(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース体は、前記第2のマグネットにおけるベース体側の部位の磁極の極性に磁化され、前記ベース体と第1のマグネットにおけるベース体とは反対側の部位の磁極との間で磁束が形成されていることを特徴とする請求項1記載のマグネトロンスパッタ装置。
前記第1のマグネット及び第2のマグネットの少なくとも一方は、電磁石として構成され、電磁コイルの電流の向きに応じてベース体側の部位の磁極とベース体とは反対側の部位の磁極とが反転するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のマグネトロンスパッタ装置。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられるマグネトロンスパッタ装置は、真空容器内に被処理基板と対向するように成膜材料からなるターゲットを配置し、ターゲットの下面側に磁場と電界とを形成してプラズマを発生させ、プラズマのイオンによりターゲットをスパッタするように構成されている。被処理基板に成膜された膜について高い面内均一性を得るためには、ターゲットにおいて被処理基板の周縁部に対向する部位におけるスパッタ粒子の飛散量を多く確保することが必要となる。
【0003】
図32はターゲット1000から飛散するスパッタ粒子量の分布を示しており、ターゲットから離れるにつれて周縁部の山の部分(スパッタ粒子の飛散量が多い部分)がならされて、被処理基板10の表面上ではスパッタ粒子の面内分布の均一性が高くなっている。
【0004】
図33(a)は、ターゲット1000に磁場を形成するためのマグネットユニットの一例を示している。このマグネットユニットは、ターゲット1000の周縁部に沿って環状のマグネット2001を配置し、ターゲット1000の中央部の上方にマグネット2002を配置して構成される。図中、Pはプラズマを示している(以下、同じ)。
図33(b)は、ターゲット1000側からマグネットユニットを見た平面図であり、同図(c)は、ターゲット1000のエロージョンの状態をエロージョンの深さを拡大(誇張)して示したものである。
【0005】
このような構成のマグネットユニットによれば、ターゲット1000の下面近傍には、外側のマグネット2001に基づくカスプ磁界と内側のマグネット2002に基づくカスプ磁界とにより水平磁場Hの環、即ちレーストラックが形成される。水平磁場Hとは水平性の高い磁場である。そして真空容器内にアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスを導入し、ターゲット1000に例えば直流電圧を印加すると、電界によりアルゴンガスが電離して電子が生成される。この電子は水平磁場と電界とによりドリフトし、高密度プラズマが形成される。プラズマ中のアルゴンイオンは、ターゲット1000をスパッタしてスパッタ粒子(金属粒子)を叩き出し、スパッタ粒子により被処理基板に対して成膜が行われる。
この例の場合には、中央部のマグネット2002の直下ではプラズマが発生しないため、プラズマが発生しない部分にターゲット1000のエロージョンが形成されないことから、ターゲット1000の使用効率が悪く、また被処理基板上の成膜分布の均一性が悪い。
【0006】
図34(a)、(b)は、ターゲット1000に磁場を形成するためのマグネットユニットの他の例を示している。このマグネットユニットは、ターゲット1000の周縁部に沿って環状のマグネット3002を配置して構成される。この場合には、ターゲット1000において被処理基板の周縁部に対向する部位におけるスパッタ粒子の飛散量を多く確保することができるが、ターゲット1000の中央部においてはプラズマが発生せず、やはり被処理基板10上の成膜分布の均一性が悪い(
図34(c))。
【0007】
そこで実際には、
図35(a)、(b)に示すマグネットユニットを用いる場合がある。
図35(a)、(b)において1001は環状のマグネットであり、環状のマグネット1001の内側における偏心した位置に当該マグネット1001とは異なる極性のマグネット1002が配置されている。これらマグネット1001、1002は、鉄板1003を介して回転板1004に取り付けられ、回転板1004の偏心位置を回転中心として回転機構1005によりマグネット1001、1002を回転させている。
【0008】
しかしながらターゲット1000よりも小さい環状のマグネット1001を回転中心の周りに公転させる場合には、マグネット1001が1周する中でターゲット1000の表面の大部分において放電していない時間が多く存在する。このため、放電していない領域にスパッタ粒子が再付着し、真空容器内にパーティクルが発生して、被処理基板の処理の歩留まりを低下させる要因になる懸念がある。
【0009】
特許文献1には、ターゲットにおける半導体ウエハ側の面に環状の堀(ボールト)を形成すると共に、回転自在なヨークの下面側に永久磁石を設けてユニットを構成し、このユニットをターゲットの上方側に配置したマグネトロン・プラズマ・スッパタ・リアクターが記載されているが、本発明を示唆するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るマグネトロンスパッタ装置の全体の構成について、
図1の縦断側面図を参照しながら説明する。図中2は例えばアルミニウム(Al)により構成され、接地された真空容器2である。真空容器2は天井部が開口しており、開口部21を塞ぐようにターゲット電極3が設けられている。ターゲット電極3は、成膜材料例えばタングステン(W)よりなるターゲット31の上面に、例えば銅(Cu)若しくはアルミニウムよりなる導電性のベース板32を接合することにより構成されている。ターゲット31は例えば平面形状が円形状に構成され、その直径は被処理基板をなす半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)10よりも大きくなるように、例えば400〜500mmの範囲の500mmに設定されている。
【0017】
ベース板32はターゲット31よりも大きく形成され、ターゲット電極3は、ベース板32の下面の周縁領域が真空容器2の開口部21の周囲に載置されるように設けられている。ベース板32の周縁部と真空容器2との間には、環状の絶縁部材22が設けられており、ターゲット電極3は、真空容器2とは電気的に絶縁された状態で真空容器2に固定されている。また、このターゲット電極3には電源部33により負の直流電圧が印加されるようになっている。
【0018】
真空容器2内にはターゲット電極3と平行に対向するように、ウエハ10が水平な状態で載置される載置部4が設けられている。この載置部4は例えばアルミニウムからなる電極(対向電極)として構成され、高周波電力を供給する高周波電源部41が接続されている。載置部4は、昇降機構42により、ウエハ10を真空チャンバ2に対して搬入出する搬送位置と、スパッタ時における処理位置との間で昇降自在に構成されている。前記処理位置では、例えば載置部4上のウエハ10の上面と、エロージョン前のターゲット31の下面との距離hが例えば10mm以上30mm以下の範囲内に設定されている。
【0019】
載置部4の内部には、加熱機構をなすヒータ43が内蔵され、ウエハ10が例えば400℃に加熱されるようになっている。さらに、載置部4には、当該載置部4と外部の搬送アーム(不図示)との間でウエハ10を受け渡すための図示しない突き上げピンが設けられている。
【0020】
真空容器2の内部には、ターゲット電極3の下方側を周方向に沿って囲むように環状のチャンバシールド部材44が設けられていると共に、載置部4の側方を周方向に沿って囲むように環状のホルダシールド部材45が設けられている。これらは、真空容器2の内壁へのスパッタ粒子の付着を抑えるために設けられるものであり、例えばアルミニウム若しくはアルミニウムを母材とする合金等の導電体により構成されている。チャンバシールド部材44は例えば真空容器2の天井部の内壁に接続されており、真空容器2を介して接地されている。また、ホルダシールド部材45を介して載置部4が接地されるように、ホルダシールド部材45は接地されている。
【0021】
さらに、真空容器2は、排気路23を介して真空排気機構である真空ポンプ24に接続されると共に、供給路25を介して不活性ガス例えばArガスの供給源26に接続されている。図中27は、ゲートバルブ28により開閉自在に構成されたウエハ10の搬送口である。
【0022】
ターゲット電極3の上部側には、当該ターゲット電極3と近接するようにマグネットユニットが設けられている。
図2はマグネットユニットの縦断面図、
図3はマグネットユニットをターゲット側から見た平面図、
図4はマグネットユニットを上側から見た図である。なお
図2ではベース板32の記載は省略し、各マグネット501、502の高さを拡大(誇張)して表示している(以下、マグネットユニットの縦断面図において同じ)。
【0023】
マグネットユニットは、ターゲット31の直径よりも少し大きな直径を有する円形のベース体である支持板51と、この支持板51のターゲット31側の面(下面)に設けられた9つのマグネット501と、前記支持板51のターゲット31とは反対側の面(上面)に設けられた9つのマグネット502と、を備えている。支持板51は、回転軸55を介して回転機構56に取り付けられており、その回転中心は支持板51の中心から少し偏心した位置に設定されている。
【0024】
図3において、C1は支持板51の中心、C2はターゲット31の中心を各々示しており、
図2のマグネットユニットは、
図3に示したA−A’の位置における支持板51やマグネット501、502の位置関係を模式的に示している。既述のように本例のターゲット31の直径は500mmであり、支持板51の直径は510mmである。支持板51は透磁性の材料例えば鉄により作られる。この明細書では、支持板51の下面側を表側、上面側を裏側と夫々呼ぶこととする。また支持板51の表側のマグネット501を「表マグネット」、裏側のマグネット502を「裏マグネット」と呼ぶこととする。表マグネット501は、本発明の第1のマグネットに相当し、裏マグネット502は第2のマグネットに相当している。
【0025】
表マグネット501は各々円柱状に形成され、表面磁束密度が例えば2〜3G(2.0×10
−4〜3.0×10
−4T)程度のものが用いられる。これらの表マグネット501は、
図3に示すように9個のマグネット501が3行、3列のマトリックス状に配列されている。各表マグネット501は、上下に互いに異なる磁極に着磁されており、下側の磁極はN極とS極とが千鳥状に並んでいる。中央部に位置する表マグネット501の中心部は支持板51の中心部に位置しており、当該表マグネット501の下側の磁極はN極となっている。またマトリックス状の配列における角部に位置するマグネット501の中心部は、支持板51の周縁の近傍例えば前記周縁から内側に寄って位置している。以後において、表マグネット501の下面側の磁極及び裏マグネット502の上面側の磁極をいずれも便宜上「表磁極」と呼ぶことにする。
【0026】
裏マグネット502は、各々円柱状に形成され、表マグネット501と同様の表面磁束密度を持つものが用いられる。これらの裏マグネット502は、
図4に示すように表マグネット501の配列領域よりも支持板51の中心部に寄った狭い領域に、9個のマグネット502が3行、3列のマトリックス状に配列されている。9個の裏マグネット502は、上下に互いに異なる磁極に着磁されており、表磁極は全てS極になっていると共に中央に位置するマグネット502の中心部は支持板51の中心部の近傍に位置している。
【0027】
表マグネット501及び裏マグネット502の各中央のマグネット501、502の中心は、実際には、支持板51を回転させる回転軸と干渉しないように支持板51の中心部からわずかに偏心している。また本例の表マグネット501及び裏マグネット502はいずれも同じ大きさに形成されており、直径が30mm、高さが15mmに設定されている。
【0028】
上述のマグネットユニットの周囲には、当該支持板51や表マグネット501、裏マグネット502が回転する空間を形成しつつ、当該マグネットユニットの上面及び側面を覆うように、冷却ジャケット57が設けられている。冷却ジャケット57の内部には冷却媒体の流路58が形成されており、当該流路58内に所定温度に調整された冷却媒体例えば冷却水を供給部59から循環供給することにより、マグネットユニット及び当該マグネットユニットを介してターゲット電極3を冷却する。
【0029】
以上に説明した構成を備えるマグネトロンスパッタ装置は、電源部33や高周波電源部41からの電力供給動作、Arガスの供給動作、昇降機構42による載置部4の昇降動作、回転機構56によるマグネットユニットの回転動作、真空ポンプ24による真空容器2の排気動作、ヒータ43による加熱動作等を制御する制御部100を備えている。この制御部100は、例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、この記憶部には、当該マグネトロンスパッタ装置によってウエハ10への成膜を行うために必要な制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記憶されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0030】
続いて、上述のマグネトロンスパッタ装置の作用について説明する。先ず、真空容器2の搬送口27を開き、載置部4を受け渡し位置に配置して、図示しない外部の搬送機構及び突き上げピンの協働作業により、載置部4にウエハ10を受け渡す。次いで、搬送口27を閉じ、載置部4を処理位置まで上昇させる。また、真空容器2内にArガスを導入すると共に、真空ポンプ24により真空排気して、真空容器2内を所定の真空度例えば11〜100mTorr(1.46〜13.3Pa)に維持する。
【0031】
一方、マグネットユニットを回転機構56により回転させながら、電源部33からターゲット電極3に例えば100W〜3kWの負の直流電圧を印加すると共に、高周波電源部41から載置部4に数百KHz〜百MH程度の高周波電圧を10W〜1kW程度印加する。また、冷却ジャケット57の流路58には、常時冷却水を通流させておく。
【0032】
ターゲット電極3に直流電圧を印加すると、周囲の電界によりArガスが電離して電子を発生する。このとき、マグネットユニットの表マグネット501の下方側にはカスプ磁界が形成され、このカスプ磁界が連続してターゲット31の表面(スパッタされる面)近傍に水平磁場Hが形成される(
図3)。以下、裏マグネット502を設けたことによる水平磁場Hへの影響について説明する。
【0033】
図2、
図3に示すように、マトリックス状に9個配列された表マグネット501の支持板51側の磁極は、S極よりもN極が一つ少なくなっている。一方、裏マグネット502の支持板51側の磁極は全てN極であり、さらに裏マグネット502のうち中心部側においては、S極から磁束MF1が発散する。支持板51は既述のように鉄により作られているため、支持板51はN極を帯び、支持板51から表マグネット501の表磁極であるS極に対して磁束MF2が伸びる。
図2は、表マグネット501の表磁極の配列がS極、N極、S極の並びに沿った縦断面(
図3のA−A’断面)で見たときの図であり、このときの状態を示している。
【0034】
一方、支持板51の中心部に位置する表マグネット501と裏マグネット502とはカップリングしているので、
図2に示すように中心部の表マグネット501の表磁極であるN極から周囲の表磁極であるS極に磁束MF3が伸びる。そして支持板51がN極を帯びていることから、周囲の表マグネット501の支持板51側のN極が見掛け上強くなる。このため中心部の表マグネット501のN極から周囲の表マグネット501のS極に伸びる磁束MF3と周囲の表マグネット501の支持板51側の磁極であるN極から表磁極であるS極に伸びる磁束MF4とが結合する。そしてこの結合により、中心部の表マグネット501よりも周囲の表マグネット501側に寄った位置に水平磁場Hが形成される。より詳しくは、カスプ磁界が連続してターゲット31の下面側近傍に水平磁場Hが形成される。
【0035】
更にまた、支持板51がN極を帯びていることから、支持板51の周縁部から周囲の表マグネット501の表磁極であるS極に磁束MF2が伸びる。即ち、表磁極がS極である周囲の表マグネット501よりも外側の領域(中心部の表マグネット501とは反対側)に着目すると、この磁束MF2と、当該表マグネット501の支持板51側のN極から表磁極のS極に伸びる磁束MF4とにより、当該表マグネット501の真下よりも外側寄りに水平磁場が形成される。こうして
図3に示すように、表マグネット501の表磁極であるS極の下方側周囲には、環状の水平磁場Hが形成される。
【0036】
なお、中心部の表マグネット501、及び表磁極がN極の周囲の表マグネット501の下方領域については、環状の水平磁場が形成されない。
図3では、表磁極を囲む円が示されているものについては、当該表磁極の下方領域が環状の水平磁場Hで囲まれている状態に相当する。
【0037】
既述のようにターゲット31には直流電圧が印加されているので、ターゲット31の下方側には電界が形成され、この電界によりアルゴンガスが電離して電子を生成する。この電子は、上述のメカニズムで形成された環状の水平磁場Hに絡みつきながら水平磁場Hに沿ってドリフトする。そしてドリフトした電子がさらにアルゴンガスと衝突し、電離を起こしてプラズマPを発生させる。表磁極がS極である周囲の表マグネット501の下方領域の周囲をドリフトする電子の移動方向は、ウエハ10からターゲット31を見て、反時計周りである。
【0038】
図3に示すように本マグネットユニットにおいては、表磁極がS極である表マグネット501が支持板51に沿って分散して配置され、これらの表マグネット501の周囲に環状に広がる水平磁場H(プラズマP)が形成される。そして回転機構56により、中心から偏心した位置にて支持板51を鉛直軸回りに回転させると、各水平磁場Hが通過する軌跡に沿ってプラズマPが移動し、ターゲット31の全面に亘って、より均一にエロージョンを発生させることができる。
【0039】
また、このようにターゲット31のエロージョンの面内均一性が高いことから、ウエハ10とターゲット31との距離を、例えば30mm以下まで近接させてスパッタ処理を行っても面内均一性の高い成膜結果を得ることができる。ウエハ10に近い位置にてスパッタ粒子を発生させることにより、ウエハ10の外方へのスパッタ粒子の飛散によるロスを低減し、成膜効率を向上させることができる。なお、安定した放電を発生させる観点では、ターゲット31とウエハ10との距離hは10mm以上に設定することが好ましい。
【0040】
上述の実施の形態によれば以下の効果がある。透磁性材料からなるベース体51のターゲット31側に表マグネット501(第1のマグネット)を設けると共にその反対側の面に裏マグネット502(第2のマグネット)を設けている。このためターゲット31のウエハ10側の近傍に形成する環状の水平磁場Hの位置調整の自由度が大きく、従って水平磁場Hを適切性の高い位置に形成することができる。この結果ウエハ10に対して面内均一性の高い成膜を行うことができ、またターゲット31において偏りの少ないエロージョンが得られるので、ターゲット31に対して高い使用効率を得ることができる。
【0041】
また
図2、
図3に示すように、裏マグネット502を設け、磁束MF3−MF4、MF2−MF4を利用して、周囲の表マグネット501側に寄った位置に環状の水平磁場Hを集中させることにより、比較的強いプラズマPを発生させて成膜速度を向上させることができる。
【0042】
図5は、第1の実施形態に用いたマグネットユニットにおいて、裏マグネット502を用いない比較例の構成を示している。
図6は、
図5に示すマグネットユニットを下から見たときの平面図である。なお、以下に示す各種の実施形態や比較例の説明図において、
図1〜
図4に示したものと共通の構成要素には、これらの図に付したものと共通の符号を付してある。
【0043】
図5に示したマグネットユニットにおいて、表マグネット501の支持板51側の磁極は、N極よりもS極が一つ多い一方、
図2に示した例と異なり裏マグネット502が設けられていないので、支持板51は比較的弱くS極を帯びる。
支持板51がS極を帯びていることにより、周囲の表マグネット501においては、発散した磁束MF5が形成されるため
図6のA−A’線上に位置する周囲の表マグネット501の下方領域には水平磁場Hは形成されない。
【0044】
一方、表磁極がN極である中心部の表マグネット501においては、中心部の表マグネット501のN極から周囲の表マグネット501の表磁極であるS極に伸びる磁束MF3が形成される。また、中心部の表マグネット501の支持板51側の磁極であるS極から表磁極であるN極に伸びる磁束MF4が形成される。
【0045】
これらの磁束MF3、MF4の結合により、
図6のA−A’線上に示すように表磁極がN極である中心部の表マグネット501側に寄った位置に水平磁場Hが形成される。しかしながら既述のように、支持板51が帯びているS極が比較的弱いため、磁束MF4の磁束密度も小さく、磁束MF3、MF4の結合も弱い。この結果、裏マグネット502を設けた
図2、
図3の場合に比べて、水平磁場Hの形成される領域が広がってしまいプラズマPが弱くなる。
【0046】
従って裏マグネット502を設ける場合の方が、比較的狭い領域に集中して環状の水平磁場Hを形成することが可能であり、成膜速度を向上させる効果があるといえる。
【0047】
図7、
図8は、第1の実施形態に用いたマグネットユニットにおいて、マトリックス状に配置された9個の裏マグネット502のうち、中心部の裏マグネット502を設けずに、裏マグネット502の設置数を減らした例を示している。
【0048】
裏マグネット502の数を減らすことにより、中心部に位置する表マグネット501と裏マグネット502とのカップリングが弱まり、
図2のマグネットユニットと比較して、中心部の表マグネット501の表磁極であるN極から周囲の表磁極であるS極に伸びる磁束MF3が弱まる。この結果、磁束MF3、MF4の結合が弱くなって水平磁場Hの形成位置が中央側に移動する。一方、裏マグネット502の数を減らすことにより、支持板51の周縁部から周囲の表マグネット501の表磁極であるS極に伸びる磁束MF2も弱くなって磁束MF4とにより形成される水平磁場Hは支持板51の周縁部側へ移動する。
【0049】
これらの作用により、
図8に示した水平磁場Hが形成される領域は、
図3の例に比べてやや広がってしまい、水平磁場Hにより形成されるプラズマPの強度も低下する。しかしながら、裏マグネット502を設けない
図6の例に比べれば、依然として水平磁場Hを集中させる効果が得られる。
【0050】
図9、
図10は、第1の実施形態に用いたマグネットユニットにおいて、マトリックス状に配置された9個の表マグネット501のうち、中心部の表マグネット501を設けずに、表マグネット501の設置数を減らした例を示している。
【0051】
中心部に位置する表マグネット501を設けないことにより、支持板51の中心部側からも表マグネット501の表磁極であるS極に対して磁束MF2’が伸びる。これら磁束MF4、MF2’の作用により、
図2のマグネットユニットと比較して、水平磁場Hはさらに周囲の表マグネット501側に寄った位置に形成される。また、支持板51側の極がS極である表マグネット501を1つ減らしたことにより、支持板51から伸びる磁束MF2、MF2’も強くなり、これによっても水平磁場Hの形成位置が周囲の表マグネット501側に移動する。
これらの作用により、
図10に示した水平磁場Hが形成される領域は、
図3の例に比べてより狭い領域に集中し、プラズマPの強度は向上する。
【0052】
ここで、裏マグネット502の形状や配置は
図4に示したように円筒形状の9個のマグネット502をマトリックス状に配置する例に限定されない。例えば、
図11(a)に示すように、中心部の裏マグネット502の前後左右に周囲の裏マグネット502を十字状に配置してもよい。また、
図11(b)に示すように、円筒形状の中心部の裏マグネット502の周囲に、環状の裏マグネット502aを配置してもよい。また、裏マグネット502の形状は、円筒形状や環状に限られるものでもなく、直方体や立方体形状のブロックをマトリックス状や十字状に配置してもよい。
【0053】
[第2の実施形態]
図12〜
図17は、電磁コイル503の電流の向きに応じて磁極を反転させることが可能な電磁石を用いて表マグネット501を構成したマグネットユニットの例を示している。また、本例では裏マグネット502の支持板51側の磁極を全てS極とした。なお、マグネトロンスパッタ装置の全体の構成については
図1を用いて説明した例と同様なので、重複の説明を省略する。
【0054】
例えば
図14に示すように、あるタイミングにおいて、上記マグネットユニットのターゲット31側から見た表磁極のN極、S極が、千鳥状に並ぶように、表マグネット501の磁極が設定されているとする(
図14における表磁極の配置は、
図3に示した第1の実施形態と同じである)。このとき、表マグネット501の支持板51側の磁極は、N極よりもS極が一つ多く、且つ、裏マグネット502の支持板51側の磁極が全てS極となっていることにより、支持板51はS極を帯びる(
図12、
図13)。
【0055】
そして、
図14に示したA−A’線上の表マグネット501に着目すると(
図12)、表磁極がS極となっている周囲の表マグネット501においては、発散した磁束MF5が形成されるため水平磁場Hは形成されない。一方、表磁極がN極である中心部の表マグネット501においては、中心部の表マグネット501のN極から周囲の表マグネット501の表磁極であるS極に伸びる磁束MF3と中心部の表マグネット501の支持板51側の磁極であるS極から表磁極であるN極に伸びる磁束MF4とが結合する。この結合により、
図14のA−A’線上に示すように表磁極がN極である中心部の表マグネット501側に寄った位置に水平磁場Hが形成される。
【0056】
同じタイミングにおいて、
図14に示したB−B’線上の表マグネット501の状態を見ると(
図13)、B−B’線上に並ぶすべての表マグネット501には、支持板51側の磁極であるS極から表磁極であるN極に伸びる磁束MF4、及びMF2、MF2’が形成される。この結果、
図14のB−B’線上に示すように表磁極がN極である各表マグネット501側に寄った位置に水平磁場Hが形成される。
これら表マグネット501の状態により、
図14に示すように、表磁極がN極である表マグネット501の下方側周囲には、環状の水平磁場Hが形成される。
【0057】
次いで、
図12〜
図14に示した状態が形成されてから所定の時間が経過した後、各表マグネット501の電磁コイル503の電流の向きを反転させ、表磁極のN極、S極の配置を
図17に示す状態とする。このとき、表マグネット501の支持板51側の磁極は、S極がN極よりも一つ少なくなっているが、裏マグネット502の支持板51側の磁極が全てS極となっていることにより、支持板51はS極を帯びる(
図15、
図16)。
【0058】
そして、
図17に示したA−A’線上の表マグネット501に着目すると(
図15)、周囲の表マグネット501のN極から中心部の表マグネット501の表磁極であるS極に伸びる磁束MF3と周囲の表マグネット501の支持板51側の磁極であるN極から表磁極であるS極に伸びる磁束MF4とが結合する。また、支持板51がS極を帯びていることから、支持板51の周縁部から周囲の表マグネット501の表磁極であるN極に磁束MF2が伸び、当該表マグネットの支持板51側のN極から表磁極のS極に伸びる磁束MF4が形成される。これらの磁束MF3−MF4、MF2−MF4の作用により、
図17のA−A’線上に示すように表磁極がN極である周囲の表マグネット501側に寄った位置に水平磁場Hが形成される。
【0059】
同じタイミングにおいて、
図14に示したB−B’線上の表マグネット501の状態を見ると(
図16)、B−B’線上に並ぶすべての表マグネット501は、表磁極がS極となっていて発散した磁束MFが形成されるため水平磁場Hは形成されない。
これら表マグネット501の状態により、
図17に示すように、表磁極がN極である周囲の表マグネット501の下方側周囲には、環状の水平磁場Hが形成されることになる。
【0060】
以上に説明したように、電磁コイル503を用いて表マグネット501の表磁極をN極とS極との間で周期的に反転さることにより、
図14、
図17に示すように環状の水平磁場Hが形成される位置が支持板51の面内で入れ替わる。そこで、表マグネット501の表磁極を周期的に反転させながら、支持板51を回転させることにより、支持板51面内に分散した水平磁場Hによって発生したプラズマPを用いることが可能となり、成膜時の面内均一性の向上や効率的なターゲット31の使用に寄与する。
【0061】
[第3の実施形態]
図18(a)、(b)、
図19は、円環状の表マグネット501aを備えたマグネットユニットに裏マグネット502を設けた例を示している。このマグネットユニットを備えるマグネトロンスパッタ装置は、支持板51を回転させる回転軸55や回転機構56が設けられていない点が
図1に示した第1の実施の形態に係るマグネトロンスパッタ装置と異なる。
【0062】
図18(a)、
図19に示すよう本例のマグネットユニットは、円板形状の支持板51の周縁部の下面に、下方側へ伸び出すように環状の表マグネット501aを配置し、支持板51側の極をN極、表磁極をS極としている。一方、支持板51の上面側には
図4の例と同様に、例えば9個の裏マグネット502がマトリックス状に配置されていて、表磁極は全てS極になっている。
【0063】
このように表マグネット501a、裏マグネット502を配置すると、各マグネット501a、502の支持板51側の磁極がすべてN極であることから支持板51はN極を帯びる。この結果、
図18(a)に示すように支持板51の中心部側から表マグネット501aの表磁極であるS極に対して磁束MF2’が伸び、表マグネット501aの内側に環状の水平磁場Hを形成することができる(
図19))。このとき、裏マグネット502の設置数や各裏マグネット502の表面磁束密度などを調節することにより、磁束MF2’が形成される領域を調節することができる。この結果、水平磁場Hが形成される領域、即ちプラズマPの発生領域を広げることが可能となり、
図34を用いて説明した従来技術と比較して、
図18(b)に示すようにターゲット31の使用効率を向上させ、面内均一性の良好な成膜を行うことが可能となる。
なお、上述のように第3の実施形態では、支持板51を回転させない場合について説明したが、必要に応じて回転させる回転軸55や回転機構56を設け、鉛直軸周りに支持板51を回転させてもよいことは勿論である。
【0064】
[第4の実施形態]
図20、
図21は直方体形状の表マグネット501bを支持板51の中心周りに、径方向へ放射状に配置したマグネットユニットの例を示している。本例のマグネットユニットを備えるマグネトロンスパッタ装置の全体構成については、支持板51の中心がターゲット31の中心と一致するように支持板51が配置され、この中心を通る鉛直軸周りに支持板51を回転させる点を除いて
図1を用いて説明した例と同様である。
【0065】
図21に示すように、本例の表マグネット501bは、ターゲット31側から見た平面の形状が細長い矩形である直方体のブロックとして形成され、4個の表マグネット501bが、支持板51の中心部を挟んで径方向に伸びるように十字状に配置されている。十字状に配置され、周方向に隣り合う表マグネット501b同士の中間位置には、さらに4個の表マグネット501bが、前記中心部を挟んで径方向に伸びるようにX字状に配置されている。ターゲット31側から見た各表マグネット501bの長辺の長さは、表マグネット501b同士が接触しないように調節されている。
【0066】
図20に示すように、本例においては全ての表マグネット501bの表磁極がS極となり、支持板51側の極がN極となっている。また、裏マグネット502についても支持板51側の磁極が全てN極であることにより、支持板51はN極を帯びている。裏マグネット502の配置状態については、特に限定はないが、例えば
図4や
図11(a)、(b)に例示した配置を採用してよい。
【0067】
表マグネット501b、裏マグネット502が上述のように配置されたマグネットユニットにおいて、
図21のA−A’位置における状態を見ると、
図20に示すように、表マグネット501bの周囲には、支持板51側の磁極であるN極から表磁極であるS極に伸びる磁束MF4と、N極を帯びた支持板51から表マグネット501の表磁極であるS極に伸びる磁束MF2、MF2’が形成される。
【0068】
これらの磁束MF2−MF4、MF2’−MF4の作用により、
図21に示すように各表マグネット501bの下方側周囲には環状の水平磁場Hが形成される。本例においては、ターゲット31側から見た表マグネット501bの平面形状に対応して、各水平磁場Hは支持板51の中心部から径方向に放射状に伸び出した形状となっている。このため、中心周りに支持板51を回転させることにより、ターゲット31の使用効率が高く、面内均一性の良好な成膜を行うことができる。
【0069】
[第5の実施形態]
図22〜
図25に示す第5の実施形態は、電磁コイル503を設け、電流の向きに応じて磁極を反転させることが可能な電磁石にて裏マグネット502を構成した点と、表マグネット501bの一部を径方向に分割した点と、半数の表マグネット501bにて表磁極をS極からN極に入れ替えた点とが第4の実施形態に係るマグネットユニットと異なる。
【0070】
図23、
図25に示すように、本例のマグネットユニットにおいては、
図21に示した第4の実施形態において十字に交差する方向に伸びる比較的長い長辺を持つ表マグネット501bが各々径方向に二分割されている。この結果、支持板51には合計12個の表マグネット501bが支持板51の中心周りに、径方向へ伸びるように放射状に配置されている。
【0071】
そしてこれらの表マグネット501bにおいて、十字状に配置された8個の表マグネット501bのうち、十字の縦線を構成する中心側の2個、及び横線を構成する外側の2個、ならびにX字状に配置された4個の表マグネット501bのうち、左上がりの直線を構成する2個、合計6個の表マグネット501bについては、表磁極がN極、支持板51側の磁極がS極となるように配置されている。残る6個の表マグネット501bについて、表磁極がS極、支持板51側の磁極がN極となっている。
さらに、本例のマグネットユニットは、裏マグネット502に電磁コイル503が設けられ、電流の向きに応じて磁極を反転させることができる。
【0072】
ここで例えば
図22に示すように、あるタイミングにおいて、裏マグネット502の支持板51側の磁極が全てN極となるように電磁コイル503の電流の向きが設定されているとする。表マグネット501は支持板51側の磁極がS極とN極とで同数となっているので、裏マグネット502の磁極の影響を受けて支持板51はN極を帯びる。
【0073】
このとき、
図23に示したA−A’線上の表マグネット501bにおいては、外側の表マグネット501bのN極から中心側の表マグネット501bの表磁極であるS極に伸びる磁束MF3と、中心側の表マグネット501bの支持板51側の磁極であるN極から表磁極であるS極に伸びる磁束MF4とが結合する。また、支持板51がN極を帯びていることから、支持板51の中央部から中心側の表マグネット501bの表磁極であるS極に磁束MF2’が伸びると共に、当該表マグネットの支持板51側のN極から表磁極のS極に伸びる磁束MF4が形成される。
【0074】
これらの磁束MF3−MF4、MF2’−MF4の作用により、
図23のA−A’線上に示すように表磁極がS極である中心側の表マグネット501bの下方領域に環状の水平磁場Hが形成される。
一方、支持板51がN極を帯びていることにより、外側の表マグネット501bにおいては、発散した磁束MF5が形成されるため
図23のA−A’線上に位置する外側の表マグネット501bの下方領域には水平磁場Hは形成されない。
【0075】
そして、他の表マグネット501bにおいても、表磁極がS極である表マグネット501bの下方領域に環状の水平磁場Hが形成され、表磁極がN極である表マグネット501bの下方領域にはこの水平磁場Hが形成されない。
この結果、
図23に示すように、支持板51の面内に水平磁場Hを分散させた状態でプラズマPを発生させることが可能となる。
【0076】
次いで、
図22、
図23に示した状態が形成されてから所定の時間が経過した後、各裏マグネット502の電磁コイル503の電流の向きを反転させ、支持板51側の磁極をS極とする(
図24)。この結果、支持板51は裏マグネット502の磁極の影響を受けてS極を帯びる。
【0077】
このとき、
図25に示したA−A’線上の表マグネット501bにおいては、外側の表マグネット501bのN極から中心側の表マグネット501bの表磁極であるS極に伸びる磁束MF3と、外側の表マグネット501bの支持板51側の磁極であるN極から表磁極であるS極に伸びる磁束MF4とが結合する。また、支持板51がS極を帯びていることから、支持板51の周縁部から外側の表マグネット501bの表磁極であるS極に磁束MF2が伸びると共に、当該表マグネットの支持板51側のN極から表磁極のS極に伸びる磁束MF4が形成される。
【0078】
これらの磁束MF3−MF4、MF2−MF4の作用により、
図25のA−A’線上に示すように表磁極がN極である外側の表マグネット501bの下方領域に環状の水平磁場Hが形成される。
一方、支持板51がS極を帯びていることにより、中心側の表マグネット501bにおいては、発散した磁束MF5が形成されるため
図25のA−A’線上に位置する中心側の表マグネット501bの下方領域には水平磁場Hは形成されない。
【0079】
そして、他の表マグネット501bにおいても、表磁極がN極である表マグネット501bの下方領域に環状の水平磁場Hが形成され、表磁極がS極である表マグネット501bの下方領域にはこの水平磁場Hが形成されない。
この結果、
図25に示すように、
図23の位置とは異なる位置にて支持板51の面内に水平磁場Hを分散させ、プラズマPを発生させることが可能となる。
【0080】
以上に説明したように、電磁コイル503を利用して、支持板51の面内に分散して形成される水平磁場Hの位置を周期的に変化させながら支持板51を回転させることにより、時間平均で見たプラズマPの発生領域がより均一になる。この結果、成膜時の面内均一性やターゲット31の効率的に使用に寄与する効果をさらに向上させることができる。
【0081】
また、表マグネット501bや裏マグネット502の形状、配置数、配置位置、表磁極の極性の選択などを適宜、調節することによって、より精密にプラズマの発生位置を調節することが可能となる。
この他、第2の実施形態や第5の実施形態では、表マグネット501や裏マグネット502のいずれか一方に電磁コイル503を設けて磁極を反転させる例について説明したが、これら表マグネット501、裏マグネット502の双方に電磁コイル503を設けて磁極を反転させてもよいことは勿論である。
【0082】
[第6の実施形]
図26〜
図29は、矩形の被処理基板を処理するために、下面側から見たターゲット31や支持板51、表マグネット501cの形状が矩形になっている点と、表マグネット501cを横方向に移動させる移動機構56aが設けられている点とが
図1に示した第1の実施形態に係るマグネトロンスパッタ装置と異なる。
【0083】
図28に示すように本実施形態の支持板51は、ターゲット31の形状及び寸法に対応した長方形の板材として構成され、その板面中央部には、表マグネット501cを支持する支持軸55cを移動させる軌道を成す溝部511が板面の長辺方向に沿って設けられている。
【0084】
直方体形状に形成された表マグネット501cは、下面側から見た形状が角を丸めた長方形になっており、その長辺が前記支持板51の短辺に沿って伸びるように、支持板51の長辺と交差する方向に配置されている。表マグネット501cの長辺の寸法は、ターゲット31の短辺(
図28中に破線で示してある)よりもやや短くなっている一方、表マグネット501cの短辺の寸法は、ターゲット31の長辺の数分の一程度に設定されている。
【0085】
本例の表マグネット501cは、表磁極がS極、支持板51側の磁極がN極となるように配置されている。
また、表マグネット501cは、その上面側中央部を支持棒55aによって吊り下げ支持され、支持棒55aの上端部は、支持板51の長辺方向に沿って配置されたレール54上を直線移動自在に構成された移動機構56aに接続されている(
図26、
図27)。
【0086】
図29に示すように、支持板51の上面側には直方体形状の裏マグネット502bが、合計12個配置されている。裏マグネット502bは、3個を一組として、前記溝部511及び支持板51の長辺方向の中央領域を挟んで4つの領域に分けて配置されている。また、本例の裏マグネット502bは、全ての表磁極がS極となるように配置されている。
【0087】
以上に説明したマグネットユニットは、表マグネット501a、裏マグネット502の支持板51側の磁極がすべてN極であることから支持板51はN極を帯びる。この結果、
図26に示すように支持板51から表マグネット501の表磁極であるS極に伸びる磁束MF2が形成され、この磁束により表マグネット501cの下方側周囲に環状の水平磁場Hが形成される(
図28)。また、既述の各実施形態と同様に、本例の表マグネット501cにおいても、支持板51側の磁極であるN極から表磁極であるS極に伸びる磁束MF4が形成され、磁束MF4−MF2の結合によっても水平磁場Hが形成されるが、図示の便宜上、
図26、
図27では磁束MF2の記載を省略してある。
【0088】
図28に示すように、表マグネット501cの近傍に形成された水平磁場Hは、ターゲット31の短辺方向に沿って伸びる2本の水平磁場Hと、ターゲット31の長辺方向に伸びる2本の水平磁場Hとを備える。そこで
図26、
図27に示すように、表マグネット501cを周期的に横方向に移動させることにより、前記短辺方向に沿って伸びる水平磁場Hを、当該水平磁場Hと交差する方向(即ち、ターゲット31の長辺方向)に走査させることができる。この結果、これらの水平磁場Hにより発生したプラズマPがターゲット31の全面を走査して面内均一性の高いエロージョンを得ることができる。
【0089】
図30、
図31は、複数の表マグネット501cを設け、これらの表マグネット501cを移動機構56aにより移動させる例である。複数の表マグネット501cを用いることにより高い成膜速度が得られる。また、一つの表マグネット501cを移動させた場合には、ターゲット31の短辺方向に沿って伸びる2本の水平磁場Hの走査範囲が重複する領域と重複しない領域とが形成されるので、重複しない領域を補うように別の表マグネット501cを移動させることにより、より均一なエロージョンが得られる。
【0090】
複数の表マグネット501cは、移動機構56aの動作を同期させてその移動方向や移動距離が一致するように移動させてもよいし、各表マグネット501cが分担する領域を設定し、当該領域内で独立して移動機構56aを移動させてもよい。
【0091】
以上に説明した各実施の形態において、マグネトロンスパッタ装置の構成は、適宜、変更することが可能である。例えば、必要に応じてチャンバシールド部材44やホルダシールド部材45の設置を省略してもよいし、プラズマを発生するためのガス種の種類を変更してもよい。