(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
析出防止剤は、N−メチル−ピロリドン、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールおよびこれらの誘導体よりなる群から選択された少なくとも1以上である請求項1に記載のタッチパネル用コーティング組成物。
前記金属塩は、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属塩化物、金属蓚酸塩、金属スファミン酸塩、金属スルホン酸塩、金属アセト酢酸塩、金属アセチルアセトナートまたはこれらの塩基性塩である請求項1〜4のいずれかに記載のタッチパネル用コーティング組成物。
前記第1の透明電極パターンと前記第2の透明電極パターンとが重畳する部分は、前記基板の操作領域に複数あり、これら複数の重畳する部分のそれぞれにおいて、前記重畳する部分の面積より大きい面積の前記有機材料からなる膜が配置されている請求項10に記載のタッチパネル。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<コーティング組成物>
本発明のコーティング組成物は、上記一般式(I)で示される第1の金属アルコキシドと、上記一般式(II)で示される第2の金属アルコキシドと、上記一般式(III)で示される金属塩と、有機溶媒と、水分と、析出防止剤と、を含有する。このコーティング組成物を成膜することによりタッチパネルに好適なコートが得られる。
【0025】
本発明のコーティング組成物から得られるコート膜は、無機物である金属酸化物を主な成分とするものであり、アクリル材料などの有機材料からなるコート膜に比べて、硬度が高く、高い強度を有する。したがって、タッチパネルの電極用保護膜として好適である。また、タッチパネルにおいて透明電極パターンが視認される、いわゆる「電極パターン見え」現象を低減できるよう、屈折率が最適範囲に制御されている。その結果、このコート膜を用いたタッチパネルが適用される表示装置の表示性低下を防止することができる。
【0026】
本発明で得られるコート膜は、例えば、タッチパネルの基板の操作領域に配置される透明電極パターンが、2つの異なる方向の位置を検出するための2種類の透明電極パターンを有して構成されることがある。このとき、2種類の透明電極パターンが電気的に接続しないよう、それらの間にアクリルなどの有機材料からなる層間絶縁膜が配置される。こうした構成のタッチパネルの場合、コート膜は層間絶縁膜の上にも形成される。ここで、コート膜と層間絶縁膜の熱伸縮性の違いによって、コート膜にクラックが入り、タッチパネルの信頼性が低下するという問題があった。
【0027】
本発明のコーティング組成物では、タッチパネルのコート膜にクラックが発生しないよう、含有する成分の構造と組成について好ましく選択される。より詳しくは、本発明のコーティング組成物では、主成分である金属アルコキシドについて、コート膜の形成に好適となるような構造と組成の選択できる。
【0028】
本発明のコーティング組成物は、下記一般式(I)で示される構造の第1の金属アルコキシドと、下記一般式(II)で示される構造の第2の金属アルコキシドとを含有する。
【化1】
式(I)中、M
1、R
1、nは、上記に定義したとおりである。なかでも、M
1は、珪素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはアルミニウム(Al)が好ましく、特には、珪素(Si)、またはチタン(Ti)が好ましい。また、nは3または4が好ましい。
【化2】
式(II)中、M
2、R
2、R
3、mは、上記に定義したとおりである。なかでも、M
2は、珪素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはアルミニウム(Al)が好ましく、特には、珪素(Si)、またはチタン(Ti)が好ましい。
【0029】
式(I)で示される金属アルコキシドとして、シリコンアルコキシドまたはその部分縮合物を用いる場合、一般式(IV)で示される化合物の1種若しくは2種以上の混合物または部分縮合物(好ましくは5量体以下)が用いられる。
【化3】
式(IV)中、R’は、炭素数1〜5、好ましくは、1〜3のアルキル基、またはアセトキシ基を表す。
【0030】
より具体的には、シリコンアルコキシドとして、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類などが用いられる。
【0031】
また、式(I)で示される金属アルコキシドとして、チタンアルコキシドまたは部分縮合物を用いる場合、一般式(V)で示される化合物の1種または2種以上の混合物または部分縮合物(好ましくは5量体以下)が用いられる。
【化4】
式(V)中、R”は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。
式(I)で示される金属アルコキシドとして、具体的には、チタンアルコキシドとして、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラプロポキシド、チタニウムテトラブトキシドなどのチタニウムテトラアルコキシド化合物またはチタニウムテトラ−n−ブトキシドテトラマーなどの部分縮合物などが用いられる。
【0032】
式(I)で示される金属アルコキシドの他の例としては、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシドなどのジルコニウムテトラアルコキシド化合物;アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシドなどのアルミニウムトリアルコキシド化合物;タンタリウムペンタプロポキシド、タンタリウムペンタブトキシドなどのタンタリウムペンタアルコキシド化合物などを挙げることができる。
【0033】
第1の金属アルコキシドの含有量は、コーティング組成物に含まれる1の金属アルコキシドと第2の金属アルコキシドの合計量に対し、20モル%〜85モル%であることが好ましく、30モル%〜70モル%がより好ましい。
【0034】
上記式(II)で示される第2の金属アルコキシドは、上記第1の金属アルコキシドとともに、本発明のコーティング組成物に用いられる。コーティング組成物では、第2の金属アルコキシドを含むことにより、コート膜がアクリル材などの有機材料からなる膜上に形成される場合に、コート膜と有機膜との間の熱伸縮性の違いが緩和される。その結果、有機膜上に、コート膜が形成されることがあっても、コート膜にクラックが発生することが防止される。例えば、タッチパネルにおいて、上述した層間絶縁膜などにアクリル材料からなる有機膜が用いられ、その上にコート膜が形成されることがあっても、層間絶縁膜上のコート膜にクラックが発生することを防止できる。
【0035】
第2の金属アルコキシドの含有量の含有量は、コーティング組成物に含まれる1の金属アルコキシドと第2の金属アルコキシドにの合計量に対し、80モル%〜15モル%好ましく、70%〜30モル%がより好ましい。R
2の炭素数が3以下の場合、式(II)で示される金属アルコキシドの含有量を30%以上とし、R
2の炭素数が4以上の場合、または、R
2中にメルカプト基が含まれる場合、第2の金属アルコキシドの含有量が15%以上であることがより好ましく、また、75モル%以下がより好ましい。
第2の金属アルコキシドの含有量が15モル%未満である場合、上記した有機膜上で得られるコート膜にクラックが生じる場合がある。また、80モル%以上である場合、クラックは生じないものの、均一な塗布膜が得られないといった現象が起こる場合がある。このような含有量とすることにより、上記したコート膜でのクラック発生を抑制することができる。
【0036】
コーティング組成物に含まれる第1の金属アルコキシドと第2の金属アルコキシドの合計の含有量は、好ましくは0.5重量%〜20重量%であり、より好ましくは1重量%〜15重量%ある。この比率が大きい場合には、コーティング組成物の貯蔵安定性が悪くなるうえ、コート膜の膜厚制御が困難になる。一方、小さい場合には、得られるコート膜の厚みが薄くなり、所定の膜厚を得るために多数回の塗布が必要となる。
【0037】
式(II)に示される好ましい金属アルコキシドとしては、例えば、M
2が珪素である場合、以下の化合物を挙げることができる。
例え
ば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラ
ン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトメチルジエトキシシラ
ン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラ
ンなどを挙げることができる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明のコーティング組成物に含有される金属塩としては、下記一般式(III)で示される。
【化5】
式(III)中、M
3、X、kは、上記に定義したとおりである。なかでも、M
3は、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、セリウム(Ce)またはジルコニウム(Zr)が好ましい。また、Xは、塩酸、硝酸、酢酸、蓚酸、スルホン酸、アセト酢酸若しくはアセチルアセトナートの残基、またはそれらの塩基性塩が好ましい。上記Xにおける各酸の残基は、例えば、硝酸は硝酸根、硫酸は硫酸根とも呼ばれ、その量は、M
3の価数と等価になるように含まれる。また、塩基性塩とは、上記各酸の残基中にOH基を含む場合を意味する。
式(III)で示される金属塩のうち、特に、硝酸塩、塩化物塩、蓚酸塩またはその塩基性塩が好ましい。この内、入手の容易性と、コーティング組成物の貯蔵安定性の点から、アルミニウム、インジウム、またはセリウムの硝酸塩がより好ましい。
【0039】
本発明のコーティング組成物には、有機溶媒が含有される。該有機溶媒は、コーティング組成物からその塗膜を形成しコート膜を得る場合、コーティング組成物の粘度を調整し、塗布性を改善するためのもので、コーティング組成物中の有機溶媒の含有量は、コーティング組成物に含まれる全金属アルコキシドに対し、80重量%〜99.5重量%であることが好ましく、85重量%〜99重量%がより好ましい。有機溶媒の含有量が少ない場合には、得られるコート膜の厚みが薄くなり、所定の膜厚を得るために多数回の塗布が必要となる。一方、多い場合には、コーティング組成物の貯蔵安定性が悪くなるうえ、コート膜の膜厚の制御が困難になる。
【0040】
コーティング組成物に用いられる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールなどのアルコール類;酢酸エチルエステルなどのエステル類;エチレングリコールなどのグリコール類、またはそれらのエステル誘導体;ジエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは、単独または組み合わせて用いられる。
【0041】
コーティング組成物中に、チタンアルコシド成分を含む場合、有機溶媒中に含まれるアルキレングリコール類またはそのモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、またはそれらのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、モノブチル若しくはモノフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
コーティング組成物に用いられる有機溶媒に含まれるグリコール類またはそのモノエーテルは、チタンアルコキシドに対してモル比が1未満であると、チタンアルコキシドの安定性に効果が少なく、コーティング用組成物の貯蔵安定性が悪くなる。一方。グリコール類またはそのモノエーテルを多量に用いることは何ら問題でない。例えば、コーティング組成物に用いられる有機溶媒の全てが、上述のグリコール類またはそのモノエーテルであっても差支えない。しかし、コーティング組成物がチタンアルコキシドを含まない場合には、上述したグリコールおよび/またはそのモノエーテルを特に含む必要はない。
【0043】
コーティング組成物は、析出防止剤を含有するのが好ましい。析出防止剤は、コーティング組成物から塗布被膜を形成する際に、塗膜中に金属塩が析出するのを防止する。析出防止剤としては、N−メチル−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはヘキシレングリコール、またはそれらの誘導体などが挙げられる。なかでも、N−メチル−ピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールまたはそれらの誘導体がより好ましい。析出防止剤は、少なくとも1種以上使用できる。
【0044】
コーティング組成物中における析出防止剤の含有量は、上記金属塩の金属を金属酸化物に換算して、下記を満足する比率(重量比)で用いられるのが好ましい。
(析出防止剤/金属酸化物)≧1
上記比率が1未満であると、塗布被膜を形成時における金属塩の析出防止効果が小さくなる。一方、析出防止剤を多量に用いることは、コーティング組成物に何ら影響を与えないが、200以下であるのが好ましい。
【0045】
析出防止剤には、金属アルコキシド、特に、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、または、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドが、金属塩の存在下で加水分解・縮合反応する際に添加されていてもよく、加水分解・縮合反応の終了後に添加されていてもよい。
【0046】
一方、コーティング組成物に含まれる金属塩の含有量は、上記第1及び第2の金属アルコキシドを構成する金属原子(M
1およびM
2)と上記金属塩の金属原子(M
3)の合計の含有比率が、下記を満足する比率(モル比)であるのが好ましい。
0.01≦M
3/(M
1+M
2+M
3)≦0.7
この比率が0.01より小さいと、得られる被膜の機械的強度が十分でないため好ましくない。一方、0.7を越えると、ガラス基板や透明電極などの基材に対するコート膜の密着性が低下する。さらに、450℃以下の低温で焼成した場合、得られるコート膜の耐薬品性が低下する傾向にもある。なかでも、この比率は、0.01〜0.6であるのがより好ましい。
【0047】
本発明のコーティング組成物においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記した成分以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマー、レベリング剤、界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、フッ化マグネシウム微粒子等の微粒子が好ましく、これらの無機微粒子のコロイド溶液が特に好ましい。このコロイド溶液は、無機微粒子粉を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド溶液であってもよい。
【0048】
本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化被膜の表面形状やその他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001〜0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001〜0.1μmである。無機微粒子の平均粒子径が0.2μmを超える場合には、調製される塗布液を用いて形成される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
無機微粒子の分散媒としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、被膜形成用塗布液の安定性の観点から、pH又はpKaが1〜10に調整されていることが好ましく、より好ましくは2〜7である。
【0049】
コロイド溶液の分散媒に用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類を挙げることができる。これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して分散媒として使用することができる。
【0050】
本発明のコーティング組成物中の固形分濃度は、上記の金属アルコキシドと金属塩を金属酸化物として換算した場合、0.5重量%〜20重量%の範囲であることが好ましい。固形分が20重量%を越えると、コーティング組成物の貯蔵安定性が悪くなるうえ、コート膜の膜厚制御が困難になる。一方、固形分が0.5重量%より少ない場合では、得られるコート膜の厚みが薄くなり、所定の膜厚を得るために多数回の塗布が必要となる。なかでも、固形分濃度は、1重量%〜15重量%であるのがより好ましい。
【0051】
本発明のコーティング組成物には、上記の第1及び第2の金属アルコキシドを上記金属塩の存在下で加水分解し、縮合物を得るために水が含有される。かかる水の量は、上記の第1及び第2の金属アルコキシドの総モルに対して、2〜24モルにするのが好ましい。この(水の量(モル)/(金属アルコキシドの総モル数)の比率が2以下の場合には、金属アルコキシドの加水分解が不十分となって、成膜性を低下させたり、得られるコート膜の強度を低下させたりするので好ましくない。また、上記比率が24より多い場合は、重縮合が進行し続けるため、貯蔵安定性を低下させるので好ましくない。なかでも、このモル比は、2〜20であるのがより好ましい。
【0052】
なお、コーティング組成物に含有される金属塩が含水塩の場合には、その含水分が加水分解反応に関与するため、コーティング組成物に含有させる水の量には、この金属塩の含水分を考慮する必要がある。例えば、共存する金属塩がアルミニウム塩の含水塩の場合には、その含水分が反応に関与するため、加水分解に用いる水の量に対してアルミニウム塩の含水分を考慮する必要がある。
【0053】
本発明のコーティング組成物は、タッチパネルに好適なコート膜を形成することができる。このコート膜は、無機物である金属酸化物を主な成分とするコート膜であり、アクリル材料などの有機材料の膜に比べて高い強度を有する。そして、後述するタッチパネルにおいて、電極の保護膜として適用される。コート膜は、適度な熱伸縮特性を備えているので、タッチパネルを構成する有機膜上に形成されてもクラックの発生が最小限に抑制される。また、透明電極パターンが視認されることによる表示装置の表示性の低下が低減されるよう、屈折率が最適な範囲に制御されている。
【0054】
コート膜の屈折率の制御については、コーティング組成物の組成を制御することで実現することができる。すなわち、本発明におけるコート膜は、上記のコーティング組成物に含有される金属アルコキシドを加水分解・縮合させて製造されるものであり、金属アルコキシドの組成を選択することにより、形成するコート膜の屈折率を所定の範囲内で調整することが可能である。例えば、金属アルコキシドとして、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドを選択した場合、その混合比率を調整することにより、後述する所定の範囲内で、具体的には1.45〜2.1程度の範囲内で、得られるコート膜の屈折率を調整することが可能である。
【0055】
すなわち、コーティング組成物を塗布して成膜し、好ましくは乾燥した後、焼成した後に形成されるコート膜において、要求される屈折率が決められている場合、その屈折率を実現するよう、金属アルコキシド、例えば、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドの組成モル比を決めることが可能である。例えば、シリコンアルコキシドのみを加水分解することによって得られるコーティング組成物からのコート膜の屈折率は、1.45程度の値である。そして、チタンアルコキシドのみを加水分解して得られるコーティング組成物からのコート膜の屈折率は、2.1程度の値である。したがって、コート膜の屈折率を1.45〜2.1程度までの間で特定の値に設定したい場合、その屈折率値を実現するよう、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドを所定の割合で用いてコーティング組成物を製造することが可能である。
【0056】
また、他の金属アルコキシドを用いることによっても、得られるコート膜の屈折率の調整は可能である。さらに、本発明におけるコート膜の屈折率については、組成条件以外に、成膜条件を選択することで調整することも可能である。こうすることで、コート膜の高い硬度を実現するとともに、所望の屈折率値を実現することが可能である。
【0057】
本発明のコーティング組成物からコート膜を得る場合、上記のように、コーティング組成物の塗膜を、好ましくは乾燥し、次いで、焼成される。乾燥は、室温〜150℃で行うことが好ましく、40〜120℃で行うことがより好ましい。また、乾燥時間は30秒〜10分程度が好ましく、1〜8分程度がより好ましい。乾燥方法としては、ホットプレートや熱風循環式オーブンなどを用いることが好ましい。
焼成は、タッチパネルの他の構成部材の耐熱性を考慮して、100℃〜300℃ので行うのが好ましく、150℃〜250℃で行うのがより好ましい。また、焼成時間は5分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。焼成方法としては、ホットプレート、熱循環式オーブン、赤外線オーブンなどを用いるのが好ましい。
コーティング組成物の塗膜を焼成してコート膜を製造する場合、焼成温度により得られるコート膜の屈折率は変動する。この場合、焼成温度を高くするほど、コート膜の屈折率を高くできる。したがって、焼成温度を適度な値に選択することで、得られるコート膜の屈折率の調整が可能である。
【0058】
また、コーティング組成物からコート膜を得る場合、焼成前に塗膜に紫外線(UV)を照射すると、得られるコート膜の屈折率が変動する。具体的には、紫外線照射量を多くするほど、コート膜の屈折率を高くすることができる。したがって、所望の屈折率を実現するため紫外線照射の有無を選択することが可能である。特に、コーティング組成物に含有され金属アルコキシドが、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドまたはタンタルアルコキシドを含む場合、焼成前の塗膜への紫外線(UV)照射により、得られるコート膜の屈折率が変動し、紫外線照射量を多くするほど、コート膜の屈折率を高くすることができる。尚、コート膜において、組成等の条件選択により所望の屈折率が実現できる場合は、紫外線照射は行わなくてもよい。
【0059】
紫外線照射を行う場合は、その照射量を選択することで、コート膜の屈折率を調整することが可能である。コート膜において、所望の屈折率を得るために紫外線照射が必要な場合は、例えば、高圧水銀ランプを使用することができる。高圧水銀ランプを使用した場合365nm換算で、全光照射1000mJ/cm
2以上の照射量が好ましく、3000mJ/cm
2〜10000mJ/cm
2の照射量がより好ましい。紫外線の光源としては、高圧水銀ランプのほかに、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプなどを用いることができる。高圧水銀ランプを使用した場合以外の光源を用いる場合は、上記高圧水銀ランプを使用した場合と同量の積算光量が照射されればよい。紫外線照射を行う場合、乾燥工程と焼成工程の間に紫外線照射工程を行うこともできる。
【0060】
コーティング組成物に、特にチタンアルコキシド成分を含む場合、室温保存下で徐々に粘度が上昇するという性質を有する。これによる実用上大きな問題となる懸念は無いものの、コート膜の厚みを精密に制御する場合には、温度などに対する慎重な管理が好ましい。尚、こうした粘度の上昇は、コーティング組成物中のチタンアルコキシドの組成比率が多くなるにしたがって顕著となる。これは、チタンアルコキシドがシリコンアルコキシドなどに対して加水分解速度が大きく、縮合反応が速いためと考えられる。
【0061】
コーティング組成物が、チタンアルコキシド成分を含む場合において、粘度変化を少なくするためには、次の2つの製法(1)と製法(2)が好ましい。
(1)チタンアルコキシドを金属塩の存在下、加水分解する際に、予めグリコール類とチタンアルコキシドを充分混合した後、必要に応じて、シリコンアルコキシドと混合し、有機溶媒の存在下で加水分解する。こうすることにより、粘度変化の小さいコーティング組成物が得られる。この(1)の製法が有効なのは、チタンアルコキシドをグリコール類と混合した際に発熱があることから、チタンアルコキシドのアルコキシ基と、グリコール類との間でエステル交換反応が起こり、加水分解・縮合反応に対して安定化されるためと考えられる。
【0062】
(2)予めシリコンアルコキシドを金属塩の存在下で加水分解反応させた後、グリコール類と混合したチタンアルコキシド溶液に混合して縮合反応を行い、コーティング組成物を得る。こうすることにより、粘度変化の小さいコーティング組成物が得られる。
この(2)の製法が有効なのは、次の理由によると考えられる。すなわち、シリコンアルコキシドの加水分解反応は速い速度で行われるが、その後の縮合反応はチタンアルコキシドに比較して遅い。そのため、加水分解反応を終えた後、速やかにチタンアルコキシドを加えると、加水分解反応したシリコンアルコキシドのシラノール基と、チタンアルコキシドとが均一に反応する。これにより、チタンアルコキシドの縮合反応性を、加水分解されたシリコンアルコキシドが安定化させると考えられる。
【0063】
予め加水分解されたシリコンアルコキシドと、チタンアルコキシドとを混合する方法は、既に試みられている。しかし、反応に用いられる有機溶媒にグリコール類が含まれていない場合には、貯蔵安定性に優れたコーティング組成物が得られない。また、2)に示した方法は、大きな加水分解速度を有する他の金属アルコキシドとシリコンアルコキシドとからコーティング組成物を得る場合にも有用である。
【0064】
本発明のコーティング組成物は、一般に行われている塗布法を適用して、塗膜を成膜し、その後、コート膜とされる。塗布法としては、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ロール転写法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはフレキソ印刷法などが用いられる。この内、パターン印刷に好適なインクジェット法とフレキソ印刷法が特に好ましい。
【0065】
<コート膜>
本発明のコート膜は、上述した本発明のコーティング組成物を用いて形成される。そして、タッチパネルの電極保護膜として、後述する本発明のタッチパネルに適用される。
本発明のコート膜は、無機物である金属酸化物を成分として含むコート膜であり、アクリル材料などの有機材料からなるコート膜に比べて硬度が高く、高い強度を有する。すなわち、機械的強度に優れ、指などによる多数回の押圧から透明電極を保護する。
【0066】
タッチパネルが有機材料からなる膜を用いて構成される場合、例えば、タッチパネルの電極間に配置される層間絶縁膜がアクリルなどの有機材料から構成される場合には、本発明のコート膜が特に有効である。すなわち、有機材料からなる膜上に本発明のコート膜が形成されても、有機膜との熱伸縮性に違いによってクラックを生じないよう、成分組成の選択がなされている。
【0067】
また、本発明のコート膜は、後述するタッチパネルの電極の保護膜としても好適である。すなわち、このコート膜によれば、透明電極パターンが視認される現象(電極パターン見え現象)を抑制することができる。したがって、このコート膜を用いて形成されたタッチパネルによれば、表示装置の表示性の低下を低減することが可能である。
【0068】
タッチパネルで透明電極パターンが視認される原因は、基板の操作領域にある透明電極パターンの屈折率と基板の屈折率とが異なることにある。タッチパネルの透明電極パターンは、通常、無機の金属酸化物であるITO(酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide)からなる。ITOの屈折率は、1.8〜2.1程度である。一方、ガラス基板の屈折率は1.4〜1.5前後であるので、ITOの屈折率と大きく異なる。かかる屈折率の違いは、透明電極パターンが形成された領域と、形成されていない領域との間に、光反射特性の違いを生じさせる。すなわち、干渉を伴う界面反射特性が、透明電極パターンの形成された領域と、形成されない領域とで異なることにより、画面表示において電極パターンを目立たせる結果となる。
【0069】
そこで、本発明者は、透明電極パターンを目立たなくするため鋭意検討を重ねた結果、基板上に配置された透明電極パターンの上に、屈折率と膜厚とが所望の範囲内となるように制御された層を設けることが有効であることを見出した。具体的には、透明電極パターンの保護層の屈折率と膜厚とを最適範囲に制御することで、タッチパネルにおける意図しない透明電極パターンの視認を抑えられることが分かった。
【0070】
本発明のコート膜では、特に、透明電極パターンが視認される現象を抑えようとする場合、屈折率が1.50〜1.70の範囲内、好ましくは1.52〜1.70の範囲内となるよう制御される。屈折率の制御法については、上述のように、コーティング組成物の成分組成を制御する他、成膜方法の制御によっても実現される。
コート膜の形成方法としては、本発明のコーティング組成物に、フレキソ印刷など一般に行われている塗布法を適用して、タッチパネルの電極上に塗膜を成膜し、その後、コート膜とする方法が挙げられる。
【0071】
<タッチパネル>
次に、本発明のコート膜を有するタッチパネルについて説明する。
図1および
図2は、本発明のタッチパネルの構成を説明する図である。
図1は、タッチパネルの構造を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1のA1−A1’線に沿う断面図である。
【0072】
図1に示すように、タッチパネル1は、透明な基板2を用いて構成され、基板2の操作領域に透明電極のパターンが形成されている。具体的には、基板2の操作領域において、Y方向に伸びる第1の透明電極3と、X方向に伸びる第2の透明電極4とを有する。第1の透明電極3と第2の透明電極4は、基板2の同一面に設けられた同一層から形成される。
【0073】
基板2は、ガラス、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂などの透明材料を用いて構成される。特に、コート膜5の形成に好適な耐熱性と耐薬品性能を備えた材料を選択することが好ましい。基板2の厚みは、ガラスを用いた場合には、例えば0.1mm〜2mm程度であり、樹脂フィルムを用いた場合には、例えば10μm〜2000μm程度である。
【0074】
図1において、第1の透明電極3と第2の透明電極4は、それぞれ複数のパッド部21を構成要素としている。各パッド部21は、それぞれが平面的に隔離され、且つ、各パッド部21間の隙間が少なくなるように配置される。すなわち、X軸方向に列をなすパッド部21と、Y軸方向に列をなすパッド部21とは、これらが互いに交差する領域が可能な限り小さくなるようにして、操作領域の全体に配置される。パッド部21は、例えば、菱形、矩形および六角形などの多角形形状とすることができ、これらは、例えば、互い違いまたは直列状に配置される。また、分離(離間)した電極の本数も
図1の例に限られるものではなく、操作領域の大きさと要求される検出位置の精度に応じて決定される。
【0075】
複数のパッド部21を連ねて構成される第1の透明電極3と第2の透明電極4は、タッチパネル1の操作領域に相当する位置に形成されている。第1の透明電極3は、X方向に沿った複数の領域に分離して設けられており、X方向の座標を検出する。第2の透明電極4は、Y方向に沿った複数の領域に分離して設けられており、Y方向の座標を検出する。このような構造とすることで、タッチ位置検出の精度を高めることができる。
【0076】
第1の透明電極3および第2の透明電極4には、少なくとも可視光に対する透過率が高く、導電性を有する透明電極材料を用いて形成される。このような導電性を有する透明電極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはZnO(酸化亜鉛)などが挙げられる。ITOを用いる場合には、十分な導電性を確保できるよう、厚さを10nm〜200nmとすることが好ましい。
【0077】
第1の透明電極3と第2の透明電極4は、例えば、次のようにして形成される。
まず、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スプレー法、ディップ法またはCVD法などの中から、下地となる基板2の材質を考慮して選択した方法によって透明導電膜を成膜する。次に、上記透明導電膜を、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする。または、有機溶剤に上記材料からなる導電性フィラーなどを分散させた塗料を用い、印刷法によって所望のパターンを形成してもよい。
【0078】
透明電極の形成工程では、膜厚を精度よく制御できることが好ましい。したがって、形成にあたっては、所望の膜厚を実現し、透明性に優れた低抵抗の膜を形成できる方法を選択することが好ましい。
【0079】
図1および
図2に示すように、第1の透明電極3と第2の透明電極4とは、基板2の同一面上に形成されており、同一層をなしている。このため、第1の透明電極3と第2の透明電極4とは、複数の箇所で交差しており、交差部18を形成している。
【0080】
本発明では、交差部18において、第1の透明電極3と第2の透明電極4の一方が他方と接触しないよう分断されている。すなわち、
図2に示すように、複数の交差部18のいずれにおいても、第2の透明電極4は繋がっているが、第1の透明電極3は分断されている。そして、第1の透明電極3の分断箇所を接続させるために、架橋電極20が設けられている。架橋電極20と第2の透明電極4の間には、絶縁性物質からなる層間絶縁膜19が設けられている。以下、
図1および
図2を参照して、さらに詳述する。
【0081】
図2に示すように、交差部18における第2の透明電極4の上には、光透過性の層間絶縁膜19が形成されている。層間絶縁膜19の形成には、感光性アクリル樹脂などの有機材料を用いる。感光性アクリル樹脂を用いる場合は、フォトリソグラフィ法を利用して、交差部18における第2の透明電極4の上にのみアクリル膜が形成された構造とする。尚、SiO
2などの無機材料を用いることもできる。SiO
2を用いる場合、例えば、マスクを用いたスパッタリング法によって、同様の構造を形成することができる。パターニング性を考慮する場合、層間絶縁膜19にはアクリル膜を使用することが好ましい。
【0082】
層間絶縁膜19の上層には、架橋電極20が設けられている。架橋電極20は、交差部18で分断されている第1の透明電極3同士を電気的に接続するものであり、光透過性の材料によって形成されることが好ましい。架橋電極20を設けることで、第1の透明電極3をY方向に電気的に接続することができる。
【0083】
図1に示すように、第1の透明電極3と第2の透明電極4は、菱形のパッド部21を縦または横に複数並べた形状をしている。第2の透明電極4において、交差部18に位置する接続部分は、第2の透明電極4の菱形のパッド部21より幅の狭い形状になっている。また、架橋電極20も、菱形のパッド部21より幅の狭い形状で短冊状に形成されている。
【0084】
図1および
図2に示すように、本発明のタッチパネル1においては、第1の透明電極3と第2の透明電極4の上に、保護膜として、上述した本発明のコート膜5が形成されている。そして、タッチパネル1の操作領域に相当する部分における透明電極の形成領域と非形成領域とを被覆している。コート膜5は、高硬度であり、無機材料からなる第1の透明電極3および第2の透明電極4との密着性に優れる。
【0085】
本発明のコート膜5の形成には、上述した本発明のコーティング組成物が用いられる。具体的には、上述した式(I)と式(II)に示した金属アルコキシドをアルミニウム塩の存在下に有機溶媒中で加水分解・縮合し、さらに析出防止剤を添加して得られるコーティング組成物が用いられる。
【0086】
タッチパネル1においては、第1の透明電極3と第2の透明電極4の各透明電極パターンが見立たないよう、コート膜5の屈折率と膜厚とを選択することができる。具体的には、コート膜5の屈折率は、1.50より大きくて1.70以下の範囲内であることが好ましく、膜厚は、40nm〜170nmの範囲内であることが好ましい。コート膜5の屈折率が、1.50より大きくて1.60より小さい場合、膜厚は、60nm〜150nmの範囲内であることがより好ましい。また、コート膜5の屈折率が、1.60以上で1.70以下の範囲内である場合、膜厚は、40nm〜170nmの範囲内であることがより好ましい。
【0087】
タッチパネル1においては、例えば、コート膜5は、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドとを含むコーティング組成物から形成されたものであり、屈折率は1.52、膜厚は100nmである。
【0088】
図2に示すように、タッチパネル1は、第1の透明電極3などが形成された面と、ディスプレイパネル10の視認側の最上位層とを、アクリル系光硬化性樹脂などを用いた接着層9を介して重ね合わせることで、1つの表示装置とすることができる。ここで、接着層9は、コート膜5の上に設けられる。
【0089】
上記の表示装置は、タッチパネル1と、ディスプレイパネル10とを有し、必要に応じて、バックライトを有することができる。
図2では、詳細を省略しているが、ディスプレイパネル10は、公知の表示装置と同様の構成とすることができる。例えば、液晶表示装置の場合、ディスプレイパネル10は、2枚の透明基板の間に液晶層が挟持された構造とすることができる。各透明基板の液晶層に接する側とは反対の側には、それぞれ偏光板を設けることができる。また、各透明基板には、液晶の状態を制御するためにセグメント電極やコモン電極を形成することができる。そして、液晶層は、各透明基板とシール材とによって封止される。
【0090】
図1に示すように、タッチパネル1において、第1の透明電極3と第2の透明電極4の端部には、それぞれ端子(図示されない)が設けられており、その端子から複数の引き出し配線11が引き出される。引き出し配線11は、銀、アルミニウム、クロム、銅またはモリブデンの他、Mo-Nb(モリブデン-ニオブ)合金などのこれら金属を含む合金などを使用した不透明な金属配線とすることができる。引き出し配線11は、第1の透明電極3と第2の透明電極4への電圧印加や、タッチ位置を検出する制御回路(図示されない)に接続される。
【0091】
以上の構成を有するタッチパネル1では、複数の第1の透明電極3および第2の透明電極4に順次電圧を印加して電荷を与える。操作領域のいずれかの箇所に導電体である指が触れると、指先と、第1の透明電極3および第2の透明電極4との間の静電容量結合によってコンデンサが形成される。したがって、指先の接触位置における電荷の変化を捉えることで、いずれの箇所に指が触れたのかを検出することができる。
【0092】
また、タッチパネル1は、制御回路(図示されない)の制御により、第1の透明電極3と第2の透明電極4のいずれか一方に選択的に電圧を印加することもできる。この場合、電圧が印加された透明電極上には電界が形成され、この状態で指などが触れると、接触位置は人の体の静電容量を介して接地されることになる。その結果、対象となる第1の透明電極3または第2の透明電極4の端子(図示されない)と、接触位置との間に、抵抗値の変化が生じる。この抵抗値は、接触位置と、対象となる第1の透明電極3または第2の透明電極4の端子との距離に比例するため、接触位置と、対象となる第1の透明電極3または第2の透明電極4の端子との間に流れる電流値を制御回路が検出することで、接触位置の座標を求めることができる。
【0093】
本発明のタッチパネル1では、第1および第2の透明電極3、4上に設けられたコート膜5の効果により、操作領域において透明電極パターンが目立つことが抑制されている。
【0094】
次に、本発明のタッチパネル1の製造方法について説明する。
図3(a)〜(d)は、本発明の第1の例であるタッチパネルの製造方法を示す工程断面図である。
【0095】
まず、ガラス基板などの透明な基板2を準備する。基板2は、必要に応じて所望の形状にカットし、洗浄する。次いで、基板2の一面に透明導電膜を形成する。なお、基板2と透明導電膜の間にSiOx、SiNx、SiONなどの中間層が形成される場合もある。透明導電膜は、例えばITOであり、スパッタ法や真空蒸着法などを用いて10〜200nmの厚さで成膜する。次いで、透明導電膜の上層側に感光性樹脂などからなるエッチングマスクを形成した状態で、透明導電膜をエッチングし、第1の透明電極3および第2の透明電極4をパターニング形成する。エッチングマスクを除することにより、
図3(a)に示すような、透明電極パターンの形成された透明導電膜基板14が得られる。
【0096】
ここで、透明導電膜基板14の交差部18において、第2の透明電極4は接続部分を介して繋がっているが、第1の透明電極3は分断されている。
【0097】
次に、第1の透明電極3および第2の透明電極4が設けられている側に、感光性の樹脂を塗布した後に露光現像することによって、第2の透明電極4の接続部分に層間絶縁膜19を形成する(
図3(b))。層間絶縁膜19を形成するための感光性樹脂としては、透明性を有するものが用いられる。例えば、アクリル樹脂などが使用可能である。尚、SiO
2を用いて層間絶縁膜19を形成する場合には、マスクを用いたスパッタリング法によって、同様の構造とすることができる。但し、パターニング性を考慮した場合、アクリル樹脂の使用が好ましい。
【0098】
次に、層間絶縁膜19の上に透明導電膜を形成した後、この透明導電膜の表面に感光性樹脂からなるエッチングマスクを形成した状態で、透明導電膜をエッチングする。その後、エッチングマスクを除去し、第1の透明電極3の分断部分を繋ぐよう、層間絶縁膜19の上層に架橋電極20を形成する。これにより、
図3(c)に示す構造が得られる。層間絶縁膜19の上に形成される透明導電膜としては、例えば、ITO膜が挙げられる。その場合、架橋電極20はITOにより形成される。
【0099】
尚、前述した引き出し配線11については、後の工程で銀インクなどを使用して形成される。しかし、上記工程で透明導電膜をエッチングする際に、第1の透明電極3および第2の透明電極4の外周縁の各々に沿うように透明導電膜を残し、引き出し配線11を形成することも可能である。
【0100】
次に、第1の透明電極3、第2の透明電極4および架橋電極20の上に、金属酸化物層形成用のコーティング組成物をフレキソ印刷により塗布する。ここで、コーティング組成物は、金属アルコキシドを金属塩(例えば、アルミニウム塩)の存在下に有機溶媒中で加水分解・縮合し、さらに析出防止剤を添加して得られるものである。次いで、コーティング組成物の塗膜が形成された基板2を40〜150℃(例えば、60℃)の、例えばホットプレート上で乾燥する。その後、100〜300℃(例えば、250℃)の、例えばオーブン内で加熱して、第1の透明電極3、第2の透明電極4および架橋電極20の上に金属酸化物層5を形成する。これにより、
図3(d)に示すタッチパネル基板30が得られる。尚、基板2上の塗膜を、例えばホットプレート上で乾燥した後、この塗膜に紫外線を照射してから、オーブン内で加熱してもよい。
【0101】
こうして得られた本発明のコート膜5は、無機の金属酸化物を主な成分として硬度が高く、高い強度を有する。加えて、有機膜である層間絶縁膜19上であっても内部にクラックを発生させることは無い。
【0102】
次いで、第1の透明電極3と第2の透明電極4の端部の端子(図示されない)から銀インクなどで引き出し配線11を形成してタッチパネル1とする。タッチパネル1は、引き出し配線11を介して、タッチパネルの制御回路(図示されない)に接続される。
【0103】
完成したタッチパネル1は、アクリル系透明接着剤などの接着層9を介して、ディスプレイパネル10の前面に取り付けられる。このとき、必要に応じて、基板2やディスプレイパネル10の角にアライメントマークを設けて位置合わせを行う。
【0104】
ディスプレイパネル10に取り付けられたタッチパネル1では、コート膜5が設けられていることにより、高信頼性が実現される。そして、第1の透明電極3および第2の透明電極4の透明電極パターンが、タッチパネル1の操作領域で目立つことを抑制することができる。
【0105】
図4は、本発明のタッチパネルの別の例の概略構成を示す断面図である。
図4に示すように、タッチパネル101は、透明な基板102を有する。基板102の操作領域に透明電極のパターンが形成されている。すなわち、基板102の上層には2つの異なる方向の位置をそれぞれ検出するための第1の透明電極103と第2の透明電極104とが設けられている。
【0106】
第1の透明電極103および第2の透明電極104は、少なくとも可視光に対する透過率が高く、導電性を有する透明電極材料を用いて形成される。このような導電性を有する透明電極材料としては、例えば、ITOまたはZnOなどを用いることができる。ITOを用いる場合には、十分な導電性を確保できるよう、厚さを10〜200nmとすることが好ましい。
【0107】
第1の透明電極103と第2の透明電極104は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スプレー法、ディップ法またはCVD法などから、下地となる透明な基板102や後述するオーバーコート層107を考慮して最適な方法を選択して形成される。
【0108】
例えば、面状に形成した透明電極を、フォトリソグラフィ技術を利用してエッチング法でパターニングする方法、あるいは、有機溶剤に上記材料からなる導電性フィラーなどを分散した塗料を用い、印刷法により直接、所望のパターンに形成する方法などがある。透明電極の形成工程では、膜厚を精度良く制御できることが好ましい。したがって、形成にあたっては、所望の膜厚を実現し、透明性に優れた低抵抗の膜を形成できる方法を選択することが好ましい。
【0109】
図4に示すように、第1の透明電極103は基板102の上に配置される。そして、第1の透明電極103の上には、本発明のコート膜105が形成されている。コート膜105の形成には、上述した本発明のコーティング組成物が用いられる。そして、コート膜105は、タッチパネル101の操作領域に相当する部分の第1の透明電極103の形成領域と非形成の領域を被覆している。
【0110】
コート膜105の上には、オーバーコート層107が設けられている。オーバーコート層107は、透明性の高いアクリル樹脂から形成された、有機材料からなる膜である。
【0111】
図4に示すように、第2の透明電極104はオーバーコート層107の上に配置される。第2の透明電極104の上には本発明のコート膜106が形成されている。コート膜106の形成には、上述した本発明のコーティング組成物が用いられる。そして、コート膜106は、タッチパネル101の操作領域に相当する部分の透明電極の形成領域と非形成の領域を被覆している。コート膜105、106は、硬度が高く、第1の透明電極103および第2の透明電極104との密着性に優れる。そして、本発明のコート膜106は、無機の金属酸化物を主な成分とするが、オーバーコート層107上でクラックを発生させることは無い。すなわち、コート膜106は、第2の透明電極104とともに有機材料からなる膜であるオーバーコート層107を被覆するよう形成されても、内部にクラックを発生させることが無い。
【0112】
タッチパネル101においては、第1の透明電極103と第2の透明電極104の各透明電極パターンが見立たないように、コート膜105、106の屈折率と膜厚とを選択することができる。具体的には、コート膜105、106の屈折率は1.50より大きく1.70以下の範囲内であることが好ましく、膜厚は40nm〜170nmの範囲内であることが好ましい。そして、コート膜105、106の屈折率が1.50より大きく1.60より小さい場合、膜厚は60nm〜150nmの範囲内であることがより好ましい。また、コート膜105、106の屈折率が1.60以上で1.70以下の範囲内である場合、膜厚は40nm〜170nmの範囲内であることがより好ましい。
【0113】
タッチパネル101においては、例えば、第1の透明電極103および第2の透明電極104は、それぞれ膜厚28nmのITOからなる。この場合、コート膜105、106は、それぞれ、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドとを含む本発明のコーティング組成物から形成されたものであり、屈折率は1.52、膜厚は100nmである。
【0114】
図4に示すように、コート膜106の上には、アクリル系の透明接着剤からなる接着層108が設けられている。タッチパネル101は、この接着層108を介して、ディスプレイパネル110が取り付けられている。
【0115】
以上の構成を有するタッチパネル101では、操作領域のいずれかの箇所に導電体である指が触れると、指先と、第1の透明電極103および第2の透明電極104との間の静電容量結合によってコンデンサが形成される。したがって、指先の接触位置における電荷の変化を捉えることで、いずれの箇所に指が触れたかを検出することができる。
【0116】
タッチパネル101では、第1の透明電極103と第2の透明電極104の上に設けられたコート膜105、106の効果により、高信頼性が実現される。そして、操作領域において透明電極パターンが目立つことを抑制することも可能である。
【0117】
図5および
図6は、本発明のタッチパネルのさらに別の例の構造を示す図である。
図5は本発明のタッチパネルのさらに別の例の構造を模式的に示す平面図である。
図6は
図5のB1−B1’線に沿う断面図である。
【0118】
図5に示すように、タッチパネル201は、透明な基板202を用いて構成され、基板202の操作領域に透明電極パターンが形成されている。すなわち、基板202の一面に形成されたX方向の座標を検出するための第1の透明電極203と、基板202の他面に形成されたY方向の座標を検出するための第2の透明電極204とを有する。尚、以下の説明においては、基板202の一方の面が上方、基板202の他方の面が下方になる。そして、この場合、基板202の他方の面がディスプレイパネル210に装着される側の面となる。
【0119】
基板202は誘電体基板である。基板202の材料としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂などの透明材料が使用される。特に、本発明のコート膜205、206の形成に好適な耐熱性と耐薬品性能を備えた材料を選択することが好ましい。基板202の厚みは、ガラスであれば約0.1mm〜2mmとすることができ、樹脂フィルムであれば10μm〜2000μmとすることができる。
【0120】
図5に示すように、第1の透明電極203と第2の透明電極204は、それぞれ細長い長方形の電極からなる。第1の透明電極203はY方向に伸び、第2の透明電極204はX方向に伸び、それぞれストライプ状に一定間隔で配設されている。また、第1の透明電極203と第2の透明電極204は、互いに直交するように配設されており、全体として格子状となっている。
【0121】
第1の透明電極203および第2の透明電極204は、少なくとも可視光に対する透過率が高く、導電性を有する透明電極材料を用いて形成される。このような導電性を有する透明電極材料としては、例えば、ITOまたはZnOなどを用いることができる。ITOを用いる場合には、十分な導電性を確保できるよう、厚さを10〜200nmとすることが好ましい。
【0122】
第1の透明電極203と第2の透明電極204は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スプレー法、ディップ法またはCVD法などから、下地となる透明な基板202を考慮して最適な方法を選択して形成される。
【0123】
例えば、面状に形成した透明電極をフォトリソグラフィ技術を利用してエッチング法でパターニングする方法、あるいは、有機溶剤に上記材料からなる導電性フィラーなどを分散した塗料を用い、印刷法により直接、所望のパターンに形成する方法などがある。透明電極の形成工程では、膜厚を精度良く制御できることが重要となる。したがって、形成にあたっては、所望の膜厚を実現し、透明性に優れた低抵抗の膜を形成できる方法を選択することが好ましい。
【0124】
図5および
図6に示すように、第1の透明電極203の上には、コート膜205が形成されている。コート膜205は、タッチパネル201の操作領域に相当する部分の透明電極の形成領域と非形成の領域を被覆している。また、
図6に示すように、第2の透明電極204上(図では下側になる)にもコート膜206が形成されている。コート膜206は、タッチパネル201の操作領域に相当する部分の透明電極の形成領域と非形成の領域を被覆している。コート膜205、206は、硬度が高く、第1の透明電極203および第2の透明電極204との密着性に優れる。
【0125】
コート膜205、206の形成には、金属アルコキシドをアルミニウム塩の存在下に有機溶媒中で加水分解・縮合し、さらに析出防止剤を添加して得られる、上述の本発明のコーティング組成物が用いられる。
【0126】
タッチパネル201においては、第1の透明電極203と第2の透明電極204の各透明電極パターンが見立たないように、コート膜205、206の屈折率と膜厚が選択することができる。具体的には、コート膜205、206の屈折率はそれぞれ1.50より大きく1.70以下の範囲内であることが好ましく、膜厚はそれぞれ40nm〜170nmの範囲内であることが好ましい。そして、コート膜205、206の屈折率が1.50より大きく1.60より小さい場合、膜厚は60nm〜150nmの範囲内であることがより好ましい。また、コート膜205、206の屈折率が1.60以上で1.70以下の範囲内である場合、膜厚は40nm〜170nmの範囲内であることがより好ましい。
【0127】
タッチパネル201においては、例えば、第1の透明電極203および第2の透明電極204は、それぞれ膜厚28nmのITOからなる。この場合、コート膜205、206は、それぞれ、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドとを用いて調製されたコーティング組成物から形成されたものであり、屈折率は1.52、膜厚は100nmである。
【0128】
図6に示すように、基板202の一方の面には、アクリル系の透明接着剤からなる接着層208が設けられている。また、接着層208の上には、透明な樹脂から構成されたカバーフィルム207が接着されている。尚、
図5では、カバーフィルム207を省略している。
【0129】
カバーフィルム207は、第1の透明電極203およびコート膜205の保護膜として機能する。尚、カバーフィルム207の代わりに、透明樹脂をコーティングしても良い。この場合は、接着層208を不要とすることができる。
基板202の他方の面には、アクリル系の透明接着剤からなる接着層209を介して、ディスプレイパネル110が取り付けられている。
【0130】
図6では詳細を省略しているが、ディスプレイパネル210は、公知の表示装置と同様の構成とすることができる。例えば、液晶表示装置の場合、ディスプレイパネル210は、2枚の透明基板の間に液晶層が挟持された構造とすることができる。各透明基板の液晶層に接する側とは反対の側には、それぞれ偏光板を設けることができる。また、各透明基板には、液晶の状態を制御するためにセグメント電極やコモン電極を形成することができる。そして、液晶層は、各透明基板とシール材とによって封止される。
【0131】
タッチパネル201においては、第1の透明電極3と第2の透明電極4の端部には、それぞれ端子(図示されない)が設けられており、その端子から複数の引き出し配線(図示されない)が引き出される。引き出し配線は、銀、アルミニウム、クロム、銅またはこれらを含む合金などを使用した不透明な金属配線とすることができる。引き出し配線は、第1の透明電極203と第2の透明電極204への電圧印加や、タッチ位置を検出する制御回路(図示されない)に接続される。
【0132】
以上の構成を有するタッチパネル201では、操作領域のいずれかの箇所に導電体である指が触れると、指先と、第1の透明電極203および第2の透明電極204との間の静電容量結合によってコンデンサが形成される。したがって、指先の接触位置における電荷の変化を捉えることで、いずれの箇所に指が触れたかを検出することができる。
【0133】
タッチパネル201では、第1の透明電極203と第2の透明電極204の上に設けられたコート膜205、206の効果により、操作領域において透明電極パターンが目立つことが抑制されている。
【0134】
以上のように、本実施形態のタッチパネルのさらに別の例では、上記した例と異なり、層間絶縁膜やオーバーコート層など、アクリル樹脂などからなる有機膜の上に本発明のコート膜を設ける構造とはなっていない。本発明のコート膜はこうしたタッチパネルの例に対しても、高強度の電極の保護膜として有効に機能する。そして、透明電極パターンが目立つことを防止する。
【0135】
以上、本発明のタッチパネルについて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。ITOなどの透明電極を用いる多様なタイプのタッチパネルに対し、その透明電極上に保護膜として、本発明のコート膜を適用することが可能である。そして、高信頼性を実現する。併せて、透明電極が目立つことを抑制することもできる。そのとき、本発明のコート膜は、タッチパネル内に設けられた各種の有機膜上に形成されても、内部にクラックなど発生させることが無い。
【実施例】
【0136】
以下、実施例にしたがって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0137】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例などで用いる略記号の意味は、次の通りである。
TEOS:テトラエトキシシラン
C18:オクタデシルトリエトキシシラン
MPS:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
GPS:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
UPS:γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
APS:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
ACPS:γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
MPMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
MTES:メチルトリエトキシシラン
TIPT:テトライソプロポキシチタン
AN:硝酸アルミニウム九水和物
EG:エチレングリコール
HG:2−メチル−2,4−ペンタンジオール(別称:へキシレングリコール)
BCS:2−ブトキシエタノール(別称:ブチルセロソルブ)
IPA:2−プロパノール
【0138】
<合成例1>(コーティング組成物K1の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.6g、HG 38.8g、BCS 36.8g、TEOS 21.7g、GPS 10.6gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、A1液を得た。
【0139】
300mL容量のフラスコ中に、チタンアルコキシドとしてTIPT 4.7gを入れ、そこにHG 58.2gを加え、室温条件下で30分間撹拌して、A2液を得た。
次いで、上述のA1液とA2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K1を得た。
【0140】
<合成例2>(コーティング組成物K2の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.7g、HG 39.2g、BCS 37.3g、TEOS 21.7g、MPS 8.8gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、B1液を得た。
【0141】
300mL容量のフラスコ中に、チタンアルコキシドとしてTIPT 4.7gを入れ、そこにHG 58.9gを加え、室温条件下で30分間撹拌して、B2液を得た。
次いで、上述のB1液とB2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K2を得た。
【0142】
<合成例3>(コーティング組成物K3の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.6g、HG 38.8g、BCS 36.9g、TEOS 21.7g、ACPS 10.5gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、C1液を得た。
【0143】
300mL容量のフラスコ中に、チタンアルコキシドとしてTIPT 4.7gを入れ、そこにHG 58.2gを加え、室温条件下で30分間撹拌して、C2液を得た。
次いで、上述のC1液とC2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K3を得た。
【0144】
<合成例4>(コーティング組成物K4の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.5g、HG 38.6g、BCS 36.7g、TEOS 21.7g、MPMS 11.1gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、D1液を得た。
【0145】
300mLフラスコ中にTIPT 4.7g、HG 57.9gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、D2液を得た。
次いで、上述のD1液とD2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K4を得た。
【0146】
<合成例5>(コーティング組成物K5の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.9g、HG 39.7g、BCS 37.7g、TEOS 15.5g、MTES 13.3gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、E1液を得た。
【0147】
300mLフラスコ中にTIPT 4.7g、HG 59.5gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、E2液を得た。
次いで、上述のE1液とE2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K5を得た。
【0148】
<合成例6>(コーティング組成物K6の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.4g、HG 38.3g、BCS 36.4g、TEOS 21.7g、MPMS 9.3g、C18 3.1gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、F1液を得た。
【0149】
300mLフラスコ中にTIPT 4.7g、HG 57.4gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、F2液を得た。
次いで、上述のF1液とF2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K6を得た。
【0150】
<合成例7>(コーティング組成物K7の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.5g、HG 38.6g、BCS 36.7g、TEOS 15.5g、APS 1.7g、ACPS 6.7g、GPS 8.8gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、G1液を得た。
【0151】
300mLフラスコ中にTIPT 4.7g、HG 57.9gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、G2液を得た。
次いで、上述のG1液とG2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K7を得た。
【0152】
<合成例8>(コーティング組成物K8の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.5g、HG 38.5g、BCS 36.6g、TEOS 15.5g、MPS 1.5g、ACPS 10.5g、UPS 5.9gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、H1液を得た。
【0153】
300mLフラスコ中にTIPT 4.7g、HG 57.7gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、H2液を得た。
次いで、上述のH1液とH2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K8を得た。
【0154】
<合成例9>(コーティング組成物K9の合成)
200mLフラスコ中にAN 13.1g、水3.1gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.3g、HG 95.2g、BCS 36.2g、TEOS 16.3g、MPMS 22.8gを入れ、室温条件下で30分攪拌した。これにより、コーティング組成物K9を得た。
【0155】
<合成例10>(コーティング組成物K10の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.1g、水2.8gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.5g、HG 56.7g、BCS 36.8g、TEOS 13.7g、MPMS 10.9gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、I1液を得た。
【0156】
300mLフラスコ中にTIPT 13.4g、HG 40.1gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、I2液を得た。
次いで、上述のI1液とI2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K10を得た。
【0157】
<合成例11>(コーティング組成物K11の合成)
200mLフラスコ中にAN 11.8g、水2.8gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.6g、HG 44.8g、BCS 36.8g、TEOS 10.5g、MPMS 10.3gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、J1液を得た。
【0158】
300mLフラスコ中にTIPT 17.4g、HG 52.1gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、J2液を得た。
次いで、上述のJ1液とJ2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K11を得た。
【0159】
<合成例12>(コーティング組成物K12の合成)
200mLフラスコ中にAN 11.5g、水2.7gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.6g、HG 33.5g、BCS 36.9g、TEOS 7.2g、MPMS 10.0gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、L1液を得た。
【0160】
300mLフラスコ中にTIPT 21.2g、HG 63.6gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、L2液を得た。
次いで、上述のL1液とL2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K12を得た。
【0161】
<合成例13>(コーティング組成物K13の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.7g、HG 39.1g、BCS 37.1g、TEOS 31.1gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、M1液を得た。
【0162】
300mLフラスコ中にTIPT 4.7g、HG 58.6gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、M2液を得た。
次いで、上述のM1液とM2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K13を得た。コーティング組成物K13には、上述した一般式(II)で示される構造の金属アルコキシドは含有されていない。
【0163】
<合成例14>(コーティング組成物K14の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、EG 13.7g、HG 39.2g、BCS 37.3g、TEOS 28.0g、MTES 2.7gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、N1液を得た。
【0164】
300mLフラスコ中にTIPT 4.7g、HG 58.8gを入れ、室温条件下で30分攪拌して、N2液を得た。
次いで、上述のN1液とN2液とを混合し、室温条件下で30分間撹拌した。これにより、コーティング組成物K14を得た。
コーティング組成物K13には、上記した合成例1〜合成例12のコーティング組成物K1〜K12に比べ、上述した一般式(II)で示される構造の金属アルコキシドが少量しか含有されていないことになる。
【0165】
<合成例15>(コーティング組成物K15の合成)
200mLフラスコ中にAN 12.7g、水3.0gを加えて攪拌し、ANを溶解した。そこに、IPA 145.6g、TEOS 15.5g、MPMS 18.5g、TIPT 4.7gを入れ、室温条件下で30分攪拌した。これにより、コーティング組成物K15を得た。
【0166】
<安定性の評価>
上述した合成例によるコーティング組成物について、コーティング組成物K1〜K12及びK15を、それぞれ、
参考例1、実施例
2〜4、
参考例5、実施例6〜12及び比較例1として、安定性の評価を行った。
安定性の評価方法は、合成したコーティング組成物(K1〜K12、K15)を用い、孔径0.5マイクロメートルのメンブランフィルタで加圧濾過したのち、室温条件下にて1週間放置する。次いで、シリコン基板(100)にスピンコーティングにて成膜したとき、シリコン基板上の塗膜に異物が観察されないものを○評価とし、異物が観察されるものを×評価とした。上記の評価結果を表1に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
<コート膜の成膜方法I>
上述した合成例によるコーティング組成物を用いて、孔径0.5μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、基板上にスピンコート法により塗膜を形成する。この基板を60℃に設定されたホットプレート上で3分間加熱し乾燥する。次いで、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製 UB 011−3A型)を使用し、高圧水銀ランプ(入力電源1000W)を用いて50mW/cm
2(波長365nm換算)の光強度で2分間紫外線照射する。紫外線照射量は6000mJ/cm
2となる。紫外線照射の後、250℃に設定された熱風循環式オーブン内に移し、30分間焼成する。こうして、基板上にコート膜を成膜する。
【0169】
<コート膜の成膜方法II>
上述した合成例によるコーティング組成物を用いて、孔径0.5μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、基板上にスピンコート法により塗膜を形成する。この基板を60℃に設定されたホットプレート上で3分間加熱し乾燥する。次いで、250℃に設定された熱風循環式オーブン内に移し、30分間焼成する。こうして、基板上にコート膜を成膜する。
【0170】
以上、本実施例のコーティング組成物を用いて本実施例のコート膜を成膜する方法について説明した。次に、本実施例のコート膜の評価について説明する。このとき、上述した合成例によるコーティング組成物K1〜K8を用い、適当な基板上に、上記成膜方法Iにより成膜されたコート膜(KL1〜KL8)
をコート膜の
参考例13、
実施例14〜16、参考例17、実施例
18〜20とする。そして、上述した合成例によるコーティング組成物K9〜K12を用い、適当な基板上、上記成膜方法IIにより成膜されたコート膜(KL9〜KL12)を本発明のコート膜の実施例21〜24とする。また、上述した合成例によるコーティング組成物K13を用い、適当な基板上に、上記成膜方法IIにより成膜されたコート膜(KM2)をコート膜の比較例2とする。
【0171】
<屈折率の評価>
基板には、シリコン基板(100)を用いた。上述したように、このシリコン基板上に、成膜方法Iにより成膜された
参考例13、
実施例14〜16、参考例17、実施例
18〜20のコート膜、成膜方法IIにより成膜された実施例21〜24のコート膜、成膜方法IIにより成膜された比較例2および比較例3のコート膜を形成し、屈折率の評価を行った。評価方法は、エリプソメータ(溝尻光学工業所社製、DVA−FLVW)を使用し、波長633nmにおける屈折率を測定することにより行った。
各コート膜の評価結果を、各コート膜形成に使用したコーティング組成物とともに、下記の表2に示す。
【0172】
<クラック評価>
ガラス基板上に、膜厚2μmのアクリル膜を形成した。アクリル膜の形成は、次のようにして行った。まず、アクリル材料組成物を、孔径0.5μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、ガラス基板全面にスピンコート法により塗膜を形成した。次いで、この基板をホットプレート上で2分間加熱乾燥した後、熱風循環式オーブン内に移し、30分間焼成した。これにより、ガラス基板上にアクリル膜が形成された。
【0173】
上記のアクリル膜の上に、成膜方法Iまたは成膜方法IIにより、膜厚100nmの厚さでコート膜を形成する。
そして、アクリル膜の形成されたガラス基板上に、成膜方法Iにより成膜された
参考例13、
実施例14〜16、参考例17、実施例
18〜20のコート膜、成膜方法IIにより成膜された実施例21〜24のコート膜、成膜方法IIにより成膜された比較例2のコート膜を形成し、コート膜のクラック評価を行った。
【0174】
クラック評価の評価基準については、基板上のコート膜において、クラックを生じないものを◎評価とし、面内は生じないがエッジのみクラックが生じるものを○評価とし、全面にクラックが生じるものを×評価とした。
評価の結果、比較例2のコート膜に比べ、
参考例13、
実施例14〜16、参考例17、実施例
18〜24のコート膜は、クラックの発生において改善が見られることが分かった。
【0175】
【表2】
【0176】
<透明導電膜基板>
基板上にパターニングされた透明導電膜が成膜された透明導電膜基板を準備する。基板にはガラス基板を用い、透明導電膜にはITOを用いる。この透明導電膜基板としては、上述した本発明のタッチパネル1に使用した透明導電膜基板14の使用が可能である。ここでは、ITOの膜厚は28nmとした。
【0177】
<タッチパネルの作製>
ITOの膜厚が28nmである上記の透明導電膜基板上に、実施例20のコート膜KL8を100nmの膜厚で成膜した基板を作製した。この基板上に光学接着剤を塗布し、0.7mmの素ガラスを貼り合わせた。次いで、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製 UB 011−3A型)を使用し、高圧水銀ランプ(入力電源1000W)を用いて、50mW/cm
2(波長365nm換算)の光強度で80秒間紫外線照射した。これにより、光学接着剤を硬化させて、特性評価用のタッチパネルとして実施例25のタッチパネルを作製した。
【0178】
次に、コート膜として、実施例20のKL8に代えて、実施例22のコート膜KL10を用いた以外は上記と同様の作製方法により、実施例26のタッチパネルを作製した。また、コート膜として、実施例20のKL8に代えて、実施例23のコート膜KL11を用いた以外は上記と同様の作製方法により、実施例27のタッチパネルを作製した。また、コート膜として、実施例20のKL8に代えて、実施例24のコート膜KL12を用いた以外は上記と同様の作製方法により、実施例28のタッチパネルを作製した。
【0179】
さらに、上記透明導電膜基板上に、コーティング組成物K12を用いて、上記成膜方法Iによりコート膜を成膜し、それ以外は上記実施例25の場合と同様にして、実施例29のタッチパネルを作製した。尚、コーティング組成物K12を用いて成膜方法Iにより成膜したコート膜について、上記と同様の評価方法により測定した屈折率は、1.70であった。
【0180】
そして、比較評価用に、コート膜として、実施例20のKL8に代えて、比較例2のコート膜KM2を用いた以外は上記と同様の作製方法により、比較例3のタッチパネルを作製した。また、上述した透明導電膜基板を用い、コート膜を成膜せず、それ以外は上記と同様の作製方法により、比較例4のタッチパネルを作製した。したがって、比較例4の評価用のタッチパネルは透明電極上にコート膜が形成されていない。
【0181】
<電極パターン見え評価>
実施例25〜実施例29および比較例3、4の評価用のタッチパネルを用い、ITOの電極パターンが目立つかどうかの評価をする、電極パターン見えの評価を行った。
【0182】
評価方法としては、各タッチパネルを黒い布の上に置き、上部からライトを照らした状態で、目視にて観察を行った。そして、比較例4のタッチパネルにおいて、透明電極パターンが見えることを確認した上、他のタッチパネルを観察する。それらの観察の結果、透明電極パターンが見えないものを◎評価とした。そして、透明電極パターンは見えるが、その程度が、コート膜を有しない比較例4のタッチパネルに比べ改善されているものを○評価とし、比較例4のタッチパネルに比べ改善のされていないものを×評価とした。
実施例25〜実施例29並びに比較例3、4の評価用のタッチパネルについて、電極パターン見え評価の結果をまとめ、表3に示す。
【0183】
【表3】
【0184】
以上の評価の結果、表1より、コーティング組成物は金属硝酸塩および析出防止剤を含むことにより、安定性が向上することが分かった。
表2より、コーティング組成物に含有される金属アルコキシドの構造と組成を適切に制御することにより、それから形成されるコート膜は、アクリル樹脂などからなる有機薄膜上でもクラックが生じない、安定な膜として形成されることが分かった。
【0185】
表3より、適切に制御された屈折率のコート膜を電極上に形成することにより、タッチパネルでは電極パターン見えを抑制できることが分かった。
本実施例のコート膜は、いずれも5H以上の硬度を示し、これは、一般的な有機アクリル材料が3H未満に比べて顕著に高い硬度である。