(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、前記基板の上面側に設けられた発光素子構造と、前記基板と前記発光素子構造の間に設けられた、金属反射膜又は誘電体多層膜を含む接合層と、を有する発光素子と、
前記発光素子が実装される実装部材と、
金属粒子の焼結体であって、前記基板の側面の少なくとも一部を被覆し、前記発光素子の基板の下面側と前記実装部材を接合する接合部材と、
前記基板の側面の少なくとも一部と前記接合部材の表面とを被覆する白色の被覆部材と、
を備え、
前記発光素子の側面は、上面に対して、垂直、又は、内側若しくは外側に傾斜しており、
前記被覆部材は、前記発光素子構造を覆っていない発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。但し、以下に説明する発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0012】
<実施の形態1>
図1(a)は、実施の形態1に係る発光装置を示す概略上面図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA−A断面を示す概略断面図である。
図1に示すように、実施の形態1に係る発光装置100は、発光素子10と、実装部材20と、接合部材30と、を備えている。
【0013】
発光素子10は、1個の発光ダイオード(LED)チップである。発光素子10は、基板11と、その基板の上面側に設けられた発光素子構造13と、を含んでいる。また、発光素子10の上面には、蛍光体を含有する波長変換部材60が設けられている。この波長変換部材60は、上面視において、発光素子10と略同じ形状である。よって、発光素子10は、波長変換部材一体型の発光素子と考えることもできる。なお、基板11の下面には、金属膜17が設けられていてもよい。
【0014】
実装部材20は、発光素子10が実装される部材である。実装部材20は、正負一対のリードフレームである導電部材21と、この導電部材21と一体成形された樹脂の成形体である基体23と、を有するパッケージである。実装部材20は凹部を備えており、発光素子10はその凹部内に収容されている。
【0015】
発光装置100は、発光素子10を封止する封止部材50をさらに備えている。封止部材50は、ほぼ透明な樹脂の成形体である。また、封止部材50は、実装部材20の凹部に充填され、さらにその表面が上方に突出した凸面に形成されている。
【0016】
接合部材30は、発光素子10の基板11の下面側と実装部材20(特に導電部材21)を接合する部材である。接合部材30は、金属粒子35の焼結体である。この接合部材30は、金属粒子焼結型ペーストが焼成されて得られるものであり、多孔質で、表面には凹凸が形成されている。
【0017】
そして、発光素子10は、基板11と発光素子構造13の間に、接合層15を有している。この接合層15は、金属反射膜又は誘電体多層膜を含んでいる。これにより、発光素子構造13から出射される光を接合層15の金属反射膜又は誘電体多層膜によって上方に効率良く反射させ、接合部材15への光入射を低減し、また発光素子構造13から出射される光が基板11内部に進行することを抑制して、光の取り出し効率を高めることができる。このように、本実施形態では、発光素子10を金属粒子の焼結体である接合部材30により実装部材20と接合することで、放熱性や耐熱性に優れながら、さらに接合層15により接合部材30への光入射を低減して、光の取り出し効率の高い発光装置とすることができる。なお、接合層15の金属反射膜又は誘電体多層膜は、発光素子構造13に接して、又は、発光素子構造13に接して設けられた導電性酸化物膜などの透光膜に接して、設けられることが、その光反射機能を発揮しやすいので好ましい。
【0018】
以下、発光装置100の好ましい形態について詳述する。
【0019】
図1に示す例の発光装置100において、接合部材30は、基板11の側面の一部を被覆している。接合部材30は、基板11の側面の全部を被覆していてもよい。このように、接合部材30が、基板11の側面の少なくとも一部を被覆していることにより、発光素子10と実装部材20の接合強度や発光素子10の放熱性を高めることができる。また、接合層15の金属反射膜又は誘電体多層膜によって、基板11内部への光の進行を抑制して、基板11の側面を被覆する接合部材30による光損失を抑制することができる。
【0020】
また、
図1に示す例の発光装置100において、接合部材30の表面は、被覆部材40により被覆されている。被覆部材40は、白色であることが好ましい。これにより、発光素子構造13から出射される光を被覆部材40により上方に効率良く反射させ、接合部材30への光入射を低減して、高い光の取り出し効率を得ることができる。また、発光装置外部から侵入する硫黄含有ガスなどの腐食性ガスや水分によって、接合部材30が変色などの劣化をきたしても、接合部材30の表面を被覆する被覆部材40により、接合部材30への光入射を低減して、高い光の取り出し効率を維持することができる。これは、金属粒子35が比較的変色しやすい銀や銀合金である場合、特に効果的である。
【0021】
さらに、
図1に示す例の発光装置100において、被覆部材40は、基板11の側面の全部を被覆している。このように、被覆部材40が基板11の側面の少なくとも一部を被覆していることにより、被覆部材40による接合部材30の被覆面積が大きくなり、接合部材30の表面による光損失を抑制しやすい。また、接合層15の金属反射膜又は誘電体多層膜によって、基板11内部への光の進行を抑制して、基板11の側面を被覆する被覆部材40による光の閉じ込めを抑制することができる。また、特に基板11が遮光性基板である場合には、基板11の側面による光損失を抑制することができる。
【0022】
また、被覆部材40は、発光素子構造13(特に活性層)の側面を被覆している。さらに、被覆部材40は、波長変換部材60の側面を被覆している。これにより、発光素子構造13及び波長変換部材60から直接的に側方に光が出射されるのを抑制し、発光素子構造13から波長変換部材60に光が効率良く入射され、色斑の少ない発光が可能な発光装置とすることができる。また、被覆部材40は、発光素子10の周囲の実装部材20上を連続的に被覆している。これにより、封止部材50中を進行する光(発光素子構造13からの光及び蛍光体からの波長変換光)を被覆部材40によって効率良く上方に反射させ、実装部材20や接合部材30への光入射を低減して、高い光の取り出し効率を得ることができる。
【0023】
なお、被覆部材40は、金属粒子35より平均粒径が小さい粒子45を含有していることが好ましい。これにより、被覆部材40が含有する粒子45が、接合部材30の表面の凹部上に密に配置されやすく、接合部材30による光損失を抑制しやすい。さらには、被覆部材40が含有する粒子45が、接合部材30の表面の凹部内に配置されていることがより好ましく、さらには凹部に充填されているとなお良い。
【0024】
<実施の形態2>
図2(a)は、実施の形態2に係る発光装置を示す概略上面図であり、
図2(b)は、
図2(a)におけるB−B断面を示す概略断面図である。
図2に示すように、実施の形態2に係る発光装置200は、発光素子10と、実装部材20と、接合部材30と、を備えている。
【0025】
発光素子10は、基板11と、その基板の上面側に設けられた発光素子構造13と、これらの間に設けられた接合層15と、を含むLEDチップであり、複数個設けられている。なお、基板11の下面には、金属膜17が設けられていてもよい。
【0026】
実装部材20は、配線である導電部材22と、この導電部材22を表面に有する基板の母材である基体24と、を有する配線基板である。実装部材20の上面には、導電部材22上に実装される全ての発光素子10を囲むように、枠状の突起が設けられている。この突起は、白色の樹脂の成形体である。
【0027】
封止部材50は、突起の内側に充填され、全ての発光素子10を覆っており、その表面はほぼ平坦に形成されている。この封止部材50は、蛍光体を含有する樹脂の成形体であり、波長変換部材61でもある。
【0028】
接合部材30は、金属粒子35の焼結体であり、基板11の下面側に加え側面の一部を被覆して、各発光素子10と実装部材20を接合している。この接合部材30は、金属粒子焼結型ペーストが焼成されたものであり、多孔質で、表面には凹凸が形成されている。
【0029】
図2に示す例の発光装置200において、被覆部材40は、各発光素子10の基板11の側面の一部を被覆している。したがって、各発光素子10の発光素子構造13(特に活性層)の側面は、被覆部材40から露出されている。これにより、被覆部材40による光の閉じ込めを抑制して、発光素子構造13から効率良く光を取り出すことができる。また、被覆部材40は、各発光素子10の間の実装部材20上を連続的に被覆している。これにより、封止部材50(波長変換部材61)中を進行する光(発光素子構造13からの光及び蛍光体からの波長変換光)を被覆部材40によって効率良く上方に反射させ、実装部材20や接合部材30への光入射を低減して、高い光の取り出し効率を得ることができる。また、被覆部材40が含有する粒子45の光散乱効果により、発光素子構造13からの光と蛍光体からの波長変換光の混色を促進し、色斑の少ない発光が可能な発光装置とすることができる。
【0030】
以下、本発明の発光装置の各構成要素について説明する。
【0031】
(発光素子10)
発光素子10は、少なくとも基板11と、発光素子構造13と、により構成される。発光素子10の上面視形状は、四角形、特に長方形であることが好ましいが、その他の形状であってもよい。発光素子10(特に基板11)の側面は、上面に対して、略垂直であってもよいし、内側又は外側に傾斜していてもよい。
【0032】
(基板11)
基板11は、例えば、結晶成長用基板から分離した発光素子構造13に接合させる接合用基板である。基板11が導電性を有することで、上下電極構造(対向電極構造)を採用することができ、発光面積を大きくしやすい。また、発光素子構造13に面内均一に給電しやすく、発光効率を高めやすい。また、発光素子構造13から基板11内部への光の進行を抑制する接合層15があれば、基板11は、光学特性よりも熱伝導性や導電性を優先的に考慮して選択することができる。特に、基板11は、遮光性基板であることが好ましい。遮光性基板は、熱伝導性に優れるものが多く、発光素子10の放熱性を高めやすい。具体的には、基板11は、シリコン、炭化珪素、窒化アルミニウム、銅、銅−タングステン、ガリウム砒素、セラミックスなどを用いることができる。なかでも、発光素子構造13との熱膨張率差の観点では、シリコン、炭化珪素、銅−タングステンが好ましく、費用の観点では、シリコン、銅−タングステンが好ましい。基板11の厚さは、例えば20μm以上1000μm以下であり、基板11の強度や発光装置100,200の厚さの観点において、50μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0033】
(発光素子構造13)
発光素子構造13は、半導体層の積層体であり、少なくともn型半導体層とp型半導体層を含み、さらに活性層をその間に介することが好ましい。発光素子構造13の発光波長は、半導体材料やその混晶比によって、紫外から赤外まで選択することができる。半導体材料としては、蛍光体を効率良く励起できる短波長の光を発光可能な窒化物半導体(主として一般式In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表される)を用いることが好ましい。このほか、InAlGaAs系半導体、InAlGaP系半導体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化珪素などを用いることもできる。
【0034】
(接合層15)
接合層15は、上述の接合用基板である基板11と、結晶成長用基板から分離した発光素子構造13と、を接合させる層である。接合層15が含む金属反射膜は、銀、アルミニウム、ロジウム、プラチナ、金、又はこれらの合金を用いることができ、なかでも光反射性に優れる銀又は銀合金が好ましい。接合層15が含む誘電体多層膜は、例えば(Nb
2O
5/SiO
2)
n(ただしnは自然数)の積層構造など、シリコン、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、アルミニウムのうちのいずれか一種の酸化物又は窒化物の少なくとも2つを繰り返し積層したものを用いることができる。金属反射膜は、接合層15の一部又は全部に設けられ、誘電体多層膜は、接合層15の一部に設けられる。金属反射膜や誘電体多層膜が接合層15の一部に設けられる場合、接合層15の他の部位は、金、錫、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、又はこれらの合金やそれらの組み合わせにより構成することができる。なお、接合層15は、基板11が結晶成長用基板である場合、又は接合用基板である基板11と、結晶成長用基板から分離した発光素子構造13と、を表面活性化接合や熱圧着などにより直接接合する場合には、省略することができる。
【0035】
(金属膜17)
金属膜17が基板11の下面に設けられることで、発光素子10の実装部材20への接合強度を高めることができ、また低温で高い接合強度が得られやすくなる。金属膜17の材料としては、銀、プラチナ、金、チタン、アルミニウム又はこれらの合金を用いることができ、なかでも銀が好ましい。金属膜17は、単層膜でも多層膜でもよい。金属膜17は、スパッタ法、めっき法、蒸着法などにより形成することができる。なお、金属膜17は省略することもでき、基板11の下面が接合部材30と接していてもよい。
【0036】
(実装部材20)
実装部材20は、多くの場合、導電部材21,22と、基体23,24と、を含んで構成される。なお、実装部材は、ランプ型(砲弾型)の発光装置(不図示)のように、リードフレームである導電部材が基体を兼ねる形態であってもよい。
【0037】
(導電部材21,22)
導電部材21,22は、発光素子10と電気的に接続され、発光素子10に電力を供給する部材である。導電部材21,22は、リードフレームや配線などである。導電部材21,22の材料としては、銅、鉄、ニッケル、タングステン、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン又はそれらの合金が挙げられる。特に、放熱性の観点においては銅又は銅合金、半導体素子との接合信頼性においては鉄又は鉄合金が好ましい。導電部材21,22の表面には、銀、プラチナ、錫、金、銅、ロジウム、又はこれらの合金、若しくは酸化銀や銀合金の酸化物などの被膜が形成されていてもよい。特に、導電部材21,22の半導体素子10が接合される部位の表面が銀で被覆されていてもよい。これらの被膜は、鍍金、蒸着、スパッタ、印刷、塗布などにより形成することができる。
【0038】
(基体23,24)
基体23,24は、導電部材21,22を保持する部材である。基体23,24は、凹部(カップ部)を有するものや平板状のものなどを用いることができる。凹部を有するものは光の取り出し効率を高めやすく、平板状のものは発光素子10を実装しやすい。主として、前者はパッケージ、後者は配線基板の形態である。パッケージを構成する基体23としては、リードフレームと一体成形されたものの他、パッケージを成形後に鍍金などにより配線を設けたものでもよい。パッケージを構成する基体23の材料としては、例えばポリフタルアミドや液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ガラスエポキシ、セラミックスなどが挙げられる。また、発光素子10からの光を効率良く反射させるために、これらの樹脂に酸化チタンなどの白色顔料を配合してもよい。パッケージの成形方法としては、インサート成形、射出成形、押出成形、トランスファ成形などを用いることができる。配線基板を構成する基体24としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン又はこれらの混合物を含むセラミックス基板、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン又はこれらの合金を含む金属基板、ガラスエポキシ基板、BTレジン基板、ガラス基板、樹脂基板、紙基板などが挙げられる。ポリイミドなどの可撓性基板(フレキシブル基板)でもよい。
【0039】
(接合部材30)
接合部材30は、金属粒子35と有機溶剤を含有する金属粒子焼結型ペーストを焼成することにより得られるものである。接合部材30は、樹脂を実質的に含有しない。金属粒子35は、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、プラチナ、ロジウム、アルミニウム、亜鉛、又はこれらの合金を用いることができる。なかでも、金属粒子35は、焼結温度や大気雰囲気での焼結性の観点において、銀又は銀合金であることが好ましい。また、金属粒子が銀又は銀合金である場合には、金属粒子焼結型ペーストに金属酸化物の粒子、好ましくは酸化銀の粒子を添加してもよい。金属粒子35の平均粒径(メジアン径)は、低温で発光素子10と実装部材20を接合しやすくするために、0.02μm以上10μm以下であることが好ましく、0.06μm以上7μm以下であることがより好ましい。なお、金属粒子35の平均粒径(メジアン径)は、レーザ回折・散乱法などにより測定することができる。また、金属粒子35の比表面積は、例えば0.1m
2/g以上3m
2/g以下であり、0.15m
2/g以上2.8m
2/g以下であることが好ましく、0.19m
2/g以上2.7m
2/g以下であることがより好ましい。金属粒子35の比表面積がこのような範囲であれば、金属粒子35同士の結合面積を大きくでき、低温で発光素子10と実装部材20を接合しやすい。なお、金属粒子35の比表面積は、BETなどにより測定することができる。金属粒子35は、2種類の粒子の混合物であってもよい。この場合、金属粒子35は、平均粒径(メジアン径)が0.1μm以上1μm以下の第1粒子と、平均粒径(メジアン径)が2μm以上15μm以下の第2粒子と、の混合物であることが好ましい。また、第1粒子と第2粒子の重量比は、2:3であることが好ましい。このような粒子の混合物を用いることにより、低温で発光素子10と実装部材20を接合しやすい。接合部材30は、内部に多数の空隙を含むので、柔軟性に富んでいる。特に、平均粒径(メジアン径)の比較的大きい(例えばμmオーダ、より詳細には上記のような範囲の平均粒径の)金属粒子35を含む金属粒子焼結型ペーストの場合、隣接する金属粒子間の隙間が大きくなり、空隙となって内部に残りやすくなるために、接合部材30が多孔質となりやすい。
【0040】
有機溶剤は、各種の低級アルコールを用いることができるが、低温で発光素子10と実装部材20を接合しやすくするために、ジオールとエーテルの混合物であることが好ましい。ジオールとしては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、およびそのアルキレンオキサイド付加物;1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール類が挙げられる。エーテルとしては、例えば、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。金属粒子35と有機溶剤の重量比は、低温で発光素子10と実装部材20を接合しやすくするために、4〜9:1であることが好ましく、8〜9:1であることがより好ましい。なお、金属粒子35と有機溶剤を混合した後、メッシュなどを用いてろ過することで、均質な金属粒子焼結型ペーストが得られ、低温で均質に発光素子10と実装部材20を接合しやすい。
【0041】
(接合工程)
発光素子10は、例えば次のようにして実装部材20に接合することができる。まず、実装部材20上に金属粒子焼結型ペーストを塗布する。このとき、金属粒子焼結型ペーストは、発光素子10の下面側の全面が濡れる量で設けられることが好ましい。そうすることで、発光素子10と実装部材20との接合の耐熱衝撃性を高めやすい。次に、金属粒子焼結型ペースト上に発光素子10を載置した後、加熱して、発光素子10と実装部材20を接合する。このときの加熱温度は、150℃以上250℃以下であることが好ましい。また、加熱時間は、0.5時間以上5時間以下であることが好ましい。さらに、加熱は、大気雰囲気中又は酸素雰囲気中で行われるのが好ましい。このような雰囲気中で加熱することにより、金属粒子35同士の接合点が増加しやすく、発光素子10と実装部材20の接合強度の向上が期待できる。なお、実装部材20には、発光素子10に加え、ツェナーダイオード等の静電保護素子の他、抵抗やコンデンサなどの電子素子を実装してもよく、これらの電子素子を金属粒子焼結型ペーストにより実装部材20に接合してもよい。
【0042】
(被覆部材40)
被覆部材40は、少なくとも接合部材30を被覆する、白色の部材である。被覆部材40は、粒子45を含有する樹脂、又は粒子45の集合体で構成することができる。被覆部材40は、粒子45を含有する樹脂である場合、ディスペンス法などにより形成でき、粒子45の集合体である場合、電気泳動電着などにより形成することができる。粒子45の屈折率は、例えば1.8以上であって、光を効率的に散乱し高い光取り出し効率を得るために、2以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。被覆部材40が粒子45を含有する樹脂で構成される場合、樹脂と粒子45の屈折率差は、例えば0.4以上であって、光を効率的に散乱し高い光取り出し効率を得るために、0.7以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。また、粒子45の濃度は、好ましい光反射特性や形成のしやすさ等を考慮して、10重量パーセント濃度(wt%)以上50重量パーセント濃度以下であることが好ましく、20重量パーセント濃度以上40重量パーセント濃度であることがより好ましい。粒子45の平均粒径(メジアン径)は、高い効率で光散乱効果を得られる、0.08μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。粒子45は、白色であることが好ましい。具体的に、粒子45としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウムなどを用いることができる。なかでも、酸化チタンは、水分などに対して比較的安定で且つ高屈折率であるため好ましい。樹脂は、下記の封止部材と同様のものを用いることができ、なかでもシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂が好ましく、特に耐光性、耐熱性に優れるシリコーン樹脂がより好ましい。なお、発光素子構造13から出射される光に対する被覆部材40の光反射率は、接合部材30の表面のそれより高いことが好ましい。また、発光素子構造13から出射される光に対する被覆部材40の光反射率は、基板11の表面のそれより高いことが好ましい。
【0043】
(封止部材50)
封止部材50は、発光素子10やワイヤ、被覆部材40、導電部材21,22の一部などを、封止して、埃や外力などから保護する部材である。封止部材50の母材は、電気的絶縁性を有し、発光素子構造13から出射される光を透過可能(好ましくは透過率70%以上)であればよい。具体的には、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、シリコーン変成樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂が挙げられる。ガラスでもよい。なかでも、シリコーン樹脂は、耐熱性や耐光性に優れ、固化後の体積収縮が少ないため、好ましい。特に、封止部材50の母材は、フェニルシリコーン樹脂を主成分とすることが好ましい。封止部材50の表面を凸面とする場合には、ジメチルシリコーン樹脂よりフェニルシリコーン樹脂が光の取り出し効率に優れている。また、フェニルシリコーン樹脂は、ガスバリア性にも優れ、腐食性ガスによる導電部材21,22の劣化を抑制しやすい。
【0044】
封止部材50は、その母材中に、充填剤や蛍光体など、種々の機能を持つ粒子が添加されてもよい。充填剤は、拡散剤や着色剤などを用いることができる。具体的には、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、ガラス、カーボンブラックなどが挙げられる。充填剤の粒子の形状は、破砕状でも球状でもよい。また、中空又は多孔質のものでもよい。
【0045】
蛍光体は、発光素子構造13から出射される一次光の少なくとも一部を吸収して、一次光とは異なる波長の二次光を出射する。具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al2O
3−SiO
2)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)
2SiO
4)などが挙げられる。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色系)を出射する発光装置や、紫外光の一次光に励起されて可視波長の二次光を出射する発光装置とすることができる。
【0046】
(波長変換部材60,61)
波長変換部材60,61は、上記のような蛍光体を含有する透光性の部材である。具体的には、波長変換部材60,61は、上記封止部材50と同様の樹脂又はガラスの母材中に蛍光体を添加して成形したものの他、蛍光体の結晶や焼結体、又は蛍光体と無機物の結合材との焼結体などを用いることができる。波長変換部材60,61は、
図1に示すような平板状や薄膜状に形成することができ、またその表面を凸面や凹面、凹凸面などにしてもよい。また特に、波長変換部材60が発光素子10の近傍に設けられ、封止部材50が実質的に蛍光体を含有しない構成とすることで、発光素子10の近傍に限って蛍光体による光の波長変換及び散乱がなされるため、封止部材50の表面に対して光源部を小さくでき、光の取り出し効率を高めやすく、また本発光装置を光源として利用する装置の光学設計が容易となる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0048】
<実施例1>
実施例1の発光装置は、
図1に示す例に類似の構造を有する、表面実装型のLEDである。実施例1では、本発光装置を以下のように作製する。
【0049】
まず、金属粒子35と有機溶剤を重量比5:0.47で混合して、金属粒子焼結型ペーストを得る。金属粒子35は、フレーク状銀粒子(製品名「AgC−239」(福田金属箔粉工業株式会社製)、平均粒径(メジアン径):2.0〜3.2μm、比表面積:0.6〜0.9m
2/g)と、球状銀粒子(製品名「EHD」(三井金属鉱業株式会社製)、平均粒径(メジアン径):0.4〜1.2μm、比表面積:1.6m
2/g)と、を重量比6:4で混合したものである。有機溶剤は、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールと、ジエチレングリコールモノブチルエーテルと、を重量比8:2で混合したものである。
【0050】
実装部材20は、正負一対の導電部材21であるリードフレームに、基体23となる樹脂成形体が一体成形されて構成されている。導電部材21は、表面に銀の鍍金が施された銅製の板材をプレス又はエッチングにより加工したものである。基体23は、充填剤を含有するポリフタルアミド樹脂製である。実装部材20には、導電部材21の上面を底面に含む凹部が設けられている。
【0051】
発光素子10は、上面視2mm角の略直方体形状のLEDチップである。この発光素子10は、厚さ0.3mmのシリコン基板11の上面に、厚さ4μmの窒化物半導体の発光素子構造13が接合されたものである。接合層15は、発光素子構造13側に銀の金属反射膜を含み、その他の大部分は金−錫で構成されている。また、基板11の下面には、厚さ0.5μmの銀の金属膜17が設けられている。さらに、発光素子構造13の上面には、金の突起電極と、該突起電極を除く領域を被覆する波長変換部材60としてYAG:Ceの蛍光体を含有するシリコーン樹脂の成形体(厚さ50μm)と、が設けられている。
【0052】
金属粒子焼結型ペーストを、スタンピング法により、凹部底面に位置する導電部材21の上面に塗布して、その上に発光素子10を載置する。次に、発光素子10が載置された実装部材20を、120℃の大気雰囲気下で30分間、さらに175℃で90分加熱し、その後、冷却する。これにより、金属粒子焼結型ペーストが焼成されて多孔質の焼結体の接合部材30となり、発光素子10の基板11の下面側が導電部材21に接合される。なお、接合部材30は、基板11の側面の一部を被覆している。
【0053】
次に、発光素子10の突起電極と、導電部材21と、を金のワイヤによって接続する。その後、被覆部材40として、屈折率が約1.4のシリコーン樹脂に、平均粒径が約0.3μm、屈折率が約2.5の酸化チタンの粒子45を濃度30wt%で配合したものを、ディスペンス法によって、接合部材30を被覆するように塗布する。このとき、被覆部材40は、発光素子の基板11の側面の少なくとも一部を被覆し、また発光素子10周囲の実装部材20の凹部底面(特に導電部材21)上を被覆するように設ける。最後に、シリコーン樹脂の封止部材50を、略半球状の表面を有するように実装部材20上に設けて、発光装置を得る。
【0054】
<実施例2>
実施例2の発光装置は、被覆部材を設けないこと以外、実施例1と同様に作製する。
【0055】
<比較例1>
比較例1の発光装置は、銀粒子焼結型ペーストの代わりに、フラックスを含有し融点が280℃付近である金−錫ペーストを用いて、300℃付近のリフロー炉で接合を行うこと以外、実施例2と同様に作製する。しかしながら、比較例1の発光装置は、リフロー炉の冷却工程において、発光素子が破壊してしまった。高温での接合のため、膨張率の大きい銅のリードフレームの冷却時の応力に発光素子が耐えられなかったと考えられる。
【0056】
<比較例2>
比較例2の発光装置は、リードフレームの材質を、銅の代わりに、鉄と銅の複合材にすること以外、比較例1と同様に作製する。
【0057】
<検証1>
実施例1,2及び比較例2の発光装置について、積分球を用いて光束を測定する。順電流は350mAであり、色度x=0.32、y=0.32(国際照明委員会(CIE)のxyz表色系に準拠)において比較する。実施例1の発光装置の光束は158.36ルーメン、実施例2の発光装置の光束は156.69ルーメン、比較例2の発光装置の光束は157.25ルーメンである。このように、実施例1の発光装置は、実施例2及び比較例2の発光装置より高い光束を得られることが確認できる。また、実施例1の発光装置は、比較例1の発光装置に比べて構成部材の損傷を抑えられることが確認できる。
【0058】
<検証2>
実施例1,2及び比較例2の発光装置について、硫化試験前後における光束維持率を測定する。硫化試験は、発光装置と1gの硫化ナトリウムを圧力容器内に入れて、120℃のオーブンで20時間加熱するものである。実施例1の発光装置の光束維持率は98.1%、実施例2の発光装置の光束維持率は97.9%、比較例2の発光装置の光束維持率は97.0%である。このように、硫化試験後においても、実施例1の発光装置は、実施例2及び比較例2の発光装置より高い光束を維持可能であることが確認できる。