【実施例】
【0037】
以下に実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
【0038】
用いた賦形金型は、以下のとおりである。
賦形金型の表面形状を2液硬化型シリコーン樹脂を用いて転写し、その断面形状を顕微鏡で観察して、溝のピッチと深さを測定した。この結果、賦形金型ロールの溝の断面形状はピッチが0.4mm、深さが0.231mmの半楕円形であった。
また、得られた溝のピッチと深さから半楕円形状の溝の面積を算出し、さらに単位長さあたりの容積x(m
3/m)を算出した。この結果、xは0.14×10
−6m
3/mであった。
【0039】
得られたレンズシートは以下の方法で評価した。
(1)畝状レンズの高さ
レンズシートの押し出し方向に垂直な断面を顕微鏡で観察し、畝状レンズの頂部から谷部までの厚さ方向と平行な距離を測定した。押出幅方向の中央部にて測定したものを中央部の畝状レンズの高さとし、押出幅方向の中央部から一方の押出幅方向の端部へ600mm離れた場所にて測定したものを端部の畝状レンズの高さとした。
(2)樹脂シートの厚さ
レンズシートの押し出し方向に垂直な断面を顕微鏡で観察し、畝状レンズの谷部から第三層の表面までの距離を測定した。
(3)y/nxの算出
熱可塑性樹脂(A)の押出量Q(kg/時)、レンズシートの押出速度v(m/分)、熱可塑性樹脂(A)の比重ρ(g/cm
3)から下記式により第1層の単位長さあたりの体積y(m
3/m)を算出した。
y=Q/(60000×ρ×v)(m
3/m)
算出したyと、形成した畝状レンズの数nおよび前記算出したx(m
3/m)より、y/nxを算出した。
(4)畝状レンズのピッチ
レンズシートの押し出し方向に垂直な断面を顕微鏡で観察し、畝状レンズの頂部から隣り合う畝状レンズの頂部までの距離を測定した。
(5)畝状レンズのアスペクト比
前記(1)で測定した中央部の畝状レンズの高さを前記(4)で測定した畝状レンズのピッチで除し、アスペクト比とした。
(6)賦形率(%)
賦形金型の溝の深さに対する、前記(1)で測定した中央部および端部の畝状レンズの高さの百分率を求めて中央部および端部の賦形率(%)とした。
(7)第3層の厚さ
シートの押し出し方向に垂直な断面を顕微鏡で観察して測定した。押出幅方向の中央部にて測定したものを中央部の第3層の厚さとし、押出幅方向の中央部から一方の押出幅方向の端部へ600mm離れた場所にて測定したものを端部の第三層の厚さとした。
【0040】
図2は、実施例および比較例で使用した押出成形機1の概略図である。押出成形機1は図示しない押出スクリュー部と、多層押出T型マルチマニホールドダイ2、押付金型ロール31、賦形金型ロール32、冷却ロール33、34からなる。賦形金型ロール32の表面にはロールの外周に沿って延びる溝が3250本設けられている。
押付金型ロール31、冷却ロール33、34の表面は滑らかである。多層押出T型マルチマニホールドダイ2の溶融樹脂吐出部から溶融した帯状の樹脂が下方に吐出される。押付金型ロール31と賦形金型ロール32とは溶融樹脂を挟むように対向して互いに平行に、水平に配置される。冷却ロール33、34は押付金型ロール31および賦形金型ロール32と平行に、それぞれの回転軸が同一平面に位置するように配置される。
【0041】
実施例および比較例では次のアクリル樹脂(a)およびアクリル樹脂(b)を用いた。
アクリル樹脂(a):(株)クラレ製、「パラペットGH」、MFR=10(ISO1133に準じ、230℃、荷重37.3Nで測定されたカタログ値)、荷重たわみ温度=95℃(ISO75−2に準じ、アニール有り、荷重1.82MPaで測定されたカタログ値)、比重1.19。
アクリル樹脂(b):(株)クラレ製、「パラペットEH」、MFR=1.3g/10分(ISO1133に準じ、230℃、荷重37.3Nで測定されたカタログ値)、荷重たわみ温度=93℃(測定条件:ISO75−2に準じ、アニール有り、荷重1.82MPaで測定されたカタログ値)、比重1.19。
【0042】
実施例1
押出成形機にアクリル樹脂(a)およびアクリル樹脂(b)を仕込み、アクリル樹脂(a)を260℃、アクリル樹脂(b)を245℃に加熱し、溶融樹脂が吐出される押出幅方向の長さが約1500mmの多層押出T型マルチマニホールドダイ内で、アクリル樹脂(a)、アクリル樹脂(b)、アクリル樹脂(a)の順に積層し、アクリル樹脂(a)を第1層、アクリル樹脂(b)を第2層、アクリル樹脂(a)を第3層とする溶融状態の複層シートを押し出した。アクリル樹脂(a)(第1層および第3層)の押出量はそれぞれ20kg/時、アクリル樹脂(b)(第2層)の押出量は200kg/時とした。
次いで、かかる溶融状態の複層シートを、3mm離間して互いに平行に配置した押付金型ロール31と賦形金型ロール32との間に供給してレンズ形状を賦形し、次いで冷却ロール33、34に密着させ、表面に複数の畝状レンズを配列したシート成形品を得た。シート成形品の幅はおよそ1.4(m)であった。
押付金型ロール31の表面温度は80℃、賦形金型ロール32の表面温度は100℃、冷却ロール33の表面温度は100℃、冷却ロール34の表面温度は70℃、レンズシートの押出速度は0.8m/分であった。
y/nxの値は0.750となった。
【0043】
得られたシート成形品を押出方向と垂直に1.3mの長さで切断した。また、押出方向に平行な押出幅方向の両端を均等な幅ずつ切断して、幅1.3mとして、レンズシートとした。
【0044】
以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.8mm、中央部の畝状レンズの高さは0.16mm、端部の畝状レンズの高さは0.159mm、畝状レンズのアスペクト比は0.400、中央部および端部の賦形率は69%であった。中央部の第3層の厚さは0.136mm、端部の第3層の厚さは0.135mmだった。
【0045】
実施例2
アクリル樹脂(a)(第1層および第3層)の押出量をそれぞれ28.8kg/時、アクリル樹脂(b)(第2層)の押出量を182.3kg/時とした以外は実施例1と同様にしてレンズシートを製造した。この結果、y/nxは1.081となった。以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.8mm、中央部の畝状レンズの高さは0.164mm、端部の畝状レンズの高さは0.162mm、畝状レンズのアスペクト比は0.410、中央部の賦形率は71%、端部の賦形率は70%であった。中央部の第3層の厚さは0.196mm、端部の第3層の厚さは0.194mmだった。
【0046】
実施例3
アクリル樹脂(a)(第1層および第3層)の押出量をそれぞれ32kg/時、アクリル樹脂(b)(第2層)の押出量を176kg/時とした以外は実施例1と同様にしてレンズシートを製造した。この結果、y/nxは1.230となった。以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.8mm、中央部および端部の畝状レンズの高さは0.177mm、畝状レンズのアスペクト比は0.443、中央部および端部の賦形率は77%であった。中央部の第3層の厚さは0.223mm、端部の第3層の厚さは0.222mmだった。
【0047】
実施例4
アクリル樹脂(a)(第1層および第3層)の押出量をそれぞれ36.8kg/時、アクリル樹脂(b)(第2層)の押出量を164.4kg/時とした以外は実施例1と同様にしてレンズシートを製造した。この結果、y/nxは1.379となった。以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.8mm、中央部の畝状レンズの高さは0.164mm、端部の畝状レンズの高さは0.166mm、畝状レンズのアスペクト比は0.410、中央部の賦形率は71%、端部の賦形率は72%であった。中央部および端部の第3層の厚さは0.25mmだった。
【0048】
実施例5
アクリル樹脂(a)(第1層および第3層)の押出量をそれぞれ51.5kg/時、アクリル樹脂(b)(第2層)の押出量を137kg/時とした以外は実施例1と同様にしてレンズシートを製造した。この結果、y/nxは1.930となった。以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.8mm、中央部の畝状レンズの高さは0.156mm、端部の畝状レンズの高さは0.157mm、畝状レンズのアスペクト比は0.390、中央部および端部の賦形率は68%であった。中央部の第3層の厚さは0.35mm、端部の第3層の厚さは0.348mmだった。
【0049】
比較例1
押出成形機にアクリル樹脂(b)を仕込み、245℃に加熱し、押出量240kg/時でT型マルチマニホールドダイから溶融状態のシートを押し出した。次いで、かかる溶融状態のシートを、3mm離間して互いに平行に配置した押付金型ロール31と賦形金型ロール32との間に供給してレンズ形状を賦形し、次いで冷却ロール33、34に密着させ、表面に複数の畝状レンズを配列したレンズシートを製造した。押付金型ロール31の表面温度は80℃、賦形金型ロール32の表面温度は100℃、冷却ロール33の表面温度は100℃、冷却ロール34の表面温度は70℃、レンズシートの押出速度は0.8m/分であった。
以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.9mm、中央部および端部の畝状レンズの高さは0.100mm、畝状レンズのアスペクト比は0.250、中央部および端部の賦形率は43%であった。
【0050】
比較例2
アクリル樹脂(b)の押出量を160kg/時とし、押付金型ロール31と賦形金型ロール32との間を2mm離間して互いに平行に配置した以外は、比較例1と同様にしてレンズシート4を製造した。
以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは1.9mm、中央部および端部の畝状レンズの高さは0.150mm、畝状レンズのアスペクト比は0.375、中央部および端部の賦形率は65%であった。
【0051】
比較例3
アクリル樹脂(a)(第1層および第3層)の押出量をそれぞれ5.9kg/時、アクリル樹脂(b)(第2層)の押出量を228.2kg/時とした以外は実施例1と同様にしてレンズシートを製造した。この結果、y/nxは0.221となった。以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.9mm、中央部の畝状レンズの高さは0.115mm、端部の畝状レンズの高さは0.113mm、畝状レンズのアスペクト比は0.288、中央部の賦形率は50%、端部の賦形率は49%であった。中央部および端部の第3層の厚さは0.040mmだった。
【0052】
比較例4
アクリル樹脂(a)(第1層および第3層)の押出量をそれぞれ88.2kg/時、アクリル樹脂(b)(第2層)の押出量を63.5kg/時とした以外は実施例1と同様にしてレンズシートを製造した。この結果、y/nxは3.309となった。以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.9mm、中央部および端部の畝状レンズの高さは0.112mm、畝状レンズのアスペクト比は0.280、中央部および端部の賦形率は48%であった。中央部の第3層の厚さは0.600mm、端部の第3層の厚さは0.597mmだった。
【0053】
比較例5
アクリル樹脂(b)に代えてアクリル樹脂(a)を使用し、260℃に加熱して押し出した以外は比較例1と同様にしてレンズシートを製造した。T型マルチマニホールドダイから押し出された溶融状態のシートが頻繁に破断して安定的な製造ができなかった。また、得られたレンズシートは畝状レンズの形状が不均一で実用に耐えるものではなかった。
【0054】
比較例6
多層押出T型マルチマニホールドダイを多層押出T型フィードブロックダイに変えた以外は実施例3と同様にしてレンズシートを製造した。この結果、y/nxは1.230となった。以上のようにして得たレンズシートの畝状レンズのピッチは0.4mm、樹脂シートの厚さは2.8mm、中央部の畝状レンズの高さは0.165mm、端部の畝状レンズの高さは0.114mm、畝状レンズのアスペクト比は0.413、中央部の賦形率は71%、端部の賦形率は49%であった。中央部の第3層の厚さは0.230mm、端部の第3層の厚さは0.088mmだった。
【0055】
実施例および比較例で得られたレンズシートのy/nxの値および畝状レンズの高さ、アスペクト比、賦形率などを表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜5および比較例3、4で得られたレンズシートにおける畝状レンズの中央部の賦形率とy/nxとの関係を
図1に示す。
図1中のE1〜E5は順に実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5について示しており、C3、C4は、それぞれ比較例3、比較例4について示している。
図1および表1から、実施例1〜5で得られたレンズシートは比較例3および4で得られたレンズシートに比べて、賦形率および畝状レンズのアスペクト比が高いことが分かる。
また比較例1および2から、アクリル樹脂(b)のみで作製したレンズシートは、賦形率および畝状レンズのアスペクト比が低く、特に樹脂シートの厚さが厚い場合にその傾向が大きいことが分かる。
また比較例5から、アクリル樹脂(a)のみで作製したレンズシートは安定的に生産できず、レンズの形状も不均一となることが分かる。
また比較例6から、マルチマニホールドダイを使用しなかったレンズシートはアクリル樹脂(a)からなる層の厚さが押出幅方向で差があり、賦形率が不均一となることが分かる。
以上の結果から、本発明のレンズシートの製造方法によれば、樹脂シートの厚さが3.0mmと厚い場合であっても高い賦形率を実現でき、畝状レンズのアスペクト比が高いレンズシートが得られることが分かる。