特許第6047569号(P6047569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6047569ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維ポリマー複合組成物ならびに作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6047569
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維ポリマー複合組成物ならびに作製方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20161212BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20161212BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K3/04
   C08K7/06
【請求項の数】11
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-521793(P2014-521793)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2014-529352(P2014-529352A)
(43)【公表日】2014年11月6日
(86)【国際出願番号】US2012047445
(87)【国際公開番号】WO2013013070
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】61/510,352
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ギャロウェイ、ジェフリー エイ.
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−105329(JP,A)
【文献】 特開2005−325341(JP,A)
【文献】 特開2002−226713(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電放電のための組成物において、
熱可塑性ポリマーと、
前記熱可塑性ポリマー中に分散するナノチューブのネットワークと、
前記熱可塑性ポリマー中に分散する、1より大きくかつ5未満のアスペクト比を有する炭素繊維のネットワークとを含んでなり、
前記組成物中の前記ナノチューブの量が0.5重量%を超えかつ5.0重量%未満であり、前記炭素繊維の量が20重量%〜50重量%であり、前記組成物は10〜10オーム/sqの表面抵抗率を有する、組成物。
【請求項2】
前記ナノチューブが、100以上のアスペクト比を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭素繊維の量が30重量%〜45重量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を含んでなり、静電放電特性を有する成形物品。
【請求項5】
前記成形物品が、半導体ウエハーを輸送するのに適切なウエハーキャリアを含んでなる請求項に記載の成形物品。
【請求項6】
静電放電のための物品を製造するための複合体を形成する方法において、
一定量のポリマーを押出機内に投入する工程と、
前記押出機内に一定量のナノチューブを投入する工程と、
前記押出機内に、1より大きくかつ5未満のアスペクト比を有する一定量の炭素繊維を投入する工程と、
せん断を加えて、前記ナノチューブ、前記炭素繊維、及び前記ポリマーをブレンドする工程とを備え、
前記一定量のナノチューブと前記一定量の炭素繊維とを分散した溶融ポリマーが形成され、前記溶融ポリマー中の前記ナノチューブの量が0.5重量%を超えかつ5.0重量%未満であり、前記炭素繊維の量が前記溶融ポリマーの20重量%〜50重量%であり、前記溶融ポリマーは10〜10オーム/sqの表面抵抗率を有する、方法。
【請求項7】
前記ナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はそれらの組み合わせを含んでなる請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノチューブの量が1重量%〜3重量%である請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記複合体が、前記押出機から、前記複合体が所望の形状及びサイズを有する物品に形成される成形機器に供給される請求項に記載の方法
【請求項10】
前記成形機器が、ローラ、射出成形、圧縮成形、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項に記載の方法
【請求項11】
前記押出機が、二軸スクリュー押出機を含んでなる請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、1種もしくは複数種のポリマーと、カーボンナノチューブ及び微粉砕炭素繊維とを含んでなる組成物に関する。詳細には、特定の態様において、本発明は、ポリマーと、そのポリマー内に分散するある量のカーボンナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維とを有する組成物に関し、微粉砕炭素繊維は、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比を有する。さらに、本発明は、その組成物を作製する方法に関する。さらに、本発明は、その組成物から形成される物品(容器又は機能性物品等)に関する。
【背景技術】
【0002】
得られる物品に対する所望の目標を達成するために、技術開発は、材料の性質に高まる要望を課している。向上した材料性能は、改善した材料を組み込む対応物品及び製品の性能を向上させることができる。複合材料は、複数種の組成物の性質から利益となる材料を得るために、異なる組成物の所望の性質を組み合わせる方法であることが見出されてきた。
【0003】
先端の製品は、製品が損傷や分解に敏感であるため、特殊の取り扱いが必要とされる場合がある。詳細には、いくつかの製品(半導体デバイス、シリコーンウエハ等)は、輸送及び/又は処理中に、例えば互いに接触して損傷しうる。従って、これらの製品を輸送するために、特別の容器が開発されてきた。このような特別な容器は、例えば、成形された熱可塑性材料から形成されることができ、容器内に所望の配置で複数の製品を保持するのに適切な構造を有する。これらの容器の内部構造は、通常、製品が互いに接触するのを防ぎ、製品の輸送中に起こりうる製品の損傷を低減するのに貢献する。先端の製品は、また静電放電に敏感である場合があり、特に、段々小型化され高速になっている電子デバイスは、非常に敏感であり、制電(「ESD」)率を高める必要性が非常に重要となる。
【0004】
いくつかの物品は、それらの用途で適切に機能するために、高い導電率を有する。具体的には、様々な種類の成分が、対応するデバイス内で高い導電率を生み出す。例えば、多くの発電装置は、導電性素子を組み込む。特に、燃料電池は、直列で連結されている隣接の電池間に電気伝導を提供し同時に、燃料及び酸化剤の流れに備えて、隣接電池間の材料流れを防ぐバイポーラプレートを有することが可能である。同様に、多くのバッテリー構造は、バッテリー電極でのバッテリー極の電気接続を促進するために、導電性素子を組み込んでいる。
【0005】
導電性フィラー(カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素繊維、又はカーボンナノファイバ等)を有するポリマーから作製される物品は、一般的に、様々な物品(例えば、材料操作機器、電子デバイス、流体操作機器、電気化学電池用の導電性素子、コンテナ、キャリア、バイポーラプレート等を含む)における上述の問題に取り組むために、利用される。
【0006】
ナノ複合体は、少なくとも1つの追加の構成要素(粒子、ロッド又はチューブ等)が連続相に分散又は分布する組成物であり、その追加の構成要素は、ナノメートル又は分子サイズの範囲で、1つ又は複数の次元(長さ、幅又は厚さ等)を有する。複合体の物理的又は機械的性質を効果的に改善する目的で、より多くの界面を促進して追加の構成要素とポリマー間の親和性を高めるために、これらの追加の構成要素をポリマー全体に分散させることが重要である。加えられた構成要素がポリマー全体に均一に分散されるならば、より少ない材料が、ナノ複合体の物理的性質に悪影響を与えることなく、ナノ複合組成物に加えられてもよい。
【0007】
ナノチューブは、ナノ複合体における追加の構成要素として使用してもよいナノメートル又は分子サイズの材料の例である。これらのナノチューブに、導電性原子をドープしてもよく、ドーパントがチューブ内にある場合もある。ナノチューブの例は、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、及び二硫化タングステンナノチューブである。個々のSWNT及び単層カーボンナノチューブのロープは、高強度、金属導電性及び高い熱伝導性を示す。ナノチューブ及びナノチューブのロープは、例えば、導電性ポリマー材料、塗料又は被覆材における添加剤として、導電体が必要とされる用途に有用となることがある。ナノチューブ間のファンデルワールス力により、SWNTは、チューブとしてよりもむしろ凝集体又はロープとして存在する傾向がある。SWNTはまた、他の材料との複合体を形成する処理をする間に、凝集体を形成する傾向があり、凝集体は、複合体における導電性ナノチューブネットワーク又はレオロジー的なネットワークの形成を阻害しうる。ポリマーにおいて、SWNTは、ポリマーの強度、靱性、導電性及び熱伝導性を高める十分な可能性を有する。しかしながら、ポリマーにおけるナノチューブの性質の最大限の可能性を達成することは、ナノチューブの分散の難しさによって、妨げられており、他の種類の導電性フィラー成分と比較して、ナノチューブは、得られる製品の出費を増大させうる。
【0008】
界面でのナノチューブとポリマー間のより高い親和性を促進し、ポリマー内でナノチューブの均一な分散を提供するためのアプローチとして、分散剤の使用又はナノチューブの表面化学修飾が挙げられる。分散剤(表面活性剤等)、又はカルボン酸基、アミド基もしくは表面結合ポリマーで修飾されたナノチューブ表面が、ナノチューブのポリマーへの組み込みを促進するために使用されてきた。これらの処理は、不純物や、ナノ複合体のコストを増大させる追加の工程をプロセスに加える。他のアプローチとしては、溶媒中にナノチューブを分散させ、この分散液を同様に溶媒中に溶解しているポリマーと混合することが挙げられる。溶液は、溶媒を除去した後に、フィルムにキャストすることができる。界面におけるナノチューブとポリマー間の親和性を高めるための、追加の分散、キャスト、及び溶媒除去の工程は、時間を追加し、廃棄物を生み出し、このようなナノ複合体のコストを増大させる。バラッザらは、(非特許文献1)において、SWNT複合体は、余分なナノチューブ凝集体として1〜2%のナノチューブ含有量で飽和する傾向があるので、溶液キャスト法は、高導電性フィルムを生成するのに適用性が制限されると開示されていると述べている。これにより、この方法によって形成されうる組成物が制限される。
【0009】
ハーゲンミュラーは、20回以上の混合サイクルで、ナノチューブの分散性の漸進的な向上を認めた((非特許文献2)の221頁を参照)。ハーゲンミュラーは、溶媒に溶かしたポリマー溶液を形成し、音波処理を用いてその溶液にSWNTを分散させ、混合物をキャストして、溶媒を蒸発させた。第2の方法において、キャストフィルムを破壊して、ホットプレスし、この溶融混合を25回まで繰り返した。追加の溶融混合サイクル毎に分散性が増大したことが報告されている。エルコビッチ(Elkovitch)ら(特許文献1)は、高純度のSWNTは、純度がより低いSWNTのように容易にロープから分離することができず、押出プロセス中に発生するせん断力は、高純度のSWNTによって形成されるSWNTの凝集体を解す際にそれほど効果的ではないことを開示している。エルコビッチにより開示されたSWNTポリマー組成物には、例えば数十分の1パーセントから10%を超えるまで変わることができる鉄の濃度が含まれる。さらに、エルコビッチら(特許文献1)は、生成に関連した不純物が、有機ポリマーのマトリックス内のカーボンナノチューブのロープの分散を促進し、カーボンナノチューブを用いて調製された組成物は、混合中にポリマーとナノチューブの組成物に対して経時的に与えられたエネルギー量と共に変わる表面抵抗率を有することを開示している。エルコビッチは、混合中に数種の不純物含有のSWNTポリマーサンプルに関して抵抗率が低下したことと、混合中に、抵抗率が低下した後に他の不純物含有のSWNTポリマーサンプルの増加を認めた。スモー
リー(特許文献2)は、生成に関連した不純物を除去する、生成直後の単層カーボンナノチューブの精製方法を開示する。
【0010】
非特許文献3は、凝固により形成された、SWNTのポリマー中の分散体を記載する。凝固法において、ポリマーを溶媒中に溶解して(非特許文献4)、精製したナノチューブを溶媒に加え、24時間音波処理してSWNTを溶媒中に分散させる。SWNT溶媒混合物又は溶液もしくは懸濁液にポリマーを溶解させた。この懸濁液をブレンダ内の非溶媒に滴下し、沈殿するポリマー鎖がSWNTを取り込んで、SWNTが再び集束するのを防いだ。沈殿物をろ過して真空中で乾燥した。凝固は、ナノチューブを処理するために用いられる精製法の影響を受けうる方法であり、廃溶媒を生み出す。続いて沈殿物の繊維を溶融紡糸した。
【0011】
アンドリュースは、ピッチを溶媒に溶解させ、精製したナノチューブを高温のピッチ溶液に加えて分散させ、混合物を音波処理した。減圧蒸留を用いて溶媒を除去し、SWNTの懸濁液を調製した。このピッチ懸濁液を冷却して固体にして、続いて圧縮成形又は押出成形して糸を形成することができた。次に圧縮成形した物品又は糸を加熱によって酸化安定化し、続いて1100℃で炭化した。石油ピッチは、石油分画の加熱処理及び蒸留からの残渣である。室温で固体であり、圧倒的に大部分は芳香族及びアルキル置換の芳香族炭化水素の複合混合物からなり、明確な融点の代わりに広い軟化点範囲を示す。ピッチは幾種かの有機溶媒に溶け、ナノチューブの懸濁液を形成するために、有機溶媒を除去して廃棄する必要がある。ピッチは、多くの高純度用途、及び高い耐磨耗性を必要とする用途には容認できない材料である。アンドリュースらは、MWNTの長さに対するせん断混合の効果について、(非特許文献5)を報告しており、混合装置へのエネルギー入力を増加させると、チューブの長さが約20ミクロンから約5ミクロンまで短くなることを報告している。
【0012】
ポシュケら(非特許文献6)は、ポリカーボネート中で圧縮成形された多層ナノチューブ複合体を調製した。1%〜2%濃度のMWNTで、約1013オーム/sqから約10オーム/sqの抵抗率の低減が認められた。約0.1ラジアン/秒の周波数で、ポリカーボネートは、約2GPa(外挿)の貯蔵弾性率G’を有し、一方1重量%のMWNTは、約20GPa(外挿)の貯蔵弾性率G’を有し、5重量%のMWNTは、約20,000GPaの貯蔵弾性率G’を有した。セネットら(非特許文献7)は、円錐二軸スクリュー押出によって、MWNTとSWNTのポリカーボネート中複合体を調製した。著者らは、SWNTを部分的に分散させる(ロープがまだ存在している)ために使用した処理時間で、MWNTが分解したことを報告した。彼らはまた、SWNTは、MWNTよりも分散が困難なようであること、及びSWNTの完全な分散は、検討した処理時間で達成できなかったことを報告している。
【0013】
カワガシら(非特許文献8)は、まずポリプロピレン溶融体を形成した後、MWNTを添加することにより、ポリプロピレン中に溶融ブレンドされたMWNTを調製した。これらの複合材料を難燃性に関して評価した。
【0014】
スモーリーら(特許文献3)は、ポリマーコーティング及びポリマー被覆が施された単層ナノチューブ(SWNT)、ポリマーコーティングおよびポリマー被覆が施されたSWNTの小ロープ、ならびにこれらを含んでなる材料を開示する。その開示によると、ナノチューブは、任意に界面活性剤を用い、使用される液体と相溶性の直鎖ポリマー(例えばポリビニルピロリドン及びポリスチレンスルホナート等)と強固に結合させることにより、液体中に溶ける又は懸濁される。被覆ナノチューブは、溶液から除去され、ポリマー被覆は残り、チューブは、凝集体を形成する(個々のチューブは、互いから電気的に実質的に絶縁されている)。チューブの周囲のポリマー被覆は、連結剤の導入により架橋され、
電気的に絶縁された個々のSWNTが架橋された固体ポリマーマトリックス内に恒久的に懸濁された異なる材料を形成することもある。スモーリーら(特許文献4)は、ポリマー被覆された単層カーボンナノチューブを開示するが、しかしながら、ポリマー被覆がナノチューブ間の接触を防ぐために、これらの被覆ナノチューブを使用して誘電性材料を作製する。
【0015】
パテルら(特許文献5)は、ポリマー樹脂、導電性フィラー、静電気防止剤及び任意の他の添加剤を配合し、実質的に均一な導電性樹脂組成物を形成することを開示する。ポリマー樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂又はポリフェニレンエーテル−高衝撃性ポリスチレン樹脂)、静電気防止剤、及び炭素繊維を含有する組成物に関して、表面抵抗率を測定した。導電性成分(炭素繊維と静電気防止剤)の重量百分率が増大するにつれて、表面低効率と体積抵抗率の両方が、低減する。
【0016】
ヒライら(特許文献6)は、極端に短い繊維長の粉砕繊維を使用して調製した熱可塑性強化の炭素繊維は、粉砕繊維の長さが短いので、炭素繊維チョップドストランドを用いて調製した繊維と比較して、劣った特性を有すると開示する。従って、ヒライらは、炭素繊維フィラメントがサイズ剤によって束ねられ、長さ1〜10mm及び直径30〜20,000μmを有するマトリックス材料を用いる複合体の生産に使用するのに適切な炭素繊維チョップドストランドを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第20050029498号明細書
【特許文献2】米国特許第6,936,233号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0046872号明細書
【特許文献4】米国特許第7,008,563号明細書
【特許文献5】米国特許第6,528,572号明細書
【特許文献6】米国特許第5,227,238号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】バラッザ(Barraza)ら著、ナノレターズ(NANO Letters)、第2巻、P.797〜802
【非特許文献2】ハーゲンミュラー(Haggenmuller)著、ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physic letters)、2000年、第330巻、P.219〜225
【非特許文献3】デュ(Du)ら著、高分子(Macromolecules)、2004年、第37巻、P.9048
【非特許文献4】デュ(Du)ら著、ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス・パートB・高分子物理(J.Polym.Sci.,Part B:Polym.Phys.)、2003年、第41巻、P.3333〜3338
【非特許文献5】アンドリュース(Andrews)ら著、高分子材料工学(Macromol.Mater.Eng.)2002年、第287巻、P.395〜403
【非特許文献6】ポシュケ(Potschke)ら著、(ポリマー(Polymer)、2002年、第43巻、P.3247〜3255
【非特許文献7】セネット(Sennett)ら著、マテリアル・リサーチ・ソサイエティ・シンポジウム・プロシーディングス(Mat.Res.Soc.Symp.Proc.)、2002年、第706巻、p.97〜102
【非特許文献8】カワガシ(Kawagashi)ら著、高分子ラピッド・コミュニケーション(Macromol.Rapid Commun.)、2002年、第23巻、P.761〜765
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の実施形態は、一緒に押出配合された、ポリマー溶融体とある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維とを含んでなる組成物を含み、ポリマー溶融体に分散するある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維は、複合材料を形成する。本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、追加の溶融押出サイクル工程を行わない単一の溶融押出工程において作製されることが可能である。本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、一緒に押出配合された、ポリマー溶融体とある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維とから構成又は実質的構成される。本発明の実施形態における組成物は、追加の溶融押出サイクル工程を行わない単一の溶融押出工程において作製されることが可能である。本発明の変形形態における組成物は、凝固もキャストも伴わず、無溶媒でも、プロセス工程(溶媒除去、濾過、及び乾燥等)を行わないでも作製できる。
【0020】
本発明の実施形態は、一緒に押出配合された、ポリマー溶融体とある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維とを含んでなる組成物を含み、ポリマー溶融体に分散する、ある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維が、組成物のさらなる押出配合によって実質的に変化しない貯蔵弾性率G’を有する組成物を形成することが企図される。本発明のいくつかの実施形態において、1回もしくは複数回の押出サイクル後に、組成物が、貯蔵弾性率の増大及び/又は抵抗率の低下に対して実質的に不変であることが企図される。本発明の実施形態における組成物は、追加の溶融押出サイクル工程を行わない単一の溶融押出工程で作製されることができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、一緒に押出配合される、ポリマー溶融体と、ある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維とから構成される又は実質的に構成され、ポリマー溶融体に分散するある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維が、組成物のさらなる押出配合によって実質的に変化しないことが可能である貯蔵弾性率G’を有する組成物を形成することが企図される。本発明のいくつかの実施形態において、貯蔵弾性率は、さらなる押出配合によって増大しないことが企図される。本発明の実施形態における組成物は、追加の溶融押出サイクル工程を行わない単一の溶融押出工程で作製されることができる。
【0022】
本発明の変形形態における組成物は、凝固もキャストも必要としなく、溶媒がなくても、溶媒除去、濾過、及び乾燥等のプロセス工程を行わなくても作製できる。
いくつかの実施形態において、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を分散するポリマー溶融体は、高温高強度の熱可塑性ポリマーを含んでなる。いくつかの実施形態において、これらのポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、又はポリエーテルイミド(PEI)であることが可能であり、他の実施形態において、ポリマーは、PEEK又はPEIを含んでなり、さらに他の実施形態において、ポリマーは、PEEKを含んでなり、いくつかの実施形態において、ポリマーは、これらのポリマーの任意のブレンドであることが可能である。
【0023】
いくつかの実施形態において、ナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、二硫化タングステンナノチューブ、又は他の市販のナノチューブ、これらのロープであり、或いは、ポリマー中のナノチューブの量が、約5重量%未満(いくつかの実施形態において約4重量%以下、いくつかの実施形態において約3重量%以下、及びさらにいくつかの実施形態において約2重量%未満)でありうるこれらの組み合わせである。本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー中のナノチューブの量は、約0重量%〜約5重量%(いくつかの実施形態において約0.5重量%〜約4重量%、いくつかの実施形態において約1重量%〜約3重量%、さらに他の実
施形態において約1.25重量%〜約2.5重量%)の範囲であってよい。ナノチューブは、それらの最初の状態(押出配合する前等)と比べて、ネットワーク内で少なくとも部分的に凝集塊が解かれている又は分散している。
【0024】
いくつかの実施形態において、微粉砕炭素繊維は、約10より大きい(約20等)アスペクト比を有する炭素繊維として最初に提供され、次に、アスペクト比が1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)になるまで、アスペクト比を修正或いはそうでなければ変更するプロセスを経る。いくつかの実施形態において、アスペクト比を修正するために、炭素繊維を粉砕する、微粉状にする、研削する、細断する、せん断破壊等する。本明細書において、用語「微粉砕炭素繊維」は、アスペクト比(長さ/直径)が、それらを修正するのに使用されるプロセスに関係なく、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、さらに他の実施形態において約2〜約4)のアスペクト比を有するように短くした長さ及び/又は直径を有する、結果として生成する炭素繊維を指すと理解されるべきである。いくつかの実施形態において、修正プロセスを経る前に、炭素繊維は、長さの方が長いと企図して、直径が約5ミクロン〜約20ミクロン、長さが約100ミクロン〜約25,000ミクロンであり、結果として生成する微粉砕炭素繊維は、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、修正プロセスを経る前に、炭素繊維は、長さの方が長いと企図して、直径が約6ミクロン〜約18ミクロン、長さが約110ミクロン〜約2,500ミクロンであり、結果として生成する微粉砕炭素繊維は、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、修正プロセスを経た後、炭素繊維は、約5ミクロン〜約12ミクロンの平均直径、及び約10ミクロン〜約40ミクロンの平均長さを有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、最初に提供される炭素繊維は、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)のアスペクト比を有する微粉砕炭素繊維であり、最初に提供される炭素繊維は、炭素繊維の長さ及び/又は直径を修正又は変更するいかなるプロセスも経る必要がない。本明細書において、用語「微粉砕炭素繊維」は、従って、アスペクト比(長さ/直径)が、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)であるように、最初もしくは初期の長さ及び直径を有する炭素繊維を指すと理解されるべきである。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、約5ミクロン〜約12ミクロンの平均直径及び約10ミクロン〜約40ミクロンの平均長さと、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比とを有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、約6ミクロン〜約10ミクロンの平均直径及び約10ミクロン〜約30ミクロンの平均長さと、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比とを有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリマー中の微粉砕カーボンチューブは、約20重量%超(いくつかの実施形態において約25重量%超、いくつかの実施形態において約30重量%超、いくつかの実施形態において約35重量%超、いくつかの実施形態において約40重量%超、いくつかの実施形態において約45重量%超、さらにいくつかの実施形態において約50重量%未満)であることが可能である。本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー中の微粉砕炭素繊維の量は、約20重量%〜約50重量%(いくつかの実施形態において約25重量%〜約45重量%、いくつかの実施形態において約30重量%〜約40重量%、さらに他の実施形態において約33重量%〜約38重量%)であることが可能である。いくつかの実施形態において、微粉砕炭素繊維は、それらの最初の状態(押出配合前等)において、集塊していない。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、組成物又は物品は、約1013オーム/sq未満の電気抵抗を有し、いくつかの組成物又は物品は、約1011オーム/sq未満の電気抵抗を有し、いくつかの組成物又は物品は、約10オーム/sq未満の抵抗率を有し、いくつかの組成物又は物品は、約10オーム/sq未満の抵抗率を有し、他の実施形態の組成物又は物品は、約10オーム/sq未満の電気抵抗を有すると企図されている。いくつかの実施形態において、組成物又は物品の電気抵抗は、ポリマー中のナノチューブの量及び/又は微細分散炭素繊維の量を変えることにより、整調できうる。
【0028】
本発明の別の実施形態は、組成物が組成物のさらなる押出配合によって実質的に変わらないしもしくは増加しない貯蔵弾性率G’を有すると企図されるような、一緒に押出配合される、連続相としてのポリマー溶融体とある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維とを含んでなる第一組成物である。組成物は、ポリマーの押出溶融体中に分散する同種類のナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を含んでなる第二押出配合ポリマー組成物で測定される軸方向力よりも大きい、組成物のスクイーズ流れ試験において測定される軸方向力を有すると企図される。第二押出配合ポリマーにおいて、少なくともナノチューブ、任意に微粉砕された炭素繊維は、第一組成物を作製するために使用される押出機の長さの半分以上の箇所で、ポリマーの押出溶融体中に加えられる。想定される貯蔵弾性率の高い値は、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維が分散していることを示し、貯蔵弾性率の本質的に一定の値は、ポリマーマトリックスへのナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の最初の分散及び/又は分布によって、ポリマーマトリックスが分解していないことを示すであろう。
【0029】
ナノチューブ、特にSWNTは、ナノチューブ間の高いファンデルワールス相互作用が起因して、分散するのが難しい。溶媒へのナノチューブの分散及び可溶性ポリマーを用いたキャスト、溶媒和ナノチューブとモノマーの共重合、凝固分散、表面機能化、ポリマー被覆ならびに他の方法により、これらの力を克服するための尽力がされてきた。米国特許出願公開第2010/0267883号明細書(この内容は参照により全て本明細書に援用されている)に開示されるプロセス、またいくつかの変形形態において連続プロセスが、ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維を様々なポリマーマトリックス中に分散させて、連続ポリマーマトリックスにおいてナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の高い分散又は分布を有する組成物を調製するため使用される。これらの組成物には、組成物が開始ポリマーよりも大きい貯蔵弾性率を有するように、連続ポリマーマトリックスにナノチューブ及び微粉砕炭素繊維のネットワーク又は分散が含まれ、また組成物の貯蔵弾性率は、マトリックス中に分散するナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の量によって決まる。さらに、貯蔵弾性率は、材料の連続押出サイクルによって本質的に変わらない又は増加しないように企図されている。本発明の実施形態における組成物は、様々な成形プロセスを用いて、物品及び製品を形成するように成形されることが可能である。さらに、ポリマー中にナノチューブだけが分散する組成物と比較して、本発明の組成物は、成形プロセスのせん断流条件を変えても、成形物品の電気抵抗に殆ど影響を与えないほどの、影響を受け難いプロセスである。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、分散添加剤を使用しない溶融プロセス可能なポリマー中のMWNT及び微粉砕炭素繊維の分散体は、せん断流条件下で溶融プロセス(押出、射出成形、圧縮成形、コイニング)が行われる場合に、制電性の物品を形成する。せん断条件は、得られる製品の平均表面抵抗が、約10オーム〜約10オームであるように、ポリマー中のMWNT及び微粉砕炭素繊維のネットワーク又は分散を維持する。
【0031】
いくつかの実施形態において、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の分散は、PEEK、PEI、PI、これらの組合せもしくはブレンド又はこれらのいずれかを含有するコポリマー中である。溶融ポリマー中でのナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の分散は、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維とポリマーの乾燥混合溶融混合物を処理するために使用されるせ
ん断流条件に基づいて、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の相互連結ネットワークの程度が異なる、様々な物品に形成することが可能である。異なる制電特性を有する物品が、ポリマー中に分散するナノチューブの量及び/又は微粉砕炭素繊維の量に応じて、作製されることが可能である。
【0032】
本発明の実施形態は、複合材料から作製されたサンプル又は物品の全体にわたって実質的に均一な表面抵抗率を有する複合材料を提供する。いくつかの実施形態において、ポリマー中のナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の複合体のサンプル表面上の任意の点の実質的に均一な表面抵抗率は、サンプル上の任意の他の試験点から100倍以内(いくつかの実施形態において10倍以内)である。これは、チップトレイ、レチクルやウエハーキャリア、ウエハーシッパー、試験ソケット等の物品における複合体の静電放電用途において有利である。
【0033】
有利には、本発明の組成物及びその作製方法の実施形態は、溶解ポリマー中のナノチューブ及び/又は炭素繊維のキャスト分散体から溶媒を除去するために使用されるコスト、浪費及び時間を排除する。組成物のこれらの実施形態は、添加剤も溶媒も含有しないもしくは殆ど含有しないで、ナノチューブもしくはロープの側壁もしくは末端の官能化を行わず、これらの組合せも行わずに形成することができる。これらの組成物は、連結基を介して、それらの側面か末端のどちらかを介してポリマーに化学的に結合したナノチューブ又はロープを含有しないで形成することができる。分散体は、架橋剤を含有しないで作製することができる。さらに、過剰な溶媒を除去することにより、本発明の組成物は、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、誘導結合プラズマ質量分析(ICPMS)、ICMS熱重量分析及び/又はTG−MSによって決定されうる、溶媒の脱ガス及び分子汚染が低いと思われる。これは、脱ガスした蒸気の低濃度(例えば、ppm以下、ppb以下又はppt以下)の汚染が、材料(未被覆及び被覆されたウエハー、レチクル、レンズ又は他の基板等)に吸着し、材料に有害である可能性があり、同様に半導体及び製薬用途に使用されるプロセスに害を及ぼす可能性があるこのような材料にとって、重要な性質となりうる。本発明の組成物における低レベルの脱ガス又はガス透過率は、例えばレチクルの曇り、ガス(炭化水素等)の基板への吸着、又は光学部品の屈折率を改変できる汚染物質の吸着(これらに限定されない)によって生じる欠陥を低減するのに有利である。
【0034】
有利には、本発明の組成物及びそれあらの作製方法の実施形態は、また高い炭素投入濃度も見込こみ、従来から使用できるよりも少ないナノチューブの投入量で電気抵抗の低下を同時にもたらし、それは、また、組成物及び得られる物品のコストを削減する。また、他の小サイズのカーボンフィラー(即ち、カーボンブラック、カーボンナノファイバ、及びカーボンナノチューブ)と遭遇することが多くて結果として投入炭素の最大濃度を低下させる、不利な粒子−粒子相互作用又は粒子−ベースポリマ相互作用を削減又は排除する一方、高い炭素投入濃度を達成できる。さらに、本発明の組成物及びそれらの作製方法の実施形態は、ベースレジンのレオロジー的性質が実質的に保持される又は他の小さいサイズのカーボンフィラーと比較してより同じ程度であるように、比較的大きいフィラーサイズの炭素繊維を維持する。尚さらに、本発明の組成物及びそれらの作製方法の実施形態は、最終物品の、異方性が実質的に低減もしくは排除される等方性(収縮変動及び反りの問題を含む)を提供し、それは、炭素繊維のランダムでない配向のせいで従来から観察されており、局所的な流域によって決まる形で炭素繊維の配向に依存することが多く、結果として収縮時に局所的な変動となり、従って最終物品の反りの一因となる。また尚さらに、本発明の組成物及びそれらの作製方法の実施形態は、また、処理中に容易にそしてベースポリマと同じように流れるポリマーブレンドにも備える。
【0035】
本発明の実施形態における、分散又は分布したナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を含んでなるポリマー組成物は、追加の溶融押出の溶融サイクルではっきりと感知できるほど変
化しない貯蔵弾性率及び電気抵抗率を有すると企図されている。これは、繰り返される溶融プロセスの結果としてSWNTポリマー複合体の性質が変化する他のプロセスよりも有利である。本発明の実施形態は、物品(チップキャリア、レチクルドーム、ウエハーキャリア或いは他の筐体もしくは流体が接触する物品等(これらに限定されない))よりも厳密なプロセス管理を可能にする一貫した電気的及び機械的性質を有する、ポリマー複合体を提供することができる。制電性ポリマーの物品は、ポリマー中のSWNTのフィルムを引き伸ばして配向させることなく、本発明の実施形態から作製することができる。
【0036】
本発明の実施形態における組成物及びそれらから作製される物品は、様々な工業用及び構造用プラスチックに使用されてもよい。これらのプラスチックは、例えば、基板キャリア(ウエハーキャリア、レチクルポッド、シッパー、チップトレイ、試験ソケット、ヘッドトレイ(読出及び/又は書込)等(これらに限定されない))、流体管、化学薬品用容器等(これらに限定されない)の、制電性材料を作製するために使用されてもよい。本発明の組成物は、増大した熱伝導性から利益を得る用途(熱交換器、センサ、軽量自動車部品)において使用するための、防火性プラスチック及び構造材料を作製するために使用されてもよい。ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維は、複合材料の一部となり、これらの材料において固有の物理的、化学的又は機械的性質(導電性及び/又は熱伝導性、化学的不活性、機械的靱性、及びこれらの組合せ等(これらに限定されない))を引き出すことができる。カーボンナノチューブ自体、ならびにカーボンナノチューブ(SWNT等)を含んでなる材料及び構造体は、燃料電池、水素化、改質及び分解等のような工業用及び化学デバイスならびにプロセスに使用される触媒の担持体としても有用でありうる。
【0037】
有利には、カーボンナノチューブ及び炭素繊維は、炭素粒子よりも高強度であり、粒子離脱の低減又は排除が重要である用途では、微粉砕炭素繊維及びカーボンナノチューブを使用することにより、より少ない粒子を提供するだろう。SWNT及び炭素繊維は、炭素粉末よりも清浄である。防火性又は制電性を達成するために、微粉砕炭素繊維を用いて、高い炭素投入濃度を維持する一方より少ないナノチューブ投入量を利用し、また連続プロセスを使用して本発明の実施形態におけるポリマー/ナノチューブ/微粉砕炭素繊維の分散体を調製することができるので、本発明の実施形態における複合体及びそれらから作製される物品は、伝統的多層ナノチューブポリマー複合体、伝統的単層ナノチューブポリマー複合体、及び伝統的な炭素繊維ポリマー複合体と比較して、ポンドあたりの価格を低くすることができる。
【0038】
本発明は、添付の図面と関連して、以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を考慮して、さらに完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】スケールバーが各々1ミクロンと100nmである、SWNTのSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、SWNTは、異なるサイズの束として存在し、通常個々として存在しない)。
図1B】スケールバーが各々1ミクロンと100nmである、SWNTのSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、SWNTは、異なるサイズの束として存在し、通常個々として存在しない)。
図1C】スケールバーが各々1ミクロンと100nmである、MWNTのSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、MWNTは、異なるサイズの個々として存在する)。
図1D】スケールバーが各々1ミクロンと100nmである、MWNTのSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、MWNTは、異なるサイズの個々として存在する)。
図1E】スケールバーが各々1ミクロンと100nmである、炭素粉末のSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、炭素粉末粒子は、大きな凝集塊を形成する)。
図1F】スケールバーが各々1ミクロンと100nmである、炭素粉末のSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、炭素粉末粒子は、大きな凝集塊を形成する)。
図1G】プロセス処理の前に10より大きいアスペクト比を有する炭素繊維の、スケールバーが各々1ミクロンと10ミクロンであるSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、炭素繊維は、図1A〜1Fに示される他の種類の炭素よりも約100倍超大きい)。
図1H】プロセス処理の前に10より大きいアスペクト比を有する炭素繊維の、スケールバーが各々1ミクロンと10ミクロンであるSEM画像(SEM画像において示される標準の状況下で、炭素繊維は、図1A〜1Fに示される他の種類の炭素よりも約100倍超大きい)。
図2】スケールバーが50ミクロンである、炭素繊維の光学顕微鏡像。
図3】スケールバーが50ミクロンである、本発明の実施形態による微粉砕炭素繊維の光学顕微鏡像。
図4】本発明の実施形態の実施例1の組成物(MWNT(1.25%)と1より大きくかつ約5未満のアスペクト比を有する微粉砕炭素繊維(35%)を有するPEEKポリマー)及び比較例A(約20以上のアスペクト比を有する炭素繊維(約20%)を有するPEEKポリマー)の熱サイクル試験データのグラフ(上述の組成物の各々から作製したカセットを150℃(302°F)、200℃(392°F)、250℃(482°F)、及び300℃(572°F)まで加熱し、各々のこれらの温度まで加熱した後に主要寸法を測定する。グラフのデータから示されるように、実施例1による組成物からなるカセットは、比較例Aによる組成物よりも「0」に近い値を有し、変動が小さくかつカセット全体にわたってさらに等方性に優れていることを示す)。
図5】Pro−Stat PRS−801抵抗測定装置を用いて2点プローブで実施例1と比較例Aの両方の組成物からなる200mmカセット上の96箇所を測定する表面抵抗試験データのグラフ(試験データは、実施例1の組成物からなるカセットが主にゲートとゲートの反対の位置に関して僅かな異常値を有するより密な分布を含むことを示す)。
図6A】表面抵抗を測定するための特定された12箇所を有するディスクの概略を示す模式図。
図6B】Pro−Stat PRS−801抵抗測定装置を用いて2点プローブで実施例1と比較的大きなサイズの炭素繊維を有する比較例B(約20以上のアスペクト比を有する炭素繊維(約20%)を有するPEEK)の両方の組成物からなるディスクで図6Aの特定された12箇所を測定する表面抵抗試験データのグラフ(試験データは、実施例1の組成物からなるディスクがより密な分布を含むことを示す)。
図7A】表面抵抗を測定するための特定された67箇所を有するディスクの概略を示す模式図。
図7B】Pro−Stat PRS−801抵抗測定装置を用いて2点プローブで実施例1と比較的大きなサイズの炭素繊維を有する比較例Bの両方の組成物からなるディスクで図7Aの特定された67箇所を測定する表面抵抗試験データのグラフ(試験データは、実施例1の組成物からなるディスクがディスク全体にわたって再現性のある均一な表面抵抗と、ゲートの反対側に位置する位置13に僅かな偏差を有するより密な分布を含むことを示す)。
図8A】実施例1及び比較例Aの組成物からなるディスクの全容積(mm)を示す摩耗試験データのグラフ(データは、センター・フォー・トリボロジー(カリフォルニア州キャンベル)からのピンオンディスク配置のUMT−2摩擦摩耗試験機を用いて得られ、試験パラメータは、半球状先端付きピン(R=2mm)、鋼(HRC=50−50)及びRa≒0.05μmの対向面、滑り距離2500mを有する円形摩耗経路(circular wear path)、0.2kgの垂直力、0.05m/sの滑り速度、及び静電容量センサ(0.025μm解像度)で測定した線摩耗量及び線摩耗量/試料形態から算出される容積減量を有する)。
図8B】実施例1及び比較例Aの組成物からなるディスクの平均比摩耗量(mm/N−m)を示す摩耗試験データのグラフ(データは、センター・フォー・トリボロジー(カリフォルニア州キャンベル))からのピンオンディスク配置のUMT−2摩擦摩耗試験機を用いて得られ、試験パラメータは、半球状先端付きピン(R=2mm)、鋼(HRC=50−50)及びRa≒0.05μmの対向面、滑り距離2500mを有する円形摩耗経路、0.2kgの垂直力、0.05m/sの滑り速度、及び静電容量センサ(0.025μm解像度)で測定した線摩耗量及び線摩耗量/試料形態から算出される容積減量を有する。平均比摩耗量は、容積減量/垂直力/滑り距離によって算出される)。
図9A】実施例1、比較例A及び比較例C(約20重量%の炭素繊維と約20以上のアスペクト比を有するPEEK)の組成物からなる材料の脱ガス量(ppm)を示す分子汚染データのグラフ。
図9B】実施例1、比較例A及び比較例Cの組成物からなる材料の全陰イオン量(ppb)を示す分子汚染データのグラフ。
図9C】実施例1、比較例A及び比較例Cの組成物からなる材料の全陽イオン量(ppb)を示す分子汚染データのグラフ。
図9D】実施例1、比較例A及び比較例Cの組成物からなる材料の全金属量(ppb)を示す分子汚染データのグラフ(実施例1の組成物からなる材料は、カーボンナノチューブが標準使用の条件下でそれらに結合する金属を有するので、より高い金属濃度を有する)。
図10A】ポリマー1010Aと導電性フィラー1030A(ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維)を分散混合するプロセスの機器(これに限定されない)の概略を示す図(押出は、本質的に同時の手法で生じることが可能であり、それは、ホッパー1026Aを介するカーボンフィラー1030A(乾燥ナノチューブ及び/又は乾燥微粉砕炭素繊維)とホッパー1014Aを介するポリマー1010Aの充満供給又は飢餓供給であることが可能であり、二軸スクリュー押出機の1018A及び1022Aは、材料を押出混合して押出機1050A内で材料1034Aを形成する。押出組成物1038Aは、ダイ1060Aから取り除かれうる。押出機1050Aは、1つもしくは複数の加熱ゾーン又は加熱勾配(図示しない)を用いて、ポリマー融点を超えて加熱することができる)。
図10B】ポリマー1010Bと導電性フィラー1030B(ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維)を分散混合するプロセスの機器(これに限定されない)の概略を示す図(押出配合は、ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維とポリマーの予めブレンドされた混合物を任意に使用して、二軸スクリュー押出機1018B及び1022Bへの単一ホッパー1014Bでの供給で、材料を押出混合にして押出機1050B内で材料1034Bを形成することができる。押し出された組成物1038Bは、ダイ1060Bから取り除かれうる。押出機1050Bは、1つもしくは複数の加熱ゾーン又は加熱勾配(図示しない)を用いてポリマー融点を超えて加熱することができる)。
図11A】ナノチューブと微粉砕炭素繊維とポリマーの押出分散混合物(図示しない)の循環押出配合(1110A)を示す図(押出機1150Aにおいて形成された材料1134Aは、ダイ1160Aから取り出され(1138A)、貯蔵弾性率又は抵抗率に関して分析し、次いで1110Aとして押出機に再び戻すことができる)。
図11B】ホッパー1114Bならびに押出軸1118B及び1122Bからのポリマー1110Bの溶融体の形成を示す図(長さ(D)の押出機1150Bの半分の長さ(D/2)以上のところのホッパー1126Bの位置で、導電性フィラー1130B(ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維)をポリマーの押出溶融体1134Bに加えて押出配合し、材料1138Bを形成することができ、その材料は、材料1142Bとしてダイ1160Bから取り出すことができる)。
図12】実施例1、比較例A及び比較例D(1.25重量%のMWCNTと35重量%の、約20のアペクト比を有する150μm炭素繊維とを有するPEEKポリマー)の組成物からなる材料に関する3点曲げ屈曲試験を用いるヤング率に関するデータのグラフ(微粉砕炭素繊維の長さが短いのが起因して、本発明の実施形態による実施例1の組成物のヤング率が低い結果となる)。
図13A】実施例1の組成物から形成される物品の約150℃の温度でのたわみ試験中の機器の写真(図13A−13Cのうち、実施例1の組成物(図13A)から形成された物品が3種の材料の加熱において最もたわみが小さいことを示す)。
図13B】PEEK中に約60%酸化スズを含んでなり炭素を含有しない比較用の導電性セラミックフィラーから形成される物品の約150℃の温度でのたわみ試験中の機器の写真(図13A−13Cのうち、実施例1の組成物(図13A)から形成された物品が3種の材料の加熱において最もたわみが小さいことを示す)。
図13C】PEEK中に約20%投入した約20のアスペクト比を有する従来の炭素繊維(図13C)から形成される物品の約150℃の温度でのたわみ試験中の機器の写真(図13A−13Cのうち、実施例1の組成物(図13A)から形成された物品が3種の材料の加熱において最もたわみが小さいことを示す)。
図14】本発明の実施形態による組成物及び比較用の組成物から形成される様々な物品に関する平坦度データを示す表(最初の2列の本発明の実施形態による微粉砕炭素繊維及びMWCNTを含有する組成物と、約20のアスペクト比を有する従来の炭素繊維(「従来炭素繊維」)を含んでなる比較用の組成物である)。
図15A】実施例1の組成物による、PEEK中に分散するカーボンナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の固体サンプルから形成した2種のスタックトレイの写真(カーボンナノチューブ及び微粉砕炭素繊維は、押出配合により、PEEKポリマーの押出溶融体中に加えられる)。
図15B】2番目のスタックトレイの上に積み重ねた1番目のスタックトレイの写真。
図15C】上面のスタックトレイと底面のスタックトレイの端をクリップで作動可能に一緒に係合している積み重ねられた2層スタックトレイの写真。
図16】得られた物品の平坦度を測定するために特定した13箇所を有する、本発明の実施形態による、PEEK中に分散するカーボンナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の固体サンプルの写真。
図17図16に示されるスタックトレイの平坦度測定の概略図(生データ(最も低い測定地に対する高さ)を測定し、ベストフィット面のデータを適用して、平坦度の算出に使用されるベストフィット面からの偏差に到達する傾きを消去する)。
図18A】2番目のスタックトレイの上に積み重ねた1番目のスタックトレイの上面(図15Aに示す通り)のベストフィット面からの偏差の概略図。
図18B】2番目のスタックトレイの上に積み重ねた1番目のスタックトレイの底面のベストフィット面からの偏差の概略図。
図18C】上記のスタックトレイの上に積み重ねた1番目のスタックトレイを有する2番目のスタックトレイの上面のベストフィット面からの偏差の概略図。
図18D】それらの上に積み重ねた1番目のスタックトレイを有する2番目のスタックトレイの底面のベストフィット面からの偏差の概略図。
図19図18A〜18Dの1番目のトレイと2番目のトレイ間の間隙の測定の概略図であり、1番目の上のスタックトレイの底面のベストフィット面からの偏差の概略図と、2番目の下のスタックトレイの上面のベストフィット面からの偏差の概略図と、結果として生じるトレイ間の間隙とを示す(挿入されてスタックトレイ内に運ばれたスライダの厚さ0.23mm(0.009’’)よりも小さい0.15mm(約0.006’’)となることは、スライダは、トレイ間の間隙にはめ込まれず、滑り落ちないことを示す)。
図20】Pro−Stat PRS−801抵抗測定装置を用いて2点プローブで、実施例1(PEEK、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比を有する約35重量%の微粉砕炭素繊維、及び約1.25重量%のMWNT)、比較例1(PEEK及び約5%のSWNT)、比較例2(PEEK及び約5%のMWNT)、比較例3(PEEK及び約4%のSWNT)、比較例4(PEEK及び約15%の炭素粉末)、比較例5(PEEK及び約18%の炭素粉末)及び比較例6(PEEK及び約20%の約20のアスペクト比を有する炭素繊維)の組成物からなるディスクで図7Aにおいて特定した67箇所を測定する表面抵抗試験データのグラフ(試験データは、実施例1の組成物からなるディスクが、ディスク全体にわたって再現性のある均一な表面抵抗と、ゲートと反対側に位置する位置13に僅かな偏差とを有するより密な分布を含むことを示す)。
図21】Pro−Stat PRS−801抵抗測定装置を用いて2点プローブで、特定の組成物(FMCFと呼ばれる1より大きくかつ約5未満のアスペクト比を有する微粉砕炭素繊維、及びCFと呼ばれる約20のアスペクト比を有する炭素繊維)からなるディスクで図7Aにおいて特定した67箇所を測定した表面抵抗試験データのグラフ(その組成物は、様々な射出速度(「ips」)で物品に成形され、試験データは、本発明の実施形態による組成物が他のカーボンフィラーを用いる他のポリマー複合体よりもプロセスに影響され難いことを示す)。
図22】Pro−Stat PRS−801抵抗測定装置を用いて2点プローブで、特定の組成物(FMCFと呼ばれる1より大きくかつ約5未満のアスペクト比を有する微粉砕炭素繊維)からなるディスクで図6Aにおいて特定した12箇所を測定した表面抵抗試験データのグラフ(その組成物は、0.5の射出速度で物品に成形され、試験データは、組成物が首尾一貫したもしくは安定した表面抵抗を有するような、カーボンナノチューブを含有する組成物の利点をさらに示す)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、様々な修正形態及び代替形態に変更することが可能であるが、それらの具体例が、一例として図面に示され、また詳細に説明される。しかしながら、本発明は、記載される特定の実施形態に本発明を限定しないことを理解するべきである。反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の趣旨と範囲内にある全ての修正、等価、及び代替を包含する。
【0041】
本発明の組成物及び方法を説明する前に、説明される特定の分子、組成物、方法論又はプロトコルは、変化し得るため、本発明はこれらに限定されないことを理解するべきである。また、説明において使用される専門用語は、特定の変形形態又は実施形態だけを説明することを目的とし、添付の請求項によってのみ限定されるものとする本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解するべきである。
【0042】
本明細書及び添付の請求項において使用される、単数形の「a」、「an」及び「the」には、文脈上異なる定義が明示されていない限り、複数の呼称も含まれることも留意しなければならない。したがって、例えば、「ナノチューブ」という呼称は、1つ又は複数のナノチューブ、及び当業者等には既知のその等価物等を指している。他に定義されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術的及び科学的用語は、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で説明されているのと同様又は等価のいかなる方法及び材料も、本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、好適な方法、デバイス、及び材料が以下に説明される。本明細書で言及される全ての出版物は、参照により援用されている。本明細書において、本発明が以前の発明の効力によるそのような開示に先行する権利がないことを認めていると解釈されるものはない。「任意の」又は「任意による」は、続いて説明される事象又は状況が生じてもよいし生じなくてもよいことを意味し、そしてその説明には、事象が生じる場合と生じない場合が含まれることを意味する。全ての数値は、本明細書において、明示されるか否かに関わらず、用語「約」によって修飾されるとみなされる。用語「約」は、一般的に、当業者が、挙げられた値と等価である(即ち同じ機能又は結果を有する)とみなす数字の範囲を指
す。いくつかの実施形態において、用語「約」は、示された値の±10%を指し、他の実施形態において、用語「約」は、示された値の±2%を指す。いくつかの実施形態において、サンプルは、組成物を作製するために使用されるプロセスによって複数回押出されていてもよく、いくつかの実施形態においては、組成物を作成するために使用されるプロセスによって5回未満押出されていてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、さらなる押出サイクルによる組成物の貯蔵弾性率の増加及び/又は抵抗率の減少に対して実質的に不変である。G’は、さらなる押出プロセスサイクル又は時間による分散性の向上が認められていないので、貯蔵弾性率の増加及び/又は抵抗率の減少に対し実質的に不変である。理論に束縛されることを望まないが、例えば、ナノチューブが凝集体を経ることにより、分散性が悪化するので、複合体のさらなる押出プロセスは、G’を減少させる。ポリマー、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の複合材料の実施形態は、貯蔵弾性率が最大に達し、さらなる応力の誘引で分散性が低下する。当業者には既知であるように、せん断弾性率は、貯蔵弾性率(或いはせん断貯蔵弾性率G’又は弾性率とも)と呼ばれることもある。
【0043】
組成物及び方法は、様々な成分又は工程を「含んでなる」(「含むがしかし限定されない」を意味すると解釈される)によって説明されている一方、組成物及び方法は、また、様々な成分及び工程「から実質的に構成される」又は「から構成される」(このような用語は実質的に限定された要素群を定義するものと解釈されるべきである)こともできる。
【0044】
本発明の実施形態は、固化状態の溶融体から導電性又は粘弾性の材料を形成する熱可塑性物質の溶融物中に分布したナノチューブ(例えばいくつかの変形形態は、SWNT、MWNT、SWNT及び/又はMWNTを含んでなるナノチューブを含む)を含む。SWNT及び/又はMWNTの場合、ロープ又はチューブが、ポリマーの連続相においてネットワーク又はマトリックスを形成し、これは、個々のナノチューブを溶媒中に懸濁させて、それらを直鎖ポリマーと作用させることによって調製される個々のポリマー被覆ナノチューブとは対照的である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、熱可塑性ポリマーを含んでなり、そのポリマーは、フォームでもエラストマーでもなく、熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマー中に分散するナノチューブ及び微粉砕炭素繊維のネットワークを含む。いくつかの実施形態において、ナノチューブの量は、約0.5重量%〜約5重量%であり、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比を有する微粉砕炭素繊維の量は、約20重量%〜約50重量%である。いくつかの実施形態において、組成物は、追加の炭素粉末及び/又は約5より大きいアスペクト比を有する炭素繊維を含まない。
【0046】
いくつかの実施形態において、ナノチューブは、100以上のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、L/Dは、1000以上(1〜3.5nm又は4nm(ロープ)の直径と1000nm以上の長さ)となることが可能である。組成物は、溶融混合、例えば押出プロセスによって作製され、有利には、ナノチューブを分散させる又はポリマーを溶解させるのに使用する溶媒を含有しない。減圧条件下で、組成物は、0.38ppb(v/v)未満の溶媒蒸気を脱ガスするが、その溶媒は、ポリマーを溶解することができるものであり、或いはナノチューブ分散体を形成する際に使用されたものである。本発明の複合体の脱ガス量及びは溶媒キャスト又は他の同様な方法により作製される複合体の脱ガス量は、この方法により、或いは米国特許出願公開第20030066780号明細書(2001年10月4日出願、2003年4月10日公開、この内容は参照により全て本明細書に援用されている)においてザブカらにより開示されている方法により、決定することができる。
【0047】
本発明の組成物のいくつかの実施形態において、サンプルからの水溶出性陰イオンは、
約40ppb以下であることが可能であり、サンプルからの水溶出性陽イオンは、約160ppb以下であることが可能であり、サンプルからの酸溶出性金属は、約4800ppb以下であることが可能である。
【0048】
有利には、組成物中のナノチューブは、ポリマー被覆のSWNTではない。これにより、このような組成物のコストが削減され、金属性、半金属性、半導電性又はこれらの任意の組合せのSWNT、MWNT、又は微粉砕炭素繊維を有する他のナノチューブに、所望の表面抵抗率(ポリマー中に分散する、ナノチューブの量及び微粉砕炭素繊維の量によって決まる)に整調できうる組成物中で、電気的パーコレーションネットワークを形成させることが可能となる。本発明のいくつかの実施形態において、組成物又は物品は、約1013オーム/sq未満の電気抵抗を有し、いくつかの組成物又は物品は、約1011オーム/sq未満の電気抵抗を有し、いくつかの組成物又は物品は、約10オーム/sq未満の抵抗率を有し、いくつかの組成物又は物品は、約10オーム/sq未満の抵抗率を有し、他の実施形態の組成物又は物品は、約10オーム/sq未満の電気抵抗を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、組成物又は物品の電気抵抗は、ポリマー中のナノチューブの量及び/又は微細分散炭素繊維の量を変えることにより、整調されてもよい。
【0049】
サンプルの電気的パーコレーション閾値は、組成物の連続ポリマーマトリックスを介する導電経路を形成する、導電性繊維、導電性粒子、2種以上の導電性ナノチューブのロープ、個々の導電性ナノチューブ、又はこれらの任意の組合せの十分な近接である。例えば、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を有する複合体に関して、パーコレーション閾値は、十分な数のナノチューブのロープ又はナノチューブ、もしくは炭素繊維又はそれらの組み合わせが、サンプル中の電荷担体(印加された電場に応じて移動する)の距離内に存在する場所であってよい。いくつかの実施形態において、隣接したチューブ又はロープもしくは微粉砕炭素繊維の一部との間の距離は、約5nm以下であることが可能である。
【0050】
組成物は、流体操作、ウエハーのような様々な基板のキャリア、レチクルマスク及び完成品(コンピュータチップ及びディスクドライブならびに他の同様の種類の読取ヘッド等)、筐体もしくは本体、或いは様々なデバイス(メンブレンフィルタ、バルブもしくは流量制御器等)のコンポーネント用の様々な物品に形成することが可能である。
【0051】
本発明における組成物の実施形態は、貯蔵弾性率の値及び周波数に対する貯蔵弾性率の傾きによって特徴付けられる、キャストフィルムより極めて大きな厚みを有する一方、ポリマー中のナノチューブ及び微粉砕炭素繊維のネットワーク構造を保持する、原料部品又は物品に形成されることが可能である。本発明の実施形態における組成物を含む、組成物又は物品の構造の一部の厚さに制限はないが、いくつかの実施形態において組成物又は物品は、約1mm超(いくつかの実施形態において約10mm超、及び他の実施形態において10cm以上)の最小寸法又は厚さを有することが可能である。より厚い組成物及び物品は、構造的用途(パーティション、実験室防爆シールド、実験室フード窓、配管、フィルタハウジング連結管、弁本体ブロック、ウエハー及びレチクルキャリアの支持等)に使用することが可能である。これらの厚い材料は、フィルムキャストにより直接形成することがさらに困難であり、或いは、キャストフィルム片を一緒に熱間プレスしてより厚い片を形成するような追加の処理工程を必要としうる。
【0052】
ナノチューブは、本発明の実施形態における組成物中の構成要素として使用されうる、ナノメートル又は分子サイズの材料の例である。これらのナノチューブは、導電性原子をドープしてもよく、いくつかの場合において、ドーパントが、チューブの内にあることもあり、或いはドーパントが、機能化表面を備えてもよい。ナノチューブの例は、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)又は二硫化タン
グステンナノチューブである。いくつかの実施形態において、組成物は、官能化も酸化もされていないポリマー中に分散するSWNTであるナノチューブ又はそれらのロープを含んでなる。いくつかの実施形態において、組成物は、ポリマー中に分散するSWNTであるナノチューブ又はそれらのロープから実質的構成される。いくつかの実施形態において、組成物は、ポリマー中に分散するSWNTであるナノチューブ又はそのロープから構成される。いくつかの実施形態において、SWNTは、他のナノチューブ(例えば、MWNT)、他の導電性粒子(炭素等)を含んでなってもよい。いくつかの組成物において、ナノチューブは、さらなる精製をしないで、使用することが可能である。他の実施形態において、ナノチューブは、本発明の成形物品のいくつかの用途において抽出される可能性のある有害な金属及び触媒を除去するために精製されてもよい。いくつかの実施形態において、SWNTは、酸化されてなく、かつ表面官能基がない。
【0053】
本発明の実施形態におけるナノチューブは、個々のチューブ、ロープとも呼ばれるチューブの凝集体の両方、又はこれらの組合せを指すことが可能である。ナノチューブの押出配合は、より小さな凝集体に、個々のチューブにナノチューブの凝集体を分散させることが可能であり、或いは個々のチューブとロープの混合物を形成することが可能である。凝集したナノチューブ及び個々のチューブは、ポリマーマトリックスの連続相中に分布又は分散することが可能である。
【0054】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物によるポリマー中のナノチューブの量は、約5重量%未満(いくつかの実施形態において約4重量%以下、いくつかの実施形態において約3重量%以下、及びさらにいくつかの実施形態において約2重量%未満)でありうる。本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー中のナノチューブの量は、約0.5重量%〜約5重量%(いくつかの実施形態において約0.75重量%〜約4重量%、いくつかの実施形態において約1重量%〜約3重量%、さらに他の実施形態において約1.25重量%〜約2.5重量%)の範囲であってよい。ナノチューブは、それらの最初の状態(押出配合する前等)と比べて、ネットワーク内で少なくとも一部分凝集が解かれているか又は分散している。
【0055】
いくつかの実施形態において、微粉砕炭素繊維は、約10より大きい(約20等)アスペクト比を有する炭素繊維として最初に提供され、次に、アスペクト比が、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)になるまで、アスペクト比を修正或いはそうでなければ変更するプロセスを経る。いくつかの実施形態において、アスペクト比を修正するために、炭素繊維は、粉砕され、微粉状にされ、研削され、細断され、せん断破壊等される。本明細書において用語「微粉砕炭素繊維」は、アスペクト比(長さ/直径)が、それらを修正するのに使用されるプロセスに関係なく、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、さらに他の実施形態において約2〜約4)のアスペクト比を有するように短くした長さ及び/又は直径を有する、結果として生成する炭素繊維を指すと理解されるべきである。いくつかの実施形態において、修正プロセスを経る前に、炭素繊維は、長さの方が長いと企図して、直径が約5ミクロン〜約20ミクロン、長さが約50ミクロン〜約25,000ミクロンであり、結果として生成する微粉砕炭素繊維は、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比(いくつかの実施形態において約1.5〜約5のアスペクト比、及びさらに他の実施形態において約2〜約4のアスペクト比)を有する。いくつかの実施形態において、修正プロセスを経る前に、炭素繊維は、長さの方が長いと企図して、直径が約6ミクロン〜約18ミクロン、長さが約110ミクロン〜約2,500ミクロンであり、結果として生成する微粉砕炭素繊維は、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比(いくつかの実施形態において約1.5〜約5のアスペクト比、及びさらに他の実施形態において約2〜約4のアスペクト比)を有する。いくつかの実施形態において、修正プロセスを経た後、炭素繊維は、約5ミクロン〜約12ミクロンの平均直径、及び約10ミ
クロン〜約40ミクロンの平均長さを有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、最初に提供される炭素繊維は、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)のアスペクト比を有する微粉砕炭素繊維であり、最初に提供される炭素繊維は、炭素繊維の長さ及び/又は直径を修正又は変更するいかなるプロセスも経る必要がない。本明細書において、用語「微粉砕炭素繊維」は、従って、アスペクト比(長さ/直径)が、1より大きくかつ約5未満(いくつかの実施形態において約1.5〜約5、及びさらに他の実施形態において約2〜約4)であるように、最初もしくは初期の長さ及び直径を有する炭素繊維を指すと理解されるべきである。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、約5ミクロン〜約12ミクロンの平均直径及び約10ミクロン〜約40ミクロンの平均長さと、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比とを有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、約6ミクロン〜約10ミクロンの平均直径及び約10ミクロン〜約30ミクロンの平均長さと、1より大きくかつ約5未満のアスペクト比とを有する。
【0057】
いくつかの実施形態においてポリマー中の微粉砕カーボンチューブは、約20重量%超(いくつかの実施形態において約25重量%超、いくつかの実施形態において約30重量%超、いくつかの実施形態において約35重量%超、いくつかの実施形態において約40重量%超、いくつかの実施形態において約45重量%超、さらにいくつかの実施形態において約50重量%未満)であることが可能である。本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー中の微粉砕炭素繊維の量は、約20重量%〜約50重量%(いくつかの実施形態において約25重量%〜約45重量%、いくつかの実施形態において約30重量%〜約40重量%、さらに他の実施形態において約33重量%〜約38重量%)であることが可能である。いくつかの実施形態において、微粉砕炭素繊維は、それらの最初の状態(押出配合前等)において、集塊していない。
【0058】
分散性が高いほど、連続相中のナノチューブのより高密度のネットワークが提供され、これにより、組成物又は成形物品に向上した防火性が付与され、物品は、炎に曝された際にポリマーの液垂れを起こしにくく、より大きな常用荷重を有し、及びより少ないナノチューブの投入量(コストを削減する)で、電気抵抗率の低下ももたらす。
【0059】
いくつかの実施形態において、ナノチューブは、チューブの末端及び/又は側面に追加の化学修飾のない未加工のものである。他の実施形態において、ナノチューブは、それらの押出配合、ポリマーマトリックス中への分散又は分布に役立たせるために化学修飾されてもよいと考えられている。いくつかの実施形態において、ナノチューブは、官能化ナノチューブと非官能化ナノチューブの混合物を含んでなってもよい。いくつかの実施形態において、ナノチューブは、ナノチューブの炭素原子に連結もしくは結合した、官能基、ナノチューブの酸化により形成される基、及び特に有機官能基を含まないか又は存在しない。これにより、本発明の実施形態におけるナノチューブ、及びそれらから作製される組成物のコストが削減される。
【0060】
ロープ、チューブ又はこれらの組合せとしてのナノチューブは、本発明の様々な実施形態における組成物に使用することが可能である。用語「ナノチューブ」は、特定の形態が言及されない限り、これらのロープ、チューブ又はこれらの組合せのいずれを指すことが可能である。例えば、SWNTは、ロープ、チューブ又はこれらの組合せを指し、一方「SWNTチューブ」は、分離したナノチューブのみを指す。ロープ又は個々のチューブとしてのナノチューブは、それらのアスペクト比(長さ/直径)により特徴付けるられることが可能である。図1A,1Bに示されるように、SWNT又はそれらのロープは、数十ナノメートルから数百ナノメートルの長さを有することが可能である。数ミクロンの長さを有するナノチューブが使用されてもよい。直径は、SWNTチューブでは、約1ナノメ
ートル、チューブのロープでは、それよりも大きくなりうる。高いアスペクト比の材料を使用することが可能であり、アスペクト比は、いくつかの実施形態において約25超、他の実施形態において約100超、さらに他の実施形態において約250超である。使用するナノチューブ材料はより少なくてよいので、より高いアスペクト比が有利である。本発明によるカーボンナノチューブは、別々に、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、二層カーボンナノチューブ、バッキーチューブ、カーボンフィブリル及びそれらの組合せでありうる。このようなカーボンナノチューブは、任意の既知の技術により作製可能であり、好ましくは酸化しないで、任意に精製されることができる。このようなカーボンナノチューブは、金属性、半導体性、半金属性、及びそれらの組合せでありうる。
【0061】
カーボンナノチューブは、そのサイズが小さいので、ポリマー樹脂に分散する際に集塊する傾向がある。複合体中の良好なレオロジー的及び/又は電気的性質を達成するために、ポリマーマトリックス内でのナノチューブ又はそれらのロープの均一な分散が有益である。連続相中のナノチューブの分散の均一性が良好なほど、貯蔵弾性率の傾きは、小さい。さらに、均一性が良好なほど、所与の貯蔵弾性率又は導電性を達成するために使用できるナノチューブの質量又は重量パーセントが低くなる。少ない投入量を用いるほど、材料コストを削減することができる。
【0062】
ナノチューブの成長中にチューブの絡み合いが生じることがあるので、凝集塊が、単層カーボンナノチューブ中に生じうる。組成物及びそれらの作製方法の実施形態は、これらの形態及び他の形態のナノチューブ又は単層カーボンナノチューブとのこのような凝集を克服し、少ないナノチューブの投入量(約5重量%以下)で、レオロジー的及び/又は電気的パーコレーション閾値を超える組成物を実現する。成分を押出配合する前に、音波処理、被覆、化学的処理又は他の既知の方法により、ナノチューブの凝集塊を解いてもよい。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態は、SWNTから構成される、本質的に構成される、又は含んでなる。本発明の様々な実施形態のためのSWNT及びそれらの作製方法として、米国特許出願公開第2002/0046872号明細書及び米国特許第6,936,233号明細書(これらの各々の教示は、参照することにより全て本明細書に援用されている)に開示されるものが挙げられる。適切な原料ナノチューブは、公知である。用語「ナノチューブ」は、説明されているような従来の意味を有する(R.サイトウ(R.Saito)、G.ドレッセルハウス(G.Dresselhaus)、M.S.ドレッセルハウス(M.S.Dresselhaus)著、「カーボンナノチューブの物性(Physical Properties of Carbon Nanotubes)」、インペリアル・カレッジ・プレス(Imperial College Press)、ロンドン、英国、1998年、又はA.ゼトル(A.Zettl)著、「非カーボンナノチューブ(Non−Carbon Nanotubes)」、先端材料(Advanced Materials)、1996年、第8巻、p.443)(これらの教示は、参照することにより全て本明細書に援用されている)を参照)。本発明において有用なナノチューブとして、例えば、直線及び湾曲した多層ナノチューブ、直線及び湾曲した単層ナノチューブならびにこれらのナノチューブ形態の様々な組成物及びナノチューブ調製において含有される一般的な副生成物を挙げることができる。異なるアスペクト比(即ち長さ/直径の比)のナノチューブも、ドーパント(これに限定されない)をはじめとする様々な化学組成のナノチューブも本発明において有用である。市販のSWNTは、ユニダイム(Unidym)(カリフォルニア州サニーヴェール)から入手可能であり、本発明の実施形態は、バッキー(Bucky) ESD34又はXD等の様々なグレードのナノチューブを分散させることができる。カーボンナノチューブは、カルボレックス社(CarboLex,Inc.)(ケンタッキー州レキシントン)からも様々な形態及び純度で市販されており
、ハイピリオン(Hyperion)マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge,Mass)、ダイナミック・エンタープライズ社(Dynamic Enterprises Limited(英国バークシャー州)からも様々な形態及び純度で市販されており、及びサウスウエスト・ナノテクノロジーズ(Southwest Nanotechnologies)(オクラホマ州ノーマン)からも市販されている。
【0064】
いくつかの実施形態におけるナノチューブは、多層カーボンナノチューブ(MWNT)を含んでなってもよく、それらは、市販されており、MWNTの作製方法は、公知である。
【0065】
いくつかの実施形態におけるナノチューブは、二硫化タングステン、窒化ホウ素、SiC、及びナノチューブを形成することができる他の材料を含んでなってもよい。異なる組成のナノチューブを作製する方法は、公知である(「単層カーボンナノチューブの大規模精製:プロセス、生成物及び特性決定(Large Scale Purification of Single Wall Carbon Nanotubes:Process,Product and Characterization)」、A.G.リンツラー(A.G.Rinzler)ら著、アプライド・フィジックス(Applied Physics A)、1998年、第67巻、p.29;「超高圧下でのレーザー光加熱により生成されたBNkナノチューブの表面拡散成長及び安定化メカニズム(Surface Diffusion Growth and Stability Mechanism of BNk Nanotubes produced by Laser Beam Heating Under Superhigh Pressures)」、O.A.ロウケブ(O.A.Louchev)著、アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters、1997年、第71巻、p.3522;「窒化ホウ素ナノチューブの成長欠陥及び電子線照射下での焼結(Boron Nitride Nanotube Growth Defects and Their Annealing−Out Under Electron Irradiation)」、D.ゴールドバーグ(D.Goldberg)ら著、ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Letters)、1997年、第279巻、p.191;「非晶質SiOラッピング層含有及び非含有のベータSiCナノロッドの調製(Preparation of beta−SiC Nanorods with and Without Amorphous SiO Wrapping
Layers)」、G.W.メング(G.W.Meng)ら著、材料研究ジャーナル(Journal of Materials Research)、1998年、第13巻、p.2533;米国特許第5,560,898号明細書、米国特許第5,695,734号明細書、米国特許第5,753,088号明細書、米国特許第5,773,834号明細書を参照)。
【0066】
単層ナノチューブを生成する改善された方法が、米国特許第6,183,714号明細書、題名「単層カーボンナノチューブのロープの作製方法(Method of Making Ropes of Single−Wall Carbon Nanotubes)」(参照することにより全て本明細書に援用されている)に記載されている。この方法は、特に、遷移金属原子、好ましくはニッケル、コバルト、又はそれらの混合をドープしたグラファイト基板のレーザー蒸発を使用して、少なくとも50%の凝縮炭素の収量で、単層カーボンナノチューブを生成する。この方法により生成された単層ナノチューブは、アーク放電法により生成されたものよりもかなり純度が高い。生成物中に不純物がないため、ナノチューブの凝集は、不純物の存在によって阻止されることがなく、生成されたナノチューブは、10本から5000本の単独の単層カーボンナノチューブが平行に整列し、ファンデルワールス力によって密に充填した三角格子に一緒に保持される「ロープ」と呼ばれるクラスタにおいて観察される傾向がある。
【0067】
PCT/米国特許出願第98/04513号明細書、題名「単層カーボンナノチューブから形成された炭素繊維(Carbon Fibers Formed From Single−Wall Carbon Nanotubes)」(参照することにより全て本明細書に援用されている)は、特に、ナノチューブロープを切断して分離し、また誘導体化によりそれらを化学的に操作してナノチューブを含んでなるデバイス及び製造品を形成する方法を開示する。カーボンナノチューブの側壁の化学的誘導体化の他の方法が、PCT出願の米国特許出願第99/21366号明細書、題名「単層カーボンナノチューブの溶媒和を促進するためのその化学的誘導体化、及び誘導体化ナノチューブの使用(Chemical Derivatization of Single Wall Carbon Nanotubes to Facilitate Salvation Thereof,and Use of Derivatized Nanotubes)」(この教示は参照することにより全て本明細書に援用されている)に開示されている。
【0068】
ナノチューブは、任意に精製されてもよい。半導体又は製薬用途における、汚染物質に影響されやすい液体又は基板を接触させる用途に関して、不純物(抽出可能な金属又は微粒子等(これらに限定されない))は、ポリマーとの押出配合前に、ナノチューブから除去されることが可能である。除去可能な汚染物質の例として、ナノチューブ触媒担持体、熱分解炭素、触媒等(これらに限定されない)が挙げられる。本発明の実施形態におけるナノチューブポリマー複合体の金属分析は、サンプルの酸分解、例えば、硝酸で加熱した後にICP−MSで分析することにより決定されうる。グラファイトフレーク、多面体粒子、非晶質炭素又は他の望ましくない粒子形成材料は、ナノチューブから除去されることが可能であり、特にそこで、せん断履歴が測定可能となる。
【0069】
本発明の実施形態において、連続相を形成するのに使用されるポリマーは、押出配合を用いてナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を分散させるポリマーである。本発明の押出配合されたナノチューブ組成物中の連続相として使用できるポリマーには、高温高強度のポリマーが含まれうる。これらのポリマーは、熱及び化学薬品に対して高い耐性を有する。ポリマーは、好ましくは、化学溶媒N−メチルピリリドン(N−methylpyrilidone)、アセトン、ヘキサノン及び他の強極性溶媒に対して、特に室温で、いくつかの場合には約50℃未満で、又はいくつかの場合には約100℃未満で耐性がある。高温高強度のポリマーは、約150℃を超えるガラス転移温度及び/又は融点を有するポリマーである。さらに、高強度高温のポリマーは、好ましくは少なくとも2GPaの剛性を有する。
【0070】
本発明の押出配合した組成物のための高温高強度のポリマーの例として、独立して、ポリフェニレンオキサイド、アイオノマー樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン6,6樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、トリメチルペンテン樹脂(TMPR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリスルホン(PSF)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレンコポリマー(PFA)、ポリエーテルスルホン(PES;ポリアリールスルホン(PASF)とも呼ばれる)、高温非晶質樹脂(HTA)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルコキシエチレンターポリマー(EPE)等が挙げられる。本明細書に記載されるポリマーを含む混合物、ブレンド、コポリマーは、同様に使用されてもよい。いくつかの実施形態において、高強度高温のポリマーは、PEK、PEEK、PES、PEI、PSF、PASF、PFA、FEP、HTA、LCP等である。高温高強度のポリマーの例は、例えば米国特許第5,240,753号明細書、
米国特許第4,757,126号明細書、米国特許第4,816,556号明細書、米国特許第5,767,198号明細書、及び欧州特許第1 178 082号明細書及びPCT出願の米国特許出願第99/24295号明細書(国際公開第00/34381号パンフレット)(これらは参照することにより全て本明細書に援用されている)にも記載されている。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約60%〜約80%のPEEKを含んでよい。いくつかの実施形態において、ブレンドは、PEI及びPEEKを含んでよく、尚さらになる実施形態においては、約10%〜約20%のPEIと約70%〜約80%のPEEK、残りをナノチューブで構成したブレンドであってよい。
【0071】
いくつかの変形形態において、ナノチューブを押出分散させるのに使用されるポリマーは、高温高強度の熱可塑性ポリマーであり、そのポリマーは、熱硬化性ポリマーでも溶液キャストポリマーでもない。本発明の変形形態において使用できる高温高強度の熱可塑性ポリマーの例は、独立して、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、パーフルオロポリマー(テフロン(Teflon)(登録商標)等)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロ−プロピルビニルエーテルのコポリマー)、MFA(TFEとパーフルオロ−メチルビニルエーテルのコポリマー)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、又はこれらを含むコポリマーである。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリホスホネート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、UPE又はこれらのブレンドもしくはこれらを含むコポリマー(これらに限定されない)をはじめとする難燃性材料又は防火性材料であってよい。他の変形形態では、ポリマーは硬質棒状ポリマーでありうる。有用な硬質棒状ポリマーの例として、PARMAX、及びPARMAXとPEEK、PI又はPEIのブレンドを挙げることができる(これらに限定されない)。
【0072】
いくつかの実施形態において、連続相を形成するポリマーは、PEEK、PI又はPEIを含んでなる。他の実施形態において、連続相は、PEEK又はPEIを含んでなる。さらに他の実施形態において、ポリマーは、PEEKを含んでなる。
【0073】
いくつかの実施形態において、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維と押出配合されるポリマーは、溶液キャストできず、溶媒に不溶である。例えば、ナノチューブも微粉砕炭素繊維も、ポリマーが溶解した溶媒に懸濁せず、続いて押し出されるフィルムにキャストされない。いくつかの実施形態において、ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維は、ポリマー中のナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維が高濃度の状態で、熱可塑性物質(例えば、マスターバッチ)に分散され、ポリマーが、溶液キャストできないことを特徴とする。本明細書で使用されるように、「フォーム」は、ポリマーマトリックスを含む物品又は組成物を指し、その物品の密度は、ポリマーマトリックス単独の密度よりも小さい。本発明の実施形態は、その密度及び/又は粘度がポリマーとほとんど同じであるものを含み、組成物は、その密度をフォームの密度まで減少させる気泡構造を持たない。
【0074】
本発明の組成物及び物品の実施形態は、融点又はガラス転移温度より低い際に、組成物及び物品が、外部から加えられた力の下で伸長又は変形に抵抗し、また力の閾値を超えると、外力が解放された又は取り除かれた後も、組成物の伸長又は変形が残存することを特徴としうる。本発明の実施形態には、弾性的に圧縮されず、弾性的に伸長しないこれらの材料が含まれる。
【0075】
ポリマー中に分散するナノチューブ及び微粉砕炭素繊維は、構造、分布、配向性を有し、或いはポリマーとのネットワークを形成する。いくつかの実施形態において、ポリマー
中のナノチューブ及び微粉砕炭素繊維は、等方配向を有する。ネットワークは、約20のアスペクト比を有する約20%の炭素繊維を含んでなる比較例1と比較すると、図4に図示される熱サイクル試験において、変形に抵抗する。
【0076】
本発明の実施形態における、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維が分散するポリマー溶融体は、特に溶媒キャスト法、凝固法、界面重合法、モノマー−SWNT共重合法と比較すると、溶媒を含有しない。本発明の実施形態は、ポリマー中にナノチューブ又はSWNTをキャスト分散させるのに使用されてきた溶媒に溶かしたポリマーからと思われる溶媒蒸気を脱ガスしない。脱ガス量は、大気圧下、減圧下又は他の所定の適用条件下で、熱重量分析、圧力減衰及び/又はTG−MSにより決定することが可能である。脱ガスは、特に低濃度の汚染が有益である用途において、ポリマー及び分散したナノチューブ及び微粉砕の炭素繊を含んでなる又は構成する物品の重要な性質となりうる。本発明の実施形態における、ポリマー中に分散するナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を成形することにより調製される物品の例として、基板キャリア(レチクル又はウエハー)、配管、バルブ、及び他の流体接触する構造が挙げられうる。有害な脱ガスには、ppm以下、ppb以下、又はppt以下の濃度の水蒸気又は有機溶媒が含まれてもよい。他の蒸気は、半導体及び製薬用途において使用される材料及びプロセスに害を及ぼすものを含みうる。
【0077】
本発明の実施形態における、ポリマー中のナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の組成物及び分散体を作製する方法として、ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維を連続ポリマーマトリックス中に分散させる工程又は行為が含まれる。いくつかの実施形態において、その方法は、ある量のナノチューブ及びある量の微粉砕炭素繊維をポリマーと押出配合して、組成物を形成する工程又は行為を備えうる。本発明の実施形態における押出配合は、組成物が、組成物のさらなる押出配合により実質的に変化しない貯蔵弾性率G’を有すると企図されるように、ナノチューブよび微粉砕炭素繊維をポリマー中に分布させる。
【0078】
本発明の別の実施形態は、本発明の実施形態における複合組成物の物品又は原料部品又はペレットを生成する方法である。その方法は、粉末、ペレット又は原料ビレットとしての、本発明の実施形態におけるポリマーとナノチューブ及び微粉砕炭素繊維のネットワークとの複合組成物を、組成物の成形物品を販売するための場所に移動させる工程を備えてもよい。複合組成物を販売する場所で、組成物は、組成物の成形物品を販売するための場所で物品に成形されてもよい。その方法は、成形物を加熱処理する行為をさらに備えてもよい。その方法は、本発明の複合組成物から成形された物品と、本発明の複合組成物ではない材料を含んでなる他の物品とを含んでなる最終製品を組み立てる行為又は工程をさらに備えてもよい。いくつかの実施形態において、複合体、複合体から作製される物品、原料部品、ペレット等は、サンプル、組成物を含んでなる物品、原料部品等における2点以上の測定試験点に対し、100倍以内(10倍以内の場合もある)の表面抵抗率の均一性を有することが可能である。成形された物品として、米国特許第6,513,654号明細書及び米国特許第6,216,873号明細書に図示されるようなレチクルキャリア、米国特許第4,557,382号明細書及び米国特許第5,253,755号明細書に図示されるようなディスクシッパー、米国特許第6,857,524号明細書に図示されるようなチップトレイ、米国特許第6,848,578号明細書に図示されるようなウエハーキャリア、米国特許第6,533,933号明細書に図示されるような流体ハウジング(これらの参照の各々は、参照することにより、全て本願に援用されている)の一部又は全てが含まれてよい(これらに限定されない)。本発明の実施形態における複合組成物を含んでなる物品は、半導体ウエハーを作製するプロセスに使用されてもよく、その物品は、半導体又は薬剤製造用の液体試薬の送達、輸送、又は精製に使用されてもよく、本発明の組成物及びそれから作製される物品は、流量計及び流量制御器、バルブ、配管、熱交換デバイス、フィルタハウジング、及び配管に接続するための流体用取付具(これらに限定されない)のプロセスツールに使用されることが可能である。
【0079】
乾燥ポリマー、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を一緒に押し出すことにより作製される、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の溶融ポリマー中の分散は、いくつかの実施形態において、本質的に同時に一斉に生じる。いくつかの実施形態において、微粉砕炭素繊維は、ナノチューブがポリマーに分散する前に、ポリマー中に押出配合されてもよい。いくつかの実施形態において、ナノチューブは、微粉砕炭素繊維がポリマーに分散する前に、ポリマー中に押出配合される。導電性ナノチューブに関して、このプロセスにより、図11Aに示されるような押出機を介するナノチューブ−ポリマー分散体の繰り返しの溶融押出により、それらの制電性及び貯蔵弾性率が実質的に変化しない複合組成物を得ることが可能である。導電性ナノチューブに関して、このプロセスを使用して、その抵抗率がポリマー中に分散するナノチューブの量及び微粉砕の炭素繊の量によって決まることができる制電性材料を調製することが可能である。
【0080】
ポリマーが非混和性のナノチューブと混合された場合、ポリマーは、連続相であり、ナノチューブは、分散相である。ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維を単一の分子とみなすと、ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維が、ポリマー中に分布していると言及してもよい。連続相中に分散及び分布するナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維の組合せも、また存在することが可能である。ナノチューブは、連続マトリックス中に不連続相を形成することが可能である。本発明の実施形態において、ナノチューブは、個々のチューブとして存在することが可能であり、或いは、チューブは、一緒に集塊してチューブのロープを形成してもよい。押出配合は、連続ポリマー相中にナノチューブを分布、分散(又はこれらの任意の組合せ)させることが可能である。押出配合は、連続ポリマー相中に微粉砕炭素繊維を分布、分散(又はこれらの任意の組合せ)させることが可能である。押出配合は、ナノチューブのロープに集塊したチューブのサイズを小さくし、連続相ポリマーマトリックス中にナノチューブの分散、分布又はこれらの混合の種類の組合せを生じさせる。押出配合は、炭素繊維のサイズを小さくし、連続相ポリマーマトリックス中に微粉砕炭素繊維の分散、分布又はこれらの混合の種類の組合せを生じさせる。
【0081】
いくつかの実施形態において、炭素繊維は、配合押出プロセス中に、炭素繊維が1より大きくかつ約5未満のアスペクト比を有するように処理するために、押出機により加えられるせん断力で連続ポリマー相に加えられてもよい。プロセスのいくつかの実施形態において、ポリマーと押出配合されるSWNT又は他のナノチューブは、任意に、音波処理、超音波処理、静電処理、ボールミル粉砕又は電場操作等のような行為により、凝集塊を解いてもよい。プロセスのいくつかの実施形態において、SWNT又は他のナノチューブはまた、任意に分散添加剤を含むことができ、又は表面機能化を有してもよい。
【0082】
ポリマーとナノチューブ及び微粉砕炭素繊維とを含んでなる組成物の押出配合は、図10A及び図10Bに示されるように、ほぼ同時に起こりうる。ポリマーとナノチューブ及び微粉砕炭素繊維とを含んでなる組成物は、押出混合組成物を形成するのに、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の十分な量と、十分なエネルギー(スクリューに加えられるトルク)、熱及び時間(滞留時間)で、ほぼ同時に配合される。ポリマー中に分布及び/又は分散するナノチューブ及び微粉砕炭素繊維を有する組成物は、組成物のさらなる押出配合によって実質的に変化しない貯蔵弾性率G’を有する。
【0083】
重量換算のナノチューブ量、重量換算の微粉砕炭素繊維量及び重量換算のポリマー量は、所望の一連の性質とコストを有する組成物及び成形物品を得るために変えることができる。例えば、導電性ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維のより多い量を用いて、より低い電気抵抗率を有する材料を得ることができ、微粉砕炭素繊維のより少ない量を用いて、材料コストを削減することができる。より多い量のナノチューブを用いて、所与のポリマーもしくはポリマーの組み合わせに対してより高い貯蔵弾性率を得てもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、ナノチューブ、微粉砕炭素繊維、及びポリマーを一緒に同時に押出機に加え、一緒に溶融し、押し出してポリマーとナノチューブを配合して、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の改善された分散を通して、より良好な損失特性が得られる。これは、SWNT又は他のナノチューブを溶融ポリマーに加えた後に配合するよりも良好となりうる。これは、例えば、図11Bに示されるようなサイド投入(side stuffing)により示され、分散よりむしろポリマー中にSWNTの塊が生じうる。米国特許出願公開第2010/0267883号明細書に開示されるように、一旦SWNTがポリマー中に分散すると、繰り返しの押出(例えば図11Aを参照)は、組成物又はそれらから作製される物品の分散性又は損失特性を向上させることはなく、いくつかの実施形態においては、繰り返しの押出は、本特許公報の図20bに示されるように、貯蔵弾性率をプラトー又は定常状態値まで低減させる。
【0085】
本発明の実施形態において、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維は、熱可塑性物質と共に機械的に分散され、その熱可塑性物質は、粉末、ペレット、フィルム、繊維又は他の形態で、押出複合体を形成することができる。
【0086】
分散は、混錬、せん断及び混合セクションを含む二軸スクリュー押出機を使用して、生じうる。例えば、約220〜約320ニュートンメートルのトルクが、約95cmの長さ及び約38〜約42のL/Dを有することができるスクリューに供給されるエネルギーとなることができ、さらなる押出配合で増大しない貯蔵弾性率を有する本発明のポリマー複合体が得られるとする条件で、これらのパラメータに対する他の値を使用することができる。押出機は、1つ又は複数の温度ゾーンを有することができる。第1の温度ゾーンは、ポリマーを溶融させ、ポリマー中にナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維を分散させる温度でありうる。追加の加熱ゾーンは、最初のゾーンから下流側に設置することができ、或いは、既にナノチューブを含有するポリマー中に後から加えられて分散する微粉砕炭素繊維の位置に応じてもよい。或いは、温度勾配が、押出機に沿って形成されうる。エネルギー量及びスクリューのセクションは、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の分散を提供し、貯蔵弾性率が繰り返される材料の押出で増大せず、その値がナノチューブが分散していることを示す組成物を形成するように選択されることが可能である。さらなる配合に対して本質的に一定又は増大しないG’の値は、ポリマーマトリックスが、ナノチューブ及び/又は微粉砕炭素繊維をポリマーマトリックス中に分散及び/又は分布させるために付加されるエネルギーによって、分解しないことを示している。ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維と、連続相の熱可塑性物質又は溶融したポリマーマトリックスとの押出配合は、ロープ、チューブ又はナノチューブ凝集体間の引力に打ち勝ち、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維をマトリックス中に分散又は分布させる。
【0087】
その方法は、ポリマー、ナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の押出配合した組成物を成形して様々な物品を形成する行為をさらに含むことができる。物品は、固形物、テープ、チューブ、膜、又は、金型もしくはダイによって決定される他の形状の形態でありうる。成形物品は、耐燃性、制電性、電気絶縁性、又はこれらの任意の組合せでありうる。押出配合した組成物を用いて成形する行為は、ブロー成形、回転成形、圧縮成形、射出成形、押出又は他の成形法を含みうる(これらに限定されない)。
【0088】
難燃性及び耐火性の材料(任意に制電性でありうる)を形成するために使用することができるポリマーとして、PEEK、ポリイミド(オーラム(Aurum))、PEI(ウルテム(Ultem))及びこれらのPEEKとの混合物(PEEKと混和性であるため)が挙げられうる。いくつかの実施形態において、熱可塑性物質は、自消性(炎から取り除かれると直ちに燃焼が止まる)である分岐ポリホスホネートを含んでなってもよい。これらの分岐ポリホスホネートを溶融することにより生成される任意の液滴が、炎に滴下さ
れると、燃焼が即時に止まり、いかなる周囲の材料にも火が拡大しない。さらに、これらの分岐ポリホスホネートは、炎と接触した際に認めうるいかなる煙も発しない。従って、これらの分岐ポリホスホネートは、それらの他の性質(靱性又は処理特性等)を著しく低下させることなく、耐火性を大幅に向上させるように、日用品又は工業用プラスチックへの添加剤として使用することができる。熱可塑性物質として、独立して、ポリカーボネート、ポリホスホネート及び難燃性材料に有用な他のポリマーが挙げられうる。これらのプラスチックとして、米国特許第6,861,499号明細書、米国特許第5,216,113号明細書、米国特許第4,350,793号明細書、及び米国特許第4,331,614号明細書に開示されているプラスチックが挙げられうる(これらに限定されない)。
【0089】
例えば、増粘剤、顔料、染料、安定剤、衝撃改質剤、可塑剤又は酸化防止剤等を含む従来の添加剤を任意に本発明の組成物に加えることができる。
【実施例】
【0090】
実施例1
改質も精製も行わないで、多層カーボンナノチューブ(MWNT)を受け取ったまま使用した。MWNTは、主に異なるサイズの単位体として存在する。20より大きいアスペクト比で約7ミクロンの直径と約150ミクロンの長さを有する供給業者からの炭素繊維を、アスペクト比が1より大きくかつ約5未満になるまで、微粉状にした。同時回転噛合二軸スクリュー押出機(長さ95cm、L/D38〜42)中で、約355℃でMWNT及び微粉砕炭素繊維の供給量を熱可塑性PEEKとせん断混合して、PEEK中で約1.25重量%のMWNTの濃度及び35重量%の微粉砕炭素繊維の濃度を得た。約350℃〜約370℃の範囲のバレル温度を有する複数のゾーン加熱を用いて、配合を実施した。約260〜約360ニュートンメートルのトルクを二軸スクリューに加えた。押出機のスクリューによって、ポリマー、MWNT及び微粉砕炭素繊維を混合した。添加剤も分散剤も使用しなかった。複合体のかさ密度は、約1.40g/cmであった。3mmのオリフィス、約14〜20kg/時の供給量を有する4つのストランドダイを用いて、押出サンプルを調製した。
【0091】
本実施例は、ポリマー中へのMWNT及び微粉砕炭素繊維の分散により、作製されるサンプル又は物品における抵抗を均一とすることを示す。Pro−Stat PRS−801抵抗システム2点プローブ(Pro−Stat PRS−801 Resistance System Two−Point Probe)を使用した。抵抗は、図5〜7Bに示すように12箇所〜96箇所で有効数字2桁まで測定した。複数のサンプルを試験し、各サンプルを複数回試験した。本発明の実施形態における複合材料及びそれから作製される物品の表面抵抗率の均一性は、標準ANSI/ESD STM 11.13(この内容は参照により全て本明細書に援用されている)を用いて、決定することができる。
【0092】
図5〜7,21〜22に示されるように、比較例A,B.Cと比較した実施例1の結果は、本発明の組成物からなる物品が、試験物品における2箇所以上(いくつかの態様では3箇所以上、いくつかの態様では2〜約96箇所、いくつかの態様では物品の表面全体)の抵抗測定試験点に対して、100倍以内(10倍以内の場合もある)の表面抵抗率の均一性を有することを示している。このことは、このような組成物におけるポリマー中へのMWNT及び微粉砕炭素繊維の分散性が向上したことを示している。本発明の実施形態は、サンプル全体にわたって実質的に均一な表面抵抗率を有する材料を提供し、いくつかの実施形態においては、ポリマー中に分散したナノチューブ及び微粉砕炭素繊維の複合体のサンプル表面上の任意の点で実質的に均一な表面抵抗率を有する材料を提供する。これは、物品(チップトレイ、レチクルやウエハーキャリア、シッパー、試験ソケット等)における複合体の静電放電用途において有利である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3
図10A
図10B
図11A
図11B
図13A-13C】
図15A
図15B
図15C
図16
図18A
図18B
図18C
図18D
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図12
図14
図17
図19
図20
図21
図22