特許第6048098号(P6048098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特許6048098液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置
<>
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000002
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000003
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000004
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000005
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000006
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000007
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000008
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000009
  • 特許6048098-液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048098
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20161212BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B41J2/01 403
   B41J2/165
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-263898(P2012-263898)
(22)【出願日】2012年12月1日
(65)【公開番号】特開2014-108564(P2014-108564A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】矢仲 厚志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
【審査官】 下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−179531(JP,A)
【文献】 特開2007−260933(JP,A)
【文献】 特開2001−341326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルと、前記液滴を吐出させる圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドを駆動する駆動方法であって、
前記圧力発生手段に対して微駆動波形を与えて、前記ノズルから液滴を吐出させないで、前記ノズルのメニスカスを振動させる微駆動動作を行い、
前記微駆動波形は、
中間電位から立ち下がった後再度少なくとも中間電位まで立ち上がる微駆動信号の前後に、前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位から前記中間電位に立ち上げる波形要素と、前記中間電位から前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位に立ち下げる波形要素と、を含み、
前記中間電位に立ち上げる波形要素は、前記ノズルから前記液滴が吐出されない波形要素である
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項2】
前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位は、前記微駆動波形を生成する回路上のグランドレベルであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項3】
前記液体吐出ヘッドを搭載してキャリッジを移動させて、前記液体吐出ヘッドで画像を形成する被記録媒体の先端及び幅の少なくともいずれかの検知を行うときに、前記微駆動動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項4】
液滴を吐出するノズルと、前記液滴を吐出させる圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを駆動制御するヘッド駆動制御手段と、を備え、
前記ヘッド駆動制御手段は、
前記圧力発生手段に対して微駆動波形を与えて、前記ノズルから液滴を吐出させないで、前記ノズルのメニスカスを振動させる微駆動動作を行い、
前記微駆動波形は、
中間電位から立ち下がった後再度少なくとも中間電位まで立ち上がる微駆動信号の前後に、前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位から前記中間電位に立ち上げる波形要素と、前記中間電位から前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位に立ち下げる波形要素と、を含み、
前記中間電位に立ち上げる波形要素は、前記ノズルから前記液滴が吐出されない波形要素である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位は、前記微駆動波形を生成する回路上のグランドレベルであることを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドを搭載してキャリッジを移動させて、前記液体吐出ヘッドで画像を形成する被記録媒体の先端及び幅の少なくともいずれかの検知を行うときに、前記微駆動動作を行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッドの駆動方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
ところで、画像形成装置に用いる液体吐出ヘッドは、ノズルから液滴を吐出させて記録を行うものであることから、液滴を吐出しない状態が継続すると、ノズル内の液体の粘度が溶媒の蒸発等によって増加する。
【0004】
このようにノズル内の液体が増粘した状態で滴吐出動作を行うと、吐出状態が乱れ、吐出不能状態に陥り、印写品質が劣化する。
【0005】
そこで、液滴が吐出しない程度にノズルメニスカスを揺らし、攪拌し、ノズル内の液体の粘度上昇を防ぐ微駆動(微振動、非吐出駆動などともいう)動作が行なわれる。
【0006】
従来、例えば、駆動波形を供給するための駆動信号線と、駆動信号線と駆動素子との間に接続されているとともに、駆動素子の蓄えられた電荷を放電することが可能な第1のスイッチ回路と、第1のスイッチ回路と並列に接続されているとともに、駆動素子に電荷を充電することが可能な第2のスイッチ回路と、第1と第2のスイッチ回路に第1と第2のスイッチング信号をそれぞれ供給するスイッチ制御回路と、を備え、第1の整流回路は、互いに直列に接続された第1のスイッチと第1の整流回路を有しており、第1の整流回路は、駆動素子から駆動信号線への電流の方向が順方向となるように設置されている構成とし、圧力発生手段として圧電素子を使用した場合に自然放電による不都合を回避するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−113695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、圧力発生手段として圧電素子を使用し、特に中間電位を基準電位とする微駆動信号を与える場合、微駆動信号間で圧電素子の自然放電による電圧降下が生じる。そのため、次の微駆動信号を与えるまでの間隔が長いときなどには、次の微駆動信号を与えたときに、自然放電による降下した電位から中間電位に戻ることによって、誤って液滴が吐出されることがある。
【0009】
そのため、上記特許文献1に開示されているように特別なスイッチ制御回路を備えるのでは、構成が複雑になり、コストが高くなるという課題が生じる。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特別なスイッチ制御回路を備えることなく、簡単な構成で、誤吐出を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る液体吐出ヘッドの駆動方法は、
液滴を吐出するノズルと、前記液滴を吐出させる圧力を発生する圧力発生手段とを有する液体吐出ヘッドを駆動する駆動方法であって、
前記圧力発生手段に対して微駆動波形を与えて、前記ノズルから液滴を吐出させないで、前記ノズルのメニスカスを振動させる微駆動動作を行い、
前記微駆動波形は、
中間電位から立ち下がった後再度少なくとも中間電位まで立ち上がる微駆動信号の前後に、前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位から前記中間電位に立ち上げる波形要素と、前記中間電位から前記微駆動信号の立ち下がり電位より低い電位に立ち下げる波形要素と、を含み、
前記中間電位に立ち上げる波形要素は、前記ノズルから前記液滴が吐出されない波形要素である
構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別なスイッチ制御回路を備えることなく、簡単な構成で、誤吐出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る画像形成装置の一例の外観斜視説明図である。
図2】同装置の側面模式的説明図である。
図3】同装置の画像形成部の要部平面説明図である。
図4】同装置の制御部の概要の説明に供するブロック説明図である。
図5】液体吐出ヘッドの一例のノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
図6】同ヘッドのノズル配列方向に沿う方向の断面説明図である。
図7】ヘッド駆動制御部の一例に説明に供するブロック説明図である。
図8】本実施形態における微駆動波形の一例の説明に供する説明図である。
図9】比較例の微駆動波形の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置の一例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は同画像形成装置の外観斜視説明図、図2は同じく側面模式的説明図、図3は同じく画像形成部の要部平面説明図である。
【0015】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体101と、装置本体101の下側に配置した給紙装置102とを備えている。なお、給紙装置102は装置本体101と別体で装置本体101の下側に配置されるものであるが、図2では一体で配置した例で示している。
【0016】
装置本体101の内部には、給紙装置102から給紙されるロール状媒体であるロール紙120に画像を形成する画像形成部(印字機構部)103が配置されている。
【0017】
画像形成部103は、両側板51、52間にガイド部材であるガイドロッド1及びガイドステー2が掛け渡され、これらのガイドロッド1及びガイドステー2にキャリッジ5が矢印A方向(主走査方向、キャリッジ移動方向)に移動可能に保持されている。ガイドステー2には副ガイド受け15が移動可能に係わり合っている。
【0018】
そして、主走査方向の一方側にはキャリッジ5を往復移動させる駆動源である主走査モータ8が配置されている。この主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ9と主走査方向他方側に配置された従動プーリ10との間にタイミングベルト11が掛け回されている。このタイミングベルト11にキャリッジ5のベルト保持部16が固定され、主走査モータ8を駆動することによってキャリッジ5を主走査方向に往復移動させる。
【0019】
キャリッジ5には、液体吐出ヘッド及びヘッドに液体を供給するヘッドタンクを一体にした複数(ここでは4個)の記録ヘッド6a〜6d(区別しないときは「記録ヘッド6」という。)が搭載されている。
【0020】
ここで、記録ヘッド6aと記録ヘッド6b〜6dは、主走査方向と直交する方向である副走査方向に1ヘッド分(1ノズル列分)位置をずらして配置されている。また、記録ヘッド6は、液滴を吐出する複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて搭載している。
【0021】
また、記録ヘッド6a〜6dはいずれも2列のノズル列を有している。そして、記録ヘッド6a、6bは、いずれのノズル列からも同色である黒色(ブラック(K))の液滴を吐出する。記録ヘッド6cは、一方のノズル列からシアン(C)の液滴を吐出し、他方のノズル列は未使用ノズル列としている。記録ヘッド6dは、一方のノズル列からイエロー(Y)の液滴を、他方のノズル列からマゼンタ(M)の液滴を吐出する。
【0022】
これにより、モノクロ画像については記録ヘッド6a、6bを使用して1スキャン(主走査)で2ヘッド分の幅で画像を形成でき、カラー画像については例えば記録ヘッド6b〜6dを使用して形成することができる。なお、ヘッド構成はこれに限るものではなく、複数の記録ヘッドを主走査方向に全て並べて配置するものでもよい。
【0023】
記録ヘッド6のヘッドタンクには、装置本体101に交換可能に装着されるメインタンクであるインクカートリッジから供給チューブを介して各色のインクが供給される。
【0024】
また、キャリッジ5の移動方向に沿ってエンコーダシート40が配置され、キャリッジ5にはエンコーダシート40を読取るエンコーダセンサ41が設けられている。これらのエンコーダシート40及びエンコーダセンサ41によってリニアエンコーダ42を構成し、リニアエンコーダ42の出力からキャリッジ5の位置及び速度を検出する。
【0025】
一方、キャリッジ5の主走査領域のうち、記録領域では、給紙装置102からロール紙120が給送され、搬送手段21によってキャリッジ5の主走査方向と直交する方向(副走査方向、用紙搬送方向:矢印B方向)に間欠的に搬送される。
【0026】
搬送手段21は、給紙装置102から給紙されるロール状媒体であるロール紙120を搬送する搬送ローラ23及び搬送ローラ23に対向配置した加圧ローラ24を有している。そして、搬送ローラ23の下流側に、複数の吸引穴が形成された搬送ガイド部材25と、搬送ガイド部材25の吸引穴から吸引を行う吸引手段としての吸引ファン26とを有している。
【0027】
この搬送手段21の下流側には、図2に示すように、記録ヘッド6で画像が形成されたロール紙120を所定の長さで切断する切断手段としてのカッタ27が配置されている。
【0028】
さらに、キャリッジ5の主走査方向の一方側には搬送ガイド部材25の側方に記録ヘッド6の維持回復を行う維持回復機構80が配置されている。
【0029】
給紙装置102は、ロール体112を有している。ロール体112は、芯部材である管114に長尺のロール状媒体であるシート(これを上述したように「ロール紙」という。)120をロール状に巻き付けたものである。
【0030】
ここで、本実施形態では、ロール体112として、ロール紙120の終端を管114に糊付けなどの接着で固定したもの、ロール紙120の終端を管114に糊付けなどで接着していない非固定のもののいずれも装着可能である。
【0031】
そして、装置本体101側には、給紙装置102のロール体112から引き出されるガイドするガイド部材130と、ロール紙120を湾曲させて上方に給送する搬送ローラ対131とが配置されている。
【0032】
搬送ローラ対131を回転駆動することで、ロール体112から繰り出されるロール紙120は、搬送ローラ対131とロール体112間で張られた状態で搬送される。そして、ロール紙120は、搬送ローラ対131を経て、搬送手段21の搬送ローラ23と加圧ローラ24との間に送り込まれる。
【0033】
このように構成したこの画像形成装置においては、キャリッジ5を主走査方向に移動し、給紙装置102から給送されるロール紙120を、搬送手段21によって間欠的に送る。そして、記録ヘッド6を画像情報(印字情報)に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、ロール紙120上に所要の画像が形成される。この画像が形成されたロール紙120は、カッタ27で所定の長さにカットされ、装置本体101の前面側に配置される図示しない排紙ガイド部材に案内されてバケット内に排出されて収納される。
【0034】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図4のブロック説明図を参照して説明する。
【0035】
制御部400は、CPU401、FPGA(Field Programmable Gate Array)403と、RAM411、ROM412、NVRAM413、モータドライバ414などを有している。
【0036】
CPU401の演算部402はFPGA403の各部と通信を行う。
【0037】
FPGA403では、CPU401と通信を行うCPU制御部404と、ROM412やRAM411などのメモリにアクセスするためのメモリ制御部405と、NVRAM413と通信を行うI2C制御部406と、記録ヘッド6の駆動制御を行うヘッド制御部409などを構成している。
【0038】
また、FPGA403では、装置の周囲温度及び周囲湿度を検出する手段である温湿度センサ、エンコーダセンサ416などのセンサ信号の処理を行うセンサ処理部407を備えている。センサ処理部407は、リニアエンコーダ42の出力信号からキャリッジ5の位置信号及び速度信号を生成する手段や搬送手段21のロータリエンコーダの出力信号から搬送ローラ23の位置信号及び速度信号を生成する手段を兼ねている。
【0039】
また、主走査モータ8を含む各部のモータ417を駆動制御するモータ制御部408を構成している。
【0040】
なお、エンコーダセンサ416には、前述したキャリッジ5の位置や速度を検出するリニアエンコーダ42のエンコーダセンサ41、搬送ローラ23の回転量などを検出する図示しないロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ等を含む。
【0041】
また、モータ417には、前述した主走査モータ8の他、搬送ローラ23を回転駆動する副走査モータ、搬送ローラ対131などを回転駆動する給紙モータなどが含まれる。モータとしては、例えばDCモータやステッピングモータなどを使用できる。
【0042】
次に、記録ヘッド6を構成している液体吐出ヘッドの一例について図5及び図6を参照して説明する。図5は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図6は同ヘッドのノズル配列方向に沿う方向の断面説明図である。
【0043】
この液体吐出ヘッドは、流路板1101と、この流路板1101の下面に接合した振動板部材1102と、流路板1101の上面に接合したノズル板1103とを接合して積層している。
【0044】
これらによって、液滴を吐出するノズル1104が通じる圧力発生室1106に流体抵抗部(供給路)1107を通じてインクを供給するための共通液室1108に通じるインク供給口1109などを形成している。各圧力発生室1106は隔壁1106aによって隔てられている。
【0045】
また、振動板部材1102を変形させて圧力発生室1106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2個(図5では1列のみ図示)の積層型圧電部材1121を有する。この圧電部材1121は、ベース部材1122に接合固定されている。
【0046】
この圧電部材1121には、分割しないスリット加工で溝を形成することで複数の柱状の圧電素子である圧電柱1121A、1121Bを形成している。この例では、圧電柱1121Aは駆動波形を印加する駆動圧電柱とし、圧電柱1121Bは駆動波形を印加しない非駆動圧電柱としている。また、圧電部材1121の駆動圧電柱1121Aには図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル1126を接続している。
【0047】
そして、振動板部材1102の周縁部をフレーム部材1130に接合している。このフレーム部材1130には、圧電部材1121及びベース部材1122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部及び共通液室1108となる凹部、この共通液室1108に外部からインクを供給するための液体供給口であるインク供給穴1132を形成している。
【0048】
ここで、流路板1101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、通路1105、圧力発生室1106となる凹部や穴部を形成したものである。これに限らず、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0049】
振動板部材1102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板部材1102に圧電部材1121の圧電柱1121A、1121Bを接着剤接合し、更にフレーム部材1130を接着剤接合している。
【0050】
ノズル板1103は各圧力発生室1106に対応して直径10〜30μmのノズル1104を形成し、流路板1101に接着剤接合している。このノズル板1103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
【0051】
圧電部材1121は、圧電材料1151と内部電極1152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電部材1121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極1152には個別電極1153及び共通電極1154が接続されている。
【0052】
なお、この実施形態では、圧電部材1121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて圧力発生室1106内インクを加圧する構成としているが、これに限られない。例えば、圧電部材1121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて圧力発生室1106内インクを加圧する構成とすることもできる。
【0053】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば駆動圧電柱1121Aに印加する電圧を中間電位である基準電位Veから下げることによって駆動圧電柱1121Aが収縮し、振動板部材1102が下降して圧力発生室1106の体積が膨張する。これによって、圧力発生室1106内にインクが流入する。その後、駆動圧電柱1121Aに印加する電圧を上げて駆動圧電柱1121Aを積層方向に伸長させ、振動板部材1102をノズル1104方向に変形させて圧力発生室1106の体積を収縮させる。これにより、圧力発生室1106内のインクが加圧され、ノズル1104からインク滴が吐出(噴射)される。
【0054】
そして、駆動圧電柱1121Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材1102が初期位置に復元し、圧力発生室1106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室1108から圧力発生室1106内にインクが充填される。そこで、ノズル1104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0055】
次に、ヘッド駆動制御部の一例について図7のブロック説明図を参照して説明する。
【0056】
ヘッド駆動制御部は、前述したヘッド制御部409と、キャリッジ5側に搭載されたヘッドドライバ(ドライバIC)509とで構成されている。
【0057】
ヘッド制御部409は、所定駆動周期内に複数のパルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)Vcomを生成して出力する駆動波形生成部701と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部702を備えている。
【0058】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ509の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号である。この滴制御信号は、共通駆動波形Vcomの駆動周期に合わせて選択すべきパルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0059】
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711と、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714と、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715を備えている。
【0060】
このアナログスイッチ715は、各駆動圧電柱1121Aの選択電極(個別電極)1153に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Vcomが入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号M0〜M3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにすることにより、共通駆動波形Vcomを構成する所要のパルス(あるいは波形要素)が通過して(選択されて)駆動圧電柱1121Aに印加される。
【0061】
ここで、ヘッド制御部409は、微駆動動作を行うときには、駆動波形生成部701によって微駆動波形を生成して、これを共通駆動波形Vcomとして出力する。
【0062】
また、駆動波形生成部701は、ROM412又はヘッド制御部409内のROMに予め格納保持された駆動波形データ(微駆動波形データを含む)を読み出して、D/A変換し、所要の増幅を行って、共通駆動波形Vcomとして出力する。
【0063】
次に、本実施形態における微駆動波形の一例について図8を参照して説明する。
【0064】
この微駆動波形は、中間電位から立ち下がった後再度少なくとも中間電位まで上昇する微駆動信号P1と、微駆動信号P1の前後に配置された、微駆動信号P1の立ち下がり電位より低い電位から中間電位に立ち上げる波形要素aと、中間電位から微駆動信号P1の立ち下がり電位より低い電位に立ち下げる波形要素bとを含む波形である。
【0065】
つまり、微駆動信号P1と微駆動信号P1との間で、各微駆動信号P1毎に、波形要素bで、中間電位から微駆動信号P1の立ち下がり電位より低い電位に立ち下げ、波形要素aで、微駆動信号P1の立ち下がり電位より低い電位から中間電位に立ち上げる波形である。
【0066】
なお、微駆動波形の中間電位は、印字を行う駆動波形の中間電位(前述した基準電位Ve)と同じでもよいし、異なってもよい。
【0067】
ここで、微駆動信号P1は、ノズルから液滴を吐出させないで、ノズルのメニスカスを振動させる信号(非吐出駆動波形)である。この微駆動信号P1は、中間電位から立ち下がった後所要のホールド時間(保持時間)を経て立ち上がる波形である。
【0068】
また、微駆動信号P1の立ち下がり電位より低い電位から中間電位に立ち上げる波形要素aは、これによってはノズルから液滴が吐出されない波形要素である。
【0069】
ここでは、波形要素aは、グランドレベル(GND)から中間電位に立ち上げる波形要素、波形要素bは、中間電位からグランドレベルに立ち下がる波形要素としている。なお、ここで、グランドレベル(GND)は、駆動波形生成部(微駆動波形を生成する回路)上のグランドレベル(例えば2.3V)としているが、0Vとすることもできる。
【0070】
つまり、中間電位から立ちがった後再度少なくとも中間電位まで上昇する微駆動信号P1だけで微駆動波形を構成した場合、図9に示すように、微駆動信号P1を加えた後、次の微駆動信号P1を加えるまでの間に、圧電素子の自然放電による電位の降下(ΔV)が生じる。そのため、次の微駆動信号P1を加えるときに電位が中間電位まで戻るために、圧電素子が駆動されて液滴が誤吐出されることがある。
【0071】
特に、低周波領域での印字を実施する場合などは、印字と印字との間の待機時間が長くなる可能性があり、圧電素子内の異常で電流が流れる別ループが存在する場合、結果として、圧電素子の自然放電による電位降下の影響が大きくなる。
【0072】
そこで、本実施形態では、微駆動信号P1、P1間で、中間電位から電位を0Vに立ち下げた後中間電位に戻す波形要素b、aを入れることで、圧電素子の自然放電による電位降下を抑制し、誤吐出を防止するようにしている。
【0073】
この場合、微駆動波形で対応することができるので、従前のようにスイッチ制御回路が不要であって、簡単な構成で誤吐出を防止できる。
【0074】
このような微駆動波形を使用した微駆動動作は、特に、キャリッジ5を移動させて、キャリッジ5に搭載されている図示しない用紙センサを使用して、ロール紙120の先端及び幅を検知する動作(ロールフォーミング)時に行うことが好ましい。
【0075】
ロールフォーミング時には、キャリッジ5が被記録媒体であるロール紙120上をスキャンすることになるが、正確な検出を行うためにキャリッジ5の移動速度は通常の印字時の移動速度よりも遅い速度としている。一方、駆動波形生成部701は、キャリッジ5の移動速度に応じてエンコーダセンサ42からの位置信号を基準として微駆動波形を生成出力する。
【0076】
そのため、特にロール紙120のような広幅の被記録媒体を使用する装置にあっては、スキャンに時間がかかるので、デキャップ状態にある記録ヘッド6のノズルの乾燥を防止するため、スキャン中の微駆動が必要になる。
【0077】
このとき、微駆動周期が長くなることによって、前述したように微駆動信号から微駆動信号までの間に、圧電素子の自然放電による電位降下によって誤吐出が生じやすくなる。
【0078】
そこで、上述した実施形態における微駆動波形を使用することによって、ロールフォーミング時の誤吐出を確実に防止することができる。
【0079】
なお、本実施形態の微駆動信号を使用する微駆動動作はロールフォーミング時に限定されるものではない。例えば、印字動作時のキャリッジ移動開始から印字開始までの間(前回の非印字領域微駆動)、印字を伴わないキャリッジ移動時(前回までのキャリッジリターン時微駆動)、印字動作時の印字終了からキャリッジの移動停止までの間、印字前空吐出のキャリッジ移動中、用紙先端検知からファーストスキャンまでの間、用紙のカット中、異物チェック中、記録ヘッドの昇降中、キャリッジのホーム位置への移動中、センサのキャリブレーション中、加減速領域の駆動波形(印字波形)間など、にも実施できる。
【0080】
つまり、キャリッジ移動速度に追従して微駆動波形を生成出力する場合、キャリッジ速度が低速度であると、微駆動信号を与える周期が長くなる。この場合でも、本実施形態における微駆動波形を使用することで、キャリッジ移動速度によらず中間電位降下による影響を低減することができ、どのような周波数領域においても、誤吐出を防止することができる。
【0081】
本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0082】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0083】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0084】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0085】
また、上記実施形態ではロール紙を使用する画像形成装置に適用しているが、シートを使用する画像形成装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
5 キャリッジ
6 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
8 主走査モータ(駆動源)
21 搬送手段
101 装置本体
102 給紙装置
112 ロール体
120 ロール紙(シート、ロール状媒体)
400 制御部
409 ヘッド制御部
509 ヘッドドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9