特許第6046535号(P6046535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6046535半導体ウエハマッピング方法及び半導体ウエハのレーザ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046535
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】半導体ウエハマッピング方法及び半導体ウエハのレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20161206BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20161206BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01L21/78 L
   B23K26/40
   B23K26/00 M
   H01L21/78 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-67324(P2013-67324)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-192381(P2014-192381A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(74)【代理人】
【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】野口 俊
(72)【発明者】
【氏名】千葉 清隆
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−122982(JP,A)
【文献】 特開2010−175499(JP,A)
【文献】 特開平07−159131(JP,A)
【文献】 特開2009−168479(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0127697(US,A1)
【文献】 特表2009−526240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00 −26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回路が縦横に整列されて配置形成された半導体ウエハを縦横に切断して半導体チップを製造するレーザ加工機における半導体ウエハマッピング方法において、
移動テーブル上に前記半導体ウエハを吸引保持して前記半導体ウエハを回転させることなく該半導体ウエハの表面に測定光を照射し、かつ該半導体ウエハ表面で反射された反射光を検出して該半導体ウエハの表面高さを測定するとともに、前記移動テーブルをX、Y方向に移動させ、前記半導体ウエハ表面上の測定位置の軌跡ラインを前記半導体ウエハの外周に沿う方向に螺旋状に形成して前記半導体ウエハの表面高さにおけるデータマップを取得することを特徴とする半導体ウエハマッピング方法。
【請求項2】
上記測定位置の軌跡ラインが連続して形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハマッピング方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の半導体ウエハマッピング方法で形成されたマップを用いて半導体ウエハのレーザ加工を行うことを特徴とする半導体ウエハのレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウエハマッピング方法に関するものであり、特に、半導体製造装置において半導体ウエハを切断して半導体チップ(半導体素子)を製造するダイシング技術に適用して有効な半導体ウエハマッピング方法及び半導体ウエハのレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造において、所定の回路が縦横に整列配置形成された半導体ウエハを縦横に切断して半導体チップ(半導体素子)を製造する工程がある。
【0003】
図3は、その半導体ウエハSの一例を示すものである。その半導体ウエハSは、平行に形成された2面を有し、内1面に、格子状に配列された複数の加工ライン(「ストリートライン」とも言う)2a1〜2an及び2b1〜2bnが設けられている。
【0004】
その半導体ウエハSは、上記各加工ライン2a1〜2an、2b1〜2bnで半導体ウエハSの表面側が格子状をした複数の領域に区画され、この区画された各領域にそれぞれ半導体チップ3,3…を形成するIC、LSI等の機能素子が設けられた構造になってい
る。
【0005】
例えば、半導体ウエハSを所謂ステルスダイシングにてチップ化する場合、チャック台に保持した半導体ウエハSの表面(レーザー照射面)に、集光レンズでレーザ光を加工ライン2a1〜2an、2b1〜2bnに沿って照射し、半導体ウエハSの内部に加工ライン2a1〜2an、2b1〜2bnに沿った改質層を連続的に設け、その後、半導体ウエハSに外力を加えることで、加工ライン2a1〜2an、2b1〜2bnに沿った改質層を起点として分割する。また、そのレーザ加工では、半導体ウエハSの内部に形成される改質層の深さがほぼ一定となるように、集光レンズの焦点を自動調整(オートフォーカス)しながらレーザ光を照射している。
【0006】
しかし、このように集光レンズの焦点を自動調整しながらレーザ光を照射する加工技術で問題となるのは、半導体ウエハ自体の反りやうねり、あるいは半導体ウエハ表面に付着した膜等である。すなわち、半導体ウエハの反りやうねり、あるいは半導体ウエハ表面に付着した膜等があると、集光レンズと半導体ウエハ表面の間の距離にバラツキが生じる。バラツキがあると、レーザ光を照射する際に屈折率の関係で所定の深さに均一に改質層を形成することができない。従って、半導体ウエハ内部の所定深さに均一に改質層を形成するためには、レーザ光を照射する表面の凹凸を検出し、その凹凸に応じて集光レンズの焦点を自動調整しながらレーザ光を照射するようにして加工する必要がある。
【0007】
そこで、従来、半導体ウエハの表面高さを測定する測定手段をレーザ加工機と所定の間隔をもって並設させ、半導体ウエハを加工する際に、測定手段により半導体ウエハの表面高さを測定し、その測定値に基づいて、半導体ウエハに対して集光レンズの焦点の位置が一定となるように、集光レンズの焦点位置をその光軸方向に移動させて自動調整するようにしたレーザ加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
ところで、一般に、半導体ウエハは、上述したように所定の回路が縦横に整列配置形成されているとともに、整列配置された各回路間に加工ラインが格子状に設定されている。そして、半導体ウエハの表面高さ、すなわち半導体ウエハ表面から集光レンズまでの距離を測定する技術では、例えば図4にその測定方向を示すように、X−X方向を測定する場
合は図中実線の矢印で示しているように、半導体ウエハSの外側の位置X1から測定用の光を照射しながら測定を開始し、半導体ウエハSの一端1a1から半導体ウエハSの領域内に入り、その半導体ウエハSの加工ライン2a1に沿って測定を行い、半導体ウエハSの他端1b1に到達したら半導体ウエハSの外側に一旦出る。次に、半導体ウエハSの一端1b2から再び内側に入り、その半導体ウエハSの加工ライン2a2に沿って測定をして行き、半導体ウエハSの一端1a2に到達したら外側に再び出る。続いて、半導体ウエハSの一端1a3から再び内側に入り、その半導体ウエハSの加工ライン2a3に沿って測定をして行き、半導体ウエハSの他端1b3に到達したら外側に再び出る。このように測定用のレーザ光を千鳥状に移動させながら各間を短冊状に走査して測定をし、これをn本の加工ライン2a1〜2anについて順に行い、各加工ライン2a1〜2an上の変位データを取得する。また、Y-Y方向を測定する場合も、図中点線の矢印で示しているように半導体ウエハSの外側の位置Y1から測定を開始し、X方向と同様に測定用の光を千鳥状に移動させながら測定を行う。
【0009】
そして、前記特許文献1に記載の加工技術では、この測定と加工を並走させ、測定により半導体ウエハの表面の状態を先読みして、その測定値に基づいて集光レンズの焦点位置を自動調整しながら、レーザ加工をするようになっている。
【0010】
この測定技術では、加工予定ライン毎に加工予定ラインの全部または一部を先読みするため、生産性が低下する。
【0011】
そこで、加工準備として、半導体ウエハを吸引保持したチャック台を回転させ、同時に半導体ウエハの表面に測定光を照射して表面高さを測定し、その測定値から半導体ウエハの反りやうねり等をマッピング化し、そのマッピング化された測定値に基づいて加工用の集光レンズの焦点位置を自動調整しながら、加工時に半導体ウエハの表面にレーザ光を照射して加工する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4598407号公報。
【特許文献2】特許第4813993号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、特許文献1記載の測定方法を用いた加工技術では、特に半導体ウエハの外側の位置から半導体ウエハの領域内に入るとき、半導体ウエハの端部で測定の値に大きな乱れが生じ、集光レンズの焦点が整合状態に戻るまでに時間がかかる。このため、オートフォーカス特性が悪く、加工品質に問題点があった。また、その測定値の大きな乱れで、集光レンズの焦点調整が機能するか否かは、レーザ加工が開始されるまで判断ができないという不都合があった。
【0014】
一方、特許文献2記載の加工技術のように、半導体ウエハを吸引保持したチャック台を回転させて測定する方法では、チャック台を回転させることにより、半導体ウエハの反りやうねりだけでなく、チャック台及びチャック台を回転させているモータ軸のうねり等の影響も拾う。このため、正確な測定ができないという問題点があった。特に、今日では半導体ウエハの口径が大形化し、これに伴って半導体ウエハが載置されるチャック台の大きさも大形化している。したがって、その半導体ウエハの反りやうねり、及びチャック台並びにモータ軸のうねり等の影響も大きくなる。
【0015】
そこで、半導体製造装置において半導体ウエハを切断して半導体チップを製造する準備
段階として、半導体ウエハ周辺部の反りやうねり等を事前に高精度で測定して、ダイシング加工をスムーズに行うことができるようにするための半導体ウエハマッピング方法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、所定の回路が縦横に整列されて配置形成された半導体ウエハを縦横に切断して半導体チップを製造するレーザ加工機における半導体ウエハマッピング方法において、チャック台上に前記半導体ウエハを吸引保持して前記半導体ウエハを回転させることなく該半導体ウエハの表面に測定光を照射し、かつ該半導体ウエハ表面で反射された反射光を検出して該半導体ウエハの表面高さを測定するとともに、前記チャック台をX、Y方向に移動させ、前記半導体ウエハ表面上の測定位置の軌跡ラインを前記半導体ウエハの外周に沿う方向に螺旋状に形成して前記半導体ウエハの表面高さにおけるデータマップを取得する、半導体ウエハマッピング方法を提供する。
【0017】
この方法によれば、チャック台上に吸引保持した半導体ウエハの表面に測定光を照射し、その表面で反射される反射光から半導体ウエハの表面高さ(表面Z方向)を測定する位置の軌跡ラインが、半導体ウエハの外周に沿う方向に形成される。したがって、事前に半導体ウエハの外周部分における半導体ウエハの反りやうねり等をほぼ全周に亘って測定することができる。そして、半導体ウエハ表面の測定値(プロファイルデータ)をマップとして取得し、そのマップに基づいて次のステップにおけるレーザ加工で、集光レンズの集光点位置を自動制御することにより、レーザ光を使用するダイシング加工を高精度に、かつスムーズに行うことができる。特に、レーザ光を径方向(X−X方向及びY−Y方向)に移動させてダイシング加工を行う場合では、一般に、レーザ光が半導体ウエハの外側から半導体ウエハの領域内に入るときに、集光レンズの焦点を合わすまでに時間がかかるが、半導体ウエハの外周部分における反りやうねりを事前に把握しておくことにより、レーザ加工時における焦点整合作業に大きな乱れを起こすことなく、スムーズな自動調整を可能にする。
【0018】
しかも、この測定では、半導体ウエハを吸引保持したチャック台及び測定手段は回転させずに、測定手段に対してチャック台をX−Y方向に移動させ、このX−Y方向の移動で半導体ウエハの外周に沿う方向の測定軌跡ラインを形成する。従って、従来のターンテーブルを回転させて測定する方法で問題になった、チャック台の回転による反りやうねり、及びチャック台を回転させるためのモータ軸のうねり等の影響は全く無く、そして半導体ウエハの外周部の反りやうねり等を事前に、高精度で、かつ高速度で測定することができる。また、半導体ウエハをチャック台に吸引保持したまま、次のレーザ光によるダイシング加工の作業に入ることもできるので、作業性が更に向上する。そして、測定位置の軌跡ラインが螺旋状を描くようにして測定することにより、半導体ウエハの表面全体を一回の走査で広範囲に亘って測定することができる。また測定したデータより、半導体ウエハ面をより正確な立体面として捉えるためには従来技術のような直線の軌跡ラインでの測定では、狭い間隔でより多くの軌跡ラインを形成して測定する必要があり測定に時間を要するが、本発明のように螺旋状に軌跡ラインを形成することで、従来技術ように多くの軌跡ラインを形成する必要はなく、螺旋状の軌跡ラインから得られる少ない測定情報で半導体ウエハの正確な立体面を捉えることができる。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1記載の半導体ウエハマッピング方法において、上記測定位置の軌跡ラインが連続して形成される、半導体ウエハマッピング方法を提供する。
【0022】
従来技術では直線の軌跡ラインを半導体ウエハに形成する際に、軌跡ライン毎に形成開始位置の位置決めが必要であったが、この方法によれば、測定を連続的に行うことにため軌跡ラインの開始位置の位置決めは一度だけ行えばよく、高スループット化が図れる。
【0023】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項に記載の半導体ウエハマッピング方法で形成されたマップを用いて半導体ウエハのレーザ加工を行う、半導体ウエハのレーザ加工方法を提供する。
【0024】
この加工方法によれば、加工ラインの半導体ウエハ外周部における加工時における集光レンズの焦点位置の乱れが減少でき、外周付近におけるレーザ加工精度が安定する。また、レーザ加工時における集光レンズの合焦状態のデータが並行して得られるようにした場合では、レーザ加工時に得られる集光レンズの焦点整合状態のデータとマップを比較することにより、レーザ加工における自動調整が正確に行われているか否かをリアルタイムにチェックすることができる。さらに、レーザ加工における自動調整が正確に行われていない場合には、マップデータを優先した集光レンズの合焦調整を行うことにより、動作を継続させることができる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明によれば、半導体ウエハの外周辺部の反りやうねり等を事前にほぼ全周に亘って測定し、その半導体ウエハ表面Z方向の測定値(プロファイルデータ)をマップとして取得し、次のステップにおけるレーザ光によるダイシング加工に使用することができるので、ダイシング加工をスムーズに行うことができる効果が期待できる。また、この測定では、従来のターンテーブルを回転させて測定する方法で問題になった、チャック台の回転による反りやうねり、及びチャック台を回転させるためのモータのうねり等の影響を全く受けることなく、半導体ウエハの外周辺部の反りやうねり等を事前に、高精度で、かつ高速度で測定することができる。さらに、半導体ウエハをチャック台に吸引保持したまま、次のレーザ光によるダイシング加工の作業に入ることもできるので、作業性が更に向上する。そして、半導体ウエハの表面全体を1回の走査で広範囲に亘って測定することができるので、更に高精度に測定することができる。
【0027】
請求項記載の発明は、連続して測定を行うので、請求項1記載の発明の効果に加えて、更にスループットが良くなり、作業性が更に向上する。
【0028】
請求項記載の発明は、加工ラインの半導体ウエハ外周付近におけるレーザ加工精度が安定するので、高精度のレーザ加工が期待できる。また、加工ラインの半導体ウエハの外周部における加工時における集光レンズの焦点の乱れを減少させることができるので、スループットが向上し、生産性の向上に寄与する。また、レーザ加工時における合焦データとマップとを比較することにより、レーザ加工における合焦が正確に行われているか否かをリアルタイムに測定することができると共に、レーザ加工における合焦が正確に行われていない場合には、マップデータを使用して動作を継続させることができるので、更に生産性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る半導体ウエハマッピング方法を実施するためのレーザ加工装置の一例を測定動作状態で示す概略構成図である。
図2】半導体ウエハの表面測定及びレーザ加工方法を説明する図で、(a)及び(b)は測定位置の軌跡を説明する図、(c)はレーザ加工方法を説明する図である。
図3】半導体ウエハの一例を示す図で、(a)はその表面側より見た平面図、(b)はその側面図である。
図4】従来における半導体ウエハの表面測定方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は半導体製造装置において半導体ウエハを切断して半導体チップを製造する準備段階として、半導体ウエハ周辺部の反りやうねり等を事前に高精度で測定して、ダイシング加工をスムーズに行うことができるようにするという目的を達成するために、所定の回路が縦横に整列されて配置形成された半導体ウエハを縦横に切断して半導体チップを製造するレーザ加工機における半導体ウエハマッピング方法において、チャック台上に前記半導体ウエハを吸引保持して前記半導体ウエハを回転させることなく該半導体ウエハの表面に測定光を照射し、かつ該半導体ウエハ表面で反射された反射光を検出して該半導体ウエハの表面高さを測定するとともに、前記チャック台をX、Y方向に移動させ、前記半導体ウエハ表面上の測定位置の軌跡ラインを前記半導体ウエハの外周に沿う方向に螺旋状に成して前記半導体ウエハの表面高さにおけるデータマップを取得する、ことにより実現した。
【0031】
以下、本発明の実施形態による半導体ウエハマッピング方法の一実施例を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施例で使用する半導体ウエハSは、特に限定されるものではないので、図3に示した従来の半導体ウエハSと同じ半導体ウエハを使用した場合、すなわち所定の回路が縦横に整列配置形成されているとともに、整列配置された各回路間に加工ライン2a〜2nが格子状に設定され、ダイシングフィルム4に固定されているものとし、以下の説明では同じ符号を付して説明する。
なお、半導体ウエハに対するレーザ照射面は、所謂パターン形成側、およびその裏面の両方がある。よって、図3(b)においてダイシングフィルム4と接する面も、パターン面またはその逆側の両方がある。
【実施例】
【0032】
図1は本発明に係る半導体ウエハマッピング方法を実施するためのレーザ加工装置の一例を示す概略構成図であり、測定を行っている状態を示している。図1に示すレーザ加工装置10は、静止基台11と、該静止基台11上に配設された移動テーブル12と、該移動テーブル12上に配設された半導体ウエハSの表面高さ(移動テーブル12から半導体ウエハSの上面までの高さ)を測定する表面高さ測定器13と、該表面高さ測定器13を支持する支持アーム14と、レーザ加工装置10全体の動作を制御する制御部15等により構成されている。
【0033】
前記移動テーブル12は、静止基台11上をXa−Xb方向に移動可能なX方向滑動ブロック16と、該X方向ブロック16上をYa−Yb方向に移動可能なY方向滑動ブロック17と、該Y方向滑動ブロック17と一体移動可能に該Y方向滑動ブロック17上に取り付けられたチャック台18と、により構成されている。なお、前記チャック台18は、該チャック台18上の所定の位置に表面を上側に向けて載置された半導体ウエハSを真空吸着して、Y方向滑動ブロック17上に固定するものである。したがって、チャック台18に真空吸着された半導体ウエハSは、X方向ブロック16及びY方向滑動ブロック17と共に、X、Y方向に移動する。
【0034】
そして、X方向滑動ブロック16及びY方向滑動ブロック17の移動及びチャック台18の吸着・解除の各動作は、制御部15の制御によって操作される。
【0035】
前記制御部15は、前記レーザ加工装置10の全体を決められた手順に従って制御するものであり、各種演算等を行うCPU15aと、CPU15aにおいて用いられるプログラム等が記憶されたROM及び表面高さ測定器13で測定されたデータを一時記憶しておく読み書き可能なRAM等を備えるメモリ15bと、各種データの授受を行うI/Oインターフェース15c等により構成されている。
【0036】
前記表面高さ測定器13は、チャック台18上に配置された半導体ウエハSの表面にレーザ光を照射し、半導体ウエハSの表面で反射された反射光を検出して該半導体ウエハSの表面高さを測定し、その表面高さのデータを制御部15に入力するようになっている。
【0037】
次に、このように構成されたレーザ加工装置10の動作を説明する。まず、ステルスダイシングを行う半導体ウエハSをチャック台18上の所定の位置に、ダイシングフィルム4側を当接させて配置する。次いで、制御部15の制御により、チャック台18の真空吸引が行われ、半導体ウエハSがチャック台18上に吸引保持される。
【0038】
次いで、制御部15の制御により、X方向滑動ブロック16がXa−Xb方向、Y方向滑動ブロック17がYa−Yb方向にそれぞれ滑動されて、チャック台18上に固定配置された半導体ウエハS上の測定開始点を、図2の(a)、(b)に示すように表面高さ測定器13における測定位置Aに移動させる。ここでの測定開始点Aは、半導体ウエハSの表面上の外周S1に最も近い内側の位置である。
【0039】
測定開始点Aが測定位置に移動されたら、表面高さ測定器13による測定が開始され、その測定値が制御部15に送られ、その測定値が半導体ウエハSの表面上の位置情報と共にメモリ15bに記憶される。また、同時に、制御部15の制御により、X方向滑動ブロック16がXa−Xb方向、Y方向滑動ブロック17がYa−Yb方向にそれぞれ滑動され、チャック台18上に固定配置された半導体ウエハSの表面上の測定点を表面高さ測定器13に対して徐々に移動させる。
【0040】
そして、ここでの移動は、例えば図2中に符号19で示すように、半導体ウエハSの外周S1に沿って螺旋状に描かれるライン上に表面高さ測定器13における測定位置の軌跡(以下、これを「軌跡ライン19」という)が作られるように、X方向滑動ブロック16及びY方向滑動ブロック17の滑動を制御する。また、その軌跡ライン19上で得られた全ての測定値を制御部15に送り、これを位置情報と共にプロファイルデータとしてマップ化し、メモリ15bに記憶させる。
【0041】
また、このようにして得られた測定値は、半導体ウエハSの外周S1に沿う方向に移動する螺旋状の軌跡ライン19を描きながら、その軌跡ライン19上における半導体ウエハSの表面高さを順に測定して行くことにより、事前に半導体ウエハSの最外周全体の反りやうねりの状態等を始めとして、半導体ウエハSのほぼ全面に亘る反りやうねりの状態を、短時間に高速で測定することができる。
【0042】
また、測定後は、表面高さ測定器13に変えて図示しないレーザ加工器を配置し、レーザ加工機の集光レンズの焦点自動調整を、上記マップとして取得されたプロファイルデータに基づいて制御しながらレーザ加工を進める。これにより、加工時における焦点自動調整の追従性が向上し、ダイシング加工を高精度に、かつ高速で行うことができる。
【0043】
図2の(c)は、そのダイシング加工(ステルスダイシング加工)を行う場合の一例を示している。X方向のダイシング加工を行う場合は、半導体ウエハSの外側の位置Xaから加工を開始し、半導体ウエハSの一端1a1から半導体ウエハSの領域内に入り、その半導体ウエハSの加工ライン2a1に沿ってレーザ光を照射して行き、半導体ウエハSの
他端1b1に到達したら半導体ウエハ1の外側に一旦出る。次に、半導体ウエハSの一端1b2から再び内側に入り、その半導体ウエハSの加工ライン2a2に沿ってレーザ光を照射して行き、半導体ウエハSの一端1a2に到達したら再び外側に出る。次いで、半導体ウエハSの一端1a3から再び内側に入り、その半導体ウエハSの加工ライン2a3に沿ってレーザ光を照射して行き、半導体ウエハSの他端1b3に到達したら再び外側に出る。このように加工用のレーザ光を千鳥状に移動させながら各間を短冊状に加工し、これをn本の加工ライン2a〜2nについて順に行い、各加工ライン2a〜2n上における半導体ウエハS内部に改質層を形成する。また、Y方向のダイシング加工を行う場合も、図中点線の矢印で示しているように半導体ウエハSの外側の位置Y1からレーザ光の照射を開始し、X方向と同様に加工用のレーザ光を千鳥状に移動させながら各間を短冊状に加工する。これにより、半導体ウエハSの外側の位置から半導体ウエハSの内側に入るとき、半導体ウエハSの端部(1a1、1a3、1b2、1b4等)における焦点調整の乱れが減少でき、外周付近でのレーザ加工精度が向上する。
【0044】
また、レーザ加工時における集光レンズの整合状態のデータが並行して得られるようにしておくと、そのデータとマップとを比較することにより、レーザ加工時における自動焦点が正確に行われているか否かをリアルタイムにチェックすることができる。さらに、レーザ加工における集光レンズの焦点自動調整が正確に行われていない場合には、マップデータを優先させることにより、動作を継続させることができる。
【0045】
また、裏面薄膜等の影響で、例えば合焦用のレーザ光の反射を受けることができずに、合焦機能が正常に動作しないような事態が発生することを加工前に検出して、その対策を事前に講ずることができる。
【0046】
なお、上記実施例では、軌跡ライン19を螺旋状に連続形成する場合について説明したが、円形の軌跡ラインを形成するようにしてもよいものである。しかし、連続的に形成した場合の方がスループットがよく、生産性の向上が期待できる。
【0047】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は半導体ウエハのレーザ加工以外のマッピングを形成する場合にも応用できる。
【符号の説明】
【0049】
1a1〜1an、1b1〜1bn 半導体ウエハの端
2a1〜2an 加工ライン
3 半導体チップ
4 ダイシングフィルム
10 レーザ加工装置
11 静止基台
12 移動テーブル
13 表面高さ測定器
14 支持アーム
15 制御部
15a CPU
15b メモリ
15c I/Oインターフェース
16 X方向滑動ブロック
17 Y方向滑動ブロック
18 チャック台
19 測定位置の軌跡(軌跡ライン)
A 測定開始点
S 半導体ウエハ
S1 半導体ウエハの外周
X1、Y1 測定開始点
Xa、Ya 加工開始位置
図1
図3
図4
図2