【実施例】
【0028】
[実施例1]
<小豆煮汁の酢酸発酵物の製造>
小豆2kgを鍋に投入し、8kgの清水に浸漬させた後、加熱して小豆をボイルした。次いで、渋切りを行い、再度同量の清水で小豆をボイルした後、ボイル処理後の小豆をザルで濾すことにより小豆煮汁を得た。得られた小豆煮汁のエキス分は2.0g/100mL、全窒素含有量は50mg/100mLであった。
続いて、得られた小豆煮汁を濾過し、得られた清澄液に対して醸造酢、アルコール、及び酢酸産生能を有する酢酸菌を添加し、常法により温度30℃で7日間酢酸発酵させることにより、小豆煮汁の酢酸発酵物を得た。
なお、得られた酢酸発酵物のエキス分は1.5g/100mL、全窒素含有量は40mg/100mLであり、酸度は酢酸換算で5%であった。
【0029】
次に、前記小豆煮汁の酢酸発酵物45kg、醸造酢52kg、食塩3kgを調合タンクに投入して均一に混合することによって、米香気強化組成物又は米香気強化剤を製した。米香気強化組成物又は米香気強化剤の酢酸含有量は7%であった。
【0030】
<炊飯時米飯への米香気強化組成物又は米香気強化剤の添加>
精米済みの生米10kgを水に約1.5時間浸漬した後、水切りし、清水13kg、米香気強化組成物又は米香気強化剤0.16kgと共に炊飯機に投入し、98℃で40分の炊飯処理を施すことにより炊飯米(白飯)を得た。なお、炊飯前の生米100部に対する小豆煮汁の酢酸発酵物の添加量は、酢酸酸度5%換算で0.7部であった。
【0031】
[実施例2]
実施例1において、小豆煮汁ではなく、ひよこ豆煮汁を用いる以外は同様の方法で、ひよこ豆煮汁の酢酸発酵物を製造した。得られた酢酸発酵物のエキス分は0.77g/100mL、全窒素含有量は34mg/100mLであり、酸度は酢酸換算で5%であった。
【0032】
次に、得られた酢酸発酵物を用いて、実施例1と同様の方法で実施例2の米飯用香気強化剤又は米香気強化剤を製造した。
得られた米香気強化組成物又は米香気強化剤の酢酸含有量は7%であった。
【0033】
次いで、得られた米香気強化組成物又は米香気強化剤を用いて、実施例1と同様の方法で白飯を製造した。炊飯前の生米100部に対するひよこ豆煮汁の酢酸発酵物の添加量は、酢酸酸度5%換算で0.7部であった。
【0034】
[実施例3]
実施例1において、小豆煮汁ではなく、えんどう豆煮汁を用いる以外は同様の方法で、えんどう豆煮汁の酢酸発酵物を製造した。得られた酢酸発酵物のエキス分は0.92g/100mL、全窒素含有量は41mg/100mLであり、酸度は酢酸換算で5%であった。
【0035】
次に、得られた酢酸発酵物を用いて、実施例1と同様の方法で実施例3の米香気強化組成物又は米香気強化剤を製造した。
米香気強化組成物又は米香気強化剤の酢酸含有量は7%であった。
【0036】
次いで、得られた米香気強化組成物又は米香気強化剤を用いて実施例1と同様に白飯を製造した。炊飯前の生米100部に対するえんどう豆煮汁の酢酸発酵物の添加量は、酢酸酸度5%換算で0.7部であった。
【0037】
[比較例1]
小豆煮汁の酢酸発酵物の代わりに、大豆煮汁の酢酸発酵物を用いる以外は実施例1と同様の方法で、米香気強化組成物又は米香気強化剤を製造した。米香気強化組成物又は米香気強化剤の酢酸含有量は7%であった。
次いで、得られた米香気強化組成物又は米香気強化剤を用いて、実施例1と同様の方法で白飯を製造した。
【0038】
[比較例2]
小豆煮汁の酢酸発酵物の代わりに、小豆煮汁に醸造酢を添加したものを用いる以外は実施例1と同様の方法で、米香気強化組成物又は米香気強化剤を製造した。米香気強化組成物又は米香気強化剤の酢酸含有量は7%であった。
次いで、得られた米香気強化組成物又は米香気強化剤を用いて、実施例1と同様の方法で白飯を製造した。
【0039】
[比較例3]
小豆煮汁の酢酸発酵物の代わりに、醸造酢を用いた以外は実施例1と同様の方法で、米香気強化組成物又は米香気強化剤を製造した。米香気強化組成物の酢酸含有量は7%であった。
次いで、得られた米香気強化組成物又は米香気強化剤を用いて、実施例1と同様の方法で白飯を製造した。
【0040】
[試験例1]
実施例1〜3、並びに比較例1〜3により得られた米飯の食味について、パネラー10名で評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
[米飯の評価基準]
A:ご飯特有の香りが強く感じられ、大変好ましい。
B:ご飯特有の香りが感じられ、好ましい。
C:ご飯特有の香りがやや消失しているが、米飯として問題のない程度である。
D:ご飯特有の香りが消失しており、好ましくない。
【0043】
表1より、実施例1〜3の白飯は、酢酸を添加しているにもかかわらず、ご飯特有の香りを有しており、好ましいことが理解される。特に、小豆煮汁の酢酸発酵物を用いた実施例1の白飯は、ご飯特有の香りを有しており、大変好ましかった。これに対して、米香気強化組成物又は米香気強化剤の原料として、大豆煮汁の酢酸発酵物を用いた場合(比較例1)、小豆煮汁の酢酸発酵物ではなく小豆煮汁に醸造酢を添加した場合(比較例2)、小豆煮汁の含まれない醸造酢を用いた場合(比較例3)には、ご飯特有の香りが消失しており、好ましくなかった。
【0044】
[試験例2]
実施例1の小豆煮汁の酢酸発酵物の製造方法において、酢酸発酵物の原料である小豆煮汁の濃度を調整することにより、エキス分、全窒素含有量が異なる表2記載の4種類の小豆煮汁酢酸発酵物を製造した。次いで、これらの各酢酸発酵物を用いたほかは、実施例1と同様に米香気強化組成物又は米香気強化剤、及これらを用いた白飯を製した(実施例4〜6)。続いて、得られた各白飯について、試験例1の評価基準により食味の評価を行った。
【0045】
【表2】
【0046】
表2より、米香気強化組成物に含有する酢酸発酵物のエキス分が1.0〜3.0g/100mL、全窒素含有量が25〜60mg/100mLである場合には、ご飯特有の香りをとても有しており、大変好ましかった(実施例1、5、6)。また、実施例4においては、ご飯特有の香りがやや消失していたものの、問題のない範囲であり好ましかった。
【0047】
[実施例7]
実施例1において、米香気強化組成物又は米香気強化剤に用いる小豆煮汁の酢酸発酵物の配合量を60%に、醸造酢の配合量を37%に変更し、米香気強化組成物又は米香気強化剤の添加量を0.3kgに変更する以外は、実施例1と同様の方法で米飯を製造した。なお、米香気強化組成物又は米香気強化剤の酢酸含有量は7%であり、炊飯前の生米100部に対する小豆煮汁の酢酸発酵物の添加量は、酢酸酸度5%換算で1.8部であった。
【0048】
[実施例8]
実施例1において、米香気強化組成物又は米香気強化剤に用いる小豆煮汁の酢酸発酵物の配合量を20%に、醸造酢の配合量を60%に変更し、米香気強化組成物又は米香気強化剤の添加量を0.08kgに変更する以外は、実施例1と同様の方法で米飯を製造した。なお、米香気強化組成物又は米香気強化剤の酢酸含有量は7%であり、炊飯前の生米100部に対する小豆煮汁の酢酸発酵物の添加量は、酢酸酸度5%換算で0.02部であった。
【0049】
実施例7、8の結果から、米香気強化組成物又は米香気強化剤に用いる小豆煮汁酢酸発酵物の配合量が酢酸酸度5%換算で20〜80%、炊飯前の生米100部に対する小豆煮汁酢酸発酵物の添加量が酢酸酸度5%換算で0.01〜1.8部である場合には、ご飯特有の香りを有する米飯が得られ、大変好ましかった。
【0050】
[実施例9]
実施例1において、生米に米香気強化組成物又は米香気強化剤を添加した後に炊飯する代わりに、炊飯した白飯に米香気強化組成物又は米香気強化剤を添加した以外は、実施例1と同様の方法で米飯を製造した。なお、炊飯前の生米100部に対する小豆煮汁の酢酸発酵物の添加量は、酢酸酸度5%換算で0.01部であった。得られた米飯は、ご飯特有の香りが強く感じられ、大変好ましかった。