特許第6048071号(P6048071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048071重金属処理剤及び重金属汚染物質の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048071
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】重金属処理剤及び重金属汚染物質の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20161212BHJP
   A62D 3/33 20070101ALI20161212BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20161212BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20161212BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20161212BHJP
   C02F 1/62 20060101ALI20161212BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20161212BHJP
   A62D 101/43 20070101ALN20161212BHJP
   A62D 101/47 20070101ALN20161212BHJP
【FI】
   C09K3/00 SZAB
   A62D3/33
   B09B3/00 304G
   B09B3/00 304K
   C02F1/62 B
   C02F1/62 D
   C02F1/62 E
   C02F1/62 Z
   C02F11/00 G
   C02F11/00 H
   C02F11/00 J
   A62D101:43
   A62D101:47
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-238094(P2012-238094)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-88477(P2014-88477A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】疋田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】阿山 義則
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−194328(JP,A)
【文献】 特開2005−334799(JP,A)
【文献】 特開2011−074350(JP,A)
【文献】 Approaches to soil remediation by complexometric extraction of metal contaminants with regeneration of reagents,Journal of Environmental Monitoring, 2001, 3(4), 411-416
【文献】 Investigation of the aqueous chemistry of Pb(II) with O- and N- substrates,Journal of Agroalimentary Processes and Technologies, 2009,15(2),197-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K,A62D,B09B,B09C,C02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンのカルボジチオ酸塩とカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩とを含んでなる重金属処理剤。
【請求項2】
アミンのカルボジチオ酸塩が、ピペラジンのカルボジチオ酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の重金属処理剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の重金属処理剤を希釈水と混合した後、重金属汚染物質に添加することを特徴とする重金属汚染物質の処理方法。
【請求項4】
重金属汚染物質が、飛灰、土壌、汚泥、排水、スラッジであることを特徴とする請求項3に記載の重金属汚染物質の処理方法。
【請求項5】
重金属汚染物質中の重金属が、鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、砒素、セレン、クロムであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の重金属汚染物質の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属汚染物質、例えば、ゴミ焼却場から排出される焼却灰及び飛灰、重金属に汚染された土壌、排水処理後に生じる汚泥、工場から排出される排水等に含有される鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、砒素、セレン、クロム等の有害な重金属を簡便に固定化し、不溶出化することを可能にする重金属処理剤に関するものであり、上水、地下水、工業用水等の希釈水との混合使用時においても、配管やストレーナー等の閉塞を抑制可能な重金属処理剤及び重金属汚染物質の処理方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミ焼却工場などから排出される飛灰は重金属含有率が高く、重金属の溶出を抑制する処理を施すことが必要である。その様な処理方法のひとつとして薬剤処理法があり、キレ−ト系薬剤などの重金属処理剤を添加して重金属を不溶化する方法が用いられている。
【0003】
キレ−ト系薬剤としては主にアミンのカルボジチオ酸塩が用いられている。特にピペラジンのカルボジチオ酸塩は、他のアミンのカルボジチオ酸塩と比較して、硫化水素及び二硫化炭素等の有害ガス発生が少ないため重金属処理剤として広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
キレ−ト系薬剤の使用方法として、水とキレ−ト系薬剤を別々に重金属汚染物質へ直接添加する場合、上水、地下水、工業用水等の希釈水によって薬剤を所定濃度に希釈混合した後、重金属汚染物質へ添加される。
【0005】
上水、地下水、工業用水等の希釈水によってキレ−ト系薬剤を所定濃度に希釈混合した後、重金属汚染物質へ添加する場合、希釈水にはマグネシウム、カルシウム、ケイ素、鉄等の種々の無機物が含まれており、希釈水とキレ−ト薬剤との混合により、希釈水中の無機物が難溶性塩として析出し、配管やノズルの閉塞を引き起こす問題があった。
【0006】
この課題に対して、希釈水にスケ−ル防止剤としてアミノカルボン酸類を添加することにより閉塞が抑制されることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、このような方法では配管やストレーナー等の閉塞に対する抑制効果が必ずしも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3391173号公報
【特許文献2】特開2002−166247公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、希釈水等との混合使用時においても、配管やストレーナー等の閉塞を抑制可能な重金属処理剤及びこれを用いた重金属汚染物質の処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、閉塞を引き起こす主原因は希釈水中のマグネシウムイオンであり、アミンのカルボジチオ酸塩とカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩とを含んでなる重金属処理剤を用いることにより、上水、地下水、工業用水等の希釈水との混合を行った場合でも、希釈水中のマグネシウムイオンが難溶性の塩として析出することを抑制し、配管やストレーナー等の閉塞を起こすことなく、重金属を不溶化できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の重金属処理剤は、アミンのカルボジチオ酸塩とカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩とを含んでなるものである。
【0013】
アミンのカルボジチオ酸塩とカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩とを含んでなる重金属処理剤を用いることにより、上水、地下水、工業用水等の希釈水との混合を行った場合でも、希釈水中のマグネシウムイオンが難溶性の塩として析出することを抑制し、配管やストレーナー等の閉塞を起こすことなく、かつ重金属を不溶化することができる。
【0014】
従来のスケ−ル防止剤であるアミノカルボン酸では、アミンのカルボジチオ酸塩と組み合わせた場合、その効果が不十分であり、また、カルボキシル基が2つ以下のヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩では、本発明と同等の効果を得ることができない。
【0015】
カルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩が、アミンのカルボジチオ酸塩との組み合わせにおいて、配管等の閉塞防止に有効である理由は定かではないが、カルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩は、従来のアミノカルボン酸や、カルボキシル基が2つ以下のヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩に比べ、マグネシウムとの水溶性錯体を形成しやすく、かつその水溶性錯体の溶解度が高いため、アミンのカルボジチオ酸塩との共存下においても有効にマグネシウムイオンが難溶性の塩として析出することを抑制できるものと考えられる。
【0016】
アミンのカルボジチオ酸塩とカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩とを含んでなる重金属処理剤は、マグネシウムのみならず、従来のスケ−ル防止剤であるアミノカルボン酸が有効なカルシウムにおいても同様の効果を示す。
【0017】
本発明の重金属処理剤で用いるアミンのカルボジチオ酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、鎖状及び環状の脂肪族又は芳香族アミン化合物から誘導されるカルボジチオ酸塩が挙げられ、脂肪族アミン化合物としてはジエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピロリジン、ピペラジン等が例示される。また、芳香族アミン化合物としてはアニリン等が例示される。特に熱やpHに対する安定性が高い、ピペラジンのカルボジチオ酸塩が好ましい。具体的なピペラジンのカルボジチオ酸塩としては、ピペラジン−N−モノカルボジチオ酸塩、ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸塩が挙げられる。
【0018】
本発明の重金属処理剤で用いるアミンのカルボジチオ酸塩の塩の種類としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、特に溶解度が高く、安価なことからナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。
【0019】
本発明の重金属処理剤を水溶液で用いる場合、アミンのカルボジチオ酸塩の濃度は10〜60重量%、特に30〜50重量%の範囲が好ましい。濃度が60重量%より高い場合、アミンのカルボジチオ酸塩が析出する可能性がある。また、濃度が10重量%より低い場合、重金属処理能力が低下する。
【0020】
本発明の重金属処理剤で用いるカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩としては、特に限定されるものではないが、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジアミノヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)又はその塩等が挙げられ、特に環境負荷の観点からヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)又はその塩等の生分解性を有するものが好ましい。
【0021】
本発明の重金属処理剤で用いるカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩の塩の種類としてはアルカリ金属塩が挙げられ、特に溶解度が高く、安価なことからナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。
【0022】
本発明の重金属処理剤で用いるカルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩の濃度は、希釈水等に含まれるマグネシウムの濃度等によって異なるため、一概には決定することはできないが、重金属処理剤中に0.01〜5重量%、さらに0.02〜2重量%、特に0.05〜1重量%の範囲が好ましい。
【0023】
カルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩の濃度が0.01重量%より低い場合、希釈水等に含まれるマグネシウムの濃度等が高いと十分な効果が得られないことがある。カルボキシル基を3つ以上有するヒドロキシアミノカルボン酸及び/又はその塩の濃度が5重量%より高い場合、アミンのカルボジチオ酸塩が析出する可能性がある。
【0024】
本発明の重金属処理剤は、これらの2つの成分を含んでいれば他に制限はないが、取扱いの観点から水溶液で用いることが好ましい。
【0025】
本発明の重金属処理剤は、本発明の効果を妨げない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、無機系重金属処理剤、pH調整剤、有機溶媒、アルカリ水酸化物等が挙げられる。
【0026】
本発明の重金属処理剤を用いた重金属汚染物質の処理方法は、特に限定されるものではなく、本発明の重金属処理剤を上水、地下水、工業用水等の希釈水と混合した後、重金属汚染物質に添加し、混合すればよい。
【0027】
本発明の重金属処理剤を希釈する場所は、特に限定されるものではなく、タンク内、配管内等が挙げられる。
【0028】
重金属処理剤を希釈するための上水、地下水、工業用水等の希釈水の量は特に限定されるものではないが、通常、重金属処理剤に対し0.1〜200倍程度の範囲で使用される。
【0029】
重金属処理剤の使用量は、重金属汚染物質の状態、重金属の含有量や重金属の形態により異なるが、通常、例えば飛灰に対しては0.01〜30重量%の範囲で使用される。また、処理を容易にするために、別途、重金属汚染物質に対して1〜20重量%の加湿水を混練時に添加してもよい。
【0030】
本発明の重金属処理剤は、重金属汚染物質として、飛灰、土壌、汚泥、排水、スラッジ等の処理に用いることができる。
【0031】
これらの重金属汚染物質中の有害な重金属としては、鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、砒素、セレン、クロム等が挙げられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の重金属処理剤は、上水、地下水、工業用水等の希釈水と混合した場合でも、配管やストレーナー等の閉塞を起こすことなく、重金属を不溶化することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(重金属処理剤の希釈試験)
参考例1
純水150gを200mLビ−カ−に採取し、撹拌しながら、その溶液の透過度をLX2−02T((株)キーエンス社製)で測定し、LX2−60((株)キーエンス社製)にてmV単位で出力した数値を読み取った。これにピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を15g添加し、10分後の透過度を測定し、その透過度から初期の透過度を差し引くことで透過度の変化を算出した結果、+48mVであり、透過度の減少が見られなったため、難溶性塩の生成は確認されず、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成は観測されなかった。
【0035】
参考例2
純水を、Mgを10ppm含有する水溶液に変更した以外は、参考例1と同様の操作を行った。
【0036】
透過度の変化は−160mVであり、Mgが存在することにより難溶性塩が生成し、透過度の減少が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測された。
【0037】
実施例1
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸四ナトリウム(HIDS)(カルボキシル基を4つ有するヒドロキシアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Aを調製した。
【0038】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Aに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は+45mVと参考例1の純水時と同様の変化であり、透過度の減少が見られなったため、難溶性塩の生成は確認されず、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成は観測されなかった。
【0039】
実施例2
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム(HEDTA)(カルボキシル基を3つ有するヒドロキシアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Bを調製した。
【0040】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Bに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は+45mVと参考例1の純水時と同様の変化であり、透過度の減少が見られなったため、難溶性塩の生成は確認されず、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成は観測されなかった。
【0041】
実施例3
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA)(カルボキシル基を4つ有するヒドロキシアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Cを調製した。
【0042】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Cに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は+53mVと参考例1の純水時と同様の変化であり、透過度の減少が見られなったため、難溶性塩の生成は確認されず、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成は観測されなかった。
【0043】
実施例4
Mgを10ppm含有する水溶液を、工業用水(Mg=4.0ppm、Ca=8.5ppmを含有する)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。透過度の変化は+50mVと参考例1の純水時と同様の変化であり、透過度の減少が見られなったため、難溶性塩の生成は確認されず、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成は観測されなかった。
【0044】
比較例1
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、グルコン酸ナトリウム(カルボキシル基を1つ有するヒドロキシカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Dを調製した。
【0045】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Dに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−360mVであり、透過度が減少したため、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測された。
【0046】
比較例2
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、クエン酸三ナトリウム(カルボキシル基を3つ有するヒドロキシカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Eを調製した。
【0047】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Eに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−115mVであり、透過度が減少したため、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測された。
【0048】
比較例3
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、酒石酸二ナトリウム(カルボキシル基を2つ有するヒドロキシカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Fを調製した。
【0049】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Fに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−330mVであり、透過度が減少したため、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測された。
【0050】
比較例4
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、エチレンジアミンジコハク酸三ナトリウム(EDDS)(カルボキシル基を4つ有するアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Gを調製した。
【0051】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Gに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−5mVであり、難溶性塩生成の抑制効果はあるものの、参考例1の純水時の+48mVに比較して透過度が減少しており、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測でき、効果が不十分であった。
【0052】
比較例5
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(GLDA)(カルボキシル基を4つ有するアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Hを調製した。
【0053】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Hに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−28mVであり、難溶性塩生成の抑制効果はあるものの、参考例1の純水時の+48mVに比較して透過度が減少しており、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測でき、効果が不十分であった。
【0054】
比較例6
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム(MGDA)(カルボキシル基を3つ有するアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Iを調製した。
【0055】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Iに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−10mVであり、難溶性塩生成の抑制効果はあるものの、参考例1の純水時の+48mVに比較して透過度が減少しており、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測でき、効果が不十分であった。
【0056】
比較例7
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA)(カルボキシル基を4つ有するアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Jを調製した。
【0057】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Jに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は0mVであり、難溶性塩生成の抑制効果はあるものの、参考例1の純水時の+48mVに比較して透過度が減少しており、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測でき、効果が不十分であった。
【0058】
比較例8
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸二ナトリウム(HIDA)(カルボキシル基を2つ有するヒドロキシアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Kを調製した。
【0059】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Kに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−150mVであり、透過度が減少したため、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測された。
【0060】
比較例9
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液100gに、ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム(DHEG)(カルボキシル基を1つ有するヒドロキシアミノカルボン酸塩)を0.1g添加し、重金属処理剤Lを調製した。
【0061】
ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム40wt%水溶液を、重金属処理剤Lに変更した以外は、参考例2と同様の操作を行った。透過度の変化は−117mVであり、透過度が減少したため、難溶性塩の形成が確認され、なおかつ、目視でも難溶性塩の形成が観測された。
【0062】
【表1】
(処理能力試験)
実施例5
重金属処理剤A10gとMgを10ppm含有する希釈水100gを混合し、薬剤希釈液Aを調製した。
【0063】
Pb=2500mg/kg、Cu=715mg/kgを含有する飛灰50gに対し、薬剤希釈液Aを16.5g添加し、混合後、環境庁告示13号試験を行い、溶出液中の重金属濃度を測定した。Pbを溶出基準値(0.3mg/L)以下に処理することができた。
【0064】
実施例6
重金属処理剤Aを重金属処理剤Bに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行った。Pbを溶出基準値(0.3mg/L)以下に処理することができた。
【0065】
実施例7
重金属処理剤Aを重金属処理剤Cに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行った。Pbを溶出基準値(0.3mg/L)以下に処理することができた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の重金属処理剤は、飛灰、土壌、汚泥、排水、スラッジ等に含まれる重金属の無害化処理に用いられるものである。