(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記彩度強調処理EPxは、前記第1範囲内の座標が示す動径と、前記第2範囲内の座標が示す動径とを、それぞれ、前記第1境界線から離れるように、変更する請求項1記載の医用画像処理装置。
前記第1範囲内の座標と前記第2範囲内の座標とを含む動径変更範囲は、前記第1境界線から一定の範囲である動径変更範囲Rxと前記動径変更範囲Rxを超える範囲である動径変更範囲Ryからなり、前記動径変更範囲Ryでの動径変化率Wyを、前記動径変更範囲Rxでの動径変化率Wxよりも小さくする請求項2記載の医用画像処理装置。
前記彩度強調処理EPxは、前記動径変更範囲Rx内の動径を、「1」よりも大きい前記動径変化率Wxで変化させる動径用の拡張処理と、前記動径変更範囲Ry内の動径を、「1」よりも小さい前記動径変化率Wyで変化させる動径用の圧縮処理とを含む請求項3記載の医用画像処理装置。
前記彩度強調処理部は、前記特徴空間において、前記第1境界線と異なる第2境界線に対して、一方側にある前記第1範囲と他方側にある第3範囲との彩度の差を大きくする彩度強調処理EPyを行う請求項1ないし4いずれか1項記載の医用画像処理装置。
前記第1カラー画像信号は3色の画像信号であり、前記複数の色情報は、前記3色の画像信号のうち2色の画像信号間の第1信号比と、前記第1信号比と異なる2色の画像信号間の第2信号比であり、前記特徴空間は前記第1信号比と前記第2信号比で形成される信号比空間である請求項1ないし5いずれか1項記載の医用画像処理装置。
前記彩度強調処理EPxは、前記HS空間において、前記第1範囲の座標と前記第2範囲内の座標が、それぞれ前記第1境界線から離れるように、前記第1範囲の座標と前記第2範囲の座標を彩度方向に移動させる請求項10記載の医用画像処理装置。
前記彩度強調処理部は、前記HS空間において、前記第1境界線と異なる第2境界線に対して、一方側にある前記第1範囲と他方側にある第3範囲と彩度の差を大きくする彩度強調処理EPyを行う請求項10又は11記載の医用画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、モニタ18と、コンソール19とを有する。内視鏡12は光源装置14と光学的に接続されるとともに、プロセッサ装置16と電気的に接続される。内視鏡12は、被検体内に挿入される挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けられた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けられる湾曲部12c及び先端部12dを有している。操作部12bのアングルノブ12eを操作することにより、湾曲部12cは湾曲動作する。この湾曲動作に伴って、先端部12dが所望の方向に向けられる。
【0017】
また、操作部12bには、アングルノブ12eの他、モード切替SW13aが設けられている。モード切替SW13aは、通常観察モードと、第1特殊観察モードと、第2特殊観察モードの3種類のモード間の切り替え操作に用いられる。通常観察モードは、通常画像をモニタ18上に表示するモードである。第1特殊観察モードは、ピロリ菌の除菌が成功したか否かを判断する場合に用いられ、第1特殊画像をモニタ18上に表示するモードである。第2特殊観察モードは、ピロリ菌に感染しているか否かを判断する場合に用いられ、第2特殊画像をモニタ18上に表示するモードである。
【0018】
プロセッサ装置16は、モニタ18及びコンソール19と電気的に接続される。モニタ18は、画像情報等を出力表示する。コンソール19は、機能設定等の入力操作を受け付けるUI(User Interface:ユーザーインターフェース)として機能する。なお、プロセッサ装置16には、画像情報等を記録する外付けの記録部(図示省略)を接続してもよい。
【0019】
図2に示すように、光源装置14は、V-LED(Violet Light Emitting Diode)20a、B-LED(Blue Light Emitting Diode)20b、G-LED(Green Light Emitting Diode)20c、R-LED(Red Light Emitting Diode)20d、これら4色のLED20a〜20dの駆動を制御する光源制御部21、及び4色のLED20a〜20dから発せられる4色の光の光路を結合する光路結合部23を備えている。光路結合部23で結合された光は、挿入部12a内に挿通されたライトガイド(LG)41及び照明レンズ45を介して、被検体内に照射される。なお、LEDの代わりに、LD(Laser Diode)を用いてもよい。
【0020】
図3に示すように、V-LED20aは、中心波長405±10nm、波長範囲380〜420nmの紫色光Vを発生する。B-LED20bは、中心波長460±10nm、波長範囲420〜500nmの青色光Bを発生する。G-LED20cは、波長範囲が480〜600nmに及ぶ緑色光Gを発生する。R-LED20dは、中心波長620〜630nmで、波長範囲が600〜650nmに及ぶ赤色光Rを発生する。
【0021】
光源制御部21は、通常観察モード、第1特殊観察モード、及び第2特殊観察モードのいずれの観察モードにおいても、V-LED20a、B-LED20b、G-LED20c、R-LED20dを点灯する。したがって、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rの4色の光が混色した光が、観察対象に照射される。また、光源制御部21は、通常観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、赤色光R間の光量比がVc:Bc:Gc:Rcとなるように、各LED20a〜20dを制御する。一方、光源制御部21は、第1及び第2特殊観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、赤色光R間の光量比がVs:Bs:Gs:Rsとなるように、各LED20a〜20dを制御する。
【0022】
図2に示すように、ライトガイド41は、内視鏡12及びユニバーサルコード(内視鏡12と光源装置14及びプロセッサ装置16とを接続するコード)内に内蔵されており、光路結合部23で結合された光を内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。なお、ライトガイド41としては、マルチモードファイバを使用することができる。一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用することができる。
【0023】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮像光学系30bが設けられている。照明光学系30aは照明レンズ45を有しており、この照明レンズ45を介して、ライトガイド41からの光が観察対象に照射される。撮像光学系30bは、対物レンズ46、撮像センサ48を有している。観察対象からの反射光は、対物レンズ46を介して、撮像センサ48に入射する。これにより、撮像センサ48に観察対象の反射像が結像される。
【0024】
撮像センサ48はカラーの撮像センサであり、被検体の反射像を撮像して画像信号を出力する。この撮像センサ48は、CCD(Charge Coupled Device)撮像センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)撮像センサ等であることが好ましい。本発明で用いられる撮像センサ48は、R(赤)、G(緑)及びB(青)の3色のRGB画像信号を得るためのカラーの撮像センサ、即ち、Rフィルタが設けられたR画素、Gフィルタが設けられたG画素、Bフィルタが設けられたB画素を備えた、いわゆるRGB撮像センサである。
【0025】
なお、撮像センサ48としては、RGBのカラーの撮像センサの代わりに、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びG(緑)の補色フィルタを備えた、いわゆる補色撮像センサであっても良い。補色撮像センサを用いる場合には、CMYGの4色の画像信号が出力されるため、補色−原色色変換によって、CMYGの4色の画像信号をRGBの3色の画像信号に変換する必要がある。また、撮像センサ48はカラーフィルタを設けていないモノクロ撮像センサであっても良い。この場合、光源制御部21は青色光B、緑色光G、赤色光Rを時分割で点灯させて、撮像信号の処理では同時化処理を加える必要がある。
【0026】
撮像センサ48から出力される画像信号は、CDS・AGC回路50に送信される。CDS・AGC回路50は、アナログ信号である画像信号に相関二重サンプリング(CDS(Correlated Double Sampling))や自動利得制御(AGC(Auto Gain Control))を行う。CDS・AGC回路50を経た画像信号は、A/D変換器(A/D(Analog /Digital)コンバータ)52により、デジタル画像信号に変換される。A/D変換されたデジタル画像信号は、プロセッサ装置16に入力される。
【0027】
プロセッサ装置16は、受信部53と、DSP(Digital Signal Processor)56と、ノイズ除去部58と、画像処理切替部60と、通常画像処理部62と、特殊画像処理部64と、映像信号生成部66とを備えている。受信部53は内視鏡12からのデジタルのRGB画像信号を受信する。R画像信号は撮像センサ48のR画素から出力される信号に対応し、G画像信号は撮像センサ48のG画素から出力される信号に対応し、B画像信号は撮像センサ48のB画素から出力される信号に対応している。
【0028】
DSP56は、受信した画像信号に対して、欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン補正処理、リニアマトリクス処理、ガンマ変換処理、デモザイク処理等の各種信号処理を施す。欠陥補正処理では、撮像センサ48の欠陥画素の信号が補正される。オフセット処理では、欠陥補正処理が施されたRGB画像信号から暗電流成分が除かれ、正確な零レベルが設定される。ゲイン補正処理では、オフセット処理後のRGB画像信号に特定のゲインを乗じることにより信号レベルが整えられる。ゲイン補正処理後のRGB画像信号には、色再現性を高めるためのリニアマトリクス処理が施される。その後、ガンマ変換処理によって明るさや彩度が整えられる。リニアマトリクス処理後のRGB画像信号には、デモザイク処理(等方化処理、同時化処理とも言う)が施され、各画素で不足した色の信号が補間によって生成される。このデモザイク処理によって、全画素がRGB各色の信号を有するようになる。
【0029】
ノイズ除去部58は、DSP56でガンマ補正等が施されたRGB画像信号に対してノイズ除去処理(例えば移動平均法やメディアンフィルタ法等)を施すことによって、RGB画像信号からノイズを除去する。ノイズが除去されたRGB画像信号は、画像処理切替部60に送信される。なお、本発明の「画像信号入力処理部」は、受信部53と、DSP56と、ノイズ除去部58を含む構成に対応する。
【0030】
画像処理切替部60は、モード切替SW13aにより、通常観察モードにセットされている場合には、RGB画像信号を通常画像処理部62に送信し、第1又は第2特殊観察モードにセットされている場合には、RGB画像信号を特殊画像処理部64に送信する。
【0031】
通常画像処理部62は、RGB画像信号に対して、色変換処理、色彩強調処理、構造強調処理を行う。色変換処理では、デジタルのRGB画像信号に対しては、3×3のマトリックス処理、階調変換処理、3次元LUT処理などを行い、色変換処理済みのRGB画像信号に変換する。次に、色変換処理済みのRGB画像信号に対して、各種色彩強調処理を施す。この色彩強調処理済みのRGB画像信号に対して、空間周波数強調等の構造強調処理を行う。構造強調処理が施されたRGB画像信号は、通常画像のRGB画像信号として、通常画像処理部62から映像信号生成部66に入力される。
【0032】
特殊画像処理部64は、RGBの画像信号に基づいて、ピロリ菌に感染している場合の観察対象の色と、ピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌が成功した場合の観察対象の色との違いを強調した第1特殊画像、又は、ピロリ菌に感染している場合の観察対象の色と、ピロリ菌に感染していない場合の観察対象の色との違いを強調した第2特殊画像を生成する。特殊画像処理部64の詳細については後述する。この特殊画像処理部64で生成された第1又は第2特殊画像のRGB画像信号は、映像信号生成部66に入力される。
【0033】
映像信号生成部66は、通常画像処理部62又は特殊画像処理部64から入力されたRGB画像信号を、モニタ18で表示可能な画像として表示するための映像信号に変換する。この映像信号に基づいて、モニタ18は、通常画像、第1特殊画像、第2特殊画像を表示する。
【0034】
特殊画像処理部64は、
図4に示すように、逆ガンマ変換部70と、Log変換部71と、信号比算出部72と、極座標変換部73と、角度拡張・圧縮部74と、直交座標変換部75と、RGB変換部76と、構造強調部77と、逆Log変換部78と、ガンマ変換部79とを備えている。また、特殊画像処理部64は、RGB変換部76と構造強調部77との間に、明るさ調整部81を備えている。
【0035】
逆ガンマ変換部70は、入力されたRGB3チャンネルのデジタル画像信号に対して逆ガンマ変換を施す。この逆ガンマ変換後のRGB画像信号は、検体からの反射率に対してリニアな反射率リニアRGB信号であるため、RGB画像信号のうち、検体の各種生体情報に関連する信号が占める割合が多くなる。なお、反射率リニアR画像信号を第1R画像信号とし、反射率リニアG画像信号を第1G画像信号とし、反射率リニアB画像信号を第1B画像信号とする。
【0036】
Log変換部71は、反射率リニアRGB画像信号(本発明の「第1カラー画像信号」に対応する)をそれぞれLog変換する。これにより、Log変換済みのR画像信号(logR)、Log変換済みのG画像信号(logG)、Log変換済みのB画像信号(logB)が得られる。信号比算出部72(本発明の「色情報取得部」に対応する)は、Log変換済みのG画像信号とB画像信号に基づいて差分処理(logG-logB =logG/B=-log(B/G))することにより、B/G比(-log(B/G)のうち「-log」を省略したものを「B/G比」と表記する)を算出する。また、Log変換済みのR画像信号とG画像信号に基づいて差分処理(logR-logG=logR/G=-log(G/R))することにより、G/R比を算出する。G/R比については、B/G比と同様、-log(G/R)のうち「-log」を省略したものを表している。
【0037】
なお、B/G比、G/R比は、B画像信号、G画像信号、R画像信号において同じ位置にある画素の画素値から画素毎に求める。また、B/G比、G/R比は画素毎に求める。また、B/G比は、血管深さ(粘膜表面から特定の血管がある位置までの距離)に相関があることから、血管深さが異なると、それに伴ってB/G比も変動する。また、G/R比は、血液量(ヘモグロビンインデックス)と相関があることから、血液量に変動が有ると、それに伴ってG/R比も変動する。
【0038】
極座標変換部73は、信号比算出部72で求めたB/G比、G/R比を、動径rと偏角θに変換する。この極座標変換部73において、動径rと偏角θへの変換は、全ての画素について行う。角度拡張・圧縮部74は、第1特殊観察モードに設定されている場合には、ピロリ菌に感染した場合の動径rと偏角θが分布する第1範囲と、ピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌が成功した場合の動径rと偏角θとが分布する第2範囲との差を大きくする第1処理を行う。また、角度拡張・圧縮部74は、第2特殊観察モードに設定されている場合には、ピロリ菌に感染した場合の動径rと偏角θが分布する第1範囲と、ピロリ菌に感染していない場合の動径rと偏角θとが分布する第3範囲との差を大きくする第2処理を行う。これら第1及び第2処理の詳細については、後述する。
【0039】
直交座標変換部75では、角度拡張・圧縮部74を経た角度拡張・圧縮済みの動径r、偏角θを、直交座標に変換する。これにより、角度拡張・圧縮済みのB/G比、G/R比に変換される。RGB変換部76(本発明の「カラー画像信号変換部」に対応する)では、第1RGB画像信号のうち少なくともいずれか1つの画像信号を用いて、角度拡張・圧縮済みのB/G比、G/R比を、RGB画像信号に変換する。例えば、RGB変換部76は、第1RGB画像信号のうちG画像信号とB/G比とに基づく演算を行うことにより、B/G比を第2B画像信号に変換する。また、RGB変換部76は、第1RGB画像信号のうちG画像信号とG/R比に基づく演算を行うことにより、G/R比を第2R画像信号に変換する。また、RGB変換部76は、第1G画像信号については、特別な変換を施すことなく、第2G画像信号として出力する。
【0040】
明るさ調整部81は、第1RGB画像信号と第2RGB画像信号とを用いて、第2RGB画像信号の画素値を調整する。明るさ調整部81で、第2RGB画像信号の画素値を調整するのは、以下の理由による。角度拡張・圧縮部74で色領域を拡張・圧縮する処理により得られた第2RGB画像信号は、第1RGB画像信号と明るさが大きく変わってしまう可能性がある。そこで、明るさ調整部81で第2RGB画像信号の画素値を調整することによって、明るさ調整後の第2RGB画像信号が第1RGB画像信号と同じ明るさになるようにする。
【0041】
明るさ調整部81は、第1RGB画像信号に基づいて第1明るさ情報Yinを求める第1明るさ情報算出部81aと、第2RGB画像信号に基づいて第2明るさ情報Youtを求める第2明るさ情報算出部81bとを備えている。第1明るさ情報算出部81aは、「kr×第1R画像信号の画素値+kg×第1G画像信号の画素値+kb×第1B画像信号の画素値」の演算式に従って、第1明るさ情報Yinを算出する。第2明るさ情報算出部81bにおいても、第1明るさ情報算出部81aと同様に、上記と同様の演算式に従って、第2明るさ情報Youtを算出する。第1明るさ情報Yinと第2明るさ情報Youtが求まると、明るさ調整部81は、以下の式(E1)〜(E3)に基づく演算を行うことにより、第2RGB画像信号の画素値を調整する。
(E1):R
*=第2R画像信号の画素値×Yin/Yout
(E2):G
*=第2G画像信号の画素値×Yin/Yout
(E3):B
*=第2B画像信号の画素値×Yin/Yout
なお、「R
*」は明るさ調整後の第2R画像信号を、「G
*」は明るさ調整後の第2G画像信号を、「B
*」は明るさ調整後の第2B画像信号を表している。また、「kr」、「kg」、「kb」は「0」〜「1」の範囲にある任意の定数である。
【0042】
構造強調部77では、RGB変換部76を経た第2RGB画像信号に対して構造強調処理を施す。構造強調処理としては、周波数フィルタリングなどが用いられる。逆Log変換部78は、構造強調部77を経た第2RGB画像信号に対して、逆Log変換を施す。これにより、真数の画素値を有する第2RGB画像信号が得られる。ガンマ変換部79は、逆Log変換部78を経たRGB画像信号に対してガンマ変換を施す。これにより、モニタ18などの出力デバイスに適した階調を有する第2RGB画像信号が得られる。ガンマ変換部79を経たRGB画像信号は、第1又は第2特殊画像のRGB画像信号として、映像信号生成部66に送られる。
【0043】
角度拡張・圧縮部74で行われる第1及び第2処理の内容について、
図5に示すような、縦軸B/G比、横軸G/R比から形成される2次元の色空間である特徴空間(信号比空間)を用いて、以下説明する。信号比空間用の第1処理では、信号比空間において、ピロリ菌に感染した場合の座標が分布する第1範囲(
図5では「B」と表記。以下同様。)とピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌が成功した場合の座標が分布する第2範囲(
図5では「C」と表記。以下同様。)を含む領域を角度変更範囲R1に設定した上で、角度変更範囲R1内にある座標の角度θを変更する一方で、角度変更範囲R1外の座標については角度θの変更は行わない。また、信号比空間用の第1処理では、角度変更範囲R1の座標の動径rについて変更は行わない。
【0044】
角度変更範囲R1においては、第1範囲(B)と第2範囲(C)との境界線と考えられる部分に、第1中心線CL1が設定されている。角度変更範囲R1内の座標P1については、第1中心線CL1に対するなす角度「θ1」で定義される。角度θ1は、第1中心線CL1から時計回り方向はプラスの角度として、反時計回り方向はマイナスの角度として定義する。
【0045】
信号比空間用の第1処理においては、角度変更範囲R1内のうち、第1中心線CL1から一定の範囲を示す角度変更範囲R1x内では、角度変化率が「1」よりも大きい角度変化率W1xで角度θ1を変化させる第1の拡張処理を行い、角度変更範囲R1xよりも外側の角度変更範囲R1y内では、角度変化率が「1」よりも小さい角度変化率W1yで角度θ1を変化させる第1の圧縮処理を行う。これら第1の拡張処理及び圧縮処理によって、角度変更範囲R1内の座標を、第1中心線CL1から特定範囲内で移動させる。なお、角度変化率が「1」の場合は、角度θを変更する処理を行っても、角度θの大きさは変わらない。
【0046】
図6に示すように、角度変化率W1xについては、角度θ1が「0°」の場合に一番大きくなるように、設定されている。また、角度θ1が「0°」と「角度変更範囲R1xと角度変更範囲R1yの境界部分を示す角度θ1t」の間にある場合には、角度変化率W1xは、角度θ1が「0°」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。また、角度変化率W1yについては、角度θ1が「角度θ1t」と「角度変更範囲R1の境界部分を示すθ1d」との間において、角度θ1が「角度θ1t」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。
【0047】
なお、角度変化率W1x、W1yは、角度θ1と角度Eθ1とを関係づける線CV1の接線を示す「直線L1」の傾きで表わされる(
図7参照)。角度変更範囲R1x内では直線L1の傾きは「1」よりも大きいのに対して、角度変更範囲R1y内では直線L1の傾きは「1」よりも小さくなっている。また、角度変更範囲R1外においては、直線L1の傾きは「1」になっている。
【0048】
以上のような第1の拡張処理及び圧縮処理からなる信号比空間用の第1処理を行うことによって、
図7に示すように、プラス側の角度θ1については、角度θ1よりも大きいプラスの角度Eθ1に変更される一方で、マイナス側の角度θ1については、角度θ1よりも小さいマイナスの角度Eθ1に変更される。これに対して、角度変更範囲R1外の角度θは、角度θと大きさが変わらない角度Eθに変換される(恒等変換)。
【0049】
このような角度変更を行うことによって、以下のような作用・効果が得られる。
図8A(A)に示すように、信号比空間用の第1処理前には、第1範囲(B)と、第2範囲(C)とは近づいているが、信号比空間用の第1処理後には、
図8A(B)に示すように、第1中心線CL1を境に、第1範囲(B)の座標の大部分が時計回り方向に移動する一方で、第2範囲(C)の座標の大部分が反時計回り方向に移動することによって、第1範囲(B)と第2範囲(C)との色相の差が大きくなっている。このように第1範囲(B)と第2範囲(C)との色相の差を大きくして得られる第1特殊画像においては、ピロリ菌に感染した場合の観察対象の色と、ピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌に成功した場合の観察対象の色との違いが明確になるため、ピロリ菌の除菌が成功したか否かの診断を確実に行うことができるようになる。
【0050】
また、第1中心線CL1から±90°の範囲内は、角度変更によって、ピロリ菌に感染した場合の観察対象の色と、ピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌に成功した場合の観察対象の色との違い(色差)を強調する特定の色領域であるのに対して、第1中心線CL1から±90°の範囲を超える領域は角度変更によって色差を強調したくない特定の色領域以外の領域である。そこで、信号比空間用の第1処理では、第1の拡張処理に加えて、第1の圧縮処理を行うことで、角度変更後の角度Eθ1は、第1中心線CL1から±90°の範囲を超えることがないようにしている。これにより、第1特殊画像上では、特定の色領域で色差が強調される一方で、特定の色領域以外では色差が強調されない。
【0051】
なお、第1RGB画像信号をLab変換部でLab変換して得られるa
*、b
*(色情報であるCIE Lab空間の色味の要素a
*、b
*を表す。以下同様)から形成される特徴空間(ab空間)の場合も、
図8Bに示すように、ab空間用の第1処理により、第1中心線CL1を境に、第1範囲(B)の座標の大部分が時計回り方向に移動する一方で、第2範囲(C)の座標の大部分が反時計回り方向に移動する。ここで、
図8B(A)はab空間用の第1処理前の第1及び第2範囲の分布を、
図8B(B)はab空間用の第1処理後の第1及び第2範囲の分布を表している(
図12B(A)、(B)の表記も同様である)。また、ab空間用の第1処理後に得られる第2RGB画像信号に対しては、明るさ調整部81で、画素値の調整を行うことが好ましい。第2RGB画像信号の画素値調整方法は、上記と同様である。
【0052】
信号比空間用の第2処理では、
図9に示すように、信号比空間において、ピロリ菌に感染した場合の座標が分布する第1範囲(B)とピロリ菌に感染していない場合の座標が分布する第3範囲(
図9では「C」と表記。以下同様。)を含む領域を角度変更範囲R2に設定した上で、角度変更範囲R2内にある座標の角度θを変更する一方で、角度変更範囲R2外の座標については角度θの変更は行わない。また、信号比空間用の第2処理では、角度変更範囲R2の座標の動径rについて変更は行わない。
【0053】
角度変更範囲R2においては、第1範囲(B)と第3範囲(C)との間に、第2中心線CL2が設定されている。角度変更範囲R2は角度変更範囲R1よりも広く設定されており、また、信号比空間における第2中心線CL2の傾きは、第1中心線CL1の傾きよりも大きく設定されている。また、角度変更範囲R2内の座標P2については、第2中心線CL2に対するなす角度θ2で定義される。角度θ2は、第2中心線CL2から時計回り方向にある角度はプラスの角度として、反時計回り方向にある角度はマイナスの角度として定義する。
【0054】
信号比空間用の第2処理においては、角度変更範囲R2内のうち、第2中心線CL2から一定の範囲を示す角度変更範囲R2x内では、角度変化率が「1」よりも大きい角度変化率W2xで角度θ2を変化させる第2の拡張処理を行い、角度変更範囲R2xの外側にある角度変更範囲R2y内では、角度変化率が「1」よりも小さい角度変化率W2yで角度θ2を変化させる第2の圧縮処理を行う。これら第2の拡張処理及び圧縮処理によって、角度変更範囲R2内の座標を、第2中心線CL1から特定範囲内で移動させる。なお、角度変化率が「1」の場合は、角度θを変更する処理を行っても、角度θの大きさは変わらない。
【0055】
図10に示すように、角度変化率W2xについては、角度θ2が「0°」の場合に一番大きくなるように、設定されている。この角度θ2が「0°」の場合の角度変化率W2xは、上記した角度θ1が「0°」の場合の角度変化率W1xよりも小さくなるように、設定されている。また、角度θ2が「0°」と「角度変更範囲R2xと角度変更範囲R2yの境界部分を示す角度θ2t」の間にある場合には、角度変化率W2xは、角度θ2が「0°」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。また、角度変化率W2yについては、角度θ2が「角度θ2t」と「角度変更範囲R2の境界部分を示すθ2d」との間において、角度θ2が「角度θ2t」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。
【0056】
なお、角度変化率W2x、W2yは、角度θ2と角度Eθ2とを関係づける線CV2の接線を示す「直線L2」の傾きで表わされる(
図11参照)。角度変更範囲R2x内では直線L2の傾きは「1」よりも大きいのに対して、角度変更範囲R2y内では直線L2の傾きは「1」よりも小さくなっている。また、角度変更範囲R2外においては、直線L2の傾きは「1」になっている。
【0057】
以上のような第2の拡張処理及び圧縮処理からなる信号比空間用の第2処理を行うことによって、
図11に示すように、プラス側の角度θ2については、角度θ2を大きくしたプラスの角度Eθ2に変更される一方で、マイナス側の角度θ2については、角度θを小さくしたマイナスの角度Eθ2に変更される。これに対して、角度変更範囲R2外の角度θは、角度θと大きさが変わらない角度Eθに変換される(恒等変換)。
【0058】
このような角度変更を行うことによって、以下のような作用・効果が得られる。
図12A(A)に示すように、信号比空間用の第2処理前には、信号比空間の第1象限内に第1範囲(B)と第3範囲(A)とが存在していたが、信号比空間用の第2処理後には、
図12A(B)に示すように、第2中心線CL2を境に、第1範囲(B)の座標の大部分が時計回り方向に移動する一方で、第3範囲(A)の座標の大部分が反時計回り方向に移動することによって、第1範囲(B)の座標の大部分が信号比空間の第4象限に移動し、第3範囲(A)の座標の大部分が信号比空間の第2象限に移動する。これにより、第1範囲(B)と第3範囲(A)との色相の差が、更に大きくなる。このように第1範囲(B)と第3範囲(A)との色相の差を更に大きくして得られる第2特殊画像においては、ピロリ菌に感染した場合の観察対象の色と、ピロリ菌に感染していない場合の観察対象の色との違いが明確になるため、ピロリ菌に感染しているか否かの診断を確実に行うことができるようになる。
【0059】
また、信号比空間用の第2処理では、第2の拡張処理に加えて、第2の圧縮処理を行うことで、角度変更後の角度Eθ2は、第2中心線CL2から±90°の範囲を超えることがないようにしている。これにより、第2特殊画像上では、特定の色領域で色差が強調される一方で、特定の色領域以外では色差が強調されない。
【0060】
なお、第1RGB画像信号をLab変換部でLab変換して得られる要素a
*、b
*から形成される特徴空間(ab空間)の場合も、
図12Bに示すように、ab空間用の第2処理により、第2中心線CL2を境に、第1範囲(B)の座標の大部分が時計回り方向に移動する一方で、第3範囲(A)の座標の大部分が反時計回り方向に移動する。ab空間用の第2処理後に得られる第2RGB画像信号に対しては、明るさ調整部81で、画素値の調整を行うことが好ましい。第2RGB画像信号の画素値調整方法は、上記と同様である。
【0061】
次に、特殊観察モードを用いて観察対象の観察を行う一連の流れについて、
図13のフローチャートに沿って説明する。まず、通常観察モードにセットし、内視鏡12の挿入部12aを検体内に挿入する。挿入部12aの先端部12dが胃に到達したら、モード切替SW13aを操作して、通常観察モードから第1又は第2特殊観察モードに切り替える。ピロリ菌の除菌が成功したか否かを診断する場合には第1特殊観察モードに切り替え、ピロリ菌に感染しているかどうかを診断する場合には第2特殊観察モードに切り替える。
【0062】
第1又は第2特殊観察モードに切り替えた後に得られるRGB画像信号に基づいて、信号比算出部72により、B/G比、G/R比を算出する。次に、この算出したB/G比、G/R比を、極座標変換により、動径r、偏角θに変換する。
【0063】
次に、第1特殊観察モードに設定されている場合には、ピロリ菌に感染した場合の動径rと偏角θが分布する第1範囲(B)と、ピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌が成功した場合の動径rと偏角θとが分布する第2範囲(C)との差を大きくする信号比空間用の第1処理を、角度拡張・圧縮部74で行う。また、第2特殊観察モードに設定されている場合には、ピロリ菌に感染した場合の動径rと偏角θが分布する第1範囲(B)と、ピロリ菌に感染していない場合の動径rと偏角θとが分布する第3範囲(A)との差を大きくする信号比空間用の第2処理を、角度拡張・圧縮部74で行う。これら角度拡張・圧縮部74で信号比空間用の第1又は第2処理が施された動径r、偏角θに基づいて、第1特殊画像又は第2特殊画像を生成する。生成された第1又は第2特殊画像は、モニタ18に表示される。
【0064】
なお、上記実施形態では、特徴空間の一つである信号比空間上で、角度を拡張・圧縮することにより、第1範囲(B)と第2範囲(C)との色相の差を大きくし、又は、第1範囲(B)と第3範囲(A)との色相の差を大きくしているが、これに代えて又は加えて、
動径を拡張・圧縮することにより、第1範囲(B)と第2範囲(C)との彩度の差を大きくし、又は、第1範囲(B)と第3範囲(A)との彩度の差を大きくしてもよい。
【0065】
動径の拡張・圧縮により第1範囲(B)と第2範囲(C)との彩度の差を大きくする第3処理(本発明の「彩度強調処理EPx」に対応する)と、動径の拡張・圧縮より第1範囲(B)と第3範囲(A)との彩度の差を大きくする第4処理(本発明の「彩度強調処理EPy」に対応する)は、
図14に示す特殊画像処理部84で行われる。この特殊画像処理部84は、特殊画像処理部64と比較すると、角度拡張・圧縮部74の代わりに、第3処理及び第4処理を行う動径拡張・圧縮部86(本発明の「彩度強調処理部」に対応する)が設けられている以外は、同様の機能を有している。
【0066】
動径拡張・圧縮部86で行われる第3及び第4処理の内容について、
図15に示す信号比空間を用いて、以下説明する。信号比空間用の第3処理では、信号比空間において、第1範囲(B)と第2範囲(C)を含む領域を動径変更範囲R3に設定した上で、動径変更範囲R3内にある座標が示す動径rを変更する一方で、動径変更範囲R3外の座標については動径rの変更は行わない。また、信号比空間用の第3処理では、動径変更範囲R3の座標の角度θについて変更は行わない。
【0067】
動径変更範囲R3は、動径rが「r3a」から「r3b」の範囲内である(r3a<r3b)。また、動径変更範囲R3においては、第1範囲(B)と第2範囲(C)との境界と考えられる部分に、第1境界線BL1が設定されている。この第1境界線BL1は、動径r3aと動径r3bとの間にある動径r3c上に設けられている。
【0068】
信号比空間用の第3処理においては、
図16に示すように、動径変更範囲R3内のうち、第1境界線BL1から一定の範囲を示す動径変更範囲R3x内では、動径変化率が「1」よりも大きい動径変化率W3xで動径rを変化させる第3の拡張処理(本発明の「動径用の拡張処理」に対応する)を行い、動径変更範囲R3xの外側にある動径変更範囲R3y内では、動径変化率が「1」よりも小さい動径変化率W3yで動径rを変化させる第3の圧縮処理(本発明の「動径用の圧縮処理」に対応する)を行う。なお、動径変化率が「1」の場合は、動径rを変更する処理を行っても、動径rの大きさは変わらない。また、動径変更範囲R3xは本発明の「動径変更範囲Rx」に対応し、動径変更範囲R3yは本発明の「動径変更範囲Ry」に対応する。また、動径変化率W3xは本発明の「動径変化率Wx」に対応し、動径変化率W3yは本発明の「動径変化率Wy」に対応する。
【0069】
動径変化率W3xについては、動径rが「r3c」の場合に一番大きくなるように、設定されている。また、動径rが「r3c」と「動径変更範囲R3xと動径変更範囲R3yの境界部分を示す動径r3t」の間にある場合には、動径変化率W3xは、動径rが「r3c」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。また、動径変化率W3yについては、動径rが「r3t」と「動径変更範囲R3の境界部分を示す動径r3d」との間において、動径rが「r3t」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。
【0070】
なお、動径変化率W3x、W3yは、動径rと動径Erとを関係づける線CV3の接線を示す「直線L3」の傾きで表わされる(
図17参照)。動径変更範囲R3x内では直線L3の傾きは「1」よりも大きいのに対して、動径変更範囲R3y内では直線L3の傾きは「1」よりも小さくなっている。また、動径変更範囲R3外においては、直線L3の傾きは「1」になっている。
【0071】
以上のような第3の拡張処理及び圧縮処理からなる信号比空間用の第3処理を行うことによって、
図17に示すように、動径r3cよりも小さい動径rについては、更に小さい動径Erに変更される一方で、動径r3cよりも大きい動径rについては、更に大きい動径Erに変更される。また、動径r3cは、第3処理の前後で変化しない。これに対して、動径変更範囲R3外においては、動径rと大きさが変わらない動径rに変換される(恒等変換)。
【0072】
このような動径変更を行うことによって、以下のような作用・効果が得られる。
図18A(A)に示すように、信号比空間用の第3処理前には、第1範囲(B)と、第2範囲(C)とは近づいているが、信号比空間用の第3処理後には、
図18A(B)に示すように、第1範囲(B)の座標の大部分が、原点から遠ざかる方向に移動する一方で、第2範囲(C)の座標の大部分が、原点に近づく方向に移動する。
【0073】
信号比空間において動径方向に対して原点に近づくほど彩度が低下する一方で、原点から遠ざかるほど彩度が向上することを鑑みると、信号比空間用の第3処理を行うことで、第1範囲(B)と第2範囲(C)との彩度の差を大きくすることができる。このように第1範囲(B)と第2範囲(C)との彩度の差を大きくして得られる第1特殊画像においては、ピロリ菌に感染した場合の観察対象は彩度が高く表示される一方で、ピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌に成功した場合の観察対象は彩度が低く表示されるため、ピロリ菌の除菌が成功したか否かの診断を確実に行うことができるようになる。
【0074】
また、信号比空間用の第3処理では、第3の拡張処理に加えて、第3の圧縮処理を行うことで、ピロリ菌に感染した場合の観察対象の彩度とピロリ菌に感染したもののピロリ菌の除菌に成功した場合の観察対象の彩度が、特定範囲内の彩度に収まるようにしている。
【0075】
なお、第1RGB画像信号をLab変換部でLab変換して得られるa
*、b
*(色情報であるCIE Lab空間の色味の要素a
*、b
*を表す。以下同様)から形成される特徴空間(ab空間)の場合も、
図18Bに示すように、ab空間用の第3処理により、第1範囲(B)の座標の大部分が、原点から遠ざかる方向に移動する一方で、第2範囲(C)の座標の大部分が、原点に近づく方向に移動する。ここで、
図18B(A)はab空間用の第3処理前の第1及び第2範囲の分布を、
図18B(B)はab空間用の第3処理後の第1及び第2範囲の分布を表している。
【0076】
信号比空間用の第4処理では、
図19に示すように、信号比空間において、第1範囲(B)と第3範囲(A)を含む領域を動径変更範囲R4に設定した上で、動径変更範囲R4内にある座標が示す動径rを変更する一方で、動径変更範囲R4外の座標については動径の変更は行わない。また、信号比空間用の第4処理では、動径変更範囲R4の座標の角度θについて変更は行わない。
【0077】
動径変更範囲R4は、動径rが「r4a」から「r4b」の範囲内である(r4a<r4b)。また、動径変更範囲R4においては、第1範囲(B)と第3範囲(A)との境界と考えられる部分に、第2境界線BL2が設定されている。この第2境界線BL2は、動径r4aと動径r4bとの間にある動径r4c上に設けられている。動径r4cは、第1境界線BL1が示す動径r3cよりも小さい。
【0078】
信号比空間用の第4処理においては、
図20に示すように、動径変更範囲R4内のうち、第2境界線BL2から一定の範囲を示す動径変更範囲R4x内では、動径変化率が「1」よりも大きい動径変化率W4xで動径rを変化させる第4の拡張処理を行い、動径変更範囲R4xの外側にある動径変更範囲R4y内では、動径変化率が「1」よりも小さい動径変化率W4yで動径rを変化させる第4の圧縮処理を行う。なお、動径変化率が「1」の場合は、動径rを変更する処理を行っても、動径rの大きさは変わらない。
【0079】
動径変化率W4xについては、動径rが「r4c」の場合に一番大きくなるように、設定されている。この動径r4cのときの動径変化率W4xは、動径r3cのときの動径変化率W3xよりも小さく設定されている。また、動径rが「r4c」と「動径変更範囲R4xと動径変更範囲R4yの境界部分を示す動径r4t」の間にある場合には、動径変化率W4xは、動径rが「r4c」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。また、動径変化率W4yについては、動径rが「r4t」と「動径変更範囲R3の境界部分を示す動径r4d」との間において、動径rが「r4t」から離れるほど、徐々に小さくなるように設定されている。
【0080】
なお、動径変化率W4x、W4yは、動径rと動径Erとを関係づける線CV4の接線を示す「直線L4」の傾きで表わされる(
図21参照)。動径変更範囲R4x内では直線L4の傾きは「1」よりも大きいのに対して、動径変更範囲R4y内では直線L4の傾きは「1」よりも小さくなっている。また、動径変更範囲R4外においては、直線L4の傾きは「1」になっている。
【0081】
以上のような第4の拡張処理及び圧縮処理からなる信号比空間用の第4処理を行うことによって、
図21に示すように、動径r4cよりも小さい動径rについては、更に小さい動径Erに変更される一方で、動径r4cよりも大きい動径rについては、更に大きい動径Erに変更される。また、動径r4cは、第4処理の前後で変化しない。これに対して、動径変更範囲R4外においては、動径rと大きさが変わらない動径rに変換される(恒等変換)。
【0082】
このような動径変更を行うことによって、以下のような作用・効果が得られる。
図22A(A)に示すように、信号比空間用の第4処理前には、第1範囲(B)と第3範囲(A)とはある程度離れていたが、
図22A(B)に示すように、信号比空間用の第4処理を行うことで、第1範囲(B)の座標の大部分が、原点から遠ざかる方向に移動する一方で、第3範囲(A)の座標の大部分が、原点に近づく方向に移動するため、第1範囲(B)と第3範囲(A)とは更に離れるようになる。
【0083】
このように信号比空間上で第1範囲(B)と第3範囲(A)とを更に離すことで、第1範囲(B)と第3範囲(A)との彩度の差は更に大きくなる。この第1範囲(B)と第3範囲(A)との彩度の差を大きくして得られる第2特殊画像においては、ピロリ菌に感染した場合の観察対象は彩度が高く表示される一方で、ピロリ菌に感染していない場合の観察対象は彩度が低く表示されるため、ピロリ菌に感染しているか否かの診断を確実に行うことができるようになる。
【0084】
また、信号比空間用の第4処理では、第4の拡張処理に加えて、第4の圧縮処理を行うことで、ピロリ菌に感染した場合の観察対象の彩度とピロリ菌に感染していない場合の観察対象の彩度が、特定範囲内の彩度に収まるようにしている。
【0085】
なお、第1RGB画像信号をLab変換部でLab変換して得られるa
*、b
*(色情報であるCIE Lab空間の色味の要素a
*、b
*を表す。以下同様)から形成される特徴空間(ab空間)の場合も、
図22Bに示すように、ab空間用の第4処理により、第1範囲(B)の座標の大部分が、原点から遠ざかる方向に移動する一方で、第3範囲(A)の座標の大部分が、原点に近づく方向に移動する。ここで、
図22B(A)はab空間用の第4処理前の第1及び第3範囲の分布を、
図22B(B)はab空間用の第4処理後の第1及び第3範囲の分布を表している。
【0086】
なお、上記実施形態では、信号比算出部72で第1RGB画像信号からB/G比、G/R比を求め、これらB/G比、G/R比から形成される特徴空間において第1〜第4処理を行っているが、B/G比、G/R比と異なる色情報を求め、この色情報から形成される特徴空間において第1〜第4処理を行ってもよい。
【0087】
例えば、色情報として色差信号Cr、Cbを求め、色差信号Cr、Cbから形成される特徴空間において第1〜第4処理を行ってもよい。色差信号Cr、Cbを用いた第1及び第2処理によって特殊画像の生成を行う場合には、
図23に示す特殊画像処理部92が用いられる。特殊画像処理部92は、特殊画像処理部64と異なり、Log変換部71、信号比算出部72、逆Log変換部78を備えていない。その代わりに、特殊画像処理部92は、逆ガンマ変換部70と極座標変換部73との間に、輝度・色差信号変換部85を備えている。それ以外の構成については、特殊画像処理部92は特殊画像処理部64と同様である。
【0088】
輝度・色差信号変換部85(本発明の「色情報取得部」に対応する)は、第1RGB画像信号を輝度信号Yと色差信号Cr、Cbに変換する。色差信号Cr、Cbへの変換には周知の変換式が用いられる。色差信号Cr、Cbについては極座標変換部73に送られる。輝度信号YについてはRGB変換部76と明るさ調整部81に送られる。RGB変換部76では、直交座標変換部75を経た色差信号Cr、Cbと輝度信号Yを、第2RGB画像信号に変換する。明るさ調整部81では、第1明るさ情報Yinとして輝度信号Yを用いるとともに、第2明るさ情報Youtとして第2明るさ情報算出部81bで求めた第2明るさ情報を用いて、第2RGB画像信号の画素値の調整を行う。なお、第2明るさ情報Youtの算出方法と第2RGB画像信号の画素値の調整方法については、上記特殊画像処理部64の場合と同じである。
【0089】
特殊画像処理部92では、縦軸が色差信号Cr、横軸が色差信号Cbで形成される特徴空間(CbCr空間)上でCbCr空間用の第1処理又は第2処理を行う。CbCr空間上では、
図24に示すように、第1〜第3範囲(B、C、A)はいずれもCbCr空間の第2象限に分布しており、第3範囲(A)が縦軸Crに一番近い位置に分布し、その次に縦軸Crに近い位置に第2範囲(C)が分布し、縦軸Crから一番遠い位置に第1範囲(B)が分布する。
【0090】
CbCr空間用の第1処理では、
図25に示すように、角度拡張・圧縮部74が、第1中心線CL1の一方側にある第1範囲(B)の座標の角度を反時計回り方向に拡張・圧縮するとともに、第1中心線CL1の他方側にある第2範囲(C)の座標の角度を時計回り方向に拡張・圧縮する。これにより、第1範囲(B)と第2範囲(C)との色相の差が大きくなる。CbCr空間上で第1範囲(B)の角度及び第2範囲(C)の角度を拡張・圧縮する方法は、上記で示した信号比空間の場合と同様である(
図5〜
図8A参照)。なお、
図25において、点線の範囲はCbCr空間用の第1処理前の範囲を、実線の範囲はCbCr空間用の第1処理後の範囲を示している。この「実線の範囲」、「点線の範囲」の表記は、以下に示す図においても同様である。
【0091】
CbCr空間用の第2処理では、
図26に示すように、角度拡張・圧縮部74が、第2中心線CL2の一方側にある第1範囲(B)の座標の角度を反時計回り方向に拡張・圧縮するとともに、第2中心線CL2の他方側にある第3範囲(A)の座標の角度を時計回り方向に拡張・圧縮する。これにより、第1範囲(B)と第3範囲(A)との色相の差が大きくなる。CbCr空間上で第1範囲(B)の角度及び第3範囲(A)の角度を拡張・圧縮する方法は、上記で示した信号比空間の場合と同様である(
図9、
図10、
図11、
図12A参照)。
【0092】
また、色差信号Cr、Cbを用いた第3及び第4処理によって特殊画像の生成を行う場合には、
図27に示す特殊画像処理部94が用いられる。特殊画像処理部94は、角度拡張・圧縮部74の代わりに、動径拡張・圧縮部86が設けられている以外は、特殊画像処理部92と同様の機能を有している。
【0093】
特殊画像処理部94では、CbCr空間上でCbCr空間用の第3処理又は第4処理を行う。CbCr空間用の第3処理では、
図28に示すように、動径拡張・圧縮部86が、第1境界線BL1の一方側にある第1範囲(B)の座標が示す動径を原点から離れる方向に拡張・圧縮するとともに、第1境界線BL1の他方側にある第2範囲(C)の座標が示す動径を原点に近づく方向に拡張・圧縮する。これにより、第1範囲(B)と第2範囲(C)との彩度の差が大きくなる。CbCr空間上で第1範囲(B)の動径及び第2範囲(C)の動径を拡張・圧縮する方法は、上記で示した信号比空間の場合と同様である(
図15〜
図17、
図18A参照)。
【0094】
CbCr空間用の第4処理では、
図29に示すように、動径拡張・圧縮部86が、第2境界線BL2の一方側にある第1範囲(B)の座標が示す動径を原点から離れる方向に拡張・圧縮するとともに、第2境界線BL2の他方側にある第3範囲(A)の座標が示す動径を原点に近づく方向に拡張・圧縮する。これにより、第1範囲(B)と第3範囲(A)との彩度の差が大きくなる。CbCr空間上で第1範囲(B)の動径及び第3範囲(A)の動径を拡張・圧縮する方法は、上記で示した信号比空間の場合と同様である(
図19〜
図21、
図22A参照)。
【0095】
また、色情報として色相H(Hue)、彩度S(Saturation)を求め、色相H、彩度Sから形成される特徴空間において第1〜第4処理を行ってもよい。色相H、彩度Sを用いて特殊画像の生成を行う場合には、
図30に示す特殊画像処理部96が用いられる。特殊画像処理部96は、特殊画像処理部64と異なり、Log変換部71、信号比算出部72、極座標変換部73、角度拡張・圧縮部74、直交座標変換部75、逆Log変換部78を備えていない。その代わりに、特殊画像処理部96は、逆ガンマ変換部70とRGB変換部76との間に、HSV変換部87と平行移動部90を備えている。それ以外の構成については、特殊画像処理部96は特殊画像処理部64と同様である。
【0096】
HSV変換部87(本発明の「色情報取得部」に対応する)は、第1RGB画像信号を色相H、彩度S、明度V(Value)に変換する。色相H、彩度S、明度Vへの変換には周知の変換式が用いられる。色相H、彩度Sについては平行移動部90に送られる。明度VについてはRGB変換部76に送られる。RGB変換部76では、平行移動部90を経た色相H、彩度Sと明度Vを、第2RGB画像信号に変換する。明るさ調整部81では、第1明るさ情報算出部で求めた第1明るさ情報Yinと、第2明るさ情報算出部81bで求めた第2明るさ情報Youtを用いて、第2RGB画像信号の画素値の調整を行う。なお、第1明るさ情報Yin、第2明るさ情報Youtの算出方法、及び第2RGB画像信号の画素値の調整方法については、上記特殊画像処理部64の場合と同じである。
【0097】
特殊画像処理部96では、縦軸が彩度S、横軸が色相Hで形成される特徴空間(HS空間)上でHS空間用の第1処理又は第2処理を行う。HS空間上における第1範囲、第2範囲、及び第3範囲(B、C、A)は、
図31に示すように、信号比空間である場合の位置と若干異なる位置に分布しており、第3範囲(A)、第2範囲(C)、第1範囲(B)の順で、彩度が大きくなっている。
【0098】
HS空間用の第1処理では、
図32に示すように、平行移動部90が、第1中心線CL1の一方側にある第1範囲(B)の座標を色相方向の右側に平行移動させるとともに、第1中心線CL1の他方側にある第2範囲(C)の座標を色相方向の左側に平行移動させる。これにより、第1範囲(B)の座標と第2範囲(C)の座標との色相の差が大きくなる。なお、第1中心線CL1は、HS空間上において、第1範囲(B)と第2範囲(C)の間であって色相HがHx(定数)となる部分に設けられている。また、平行移動部90は、第1範囲(B)と第2範囲(C)を含む第1移動対象範囲M1内の座標を、平行移動により移動させることが好ましい。
【0099】
HS空間用の第2処理では、
図33に示すように、平行移動部90が、第2中心線CL2の一方側にある第1範囲(B)の座標を色相方向の右側に平行移動させるとともに、第2中心線CL2の他方側にある第3範囲(A)の座標を色相方向の左側に平行移動させる。これにより、第1範囲(B)の座標と第3範囲(A)の座標との色相の差が大きくなる。なお、第2中心線CL2は、HS空間上において、第1範囲(B)と第3範囲(A)の間であって、第1中心線CL1の色相値Hxと異なる色相値Hy(定数)の部分に設けられている。また、平行移動部90は、第1範囲(B)と第3範囲(A)を含む第2移動対象範囲M2内の座標を平行移動により移動させることが好ましい。第2移動対象範囲M2は第1移動対象範囲M1よりも広い。
【0100】
HS空間用の第3処理では、
図34に示すように、平行移動部90が、第1境界線BL1の一方側にある第1範囲(B)の座標を彩度方向の上方に平行移動させるとともに、第1境界線BL1の他方側にある第2範囲(C)の座標を彩度方向の下方に平行移動させる。これにより、第1範囲(B)と第2範囲(C)との彩度の差が大きくなる。なお、第1境界線BL1は、HS空間上において、第1範囲(B)と第2範囲(C)の間であって彩度SがSx(定数)となる部分に設けられている。また、平行移動部90は、第1範囲(B)と第2範囲(C)を含む第3移動対象範囲M3内の座標を、平行移動により移動させることが好ましい。
【0101】
HS空間用の第4処理では、
図35に示すように、平行移動部90が、第2境界線BL2の一方側にある第1範囲(B)の座標を彩度方向の上方に平行移動させるとともに、第2境界線BL2の他方側にある第3範囲(A)の座標を彩度方向の下方に平行移動させる。これにより、第1範囲(B)と第3範囲(A)との彩度の差が大きくなる。なお、第2境界線BL2は、HS空間上において、第1範囲(B)と第3範囲(A)の間であって、第1境界線BL1の彩度値Sxよりも小さい彩度値Sy(定数)の部分に設けられている。また、平行移動部90は、第1範囲(B)と第3範囲(A)を含む第4移動対象範囲M4内の座標を平行移動により移動させることが好ましい。第4移動対象範囲M4は第3移動対象範囲M3よりも広い。
【0102】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態で示した4色のLED20a〜20dの代わりに、レーザ光源と蛍光体を用いて観察対象の照明を行う。それ以外については、第1実施形態と同様である。
【0103】
図36に示すように、第2実施形態の内視鏡システム100では、光源装置14において、4色のLED20a〜20dの代わりに、中心波長445±10nmの青色レーザ光を発する青色レーザ光源(
図36では「445LD」と表記)104と、中心波長405±10nmの青紫色レーザ光を発する青紫色レーザ光源(
図36では「405LD」と表記)106とが設けられている。これら各光源104、106の半導体発光素子からの発光は、光源制御部108により個別に制御されており、青色レーザ光源104の出射光と、青紫色レーザ光源106の出射光の光量比は変更自在になっている。
【0104】
光源制御部108は、通常観察モードの場合には、青色レーザ光源104を駆動させる。これに対して、第1又は第2特殊観察モードの場合には、青色レーザ光源104と青紫色レーザ光源106の両方を駆動させるとともに、青色レーザ光の発光比率を青紫色レーザ光の発光比率よりも大きくなるように制御している。以上の各光源104、106から出射されるレーザ光は、集光レンズ、光ファイバ、合波器などの光学部材(いずれも図示せず)を介して、ライトガイド(LG)41に入射する。
【0105】
なお、青色レーザ光又は青紫色レーザ光の半値幅は±10nm程度にすることが好ましい。また、青色レーザ光源104及び青紫色レーザ光源106は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としてもよい。
【0106】
照明光学系30aには、照明レンズ45の他に、ライトガイド41からの青色レーザ光又は青紫色レーザ光が入射する蛍光体110が設けられている。蛍光体110に、青色レーザ光が照射されることで、蛍光体110から蛍光が発せられる。また、一部の青色レーザ光は、そのまま蛍光体110を透過する。青紫色レーザ光は、蛍光体110を励起させることなく透過する。蛍光体110を出射した光は、照明レンズ45を介して、検体内に照射される。
【0107】
ここで、通常観察モードにおいては、主として青色レーザ光が蛍光体110に入射するため、
図37に示すような、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体110から励起発光する蛍光を合波した白色光が、観察対象に照射される。一方、第1又は第2特殊観察モードにおいては、青紫色レーザ光と青色レーザ光の両方が蛍光体110に入射するため、
図38に示すような、青紫色レーザ光、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体110から励起発光する蛍光を合波した特殊光が、検体内に照射される。
【0108】
なお、蛍光体110は、青色レーザ光の一部を吸収して、緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl
10O
17)等の蛍光体)を含んで構成されるものを使用することが好ましい。本構成例のように、半導体発光素子を蛍光体110の励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、白色光の強度を容易に調整できる上に、白色光の色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0109】
[第3実施形態]
第3実施形態では、第1実施形態で示した4色のLED20a〜20dの代わりに、キセノンランプなどの広帯域光源と回転フィルタを用いて観察対象の照明を行う。また、カラーの撮像センサ48に代えて、モノクロの撮像センサで観察対象の撮像を行う。それ以外については、第1実施形態と同様である。
【0110】
図39に示すように、第3実施形態の内視鏡システム200では、光源装置14において、4色のLED20a〜20dに代えて、広帯域光源202、回転フィルタ204、フィルタ切替部205が設けられている。また、撮像光学系30bには、カラーの撮像センサ48の代わりに、カラーフィルタが設けられていないモノクロの撮像センサ206が設けられている。
【0111】
広帯域光源202はキセノンランプ、白色LEDなどであり、波長域が青色から赤色に及ぶ白色光を発する。回転フィルタ204は、内側に設けられた通常観察モード用フィルタ208と、外側に設けられた第1又は第2特殊観察モード用フィルタ209とを備えている(
図40参照)。フィルタ切替部205は、回転フィルタ204を径方向に移動させるものであり、モード切替SW13aにより通常観察モードにセットされたときに、回転フィルタ204の通常観察モード用フィルタ208を白色光の光路に挿入し、第1又は第2特殊観察モードにセットされたときに、回転フィルタ204の第1又は第2特殊観察モード用フィルタ209を白色光の光路に挿入する。
【0112】
図40に示すように、通常観察モード用フィルタ208には、周方向に沿って、白色光のうち青色光を透過させるBフィルタ208a、白色光のうち緑色光を透過させるGフィルタ208b、白色光のうち赤色光を透過させるRフィルタ208cが設けられている。したがって、通常観察モード時には、回転フィルタ204が回転することで、青色光、緑色光、赤色光が交互に観察対象に照射される。
【0113】
第1又は第2特殊観察モード用フィルタ209には、周方向に沿って、白色光のうち特定波長の青色狭帯域光を透過させるBnフィルタ209aと、白色光のうち緑色光を透過させるGフィルタ209b、白色光のうち赤色光を透過させるRフィルタ209cが設けられている。したがって、特殊観察モード時には、回転フィルタ204が回転することで、青色狭帯域光、緑色光、赤色光が交互に観察対象に照射される。
【0114】
内視鏡システム200では、通常観察モード時には、青色光、緑色光、赤色光が観察対象に照射される毎にモノクロの撮像センサ206で検体内を撮像する。これにより、RGBの3色の画像信号が得られる。そして、それらRGBの画像信号に基づいて、上記第1実施形態と同様の方法で、通常画像が生成される。
【0115】
一方、第1又は第2特殊観察モード時には、青色狭帯域光、緑色光、赤色光が観察対象に照射される毎にモノクロの撮像センサ206で検体内を撮像する。これにより、Bn画像信号と、G画像信号、R画像信号が得られる。これらBn画像信号と、G画像信号、R画像信号に基づいて、第1又は第2特殊画像の生成が行われる。第1又は第2特殊画像の生成には、B画像信号の代わりに、Bn画像信号が用いられる。それ以外については、第1実施形態と同様の方法で第1又は第2特殊画像の生成が行われる。
【0116】
[第4実施形態]
第4実施形態では、挿入型の内視鏡12及び光源装置14に代えて、飲み込み式のカプセル内視鏡を用いて、通常画像、第1又は第2特殊画像の生成に必要なRGB画像信号を取得する。
【0117】
図41に示すように、第4実施形態のカプセル内視鏡システム300は、カプセル内視鏡302と、送受信アンテナ304と、カプセル用受信装置306と、プロセッサ装置16と、モニタ18を備えている。カプセル内視鏡302は、LED302aと、撮像センサ302bと、画像処理部302cと、送信アンテナ302dとを備えている。なお、プロセッサ装置16は第1実施形態と同様であるが、第4実施形態では、通常観察モード、第1特殊観察モード、第2特殊観察モードに切り替えるためのモード切替SW308が新たに設けられている。
【0118】
LED302aは、白色光を発するものであり、カプセル内視鏡302内に複数設けられている。ここで、LED302aとしては、青色光源と、この青色光源からの光を波長変換して蛍光を発する蛍光体とを備える白色LEDなどを用いることが好ましい。LEDに代えて、LD(Laser Diode)を用いてもよい。LED302aから発せられた白色光は、観察対象に対して照明される。
【0119】
撮像センサ302bはカラーの撮像センサであり、白色光で照明された観察対象を撮像して、RGBの画像信号を出力する。ここで、撮像センサ302bとしては、CCD(Charge Coupled Device)撮像センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)撮像センサを用いることが好ましい。撮像センサ302bから出力されたRGB画像信号は、画像処理部302cで、送信アンテナ302dで送信可能な信号にするための処理が施される。画像処理部302cを経たRGB画像信号は、送信アンテナ302dから、無線で送受信アンテナ304に送信される。
【0120】
送受信アンテナ304は被検者の体に貼り付けられており、送信アンテナ302dからのRGB画像信号を受信する。送受信アンテナ304は、受信したRGB画像信号を、無線でカプセル用受信装置306に送信する。カプセル用受信装置306はプロセッサ装置16の受信部53と接続されており、送受信アンテナ304からのRGB画像信号を受信部53に送信する。
【0121】
なお、上記実施形態では、
図3に示すような発光スペクトルを有する4色の光を用いたが、発光スペクトルはこれに限られない。例えば、
図42に示すように、緑色光G及び赤色光Rについては、
図3と同様のスペクトルを有する一方で、紫色光Vsについては、中心波長410〜420nmで、
図3の紫色光Vよりもやや長波長側に波長範囲を有する光にしてもよい。また、青色光Bsについては、中心波長445〜460nmで、
図3の青色光Bよりもやや短波長側に波長範囲を有する光にしてもよい。
【0122】
なお、上記実施形態では、B/G比、G/R比を極座標変換で動径r、偏角θに変換し、変換後の動径r、偏角θに基づいて角度を拡張又は圧縮する第1〜第4処理を行い、その後に、再度、B/G比、G/R比に戻したが、
図43に示すように、二次元LUT400を用いて、B/G比、G/R比から、極座標変換等することなく、直接、第1又は第2処理済みのB/G比、G/R比に変換してもよい。
【0123】
なお、二次元LUT400には、B/G比、G/R比と、このB/G比、G/R比に基づく第1〜第4処理を行って得られる第1又は第2処理済みのB/G比、G/R比とが対応付けて記憶されている。また、逆ガンマ変換部70から出力された第1RGB画像信号は二次元LUT400及びRGB変換部76に入力される。
【0124】
なお、上記実施形態では、第1範囲(B)と第2範囲(C)の差を広げるために、特徴空間上の角度を拡張・圧縮して色相差を広げる第1処理、又は特徴空間上の動径を拡張・圧縮して彩度差を広げる第3処理のいずれかを行っているが、第1処理と第3処理を組み合せて、特徴空間上の角度及び動径の両方を拡張・圧縮することにより、第1範囲(B)と第2範囲(C)との色相差及び彩度差の両方を広げてもよい。また、第1範囲(B)と第3範囲(A)の差を広げるために、角度を拡張・圧縮して色相差を広げる第2処理、又は動径を拡張・圧縮して彩度差を広げる第4処理のいずれかを行っているが、第2処理と第4処理を組み合せて、特徴空間上の角度及び動径の両方を拡張・圧縮することにより、第1範囲(B)と第3範囲(A)との色相差及び彩度差の両方を広げてもよい。
【0125】
なお、本発明は、第1〜第3実施形態のような内視鏡システムや第4実施形態のようなカプセル内視鏡システムに組み込まれるプロセッサ装置の他、各種の医用画像処理装置に対して適用することが可能である。