘネイコサジエン−11−オン、Z6E9−ヘネイコサジエン−11−オン、Z6Z9−ヘネイコサジエン−11−オン、Z7−トリコセン−11−オン等が挙げられる。
【0017】
炭素数10〜30の脂肪族炭化水素の具体例としては、1E11−ペンタデカジエン、1Z11−ペンタデカジエン、5,9−ジメチルペンタデカン、2−メチルヘキサデカン、3,13−ジメチルヘキサデカン、5,9−ジメチルヘキサデカン、n−ヘプタデカン、2−メチルヘプタデカン、2,5−ジメチルヘプタデカン、5−メチルヘプタデカン、5,11−ジメチルヘプタデカン、7−メチルヘプタデカン、7,11−ジメチルヘプタデカン、Z3Z6Z9−ヘプタデカトリエン、Z6Z9−ヘプタデカジエン、Z7−オクタデセン、10,14−ジメチル−1−オクタデセン、5,9−ジチルオクタデカン、2−メチルオクタデカン、14−メチルオクタデカン、Z3Z6Z9−オクタデカトリエン、n−ノナデカン、2−メチルノナデカン、9−メチルノナデカン、Z3Z6Z9Z11−ノナデカテトラエン、1E3Z6Z9−ノナデカテトラエン、Z3Z6Z9−ノナデカトリエン、Z6Z9−ノナデカジエン、Z9−ノナデセン、n−エイコサン、Z9−エイコセン、Z3Z6−エイコサジエン、Z3Z6Z9−エイコサトリエン、1Z3Z6Z9−エイコサテトラエン、1Z3Z6Z9−ヘネイコサテトラエン、n−ヘネイコサン、Z3Z6−ヘネイコサジエン、Z6Z9−ヘネイコサジエン、Z6Z9,20−ヘネイコサトリエン、Z3Z6Z9−ヘネイコサトリエン、Z6−13−メチルヘネイコセン、Z9−ヘネイコセン、n−ドコサエン、Z3Z6Z9−ドコサトリエン、Z6Z9−ドコサジエン、n−トリコサン、Z7−トリコセン、Z3Z6Z9−トリコサトリエン、Z6Z9−トリコサジエン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、Z3Z6Z9−ペンタコサトリエン、n−ヘキサコサン、n−ヘプタコサン、n−オクタコサン、n−ノナコサン等が挙げられる。
【0018】
炭素数10〜20のカルボン酸の具体例としては、カルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されないが、3,5−ジメチルドデカン酸、Z−5−ウンデセン酸、E−5−ウンデセン酸、(E,Z)−3,5−テトラデカジエン酸等の炭素骨格中に複数のメチル基を有するものや、二重結合を有するもの等が挙げられる。
【0019】
誘引剤の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ−酪酸、n−吉草酸、イソ−吉草酸、カプロン酸、イソカプロン酸、E2−ブテン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸等の脂肪族カルボン酸、アセトアルデヒド、プロパナール、ペンタナール、E2−ヘキセナール等の脂肪族アルデヒド、2−ブタノン、ペンタン−2,4−ジオン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸Z3−ヘキセニル、酢酸デシル、2−メチル酪酸ヘキシル、ヘキサン酸ブチル、オクタン酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸エチル、ウンデカン酸エチル、ドデカン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、E2Z4−デカジエン酸エチル、2−メチル−4−シクロヘキセンカルボン酸tert−ブチル、4(又は5)−クロル−2−メチル−シクロヘキサンカルボン酸tert−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル、エタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、2−エチルヘキサノール、Z3−ヘキセノール、1−オクテン−3−オール、ノナノール、デカノール、シクロヘキサノール、アセトイン、プロパン1,2−ジオール等の脂肪族アルコール、ジエチルエーテル、アセタール等の脂肪族エーテル、α,β−ヨノン、ウンデカン、トリデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、Z9−トリコセン等の脂肪族炭化水素、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸プロピル、フェニル酢酸フェネチル、安息香酸Z3−ヘキセニル、オイゲノール、メチルイソオイゲノール、メチルオイゲノール、ベトロール酸、2−アリルオキシ−3−エトキシベンズアルデヒド、4−(p−アセトキシフェニル)−2−ブタノン、4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン(ラズベリーケトン)、アニシルアセトン、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、フェネチルアルコール、プロピオン酸フェネチル、酪酸フェネチル、アネトール、バニリン、エチルバニリン、イソバニリン、ヘリオトロピン、ピペロナールアセトン、フチオコール等の芳香族化合物、マルトール、エチルマルトール、2,5−ジメチルピラジン、γ−(4−ペンテニル)−γ−ブチロラクトン、δ−ノニルラクトン、フロンタリン等の複素環化合物、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジプロピルジスルフィド、メチルイソチオシアネート、3−ブテニルイソチオシアネート等の含硫黄化合物、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、1,4−ジアミノブタン、アリル二トリル、2−アミノ−3−メチル吉草酸メチル等の含窒素化合物、ゲラニオール、ファルネソール、リナロール、リナロールオキシド、シトロネロール、シネオール、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、シトラール、カルボン、d−リモネン、β−ピネン、ファルネセン、4,8−ジメチル−1,E3,7−ノナトリエン等のテルペン化合物等が挙げられる。
【0020】
その他の誘引剤の具体例として、アンゲリカ油、シトロネラ油、カラシ油等の精油やアロエやユーカリ等の植物からの抽出物等も挙げられる。
【0021】
忌避剤の具体例としては、Z9Z12−オクタジエン酸、3,7,11−トリメチル−6,10−ドデカジエン酸等の脂肪族カルボン酸、E2−ヘキセナール、Z2E6−3,7−ジメチルオクタジエナール、3,7−ジメチル−6−オクテナール、E2Z6−ノナジエナール等の脂肪族アルデヒド、2−ヘプタノン、2−ドデカノン、2−トリデカノン、3−メチル−2−シクロへキセノン、E3E5−オクタジエン−2−オンE3Z7−デカジエン−2−オン等の脂肪族ケトン、酢酸ブチル、酢酸オクチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、メチル6−n−ペンチルシクロヘキセン−1−カルボキシレート等の脂肪族カルボン酸エステル、オクタノール、1−オクテン−3−オール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、メントール、n−ヘキシルトリエチレングリコールモノエーテル等の脂肪族アルコール、トリデカン等の脂肪族炭化水素、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、メチルオイゲノール、フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アネトール、ジエチルトルアミド、N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(DEET)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、ナフタレン等の芳香族化合物、γ−ノニルラクトン、ブチル3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−4−オキソ−2H−ピラン−6−カルボキシレート、フルフラール、4−オクタノイルモルホリン等の複素環化合物、プロピルイソチオシアナート等の含硫黄化合物、メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン等の含窒素化合物、ゲラニオール、シネオール、リナロール、テルピネオール、シトラール、シトロネラール、ギ酸ネリル、α−ピネン、カルボン、d−リモネン、カンファー等のテルペン化合物等が挙げられる。
更に、ローズゼラニウム油、サンダルウッド油、ペッパー油(はっか油)、レモングラス油等の精油や、桂皮、樟脳、クローバ、タチジャコウソウ、ゼラニウム、ベルガモント、月桂樹、松、アカモモ、ベニーロイヤル、ユーカリ、インドセンダン等の植物からの抽出物等でも良い。
また、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、エンペントリン、トランスフルスリン等のピレスロイド系化合物等も用いることができる。
【0022】
本発明で用いられる油性ゲル化剤は、分子中にカルボキシル基、水酸基、エステル、アミド等の分子間水素結合を形成できる極性官能基の少なくとも1つを有しており、これらの極性官能基を介して分子間水素結合が働いている。加熱(好ましくは60〜150℃)により油性ゲル化剤を揮発性物質中に均一に溶解させると、油性ゲル化剤の分子間水素結合は一旦切断されるが、冷却(放置による冷却を含む)に伴い再形成されていく。その際、油性ゲル化剤分子の周囲には揮発性物質が大量に存在するため、油性ゲル化剤は揮発性物質を取り込みながら分子間水素結合を再生する。揮発性物質と油性ゲル化剤の分子間にはファンデルワールス力等の弱い相互作用が働いているのみなので、ゲル化後も揮発性物質の揮発性はゲル化前とほとんど変化しない。
油性ゲル化剤の具体例として、アミノ酸誘導体、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の多価金属塩、糖誘導体、ワックス等が挙げられ、特にアミノ酸誘導体又は長鎖脂肪酸が好ましい。
【0023】
アミノ酸誘導体の具体例としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド等の好ましくは炭素数2〜15のアミノ酸のアミノ基のアシル化体並びにカルボキシル基のエステル化体又はアミド化体等が挙げられ、特に、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドが好適である。
【0024】
長鎖脂肪酸の具体例としては、炭素数8〜24の飽和又は不飽和脂肪酸の他、長鎖脂肪酸の類縁体である12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。ここで、飽和脂肪酸の具体例としては、例えば、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサジエン酸、エルシン酸等が挙げられる。
【0025】
長鎖脂肪酸の金属塩の具体例としては、上記長鎖脂肪酸と同様の長鎖脂肪酸の金属塩の他、例えば炭素鎖長18の飽和脂肪酸の場合、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸鉄、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等が挙げられる。
【0026】
また、糖類誘導体の具体例としては、ラウリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、マルガリン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、アラキン酸デキストリン、リグノセリン酸デキストリン、及びセロチン酸デキストリン、2−エチルヘキサン酸パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸ステアリン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、酢酸/ステアリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖ステアリン酸エステル、フラクトオリゴ糖2−エチルヘキサン酸エステル等のフラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体等が挙げられる。
ワックスの具体例としては、ハゼ蝋(主成分はパルミチン酸のトリグリセリド)、ウルシ蝋(主成分はパルミチン酸グリセリド、カルナウバ蝋(セロチン酸ミリシル及びミリシルアルコール)、サトウキビロウ(パルミチン酸ミリシル、パーム蝋(パルミチン酸ミリシル)、蜜蝋(セロチン酸と、パルミチン酸ミリシル)、鯨蝋(パルミチン酸セチル)、羊毛蝋(セリルアルコール及び/又はミリスチン酸)、パラフィンワックス(直鎖状炭化水素)等が挙げられる。
【0027】
油性ゲル化剤の極性官能基の構造、水素結合力及び非対称性構造によって、揮発性物質がゲル化する臨界ゲル化濃度は異なる。揮発性物質の官能基(極性基)と非極性基の配位により油性ゲル化剤の水素結合力が弱められる場合もあり、揮発性物質の化学構造とゲル化剤の種類により、その臨界ゲル化濃度は異なる。放出性能、経済面を考慮すると容器内に充填されるゲル組成物は、臨界ゲル化濃度に近い濃度で充填されることが望ましい。具体的には、害虫用ゲル組成物は、害虫用ゲル組成物中に揮発性物質を好ましくは70.0〜99.0質量%、更に好ましくは85.0〜99.0質量%、特に好ましくは90.0〜99.0質量%含有する。害虫用ゲル組成物中の揮発性物質が70.0質量%未満の場合、揮発性物質の徐放が安定せず、長期間一定の徐放が得られない場合がある。また、経済面でコストが高い場合がある。一方、害虫用ゲル組成物中の揮発性物質が99.0質量%を超えると、流動性を有する害虫用ゲル組成物しか得られない場合がある。
【0028】
なお、害虫用ゲル組成物中の揮発性物質の含有量(質量%)は、揮発性物質と油性ゲル化剤の種類によって異なる。例えば、地中海、アフリカ地方のオリーブ害虫で、近年、北米への進入も確認されているオリーブフルーツフライ(オリーブミバエ)は、メスがオリーブの果実に産卵し、幼虫が果実を食害することによりオリーブ生産に甚大な被害を与える。被害としてはオリーブの収量が減るだけではなく、酸性度が上がってオリーブの風味も悪化させることが知られている。オリーブフルーツフライ(オリーブミバエ)のフェロモン物質として知られる1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカンをN−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミド等のアミノ酸誘導体でゲル化する場合、より好ましくは95.0〜99.0質量%である。一方、ステアリン酸等の長鎖脂肪酸でゲル化する場合には、より好ましくは75.0〜85.0質量%である。
【0029】
従来のゲル組成物は、害虫用ゲル組成物表面が乾燥し、揮発性物質の活性成分がゲル中に閉じこめられてしまう等の問題点から、溶媒等で希釈して流動性ゲルにするのが一般的である。しかし、溶媒等が含まれると、溶媒の揮発性によって徐放と共にゲル組成物中の揮発性物質の濃度が大きく変化するため、安定した徐放速度を得ることは困難である。更には、液漏れの対策及び体積の増加による無駄等の不具合が生じる。このため、本発明では、上記のように、揮発性物質と油性ゲル化剤とを少なくとも含む害虫用ゲル組成物が提供され、前記揮発性物質が、前記害虫用ゲル組成物中に70.0〜99.0質量%含まれるようにした。
本発明の害虫用ゲル組成物は、揮発性物質以外には油性ゲル化剤や、必要に応じて使用する後述の添加剤しか実質的に含まない非流動性のゲルであるため、液漏れ対策が不要で、溶媒等を含まないので不要な体積の増加もない。また、害虫用ゲル組成物中の揮発性物質が外部空間に放出され、徐放された揮発性物質のゲル化に寄与していた分のゲル化剤はゲル表面に粉状に残存するため、害虫用ゲル組成物中の揮発性物質の濃度は徐放期間を通じてほぼ一定となり、安定した徐放速度を得ることができる。
このように、本発明の害虫用ゲル組成物は非流動性であり、長期間保存も可能であり、害虫用ゲル組成物の流動化は常温にて保存する限り起こらない。
【0030】
害虫用ゲル組成物は、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、プロトカテキュア酸エチル、没食子酸イソアミル、没食子酸プロピル等の合成酸化防止剤、NDGA(ノルジヒドログアヤレチン酸)、グアヤク脂等の天然酸化防止剤等の抗酸化剤や、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等のパラアミノ安息香酸系、オキシベンゾン(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体等の紫外線吸収剤等の添加剤を含有しても良い。害虫用ゲル組成物中の各添加剤の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%であり、その合計の含有量は、好ましくは0.02〜10質量%である。
【0031】
害虫用ゲル組成物は、揮発性物質、油性ゲル化剤及び必要に応じて添加剤を、好ましくは60〜150℃程度で加熱溶解後、冷却することにより得られる。冷却は、好ましくは放冷(放置して冷却)である。
【0032】
本発明においては、揮発性物質を徐放する開口部を形成し、該揮発性物質を浸透しない材質からなる容器中に、害虫用ゲル組成物を導入して徐放性製剤を得ることができる。導入された害虫用ゲル組成物の表面から揮発性物質が揮発し、害虫用ゲル組成物表面と開口部の間に存在する容器内空間部を介して、開口部から外部空間へと放出されていく。
徐放性製剤の例を図1に示す。徐放性製剤10は、開口部13を備える容器12中に、害虫用ゲル組成物11を含有し、害虫用ゲル組成物11の表面から揮発性物質が揮発し、容器内空間部14を介して開口部13から外部空間へ放出される。図1は、瓶状の容器を示すが、容器の形状は害虫用ゲル組成物が導入可能であれば特に制限されない。
【0033】
揮発性物質の放出速度は、害虫用ゲル組成物の表面積や開口部の面積、容器内空間部の体積と形状等を変えることにより調整することができる。
害虫用ゲル組成物の表面積が大きいほど揮発性物質の容器内空間部への揮発速度は速くなる。また、開口部の面積が大きいほど開口部から外部空間への揮発性物質の放出速度は速くなる。
容器内空間部の体積と形状は、害虫用ゲル組成物表面から容器内空間部への揮発性物質の揮発速度と開口部から外部空間への揮発性物質の放出速度の均衡をとる役割を果たす。例えば、害虫用ゲル組成物表面からの揮発性物質の揮発速度の方が、開口部からの放出速度よりも大きい場合、揮発性物質はいずれ分圧が飽和蒸気圧に達するまで容器内空間部に揮発する。気体の状態方程式により、その際の容器内空間部における揮発性物質の濃度n/Vは、式(1):
n/V=p/RT (1)
(上式中、nは空間部における揮発性物質蒸気の物質量(mol)、Vは空間部の体積(l)、pは揮発性物質蒸気の分圧(atm)、Rは気体定数(l・atm・K−1・mol−1)、Tは絶対温度(K)を表す。)
により表され、温度が一定なら一定となるので、安定した徐放速度を得ることができる。ただし、容器内空間部の体積が極端に大きいと飽和蒸気圧に達するまでに長時間かかるため、初期の放出速度が遅くなったり、徐放期間後半に揮発性物質が全て気体として存在して放出速度が時間と共に低下する期間が長くなったりする場合がある。一方、容器内空間部の体積が極端に小さく、害虫用ゲル組成物表面と開口部が近接し過ぎていると放出速度を抑えることは困難な場合がある。従って、容器内空間部の体積は、揮発性物質の揮発性と所望する放出速度に適した大きさにすることが望ましい。
【0034】
また、容器内空間部の形状によって揮発性物質の放出速度を調整することも可能である。例えば、容器内空間部の体積が同一で、徐放性製剤の基本的な形状も同じだが、一方は開口部に至る一部がキャピラリー状に細くなっており、他方は細くなっていない2つの容器を比較した場合、キャピラリー状の部分を有する容器の方が放出速度は遅くなる可能性が高い。
徐放性製剤に用いられる容器の形状は、害虫用ゲル組成物が導入可能であれば特に制限されない。また、容器の体積は、害虫用ゲル組成物の体積の好ましくは1.0〜100倍、更に好ましくは1.1〜50倍である。容器の開口部の面積は、害虫用ゲル組成物の表面積の好ましくは0.001〜100倍、更に好ましくは0.01〜10倍の範囲にあると安定した徐放速度が保たれる。揮発性物質の量と、害虫用ゲル組成物の表面積は、徐放性製剤の用途に適した徐放速度、徐放期間を得るために任意に調整可能である。
【0035】
本発明によれば、徐放性製剤は、揮発性物質が浸透しない材質からなる。容器の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、6,6−ナイロン等のポリアミド、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂等の熱可塑性プラスチック、ガラス、紙、ゼオライト等の鉱物、金属等が挙げられる。
【0036】
また、本発明によれば、徐放性製剤は、開口部が前記揮発性物質を透過するフィルムで覆われていてもよい。フィルムの材質や厚さによって徐放速度を調節することも可能であり、容器中に夾雑物が入ることを防ぐこともできる。更に遮光性フィルムを用いれば、光に対して不安定な揮発性物質の分解を防ぐこともできる。
開口部が揮発性物質を透過するフィルムで覆われた徐放性製剤の例を図2に示す。徐放性製剤20は、開口部23を備える容器22中に、害虫用ゲル組成物21を含有し、害虫用ゲル組成物21の表面から揮発性物質が揮発し、容器内空間部24を介して開口部23を覆うフィルム25から外部空間へ放出される。
【0037】
フィルムの材質の具体例としては、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル系共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリブチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体、メチルペンテン樹脂、アイオノマー、ポリアセタール、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリフッ化ビニリデン及びケイ素樹脂等の熱可塑性プラスチックが挙げられる。また、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸及びマレイン酸の中から選ばれる少なくとも一種類のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールの中から選ばれる少なくとも一種類のポリオールとの縮重合体、又は乳酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸及びヒドロキシカプリン酸の中から選ばれる少なくとも一種類の縮合重合体の他、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル系の熱可塑性プラスチックを使用することもできる。これらの高分子材料に、加工性を改良するため滑剤、可塑剤、安定剤、顔料、充填剤を添加してもよい。
フィルムの厚さは、好ましくは10〜400μm、より好ましくは20〜250μmである。10μm未満では強度が弱いため徐放中に破れてしまう恐れがあり、400μmを超えると揮発性物質の透過が遅いため大面積のフィルムが必要となってしまう恐れがある。
本願の出願当初の特許請求の範囲は以下の通りである。
[請求項1]揮発性物質と油性ゲル化剤を少なくとも含む害虫用ゲル組成物であって、前記揮発性物質が、前記害虫用ゲル組成物中に70.0〜99.0質量%含まれる害虫用ゲル組成物。
[請求項2]前記揮発性物質が、フェロモン物質、誘引剤及び忌避剤からなる群から選ばれる請求項1に記載の害虫用ゲル組成物。
[請求項3]前記油性ゲル化剤が、アミノ酸誘導体、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の多価金属塩、糖誘導体及びワックスからなる群から選ばれる請求項1又は請求項2に記載の害虫用ゲル組成物。
[請求項4]開口部を備え、前記揮発性物質が浸透しない材質からなる容器と
前記容器内に導入された請求項1〜3のいずれか1項に記載の害虫用ゲル組成物と
を少なくとも含む徐放性製剤。
[請求項5]前記開口部を覆う、前記揮発性物質を透過するフィルムをさらに含む請求項4に記載の徐放性製剤。
[請求項6]前記害虫が、オリーブフルーツフライ(オリーブミバエ)である請求項4又は請求項5に記載の徐放性製剤。
[請求項7]前記揮発性物質が、1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカンである請求項6に記載の徐放性製剤。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
内径4mm、内容積0.5mlのガラス製の円筒形容器で、上部に直径4mmの開口部を有する容器に1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン110.5mgとN−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミド3.4mgを加えてフタで密閉し、80℃で2分間加熱して均一な溶液とした。その後、室温まで徐々に放冷したところ、非流動性の害虫用ゲル組成物が得られた。
続いて前記円筒形容器のフタを外して、30℃におけるゲル組成物中に含まれる揮発性物質の質量変化を測定し、徐放速度を求めた。その結果を図3に示す。
図3に示すように、40日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0039】
実施例2
容器の開口部を厚さ40μmのポリエチレンフィルムで覆った以外は、実施例1と同様に徐放性製剤を作製し、30℃における徐放速度を求め、その結果を図3に示す。
図3に示すように、開口部をフィルムで覆ったことにより、実施例1に比べて徐放速度を抑えることができ、徐放期間を延ばすことができた。
【0040】
実施例3
内径10mm、内容積2mlのガラス製円筒形容器を用い、上部の直径4mmの開口部を厚さ40μmのポリエチレンフィルムで覆った以外は、実施例1と同様に徐放性製剤を作製し、30℃における徐放速度を求め、その結果を図4に示す。
図4に示すように、実施例2よりもゲル組成物の表面積が増えた分、徐放速度が増大し、徐放期間は短くなっている。
【0041】
実施例4
開口部を厚さ100μmのポリエチレンフィルムで覆った以外は、実施例3と同様にして徐放性製剤を作製し、徐放速度を求めた。その結果を図4に示す。
図4に示すように、実施例3に比べて厚いポリエチレンフィルムで開口部を覆ったため、徐放速度を抑えて、徐放期間を延ばすことができた。
【0042】
実施例5
開口部を厚さ200μmのポリエチレンフィルムで覆った以外は、実施例3と同様にして徐放性製剤を作製し、徐放速度を求めた。その結果を図4に示す。
図4に示すように、実施例3、4に比べて厚いポリエチレンフィルムで開口部を覆ったため、徐放速度を抑えて、徐放期間を延ばすことができた。
【0043】
実施例6
1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン110.5mgとパルミチン酸デキストリン(千葉製粉株式会社製レオパールTL)27.0mgを用いた以外は、実施例3と同様にして徐放性製剤を作製し、徐放速度を求めた。その結果を図5に示す。
図5に示すように、実施例3と同様に1ヶ月以上に亘って安定した放出速度を維持している。
【0044】
実施例7
1,7−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン110.5mgとステアリン酸27.5mgを用いた以外は、実施例3と同様にして徐放性製剤を作製し、徐放速度を求めた。その結果を図5に示す。
図5に示すように、実施例3と同様に1ヶ月以上に亘って安定した放出速度を維持している。(同上)
【0045】
実施例8
内径31mm、内容積50mlのガラス製の円筒形容器で、上部に直径22mmの開口部を有する容器にd−リモネン10.13gとN−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミド0.43gを加えてフタで密閉し、80℃で2分間加熱して均一な溶液とした。その後、室温まで徐々に放冷したところ、非流動性の害虫用ゲル組成物が得られた。
続いて前記円筒形容器のフタを外して、30℃におけるゲル組成物中に含まれる揮発性物質の質量変化を測定し、徐放速度を求めた。その結果を図6に示す。
図6に示すように、50日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0046】
実施例9
d−リモネンの代わりにメチルオイゲノール134.2mgを使用し、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドの使用量を4.0mgとした以外は、実施例8と同様に徐放性製剤を作製し、30℃における徐放速度を求め、その結果を図7に示す。
図7に示すように、50日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0047】
実施例10
d−リモネンの代わりにZ−8−ドデセニルアセテート102.2mgを使用し、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドの使用量を3.1mgとした以外は、実施例8と同様に徐放性製剤を作製し、40℃における徐放速度を求め、その結果を図8に示す。
図8に示すように、80日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0048】
実施例11
d−リモネンの代わりにE,Z−7,9−ドデカジエニルアセテート102.6mgを使用し、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドの使用量を3.1mgとした以外は、実施例8と同様に徐放性製剤を作製し、40℃における徐放速度を求め、その結果を図8に示す。
図8に示すように、160日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0049】
実施例12
d−リモネンの代わりにE,E−8,10−ドデカジエノール100.3mgを使用し、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドの使用量を9.3mgとした以外は、実施例8と同様に徐放性製剤を作製し、40℃における徐放速度を求め、その結果を図8に示す。
図8に示すように、140日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0050】
実施例13
d−リモネンの代わりにZ−13−イコセン−10−オン102.2mgを使用し、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドの使用量を3.1mgとした以外は、実施例8と同様に徐放性製剤を作製し、50℃における徐放速度を求め、その結果を図9に示す。
図9に示すように、35日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0051】
実施例14
d−リモネンの代わりに3,5−ジメチルドデカン酸102.6mgを使用し、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドの代わりにパルミチン酸デキストリン(千葉製粉株式会社製レオパールKL)を6.4mg使用した以外は、実施例8と同様に徐放性製剤を作製し、50℃における徐放速度を求め、その結果を図9に示す。
図9に示すように、250日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0052】
実施例15
d−リモネンの代わりにZ−11−ヘキサデセナール95.8mgを使用し、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドの使用量を3.4mgとした以外は、実施例8と同様に徐放性製剤を作製し、50℃における徐放速度を求め、その結果を図9に示す。
図9に示すように、100日に亘って安定した徐放速度を示している。
【0053】
実施例16
内径21mm、内容積13.5mlのガラス製の円筒形容器で、上部に直径15mmの開口部を有する容器にZ−8−ドデセニルアセテート3.000gとステアリン酸マグネシウム0.171gを加えてフタで密閉し、80℃で2分間加熱して均一な溶液とした。その後、室温まで徐々に放冷したところ、非流動性の害虫用ゲル組成物が得られた。
続いて前記円筒形容器のフタを外して、30℃におけるゲル組成物中に含まれる揮発性物質の質量変化を測定し、揮発性物質の放出速度を求めた。その結果を図10に示す。
【0054】
実施例17
内径21mm、内容積13.5mlのガラス製の円筒形容器で、上部に直径15mmの開口部を有する容器にZ−8−ドデセニルアセテート3.000gとステアリン酸カルシウム0.177gを加えてフタで密閉し、80℃で2分間加熱して均一な溶液とした。その後、室温まで徐々に放冷したところ、非流動性の害虫用ゲル組成物が得られた。
続いて前記円筒形容器のフタを外して、30℃におけるゲル組成物中に含まれる揮発性物質の質量変化を測定し、揮発性物質の放出速度を求めた。その結果を図10に示す。
【0055】
実施例18
内径21mm、内容積13.5mlのガラス製の円筒形容器で、上部に直径15mmの開口部を有する容器にZ−8−ドデセニルアセテート3.000gとステアリン酸アルミニウム0.249gを加えてフタで密閉し、80℃で2分間加熱して均一な溶液とした。その後、室温まで徐々に放冷したところ、非流動性の害虫用ゲル組成物が得られた。
続いて前記円筒形容器のフタを外して、30℃におけるゲル組成物中に含まれる揮発性物質の質量変化を測定し、揮発性物質の放出速度を求めた。その結果を図10に示す。
【符号の説明】
【0056】
10、20 徐放性製剤
11、21 害虫用ゲル組成物
12、22 容器
13、23 開口部
14、24 容器内空間部
25 フィルム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10