(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコーンゴム組成物を100〜220℃で10秒〜10分間の条件で加熱成形(1次硬化)するものである請求項1記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造方法。
1次硬化物が、上記シリコーンゴム組成物を100〜220℃で10秒〜10分間加熱成形することによって形成されたものである請求項3記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造用シリコーンゴム組成物。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、車載用内燃機関の代替技術として近年活発に検討されており、2015年には日本国内に水素ステーションが積極的に整備され、燃料電池車の普及に拍車がかかると言われている。
【0003】
この固体高分子型燃料電池を構成する部品の中で、セパレータは一般的に平板の両面又は片面に複数の並行する溝を形成してなるもので、燃料電池セル内のガス拡散電極で発電した電気を外部へ伝達すると共に、発電の過程で前記溝中に生成した水を排水し、当該溝を燃料電池セルへ流入する反応ガスの流通路として確保するという役割を担っている。このような電池用のセパレータとしては、より小型化が要求され、また多数のセパレータを重ね合わせて使用することから、耐久性に優れ、長期間使用できるセパレータ用シール材料が要求されている。
【0004】
このようなセパレータ用シール材料としては、成形性、耐熱性、弾性に優れたシリコーンゴム製のシール材料が主に使用されている。特許第3712054号公報(特許文献1)では、付加硬化型シリコーンゴム組成物にシリコーンレジンを添加することで圧縮永久歪と耐酸性を向上させている。特開2009−26752号公報(特許文献2)では、付加硬化型シリコーンゴム組成物に接着助剤を内添することで接着性を向上させている。特許第5077581号公報(特許文献3)では、付加硬化型シリコーンゴム組成物のSi−H基とアルケニル基の比率を最適化することで耐酸性を向上させている。
【0005】
これら先行文献の実施例にあるように、セパレータ用シール材料としてシリコーンゴムを使用する場合には、成型後に必ず150〜200℃で1〜4時間のポストキュア(2次硬化)が実施される。ポストキュアを実施することで圧縮永久歪が低値となるためで、多数のセパレータを重ねて長期間安定してシールするには不可欠な工程となっている。
【0006】
これら先行技術では、いずれもポストキュア(2次硬化)工程が必須となっているが、燃料電池の普及にはコストダウンが必須となっており、多くのエネルギーと時間を費やすポストキュア工程は大きな負担となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料として、ポストキュア工程を実施することなく、シール性に優れる固体高分子型燃料電池セパレータ用シールを製造する方法、及び該製造方法に用いるシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部に、セパレータシール用の材料として適用する未硬化のシリコーンゴム組成物として、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)R
3SiO
1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基)とSiO
2単位とを主成分とし、R
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とのモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]が0.5〜1.5であり、かつ1×10
-4〜5×10
-3mol/gのビニル基を含有する樹脂質共重合体 5〜50質量部、
(C)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.5〜20質量部、
(D)BET法による比表面積が50〜400m
2/gであるヒュームドシリカ
10〜30質量部、
(E)付加反応触媒 触媒量、
(F)トリアゾール系化合物及び/又はイミダゾール系化合物
0.001質量部以上0.1質量部未満
を含有するシリコーンゴム組成物を選択的に用い、該組成物を加熱成形(1次硬化)して、固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部にシリコーンゴム硬化物からなる弾性シール層を形成することによって、該シリコーンゴム弾性シール層についてポストキュア(2次硬化)工程を実施しなくても圧縮永久歪が十分に小さく、更に硬化性、シール性にも優れるシール材料が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記の固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造方法及び該製造方法に用いるシリコーンゴム組成物を提供する。
〔1〕
固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部に、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)R
3SiO
1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基)とSiO
2単位とを主成分とし、R
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とのモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]が0.5〜1.5であり、かつ1×10
-4〜5×10
-3mol/gのビニル基を含有する樹脂質共重合体 5〜50質量部、
(C)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.5〜20質量部、
(D)BET法による比表面積が50〜400m
2/gであるヒュームドシリカ
10〜30質量部、
(E)付加反応触媒 触媒量、
(F)
ベンゾトリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、及びこれらのシラン変性化合物、シロキサン変性化合物から選ばれるトリアゾール系化合物及びイミダゾール系化合物の1種又は2種以上 0.001質量部以上0.1質量部未満
を含有するシリコーンゴム組成物を適用し、該シリコーンゴム組成物を加熱成形(1次硬化)して、固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部にシリコーンゴム1次硬化物を形成し、該1次硬化物をポストキュア(2次硬化)することなく弾性シール層とすることを特徴とする固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造方法。
〔2〕
シリコーンゴム組成物を100〜220℃で10秒〜10分間の条件で加熱成形(1次硬化)するものである〔1〕記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造方法。
〔3〕
ポストキュア(2次硬化)なしに1次硬化物から弾性シール層を形成する固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造用シリコーンゴム組成物であって、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)R
3SiO
1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基)とSiO
2単位とを主成分とし、R
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とのモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]が0.5〜1.5であり、かつ1×10
-4〜5×10
-3mol/gのビニル基を含有する樹脂質共重合体 5〜50質量部、
(C)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.5〜20質量部、
(D)BET法による比表面積が50〜400m
2/gであるヒュームドシリカ
10〜30質量部、
(E)付加反応触媒 触媒量、
(F)
ベンゾトリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、及びこれらのシラン変性化合物、シロキサン変性化合物から選ばれるトリアゾール系化合物及びイミダゾール系化合物の1種又は2種以上 0.001質量部以上0.1質量部未満
を含有してなる固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造用シリコーンゴム組成物。
〔4〕
1次硬化物が、上記シリコーンゴム組成物を100〜220℃で10秒〜10分間加熱成形することによって形成されたものである〔3〕記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造用シリコーンゴム組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部に、特定の組成からなる付加硬化型シリコーンゴム組成物を選択的に適用し、該組成物を加熱成形(1次硬化)して、固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部にシリコーンゴム硬化物からなる弾性シール層を形成することによって、加熱成形(1次硬化)後に該弾性シール層についてポストキュア(2次硬化)工程を実施しなくても、圧縮永久歪が小さく、長期間優れたシール性を与える固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造方法に用いるセパレータ用シール材料は、上記した通り、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)R
3SiO
1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基)とSiO
2単位とを主成分とし、R
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とのモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]が0.5〜1.5である樹脂質共重合体、
(C)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)BET法による比表面積が50〜400m
2/gであるヒュームドシリカ、
(E)付加反応触媒、
(F)トリアゾール系化合物及び/又はイミダゾール系化合物
を含有してなる付加硬化型シリコーンゴム組成物を選択的に使用するものである。
【0013】
〔(A)成分〕
本発明の(A)成分の一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(I)で示されるものを用いることができる。
R
1aSiO
(4-a)/2 …(I)
(式中、R
1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。)
【0014】
ここで、上記R
1で示される非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R
1の90モル%以上、特にはアルケニル基を除く全R
1基が、メチル基であることが好ましい。
【0015】
また、R
1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6のものであり、特に好ましくはビニル基である。)であることが必要であるが、オルガノポリシロキサン中のアルケニル基の含有量は、5×10
-6〜5×10
-3mol/g、特に1×10
-5〜1×10
-3mol/gであることが好ましい。アルケニル基の量が5×10
-6mol/gより少ないとゴム硬度が低く十分なシール性が得られなくなるおそれがあり、5×10
-3mol/gより多いと架橋密度が高くなりすぎて、脆いゴムとなってしまうおそれがある。
【0016】
なお、アルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、少なくとも分子鎖両末端の珪素原子に結合しているアルケニル基を有するものであることが好ましい。
【0017】
また、このオルガノポリシロキサンの構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位(例えば、(R
1)
2SiO
2/2、なお、R
1は上記の通り(以下同じ))の繰返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(例えば、(R
1)
3SiO
1/2)で封鎖された基本的に直鎖状構造のジオルガノポリシロキサンであることが好ましいが、部分的には少量の分岐鎖状構造((R
1)SiO
3/2等)を含んだ分岐鎖状や環状構造などであってもよい。分子量については特に限定はなく、例えば、室温(25℃)において自己流動性を有する粘度の低い液状のものから、室温で自己流動性のない粘度の高い生ゴム状(非液状)のものまで使用できるが、好ましくはオルガノポリシロキサンの平均重合度が100〜2,000、特に150〜1,500、更には150〜1,000程度の、室温で液状であるものが好ましい。平均重合度が100未満では、得られるシリコーンゴム硬化物が弾性に劣るため十分なシール性が得られない場合があり、2,000を超えると、シリコーンゴム組成物が高粘度となり成形が困難となる場合がある。なお、この平均重合度(又は平均分子量)は、例えば、トルエン等を展開溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算の重量平均重合度(重量平均分子量)である。
【0018】
〔(B)成分〕
(B)成分の樹脂質共重合体(いわゆる、シリコーンレジン)は、R
3SiO
1/2単位(1官能性シロキシ単位)及びSiO
2単位を主成分とする、本質的に三次元樹脂状(レジン状)のビニル基含有オルガノポリシロキサン成分である。ここでRは、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、Rで示される一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0019】
(B)成分の樹脂質共重合体は、上記R
3SiO
1/2単位及びSiO
2単位とのみからなるものであってもよく、また必要に応じ、R
2SiO
2/2単位(2官能性シロキサン単位)やRSiO
3/2単位(3官能性シロキサン単位、なお、Rは上記の通り)をこれらの合計量として、全共重合体質量に対し、50質量%以下(0〜50質量%)、好ましくは40質量%以下(0〜40質量%)、より好ましくは20質量%以下(0〜20質量%)の範囲で含んでいてもよいが、必須の構成単位であるR
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とのモル比[R
3SiO
1/2/SiO
2]は、0.5〜1.5、特に0.5〜1.3である必要がある。このモル比が0.5より小さいと耐酸性が低下してしまい、1.5より大きいと圧縮永久歪が大きくなるばかりか、相溶性も低下し配合が困難になってしまう。
【0020】
更に、(B)成分の樹脂質共重合体は、上記したR基の一部として、1×10
-4〜5×10
-3mol/g、特に2×10
-4〜3×10
-3mol/gのビニル基を含有することが必要である。ビニル基含有量が5×10
-3mol/gより多いとゴムが固くて脆くなり、シール性が不十分になってしまうし、1×10
-4mol/gより少ないと十分な耐酸性が得られない。
【0021】
上記樹脂質共重合体の重量平均分子量Mw(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算)は、1,000〜10,000、特に2,000〜8,500であることが耐酸性を向上させる目的の点で好ましい。重量平均分子量が1,000未満では、十分な耐酸性が得られない場合があり、10,000を超えると製造自体が困難であり、かつシリコーンゴム組成物への配合も困難となる場合がある。
【0022】
なお、上記樹脂質共重合体は、通常、適当なクロロシランやアルコキシシランを当該技術において周知の方法で加水分解することによって製造することができる。
【0023】
これら樹脂質共重合体の配合量は、(A)成分100質量部に対して5〜50質量部であり、特に5〜40質量部が好ましい。5質量部未満では十分な耐酸性が得られず、50質量部を超えると圧縮永久歪が大きくなってしまう。
【0024】
〔(C)成分〕
本発明の(C)成分の一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のSiH基(珪素原子に結合した水素原子)が、前記(A)及び(B)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための架橋剤として作用するものである。
【0025】
この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(II)
R
2bH
cSiO
{4-(b+c)}/2 …(II)
(式中、R
2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0、かつb+c=0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、一分子中に少なくとも3個(通常、3〜300個)、好ましくは3〜100個、より好ましくは3〜50個の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するものが好適に用いられる。
【0026】
ここで、R
2の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、前述のR
1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有しないものが好ましい。また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5である。
【0027】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状又は三次元網目状のいずれの構造であってもよく、一分子中の珪素原子の数又は重合度が2〜300(個)、特に4〜150(個)程度の室温(25℃)で液状(通常、25℃で1,000mPa・s以下、好ましくは0.1〜500mPa・s程度)のものが好適に用いられる。ここで、この粘度値は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)による値である。
【0028】
なお、珪素原子に結合する水素原子は、分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0029】
上記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)
3SiO
1/2単位とからなる共重合体や、上記の例示化合物において、メチル基の一部又は全部が他のアルキル基やフェニル基等で置換されたものなどが挙げられる。
【0030】
本発明の(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは0.6〜15質量部であるが、また、(A)及び(B)成分中のアルケニル基の合計に対する(C)成分中の珪素原子と結合する水素原子(SiH基)とのモル比が、珪素原子と結合する水素原子(SiH基)/アルケニル基=0.8〜5.0、特に1.0〜3.0になるように(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを配合することが好ましい。(C)成分の配合量(質量)が少なすぎる場合やこの比が0.8より小さい場合には十分なゴム硬度が得られない場合があり、(C)成分の配合量(質量)が多すぎたり、この比が5.0より大きい場合にはSiH基が多く残るためにゴム硬化物の圧縮永久歪が大きくなって、シール性が不十分となってしまう場合がある。
【0031】
〔(D)成分〕
(D)成分のヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)は、シリコーンゴムに十分な強度を与えるために必須なものである。ヒュームドシリカのBET法による比表面積は、50〜400m
2/g、好ましくは100〜350m
2/gで、50m
2/gより小さいと耐酸性が悪くなってしまい、また400m
2/gより大きいと圧縮永久歪が大きくなってしまう。これらヒュームドシリカはそのまま用いても構わないが、表面疎水化処理剤で予め処理したものを使用したり、あるいはシリコーンオイルとの混練時に表面処理剤を添加して処理することにより使用することが好ましい。これら表面処理剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステルなど公知のものを1種で用いてもよく、また2種以上を同時又は異なるタイミングで用いても構わない。
【0032】
また、これらヒュームドシリカの配合量は、(A)成分100質量部に対して10〜30質量部であり、特に12〜28質量部であることが好ましい。配合量が10質量部より少ないと十分なゴム強度が得られず、また30質量部より多いと圧縮永久歪が大きくなりシール性が悪くなってしまう。
【0033】
〔(E)成分〕
(E)成分の付加反応触媒は、(A)及び(B)成分中の珪素原子結合アルケニル基と(C)成分中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)とをヒドロシリル化付加反応させるための触媒である。上記付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属系触媒が挙げられるが、特に白金系触媒が好ましい。
【0034】
触媒の添加量は、付加反応を促進できればよく、触媒量であり、通常、(A)成分に対して白金族金属量(質量換算)として、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度が好ましい。0.5ppm未満では付加反応が十分促進されず、硬化が不十分となる場合があり、1,000ppmを超えると、反応性に対する効果が変わらなくなる場合があり、不経済である。
【0035】
〔(F)成分〕
(F)成分は、トリアゾール系化合物及びイミダゾール系化合物から選ばれる1種又は2種以上の窒素含有複素環式化合物であって、このトリアゾール系化合物としては、ベンゾトリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びこれらの誘導体(例えば、シラン変性化合物、シロキサン変性化合物等)を挙げることができる。また、イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール及びこれらの誘導体を挙げることができる。
本発明においては、(F)成分をシリコーンゴム組成物中に均一に分散させるのに際して、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレンなどの有機溶剤に溶解して使用してもよい。なお、(F)成分を有機溶剤に溶解して組成物中に配合する場合、通常、溶解させた溶液中の(F)成分の濃度は、5〜95質量%、特に10〜80質量%程度とすることが好ましい。
【0036】
(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.001質量部以上0.1質量部未満、好ましくは0.001〜0.09質量部、より好ましくは0.002〜0.05質量部の範囲である。0.001質量部未満であると併用時の効果が現れず、0.1質量部以上であると硬化阻害を起こしやすく、硬化速度が著しく低下するためである。
【0037】
(F)成分に関しては、特開2009−26752号公報(特許文献2)の請求項3及び請求項4にも記載が見られ、好ましい添加量として0.1〜50質量部とある。しかし、実施例には本成分の添加は見られず、また、この量を実際に添加すると上述の通り、硬化阻害を起こしやすく、硬化速度が著しく低下するおそれがある。
【0038】
〔その他の成分〕
また、本発明に用いる組成物には、その他の成分として、必要に応じて沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムのような充填剤や、(F)成分以外の窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、カーボンブラック等の導電性付与剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を配合することも可能である。
【0039】
本発明に用いられる付加反応硬化型シリコーンゴム組成物は、上記(A)〜(F)成分、及び必要に応じてその他の成分を、常法に準じて混合することにより調製することができる。
【0040】
本発明に係る固体高分子型燃料電池セパレータ用シールの製造方法は、上記した(A)〜(F)成分を含有してなる特定の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を選択的に用いて、固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部に適用し、該シリコーンゴム組成物を、ポストキュア(2次硬化)することなく加熱成形(1次硬化)工程のみによって、固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも一方の表面の周縁部にシリコーンゴム硬化物からなる弾性シール層を形成するものであるが、このシリコーンゴム組成物の加熱成形(1次硬化)工程としては、公知の成形方法を採用することができる。
【0041】
該シリコーンゴム組成物を加熱成形(1次硬化)する方法としては、例えば、プライマー層を形成したセパレータ基材上に、コンプレッション成形、トランスファー成形、射出成形等によるインサート成形やスクリーン印刷等の手法を採用することによってセパレータの少なくとも一方の表面の周縁部にシリコーンゴム弾性シール層を形成することができる。硬化成形する際のシリコーンゴム組成物の硬化温度は、通常、40℃程度の低温から高温まで適宜選択し得るが、通常、100〜220℃で10秒〜10分間、特に120〜200℃で10秒〜3分間程度で硬化成形することが好ましい。
【0042】
また、該シリコーンゴム組成物を硬化成形して得られる弾性シール層の厚さは、通常50〜5,000μm、特に100〜1,000μm程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、平均重合度と平均分子量は、トルエンを展開溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算の重量平均重合度と重量平均分子量である。
【0044】
[実施例1]
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(1)100質量部、BET法による比表面積が110m
2/gである疎水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R972)30質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、及び水2.0質量部を30分混合して、160℃に昇温し、1時間撹拌を続けた後、冷却した。こうして得られたシリコーンベース100質量部に、(CH
3)
3SiO
1/2単位、(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位及びSiO
2単位からなる樹脂質共重合体[{(CH
3)
3SiO
1/2単位+(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位}/SiO
2単位=0.95(モル比)、ビニル基含有量=0.00025mol/g、重量平均分子量2,200]15質量部、カーボンブラック粉末A(デンカブラックHS−100、電気化学工業(株)製、BET法による比表面積39m
2/g、沃素吸着量52mg/g、DBP吸油量140ml/100g)1質量部、及びジメチルポリシロキサン(1)50質量部を添加し、30分撹拌した。更に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、及びベンゾトリアゾール(10質量%エタノール溶液)0.1質量部を添加し、15分撹拌した。最後に、架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(2)(重合度20、SiH基量0.0055mol/gの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)5.4質量部[SiH基/アルケニル基=1.2(モル比)]を添加し、15分撹拌してシリコーンゴム組成物を得た。
【0045】
得られたシリコーンゴム組成物を150℃×5分でプレスキュア(1次硬化)後、JIS K6249に基づき、硬さ及び圧縮永久歪の測定を行った。なお、圧縮永久歪は150℃×22時間の条件で測定した。結果を表1に示す。
また、プライマーを塗布した(信越化学工業(株)製 プライマーNo.101A/B 風乾後150℃×30分焼付け)SUS板上に、シリコーンゴム組成物を接触させて150℃×5分でプレスキュア(1次硬化)により上記シリコーンゴム組成物を硬化させ(ゴム厚さ0.3mm)、これを0.01規定硫酸水溶液中120℃×500時間浸漬し、取り出した後、接着部の端部を千枚通しでひっかき、接着部を手で剥がしてゴムの凝集破壊率(破断面積全体に対する接着部がSUS板から界面剥離せずに凝集破壊した面積の比率)を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例1]
実施例1において、得られたシリコーンゴム組成物を150℃×5分でプレスキュア(1次硬化)した後、更にオーブン内で200℃×4時間でポストキュア(2次硬化)を行った硬化物について、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0047】
[比較例2]
実施例1において、ベンゾトリアゾール(10質量%エタノール溶液)0.1質量部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、同様にして各試験を実施した。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例3]
比較例2において、得られたシリコーンゴム組成物を150℃×5分でプレスキュア(1次硬化)した後、更にオーブン内で200℃×4時間でポストキュア(2次硬化)を行った硬化物について、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】