【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的のため、本発明による装置は以下のことを特徴とする。
− 前記光学顕微鏡は、
前記粒子光学軸に対して平行なサイズが前記粒子光学軸に垂直なサイズよりも小さい、回転対称性
でなく且つ前記磁気対物レンズの磁極片間に適合するように切頭され
た対物レンズを有し、それにより、2つの方向
で異なる開口数
、及び故に、2つの方向
で異なる解像度
を示す。
− 光を収集する許容立体角は、前記磁極片間
に適合する最大の回転対
称レンズの許容角よりも大きい。
【0016】
以降では、レンズのNA(φ)はφの関数であって良い。ここでφは前記光軸に対して垂直な前記レンズの向きである。従って一の向きでのレンズのNA(φ)は、他の向きでの同一のレンズのNAとは異なり得る。前記レンズは前記磁極片間
に適合するように切頭されるので、前記粒子光学軸に対して平行な方向でのNAは最小のNAとなる一方で、前記方向に対して垂直な方向でのNAは最大となる。
【0017】
本発明は、回転対称性を有するレンズの直径が、前記磁極片間でのアクセスを物理的に制限するという知見に基づいている。大きな直径は、前記試料位置からの距離が大きな場合にのみ可能である。従って許容立体角(つまりは感度)は大きな直径によっては改善されない。同じことは、解像度についても当てはまる。
【0018】
本願発明者等は、前記レンズの一部を切頭することにより前記レンズを回転対称でなくすることにより、又は、楕円レンズを用いることにより、大きな許容立体角を有し、一の方向では他の方向よりも大きな回折限界の解像度を有することが可能になることに気付いた(最大直径に係る向きは最高解像度を有する。)。
【0019】
「回転対称性を有しない」とは、前記レンズの前面が回転対称性を有しないことを意味する。前記レンズが、たとえばシリンドリカルレンズで起こるような回転対称性を有しない焦点距離を有するレンズであることを意味することを意図していない。
【0020】
2つの方向において各異なるNA(φ)を有するレンズを定めることによって、このレンズはビームの限界を定め、かつ、他の光学素子が物理的限界を与える場合には、これらも切頭されることが仮定されていることに留意して欲しい。
【0021】
特許文献2は、レーザービームを試料へ集束させる光学部品を備える試料ホルダを開示していることに留意して欲しい。
その段落[0019]では、これらの光学部品がカソードルミネッセンスの検出にも用いられ得ることを述べている。光学系は、粒子ビームに対して垂直な向きをとる試料に作用するように構成される。特許文献2は、前記試料が前記粒子ビームから外れるように傾けられている間での前記試料の光学顕微鏡による検査又は撮像用の光学系を開示していない。
【0022】
特許文献3は、試料の光学画像を生成する非球面レンズを開示している。光学系は、粒子ビームに対して垂直な方向を向き試料に作用するように構成される。前記試料は、粒子光学顕微鏡の対物レンズの磁極片間に設けられていない。
【0023】
特許文献4は、粒子ビームに対して垂直な方向を向く試料に作用するように構成されるミラー/プリズムを含むさらに他の光学系を開示している。前記試料は粒子光学顕微鏡の対物レンズの磁極片間に設けられていない。
【0024】
本発明の実施例では、前記試料ホルダは、前記第2の向き
で、前記光軸に対して垂直な面内で90°にわたって前記試料を回転させるように構成される。
【0025】
一の画像を生成するとき、前記画像では、一の方向での(回折限界の)解像度は、前記一の方向に垂直な方向での解像度よりも良好である。前記一の方向と該一の方向に対して垂直な方向での前記対物レンズのNAがそれぞれ異なるからである。ここで前記光軸に対して垂直な面内で90°にわたって前記試料を回転させることが可能な試料ホルダを当該装置に備えることによって、2つの画像が生成され得る。前記2つの画像の各々は、他の画像が最適解像度をと
る方向に対して垂直な方向で最適解像度をとる。
【0026】
前記2つの画像を結合することによって、非切頭レンズによって得られる解像度よりも良好な解像度を有する画像が生成され得る。係る結合は、たとえば各画像のフーリエ変換を足し合わせ、その後前記の
足し合わされたフーリエ変換を用いて前記画像を再構成することによって実現され得る。これは、互いに垂直な2つの画像を加えることであって良いし、様々な角度での多くの画像を加えることであっても良い。
【0027】
位置合わせは、フーリエ変換前又はフーリエ変換後に実行されて良いが、前記画像の結合前に行われなければならないことは明らかであることに留意して欲しい。
【0028】
当業者は、この実施例も、各々が各異なる向きをとる3つ以上の画像の撮像、位置合わせ、及び結合を含むことを理解する。
【0029】
好適実施例では、前記荷電粒子源は電子源で、かつ、前記荷電粒子ビームは電子ビームである。
【0030】
この実施例は、透過型電子顕微鏡(TEM)の鏡筒、走査透過型電子顕微鏡(STEM)の鏡筒、又は、STEM鏡筒とTEM鏡筒のいずれかとして動作することのできる鏡筒((S)TEM鏡筒とも呼ばれる)を備える装置を有する。
【0031】
他の実施例では、前記光学顕微鏡の対物レンズは引き込み可能
(リトラクタブル)である。
【0032】
前記レンズを引き込み可能にすることによって、前記レンズのガラス表面は、前記粒子光学ビームによる撮像中に、前記試料位置から取り除かれる。それにより意図しない効果−たとえば電子に起因する前記レンズ表面の帯電−は回避される。また前記レンズの汚染−場合によっては前記レンズの透明度を減少させる−も回避される。
【0033】
さらに他の実施例では、前記対物レンズの少なくとも一部は、薄い
導電性の透明層−より詳細にはインジウムスズ酸化物(ITO)層−でコーティングされる。
【0034】
前記荷電粒子ビームに対向する前記対物レンズの表面を
導電性にすることによって、帯電は回避される。
【0035】
本発明の態様では、本発明による装置の使用方法は、前記表面が前記光学顕微鏡に対向するように前記試料を位置
付ける段階、及び、前記光学顕微鏡によって第1画像を取得する段階を有する。当該方法は以下のような特徴を有する。
− 前記第1画像の取得後、前記試料は前記光軸に対して垂直な面内で回転され、かつ、第2画像が前記光学顕微鏡によって取得される。
− 前記第1画像と前記第2画像は、前記粒子光学軸に対して平行な方向において前記第1画像よりも高い解像度を有する画像を生成するように位置合わせ及び結合される。
【0036】
当該方法の実施例では、前記回転は90°にわたる回転である。
【0037】
当該方法の他の実施例では、前記対物レンズは、前記光学顕微鏡を用いて前記画像を取得した後であって、前記荷電粒子鏡筒によって前記画像を取得する前に引き込まれる。
【0038】
たとえば帯電を回避するため、前記光学顕微鏡の対物レンズは、前記レンズの帯電に起因する前記ビームの妨害、及び、前記レンズ上での汚染を回避するため、前記荷電粒子画像の生成前に引き込まれることが好ましい。
【0039】
さらに他の実施例では、前記結合は、各画像のフーリエ変換を生成する段階、前記フーリエ変換を
足し合わせる段階、及び、前記の
足し合わされたフーリエ変換に基づいて画像を再構成する段階を有する。
【0040】
前記画像の各々での高周波情報が改善されることで、前記の再構成された画像において、高空間周波数が正しく表されるように重み付けが実行されることが好ましい。
【0041】
さらに他の実施例では、前記結合は、最初に前記画像を
足し合わせ、続いて前記画像の各々の低周波数を抑制する
こと、又は、最初に前記画像の各々での低周波数を抑制
し、続いて前記画像を
足し合わせることを有する。
【0042】
これは、上述のフーリエ変換とほぼ同一の効果を有する。前記抑制は、ハイパスカーネルによって前記画像を処理することによって実行されて良い。同様の結果は前記の結合された(
足し合わされた)画像においても実現され得る。
【0043】
当該方法のさらに他の実施例では、当該方法は、前記粒子光学鏡筒を用いて画像を取得する段階をさらに有する。
【0044】
この高解像度画像(光反射画像、蛍光画像、ラマン画像等であって良い。)の生成に続いて、前記粒子光学軸に対して垂直な面内で前記試料を回転させ、かつ、前記荷電粒子鏡筒によって画像−より詳細には電子光学画像−を撮像することが好ましい。
【0045】
ここで本発明について、図面を用いてさらに説明する。図中、同一の参照番号は対応する部位を指し示すものとする。