(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、本発明に係る第1実施形態の光導波路100を説明する。
図1に示すように、光導波路100は、基板10と、基板10に積層された下部クラッド層21と、下部クラッド層21に積層され、光信号が伝搬するコア部の一実施形態であるコア層22と、コア層22を覆うように下部クラッド層21の上方に積層された上部クラッド層23と、光路変換ミラー40と、突起部60とを備える。突起部60付近のコア層22の厚みは他の部分より薄い。コア層22は、光信号が伝搬する伝搬方向Lにおいて、突起部60の近傍部分である突起部近傍部分22dから離れる方向に進むにつれて、厚みtが厚くなるテーパー部22cを有する。
【0011】
基板10は、基板本体11と、接着層12とを含む。基板10の一方の表面10aに下部クラッド層21が積層配置され、他方の表面10bには突起部60が配置されている。
基板本体11は、光導波路100の製造工程中に、基板本体11が
図3に示すような変形が可能なように、変形が容易な樹脂で形成された板状の基材で形成されている。基板本体11は、透過性のある材料で形成されていることが好ましい。基板本体11は、例えば、柔軟性及び強靭性のあるフレキシブル基板を用いることが好ましく、さらに、クラッド層形成用樹脂フィルム及びコア層形成用樹脂フィルムのキャリアフィルムを基板として用いることが好ましい。
【0012】
基板本体11の材質としては、特に制限はなく、例えば、ガラスエポキシ樹脂基板、プラスチック基板、金属基板、樹脂層付き基板、金属層付き基板、プラスチックフィルム、樹脂層付きプラスチックフィルム、金属層付きプラスチックフィルムなどが挙げられる。
基板本体11の厚さは、基板本体11が変形し得る範囲内であれば特に制限はないが、5μm〜500μmであることが好ましい。基板本体11が容易に変形するよう、基板本体11の厚さは、10μm〜50μmであることが好ましい。基板本体11の厚さを薄くすると、急峻なテーパーを有するコア層22を形成することができる。基板本体11の厚さを厚くすると、緩やかなテーパーを有するコア層22を形成することができる。このため、コア層22のテーパーの角度が所望の角度になるよう、基板本体11の厚さを適宜調整することが好ましい。
【0013】
また、基板本体11を低い弾性率の材料で形成すると、急峻なテーパーを有するコア層22を形成することができる。基板本体11を高い弾性率の材料で形成すると、緩やかなテーパーを有するコア層22を形成することができる。このため、コア層22のテーパーの角度が所望の角度になるよう、基板本体11の弾性率を適宜調整することが好ましい。基板本体11の弾性率を200MPa〜20GPaの範囲内にすると、0.05〜2.0MPa程度の圧力を基板本体11に与えるだけで、基板10を変形させることができる。
【0014】
本発明において、コア層22と突起部60との間に、下部クラッド層21からなる単層体、下部クラッド層21と基板10とからなる積層体、又は、下部クラッド層21と接着層12と基板本体11とからなる積層体が配置されるため、コア層22の厚み方向のテーパーは、途切れることなく連続にかつなめらかに形成される。
【0015】
接着層12は、基板10と下部クラッド層21との間の密着性を高めるために、基板本体11の一方の表面に設けられている。
接着層12の種類としては特に限定されないが、両面テープ、UV硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、プリプレグ、ビルドアップ材など、電気配線板製造用途に使用される種々の接着剤が好適に挙げられるが、基板本体11の変形時に、基板本体11と同様に接着層12も変形する材料であることが好ましい。
基板本体11と下部クラッド層21との間に接着性がある場合には、接着層12を省略してもよい。
【0016】
突起部60は、基板10の両表面のうち下部クラッド層21が形成された表面10bとは反対の表面10aに形成されている。突起部60は、基板10を変形させることができる大きさであればよく、伝搬方向Lと直角の方向である基板10の幅方向Wの寸法と同じ寸法を有し、基板10の他方の表面10aの中央に伝搬方向Lを横切るように形成されている。
突起部60の形状は特に限定はなく、円柱状、多角形柱状、曲面の凸状、階段状であってもよく、ドット状、線状、リング状等のパターン形状であってもよい。コア層22のテーパー部22cが緩やかになるよう、突起部60の形状を、曲面を持つ凸状、階段状等の形状とすることが好ましい。
なお、突起部60の形状は、突起部60の材質として透明性がない金属パターン等を用いる場合には、光路変換ミラー40によって偏向された光信号が突起部60に干渉しないように、開口したリング形状とすることが好ましい。
【0017】
突起部60の厚さ寸法(基板10の表面10aに直角の方向の寸法)は、特に限定はないが、コア層22が所望するテーパー量(コア層22の樹脂の最大厚みと最小厚みとの差)、基板10の厚み、基板10の弾性率によって適宜選択される。
突起部60の厚さは、コア層22のテーパーを形成する部分の樹脂の厚みを超えない範囲で、0.5μm〜100μmであるとよく、突起部60の厚みtを{(所望するテーパー量)+(基板の変形時の厚み変化量)}にすると、所望のテーパー量を有するテーパー部22cが得られる。また、平面基板70(
図3参照)を用いて基板10を変形させる場合には、突起部60の厚みtを{(所望するテーパー量)+(基板10の変形時の厚み変化量)+(平面基板70の厚み方向の変形量)}にすると、所望のテーパー量を有するテーパー部22cが得られる。
突起部60の厚みtは、平面基板70のほかに、樹脂フィルムに用いられるキャリアフィルム、基板10の変形時に厚み方向における厚さが変化したり変形したりする材料がある場合には、その変化量や変形量を突起部60の厚みに加算することが好ましい。
【0018】
突起部60の材質としては、特に制限はなく、基板10の中央に外力を作用させて基板10を変形させ得る際に生じる弾性力に耐え得る材料であることが好ましい。
また、突起部60の材質としては、光導波路100のコア層22を伝搬する光信号の信号波長に対して透明である材料であることが好ましい。光路変換ミラー40で反射された光信号が突起部60を透過するよう、突起部60を透明な感光性レジストパターンで形成することが好ましい。
突起部60が高い位置精度で基板10の表面10aに形成されるよう、突起部60を感光性のレジストパターン、金属パターンなどで形成することが好ましい。
【0019】
下部クラッド層21は、基板10の表面10bに積層されている。下部クラッド層21は、表面が平坦な板状に形成されている。下部クラッド層21は、寸法安定性を維持できる厚さを有する材料で形成されることが好ましい。
【0020】
コア層22は、下部クラッド層21又は基板10と略同じ広さを有し、下部クラッド層21に積層されている。突起部60が形成されている突起部近傍部分22dのコア層22の厚みtは、それ以外の厚みよりも薄い。コア層22は、突起部近傍部分22dから光信号が伝搬する伝搬方向Lに進むにつれて、コア層22の厚みが厚くなる厚みテーパー部22cを有する。
このとき、光導波路100のコア層22の両端をフォトダイオードやレーザーダイオードに接続させる際に、フォトダイオードに向けて光を発射させる光導波路100の発光部となる端面22aの厚さ方向の寸法を他の部分の厚さより小さく、また、レーザーダイオードから光を受光する受光部である端面22bの厚さ方向の寸法を他の部分の厚さより大きくすることができる。これにより、出射部近傍に、受光素子や受光用の光ファイバなどの受光器を設置した際に、光導波路100と受光器との間の結合損失を低減することができると共に、光導波路100と光学素子とを接続する際の位置合わせトレランスが確保できる。
スポット径又は広がり角の拡縮はトレードオフの関係にあるが、使用する受光器の種類や、位置によって適宜用いることができる。
【0021】
上部クラッド層23は、コア層22を覆うように下部クラッド層21の上方に積層されている。上部クラッド層23は、コア層22の突起部近傍部分22dの表面が凹んでいる(
図3参照)ので、上部クラッド層23の上面が平坦になるよう、その近傍の厚さが厚い凸形状を有する。
【0022】
下部クラッド層21及び上部クラッド層23は、クラッド層形成用樹脂又はクラッド層形成用樹脂フィルムで形成することが好ましい。
コア層22は、例えば、コア層形成用樹脂の塗布又はコア層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成することが好ましい。コア層形成用樹脂は、下部クラッド層21及び上部クラッド層23より高屈折率であることが好ましい。
【0023】
クラッド層形成用樹脂としては、コア層22より低屈折率で、光又は熱により硬化する樹脂組成物であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物を好適に使用することができる。
下部クラッド層21は、下部クラッド層21が変形された形状を保持することができるよう、光硬化性がある材料で形成することが好ましい。クラッド層形成用樹脂に用いる樹脂組成物は、下部クラッド層21及び上部クラッド層23において、樹脂組成物に含有する成分が互いに同一であったり異なっていたりしてもよく、また、樹脂組成物の屈折率が互いに同一であったり異なっていたりしてもよい。
【0024】
下部クラッド層21及び上部クラッド層23の形成方法は特に限定されず、例えば、クラッド層形成用樹脂の塗布又はクラッド層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成することが好ましい。例えば、樹脂組成物を溶媒に溶解して、キャリアフィルムに塗布し、溶媒を除去することにより、ラミネートに用いるクラッド層形成用樹脂フィルムを容易に製造することができる。
【0025】
下部クラッド層21及び上部クラッド層23は、下部クラッド層21及び上部クラッド層23を乾燥させた状態において、5μm〜500μmの範囲の厚みであることが好ましい。コア層22を伝搬する光信号が閉じ込められるよう、下部クラッド層21及び上部クラッド層23の厚みを5μm以上にすることが好ましい。また、下部クラッド層21及び上部クラッド層23の膜厚を容易に均一に制御することできるよう、膜厚を500μm以下にすることが好ましい。また、下部クラッド層21及び上部クラッド層23は、10μm〜100μmの範囲内の厚みであることがより好ましい。
【0026】
コア層形成用樹脂フィルムの厚みについては特に限定されず、乾燥後のコア層22の厚みは、通常、10μm〜100μmであることが好ましい。コア層形成用樹脂フィルムの厚みが10μm以上であると、形成された光導波路100と受発光素子又は光ファイバとの結合において、受発光素子又は光ファイバの位置合わせトレランスが拡大する。乾燥後のコア層22の厚みが100μm以下であると、形成された光導波路100と受発光素子又は光ファイバとの結合において、結合効率が向上する。コア層形成用樹脂フィルムの厚みは、さらに、30μm〜70μmの範囲であることが好ましい。
【0027】
クラッド層形成用樹脂フィルム及びコア層形成用樹脂フィルムはキャリアフィルム上に形成することが好ましい。キャリアフィルムの種類としては、柔軟性及び強靭性のあるキャリアフィルムが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルファイド、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドが好適に挙げられる。キャリアフィルムの厚みは、5μm〜200μmであることが好ましい。キャリアフィルムの厚みが5μm以上であると、キャリアフィルムとしての強度が得やすい。キャリアフィルムの厚みが200μm以下であると、パターン形成時のマスクとのギャップが小さくなり、より微細なパターンを形成することができる。キャリアフィルムの厚みは、10μm〜100μmの範囲であることがより好ましく、15μm〜50μmであることが特に好ましい。
【0028】
光路変換ミラー40は、コア層22を伝搬する光信号を基板10がある方向に光路変換したり、基板10の垂直方向からの光信号を伝搬方向Lに光路変換したりすることができるよう、下部クラッド層21、コア層22及び上部クラッド層23を一体的に削って形成したV溝30の側面に形成されている。光路変換ミラー40は、コア層22の端面22bを覆うように、V溝30の側面に露出したV溝30の側面に形成されている。光路変換ミラー40は、40〜50°の斜面であることが好ましく、45°の斜面であることがより好ましい。また、V溝30の側面(端面22b)に蒸着装置を用いて、金等の金属を蒸着し、反射金属層を備えた光路変換ミラー40としてもよい。
【0029】
次に光導波路100の製造方法を
図2から
図5を用いて説明する。
図2を参照して、基板10上に下部クラッド層21を形成する下部クラッド層形成工程を説明する。
下部クラッド層21の形成方法としては特に限定はないが、下部クラッド層形成用樹脂をスピンコータ、コンマコータ、ダイコータ等を用いて基板10上に塗布したり、あらかじめキャリアフィルム上に塗工したドライフィルム形状の下部クラッド層形成用樹脂フィルムを、ロールラミネータ、真空ロールラミネータ、真空ラミネータ、常圧プレス、真空プレス等を用いてラミネート形成したりする。コア層22の形成時に下部クラッド層21の厚み量の変化(膜減り)が抑制するよう、必要に応じて下部クラッド層21を光や熱によって硬化させることが好ましい。
【0030】
次に、基板10の表面10aに突起部60を形成する突起部形成工程を説明する。
下部クラッド層21が形成された表面10bとは反対の表面10aに突起部60を形成する。突起部形成工程は下部クラッド層形成工程の前でも後でも同時でもよいが、下部クラッド層21の厚み量の変化(膜減り)が抑えられるよう、下部クラッド層形成工程の後に突起部形成工程を行うことが好ましい。
突起部60の形成方法は、基板10の表面10aから突出した形状を形成することができれば特に限定されない。
突起部60は、例えば、突起部形成用樹脂を基板10の表面10aに形成した後に、凹版にて基板10の表面10aに突起部60を形成する方法で形成してもよい。
また、突起部60は、凹版を基板10の表面10aに押して、基板10の表面10aを変形させる方法で形成してもよい。
また、突起部60は、突起部形成用樹脂を基板10の表面10aに形成した後に、フォトリソグラフィ加工によってテーパーターン化する方法で形成してもよい。フォトリソグラフィ加工によって形成する場合には、工程数が低減するよう、下部クラッド層形成工程と突起部形成工程とを同時に行うことが好ましい。具体的には、基板10の一方の表面10bに下部クラッド層形成用樹脂層を、もう一方の表面10aに突起部形成用樹脂層を同時に形成し、突起部形成用樹脂層に露光を行った後に、エッチングによって突起部60を形成する。
【0031】
次に、
図3を参照して、コア部のうちコア層22を形成するコア部形成工程について説明する。
コア層22の形成方法としては特に限定はないが、コア層形成用樹脂をスピンコータ、コンマコータ、ダイコータ等を用いて下部クラッド層21の表面に塗布する方法や、あらかじめキャリアフィルム上に塗工したドライフィルム形状のコア層形成用樹脂フィルムを、ロールラミネータ、真空ロールラミネータ、真空ラミネータ、常圧プレス、真空プレス等を用いてラミネート形成してもよい。
そして、コア層形成用樹脂を積層すると同時又は後に、基板10の表面10aのうち突起部60が形成されている部分が凹むように、突起部60をコア層22側に押し込む。これにより、基板10の中央部分a及び基板10に積層された下部クラッド層21の突起部近傍部分22dが押し上げられ、基板10の中央部分aの近傍部分bの表面がテーパー形状になる。つまり、基板10及び下部クラッド層21は、それぞれ、中央部分a及び突起部近傍部分22dを天辺とする凸状に変形する。
このとき、基板10が塑性変形しても、コア層22の下面は凹んだ状態となるため、コア層22をテーパー形状に形成することができるが、基板10の寸法安定性を確保するために、基板10を変形させるようにすることが好ましい。
【0032】
基板10及び下部クラッド層21を、凸状に変形させた状態で、突起部近傍部分22dが薄くなるよう、コア層形成用樹脂を塗布し、その上面を平坦化する。これにより、コア層22の上面が平坦になる。そして、コア層形成用樹脂を下部クラッド層21の形成方法と同様の方法でコア層22を形成する。このとき、コア層22の中央部分aの厚さは薄く、その近傍部分bは、中央部分aから離れるに従って、厚さが厚くなっている。また、コア層22の下面の中央は凹んだ状態になっている。
突起部60を基板10に押し込む方法は、特に限定はないが、平面基板70を基板10のうち突起部60がある側に設置し、平面基板70を基板10側に圧力を作用させる方法であることが好ましい。
【0033】
平面基板70は、光導波路100を製造する際に用いられる基板であり、基板10よりも大きい板状部材であることが好ましい。平面基板70の材質としては、特に制限はなく、例えば、ガラスエポキシ樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板、樹脂層付き基板、金属層付き基板、プラスチックフィルム、樹脂層付きプラスチックフィルム、金属層付きプラスチックフィルムなどが挙げられるが、平面基板70が、基板10が変形するように、突起部60を介して基板10の一部を押し上げる際の圧力で、変形しにくい材料であることが好ましい。特に、平面基板70は、ガラスエポキシ樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板がより好ましい。
【0034】
図4に示すように、突起部60を基板10に押し込むことを辞めると、基板10は、弾性力により、板状に戻ると共に、下部クラッド層21も板状に戻る。これに伴い、コア層22の下面も凹状から平面状になると共に、コア層22の突起部近傍部分22dの上面が凹んだ状態になる。
【0035】
次に、上部クラッド層23を形成する上部クラッド層形成工程を説明する。
上部クラッド層23は、下部クラッド層21と同様の方法で形成することが好ましい。このとき、コア層22の突起部近傍部分22dの上面は凹んでいるので、上部クラッド層23の厚さは、基板10の中央部分aに積層された部分は厚く、基板10の近傍部分bに積層された部分は中央部分aから離れるに従って薄くなり、近傍部分bに積層された部分より外側の部分は薄い。また、コア層22の端面22aは、上部クラッド層23から露出している。
【0036】
次に、
図5を参照して、光路変換ミラーを形成するミラー形成工程について説明する。
ミラー形成工程は、上部クラッド層形成工程又はコア層形成工程の後に、光路変換ミラー40を設けることが好ましい。
光路変換ミラー40の形成方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、上部クラッド層23の上面から、ダイシングソーやレーザアブレーション等を用いてV溝30を形成する。このとき、コア層22の端面22bが形成され、この端面22bを光路変換ミラー40として機能させる。
ミラー形成工程においては、突起部60を位置合わせマーカとして、切削位置決めに用いることによって、コア層22のうち最も厚みの薄い部分に正確な位置に光路変換ミラー40を形成することができる。光路変換ミラー40の角度は、40〜50°の斜面であることが好ましく、45°の斜面であることがより好ましい。また、光路変換ミラー40を加工した後に蒸着装置を用いて、金等の金属を蒸着し、反射金属層を備えるようにしてもよい。
【0037】
このように、光導波路100の製造は、基板10の一方の表面10bに下部クラッド層21を形成する下部クラッド層形成工程と、基板10の他方の表面10aに突起部60を形成する突起部形成工程と、突起部形成工程の後に、下部クラッド層21上にコア層22を形成するコア部形成工程と、突起部60付近のコア層22の厚みが薄くなるように、突起部60を基板10の他方の表面10aから一方の表面10bの方向である押し込み方向に押し込む押込工程と、コア層22上に上部クラッド層23を形成する上部クラッド層形成工程とを含む。ここで、押込工程は、コア部形成工程と同時に又はコア部形成工程の後に行う。
【0038】
これにより、基板10上に光導波路100のコア層22を形成する際に、基板10の一部に設けられた突起部60を押し込み方向に押し込み、基板10の一部が押し上げられた状態で、コア層22の表面を平坦化することにより、コア層22において突起部60によって押し上げられたコア層22の一部が他の部分より薄くなり、コア層22はテーパー状に形成される。
そして、突起部60の押し込み深さを調整することによってテーパー状が形成されているコア層22の厚さを調整することができ、ひいては、コア層22のテーパーの角度を調節することができる。
また、突起部60付近のコア層22の厚みが最も薄くなるため、テーパーが形成されたコア層22の最も薄い部分を容易に特定することができる。
【0039】
図6を参照して、本発明に係る第2実施形態の光導波路100aを説明する。なお、光導波路100と同じ構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0040】
図6に示すように、光導波路100aは、基板10と、基板10に積層された下部クラッド層21と、下部クラッド層21に積層され、光信号が伝搬するコア部の別の実施形態であるコアパターン24と、コアパターン24を覆うように下部クラッド層21の上方に積層された上部クラッド層23と、光路変換ミラー40と、突起部60aとを備える。突起部60aの近傍である突起部近傍のコアパターン24の厚みは薄く、幅は狭い。コアパターン24の厚みtは、突起部60aの突起部近傍から光信号が伝搬する伝搬方向Lに進むにつれて、厚くなり、幅wも同様に広くなるテーパー部24cを有する。
【0041】
基板10は、基板本体11と接着層12とを備える。基板本体11の厚さは、基板本体11が変形し得る範囲内であれば特に制限はないが、基板本体11の厚さを薄くすると、急峻なテーパーを有するコアパターン24を形成することができる。基板本体11の厚さを厚くすると、緩やかなテーパーを有するコアパターン24を形成することができる。このため、コアパターン24のテーパーの角度が所望の角度になるよう、基板本体11の厚さを適宜調整することが好ましい。
また、基板本体11を低い弾性率の材料で形成すると、急峻なテーパーを有するコアパターン24を形成することができる。基板本体11を高い弾性率の材料で形成すると、緩やかなテーパーを有するコアパターン24を形成することができる。このため、コアパターン24のテーパーの角度が所望の角度になるよう、基板本体11の弾性率を適宜調整することが好ましい。基板本体11の弾性率を200MPa〜20GPaの範囲内にすると、0.05〜2.0MPa程度の圧力を基板本体11に与えるだけで、基板10を変形させることができる。
【0042】
突起部60aは、伝搬方向Lと直角の方向である基板10の幅方向Wの寸法よりも短い寸法を有する。突起部60aの形状は、突起部60と同じように、特に限定はない。また、突起部60aの厚さ寸法は、突起部60と同様、特に限定はない。
【0043】
コアパターン24は、下部クラッド層21より小さい広さを有し、下部クラッド層21に積層されている。コアパターン24は、突起部60aが形成されている突起部近傍部分24dのコアパターン24の厚みtは、それ以外の厚みよりも薄い。同様に、コアパターン24は、突起部60aが形成されている突起部近傍部分24dのコアパターン24の幅wは、それ以外の幅よりも狭い。
コアパターン24は、突起部近傍部分24dから光信号が伝搬する伝搬方向に進むにつれて、コアパターン24の厚みが厚くなり、また、幅が広くなる厚みテーパー部24cを有する。
このとき、光導波路100aのコアパターン24の両端をフォトダイオードやレーザーダイオードに接続させる際に、フォトダイオードに向けて光を発射させる光導波路100の発光部となる端面24aの厚さ方向及び幅方向の寸法を小さく、レーザーダイオードから光を受光する受光部である端面24bの厚さ方向及び幅方向の寸法を大きくすることができる。このため、光導波路100と光学素子と接続する際の位置合わせトレランスが確保できる。
【0044】
上部クラッド層23は、コアパターン24を覆うように下部クラッド層21の上方に積層されている。上部クラッド層23は、コアパターン24の突起部近傍部分24dの表面が凹んでいる(
図8参照)ので、コアパターン24において、上部クラッド層23の上面が平坦になるよう、その近傍の厚さが厚い凸形状を有する。
また、コアパターン24が上部クラッド層23に埋め込まれた状態にするために、上部クラッド層23の厚みは、コアパターン24の平均厚みよりも厚くすることが好ましい。
【0045】
コアパターン24は、例えば、コア層形成用樹脂の塗布又はコア層形成用樹脂フィルムのラミネートをし、エッチングにより形成することが好ましい。コア層形成用樹脂は、下部クラッド層21及び上部クラッド層23より高屈折率であることが好ましい。
【0046】
クラッド層形成用樹脂としては、コア層22と同様、コアパターン24より低屈折率で、光又は熱により硬化する樹脂組成物であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0047】
光路変換ミラー40は、コアパターン24を伝搬する光信号を基板10がある方向に光路変換したり、基板10の垂直方向からの光信号を伝搬方向Lに光路変換したりすることができるよう、下部クラッド層21、コアパターン24及び上部クラッド層23を一体的に削られて形成されたV溝30の側面に形成されている。光路変換ミラー40は、V溝30の側面に露出した、コアパターン24の端面24bを覆うように、V溝30の側面に形成されている。光路変換ミラー40は、40〜50°の斜面であることが好ましく、45°の斜面であることがより好ましい。また、光路変換ミラー40に蒸着装置を用いて、金等の金属を蒸着し、反射金属層を備えた光路変換ミラー40としてもよい。
【0048】
次に光導波路100aの製造方法を
図7から
図9を用いて説明する。
【0049】
図7を参照して、基板10上に下部クラッド層21を形成する下部クラッド層形成工程を説明する。
下部クラッド層21の形成方法としては、特に限定はないが、コアパターン24の形成時に下部クラッド層21の厚み量の変化(膜減り)が抑制するよう、必要に応じて下部クラッド層21を光や熱によって硬化させることが好ましい。
【0050】
次に、基板10の表面10aに突起部60aを形成する突起部形成工程を説明する。
突起部60aは、突起部60よりも小さいので、突起部60aを形成する範囲が小さいこと以外は、突起部60と同じ製造方法で形成することができる。下部クラッド層21が形成された表面10bとは反対の表面10aの中央に突起部60aを形成する。
突起部60aの形成方法は、突起部60の形成方法と同様、基板10の表面10aの中央から突出した形状を形成することができれば特に限定されない。
【0051】
次に、
図7を参照して、コア部のうちコアパターン24を形成するコア部形成工程について説明する。
コアパターン24の形成方法としては特に限定はないが、例えば、コア層形成用樹脂が感光性を有する樹脂の場合、コアパターン形成用マスクを用いてコアパターン形成用樹脂を硬化し得る活性光線を照射後、エッチングによって未硬化部を除去することによって形成することができる。このとき、コアパターン24が突起部60a上を通るように形成するとコアパターン24の厚みの変化を効果的につけることができる。
コアパターン形成用マスクは、中央部分aの幅は狭く、近傍部分bは中央部分aから離れるに従って広くなるようなスリット形状が形成されていることが好ましい。
そして、コア層形成用樹脂を積層すると同時又は後に、基板10の表面10aのうち突起部60aが形成されている部分が凹むように、突起部60aをコアパターン24側に押し込む。これにより、基板10及び基板10の中央部分aに積層された下部クラッド層21の部分が押し上げられ、中央部分aの近傍部分bに積層されている部分の表面がテーパー形状になる。つまり、基板10及び下部クラッド層21は、中央部分aを天辺とする凸状に変形する。
基板10及び下部クラッド層21を、凸状に変形させた状態で、突起部近傍部分24dが薄くなるよう、コア層形成用樹脂を塗布し、その上面を平坦化する。これにより、コアパターン24の上面が平坦になる。そして、コア層形成用樹脂を下部クラッド層21の形成方法と同様の方法でコアパターン24を形成する。このとき、コアパターン24の突起部近傍部分24dの厚さは薄く、突起部近傍部分24dから離れるに従って、厚さが厚くなっている。また、コアパターン24の下面の中央は凹んだ状態になっている。
突起部60aを基板10に押し込む方法は、突起部60を基板10に押し込む方向と同様、特に限定はないが、平面基板70を基板10のうち突起部60aがある側に設置し、平面基板70を基板10側に圧力を作用させる方法であることが好ましい。
【0052】
図8に示すように、突起部60aを基板10に押し込むことを辞めると、基板10は、弾性力により、板状に戻ると共に、下部クラッド層21も板状に戻る。これに伴い、コアパターン24の下面も凹状から平面状になると共に、コアパターン24の上面は中央部分aが凹んだ状態になる。
【0053】
次に、上部クラッド層23を形成する上部クラッド層形成工程を説明する。
上部クラッド層23は、下部クラッド層21と同様の方法で形成することが好ましい。このとき、コアパターン24の突起部近傍部分24dの上面は凹んでいるので、コアパターン24において、上部クラッド層23の厚さは、中央部分aは厚く、突起部近傍部分24dの近傍のテーパー部24cは突起部近傍部分24dから離れるに従って薄くなり、テーパー部24cより外側の部分は薄い。また、コアパターン24の端面24aは、上部クラッド層23から露出している。
【0054】
次に、
図9を参照して、光路変換ミラーを形成するミラー形成工程について説明する。
光路変換ミラー40の形成方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、上部クラッド層23の上面から、ダイシングソーやレーザアブレーション等を用いてV溝30を形成する。このとき、コアパターン24の端面24bが形成され、この端面24bを光路変換ミラー40として機能させる。
ミラー形成工程においては、突起部60aを位置合わせマーカとして、切削位置決めに用いることによって、コアパターン24のうち最も厚みの薄い部分に正確な位置に光路変換ミラー40を形成することができる。
【0055】
図10から
図12を参照して、本発明に係る第3実施形態の光導波路100bを説明する。
図10に示すように、光導波路100bの基板15aは、中央に開口部16が形成されていること以外は基板10と同じである。
また、突起部65は、開口部16を介して下部クラッド層21と接続していること以外は突起部60と同じである。
開口部16は、使用する信号波長に対して透明性が基板15aにない場合、光信号が透過する部分に設ける。このとき開口部16内に突起部65を形成することにより、開口部16の付近のコア層22の厚みを小さくすることができる。
【0056】
次に光導波路100bの製造方法を
図11及び
図12を用いて説明する。
【0057】
図11を参照して、基板15a上に下部クラッド層21及び突起部65を形成する下部クラッド層形成工程及び突起部形成工程を説明する。
開口部16は、公知の方法により、基板15aに設けられる。
基板15aに開口部16を設け、基板15aの一方の表面に突起部形成用樹脂を、他方の表面に下部クラッド層21を形成するための下部クラッド層形成用樹脂を、それぞれ、積層し、開口部16において、突起部形成用樹脂や下部クラッド層形成用樹脂で充填し、下部クラッド層側から下部クラッド層21及び開口部16を露光し、エッチングすることによって、下部クラッド層21と突起部65とが形成される。
【0058】
図12に示すように、コア層22を形成するコア部形成工程を行う。
コア部形成工程は、光導波路100のコア部形成工程と同様の工程でコア層22を形成する。形成されたコア層22は、突起部近傍部分22dは厚く、テーパー部22cは突起部近傍部分22dから離れるに従って薄くなり、テーパー部22cより外側の部分は薄い。
【0059】
そして、光導波路100の上部クラッド層形成工程及びミラー形成工程と同様に、上部クラッド層23及び光路変換ミラー40をそれぞれ形成する上部クラッド層形成工程及びミラー形成工程を行い、
図10に示す光導波路100bを得る。
ミラー形成工程においては、突起部65を位置合わせマーカとして、切削位置決めに用いることによって、コア層22のうち最も厚みの薄い部分に正確な位置に光路変換ミラー40を形成することができる。
【0060】
図13を参照して、本発明に係る第4実施形態の光導波路100cを説明する。
光導波路100cは、基板15bと、基板15bの裏面に形成された4つの突起部60と、基板15bの表面に形成された16のコアパターン24とを有し、1つの突起部60に対して4つのコアパターン24が形成されている。基板15bは、基板10よりも大きい。
4つのコアパターン24は、最もコアパターン24の厚さが薄い位置(突起部60が形成されている位置)から、放射状に遠ざかるにつれコアパターン24の厚さが厚くなるよう、基板15bに形成されている。つまり、光導波路100cは、突起部60が形成されている位置から放射状に基板15bに配置されている複数のコアパターン24を有する。
これにより、例えば、光導波路100cのコアパターン24が集中する箇所(コアパターン24の厚さが薄くなる箇所)に光路変換ミラー40を設けることができる。そのような光導波路100cは、受光面(又は発光面)が集中した受発光素子チップを光路変換ミラー40上に実装することができる。また、基板15b上に形成するコアパターン24の伝搬方向Lの制約を受けることなく、基板15bのいたる方向からコアパターン24を形成することができる。
【0061】
図14を参照して、本発明に係る第4実施形態の光導波路100dを説明する。
光導波路100dは、基板15bと、基板15bの裏面に形成された4つのリング状の突起部60と、基板15bの表面に形成された16のコアパターン24とを有し、1つの突起部60に対して4つのコアパターン24が形成されている。基板15bは、基板10よりも大きい。
4つのコアパターン24は、最もコアパターン24の厚さが薄い位置(突起部60が形成されている位置)から、リングの中央に向かうに従ってコアパターン24の厚さが厚くなるよう、基板15bに形成されている。換言すると、最もコアパターンの厚さが厚い場所から放射状に遠ざかるにつれてコアパターン24の厚さが薄くなっている。
これにより、光導波路100dは、光導波路100cと同様の作用効果を奏する。
【0062】
図15を参照して、本発明に係る第5実施形態の光導波路100eを説明する。
光導波路100eは、基板15b上に突起部60を線状に形成し、突起部60の上にあるコアパターン24の厚さを薄くすることで基板15bの平面内における1次元方向(X又はY方向)にテーパーを形成することができる。つまり、光導波路100eは、複数のコアパターン24を列状に配置して基板15bに形成されている。各コアパターン24は、一端側(突起部60側)の厚みが最も薄く、他端側へと遠ざかるにつれ厚みが厚くなるテーパー構造となっている。また、複数のコアパターン24の一端側(突起部60側)の幅が最も狭く、他端側へと遠ざかるにつれ幅が広くなるテーパー構造となる。これにより、例えば、受光面(又は発光面)が整列した受発光素子チップを実装する場合に、基板15bの平面の一方向から複数のコアパターン24を形成しても同じテーパー付きのコアパターン24を用いることができる。
基板15bの平面内の1次元方向にテーパーを形成することにより、例えば、光導波路100eの厚みが集中するライン(薄くなる箇所又は厚くなるライン)上に光路変換ミラー40を設け、受光面(又は発光面)が一列に整列した受発光素子チップを実装すると、基板15bの平面の一方向から複数のコアパターンを引き回してきても同じテーパー付きのコアを用いることができる。
さらに、突起部60を複数箇所形成することで、基板15bの平面内で、複数のコアパターン24を一括形成することができる。
これにより、光導波路100eは、光導波路100dと同様の作用効果を奏する。
【実施例】
【0063】
以下、本発明に係る光導波路及びについて詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
実施例1
[クラッド層形成用樹脂フィルムの作製]
[(A)ベースポリマー;(メタ)アクリルポリマー(A−1)の作製]
撹拌機、冷却管、ガス導入管、滴下ろうと、及び温度計を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46質量部及び乳酸メチル23質量部を秤量し、窒素ガスを導入しながら撹拌を行った。液温を65℃に上昇させ、メチルメタクリレート47質量部、ブチルアクリレート33質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート16質量部、メタクリル酸14質量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46質量部、及び乳酸メチル23質量部の混合物を3時間かけて滴下後、65℃で3時間撹拌し、さらに95℃で1時間撹拌を続けて、(メタ)アクリルポリマー(A−1)溶液(固形分45質量%)を得た。
【0064】
[重量平均分子量の測定]
(A−1)の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)をGPC(東ソー株式会社製「SD−8022」、「DP−8020」、及び「RI−8020」)を用いて測定した結果、3.9×10
4であった。なお、カラムは日立化成工業株式会社製「Gelpack GL−A150−S」及び「Gelpack GL−A160−S」を使用した。
【0065】
[酸価の測定]
(A−1)溶液の酸価を測定した結果、79mgKOH/gであった。なお、酸価は(A−1)溶液を中和するのに要した0.1mol/L水酸化カリウム水溶液量から算出した。このとき、指示薬として添加したフェノールフタレインが無色からピンク色に変色した点を中和点とした。
【0066】
[クラッド層形成用樹脂ワニスの調合]
(A)ベースポリマーとして、(A−1)溶液(固形分45質量%)84質量部(固形分38質量部)、(B)光硬化成分として、ポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(新中村化学工業株式会社製「U−200AX」)33質量部、及びポリプロピレングリコール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(新中村化学工業株式会社製「UA−4200」)15質量部、(C)熱硬化成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型三量体をメチルエチルケトンオキシムで保護した多官能ブロックイソシアネート溶液(固形分75質量%)(住化バイエルウレタン株式会社製「スミジュールBL3175」)20質量部(固形分15質量部)、(D)光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキュア2959」)1質量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキュア819」)1質量部、及び希釈用有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23質量部を撹拌しながら混合した。孔径2μmのポリフロンフィルタ(アドバンテック東洋株式会社製「PF020」)を用いて加圧濾過後、減圧脱泡し、クラッド層形成用樹脂ワニスを得た。
上記で得られたクラッド層形成用樹脂組成物を、PETフィルム(東洋紡績株式会社製「コスモシャインA4100」、厚み50μm)の非処理面上に、塗工機(マルチコーターTM−MC、株式会社ヒラノテクシード製)を用いて塗布し、100℃で20分乾燥後、カバーフィルムとして表面離型処理PETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製「ピューレックスA31」、厚み25μm)を貼付け、クラッド層形成用樹脂フィルムを得た。
【0067】
[コア層形成用樹脂フィルムの作製]
(A)ベースポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成株式会社製)26質量部、(B)光重合性化合物として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(商品名:A−BPEF、新中村化学工業株式会社製)36質量部、及びビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名:EA−1020、新中村化学工業株式会社製)36質量部、(C)光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を用いたこと以外は上記製造例と同様の方法及び条件でコア層形成用樹脂ワニスBを調合した。その後、上記製造例と同様の方法及び条件で加圧濾過させ、さらに減圧脱泡させた。
上記で得られたコア層形成用樹脂ワニスBを、PETフィルム(商品名:コスモシャインA1517、東洋紡績株式会社製、厚み:16μm)の非処理面上に、上記製造例と同様な方法で塗布乾燥し、次いでカバーフィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚み:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、コア層形成用樹脂フィルムを得た。
【0068】
[光導波路の作製]
基板に、下部クラッド層、突起部を形成する製造方法について、以下に説明する。
下部クラッド層を形成するための樹脂である下部クラッド層形成用樹脂として30μm厚のクラッド層形成用樹脂フィルムを100mm×100mmに切断し、カバーフィルムを剥離させた。突起部を形成するための樹脂である突起部形成用樹脂として、20μm厚のクラッド層形成用樹脂フィルムを100mm×100mmに切断し、カバーフィルムを剥離させた。その後、開口部を有する基板としてポリイミドフィルム(商品名:カプトンEN、東レ・デュポン株式会社製、厚さ:25μm)の一方の表面に下部クラッド層形成用樹脂を、もう一方の表面に突起部形成用樹脂を載置し、真空加圧式ラミネータ(商品名:MVLP−500、株式会社名機製作所製)を用いて、500Pa以下に真空引きした。その後、圧力0.4MPa、温度120℃、加圧時間30秒の条件で同時に加熱させ、下部クラッド層形成用樹脂及び突起部形成用樹脂をそれぞれ基板の両面に圧着させると共に、開口部内で、下部クラッド層形成用樹脂と突起部形成用樹脂とを圧着させた。その後、紫外線露光機(商品名:EV−800、日立ビアメカニクス株式会社製)で下部クラッド層形成用樹脂のキャリアフィルム側から紫外線を4000mJ/cm
2照射させた。その後、突起部形成用樹脂のキャリアフィルム側から直径200μmの開口部(開口部のピッチ;X,Y方向それぞれ10mm(81箇所))を有するネガ型フォトマスクを介し、紫外線露光機(株式会社オーク製作所製、EXM−1172)にて紫外線(波長365nm)を0.25J/cm
2照射させた。その後、下部クラッド層21と突起部65との形成用樹脂のキャリアフィルムを剥離させた。その後、現像液(1%炭酸カリウム水溶液)を用いて、突起部65が形成されるよう、突起部エッチングをした。その後、水洗浄した。その後、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化させ、基板に突起部、下部クラッド層を形成した。
【0069】
コア層を形成する製造方法について以下、説明する。
得られた基板の突起部のある側に、平面基板として100mm×100mmの銅箔をエッチング除去したFR−4基板(日立化成株式会社製、商品名;MCL−E−679FGB、厚さ;0.6mm)を設置した。その後、下部クラッド層上に、カバーフィルムを剥離させたサイズ100mm×100mm、厚み50μmのコア層形成用樹脂フィルムを配置した。その後、さらにその上に平面基板(図示せず)として100mm×100mmの両面銅箔付きのFR−4基板(日立化成株式会社製、商品名;MCL−E−679FGB、厚さ;0.6mm)を配置した。その後、真空加圧式ラミネータ(商品名:MVLP−500、株式会社名機製作所製)を用いて、500Pa以下に真空引きした。その後、コア層と下部クラッド層とを圧力0.4MPa、温度70℃、加圧時間30秒の条件で加熱圧着させ、コア層のラミネートと、基板の押し上げと、コア層の表面の平坦化を同時に行った。なお、コア層のキャリアフィルムとコア層平坦化のための平面基板は図示していない。その後、基板の両面に配置した平面基板を取り外した。
【0070】
(コアパターンの形成)
幅が30μmから50μmに拡大するテーパー部で長さ0.5mmの開口部を持ち、該開口部が幅30μm側を内側にして放射状(4方位)にそれぞれ設けられ、対向する開口部間を100μmにしたネガ型フォトマスクを介し、4つの開口部の中心を突起部に位置合わせをし、コア層形成側から上記紫外線露光機にて紫外線(波長365nm)を0.6J/cm
2照射し、次いで80℃で5分間露光後加熱を行った。その後、キャリアフィルムであるPETフィルムを剥離させ、現像液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/N,N−ジメチルアセトアミド=8/2、質量比)を用いて、コアパターンを現像した。続いて、洗浄液(イソプロパノール)を用いて洗浄し、100℃で10分間加熱乾燥し、厚み方向及び幅方向にテーパーを有する四角錐台形状のコアパターンを形成した(
図13参照)。
【0071】
コア層の面上に、カバーフィルムを剥離させたサイズ100mm×100mm、厚み70μmの上部クラッド層形成用樹脂フィルムを配置させた。その後、さらにその上に平面基板(図示せず)として100mm×100mmの両面銅箔付きのFR−4基板(日立化成株式会社製、商品名;MCL−E−679FGB、厚さ;0.6mm)を配置させた。その後、真空加圧式ラミネータ(商品名:MVLP−500、株式会社名機製作所製)を用いて、500Pa以下に真空引きした。その後、圧力0.4MPa、温度70℃、加圧時間30秒の条件で加熱圧着し、キャリアフィルム側から紫外線を4000mJ/cm
2照射させた。その後、キャリアフィルムを剥離させた。その後、170℃、1時間加熱硬化させた。
【0072】
その後、得られた光導波路の上部クラッド層の側からダイシングソー(DAC552、株式会社ディスコ社製)を用いて下部クラッド層、コア層、上部クラッド層に45°のV溝30を形成した。その後、蒸着などの方法により、光路変換ミラーを形成し、ミラー付き光導波路を得た。
得られた光路変換ミラーの基板垂直方向から見たときのコア形状を測定したところ、約30μm角であった。放射外側のコアパターンから光信号を入射したところ、スポット径が、約30μm角に縮小され、突起部を透過して良好に伝搬された。光路変換ミラーの加工時は、突起部65を光路変換ミラーの位置マーカとして利用できたため、コアパターンの厚みが薄い部分の特定が容易であった。
【0073】
また、上述の実施例1に示した製造方法に従って得た
図13に示す光導波路100cにおいて、放射中心側(突起部上)のコアパターンの全ての厚みが30μm、幅は30.1μmであった。放射外側のコアパターンは全て50μm、幅は50μmであった。
コアパターンの中心(コアパターンの放射中心端部から0.25mm地点)の厚みは42.5μm、幅は40μmであった。上部クラッド層の下面から下部クラッド層の上面までの厚みは、コアパターンの厚みが薄い箇所も厚い箇所もどちらも全て100μmであった。
【0074】
実施例2
(開口部付き基板の作製)
基板として100mm×100mmのポリイミドフィルム(宇部日東化成株式会社製、商品名;ユーピレックスRN、厚み;25μm)に、ドリル加工にて直径200μmの開口部(開口部ピッチ;X,Y方向それぞれ10mm(81箇所))を形成し、開口部付き基板を得た。
基板の両面に下部クラッド層と突起部形成用樹脂をラミネートし、その後、紫外線露光機(商品名:EV−800、日立ビアメカニクス株式会社製)で下部クラッド層形成用樹脂のキャリアフィルム側から紫外線を300mJ/cm
2照射し、下部クラッド層と開口部内及び開口部状の突起部形成用樹脂を光硬化した。その後、下部クラッド層と突起部の形成用樹脂のキャリアフィルムを剥離し、現像液(1%炭酸カリウム水溶液)を用いて、突起部をエッチングした。続いて、水洗浄し、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化し、突起部、下部クラッド層が形成された基板を作製した。
コアパターン形成工程以降は実施例1と同様の方法で行った。
【0075】
(厚み測定)
得られた光導波路の放射中心側のコアパターンは全ての厚みが30μm、幅は30.1μmであった。放射外側のコアパターンは全て50μm、幅は50μmであった。
コアの中心(コアパターンの放射中心端部から0.25mm地点)のコア厚みは42.6μm、幅は40μmであった。上部クラッド層下面から下部クラッド層上面までの厚みは、コアパターンの厚みが薄い箇所も厚い箇所もどちらも全て100μmであった。
【0076】
(ミラーの形成)
実施例1と同様に光路変換ミラーを形成した。得られた光路変換ミラーの基板垂直方向から見たときのコア形状を測定したところ、約30μm角であった。放射外側のコアパターンから光信号を入射したところ、スポット径が、約30μm角に縮小され、開口部と突起部を透過して良好に伝搬された。光路変換ミラーの加工時は、突起部をマーカとして利用できたため、コアパターンの厚みが薄い部分の特定が容易であった。
【0077】
実施例3(
図14の光導波路の作製)
実施例1において、突起部形成用樹脂を露光する際に用いたネガ型フォトマスクを内径1.1mm、外計1.5mmのリング形状の開口部を有するネガ型フォトマスクにし、コア層形成用樹脂を露光する際に用いたネガ型フォトマスクの幅方向のテーパーを逆向きにした以外は同様の方法で、光導波路を作製した。
(厚み測定)
得られた光導波路の放射中心側のコアパターンは全ての厚みが50μm、幅は50μmであった。放射外側(突起部上)のコアパターンは全て30μm、幅は30.1μmであった。
コアの中心(コアパターンの放射中心端部から0.25mm地点)のコア厚みは43.3μm、幅は40μmであった。上部クラッド層下面から下部クラッド層上面までの厚みは、コアパターンの厚みが薄い箇所も厚い箇所もどちらも全て100μmであった。
【0078】
実施例4(
図15の光導波路の作製)
実施例1において突起部の作製時に用いたネガ型フォトマスクを、幅200μmの開口部(開口部ピッチ;Y方向それぞれ10mm(9箇所))を有するネガ型フォトマスクに変えて直線状の突起部が形成された平面状の基板を形成した。
さらに、コアパターン形成用のネガ型フォトマスクを、幅が30μmから50μmに拡大するテーパー部で長さ0.5mmの開口部を持ち、該開口部が30μm幅側が内側とし、Y方向の開口部間を150μm(該開口部間中心と、突起部の中心とが一致するように位置合わせを行ってから、コア層のラミネートとテーパー形成を行った)に対向するように設け、X方向に500μmピッチで整列した開口部を有するネガ型フォトマスクに変更した以外は同様の方法で光導波路を形成した。
【0079】
(厚み測定)
得られた光導波路の突起部上のコアパターンは全ての厚みが30μm、幅は30μmであった。突起部と反対側のコアパターンの端部は全て50μm、幅は50μmであった。
コアパターンの中心の厚みは43.4μm、幅は40μmであった。上部クラッド層下面から下部クラッド層上面までの厚みは、コアパターンの厚みが薄い箇所も厚い箇所もどちらも全て100μmであった。
【0080】
実施例5
実施例1において突起部の厚みを25μmにした以外は同様の方法で光導波路を作製した。
【0081】
(厚み測定)
得られた光導波路の放射中心側(突起部上)のコアパターンは全ての厚みが25μm、幅は30.1μmであった。放射外側のコアパターンは全て50μm、幅は50μmであった、
パターンの中心(コアパターンの放射中心端部から0.25mm地点)の厚みは38.5μm、幅は40μmであった。上部クラッド層下面から下部クラッド層上面までの厚みは、コアパターンの厚みが薄い箇所も厚い箇所もどちらも全て100μmであった。
【0082】
実施例6
実施例1において突起部の厚みを15μmにした以外は同様の方法で光導波路を作製した。
【0083】
(厚み測定)
得られた光導波路の放射中心側(突起部上)のコアパターンは全ての厚みが35μm、幅は30.1μmであった。放射外側のコアパターンは全て50μm、幅は50μmであった、
パターンの中心(コアパターンの放射中心端部から0.25mm地点)のコア厚みは44μm、幅は40μmであった。上部クラッド層下面から下部クラッド層上面までの厚みは、コアパターンの厚みが薄い箇所も厚い箇所もどちらも全て100μmであった。