(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046516
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ペットフード
(51)【国際特許分類】
A23K 10/22 20160101AFI20161206BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20161206BHJP
A23K 50/45 20160101ALI20161206BHJP
【FI】
A23K10/22
A23K10/30
A23K50/45
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-26434(P2013-26434)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-155439(P2014-155439A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】398008974
【氏名又は名称】日清ペットフード株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(72)【発明者】
【氏名】清末 正晴
(72)【発明者】
【氏名】木村 聖二
(72)【発明者】
【氏名】内海 健
(72)【発明者】
【氏名】辻本 元
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−074455(JP,A)
【文献】
特開2005−204566(JP,A)
【文献】
特開2011−097951(JP,A)
【文献】
特開2005−229860(JP,A)
【文献】
特開2011−239696(JP,A)
【文献】
特開2007−300849(JP,A)
【文献】
特開昭61−219344(JP,A)
【文献】
特開昭49−041163(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0257455(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0233923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚由来蛋白質原料を10〜70質量%含有し、該魚由来蛋白質原料としてタチウオ由来の蛋白質原料を含有するペットフード。
【請求項2】
前記魚由来蛋白質原料として更にカツオ由来の蛋白質原料を含有する請求項1記載のペットフード。
【請求項3】
更に、大豆を含有する請求項1又は2記載のペットフード。
【請求項4】
前記魚由来蛋白質原料以外の他の動物性蛋白質原料を含有していない請求項1〜3の何れか一項に記載のペットフード。
【請求項5】
ドライタイプ又はセミモイストタイプのペットフードである請求項1〜4の何れか一項に記載のペットフード。
【請求項6】
ドッグフードである請求項1〜5の何れか一項に記載のペットフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット(愛玩動物)として飼育される犬、猫等の哺乳動物用のペットフードに関し、特に、食物アレルギー反応が生じるリスクが低減されたペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬や猫等のペットにおいて食物アレルギー疾患と診断される例は増加傾向にある。食物アレルギーは、摂取した食物の中に含まれている蛋白質を体内の免疫系が抗原と誤認識することにより生じる過敏性反応であり、皮膚や粘膜等に炎症が現れる。より具体的には、先ず、食物の中の蛋白質に存在するアレルゲン(アレルギーの原因物質)が抗原提示細胞に取り込まれてT細胞抗原決定基としてTリンパ球に抗原提示される。次いで、その抗原情報に従って刺激を受けたBリンパ球より、食物中のアレルゲンに対するIgEが産生される。そのIgEが肥満細胞表面に接着し、食物アレルゲンのB細胞抗原決定基を通して食物抗原を認識した際にヒスタミンを放出させることで、アレルギー反応が生じる。
【0003】
食物アレルギーに対応したペットフードに関し、例えば特許文献1には、半固体配合物状態で加水分解産物を含む低アレルギー性フード組成物が記載されており、該加水分解産物として複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含むものを用いること、及び、該加水分解産物の源として魚由来の蛋白質を用いることも記載されている。また特許文献2には、食物アレルギーを軽減する方法として、環境中のアレルゲンの源を、該アレルゲンに対してアレルギー反応を起こしやすい動物の肥満細胞に対する該アレルゲンの結合能を阻害する分子を含む組成物と接触させることによって、該アレルゲンに対してアレルギー反応を起こしやすい動物の該アレルゲンに対する曝露を最小限にする方法が記載されており、具体例として、アレルゲンがネコ由来のFel D1であり、該アレルゲンの結合能を阻害する分子が抗Fel D1抗体を含み、それを含む組成物を猫に摂取させる例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−97951号公報
【特許文献2】特表2010−533179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現状市販されている食物アレルギーに対応したペットフードは、1)アレルゲンとされる原料を使用しないタイプ(いわゆるアレルゲン除去食)、2)蛋白質を加水分解し、低分子化したタイプ、及び3)蛋白原料の代替としてアミノ酸を使用したタイプ、の3タイプに大別される。しかし、前記1)のタイプについては、ペットフード安全法等ではアレルゲンの微量な混入量まで測定、表示する義務が無いこと等から、アレルゲンとされる原料の微量な含有量まで配慮されているか定かでないという課題がある。また、前記2)のタイプについては、IgEとT細胞が認識するペプチドは異なるため、加水分解によってすべてのアレルゲンを消失させることは難しいという課題があり、また、加水分解物の大きさによっては抗原としてIgEに認識され、アレルギー発症の可能性が低くないという課題もある。また、前記3)のタイプについては、アルギニン等の必須アミノ酸や植物性蛋白原料が主体であり、嗜好性の高い動物性蛋白原料の不使用により、ペットによる嗜好性が低下するという課題がある。食物アレルギー反応が生じるリスクが低減され且つ嗜好性が良好なペットフードは未だ提供されていない。
【0006】
本発明の課題は、食物アレルギー反応が生じるリスクが低減され且つ嗜好性が良好なペットフードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、魚由来蛋白質原料を10〜70質量%含有するペットフードである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食物アレルギー反応が生じるリスクが低減され且つ嗜好性が良好なペットフードが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のペットフードは、魚由来蛋白質原料を必須成分として含有する。本発明で用いられる魚由来蛋白質原料としては、例えば、タチウオ、カツオ、イワシ、マグロ、サバ、タイ、ヒラメ、サケ、マス、カニ、エビ、イカ、タコ等の魚介類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。魚由来蛋白質原料の形態は特に制限されず、例えば、すり身、粉末状、ペースト状、フレーク状、塊状等の形態のものを用いることができる。魚由来蛋白質原料は、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で、加熱、乾燥、スチーム等の加工が施されていても構わない。
【0010】
魚介類の中でも、特にタチウオ及びカツオは、食物アレルギー反応の発生リスクの低減とペットによる嗜好性との両立の観点から、魚由来蛋白質原料として本発明で好ましく用いられる。即ち、本発明のペットフードの好ましい実施形態は、魚由来蛋白質原料としてタチウオ由来の蛋白質原料及び/又はカツオ由来の蛋白質原料を含有する。タチウオ(太刀魚、立魚、英名Largehead hairtail、学名Trichiurus lepturus)は、スズキ目サバ亜目タチウオ科に属する魚類であり、カツオ(鰹、松魚、堅魚、英名Skipjack tuna、学名Katsuwonus pelamis)は、スズキ目サバ亜目サバ科に属する魚類である。タチウオ由来の蛋白質原料の具体例としては、タチウオのすり身が挙げられ、カツオ由来の蛋白質原料の具体例としては、カツオ節あるいはカツオ節粉(干したカツオを粉末状にしたもの)が挙げられる。
【0011】
魚由来蛋白質原料の含有量(複数種の魚由来蛋白質原料を用いる場合はそれらの合計含有量)は、本発明のペットフード中、該ペットフードの全質量に対して10〜70質量%であり、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは10〜50質量%である。魚由来蛋白質原料の含有量が10質量%未満では、所望の効果(食物アレルギー反応の発生リスクの低減とペットによる嗜好性との両立)が得られないおそれがあり、70質量%超では、原料の成形性の低下によりペットフードを成形できないおそれがある。
【0012】
本発明のペットフードは、食物アレルギー反応が生じるリスクをより一層低減する観点から、魚由来蛋白質原料以外の他の動物性蛋白質原料を含有していないことが好ましい。ここでいう、「含有していない」には、ペットフードの製造工程における魚由来蛋白質原料以外の他の動物性蛋白質原料の意図しない混入等により、ペットフードが該他の動物性蛋白質原料をごく少量含有しているが、実質的には含有していない場合が含まれる。ペットフード中における他の動物性蛋白質原料の含有量が1質量%以下の場合、該ペットフードは該他の動物性蛋白質原料を実質的に含有していないと言える。魚由来蛋白質原料以外の他の動物性蛋白質原料としては、例えば、鶏、カモ、うずら、七面鳥等の鳥類;牛、豚、馬、羊、ウサギ等の畜類;卵製品(全卵、卵黄、卵白、粉末卵等);乳製品(牛乳、チーズ、カゼイン等の乳蛋白)等が挙げられ、本発明のペットフードは、これらの原料由来の動物性蛋白質を含有しないことが好ましい。
【0013】
また同様の観点から、本発明のペットフードは、小麦蛋白質を含有していないことが好ましい。ここでいう、「含有していない」は、前述した、魚由来蛋白質原料以外の他の動物性蛋白質原料の場合と同じである。ペットフード中における小麦蛋白質の後述するELISA分析による含有量が10ppm以下の場合、該ペットフードは小麦蛋白質を実質的に含有していないと言える。小麦蛋白質原料としては、未加工の小麦の他、小麦粉、小麦全粒粉等が挙げられ、本発明のペットフードは、これらの原料由来の小麦蛋白質を含有しないことが好ましい。
【0014】
本発明のペットフードには、栄養バランス及びペット類の健康維持、成長促進、嗜好性(摂餌性)等の一層の向上の観点から、魚由来蛋白質原料(タチウオ由来の蛋白質原料及び/又はカツオ由来の蛋白質原料)に加えて更に、大豆を含有させることができる。本発明で用いられる大豆の形態としては、未加工の大豆の他、脱脂大豆、オカラ、大豆粕、大豆粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、脱脂大豆(大豆から油を搾取した残りの部分)は、蛋白質が豊富に含まれているため、本発明で好ましく用いられる。大豆の含有量は、本発明のペットフード中、該ペットフードの全質量に対して、好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
【0015】
また、本発明のペットフードには、米粉及び/又は澱粉を含有させることができる。ペットフードにこれらの一方及び両方を含有させることによって、製造時の成形性、膨化性、作業性がより一層良好になり、ペットフードを生産性良く製造することができるようになると共に、適度の硬度・弾力性を有し、ペットによる嗜好性が高く、外観、流動性、取り扱い性等に優れるペットフードが得られる。特に、ドライタイプのペットフードの場合には、米粉を含有させることが好ましく、米粉及び澱粉の両方を含有させることが更に好ましい。米粉の材料は特に制限されず、例えば、うるち米、もち米等を用いることができる。澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びこれらにα化、エーテル化、エステル化、酸化処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。米粉の含有量は、本発明のペットフード中、該ペットフードの全質量に対して、好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは20〜30質量%である。澱粉の含有量は、本発明のペットフード中、該ペットフードの全質量に対して、好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。
【0016】
本発明のペットフードには、前述した各成分(魚由来蛋白質原料、大豆、米粉、澱粉)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ、この種のペットフードにおいて従来用いられている他の成分の1種以上を含有させることができる。本発明のペットフードが含有し得る他の成分(原料)としては、例えば、小麦以外の他の植物性蛋白質原料(例えば、馬鈴薯蛋白);魚油等の動物性油脂;コーン油、サラダ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、ナタネ油、亜麻仁油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマワリ油等の植物性油脂;イモ類、トウモロコシ粉砕物、トウモロコシ粉等の炭水化物原料;栄養補強剤又は健康増進剤〔ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、アミラーゼ阻害剤、リパーゼ阻害剤、小麦グルテン加水分解物、コンドロイチン硫酸、ポリフェノール含有素材、乳酸菌、γ−アミノ酪酸(GABA)、コエンザイムQ10、繊維成分〕、調味料(食塩、砂糖、グルタミン酸ソーダ等)、香辛料(バジル、グローブ、ローズマリー等)、香味料(魚エキス等)、増粘剤(ガム類等)、ゲル化剤、繊維成分等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
一般に、ペットフードは、その水分含量により、水分含量の少ないドライタイプ(通常水分含量が10質量%以下)、セミモイストタイプ(通常水分含量が約25〜35質量%程度)及び水分含量の多いウエットタイプ(通常水分含量が約80質量%程度)に大別される。尚、本明細書においては、斯かるペットフードの一般的な分類において水分含量がセミモイストタイプとウエットタイプとの間にあるもの、より具体的には、水分含量が約40〜75質量%程度のものは、セミモイストタイプとする。即ち、水分含量が約25〜75質量%程度のペットフードは、セミモイストタイプである。本発明のペットフードは、これら何れのタイプでも良く、用途等に応じて適宜選択すれば良いが、生産性、取り扱い性、栄養等の観点から、ドライタイプ及びセミモイストタイプの何れかであることが好ましい。一般に、水分含量の少ないドライタイプのペットフードは、ウエットタイプのペットフードに比べてペットによる嗜好性が低く、ペットに与えても充分に摂取されないことが多いところ、本発明のペットフードによれば、ドライタイプであっても良好な嗜好性が得られる。
【0018】
本発明のペットフードがドライタイプのペットフードである場合の水分含量は、該ペットフードの全質量に対して、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは3〜9.5質量%とすることが、ペットフードの硬度、流動性、取り扱い性、ペットによる嗜好性等の点から好ましい。また、本発明のペットフードがセミモイストタイプのペットフードである場合の水分含量は、該ペットフードの全質量に対して、好ましくは25〜60質量%とすることが、ペットフードの弾力性、流動性、取り扱い性、ペットによる嗜好性等の点から好ましい。
【0019】
また、ペットによる嗜好性等の観点から、本発明のペットフードがドライタイプのペットフードである場合には、魚由来蛋白質原料としてカツオ由来の蛋白質原料を含有することが好ましく、セミモイストタイプのペットフードである場合には、魚由来蛋白質原料としてタチウオ由来の蛋白質原料を含有することが好ましい。また前述したように、本発明のペットフードがドライタイプのペットフードである場合には、魚由来蛋白質原料(カツオ由来の蛋白質原料)に加えて更に、米粉を含有させることが好ましい。
【0020】
本発明のペットフードがドライタイプ又はセミモイストタイプのペットフードである場合、その形状は特に制限されず、従来のドライタイプ、セミモイストタイプのペットフードと同様の形状にすることができ、例えば、ペレット状、粒状、スティック状、ドーナツ状、星型、ドッグボーン状、勾玉状、偏平丸状、球状、楕円形状、方形状等の任意形状の小片にすることができる。これらの小片のサイズは特に制限されず、給与するペットの種類や年齢に応じたものとすることができる。
【0021】
本発明のペットフードの製造方法は特に制限されず、従来用いられているペットフードの製造方法を採用して製造することができ、例えば、押出機、射出成形機、圧縮成形機等を用いて常法に従って製造することができる。
【0022】
本発明のペットフードは、犬、猫、ウサギ、フェレット、モルモット、ハムスター、ラット等、家庭で飼育可能な小型の哺乳動物用の食餌として適しており、特に、犬用のペットフード(ドッグフード)として適している。また、本発明のペットフードのペットへの給与方法や給与量は特に制限されず、ペットの成長に必要な量、又は体重維持や健康維持に必要な量を給与すれば良い。
【実施例】
【0023】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は実施例によって制限されるものではない。
【0024】
〔実施例1〕
下記表1に示すドッグフード用原料を用いて、セミモイストタイプのドッグフードを製造した。より具体的には、撹拌した原料を圧延・整形し、スチーマーで蒸した後、裁断してセミモイストタイプのドッグフードを得た。こうして得られたセミモイストタイプのドッグフード100gをレトルト包材で密封包装した後、100〜120℃で30〜45分間、常法によるレトルト殺菌処理を行い、レトルトパウチ包装されたセミモイストタイプのドッグフード(水分含量25〜60質量%)を製造した。
【0025】
【表1】
【0026】
〔実施例2〕
下記表2に示すドッグフード用原料を用いて、ドライタイプのドッグフードを製造した。より具体的には、ミキサーを用いて各原料を十分に混合した後、その混合物をエクストルーダーに供給して押出成型して膨化発泡させ、それをカッターにて切断して直径4〜10 mmの球状の粒を造粒し、ドライヤーにて乾燥して、ドライタイプのドッグフード(水分含量10質量%以下)を製造した。
【0027】
【表2】
【0028】
〔アレルゲン原料の混入検査〕
各実施例のドッグフードについて、ELISA法(定量分析)及びPCR法(定性分析)によりアレルゲンの混入検査を実施した。ELISA法は、通知(「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」平成22年9月10日消食表第286号消費者庁次長通知)に準拠した方法により実施し、小麦蛋白質、乳蛋白質及び卵蛋白質については、モリナガFASPEK特定原材料測定キット(株式会社森永生科学研究所)を用い、鶏蛋白質については、測定キット(ITEA株式会社製)を用いた。PCR法は、下記参考文献に記載の方法により実施し、検査対象は牛、羊とした。
・PCR法の参考文献:Tanabe,S.,et al. A real time quantitative PCR detection method for pork,chiken,beef,mutton,and horseflesh in foods. Biosci. Biotechnol. Biochem, 71(12),3131-3135,2007
【0029】
アレルゲン原料の混入検査の結果を下記表3に示す。下記表3中、「N.D.」は、検出限界以下を意味する。ELISA法による検査対象の4種類の蛋白質のうち、小麦蛋白質、乳蛋白質及び卵蛋白質の検出限界は1ppm、鶏蛋白質の検出限界は4.5ppmである。下記表3から明らかなように、実施例1については、ELISA法による定量分析において検出限界を超える小麦蛋白質が検出されたものの、他の蛋白質(動物性蛋白質)は何れも検出限界以下であり、また、PCR法による定性分析において牛DNA、羊DNAは陰性であった。実施例2については、ELISA法による定量分析において4種類の蛋白質は何れも検出限界以下であり、また、PCR法による定性分析において牛DNA、羊DNAは陰性であった。以上の結果から、各実施例のドッグフードは、一般に食物アレルギー反応を引き起こしやすい原料(アレルゲン)とされる、小麦、乳、卵、鶏、牛及び羊由来の蛋白質を実質的に含んでおらず、食物アレルギー反応が生じるリスクが効果的に低減されていると判断できる。
【0030】
【表3】
【0031】
〔嗜好性の評価〕
実施例のドッグフードについて嗜好性を評価した。より具体的には、健常犬12頭(年齢:1〜9歳)を対象に、実施例のドッグフードと既存のアレルギー対応ドッグフードを同時に給与し、それぞれのドッグフードの摂取量を比較した。4日間にわたって摂取量の比較を行った結果、83%で既存のアレルギー対応ドッグフードと同等以上の嗜好性を示したことより、嗜好性は良好であると判断できる。