特許第6048301号(P6048301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048301
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20161212BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H04N5/225 E
   G03B17/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-92306(P2013-92306)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-216824(P2014-216824A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】八木 成樹
【審査官】 高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−83878(JP,A)
【文献】 実開平4−57971(JP,U)
【文献】 特開昭58−148572(JP,A)
【文献】 特開2009−198613(JP,A)
【文献】 特開2012−49613(JP,A)
【文献】 特開2011−82826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/257
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像素子を保持する保持部と、
前記保持部を固定する固定部と、
前記保持部の熱を前記固定部に伝達する伝熱部材と
を備え、
前記伝熱部材は前記固定部に対して接触した状態で移動可能に保持されている電子機器。
【請求項2】
前記伝熱部材と前記固定部との間に配置された弾性部材をさらに備え、
前記伝熱部材は、前記弾性部材によって移動可能に保持されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記伝熱部材は、前記移動の方向に沿った面を有し、前記面で前記固定部と接触する請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記伝熱部材は、前記固定部に嵌合する凹部を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造を有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルカメラにおいては、撮像素子の高画素化や動画像データの高フレームレート化等によって撮像素子並びに画像処理回路部での発熱が問題となっている。特に撮像素子が高温になることで熱ノイズが発生して撮像した画像の画質を悪化させている。そのため、撮像素子を出来るだけ低温状態に維持するための放熱構造が望まれている。ここで放熱構造として撮像素子の取付け位置を調整する機構を搭載する場合には、カメラの大型化を防ぐ機構を採用しなければならないことから、弾性部材を用いた撮像素子取付機構に弾性変形可能な熱伝導シートを組み合わせた放熱構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−68328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のデジタルカメラにおいては、撮像素子を取付ける取付部とは別に熱伝導シートを配置しているため、熱伝導シートを配置するスペースを確保する必要がある。また撮像素子の調整移動量に追従するために弾性変形可能な熱伝導シートを厚くする必要がある。一般的に弾性材料の熱伝導率を高くすることは難しく、また部材の厚さ方向に熱を伝える場合は熱の伝わり難さを示す熱抵抗が部材の厚さに比例する。従って熱伝導シートを厚くした放熱構造ではスペース確保が必要な上に、効率的な放熱を行なうことができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、省スペースで撮像素子の放熱を効果的に行なう放熱構造を有する電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子機器は、像素子を保持する保持部と、前記保持部を固定する固定部と、前記保持部の熱を前記固定部に伝達する伝熱部材とを備え、前記伝熱部材は前記固定部に対して接触した状態で移動可能に保持されている。


【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、省スペースで撮像素子の放熱を効果的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係るデジタルカメラの前面を示す斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係るデジタルカメラの背面を示す斜視図である。
図3】第1の実施の形態に係るデジタルカメラの内部構成を示す断面図である。
図4】第1の実施の形態に係る撮像素子取付部材の平面図である。
図5】第1の実施の形態に係る撮像素子取付部材の取付構造を示す図である。
図6】製造誤差による撮像素子の傾きの調整を示す図である。
図7】第2の実施の形態に係る撮像素子取付部材の取付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電子機器としてのデジタルカメラについて説明する。図1は第1の実施の形態に係るデジタルカメラの前面を示す斜視図である。デジタルカメラ2の前面にはレンズ鏡筒4、レンズ鏡筒取外しボタン6が設けられている。レンズ鏡筒4は、撮影レンズ8を含む光学系を備え、デジタルカメラ2のカメラボディ20(図3参照)に着脱可能に装着されている。レンズ鏡筒取外しボタン6は、カメラボディ20に装着されたレンズ鏡筒4を取り外すときに押下される。
【0010】
デジタルカメラ2の上面には、電源をオン/オフする電源ボタン10、撮影を指示するレリーズボタン12、動画撮影の開始または停止を指示する動画撮影ボタン14が設けられている。
【0011】
図2は第1の実施の形態に係るデジタルカメラの背面を示す斜視図である。デジタルカメラ2の背面には、撮影画像や各種情報を表示する表示モニター16、撮影モードを設定するための撮影モード設定ダイヤル18が設けられている。撮影モード設定ダイヤル18では、静止画像撮影モードS、動画撮影モードM、画像再生モードPを設定することができる。
【0012】
図3は第1の実施の形態に係るデジタルカメラの内部構成を示す断面図である。デジタルカメラ2のカメラボディ20の前面部には、レンズ鏡筒4のレンズ側マウント部4aを締結するためのボディ側マウント部2aが設けられている。カメラボディ20の内部には、撮像素子22、撮像回路基板24、撮像素子取付部材(撮像素子固定板)26、制御回路部28が配置されている。
【0013】
撮像素子22は、撮像センサー22a、撮像センサー22aを納める筐体22b、筐体22bの前面を封止する封止ガラス22cにより構成され、撮影レンズ8を介して撮像センサー22aの撮像面に被写体光が入射した場合、撮像センサー22aにより光電変換が行なわれ画像信号が出力される。撮像素子22の背面部は、撮像回路基板24と電気的に接続されている。撮像素子22から出力された画像信号は、撮像回路基板24を介して制御回路部28に入力されて所定の処理が行なわれ、撮影前の被写体像や撮影画像が表示モニター16に表示される。撮像回路基板24は、撮像素子22の背面の中央部に対向する部分が開口形状となっており、撮像素子22は、撮像回路基板24の開口部を介して撮像素子取付部材26に固定されている。
【0014】
撮像素子取付部材26は、図4の平面図に示すように固定ネジ34によってカメラボディ20に固定するための3つの固定部32を有している。即ち固定部32は、固定ネジ34を貫通させる孔を有し、撮像素子取付部材26の上端中央部に1カ所、下端の左右両端部にそれぞれ1カ所の合計3カ所、設けられている。
【0015】
カメラボディ20内には、カメラボディ20の背面側に向かって突出した形状を有する、熱伝導性の高い金属によって形成されたカメラボディ側固定部36が設けられている。図5に示すように撮像素子取付部材26の固定部32とカメラボディ側固定部36との間には、熱伝導シート38、熱伝導部材40、弾性バネ42が配置されている。
【0016】
熱伝導シート38は、弾性変形可能な熱伝導部材としてのシート材であって固定部32と熱伝導部材40とに密着した状態で配置される。なお熱伝導シート38の厚さについては後述する。
【0017】
熱伝導部材40は、熱伝導性の高い金属によって形成されている。熱伝導部材40は、カメラボディ側固定部36側に開口を有する凹形状の断面形状を有し、その凹形状部分にカメラボディ側固定部36の先端部が嵌合されている。弾性バネ42は、熱伝導部材40の凹形状部分内に配置され、熱伝導部材40及び熱伝導シート38を撮像素子取付部材26側に押圧している。
【0018】
上述のように撮像素子取付部材26とカメラボディ側固定部36との間に熱伝導シート38、熱伝導部材40及び弾性バネ42を配置した状態で、固定ネジ34により、撮像素子取付部材26の固定部32がカメラボディ側固定部36に固定される。
【0019】
カメラボディ20に対する撮像素子取付部材26の位置は、固定ネジ34の締め付け高さを変えることにより変更することが可能であり、各固定ネジ34の締め付け高さを変えることにより、撮像素子22の撮像面の傾きを変化させることができる。
【0020】
ここで、撮像素子取付部材26の位置を変更させた場合においても、熱伝導部材40は、カメラボディ側固定部36と嵌合状態、即ちカメラボディ側固定部36に対して接触した状態を保ちながら、熱伝導シート38と共に追従する。また熱伝導シート38は、弾性変形可能な材料であるため、撮像素子固定部材26が傾いた状態であっても、撮像素子取付部材26と熱伝導部材40に対して密着状態を保ち、確実な伝熱が可能となる。
【0021】
次に、製造誤差による撮像素子22の傾きについて説明する。図6は製造誤差による撮像素子22の傾きの調整を示す図である。撮像素子22は、デジタルカメラ2の製造誤差により撮像センサー22aの撮像面が、図6(a)に示すように撮影レンズ8の光軸に直交する方向から傾く場合がある。そのため各固定ネジ34の締め付け高さを変化させ、撮像センサー22aの撮像面が図6(b)に示すように撮影レンズ8の光軸に直交するように、撮像素子22の傾き調整が行なわれる。
【0022】
ここで、製造誤差によって撮像レンズ8の光軸に直交する方向から撮像センサー22aの撮像面が傾いた場合の傾きの最大角度をθをとし、撮像レンズ8の光軸から撮像素子取付部材26の固定部32の孔の中心までの長さをLとした場合、撮像センサー22aの撮像面を撮影レンズ8の光軸に直交させるためには、δ(=L・tanθ)だけ固定ネジ34の締め付け高さを変える必要がある。従って、熱伝導シート38の厚さは、δだけ弾性変形可能な厚さに決定される。これによって従来よりも薄い熱伝導シート38を配置することができる。
【0023】
第1の実施の形態に係るデジタルカメラ2によれば、カメラボディ側固定部36を熱伝導部材40に嵌合させ接触面積を大きくしたことにより、撮像素子22で発生した熱を撮像素子取付部材26、熱伝導シート38、熱伝導部材40を介しカメラボディ側固定部36に効率良く伝達することができるので、効率的に放熱を行なうことができる。
【0024】
また熱伝導シート38を薄くしたことにより、熱伝導シート38から熱伝導部材40へ熱が伝達し易くなるので、効率的に放熱を行なうことができる。また熱伝導シート38を薄くしたことによりコストを低減することができ、またデジタルカメラ2内部における省スペース化を実現することができる。
【0025】
なお、第1の実施の形態に係るデジタルカメラ2において、カメラボディ側固定部36と熱伝導部材40との密着度を高めるために、カメラボディ側固定部36と熱伝導部材40との間に伝熱性の充填物を充填してもよい。
【0026】
次に第2の実施の形態に係るデジタルカメラ2について説明する。図7は第2の実施の形態に係る撮像素子取付部材26の取付構造を示す図である。なお第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。また撮像素子取付部材26は、熱伝導性の高い金属材料によって形成された固定ネジ50によってカメラボディ側固定部54に固定されている。
【0027】
カメラボディ側固定部54は、カメラボディ20の背面側に突出する先端部に凹形状の開口部54aを有し、その開口部54aに固定ネジ50の先端部である伝熱部52が嵌合されている。
【0028】
熱伝導シート38は、撮像素子取付部材26の固定部32と固定ネジ50の頭部とにより挟持されている。弾性バネ42は、撮像素子取付部材26とカメラボディ側固定部54との間に配置され、撮像素子取付部材26及び熱伝導シート38を固定ネジ50の頭部側に押圧している。熱伝導シート38は、第1の実施の形態と同様に弾性変形可能であるので、撮像素子取付部材26が傾いた状態であっても、撮像素子取付部材26と固定ネジ50に対して密着状態を保つことができる。
【0029】
上述のようにデジタルカメラ2の内部を構成したため、撮像素子22で発生した熱は、撮像素子取付部材26、熱伝導シート33、固定ネジ50を介してカメラボディ側固定部54に伝達される。
【0030】
第2の実施の形態に係るデジタルカメラ2によれば、固定ネジ50とカメラボディ側固定部54との接触面積を大きくすることによって、撮像素子22で発生した熱を固定ネジ50からカメラボディ側固定部54に効率的に伝達できるので、効率的に放熱を行なうことができる。
【0031】
また、第1の実施の形態における熱伝導部材40を省くことができるので、さらに省スペース化を図ると共に、コストを低減することができる。
【0032】
なお、第2の実施の形態に係るデジタルカメラ2において、固定ネジ50の伝熱部52とカメラボディ側固定部54の開口部54aとの密着度を高めるために、固定ネジ50とカメラボディ側固定部54との間に伝熱性の充填物を充填してもよい。
【符号の説明】
【0033】
2…デジタルカメラ、8…撮影レンズ、20…カメラボディ、22…撮像素子、26…撮像素子取付部材、34…固定ネジ、36…カメラボディ側固定部、38…熱伝導シート、40…熱伝導部材、42…弾性バネ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7