特許第6048166号(P6048166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6048166導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048166
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20161212BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20161212BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J9/02
   C09J11/04
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-11765(P2013-11765)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-231161(P2013-231161A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-85417(P2012-85417)
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】両見 春樹
(72)【発明者】
【氏名】金田 理史
(72)【発明者】
【氏名】滝 香代子
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−147279(JP,A)
【文献】 特開2009−102602(JP,A)
【文献】 特開平09−296158(JP,A)
【文献】 特開2002−338923(JP,A)
【文献】 特開2005−225980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 201/00
C09J 9/02
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ密度が2〜6g/cmの銀粉末(A)、平均粒子径が1μm以下で比重が4以上、かつNi、Cu、Bi、Co、Mn、Sn、Fe、Cr、TiおよびZrからなる群から選択される1種または2種以上の金属粉末、もしくはNiO、WO、SnOのいずれか1つまたは複数のセラミックス混合物である無機粉末(B)、バインダー成分(C)、溶剤(D)を必須成分とする導電性接着剤組成物であって、
銀粉末(A)は、全量に対して20〜50重量%、無機粉末(B)は、銀粉末(A)との総和が全量に対して45〜90重量%、またバインダー成分(C)は、全量に対して1〜25重量%含有することを特徴とする導電性接着剤組成物。
【請求項2】
銀粉末(A)は、平均粒径が1〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
銀粉末(A)は、フレーク状の銀粉末であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
無機粉末(B)は、平均粒子径が0.1〜1μm、かつタップ密度が2〜6g/cmで、球状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
【請求項5】
無機粉末(B)は、球状の無機粉末であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
【請求項6】
バインダー成分(C)は、熱硬化型樹脂組成物及びその硬化剤で構成されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
【請求項7】
溶剤(D)は、酢酸2−n−ブトキシエチル、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチルであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の導電性接着剤組成物を用いてなる電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子に関するもので、詳しくは、低温かつ短時間で硬化でき、固体電解コンデンサの内部電極用として低抵抗且つ保存安定性が優れ且つ低銀含有率の導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性接着剤組成物は、ハンダ代替品として電子素子などのチップ部品をリードフレームや各種基板に接着し、電気的もしくは熱的に導通させる材料として使用したり、電子素子内部や端面の電極として使用されている。
【0003】
電子素子などのチップ部品は、小型化・高性能化が進んでいる。また、生産効率の観点から短時間硬化やコストメリットの観点から低銀含有率化が必要とされている。そのため、低銀含有率かつ短時間硬化可能で、硬化後に低抵抗で熱時強度の高いペーストが要求されている。
【0004】
一般的な低銀含有率化として、卑金属に銀をコートした金属粉のみやそれと銀粉末を併用する方法が選択される。例えば、特許文献1では銅粉に銀をコートした金属粉と銀粉末との併用によって低体積抵抗率化を行なっている。
すなわち、この特許文献1には、平均粒径が5〜60μmの銀コート銅粉、平均粒径が0.5〜15μmの銀粉、室温で液状のエポキシ樹脂を必須成分とし、該成分中に銀コート銅粉が10〜90重量%、銀粉が5〜85重量%含まれており、かつ銀コート銅粉と銀粉の合計量が75〜97重量%である導電性樹脂ペーストが記載されている。
【0005】
しかし、銀をコートした金属粉を使用した場合、三本ロールでの混練時に圧力が高いと銀コート部分が剥がれたり、クラックが入ったりする。電子素子に適用後、経時変化によってクラックが進行し内部の金属が露出することによる抵抗値変化の可能性が存在するので適用しにくい。また,圧力が低いと分散状態が充分ではないため、バラツキが大きくなりやすい。自公転ミキサーや攪拌羽根付きミキサーでも分散が不充分となり性能が発揮されない。
【0006】
一方、特許文献2〜4のように銀粉末のみを使用することで体積抵抗率や熱時強度などの各種特性を維持することが検討されている。
すなわち、特許文献2では、金属粉末、エポキシ樹脂、ビスアルケニル置換ナジイミド、及び、硬化剤とで構成され、かつ、上記金属粉末が60〜90重量%の範囲で配合されていると共に、シリカ、チタニア、アルミナから選ばれる粉体、硬化促進剤、及び、エポキシ樹脂と上記ビスアルケニル置換ナジイミドの希釈剤として作用しかつ硬化時には液体として存在しない有機化合物の少なくとも1種が添加成分として配合されている導電性接着剤が提案されている。
また、特許文献3では、特許文献2を改良し、銀粉末を全量に対して80〜95重量%含有させるが、その際、タップ密度が3.5g/ml以上で8.0g/ml以下の銀粉末(a)を全量に対して40〜95重量%、さらにタップ密度が0.1g/ml以上で3.5g/ml未満の銀粉末(b)を50重量%以下とした導電性接着剤が提案されている。
また、特許文献4では、導電性充填剤95重量%〜50重量%及び樹脂バインダー5重量%〜50重量%、及び導電性充填剤と特定の希釈剤とからなり、樹脂バインダーが、エポキシ樹脂、ジシアンジアミド、硬化促進剤及び特定の硬化剤からなり、硬化促進剤として、エポキシ化合物にジアルキルアミンを反応して得られ、分子中に特定の官能基を有する化合物の粉末表面を酸性物質で処理して得たものを用いる導電性樹脂組成物が提案されている。
これらは体積抵抗率や熱時強度などの各種特性を維持することができるものの、銀含有率が50重量%以上なので、導電性接着剤組成物へのコストアップに繋がってしまう。
【0007】
これに対して、低銀含有率で低体積抵抗率を実現するために、特許文献5では、平均粒径が0.5〜2μmで、かつタップ密度が3〜7g/cmであり、さらに比表面積が0.4〜1.5m/gである導電性粉末と特定の有機成分とを必須成分とし、ガラスフリットを含有するプラズマディスプレイ用導電ペーストが提案されている。
特許文献5によれば、低銀含有率であり低コスト化が実現できるが、590℃で15分間保持することでガラスフリットを溶融し、再凝固によって接着力を発現させている。また、その際ガラスフリットは銀の焼結助剤として働き低体積抵抗率化を行なっている。一般的に樹脂などの有機物は590℃という高温では分解・蒸発してしまう。
こうした導電ペーストは、プラズマディスプレイのような高温で熱処理しても周辺部材へ影響を与えない場合に適用される。
しかしながら、タンタルコンデンサやアルミ固体電解コンデンサなど各種電子素子の内部電極や端面電極の接着に際しては、高くても300℃以下で熱処理しなければならない。この熱処理後には樹脂などの有機物は存在し得るし、接着力はその樹脂によって発現させている。
特許文献5のような焼成型銀ペーストは、高温での熱処理を必要とし、300℃以下で熱処理すると、樹脂は残存するが硬化反応をさせることはできないし、ガラスフリットも溶融しないため、上記のような高温熱処理による周辺部材の劣化を考えて300℃以下の熱処理でないといけない分野においては、接着力が弱くて実用性がない。
【0008】
こうした状況の下、半導体などのチップ部品に使用される低温で短時間硬化でき低抵抗且つ、高熱時強度、低銀含有率化、高温耐湿性を実現しうる導電性接着剤組成物が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3526183号公報
【特許文献2】特許3484957号公報
【特許文献3】特許3975728号公報
【特許文献4】特許4467120号公報
【特許文献5】特許3520798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、前述した従来技術の問題点に鑑み、低温かつ短時間で硬化でき、低抵抗かつ高熱時強度、低銀含有率化、高温耐湿性を実現しうる導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銀粉末、無機粉末、バインダー成分、溶剤を必須成分とする導電性樹脂組成物であって、タップ密度が2〜6g/cmの銀粉末に、平均粒子径が1μm以下で比重が4以上の金属粉末とバインダー成分を特定量配合すると、低温で短時間硬化でき、低抵抗且つ高熱時強度、低銀含有率化、高温耐湿性を実現した導電性接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の第1の発明によれば、タップ密度が2〜6g/cmの銀粉末(A)、平均粒子径が1μm以下で比重が4以上、かつNi、Cu、Bi、Co、Mn、Sn、Fe、Cr、TiおよびZrからなる群から選択される1種または2種以上の金属粉末、もしくはNiO、WO、SnOのいずれか1つまたは複数のセラミックス混合物である無機粉末(B)、バインダー成分(C)、溶剤(D)を必須成分とする導電性接着剤組成物であって、
銀粉末(A)は、全量に対して20〜50重量%、無機粉末(B)は、銀粉末(A)との総和が全量に対して45〜90重量%、またバインダー成分(C)は、全量に対して1〜25重量%含有することを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、銀粉末(A)は、平均粒径が1〜30μmであることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、銀粉末(A)は、フレーク状の銀粉末であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、平均粒子径が0.1〜1μm、かつタップ密度が2〜6g/cmで、球状であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、無機粉末(B)は、球状の無機粉末であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、バインダー成分(C)は、熱硬化型樹脂組成物及びその硬化剤で構成されることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、溶剤(D)は、酢酸2−n−ブトキシエチル、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチルであることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0021】
一方、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明の導電性接着剤組成物を用いてなる電子素子が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の導電性接着剤組成物は、銀粉末として特定のタップ密度のものを特定量配合し、金属粉末として特定の比重、粒径のものを特定量配合しており、低銀含有率であるために、低コスト化できる。また、バインダー成分を特定量用いているため、タンタルコンデンサやアルミ固体電解コンデンサなど各種電子素子の内部電極や端面電極に適用したとき、低温で短時間硬化でき低抵抗且つ高熱時強度、高温耐湿性を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
1.導電性接着剤組成物
本発明の導電性接着剤組成物は、銀粉末と、金属粉末、バインダー成分、溶剤が配合された導電性接着剤において、導電性付与に十分な量の銀粉末を含有させ、その際、該銀粉末のタップ密度が2〜6g/cm、銀含有率を低下させるために十分な量の平均粒子径が1μm以下で比重が4以上の金属粉末を含有させ、バインダー成分の配合量も特定量としている。
【0025】
A.銀粉末
本発明において重要な銀粉末(A)は、導電性接着剤組成物の導電性成分である。該銀粉末は、タップ密度や粒径の大きさによって特性が異なるので、特にタップ密度2〜6g/cmの銀粉末を使用する必要がある。好ましいタップ密度は、3〜5.5g/cmである。なお、上記を満たすのであれば、銀粉末を2種類以上入れても差し支えない。
【0026】
ここで、タップ密度とは、金属粉末などの粉体の嵩密度であり、JIS Z2500に準拠し、シリンダー容量:20mm、タップストローク:20mm、ストローク回数:50回の条件で測定した数値である。タップ密度が2〜6g/cmの銀粉末は分散性が優れている。一方、2g/cmより小さいと分散性が劣るので、樹脂接着剤組成物中に高充填できない。タップ密度が6g/cm以上の銀粉末は現在のところ入手困難である。
【0027】
粒径の大きさは、平均粒径で1〜30μmが望ましく、上限値としては、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。この範囲で粒形は大きいものと小さいものとの混合が望ましい。なお、このような混合は、上記タップ密度に反映されることになる。また、平均粒径は、マイクロトラックで測定した時の値を示す。
【0028】
形状は特に制限されないが、また、価格や取扱性、保存性、得られる特性等を考慮した場合、フレーク状の銀粉末の適用が望ましい。但し、導電性接着剤の使用方法や求められる特性に合わせて球状粉や針状粉の粉末を適用してもよい。
【0029】
また、銀粉末の配合割合は、20〜50重量%の範囲内に設定される。50重量%以内であればコストメリットがあるが、20重量%未満であると電気伝導性が劣り、本発明としての役割を果たさなくなる。コストメリットの観点から、好ましいのは、20〜45重量%の範囲、より好ましいのは、20〜40重量%である。
【0030】
通常、銀粉末は鉛を含まない純粋な銀を用いるが、本発明の目的を損なわない範囲でSn、Bi、In、Pd、Ni、Cuなどやそれらとの合金、それらとの混合粉、それらの周りに銀を被覆した銀被覆金属粉を採用しても良い。
【0031】
B.無機粉末
無機粉末(B)は、導電性接着剤組成物の銀粉末(A)を減らす代わりに補填する成分である。無機粉末(B)としては、比重が4以上の必要がある。
【0032】
無機粉末としては、特に限定されないが、金属粉末の場合、Ni、Cu、Bi、Co、Mn、Sn、Fe、Cr、Ti、Zrなどが挙げられ、セラミックス粉末の場合、WO、SnO、NiOなどが挙げられる。これらは、いずれも比重が4以上の無機粉末である。比重が4未満の無機粉末、例えばAl、Mg、Ca、MgOであると、比重が小さい分同じ重量を添加すると体積換算で大きくなるので、主たる導通の銀粉末同士の接触を阻害し、体積抵抗率が高くなるという問題が発生し好ましくない。
無機粉末(B)のタップ密度は、2〜6/cmのものが好ましい。より好ましいタップ密度は、3〜5.5g/cmである。タップ密度が2g/cmより小さいと分散性が劣るので、樹脂接着剤組成物中に高充填できないことがある。タップ密度が6g/cm以上の銀粉末は現在のところ入手困難である。
【0033】
無機粉末(B)の配合割合は、その種類にもよるが、銀粉末(A)との総和が全量に対して45〜90重量%に設定される。45重量%未満であると電気伝導性が劣り、90重量%を超えると接着強度が不十分のため、本発明としての役割を果たさなくなる。好ましいのは、50〜85重量%の範囲、より好ましいのは、50〜75重量%である。
【0034】
無機粉末(B)の粒径は、平均粒子径が1μm以下であり、0.1〜1μmのものが好ましい。1μmを超えると導電性を担保する銀粉末同士の接触を妨げるので電気伝導性が劣化することがある。細かい無機粉末を使用することで、銀粉末同士の導通を妨げないようになる。従来技術には、銅やニッケルについてはその表面が空気中では酸化を受け易いため、粉末表面に酸化防止のための特別な処理を施したり、あるいは導電性接着剤の硬化処理の際に還元雰囲気中で硬化させることが行われているが、本発明では、金属粉末の酸化膜を取り除くような手段を取る必要はない。
また、平均粒子径は、マイクロトラックで測定した時の値を示す。
【0035】
無機粉末の形状については、最も高導電性が得られることから球状粉が好ましい。但し、導電性接着剤の使用方法や求められる特性に合わせてフレーク状や針状粉の無機粉末を適用してもよい。なお、上記を満たすのであれば、無機粉末を2種類以上入れても差し支えないし、本発明の目的を損なわない限り、1μm以上のものを添加することもできる。
【0036】
また、導電性接着剤組成物には、上記の無機粉末(B)以外の、例えば、カーボン、シリカ、ガラスフリットなどの比重が4未満の無機粉末を入れることも可能である。これらを入れることで、塗布性を改善することができる。好ましいのは、カーボン、シリカである。
【0037】
C.バインダー成分
バインダー成分(C)は、樹脂を主成分とし、必要により硬化剤や硬化促進剤が含有される。樹脂としては、特に限定されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタンジエン型ノボラックエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有したエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール骨格を含有したエポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、アクリルウレタン変性エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などの各種変性ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類などが挙げられる。好ましいのは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である。これらの熱硬化性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で2種類以上用いても差し支えない。
本発明では、熱硬化型の樹脂を使用するが、前記特許文献5ではUV硬化性樹脂を用いている。しかし、UV硬化性樹脂の場合、紫外線硬化装置が必要になり本発明には適用できない。
【0038】
一方、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と異なり、加熱により変形するため一般的な熱硬化条件である100〜300℃程度の熱処理によって、形状が変形してしまうので、熱時強度が劣化してしまう。
【0039】
上記の熱硬化性樹脂には、硬化剤を配合しておくと硬化性を高めることができる。例えば、エポキシ樹脂などは、ジシアンジアミドなどに代表されるアミン系の硬化剤やノボラック型フェノール樹脂や4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系の硬化剤が使用される。また、ノボラック型フェノール樹脂は、ヘキサミンなどが硬化剤として利用される。フェノキシ樹脂やウレタン樹脂などは、ポリイソシアネートに代表される硬化剤がある。また、硬化剤とともに硬化促進剤を配合することもできる。本発明の目的を損なわない範囲でこれらを適宜使用することができる。
【0040】
本発明において、硬化剤および硬化促進剤を含めたバインダー成分の配合割合は、密着性、導電性をさらに向上させるため、全量に対して1〜20重量%配合する。バインダー成分は、5〜25重量%配合することが好ましく、10〜20重量%配合することがより好ましい。1重量%未満では接着強度や熱時強度が低下することがあり、また、25重量%を超えると導電性が悪化するなどの弊害が生じることがある。
【0041】
D.溶剤
通常、バインダー樹脂が固形であれば、溶剤(D)に溶解させて使用する。溶剤(D)としては、接着剤組成物が硬化する際、溶剤成分が揮発・蒸発し、又は分解して飛散してしまう有機化合物が使用できる。
一般的には、酢酸2−n−ブトキシエチル、酢酸2−(2エトキシエトキシ)エチル、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル等が挙げられる。好ましいのは、酢酸2−n−ブトキシエチルである。これらは単独でも、複数種を混合して使用してもよい。
【0042】
溶剤は、1〜40重量%配合することが望ましい。溶剤は、5〜40重量%配合することが好ましく、10〜40重量%配合することがより好ましい。1重量%未満であると導電性接着剤の粘度が高くなって塗布性を悪化させる場合があり、逆に、40重量%を超えて配合すると粘度が低すぎて塗布性を悪化させたり、接着性に悪影響を及ぼすことがある。
【0043】
2.電子素子
本発明の導電性接着剤組成物は、タンタルコンデンサやアルミ固体電解コンデンサなどの電子素子の内部電極や端面電極として使用するためにディッピングやスクリーン印刷などによって塗布した後に、加熱硬化させる。その他としては、積層セラミックスコンデンサやチップ抵抗器などの電子素子などに使用することが可能である。
【0044】
通常、タンタルコンデンサやアルミ固体電解コンデンサは、タンタル等の弁作用金属を加圧成形し、焼結した焼結体からなる陽極体の表面を酸化して形成した誘電体酸化皮膜層、二酸化マンガンや導電性高分子等の導電性材料からなる固体電解質層、カーボン層、銀層を順次形成した後、陽極リードフレームと陽極リード線は抵抗溶接で、陰極リードフレームと銀層は、導電性接着剤を用いて接続し、外装樹脂で被覆することにより作製している。
近年、貴金属である銀価格の上昇に伴い、タンタルコンデンサやアルミ固体電解コンデンサには、低い等価直列抵抗(ESR)だけでなく、低価格のペーストが要求されている。銀粉末以外の金属粉を使用すると抵抗値が大きくなり、使用できるほどのESRが実現できなかった。
しかし、本発明では、前記の通り、タップ密度が2〜6g/cmの銀粉末(A)を、全量に対して20〜50重量%含有し、平均粒子径が1μm以下で比重が4以上の無機粉末(B)を、銀粉末(A)との総和が全量に対して45〜90重量%としたため、金属粉末が硬化物の導電性を劣化させず、銀粉末の含有率を低下させコストメリットを実現させることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例1〜12、及び比較例1〜12の各試料は混練後、下記に示す評価を行なった。
【0046】
(1)体積抵抗率の測定
アルミナ基板上に幅0.6mm、長さ60mmの長方形状に試料(導電性接着剤)を印刷し、180℃のオーブン中に60分間放置し、硬化した後、室温まで冷却し、導電性接着剤上の両端で抵抗値を測定した。続いて、印刷し硬化した熱導電性接着剤の膜厚を測定し、抵抗値と膜厚から体積抵抗率を求めた。
【0047】
(2)接着強度の測定
アルミナ基板上に試料(導電性接着剤)を滴下し、1.5mm角のシリコンチップを載せ、180℃のオーブン中に60分間放置して硬化させた。室温まで冷却した後、この基板に対し水平方向からシリコンチップに力を加え、該シリコンチップが剥がれた時の力を接着強度として測定した。
【0048】
(3)熱間強度の測定
銅基板上に試料(導電性接着剤)を滴下し、1.5mm角のシリコンチップを載せ、180℃のオーブン中に60分間放置して硬化させた。室温まで冷却した後、350℃に加熱されたホットプレート上に、この銅基板を20秒間放置し、その後、過熱したまま銅基板に対し、水平方向からシリコンチップに力を加え、このシリコンチップが剥がれたときの力を熱間強度として測定した。
【0049】
(4)塗布性の評価
試料(導電性接着剤)を用いて、400メッシュのスクリーンにて幅100μm、長さ20mmの直線を10本印刷し、印刷面に欠け、かすれ、ダレ等があるものは不可(×)、それらが確認されない場合は良(○)とした。
【0050】
(5)高温耐湿性
上記(1)で作製した測定試料を、湿度85%RH、温度85℃で500時間保持した後、室温まで冷却し、(1)と同様にして体積抵抗率を測定した。そして、(1)で測定した体積抵抗率を除し倍率を求めた。その倍率が1.5倍以内であれば良(○)とし、それ以外の場合は不可(×)とした。
【0051】
(6)コストメリット
銀含有率が50重量%以下の場合を良(○)、それを超える場合を不可(×)とした.
【0052】
(7)総合評価
上記の4項目において、体積抵抗率は1×10−3Ω・cm以下、接着強度は30N以上、熱間強度は4N以上、塗布性については良(○)、高温耐湿性については良(○)、コストメリットについては良(○)の条件を全て満たしたもののみ合格(○)とし、1つでも条件に満たさないものがある場合は不合格(×)とした。
【0053】
(8)各成分
表1中、各成分の濃度は重量%で示している。
球状銀粉Aはタップ密度が4.1g/cm、平均粒径1.5μmの銀粉末、フレーク状銀粉Bはタップ密度が3.8g/cm、平均粒径9.0μmの銀粉末、フレーク状銀粉Cはタップ密度が2g/cm、平均粒径10.0μmの銀粉末、球状AgコートCu粉Dは平均粒径6μmである。
球状Ni粉Aは平均粒子径が0.5μmでタップ密度が3.5g/cmのNi粉末、球状Ni粉Bは平均粒子径が2μmでタップ密度が3.2g/cmのNi粉末、球状Cu粉Aは平均粒子径が0.5μmでタップ密度が3.3g/cmのCu粉末、球状Al粉Aは比重が2.7で平均粒径が0.5μmでタップ密度が2.3g/cmのAl粉末、球状WO粉末Aは比重が7.16で平均粒径が0.3μmでタップ密度が3.0g/cmのWO粉末である。
また、エポキシ樹脂Aは、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(三菱化学株式会社:jER1256)を使用し、エポキシ樹脂Bは、ビスフェノールA型液体エポキシ樹脂(三菱化学株式会社:jER828)を使用した。フェノール樹脂は、ノボラックフェノール樹脂(明和化成株式会社:MEHC−7800H)を使用した。ポリイミド樹脂は、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3ジカルボキシイミド)(丸善石油化学株式会社:BANI−M)を用いた。
さらに硬化剤Aとしてブロックイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社:MILLIONATE MS−50)を用い、硬化剤Bとしてヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社:ヘキサミン)を用い、硬化剤Cとしてジシアンジアミド(三菱化学株式会社:DICY7)を使用した。硬化促進剤は2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2P4MHZ−PW)を使用した。
ガラスフリットの組成(酸化物表記、%)は、酸化ビスマス(85)、酸化珪素(7.5)、酸化ホウ素(2.3)、酸化亜鉛(2.1)および酸化アルミニウム(1.1)である。
感光性ポリマーは日油株式会社のX−4007を使用した。光重合開始剤は2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1である。増感剤は日本化薬株式会社のアルキルチオキサントン(製品名カヤキュアーDETX−S)を使用した。可塑剤は昭和エーテル株式会社のフタル酸ジブチル(製品名:DBP)を使用した。チキソトロピー剤として2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテートに溶解したSiO(濃度15%)を用いた。
溶剤Aは酢酸2−n−ブトキシエチル(関東化学株式会社:酢酸2−n−ブトキシエチル)、溶剤Bは酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル(関東化学株式会社:酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル)を用いた。溶剤Cは酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル(関東化学株式会社:酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル)を使用した。
【0054】
(実施例1〜12)
表1に記載した銀粉末、金属粉末成分、バインダー樹脂、溶剤を原料として、接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤を得た。
この接着剤を用いて、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、アルミナや銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表1に併記した。
【0055】
(比較例1〜9)
表2に記載した銀粉末、金属粉末成分、バインダー樹脂、溶剤を原料として、接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、比較用の導電性接着剤を得た。
この接着剤を用いて、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、アルミナや銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表2に併記した。
【0056】
(比較例10〜12)
比較用に、導電性接着剤として、前記特許文献2を参考にしてポリイミド樹脂化合物を成分として配合したもの(比較例10)、前記特許文献1を参考にして銀コート銅粉を成分として配合したもの(比較例11)、また、前記特許文献5を参考にして記載のUV硬化性樹脂、およびガラスフリットを成分として配合したもの(比較例12)を作製した。実施例1〜12と同様にして、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、アルミナや銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果を表2に併記した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
「評価」
表1から明らかなように、実施例1〜12の導電性接着剤は、導電性、接着性、耐熱性、塗布性のいずれも優れていることが分かる。なお、実施例2、12は、やや体積抵抗率が高く、実施例5は接着強度がやや弱いが、実用上問題の無いレベルである。
これに対し、表2から明らかなように、比較例1は銀粉末が50重量%を超えたため、コストメリットが無く不可となった。比較例2は銀粉末が20重量%未満のため、体積抵抗率が高く不可となった。比較例3は銀粉末と無機粉末の総和が全体の90重量%を超えているため、接着強度や熱間強度が弱く、塗布性も悪く不可となった。
また、比較例4はバインダー樹脂が1重量%未満のため、接着強度が弱く、塗布性も悪く不可となった。比較例5は樹脂が25重量%を超えたため、体積抵抗率が高く不可となった。比較例6は溶剤が5重量%未満のため、塗布性が悪く、また、銀粉、無機粉末が多くなったことにより接着強度や熱間強度が弱く不可となった。比較例7は溶剤が40重量%を超え、銀粉末と無機粉末の総和が全体の45重量%未満となったため、塗布性が悪く不可となった。比較例8は平均粒径が1μmを超える無機粉末を使用したため体積抵抗率が高く不可となった。比較例9は比重が4以下の無機粉末を使用したため体積抵抗率が高く不可となった。
さらに、比較例10は特許3484957(特許文献2)を参考に評価したが、銀粉末が50重量%を超えたため、コストメリットが無く不可となった。比較例11は特許文献1を参考に評価したが、銀コート銅粉を使用しており、高温耐湿性で体積抵抗率変化が大きく不可となった。比較例12は特許文献5を参考に評価したが、180℃の熱処理では銀粉末が焼結しなかったため、体積抵抗率が高く、また、樹脂が乾燥しているだけであるし、ガラスフリットが溶融していないので強度や熱時強度が弱く不可となった。
【0060】
本発明によれば、銀粉末、金属粉末、バインダー成分、溶剤を必須成分とし、特定したタップ密度の銀粉と特定した比重と粒径の無機粉末を特定量組合せて調整したため、20〜50重量%の銀含有率で導電性、室温や熱時での接着性、高温耐湿性、コストメリット、作業性を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の導電性接着剤組成物は、銀粉末として特定のタップ密度のものを特定量配合し、無機粉末として特定の比重、粒径のものを特定量配合しているため、タンタルコンデンサやアルミ固体電解コンデンサなど各種電子素子の内部電極や端面電極に適用できる。低い等価直列抵抗(低ESR)が実現でき,加えてリフロー工程によってコンデンサ素子の抵抗値変化が抑制されるため、情報通信機器やパーソナルコンピュータのCPUの高周波化に伴い、低ESRが要求されているタンタル固体電解コンデンサなどの電極として特に好ましく適用できる。