(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池の製造工程においては、活物質(正極活物質および負極活物質)を含む粉体を、シート状の集電体(正極集電体および負極集電体)の表面に供給して合剤層(正極合剤層および負極合剤層)を形成することで、正極および負極を製造している。
二次電池の製造工程では、このような正極および負極の間にセパレータを挟んで捲回し、前記捲回したものに対してプレス加工を施すことで、電極体を製造する。
そして、二次電池の製造工程では、超音波溶接等によって電極体および集電端子を接合するとともに電極体を電池容器に収納し、電極体に電解液を浸透させて二次電池を製造している。
【0003】
このような二次電池の製造工程において、正極および負極(特に、最も内側、つまり、最初に捲回される部分)は、捲回時およびプレス加工時に大きく屈曲する。
また、電極体を超音波溶接によって集電端子に接合するとき、集電体は、超音波によって振動する。
このような捲回時、プレス加工時、および溶接時等において、合剤層は集電体から剥離してしまう可能性がある。この場合、二次電池は、その充放電特性が低下してしまう。
【0004】
合剤層の剥離を防止するための技術としては、例えば、特許文献1に開示される技術がある。
特許文献1に開示される技術では、集電体上に結着剤を含有する第一の層を形成し、第一の層の上に活物質を含有する第二の層(合剤層)を形成する。特許文献1に開示される技術では、第二の層よりも第一の層の結着力を強くすることで、第二の層の剥離強度を向上させている。
【0005】
特許文献1に開示される技術のように、第一の層の上に第二の層を形成する場合、第二の層と集電体との間には、いずれの箇所においても第一の層が介在することとなる。
このため、特許文献1に開示される技術では、集電体と活物質との間の電気抵抗が増加してしまう可能性がある。
【0006】
このような電気抵抗の増加を抑制する手段としては、例えば、
図18に示すように、集電体上に結着剤をパターン塗布して、平面視格子状または平面視ドット状の第一の層を形成する手段が考えられる。
この場合には、第二の層の幅方向両端部(
図18における紙面左右両端部)に第一の層が形成されていない領域Pが存在してしまう。
【0007】
前記第一の層が形成されていない領域Pにおいて、第二の層は、活物質の粒子同士の結着力だけで結着することとなる。第二の層の幅方向中央部において、第一の層が形成されていない領域に形成された第二の層は、その周囲に第一の層上に形成された第二の層が存在するため、四方から支えられることにより活物質の結着力だけで集電体との結着性を維持できる(つまり、剥離強度が高い)。一方、第二の層の幅方向両端部における前記領域Pでは、その周囲に第一の層上に形成された第二の層が一部しか存在しないため、前記領域Pの第二の層を周囲から支える力が低下し、前記領域Pの第二の層の剥離強度が低下する虞がある。
従って、この場合には、二次電池を製造するときに、前記第一の層が形成されていない領域Pを基点として、幅方向内側まで第二の層が集電体から剥離してしまう可能性がある。
【0008】
以上のように、従来技術においては、電気抵抗の増加を抑制することと、剥離強度を向上させることとを両立できなかった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本実施形態の二次電池の製造方法について説明する。
【0017】
まず、二次電池1の概略構成について説明する。
【0018】
本実施形態の二次電池1は、リチウムイオン二次電池である。なお、本発明が適用される対象はリチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、他の二次電池についても適用可能である。
図1に示すように、二次電池1は、外装10、電極体20、および外部端子60等を具備する。
【0019】
外装10は、一面が開口した有底角筒状の収納部11を、平板状の蓋部12で塞ぐことで構成される中空の電池容器である。外装10には、電極体20が収納される。
【0020】
図2に示すように、電極体20は、正極30、負極40、およびセパレータ50を備える捲回型の電極体である。
【0021】
正極30および負極40は、シート状の正極集電体31および負極集電体41の表面(両面あるいは一側面)に、正極合剤層32および負極合剤層42を形成することによって構成される。
本実施形態の正極30および負極40は、各集電体31・41の両面に各合剤層32・42が形成される。
【0022】
正極合剤層32は、正極30の幅方向(
図2における紙面左右方向)における一端部から他端側まで連続して形成される。
負極合剤層42は、負極40の幅方向における他端部から一端側まで連続して形成される。
【0023】
正極30および負極40は、各合剤層32・42が形成されていない部分が、各非合剤層33・43として形成される。つまり、各非合剤層33・43は、幅方向における位置関係が反対となっている。
【0024】
セパレータ50は、樹脂等から成るシート状の部材である。セパレータ50は、その幅が正極30および負極40の幅よりも短い。
セパレータ50は、その幅方向両端部の位置が、各非合剤層33・43の幅方向中途部に位置した状態で、正極30および負極40の間に介在する。
【0025】
電極体20は、正極30の幅方向を捲回軸方向として正極30、負極40、およびセパレータ50を捲回し、前記捲回したものに対してプレス加工を施すことで構成される(
図10参照)。
電極体20は、外装10に注液される電解液が浸透することで、二次電池1の発電要素として機能する。
【0026】
図1に示すように、外部端子60は、その一部が外装10の外側面から二次電池1の上方(外方)に突出した状態で、絶縁部材62・63を介して蓋部12に対して絶縁状態で固定される。外部端子60は、集電端子61を介して正極30および負極40に電気的に接続される。集電端子61は、各非合剤層33・43に超音波溶接によって接合される。
外部端子60および集電端子61は、電極体20に蓄えられる電力を外部に取り出す、若しくは、外部からの電力を電極体20に取り入れる通電経路として機能する。
【0027】
このように構成される二次電池1は、各合剤層32・42が各集電体31・41から剥離することで充放電特性が低下してしまう。
このように、各合剤層32・42が各集電体31・41から剥離する可能性がある場合としては、例えば、正極30および負極40を捲回するとき、集電端子61を各非合剤層33・43に超音波溶接するとき等である。
【0028】
本実施形態の二次電池の製造方法は、各集電体31・41の剥離強度を向上させることで、このような各合剤層32・42の剥離による充放電特性の低下を防止する。
【0029】
次に、二次電池の製造方法の手順について説明する。
【0030】
まず、二次電池の製造方法では、各集電体31・41に各合剤層32・42を形成して正極30および負極40を製造する。
なお、以下では、正極30を製造する場合の手順について説明を行う。
【0031】
正極合剤層32の形成に際して、二次電池の製造方法では、
図3に示すようなバインダ液供給装置70を用いて正極集電体31にバインダ液Aを塗布する。
図3に示すように、バインダ液供給装置70は、ゴムロール71、グラビアロール72、液パン73、およびブレード74等を具備する。
【0032】
ゴムロール71は、正極集電体31の幅方向(
図3における紙面上下方向および紙面左右方向に対して直交する方向)を軸方向とするとともに、外径寸法がグラビアロール72よりも大きなロールである。ゴムロール71の底部(下端部)は、正極集電体31の他側面と接触する。
正極集電体31は、ゴムロール71に掛け渡されて上方向に向かって延出する。
【0033】
図3および
図4に示すように、グラビアロール72は、正極集電体31にバインダ液Aを塗布するロールである。グラビアロール72は、正極集電体31の幅方向を軸方向とするとともに、外周面に複数の溝部72a・72bが形成される。
グラビアロール72は、正極集電体31を挟んでゴムロール71と対向し、頂部(上端部)が正極集電体31の一側面と接触する。
【0034】
溝部72a・72bは、グラビアロール72の軸方向における位置が変動することなく、グラビアロール72の周方向に沿って無端状に形成される略円状の窪みである。溝部72a・72bは、グラビアロール72の軸方向に間隔を空けて複数形成される。
グラビアロール72の軸方向において、両端部に位置する溝部72aは、他の溝部72bよりもその幅が長い。
【0035】
なお、以下では、このような両端部に位置する溝部72aを「両端の溝部72a」と表記する。
また、以下では、両端の溝部72a以外の溝部72bを「内側の溝部72b」と表記する。
【0036】
液パン73は、バインダ液Aを貯溜する容器である。液パン73の内部には、グラビアロール72の下部が収容される。すなわち、グラビアロール72の下部は、液パン73のバインダ液Aに浸かった状態である。
グラビアロール72は、回転することで外周面にバインダ液Aを付着させるとともに、各溝部72a・72bにバインダ液Aを浸入させる。
【0037】
バインダ液Aは、バインダが分散媒に分散または溶解している液である。
バインダとしては、SBR(スチレンブタジエン共重合体)、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン等の公知のものを使用することができる。前記分散媒しては、水や有機溶媒を使用することができる。バインダ液Aには、塗液の粘度やぬれ性を調整するために、増粘剤や界面活性剤を含んでいてもよい。前記増粘剤や前記界面活性剤としては、公知のものを使用することができる。バインダ液Aにおけるバインダの濃度は、1.5〜40重量%程度である。
【0038】
ブレード74は、グラビアロール72の軸方向から見たときに略三角形状に形成される部材である。ブレード74は、グラビアロール72の軸方向に沿って延出し、先端部がグラビアロール72の外周面(各溝部72a・72bが形成されていない部分)と接触する。
このようなグラビアロール72のブレード74との接触部分は、グラビアロール72の底部よりもグラビアロール72の回転方向下流側であるとともに、グラビアロール72の頂部よりもグラビアロール72の回転方向上流側である。
【0039】
ブレード74は、回転するグラビアロール72の外周面に付着するバインダ液Aが正極集電体31に接触する前に、グラビアロール72の外周面に付着するバインダ液Aを掻き落とす。
従って、グラビアロール72は、ブレード74との接触部分よりも回転方向下流側から頂部(つまり、正極集電体31との接触部分)までの間の範囲において、各溝部72a・72bにのみバインダ液Aが存在している。
【0040】
二次電池の製造方法では、各ロール71・72等を回転させることにより、グラビアロール72の各溝部72a・72bに浸入しているバインダ液Aを、搬送される正極集電体31の一側面に塗布する。
【0041】
このとき、バインダ液Aは、グラビアロール72の各溝部72a・72bの形状に沿って正極集電体31の一側面に転写される。
従って、
図5に示すように、バインダ液Aは、グラビアロール72の軸方向、つまり、正極集電体31の幅方向における位置が変動することなく、グラビアロール72の周方向、つまり、正極集電体31の長さ方向に連続して塗布される。
【0042】
これにより、二次電池の製造方法では、正極合剤層32の幅方向に間隔を空けるとともに正極合剤層32の長さ方向に連続してバインダ液Aをパターン塗布する。
【0043】
ここで、「バインダ液Aをパターン塗布する」とは、バインダ液Aをバインダ液Aの塗布領域の全面にわたって塗布するのではなく、バインダ液Aを塗布した箇所が所定の模様(パターン)となるように塗布することである。バインダ液Aをパターン塗布した場合、バインダ液Aの塗布領域においてはバインダ液Aが部分的に塗布されることとなり、バインダ液Aが塗布された部分である塗布部31a・31bと、バインダ液Aが塗布されていない部分である非塗布部31cとが形成される。
【0044】
二次電池の製造方法では、このようにして、正極合剤層32を形成する前に、正極集電体31の長さ方向に沿った平面視ストライプ状の塗布部31a・31bを、正極集電体31の一側面(表面)に形成する工程を行う。
【0045】
なお、以下では、塗布部31a・31bの中で、正極集電体31の幅方向両端部に位置する塗布部31aを「両端の塗布部31a」と表記する。
また、以下では、両端の塗布部31a以外の塗布部31bを「内側の塗布部31b」と表記する。
【0046】
前述のように、グラビアロール72の両端の溝部72aの幅は、内側の溝部72bの幅よりも長い(
図4参照)。
このため、本実施形態において、両端の塗布部31aの幅D1は、内側の塗布部31bの幅D2よりも長い。また、両端の塗布部31aの幅D1は、互いに同じ幅となっている。
【0047】
なお、両端の塗布部の幅は、必ずしも互いに同じ幅である必要はない。
【0048】
両端の塗布部31aは、その幅方向外側の端部の位置が、正極合剤層32の幅方向外側の端部の位置と同じ位置に配置される(
図7参照)。
つまり、二次電池の製造方法では、バインダ液Aの塗布領域が正極合剤層32を形成する領域に対応しており、正極合剤層32を形成する領域よりも内側に内側の塗布部31bを形成する。
【0049】
図6に示すように、各塗布部31a・31bを形成した後で、二次電池の製造方法では、ゴムロール71の上方に配置される送りロール75によって、各塗布部31a・31bが上を向いた状態で正極集電体31を右方向に向けて搬送する。
そして、二次電池の製造方法では、正極合剤粒子を含む粉体Bを、正極集電体31の一側面に供給する。
【0050】
合剤粒子とは、合剤層を構成する粒子状のものを意味し、例えば、活物質粒子や導電性粒子や粉末状のバインダの他に、活物質粒子、導電性粒子、およびバインダを含む造粒粒子、並びにこれらの混合物を意味する。
つまり、前記正極合剤粒子は、正極合剤層32を構成する粒子状のものを意味し、例えば、正極活物質粒子や導電性粒子や粉末状のバインダの他に、正極活物質粒子、導電性粒子、およびバインダを含む造粒粒子、並びにこれらの混合物を意味する。
【0051】
前記正極合剤粒子を含む粉体Bを供給するとき、二次電池の製造方法では、例えば、ホッパー81および散布ロール82を用いる。
ホッパー81は、正極集電体31の上方に配置され、上下両端部が開口する。ホッパー81の内部には、粉体Bが貯溜される。
散布ロール82は、ホッパー81の下側の開口部に配置され、外周面に複数の窪みが形成される。
【0052】
二次電池の製造方法では、散布ロール82を回転させて散布ロール82の頂部まで窪みを移動させ、粉体Bを散布ロール82の窪みに供給する。
そして、二次電池の製造方法では、散布ロール82をさらに回転させて、粉体Bを供給した窪みを散布ロール82の底部近傍まで移動させ、粉体Bを正極集電体31の一側面に落下させる。
【0053】
これにより、
図6および
図7に示すように、二次電池の製造方法では、正極合剤層32を形成する領域、つまり、各塗布部31a・31bおよび非塗布部31cに粉体Bを供給する。
【0054】
粉体Bを供給した後で、二次電池の製造方法では、粉体Bを圧縮する。
このとき、二次電池の製造方法では、例えば、正極集電体31を挟んで対向配置される一対のロール83を回転させるとともに互いに接近させる。
【0055】
なお、一対のロールは、粉体を加熱しながら圧縮しても構わない。
【0056】
これにより、二次電池の製造方法では、正極集電体31の一側面に正極合剤層32を形成する。
【0057】
このような正極合剤層32は、その幅方向両端部において、常に両端の塗布部31aを間に介して正極集電体31に形成されることとなる。
従って、二次電池の製造方法は、正極合剤層32の幅方向両端部を両端の塗布部31aによって正極集電体31に接着できる。
【0058】
このため、二次電池の製造方法は、正極合剤層32の幅方向両端部において、両端の塗布部31aの結着力によって、正極集電体31および正極合剤層32を強い力で結着できる。
【0059】
つまり、二次電池の製造方法は、正極合剤層32の幅方向両端部における剥離強度を向上できる。
【0060】
このように、本実施形態の二次電池の製造方法では、正極集電体31の一側面(非塗布部31c)およびバインダ(各塗布部31a・31b)上に粉体Bを供給して正極合剤層32を形成する工程を行う。
【0061】
二次電池の製造方法では、正極集電体31の一側面に正極合剤層32を形成する場合と同じ手順にて、正極集電体31の他側面にも正極合剤層32を形成する。
【0062】
図7および
図8に示すように、正極集電体31の両面に正極合剤層32を形成した後で、二次電池の製造方法では、正極集電体31の幅方向両端部に対してスリット加工を施すことで、正極集電体31の幅を所定の幅に切断する。
このとき、二次電池の製造方法では、例えば、正極集電体31の搬送経路上に刃具を配設し、正極集電体31の幅方向両端部を切断する。
【0063】
これにより、二次電池の製造方法では、幅方向一端部から幅方向他端側まで正極合剤層32が形成されるとともに、幅方向他端部に正極非合剤層33が形成される正極30を製造する。
【0064】
このようなスリット加工において、正極合剤層32の幅方向一端部(正極非合剤層33が形成される側とは反対側の端部、つまり、
図8における右端部)には、前記刃具によって剪断力が付与されることとなる。
従って、正極合剤層32は、幅方向一端部の剥離強度が低い場合に、前記剪断力によって幅方向一端部を基点として、幅方向内側まで正極集電体31から剥離してしまう可能性がある。
【0065】
そこで、本実施形態の二次電池の製造方法では、正極合剤層32の幅方向両端部と正極集電体31との間に常に両端の塗布部31aを形成することで、正極合剤層32の幅方向両端部における剥離強度を向上させている。
これによれば、二次電池の製造方法は、正極集電体31を切断するときに、正極合剤層32が正極集電体31から剥離することを防止できる。
【0066】
図9に示すように、二次電池の製造方法では、正極30を製造する場合と同じ手順にて、負極40を製造する。
【0067】
このとき、二次電池の製造方法では、負極合剤粒子を含む粉体を負極集電体41に供給する。
負極合剤粒子は、負極合剤層42を構成する粒子状のものを意味し、例えば、負極活物質粒子や導電性粒子や粉末状のバインダの他に、負極活物質粒子、導電性粒子、およびバインダを含む造粒粒子、並びにこれらの混合物を意味する。
【0068】
つまり、本発明に係る合剤粒子は、正極を製造する場合、前記正極合剤粒子となり、負極を製造する場合、前記負極合剤粒子となる。
【0069】
なお、二次電池の製造方法は、正極集電体および負極集電体の少なくともいずれか一方に各塗布部を形成して、正極および負極の少なくともいずれか一方を製造すればよい。
【0070】
図10に示すように、正極30および負極40を製造した後で、二次電池の製造方法では、電極体20を製造する。
【0071】
このとき、二次電池の製造方法では、正極30、負極40、およびセパレータ50を巻取りロール91に搬送する。
そして、二次電池の製造方法では、正極30および負極40の間にセパレータ50を挟んだ状態で、正極30、負極40、およびセパレータ50を一定量だけ捲回し、刃具によって正極30、負極40、およびセパレータ50を切断する。
二次電池の製造方法では、このような正極30、負極40、およびセパレータ50を捲回したものに対してプレス加工を施して、電極体20を製造する。
【0072】
このような電極体20の製造において、正極30および負極40(特に、最も内側に捲回される部分、つまり、最初に巻取りローラに捲回される部分)は、捲回時およびプレス加工時に大きく屈曲する。
従って、各合剤層32・42は、幅方向両端部の剥離強度が低い場合に、幅方向両端部を基点として、幅方向内側まで正極集電体31から剥離してしまう可能性がある。
一方、各合剤層32・42は、その幅方向中央部において、内側の塗工部31b・41bによって幅方向両側から支えられることにより、活物質等の粒子同士の結着力だけで各集電体31・41との結着性を維持できる。
【0073】
そこで、
図8および
図9に示すように、本実施形態の二次電池の製造方法では、各合剤層32・42の幅方向両端部と各集電体31・41との間に常に両端の塗布部31a・41aを形成している。
【0074】
これによれば、二次電池の製造方法は、前記大きく屈曲する部分において、各集電体31・41および各合剤層32・42の間に、両端の塗布部31a・41aを確実に介在させることができる。
従って、二次電池の製造方法は、前記大きく屈曲する部分における各合剤層32・42の剥離強度を確保できる。
【0075】
このため、二次電池の製造方法は、電極体20を製造するときに、各集電体31・41が大きく屈曲した場合でも、各合剤層32・42の幅方向両端部を基点として、幅方向内側まで各合剤層32・42が剥離してしまうことを防止できる。
【0076】
図1に示すように、電極体20を製造した後で、二次電池の製造方法では、蓋部12に固定される集電端子61と電極体20の各非合剤層33・43とを超音波溶接によって接合する。
【0077】
このとき、電極体20は、超音波によって振動するため、各合剤層32・42の幅方向両端部を基点として、各合剤層32・42が幅方向内側まで剥離してしまう可能性がある。
【0078】
そこで、本実施形態の二次電池の製造方法では、各合剤層32・42の幅方向両端部と各集電体31・41との間に常に両端の塗布部31a・41aを形成し、各合剤層32・42の幅方向両端部における剥離強度を向上させている(
図8および
図9参照)。
【0079】
これにより、二次電池の製造方法は、電極体20および集電端子61を接合するときに、各集電体31・41から各合剤層32・42が剥離してしまうことを防止できる。
【0080】
電極体20および集電端子61を接合した後で、二次電池の製造方法では、電極体20を外装10に収納する。そして、二次電池の製造方法では、外装10の収納部11と蓋部12とを溶接によって接合する。
【0081】
二次電池の製造方法では、蓋部12に形成される孔部より電解液を注液し、電極体20に電解液を浸透させるとともに、前記孔部を封止して外装10を密閉する。
その後、二次電池の製造方法では、二次電池1の自己放電検査等を行って、正極30および負極40を有する二次電池1を製造する。
【0082】
これによれば、本実施形態の二次電池の製造方法は、各集電体31・41の切断時、正極30および負極40の捲回時、電極体20および集電端子61の溶接時に、各合剤層32・42が各集電体31・41から剥離することなく、二次電池1を製造できる。
【0083】
従って、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の剥離に起因する充放電特性の悪化を防止できる。
【0084】
また、
図8および
図9に示すように、二次電池の製造方法では、各合剤層32・42の幅方向中途部に、平面視ストライプ状の塗布部31b・41bを複数形成している。
これによれば、二次電池の製造方法は、各非塗布部31c・41cが形成される領域において各合剤層32・42を各集電体31・41上に直接形成できる。
【0085】
従って、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42を形成する領域全体に塗布部を形成した場合と比較して、二次電池1の電気抵抗の増加を抑制できる。
【0086】
つまり、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の中で、比較的高い剥離強度が求められる幅方向両端部を両端の塗布部31a・41aで常に接着して剥離強度を確保するとともに、比較的高い剥離強度が求められない幅方向中途部を内側の塗布部31b・41bで部分的に接着して導電性を確保している。
【0087】
これによれば、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の剥離強度と導電性とのバランスを最適なものとすることができる。
従って、二次電池の製造方法は、電気抵抗の増加を抑制することと、剥離強度を向上させることとを両立できる。
【0088】
このように、二次電池の製造方法において、各塗布部31a・31b・41a・41bを形成する工程では、各合剤層32・42の幅方向両端部に対応する領域に、バインダ液Aを連続して塗布して各合剤層32・42の長さ方向に連続する両端の塗布部31a・41aを形成する。
また、各塗布部31a・31b・41a・41bを形成する工程では、各合剤層32・42の幅方向両端部よりも内側の領域に、バインダ液Aを部分的に塗布して内側の塗布部31b・41bを形成するとともに、内側の塗布部31b・41bが形成されていない領域として非塗布部31c・41cを形成する。
【0089】
二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の幅方向両端部を形成する領域に常に両端の塗布部31a・41aを形成することで、両端の塗布部31a・41aによって各合剤層32・42の幅方向両端部に確実に粉体Bを付着させることができる。
【0090】
これによれば、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の幅方向両端部の位置(幅方向における各合剤層32・42の外縁部の位置)を安定させることができる。
従って、二次電池の製造方法は、各非合剤層33・43の幅の精度を向上できる。
【0091】
従って、二次電池の製造方法は、電極体20を製造するときに、各合剤層32・42を正確に対向させることができる(
図2参照)。
つまり、二次電池の製造方法は、セパレータ50を挟んで対向する各合剤層32・42の幅方向両端部の位置を正確に合わせることができる。すなわち、二次電池の製造方法は、一方の合剤層の端部が他方の合剤層の端部に対して幅方向に突出しにくくなるため、電池反応のムラをなくすことができる。
【0092】
このため、二次電池の製造方法は、電池性能を向上できる。
【0093】
ここで、本実施形態の二次電池の製造方法は、各集電体31・41の長さ方向に沿った平面視ストライプ状に各塗布部31a・31b・41a・41bを形成している。
【0094】
これによれば、二次電池の製造方法は、電極体20を製造するときに、各集電体31・41の大きく屈曲する部分において、各集電体31・41および各合剤層32・42の間に、全ての塗布部31a・31b・41a・41bを介在させることができる。
つまり、二次電池の製造方法は、各塗布部を各集電体31・41の幅方向に沿った平面視ストライプ状に形成した場合等と比較して、前記大きく屈曲する部分における剥離強度をより向上できる。
【0095】
従って、二次電池の製造方法は、電極体20を製造するときに、各集電体31・41が大きく屈曲した場合でも、各合剤層32・42が剥離してしまうことをより確実に防止できる。
【0096】
ここで、仮に、
図16に示すように、平面視略格子状の塗布部を形成する場合、ブレード74は、グラビアロール172の溝部172aを跨ぎながらグラビアロール172の外周面と接触することとなる。
この場合、ブレード74は、溝部172aを跨いでグラビアロール172の外周面と接触するときに、溝部172aに浸入したバインダ液Aに対して剪断力を付与してしまう。
溝部172aに浸入したバインダ液Aは、前記剪断力によってグラビアロール172の外周面に持ち上げられてしまう(
図16のバインダ液A近傍に示す矢印参照)。
【0097】
従って、この場合には、溝部172aの形状に沿って、正確にバインダ液Aを転写できない可能性がある。
つまり、この場合には、平面視略格子状の塗布部を正確に形成できない可能性がある。
【0098】
一方、本実施形態の二次電池の製造方法は、各集電体31・41の長さ方向に沿った平面視ストライプ状に各塗布部31a・31b・41a・41bを形成している。
このため、
図3および
図4に示すように、グラビアロール72は、各溝部72a・72bの形状がグラビアロール72の周方向、つまり、回転方向に沿った形状となる。
【0099】
従って、二次電池の製造方法は、ブレード74が各溝部72a・72bを跨ぐことがなくなる。
このため、二次電池の製造方法は、平面視略格子状の塗布部を形成する場合にあるような、溝部172aに浸入したバインダ液Aがグラビアロール172の外周面に持ち上げられてしまうことを防止できる。
【0100】
従って、二次電池の製造方法は、バインダ液Aを各集電体31・41の表面に正確に転写できる。つまり、二次電池の製造方法は、バインダ液Aをパターン通りに塗布できる。
このため、二次電池の製造方法は、電気抵抗の増加を抑制することと、剥離強度を向上させることとを、より確実に両立できる。
【0101】
このように、二次電池の製造方法において、各塗布部31a・31b・41a・41bを形成する工程では、各合剤層32・42の長さ方向に沿ったストライプ状の塗布部31a・31b・41a・41bを形成する。
【0102】
前述のように、二次電池の製造方法では、両端の塗布部31a・41aの幅を内側の塗布部31b・41bの幅よりも長くしている(
図5に示す幅D1・D2参照)。
これにより、二次電池の製造方法では、各合剤層32・42の幅方向両端部の剥離強度をより高くしている。
【0103】
これによれば、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の幅方向両端部の剥離強度をより確実に確保できるとともに、各合剤層32・42の幅方向中途部における導電性を確保できる。
【0104】
つまり、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の剥離強度と導電性とのバランスをより最適なものとすることができる。
従って、二次電池の製造方法は、電気抵抗の増加を抑制することと、剥離強度を向上させることとを、より確実に両立できる。
【0105】
このように、二次電池の製造方法において、各合剤層32・42の幅方向両端部に対応する領域に形成する両端の塗布部31a・41aの幅は、各合剤層32・42の幅方向両端部よりも内側の領域に形成する内側の塗布部31b・41bの幅よりも長い。
【0106】
次に、負極合剤層42の剥離強度を測定した結果について説明する。
【0107】
図11に示すように、測定では、負極合剤層42の幅方向両端部の剥離強度(
図11に示す符号P1参照)と、負極合剤層42の幅方向中途部の剥離強度(
図11に示す符号P2参照)とを測定した。
【0108】
測定では、負極集電体41に負極合剤層42を形成後、負極集電体41と負極合剤層42との間に負極集電体41の幅方向に沿って切り込みを入れ、負極集電体41の長さ方向に沿って、負極合剤層42を負極集電体41から引き剥がした。
測定では、このときに要した力の大きさを測定することで、本実施形態の負極合剤層42の剥離強度を測定した。
【0109】
図12および
図17に示すように、測定では、比較例として、負極集電体に平面視格子状の塗布部を形成し、負極合剤層の幅方向両端部の剥離強度(
図17に示す符号P3参照)と、負極合剤層の幅方向中途部の剥離強度(
図17に示す符号P4参照)とを測定した。
【0110】
比較例の負極合剤層の剥離強度は、幅方向両端部の剥離強度よりも、幅方向中途部の剥離強度の方が高くなった。
【0111】
これは、負極合剤層の幅方向両端部に、バインダ液が塗布されていない部分である非塗布部が形成されてしまうことによるものであると考えられる。
つまり、この場合、負極合剤層は、前記非塗布部が形成される部分において、負極活物質等の粒子同士の結着力だけで結着することとなり、その結果、前記非塗布部が形成される部分における剥離強度が低くなってしまったものと考えられる。
【0112】
一方、
図11および
図12に示すように、本実施形態の負極合剤層42の幅方向両端部の剥離強度は、本実施形態の幅方向中途部の剥離強度、および比較例の負極合剤層の幅方向両端部の剥離強度よりも高くなった。
【0113】
これは、負極合剤層42の幅方向両端部において、常に両端の塗布部41aが存在することによるものであると考えられる。
つまり、この場合には、負極合剤層42の幅方向両端部において、両端の塗布部41aの結着力によって、負極集電体41および負極合剤層42を強い力で結着できる。
従って、この場合には、負極合剤層42に対して大きな力をかけるまで、負極合剤層42が剥離しなかったものであると考えられる。
【0114】
以上のように、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の幅方向両端部に対応する領域に、各合剤層32・42の長さ方向に連続する両端の塗布部31a・41aを形成することで、各合剤層32・42の幅方向両端部における剥離強度を向上できることがわかる。
【0115】
次に、負極非合剤層43の幅を測定した結果について説明する。
【0116】
図13に示すように、測定では、比較例1として、負極集電体に平面視格子状の塗布部を形成した後で負極合剤層を形成し、負極非合剤層の幅を測定した。
測定では、比較例2として、負極集電体に平面視ドット状の塗布部を形成した後で負極合剤層を形成し、負極非合剤層の幅を測定した。
【0117】
図13においては、負極非合剤層の幅のばらつきが小さい場合に、非合剤層の幅の欄に「○」を記載した。
図13においては、負極非合剤層の幅のばらつきが大きい場合に、非合剤層の幅の欄に「×」を記載した。
【0118】
比較例1および比較例2の負極非合剤層において、その幅の測定結果は、「×」となってしまった。
これは、負極合剤層の幅方向両端部に塗布部が形成されていない領域が存在することで、前記領域に粉体を確実に付着させることができず、その結果、負極非合剤層の幅がばらついてしまったものであると考えられる。
【0119】
一方、本実施形態の負極非合剤層43において、その幅の測定結果は、「○」となった。
これは、負極合剤層42の幅方向両端部において、常に両端の塗布部41aが存在することで、負極合剤層42の幅方向両端部に確実に粉体Bを付着でき、その結果、負極非合剤層43の幅のばらつき小さくなったものであると考えられる。
【0120】
以上のように、二次電池の製造方法は、各合剤層32・42の幅方向両端部に対応する領域に、各合剤層32・42の長さ方向に連続する両端の塗布部31a・41aを形成することで、各非合剤層33・43の幅のばらつきを低減できることがわかる。
【0121】
なお、二次電池の製造方法は、各合剤層の幅方向両端部に両端の塗布を形成していればよく、必ずしも各合剤層の長さ方向に沿った平面視ストライプ状の塗布部を形成する必要はない。
例えば、
図14に示すように、二次電池の製造方法は、正極集電体31に形成する内側の塗布部として、例えば、平面視格子状の塗布部131b、平面視ドット状の塗布部231b、若しくは、平面視斜線状の塗布部331bを形成しても構わない。
【0122】
仮に、平面視斜線状の塗布部331bを形成する場合、塗布部331bの正極集電体31の長さ方向に対する傾斜角度は、45°以下であることが好ましい。
【0123】
これにより、二次電池の製造方法は、ブレードによってグラビアロールの外周面に付着したバインダ液を掻き落とすときに、グラビアロールの溝部に浸入させたバインダ液に剪断力がかかった場合でも、グラビアロールの溝部に浸入させたバインダ液が溝部の形状に沿って逃げることができる。
従って、二次電池の製造方法は、平面視斜線状の塗布部331bを正確に形成できる。
【0124】
また、
図14に示すような平面視格子状の塗布部131b、平面視ドット状の塗布部231b、若しくは、平面視斜線状の塗布部331bを形成する場合において、二次電池の製造方法は、両端の塗布部31aの幅を、各塗布部131b・231b・331bの幅よりも長くしても構わない。
これにより、二次電池の製造方法は、合剤層の剥離強度と導電性とのバランスをより最適なものとすることができるため、電気抵抗の増加を抑制することと、剥離強度を向上させることとを、より確実に両立できる。
【0125】
なお、二次電池の製造方法によって製造される電極体の種類は、本実施形態に限定されるものでない。
例えば、
図15に示すように、二次電池の製造方法は、略板状の正極430および負極440を、セパレータ450を挟んで厚み方向に積層する電極体420を製造しても構わない。
この場合には、一方の端部が正極非合剤層433と隣接するとともに、他方の端部が正極集電体431の端部となる方向、つまり、
図15における紙面左右方向が、本発明に係る合剤層の幅方向となる。また、この場合には、前記合剤層の幅方向および正極集電体430の厚み方向と直交する方向、つまり、
図15における紙面上下方向が、本発明に係る合剤層の長さ方向となる。