(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048132
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】内蔵フラッシュ機構、および内蔵フラッシュ機構を備えたカメラ
(51)【国際特許分類】
G03B 15/05 20060101AFI20161212BHJP
G03B 15/03 20060101ALI20161212BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20161212BHJP
G03B 17/04 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
G03B15/05
G03B15/03 H
H04N5/225 F
G03B17/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-284680(P2012-284680)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126769(P2014-126769A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】秋山 輝匡
【審査官】
小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−086605(JP,A)
【文献】
特開2010−282186(JP,A)
【文献】
特開2011−070167(JP,A)
【文献】
特開2010−185910(JP,A)
【文献】
特開2004−151684(JP,A)
【文献】
特開平08−054669(JP,A)
【文献】
特開2012−242498(JP,A)
【文献】
実開昭60−003824(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/05
G03B 15/03
G03B 17/04
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して照明光を照射する発光部と、
カメラ本体の幅方向に延び前記カメラ本体の後方側に固定された第1軸と、
前記カメラ本体の幅方向に延び前記カメラ本体の前方側に配置されて前記第1軸に対して上下方向に可動する第2軸と、
前記カメラ本体の幅方向に延び前記発光部を保持する第3軸と、
前記第1軸と前記第2軸をリンクさせる第1リンク部材と、
前記第2軸と前記第3軸をリンクさせる第2リンク部材と、
前記第2軸を上方向に付勢する第1ばね部材と、
前記第2リンク部材を前記第2軸回りに開放側に付勢する2ばね部材と、
前記発光部を前記第3軸回りに開放側に付勢する3ばね部材と、
前記発光部を収納位置に係止する係止部と
を備えることを特徴とする内蔵フラッシュ機構。
【請求項2】
前記第1リンク部材は、板状部材であることを特徴とする請求項1記載の内蔵フラッシュ機構。
【請求項3】
前記第1リンク部材は、裏面側で前記発光部がポップアップしているか否かを検出する検出スイッチを押圧することを特徴とする請求項1または2記載の内蔵フラッシュ機構。
【請求項4】
前記係止部により前記発光部が前記収納位置に係止された状態を解除する係止解除ばねを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の内蔵フラッシュ機構。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの何れか一項に記載の内蔵フラッシュ機構を備えたことを特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラに内蔵されている内蔵フラッシュ機構、および内蔵フラッシュ機構を備えたカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラに内蔵されているフラッシュの発光部を2軸のリンク機構によりポップアップさせる内蔵フラッシュのポップアップ機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−70167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の内蔵フラッシュのポップアップ機構においては、1軸目がカメラ本体の内部に固定されているため、発光部を発光部収納ケース内に収納する際には1軸目を避けて発光部が収納されるように発光部収納ケース内にスペースを確保する必要があることから、カメラ本体の前後方向(換言すれば撮影レンズの光軸方向)における厚さが大きくなる。またポップアップ時に発光部収納ケースの内部スペースが露出することから、見栄えも悪い。もしこの内部スペースに各種電気部品(たとえば、発光部が収納されたか否かを検出する検出スイッチなど)が設けられている場合には、使用者がその電気部品に触れてしまう恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、内蔵フラッシュをポップアップさせたときに発光部を高く、かつ前記前後方向において比較的前方に位置させることができ、収納時におけるカメラの前後方向の長さ(厚み)を短く構成した内蔵フラッシュ機構、およびこの内蔵フラッシュ機構を備えたカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段により上記課題を解決する。
【0007】
本発明の内蔵フラッシュ機構は、カメラ本体の幅方向に延び前記カメラ本体の後方側に固定された第1軸と、前記カメラ本体の幅方向に延び前記カメラ本体の前方側に配置されて前記第1軸に対して上下方向に可動する第2軸と、前記カメラ本体の幅方向に延び発光部を保持する第3軸と、前記第1軸と前記第2軸をリンクさせる第1リンク部材と、前記第2軸と前記第3軸をリンクさせる第2リンク部材と、前記第2軸を上方向に付勢する第1ばね部材と、前記第2リンク部材を前記第2軸回りに開放側に付勢する第2ばね部材と、前記発光部を前記第3軸回りに開放側に付勢する第3ばね部材と、前記発光部を収納位置に係止する係止部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のカメラは、本発明の内蔵フラッシュ機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内蔵フラッシュをポップアップさせたときに発光部を高く、かつ前方に位置させることができ、そして収納時におけるカメラ本体の前後方向における長さ(厚み)を短く(薄く)構成した内蔵フラッシュ機構、およびこの内蔵フラッシュ機構を備えたカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るデジタルカメラの前面を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る内蔵フラッシュのポップアップ状態における前方斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る内蔵フラッシュのポップアップ状態における後方斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る内蔵フラッシュのポップアップ状態におけるポップアップ機構を示す側面図である。
【
図5】実施の形態に係る内蔵フラッシュのポップアップ状態におけるポップアップ機構を示す前方斜視図である。
【
図6】実施の形態に係る内蔵フラッシュのポップアップ状態におけるポップアップ機構の係止解除板金及び係止解除ばねを前方から視た図である。
【
図7】実施の形態に係る内蔵フラッシュの収納状態におけるポップアップ機構の左側面図である。
【
図8】実施の形態に係る内蔵フラッシュの収納状態におけるポップアップ機構を前方から視た図である。
【
図9】実施の形態に係る内蔵フラッシュの収納状態におけるポップアップ機構の右側面図である。
【
図10】実施の形態に係る内蔵フラッシュの収納状態におけるポップアップ機構を背面側から視た図である。
【
図11】実施の形態に係る内蔵フラッシュのカメラ前後方向の厚さと従来技術の内蔵フラッシュのカメラ前後方向の厚さを示す図である。
【
図12】実施の形態に係る内蔵フラッシュのカメラ前後方向の厚さと従来技術の内蔵フラッシュのカメラ前後方向の厚さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るデジタルカメラの内蔵フラッシュ機構について説明する。
図1は実施の形態に係るデジタルカメラ2(カメラ本体)の前面を示す斜視図である。本実施の形態におけるデジタルカメラはレンズ交換式のデジタルカメラであり、デジタルカメラ2の前面には、交換レンズ(不図示)を着脱可能なレンズマウント4が設けられている。またデジタルカメラ(カメラ本体)2の上面100には、内蔵フラッシュ6を収納する収納部110、電源スイッチ8、シャッターボタン10、及び動画撮影ボタン12等が設けられている。
【0012】
図2は実施の形態に係る内蔵フラッシュのポップアップ状態における前方斜視図であり、
図3は実施の形態に係る内蔵フラッシュのポップアップ状態における後方斜視図である。内蔵フラッシュ6は、発光部20と、発光部20をポップアップさせるポップアップ機構22を有しており、内蔵フラッシュ6の収納状態においては、カメラ本体内に配置されているフラッシュユニット収納ケース24内に収納される。なお、フラッシュユニット収容ケース24は、上述の収納部110の一部を構成する部品である。
【0013】
ポップアップ機構22は、カメラ本体の幅方向に延びカメラ本体の内部に配置されるフラッシュユニット収納ケース24の後方側、即ちカメラ本体の背面側に固定されている第1軸26、カメラ本体の幅方向に延びフラッシュユニット収納ケース24の前方側(カメラ本体の前面側)に固定されており、第1軸26に対して上下方向に可動する第2軸28、及びカメラ本体の幅方向に延び発光部20を保持する第3軸30(
図4参照)を備えており、また第1軸26と第2軸28をリンクさせる第1リンク部材32、第2軸28と第3軸30をリンクさせる第2リンク部材34を備えた3軸のリンク機構により構成されている。
【0014】
ここで第1リンク部材32は、第1軸26側の縁部が第1軸26に固定され、第2軸28側の縁部が第2軸28に固定された板状部材により構成されている。また第2リンク部材34は、第2軸28側の縁部が第2軸28に固定され、第3軸30側の縁部が第3軸30に固定された板状部材により構成されている。
【0015】
内蔵フラッシュ6を前方側から視た場合の左側面の第1軸26の前方側には、第2軸28を上方向に付勢する第2軸アップばね36が設けられている。第2軸アップばね36は、コイルバネにより構成され一方の端部36a(
図4参照)が第2軸28の下面に当接され、第2軸28を上方向に付勢している。第2軸28には、第2リンク部材34を第2軸28回りに開放側に付勢する、コイルばねにより構成された第2リンク部材アップばね38が挿通されている。第3軸30には、発光部20を第3軸30回りに開放側に付勢する、コイルばねにより構成された発光部アップばね40(
図6参照)が挿通されている。
【0016】
フラッシュユニット収納ケース24内の下部には、発光部20を収納位置であるフラッシュユニット収納ケース24内に係止する際に、発光部20の下部に形成されている係止部42に係止されるロック爪44が形成されている。またフラッシュユニット収納ケース24の下部のロック爪44の近傍には、係止部42に係止されているロック爪44の係止状態を解除する係止解除ばね46が設けられている。
【0017】
図5及び
図6に示すように係止解除ばね46は、コイルバネにより構成され第1軸26の下部に設けられた係止解除ばね支持軸48に挿通されている。係止解除ばね46は、一端部にU字形状を有する立ち上がり部46aを有しており、他端部46bは係止解除板金50に当接されている。
【0018】
係止解除板金50は、係止解除ばね支持軸48の下部に係止解除ばね支持軸48に沿って配置されているプレート状の部材であり、両端部に設けられた立ち上がり部50aの開口部に係止解除ばね支持軸48が挿通されている。また係止解除板金50の側面側の端部には、ソレノイド52のソレノイド軸52aに係止されている下延部50bが形成されており、上述の係止解除ばね46の他端部46bが下延部50bに当接されている。また中央部側の立ち上がり部50aの外側面にはロック爪44が接しており、ロック爪44に形成された開口部に係止解除ばね支持軸48が挿通されている。
【0019】
内蔵フラッシュ6の発光部20を押下して、内蔵フラッシュ6を収納位置であるフラッシュユニット収納ケース24内に収納する場合には、第2軸28及び第1リンク部材32の第2軸28側が下方に移動し、フラッシュユニット収納ケース24内に空間が形成されるため、この空間内に発光部20が収納される。このとき発光部20の下部に形成されている係止部42にロック爪44が係止され、内蔵フラッシュ6の収納状態が維持される。この場合には、
図7〜10に示すように、係止解除ばね46の立ち上がり部46aは、第2軸28に沿った位置に設けられた押し下げ部28a(
図3参照)により押し下げられて係止部42にロック爪44が係止された状態を解除するための力量がチャージされた状態になる。また第2軸アップばね36、第2リンク部材アップばね38及び発光部アップばね40もそれぞれ内蔵フラッシュ6をポップアップさせるための力量がチャージされた状態になる。
【0020】
この状態においては、フラッシュユニット収納ケース24内の底部に設けられている、内蔵フラッシュ6が収納位置にあるか、ポップアップ位置にあるかを検出する検出スイッチ(図示せず)を第1リンク部材32の裏面側で押下するため、内蔵フラッシュ6が収納位置にあることを検出することができる。
【0021】
また、内蔵フラッシュ6が収納位置にある場合には、第2軸28の端部が第2軸アップばね36により上方向に付勢されているが、第2軸28の中央部付近も係止解除ばね46の立ち上がり部46aにより上方向に付勢されているため、発光部20が収納されているときの発光部の傾斜を防止し、カメラ本体の上面100に対して内蔵フラッシュ6の上面6aが平行な姿勢を確保でき(換言すれば内蔵フラッシュ6がカメラ本体に対して平行な姿勢を確保でき)外観の見栄えを悪化させることがない。
【0022】
内蔵フラッシュ6の発光部20をポップアップさせる場合には、ソレノイド52に通電を行なうことにより、ソレノイド軸52aが磁力により引付けられた状態が解除される。これにより係止解除ばね46の他端部46bが係止解除板金50の下延部50aをポップアップ機構22の後方側に押し、係止解除板金50が
図5及び
図6に示す矢印Xで示す方向に回動する。これに伴いロック爪44は矢印Yで示す方向に回動し、係止部42から外れ係止状態が解除される。そしてチャージされた状態にあった第2軸アップばね36、第2リンク部材アップばね38及び発光部アップばね40により、内蔵フラッシュ6がポップアップされる。
【0023】
この場合に、第1リンク部材32は、第1軸26側の縁部が第1軸26に固定され、第2軸28側の縁部が第2軸28に固定された板状部材であるため、フラッシュユニット収納ケース24内のスペースが第1リンク部材32により隠されることにより、誤ってフラッシュユニット収納ケース24の底部に設けられている検出スイッチに触れてしまうのを防止することができる。
【0024】
本実施の形態に係る内蔵フラッシュによれば、内蔵フラッシュをポップアップさせたときに発光部を高く、かつ前方に位置させることができ、収納時におけるカメラの前後方向の厚さが小さい内蔵フラッシュ機構を提供することができる。即ち、
図11は従来技術の内蔵フラッシュがポップアップしている状態(a)と、実施の形態に係る内蔵フラッシュが6ポップアップしている状態(b)とを模式的に示したものであり、
図12は従来技術の内蔵フラッシュが収納されている状態(a)と、実施の形態に係る内蔵フラッシュ6が収納されている状態(b)とを模式的に示したものであるが、これらの図に示すように、従来技術の内蔵フラッシュのポップアップ時におけるカメラ本体の上面120に対する発光部102の位置と、実施の形態に係る内蔵フラッシュ6のポップアップ時におけるカメラ本体の上面100に対する発光部20の位置を同じにした場合に、従来技術の内蔵フラッシュのカメラの前後方向の長さ(厚み)aに比較して実施の形態に係る内蔵フラッシュ6のカメラの前後方向の厚みbを短く(薄く)することができる。
【符号の説明】
【0025】
2…デジタルカメラ(カメラ本体)、6…内蔵フラッシュ、6a…内蔵フラッシュ上面、20…発光部、22…ポップアップ機構、24…フラッシュユニット収納ケース、26…第1軸、28…第2軸、30…第3軸、32…第1リンク部材、34…第2リンク部材、36…第2軸アップばね、38…第2リンク部材アップばね、40…発光部アップばね、42…係止部、44…ロック爪、46…係止解除ばね、50…係止解除板金、100…カメラ本体上面、110…収納部