特許第6046536号(P6046536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046536
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】FM復調装置
(51)【国際特許分類】
   H03D 3/06 20060101AFI20161206BHJP
   H03D 3/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H03D3/06 Z
   H03D3/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-71841(P2013-71841)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197752(P2014-197752A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
【審査官】 角張 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−245707(JP,A)
【文献】 特開2005−286821(JP,A)
【文献】 特開2001−345677(JP,A)
【文献】 特開昭57−201378(JP,A)
【文献】 特開平07−170176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03D1/00−5/00
H03H15/00−15/02
19/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力するFM変調信号の周波数に応じた周波数で互いに180度位相差をもつ2相のスイッチング信号を生成するスイッチング信号生成回路と、
前記2相のスイッチング信号によってスイッチングされるスイッチとキャパシタで構成されたスイッチトキャパシタ回路により前記FM変調信号の中心周波数電流成分と周波数偏差電流成分を加算したFM変調電流信号を生成するスイッチトキャパシタ電流出力回路と、
前記FM変調電流信号から前記中心周波数電流成分を引き算して前記周波数偏差電流成分を取り出すFM復調回路と、
を備えることを特徴とするFM復調装置。
【請求項2】
請求項1に記載のFM復調装置において、
前記周波数偏差電流成分を電圧信号に変換する電流/電圧変換回路を備えることを特徴とするFM復調装置。
【請求項3】
請求項2に記載のFM復調装置において、
前記電流/電圧変換回路は、前記中心周波数電流成分に対応する電圧信号と前記周波数偏差電流成分に対応する電圧信号との差分の電圧を出力することを特徴とするFM復調装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のFM復調装置において、
前記スイッチトキャパシタ電流出力回路は、スイッチングノイズを除去する第1のローパスフィルタを備えることを特徴とするFM復調装置。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載のFM復調装置において、
前記FM復調回路は、前記FM変調電流信号から前記中心周波数電流成分を取り出す第2のローパスフィルタと、該第2のローパスフィルタで得られた前記中心周波数電流成分を前記FM変調電流信号から差し引く電流差引手段とを備えることを特徴とするFM復調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM変調信号をスイッチトキャパシタ電流出力回路に入力することで周波数信号を電流信号に変換してFM復調信号を生成するFM復調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の小電力無線等の狭帯域の分野に使用されるFM復調方式として、位相検波方式がある。この位相検波方式では、移相器の回路のQを高くすれば、FM変調信号の周波数偏差に対して急峻に位相変化する位相信号を得ることができるので、その位相信号を電圧に変換することで、FM変調信号が中心周波数に対する周波数偏差が小さい場合でも、S/N比の良好なFM復調信号を得ることができる(特許文献1)。
【0003】
一般に移相器は、コイルとコンデンサからなる共振回路で構成され、FM変調信号を入力したときの出力信号の位相変化を利用するものであるが、IF周波数が400kHz〜数MHzで動作する移相器を構成しようとすると、インダクタンスの値が数百μH程度のコイルが必要となり、集積化が困難となって、そのコイルを外付けにしなければならない。
【0004】
位相変化を、例えばローパスフィルタの位相変化点を利用して得る場合、移相器の位相変化量は周波数変化量に対して線形でないため、より大きな位相変化を得ようとすると、必然的にFM復調信号の歪みが大きくなることがある。また、高次のフィルタは、回路規模も必然的に大きくなるため、消費電流やコストの面から不利となる。
【0005】
一方、FM復調方式の別の例としてパルスカウント方式がある。これは、入力するFM変調信号を電圧に変換してから、ローパスフィルタにより積分する方式である。このパルスカウント方式は、非線形性を発生させる回路要素がないため、線形性が良好でFM復調信号に発生する歪みが小さい。また、コイルが不要で高次フィルタも不要であり、位相検波方式で生じていた問題もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−232323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、FM変調信号の中心周波数に対する周波数偏差が小さい狭帯域無線等の分野では、得られるFM復調信号のレベルが小さくなり、S/N比が悪くなる傾向がある。S/N比が悪い理由は、FM復調信号のレベルが中心周波数と周波数偏差の割合で決まるためである。一般的には、この問題を解決する手法として、周波数偏差が大きい広帯域無線(ラジオ等)で使用する、あるいは中心周波数を低下させて周波数偏差との割合を大きくする手法がある。中心周波数を低下させる後者の手法は、位相検波方式にも適用することができるが、能動素子の1/f雑音の影響を受け易いという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、特定小電力無線機等の狭帯域用として使用でき、FM復調信号のS/N比が良好で、FM復調信号の歪みも小さくできるようにしたFM復調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明のFM復調装置は、入力するFM変調信号の周波数に応じた周波数で互いに180度位相差をもつ2相のスイッチング信号を生成するスイッチング信号生成回路と、前記2相のスイッチング信号によってスイッチングされるスイッチとキャパシタで構成されたスイッチトキャパシタ回路により前記FM変調信号の中心周波数電流成分と周波数偏差電流成分を加算したFM変調電流信号を生成するスイッチトキャパシタ電流出力回路と、前記FM変調電流信号から前記中心周波数電流成分を引き算して前記周波数偏差電流成分を取り出すFM復調回路と、を備えることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のFM復調装置において、前記周波数偏差電流成分を電圧信号に変換する電流/電圧変換回路を備えることを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載のFM復調装置において、前記電流/電圧変換回路は、前記中心周波数電流成分に対応する電圧信号と前記周波数偏差電流成分に対応する電圧信号との差分の電圧を出力することを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1、2又は3に記載のFM復調装置において、前記スイッチトキャパシタ電流出力回路は、スイッチングノイズを除去する第1のローパスフィルタを備えることを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項1、2、3又は4に記載のFM復調装置において、前記FM復調回路は、前記FM変調電流信号から前記中心周波数電流成分を取り出す第2のローパスフィルタと、該第2のローパスフィルタで得られた前記中心周波数電流成分を前記FM変調電流信号から差し引く電流差引手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スイッチトキャパシタ電流出力回路のスイッチトキャパシタのキャパシタの容量値を適宜設定することが可能であり、これにより、FM復調信号のレベルを自由に設定することができる。このため、周波数偏差の小さい狭帯域無線にも使用可能な高いS/N比を実現することができるとともに、ユーザにおける自由度が高くなる。また、FM変調信号の周波数偏差電流成分を取り出すので、能動素子の電流容量が充分であれば歪みの小さいFM復調信号を得ることができる。さらに、スイッチトキャパシタ電流出力回路のキャパシタの容量値は、1000pF以上になることもあるが、使用するオペアンプアンプのドライブ能力を低く設定することができるので、実装面積を小さくすることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施例のFM復調装置の回路図である。
図2】本発明の第2の実施例のFM復調装置の回路図である。
図3図2のFM復調装置の動作波形図である。
図4】本発明の第3の実施例のFM復調装置の回路図である。
図5】S字カーブ波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施例>
図1に本発明の第1の実施例のFM復調装置を示す。図1において、10は入力するFM変調信号(F0 ±FDEV )から180度位相差をもつ2相の矩形波CLK,CLKBを生成するスイッチング信号生成回路、20は2相の矩形波CLK,CLKBを入力して周波数に対応したFM変調電流信号を生成するスイッチトキャパシタ電流出力回路、30はFM復調回路、40は電流/電圧変換回路である。FM変調信号のうちのF0は中心周波数、FDEVは偏差分周波数である。
【0013】
スイッチトキャパシタ電流出力回路20では、キャパシタC1、そのキャパシタC1に直列接続され矩形波CLKでスイッチングされるスイッチSW1、そのキャパシタC1に並列接続され矩形波CLKBでスイッチングされるスイッチSW2によってスイッチトキャパシタ回路が構成されている。そして、そのスイッチトキャパシタ回路からなる等価抵抗に生じる電圧が基準電圧VREF と一致するように、トランジスタQ1のベース電圧を制御するオペアンプ21を備える。
【0014】
FM復調回路30は、オペアンプ21の出力電圧によってベース電圧が制御されるトランジスタQ2,Q3、トランジスタQ2のコレクタ電流を平均化する平均化回路31、およびカレントミラー接続されたトランジスタQ4,Q5によって構成されている。トランジスタQ3,Q5は請求項の電流差引手段を構成する。
【0015】
電流/電圧変換回路40は、トランジスタQ3のコレクタ電流からトランジスタQ5のコレクタ電流を減算した電流を入力して、電圧信号に変換する。
【0016】
さて、スイッチトキャパシタ電流出力回路20のトランジスタQ1のコレクタに流れるFM変調電流Iは、矩形波CLKの周波数をFCLK (=F0 ±FDEV )、コンデンサC1の容量値をC1、IF0 を中心周波数電流成分、IFDEV を周波数偏差電流成分とすると、
I=VREF ×FCLK ×C1
I=(VREF ×F0 ×C1)±(VREF ×FDEV ×C1)
=IF0 ±IFDEV (1)
で表すことができ、このFM変調電流IがトランジスタQ2,Q3にミラーされてそのコレクタ電流となる。
【0017】
トランジスタQ4のコレクタには平均化回路31によって中心周波数電流成分IF0 が流れ、トランジスタQ4からトランジスタQ5のコレクタにミラーされる。よって、電流/電圧変換回路40には、トランジスタQ3のコレクタに流れるFM変調電流「IF0 ±IFDEV 」から、トランジスタQ5のコレクタに流れる中心周波数電流成分IF0 を差し引いた電流である周波数偏差電流成分±IFDEV が流れる。
【0018】
以上から、スイッチトキャパシタ電流出力回路20のキャパシタC1の容量値C1を大きくすると、周波数偏差電流成分IFDEV のレベルを大きくすることができ、これによってFM復調信号のS/N比を良好にすることができる。また、FM変調信号の周波数変化を電流変化に変換して取り出すので、能動素子の電流容量が充分、つまり線形な領域で動作させれば、歪みの小さいFM復調信号を得ることができる。さらに、位相検波方式のような共振周波数を持たないために、あらゆる周波数に対応することができ、汎用性をもつ。さらに、スイッチトキャパシタ電流出力回路20のキャパシタC1の容量値C1を調整することで、希望するレベルのFM復調信号を得ることができるので、ユーザにとって自由度が高くなる。さらに、スイッチトキャパシタ電流出力回路20のキャパシタC1の容量値は、1000pF以上になることもあるが、使用するオペアンプアンプ21のドライブ能力を低く設定することができるので、集積化した際の実装面積を小さくすることができる
【0019】
<第2の実施例>
図2に本発明のFM復調装置の第2の実施例を示す。ここでは、スイッチトキャパシタ電流出力回路20において、トランジスタQ1のコレクタからオペアンプ21の非反転入力端子への帰還経路に抵抗R1とキャパシタC2からなるローパスフィルタ22を挿入し、このローパスフィルタ22によって、スイッチSW1,SW2によるスイッチングノイズを除去している。また、FM復調回路30において、平均化回路31を、抵抗R2とキャパシタC3によるローパスフィルタで構成し、トランジスタQ2のコレクタ電流から電流成分IFDEV を除去している。
【0020】
図2のノードN1〜N6の信号波形を図3に示した。入力するFM変調信号の周波数が高いほどノードN6の周波数偏差電流成分IFDEV のレベルが高くなり、周波数が低いほど周波数偏差電流成分IFDEV のレベルが低くなっていることが分かる。
【0021】
<第3の実施例>
図4に本発明のFM復調装置の第3の実施例を示す。ここでは、電流/電圧変換回路40をオペアンプ41と抵抗R4によって構成している。また、トランジスタQ4とカレントミラー接続されるトランジスタQ6を接続して、そのコレクタに抵抗R3を接続する。そして、トランジスタQ3、Q5のコレクタ共通接続点をオペアンプ41の反転入力端子に、トランジスタQ6のコレクタと抵抗R3の共通接続点を非反転入力端子に接続している。
【0022】
本実施例では、抵抗R3に中心周波数電流成分IF0 に依存する電圧V0 が発生し、抵抗R4に周波数偏差電流成分IFDEV に依存するする電圧が発生するので、オペアンプ41の出力電圧VOUT (FM復調信号)に、図5に示すようなS字カーブ特性を持たせることが可能となる。この出力電圧VOUT は、式(1)から、
OUT =V0 ±IFDEV ×R4
=(VREF ×F0 ×C1×R3)±(VREF ×FDEV ×C1×R4) (2)
となる。右辺の第1項は復調直流電圧、第2項は復調信号電圧である。
【0023】
このように、S字カーブ特性を得ることができるので、FM変調信号の中心周波数F0を容易に検出することができるようになる。
【符号の説明】
【0024】
10:スイッチング信号生成回路
20:スイッチトキャパシタ電流出力回路、21:オペアンプ、22:ローパスフィルタ
30:FM復調回路、31:ローパスフィルタ
40:電流/電圧変換回路、41:オペアンプ
図1
図2
図3
図4
図5