特許第6047045号(P6047045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047045
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】輪郭測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/012 20060101AFI20161212BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G01B5/012
   G01B5/20 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-62339(P2013-62339)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185985(P2014-185985A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】中野 光久
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 英樹
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−077437(JP,A)
【文献】 特開2007−003336(JP,A)
【文献】 特開2004−003944(JP,A)
【文献】 特開昭62−215814(JP,A)
【文献】 特開2000−193447(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1353215(EP,A2)
【文献】 特開2009−264818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 − 7/34
G01B 11/00 − 11/30
G01B 21/00 − 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にスタイラスを有しかつ筐体に対して揺動自在であるアームと、前記アームの揺動範囲内の姿勢を変更する姿勢変更機構と、前記アームが揺動範囲内で被測定物の設置部に接近したときに前記アームに接触するストッパと、電源オフ指令に基づいて前記姿勢変更機構を動作させて前記アームを前記ストッパに接触する機械的限界位置に復帰させる制御装置とを備えたことを特徴とする輪郭測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の輪郭測定機において、
前記アームの変位を検出するインクリメンタル型の検出器を備えており、前記制御装置は、電源投入時のアーム位置を原点として設定するように構成されたことを特徴とする輪郭測定機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の輪郭測定機において、
前記機械的限界位置にある前記アームの前記スタイラスを覆うカバー部材をさらに備えたことを特徴とする輪郭測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪郭測定機に関し、被測定物の輪郭形状を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の表面、輪郭形状や表面粗さなどの性状を測定するために、表面性状測定機が利用されている。表面性状測定機は、アームの先端のスタイラスで被測定物の表面をなぞり、その際のスタイラスの変位により表面各位置の凹凸を検出してデータとして取り込むものである。このような表面性状測定機として、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭測定機が用いられている。
【0003】
輪郭測定機では、検出部として、先端にスタイラスを有するアームと、アームを軸受により揺動自在に支持する支持機構と、アームの姿勢を変更してその揺動範囲内の任意位置に保持する姿勢変更機構と、スタイラスが所定の測定力で被測定物と接触するようにアームを付勢する測定力付与機構と、アームの揺動を検出する検出器とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
特許文献1においては、姿勢変更機構として、アームのスタイラスと反対側端部近傍に当接するカム機構が利用されている。また、測定力付与機構においては、アームを揺動方向に付勢する付勢手段として、例えば一端が支持機構近傍に固定されかつアームの軸と平行に配置されたコイルばね等が用いられている。
【0004】
このような輪郭測定機においては、スタイラスが被測定物近接側で被測定物の表面に接触する状態(測定位置)にアームを揺動自在に配置し、スタイラスを被測定物の表面に沿って相対移動させることで、被測定物の輪郭形状の測定を行う。
被測定物の設置や取り出しの際には、姿勢変更機構によりアームを被測定物から離れた位置へと待避させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−77437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の輪郭測定機においては、測定作業の後に電源オフにすると、アームを含む各部は電源オフ直前の状態で停止する。
アームは、前述のように被測定物の取り扱いのために、被測定物(またはその設置部)から離れた姿勢をとることもあり、この状態で停止した場合、アームと被測定物の設置部との間隔が広げられたままの状態となる。
間隔が広げられたままの状態で停止していると、この間隔(スタイラスおよびアームと、被測定物あるいはその設置部との間)に異物が入り込んだり作業者が誤って触れるなどして、外力によりスタイラスが折損あるいは欠損する可能性があるという問題がある。
スタイラスが欠損しなかったとしても、アームが少しでも曲がるなどの損傷を受けた場合には、被測定物の高精度な測定が行えなくなるため、アームの交換作業が必要となり、運用コストも上昇する。
【0007】
このような停止状態への対策として、輪郭測定機を操作する作業者に、作業終了後の電源オフの際に、スタイラスおよびアームを被測定物の設置部に接近させる操作を行うように注意喚起がなされている。
しかし、これは人為的作業に依拠するだけであるため、注意喚起を行っても作業者の操作忘れなどにより履行されないことがあり、解決には至っていない。
【0008】
ところで、輪郭測定機のアームの揺動変位を検出する検出器としては、アブソリュート型のものとインクリメンタル型のものとがある。インクリメンタル型のものは、アブソリュート型のものに比べて安価なので、よく利用される。
しかし、インクリメンタル型の検出器では、電源投入時毎に原点復帰動作が不可欠であるため、処理軽減、時間短縮が図り難いという問題がある。
【0009】
本発明の主な目的は、外力によるスタイラスの欠損やアームの損傷を防止できる輪郭測定機を提供することにある。また、本発明の他の目的は、インクリメンタル型の検出器を用いても、始動時の原点復帰動作を不要にできる輪郭測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の輪郭測定機は、先端にスタイラスを有しかつ筐体に対して揺動自在であるアームと、前記アームの揺動範囲内の姿勢を変更する姿勢変更機構と、前記アームが揺動範囲内で被測定物の設置部に接近したときに前記アームに接触するストッパと、電源オフ指令に基づいて前記姿勢変更機構を動作させて前記アームを前記ストッパに接触する機械的限界位置に復帰させる制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このような本発明によれば、電源オフ時にはアームが機械的限界位置へと自動的に復帰されるため、スタイラスと被測定物の設置部との間隔を狭めておくことができる。特に、アームが被測定物の設置部に最も接近した機械的限界位置に復帰されると、スタイラスと被測定物の設置部との間隔を最小限にすることができる。したがって、これらの間に異物が介在し、また、人が不意に触れてしまう可能性を大幅に低減でき、外力によるスタイラスの欠損やアームの損傷を防止することができる。
また、スタイラスの欠損やアームの損傷に伴う交換作業をなくせるとともに、運用コストの上昇を回避でき、作業者に電源を切る際の注意喚起を行う必要もなくすことができる。
【0012】
本発明の輪郭測定機において、前記アームの変位を検出するインクリメンタル型の検出器を備えており、前記制御装置は、電源投入時のアーム位置を原点として設定するように構成されていることが好ましい。
このような本発明によれば、インクリメンタル型の検出器を用いても、電源投入時のアーム位置、すなわち、機械的限界位置をそのまま原点として設定することで、始動時の原点復帰動作を不要にできる。したがって、処理軽減、時間短縮できる。
【0013】
本発明の輪郭測定機において、前記機械的限界位置にある前記アームの前記スタイラスを覆うカバー部材をさらに備えていることが好ましい。
このような本発明によれば、電源オフ時に、カバー部材によってスタイラスを保護することができ、これにより、意図しない外力がスタイラスに加わることを、より確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外力によるスタイラスの欠損やアームの損傷を防止できる輪郭測定機を提供することができる。また、本発明によれば、インクリメンタル型の検出器を用いても、始動時の原点復帰動作を不要にできる輪郭測定機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係る輪郭測定機を示す正面図。
図2】前記第一実施形態に係る輪郭測定機を示す側面図。
図3】前記第一実施形態の要部を示す拡大模式図。
図4】前記第一実施形態の原点復帰動作のステップを示すフロー図。
図5】本発明の第二実施形態に係る輪郭測定機のカバー部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第一実施形態〕
図1から図4には、本発明の第一実施形態が示されている。
図1および図2において、輪郭測定機1は、ワーク(被測定物)Wの設置部としてのテーブル2に載置されたワークWの輪郭形状を測定するものである。
図3において、輪郭測定機1は、先端3にスタイラス(触針)4を有したアーム7と、姿勢変更機構として設けられたアームリフタ8と、アーム7を止めるストッパ15と、アームリフタ8を制御する制御装置9とを備えている。
【0017】
また、輪郭測定機1は、アーム7の変位を検出するインクリメンタル型の検出器10と、ワークWに接近する方向の力をアーム7に発生させてスタイラス4をワーク表面Sに接触させる測定力付与機構11とを備えている。
ワークWのX−Z平面での輪郭形状の測定動作は、測定位置P2に配置されたアーム7に設けられたスタイラス4を、ワーク表面Sに接触させた状態で測定方向(本実施形態ではX軸方向)に移動させる。この移動に伴うアーム7の揺動に基づいてスタイラス4のZ軸方向の変位を検出することによって行なわれる。
【0018】
本実施形態では、図3中、下方に揺動してストッパ15に接触したときのアーム7の最下限の位置、すなわち、機械的限界位置を休止位置P1とする。この位置で、スタイラス4はテーブル2に最も接近した状態となる。
測定位置P2は、揺動自在状態にあるアーム7のスタイラス4がワーク表面Sに接触したときの位置であり、休止位置P1よりもやや上方の位置である。
中間位置P3は、アーム7の揺動範囲における中間の位置であり、測定位置P2よりも上方であり、アーム7が水平方向に延びた状態となる位置である。
離反位置P4は、揺動範囲でワークWから離れたアーム7の位置であり、中間位置P3よりも上方の位置である。
【0019】
スタイラス4は、全体として丸棒状であるが、その先端は片角形状に形成され、材質は超硬合金で形成され、摩耗耐久性および低摩擦性が確保されている。
筐体6は、支持体12により支持され、支持体12に設置された送り機構13によりX軸方向へ移動可能である。この筐体6には電源オフスイッチ34が設けられている。
なお、電源オフスイッチ34は、必ずしも筐体6に設けられている必要はなく、輪郭測定機1の任意の部位に設置されていればよい。
【0020】
支持体12は、テーブル2上にまたはテーブル2に隣接して設置されたZ軸方向に延びたコラム14により支持されている。支持体12は、コラム14に沿ってZ軸方向に昇降可能とされている。あるいは、輪郭測定機1は、コラム14を用いず、テーブル2の近傍に支持体12を並べて設置された構成としてもよく、スタイラス4がワーク表面Sに接触でき、かつX軸方向の移動が実行できるものであればよい。
【0021】
送り機構13は、前述した測定動作を行うために筐体6を支持体12に対して移動させるものである。送り機構13には、X軸方向に延びるボールねじ等を利用した機械式の精密送り機構などが利用でき、直線移動および高精度の配置が可能なもの、例えばリニアモータ等を利用してもよい。
【0022】
アーム7は、X軸方向に延びたアーム基部21およびアーム本体部24と、アーム基部21とアーム本体部24とを連結する連結具23とを有している。アーム基部21は、筐体6の内部に支持軸5を介して揺動自在に支持されている。連結具23は、アーム基部21の露出端22に設けられているとともに、アーム本体部24の筐体6側の端部が連結されている。アーム本体部24は、先端3にスタイラス4が着脱自在に装着されている。スタイラス4は、先端3から下向きに突出している。
【0023】
アーム基部21は、支持軸5によって筐体6に対してR方向に回動自在に支持されており、その後端25は、アーム7のR方向の回動、すなわち、揺動とともにZ軸方向に変位する。
アーム本体部24は、連結具23に着脱自在に連結されており、これにより、筐体6の外部に位置するアーム本体部24を簡単に交換することが可能である。
支持軸5は、転がり軸受あるいは低摩擦材料を用いた滑り軸受で構成され、X軸およびZ軸に直交するY軸方向の軸線に沿って配置されている。
【0024】
アームリフタ8は、本発明を構成する姿勢変更機構であり、カム機構33によって構成されている。
カム機構33は、電動モータ等からなる回転装置32と、回転装置32の軸に偏心して連結されたカム31とを有している。カム31は、支持軸5を挟んでスタイラス4の反対側(後端25側)でアーム基部21に接触している。カム31は、その初期位置ではアーム7に対して非接触であり、回転装置32の回転により縁部でアーム7に接触し、さらなる回転でアーム7をワークWから離反揺動させる。この離反揺動によりアーム7を揺動範囲内で任意位置に配置することができ、例えば、アーム7を中間位置P3や離反位置P4などに配置することができる。本実施形態では、離反位置P4や中間位置P3に配置されたアーム7のワークWへの接近揺動はカム31によって拘束される。
【0025】
また、カム31が初期位置にある際には、アーム7は揺動範囲のすべてで揺動自在となる。この場合、アーム7は、測定力付与機構11に付勢されてワークWに対して接近揺動し、スタイラス4がワークWに接触したときに測定位置P2に配置される。テーブル2上にワークWがない場合、アーム7はストッパ15に接触する休止位置P1に配置される。
【0026】
アームリフタ8は、制御装置9の制御に基づいて、アーム7を休止位置P1、離反位置P4、中間位置P3および測定位置P2の各々に配置する。
測定時には、スタイラス4がテーブル2に設置されたワークWのワーク表面Sに接触し、この接触によりアーム7のワークWへの接近揺動は阻止される。この場合、アーム7は、休止位置P1に至ることなく、測定位置P2に配置されることとなる。
【0027】
検出器10は、支持軸5を挟んでスタイラス4とは反対側(後端25側)に設置され、アーム基部21の特定部位のZ軸方向の変位を検出する。これにより、アーム基部21の回動角度を検出することができる。そして、検出した回動角度およびスタイラス4と支持軸5との距離から、アーム7およびスタイラス4のR方向の揺動変位およびZ軸方向の変位を演算することができる。これらの信号処理および演算は、制御装置9の処理プログラムにより実行される。
また、検出器10は、輪郭測定機1の電源投入時にアーム7が存する位置を原点として設定するように構成されている。電源投入時には、アーム7は休止位置P1に配されているので、検出器10に設定される原点は休止位置P1となる。
【0028】
測定力付与機構11は、コイルばねで構成された機械式の付勢手段であり、支持軸5を挟んでスタイラス4とは反対側に設置され、筐体6とアーム基部21との間に掛け渡されている。
この測定力付与機構11により、アーム基部21の後端25がZ軸方向上向きに付勢され、反対側(先端3側)においてはアーム本体部24およびスタイラス4が同方向下向きに付勢されることになり、これによりスタイラス4がワーク表面Sに対して所定の測定力で接触する状態とされる。
【0029】
制御装置9は、アームリフタ8、検出器10、送り機構13に接続されている。
制御装置9は、CPU(中央処理装置)やメモリ(記憶装置)、入力装置を有するパーソナルコンピュータ等によって構成され、予め記録された動作プログラムに基づいて送り機構13およびアームリフタ8の動作を制御する。
制御装置9は、後述の測定動作を制御するためのメインルーチンと後述の原点復帰動作を制御するためのサブルーチンとを備えている。制御装置9は、サブルーチンを実行する原点復帰モードに設定されている場合にこのサブルーチンを実行する。原点復帰モードの設定は、入力装置の操作等に基づいて制御装置9に予め設定されている。
【0030】
本実施形態の輪郭測定機1においては、制御装置9の制御のもとで測定動作を行う。
測定にあたっては、アームリフタ8によりアーム7を離反位置P4に配置した状態において、ワークWをテーブル2上に載置する。その後、アームリフタ8によりアーム7をワークWに接近させるようにR方向に揺動させ、ワーク表面Sにスタイラス4が接触した状態となるように筐体6を配置する。このとき、アーム7は測定位置P2に揺動自在に配置された状態となる。
そして、制御装置9からメインルーチンに基づく制御信号を送り、送り機構13によりアーム7をX軸方向へ移動させながら、検出器10からの検出信号を記録していくことで、X軸方向に沿ったZ軸変位としてワーク表面Sの形状測定が行われる。
【0031】
制御装置9は、前述の測定動作の制御の他にも、アーム7を休止位置P1に復帰させるアームリフタ8による原点復帰動作を制御する。この制御は、図4のフロー図に示す各ステップに沿って実行される。
【0032】
まず、制御装置9は、電源オフスイッチ34の操作や入力装置の入力操作等によって生起された電源オフ指令を受信すると、この受信時において原点復帰モードにあるか否かを判断する(ステップS1)。
【0033】
ステップS1において原点復帰モードにあると判断した場合には、サブルーチンを実行し、アーム7が休止位置P1までR方向に揺動自在状態となるようにカム31を初期位置まで回転させる。これにより、アーム7の自重ないし測定力付与機構11の測定力に基づく休止位置P1への原点復帰動作を行わせる(ステップS2)。
【0034】
ステップS2における原点復帰動作後、検出器10の検出に基づいて、アーム7が休止位置P1にあるか否か、換言すれば、スタイラス4が機械的な最下限にあるか否かを判断する(ステップS3)。
ステップS3においてアーム7が休止位置P1にないと判断した場合には、このステップS3の判断を再度行う。この再判断は、所定時間ごとに行われてもよく、また、随時行われてもよい。
【0035】
ステップS3においてアーム7が休止位置P1にあると判断した場合には、サブルーチンを終了し、電源をシャットダウンする(ステップS4)。
なお、ステップS1において原点復帰モードにないと判断した場合には、サブルーチンを実行させることなく、ステップS4で電源をシャットダウンする。
【0036】
前述の各ステップを経て電源をシャットダウンすることにより、電源投入時にはアーム7は常に休止位置P1にあることとなる。この結果、電源投入時に起動される検出器10は、アームリフタ8によりアーム7を揺動させることなく、休止位置P1を原点として速やかに設定(ゼロリセット)することができる。
【0037】
なお、前述のサブルーチンは、ソフトウエアによって具現化されるのが適用範囲を広げられるので好ましいが、これに限られず、例えばファームウエアで具現化されてもよい。
【0038】
以上の輪郭測定機1によれば、制御装置9により、電源オフ指令に基づいてアームリフタ8を動作させてアーム7を休止位置P1へと自動的に復帰させるため、スタイラス4とテーブル2との間隔を自動的に狭めておくことができる。ここで、休止位置P1はアーム7がテーブル2に最も接近した機械的限界位置であるため、スタイラス4とテーブル2との間隔を最小限にまで狭めておくことができる。
したがって、スタイラス4とテーブル2との間に異物が介在され、また、人が不意に触れてしまって、スタイラス4やアーム7に意図しない外力が加わる可能性を大幅に低減でき、外力によるスタイラス4の欠損やアーム7の損傷を防止することができる。
【0039】
また、スタイラス4の欠損やアーム7の損傷に伴う交換作業をなくせるとともに、運用コストの上昇を回避できる。さらに、作業者に電源を切る際の注意喚起を行う必要もなくすことができる。
さらに、輪郭測定機1によれば、インクリメンタル型の検出器10を用いても、電源投入時のアーム位置、すなわち、休止位置P1をそのまま原点として設定するため、始動時の原点復帰動作を不要にでき、処理軽減、時間短縮できる。
【0040】
〔第二実施形態〕
本発明の第二実施形態に係る輪郭測定機1は、例えば図5に示すように、休止位置P1にあるアーム7のスタイラス4を覆うカバー部材41をさらに備えている。
なお、本実施形態において、第一実施形態と同様な構成については同じ符号を用い、重複する説明は省略する。
カバー部材41は、テーブル2に着脱自在であり、ワークWの取り出し後にテーブル2上に設置され、休止位置P1にあるアーム7のスタイラス4を覆うように構成されている。
図5に示したカバー部材41は、平面視U字状であり、その上方からスタイラス4が出し入れ可能であるが、この形状に限定されず、例えば、テーブル2に設置されるバイスやV状ブロック等によって具現化されてもよい。この場合、スタイラス4をバイスの隙間やV状ブロックの溝等に配置することで、スタイラス4を保護することができる。
【0041】
本実施形態の輪郭測定機1によれば、前述の作用効果に加えて、カバー部材41により、休止位置P1にあるアーム7のスタイラス4を覆うことで、電源オフ時に、カバー部材41によってスタイラス4を保護することができる。これにより、意図しない外力がスタイラス4に加わることをより確実に防止することができる。
【0042】
〔変形例〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での変形等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、離反位置P4は、アーム7が筐体6の上方縁部に接触する位置、すなわち、機械的な最上限の位置に設定されてもよい。この場合には、アーム7の揺動範囲を最大限利用することができる。
【0043】
前記実施形態では、アームリフタ8は、カム機構33に代えて、例えば進退自在部材の進退によりアーム7にワークWから離反するR方向の揺動力に基づいて配置する進退機構を備えていてもよく、また、リニアモータ機構を用いた機構を備えていてもよい。さらに、アーム7をR方向に付勢するボイスコイルを含んだ機構であってもよい。
揺動方向(R方向)については、本実施形態では上下方向であるが、水平方向であってもよく、また、上下方向や水平方向以外の斜め方向であってもよい。
【0044】
前記実施形態では、スタイラス4は下方に突出しているが、ワーク表面Sの輪郭形状を測定できるように構成されていればよいのであり、この範囲内において、例えば、上方または水平方向に突出していてもよく、また、上下方向や水平方向以外の斜め方向へ突出していてもよい。
【0045】
前記実施形態では、検出器10は、アーム基部21の任意の部位で変位を検出できればよく、変位検出は、差動コイル等の電磁的な方式のほか、光学的な変位検出等を利用することもできる。
前記実施形態では、測定力付与機構11は、付勢手段としてコイルばね等の機械的な弾性部材に限らず、他のエラストマ材料を用いたものであってもよく、さらに電磁気的に測定力を発生させるもの、あるいは重力バランスにより測定力を発生させるものであってもよい。また、測定力付与機構11の設置部位は、所定の測定力を付与できれば、アーム7の任意の場所であってよい。
前記実施形態では、ストッパ15を構成している筐体6の下方の縁部には、面取りが施されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭測定機に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1…輪郭測定機、2…被測定物の設置部としてのテーブル、3…先端、4…スタイラス、5…支持軸、6…筐体、7…アーム、8…姿勢変更機構としてのアームリフタ、9…制御装置、10…検出器、11…測定力付与機構、12…支持体、13…送り機構、14…コラム、15…ストッパ、21…アーム基部、22…露出端、23…連結具、24…アーム本体部、25…後端、31…カム、32…回転装置、33…カム機構、P1…休止位置、P2…測定位置、P3…中間位置、P4…離反位置、S…ワーク表面、W…被測定物としてのワーク、34…電源オフスイッチ、41…カバー部材。
図1
図2
図3
図4
図5