(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース樹脂としての高分子化合物が、酸不安定基を有する繰り返し単位、及びヒドロキシ基及び/又はラクトン環の密着性基を有する繰り返し単位を含むものであることを特徴とする請求項2に記載のレジスト材料。
前記高エネルギー線が、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのArFエキシマレーザー、電子ビーム、又は波長3〜15nmの範囲の軟X線であることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としては、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジスト膜を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの2重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)などが候補であり、検討が進められている。
【0003】
電子ビーム(EB)やX線などの非常に短波長な高エネルギー線においてはレジスト材料に用いられている炭化水素のような軽元素は吸収がほとんどなく、ポリヒドロキシスチレンベースのレジスト材料が検討されている。
EB用レジスト材料は、実用的にはマスク描画用途に用いられてきた。近年、マスク製作技術が問題視されるようになってきた。露光に用いられる光がg線の時代から縮小投影露光装置が用いられており、その縮小倍率は1/5であったが、チップサイズの拡大と、投影レンズの大口径化と共に1/4倍率が用いられるようになってきたため、マスクの寸法ズレがウエハー上のパターンの寸法変化に与える影響が問題になっている。パターンの微細化と共に、マスクの寸法ズレの値よりもウエハー上の寸法ズレの方が大きくなってきていることが指摘されている。マスク寸法変化を分母、ウエハー上の寸法変化を分子として計算されたMask Error Enhancement Factor(MEEF)が求められている。45nm級のパターンでは、MEEFが4を超えることも珍しくない。縮小倍率が1/4でMEEFが4であれば、マスク製作において実質等倍マスクと同等の精度が必要であることが言える。
【0004】
マスク製作用露光装置は線幅の精度を上げるため、レーザービームによる露光装置から電子ビーム(EB)による露光装置が用いられてきた。更にEBの電子銃における加速電圧を上げることによってより一層の微細化が可能になることから、10keVから30keV、最近は50keVが主流であり、100keVの検討も進められている。
【0005】
ここで、加速電圧の上昇と共に、レジスト膜の低感度化が問題になってきた。加速電圧が向上すると、レジスト膜内での前方散乱の影響が小さくなるため、電子描画エネルギーのコントラストが向上して解像度や寸法制御性が向上するが、レジスト膜内を素抜けの状態で電子が通過するため、レジスト膜の感度が低下する。マスク露光機は直描の一筆書きで露光するため、レジスト膜の感度低下は生産性の低下につながり好ましいことではない。高感度化の要求から、化学増幅型レジスト材料が検討されている。
【0006】
マスク製作用EBリソグラフィーのパターンの微細化と共に、高アスペクト比による現像時のパターン倒れ防止のためにレジスト膜の薄膜化が進行している。光リソグラフィーの場合、レジスト膜の薄膜化が解像力向上に大きく寄与している。これはCMPなどの導入により、デバイスの平坦化が進行したためである。マスク作製の場合、基板は平坦であり、加工すべき基板(例えばCr、MoSi、SiO
2)の膜厚は遮光率や位相差制御のために決まってしまっている。薄膜化するためにはレジスト膜のドライエッチング耐性を向上させる必要がある。
【0007】
ここで、一般的にはレジスト膜の炭素の密度とドライエッチング耐性について相関があるといわれている。吸収の影響を受けないEB描画においては、エッチング耐性に優れるノボラックポリマーをベースとしたレジスト材料が開発されている。
特許第3865048号公報(特許文献1)に示されるインデン共重合、特開2006−169302号公報(特許文献2)に示されるアセナフチレン共重合は炭素密度が高いだけでなく、シクロオレフィン構造による剛直な主鎖構造によってエッチング耐性の向上が示されている。
【0008】
波長5〜20nmの軟X線(EUV)露光において、炭素原子の吸収が少ないことが報告されている。炭素密度を上げることがドライエッチング耐性の向上だけでなく、軟X線波長領域における透過率向上にも効果的である。
微細化の進行と共に、酸の拡散による像のぼけが問題になっている。寸法サイズ45nm以降の微細パターンでの解像性を確保するためには、従来提案されている溶解コントラストの向上だけでなく、酸拡散の制御が重要であることが提案されている。しかしながら、化学増幅型レジスト材料は、酸の拡散によって感度とコントラストを上げているため、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)温度や時間を短くして酸拡散を極限まで抑えようとすると感度とコントラストが著しく低下する。酸不安定基の種類と酸拡散距離とは密接な関係があり、極めて短い酸拡散距離で脱保護反応が進行する酸不安定基の開発が望まれている。
【0009】
感度とエッジラフネスと解像度のトレードオフの関係が報告されている。感度を上げるとエッジラフネスと解像度が劣化し、酸拡散を抑えると解像度が向上するがエッジラフネスと感度が低下する。
バルキーな酸が発生する酸発生剤を添加して酸拡散を抑えることは有効であるが、前述の通りエッジラフネスと感度が低下する。そこで、ポリマーに重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤を共重合することが提案されている。特開平4−230645号公報(特許文献3)、特開2005−84365号公報(特許文献4)、特開2006−45311号公報(特許文献5)には、特定のスルホン酸が発生する重合性オレフィンを有するスルホニウム塩、ヨードニウム塩が提案されている。重合性の酸発生剤を共重合したベースポリマーを用いたフォトレジストは、酸拡散が小さくかつ酸発生剤がポリマー内に均一分散しているためにエッジラフネスも小さく、解像度とエッジラフネスの両方の特性を同時に向上させることができる。
【0010】
EUVリソグラフィーにおいて、露光中のレジスト膜から発生するアウトガス成分が露光装置内の反射ミラーやマスクの表面に吸着し、反射率を低下させることが問題になっている。アウトガスの低減のためにレジスト膜の上方に保護膜を設けることが提案されている。この場合、保護膜塗布用のコーターカップが必要となる。液浸リソグラフィーの初期段階においては、レジスト膜から水への酸発生剤の溶出を防ぐために保護膜が適用された。しかしながら、保護膜を設けることによるスループットの低下と材料コストの上昇が問題となり、徐々に保護膜は使われなくなった。このような背景を考えるにあたり、EUVリソグラフィーにおいても保護膜を使わずにアウトガスを低減させるレジスト材料の開発が求められている。
【0011】
特許第4771974号公報(特許文献6)、特許第4900603号公報(特許文献7)にはそれぞれスチレン誘導体とフッ素原子を有する繰り返し単位との共重合ポリマー、ビニルナフタレンとフッ素原子を有する繰り返し単位との共重合ポリマーを添加したレジスト材料が提案されている。これらは、スピンコート後の表層にスチレン単位やビニルナフタレン単位を有するポリマーが配向し、撥水性と反射防止効果の両方の特性を得ることができる。また、EUV露光におけるアウトガスの発生を抑えることができることについても言及している。しかしながら、スチレンやビニルナフタレン単位ではアウトガスの発生を十分に抑えることができず、更に効果的にアウトガスを遮断させることができるレジスト表面改質材料の開発が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、上記した問題を解決するため鋭意検討及び研究を重ねた結果、EUV露光における真空中の露光中におけるレジスト膜からのアウトガスの発生を抑えるために酸によってアルカリに溶解する通常のベースポリマーに加えてアセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンから選ばれる1以上のモノマーに由来する繰り返し単位とフッ素を1個以上有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物をブレンドしたレジスト材料を用いることを発明した。アセナフチレンやインデン類は剛直で高密度なためにフォトレジスト膜からのアウトガスの発生を遮断する効果がある。また、フッ素原子を有する繰り返し単位と共重合することによって、スピンコート後のレジスト膜表面に配向させることができる。
【0019】
即ち、本発明は、酸によってアルカリ溶解性が向上するベース樹脂となる高分子化合物と、高分子添加剤としてアセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンから選ばれる1以上のモノマーに由来する繰り返し単位と少なくとも1個のフッ素原子を有する繰り返し単位とを共重合した高分子化合物、特に下記一般式(1)で示される高分子化合物とを含むことを特徴とするレジスト材料である。
【0020】
【化4】
(式中、R
1、R
2は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシロキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は−OC(=O)R基(Rは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はフッ素化アルキル基)である。R
3、R
6は水素原子又はメチル基を示す。X
2は単結合、−O−、−C(=O)−O−R
8−又は−C(=O)−NH−R
8−であり、R
8は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。nは1又は2であり、n=1の場合、X
1は単結合、−O−、−C(=O)−O−R
8−、又は−C(=O)−NH−R
8−であり、R
8は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、フッ素原子で置換されていてもよく、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。n=2の場合、X
1は−C(=O)−O−R
9=又は−C(=O)−NH−R
9=であり、R
9は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基から水素原子が1個脱離した3価の基であり、フッ素原子で置換されていてもよく、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R
4は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基、又は該アルキレン基とフェニレン基が結合した基で、フッ素原子で置換されていてもよく、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。R
5は水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はジフルオロメチル基、又はR
4と結合して環を形成してもよく、環の中にエーテル基、フッ素で置換されたアルキレン基又はトリフルオロメチル基を有していてもよい。R
7は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、少なくとも1個のフッ素原子で置換されていて、エーテル基、エステル基又はスルホンアミド基を有していてもよい。Mはメチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。0≦(p−1)<1.0、0≦(p−2)<1.0、0<(p−1)+(p−2)<1.0、0≦(q−1)<1.0、0≦(q−2)<1.0、0<(q−1)+(q−2)<1.0、0.5≦(p−1)+(p−2)+(q−1)+(q−2)≦1.0である。)
【0021】
上記一般式(1)の繰り返し単位を有する高分子化合物を添加したレジスト材料を用いて形成したフォトレジスト膜は、フォトレジスト膜表面に一般式(1)で示されるアセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンから選ばれる1以上のモノマーに由来する繰り返し単位とフルオロアルキル基を有する繰り返し単位を共重合した高分子型の界面活性剤を添加することが特徴である。アセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンから選ばれる1以上のモノマーに由来する繰り返し単位とフルオロアルキル基を有する繰り返し単位を共重合した高分子型の界面活性剤がフォトレジスト成膜後、フォトレジスト膜表面に配向し、レジスト膜からのアウトガスの発生を低減させ、現像後のパターン欠陥を低減させることができる。
【0022】
上記一般式(1)中の(p−1)及び(p−2)で示されるアセナフチレン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンから選ばれる1以上のモノマーに由来する繰り返し単位(p−1)、(p−2)を得るための重合性モノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【0025】
モノマーの段階では、ヒドロキシ基をアセチル基や、アセタール基等で置換しておいて、重合後の脱保護反応によってヒドロキシ基にすることができる。ヒドロキシ基がアセチル基で置換されている場合、重合後のアルカリ加水分解でアセチル基を脱保護化してヒドロキシ基にし、またヒドロキシ基がアセタール等の酸不安定基で置換されている場合、酸触媒による加水分解で脱保護化してヒドロキシ基にする。
【0026】
フッ素原子を有する繰り返し単位としては、(q−1)で示されるαトリフルオロメチルアルコール基を有する繰り返し単位と、(q−2)で示されるフルオロアルキル基を有する繰り返し単位を示すことができる。
【0027】
上記一般式(1)中の(q−1)で示されるαトリフルオロメチルアルコール基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記に例示することができる。
【0032】
【化11】
(式中、R
3は前述と同様である。)
【0033】
更に、上記一般式(1)中の(q−2)で示されるフッ素で置換されたアルキル基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記の具体例を挙げることができる。
【0036】
【化14】
(式中、R
6は前述と同様である。)
【0037】
本発明のレジスト材料に添加する高分子化合物としては、上記一般式(1)中の(p−1)、(p−2)、(q−1)、(q−2)で示される繰り返し単位に加え、アルカリ溶解性を向上させたり、現像後のレジストの親水性を向上させる目的でカルボキシル基を有する繰り返し単位rを共重合することができる。
カルボキシル基を有する繰り返し単位rとしては、具体的には下記に例示することができる。
【0041】
本発明のレジスト材料に高分子添加剤として添加する高分子化合物としては、繰り返し単位p−1、p−2、q−1、q−2、更にrを構成単位とし得るが、これらの繰り返し単位の割合は下記の通りである。
pは、0≦(p−1)<1.0、0≦(p−2)<1.0、0<(p−1)+(p−2)<1.0、好ましくは0≦(p−1)≦0.9、0≦(p−2)≦0.9、0.02≦(p−1)+(p−2)≦0.9、更に好ましくは0≦(p−1)≦0.8、0≦(p−2)≦0.8、0.04≦(p−1)+(p−2)≦0.8である。
qは、0≦(q−1)<1.0、0≦(q−2)<1.0、0<(q−1)+(q−2)<1.0、0.5≦(p−1)+(p−2)+(q−1)+(q−2)≦1.0である。
rは、0≦r<1.0、好ましくは0≦r≦0.8、更に好ましくは0≦r≦0.7である。また、(p−1)+(p−2)+(q−1)+(q−2)+r=1.0である。
【0042】
本発明のレジスト材料に用いるベース樹脂としては、酸不安定基を有する繰り返し単位を有することを必須とするが、かかる繰り返し単位としては、下記一般式(2)で示される酸不安定基R
11で置換された(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位a1、又は酸不安定基R
13で置換されたヒドロキシスチレンの繰り返し単位a2であることが好ましい。
【化18】
(式中、R
10、R
12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
11、R
13は酸不安定基を表す。Y
1は単結合、エステル基,ラクトン環,フェニレン基又はナフチレン基のいずれか1種又は2種以上を有する炭素数1〜12の連結基、フェニレン基、又はナフチレン基である。Y
2は単結合、エステル基、又はアミド基である。0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0<a1+a2<1.0の範囲である。)
【0043】
繰り返し単位a1を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【化19】
(式中、R
10、R
11は前述と同様である。)
【0044】
繰り返し単位a2を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【化20】
(式中、R
12、R
13は前述と同様である。)
【0045】
酸不安定基(一般式(2)のR
11、R
13の酸不安定基)は、種々選定されるが、同一でも異なっていてもよく、特に下記一般式(A−1)〜(A−3)で置換された基で示されるものが挙げられる。
【0047】
式(A−1)において、R
L30は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の3級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記式(A−3)で示される基を示し、3級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。A1は0〜6の整数である。
【0048】
式(A−2)において、R
L31、R
L32は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示できる。R
L33は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0050】
R
L31とR
L32、R
L31とR
L33、R
L32とR
L33とは結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するR
L31、R
L32、R
L33はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、好ましくは環の炭素数は3〜10、特に4〜10である。
【0051】
上記式(A−1)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0052】
更に、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で示される置換基を挙げることもできる。
【化23】
【0053】
ここで、R
L37は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、R
L38は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。
また、R
L39は互いに同一又は異種の炭素数2〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
A1は上記の通りである。
【0054】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A−2)−1〜(A−2)−35のものを例示することができる。
【化24】
【0056】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0057】
また、下記式(A−2a)あるいは(A−2b)で表される酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【化26】
【0058】
式中、R
L40、R
L41は水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R
L40とR
L41は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するR
L40、R
L41は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R
L42は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、B1、D1は0又は1〜10、好ましくは0又は1〜5の整数、C1は1〜7の整数である。Aは、(C1+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
この場合、好ましくは、Aは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキルトリイル基、アルキルテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基はヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、C1は好ましくは1〜3の整数である。
【0059】
上記式(A−2a)、(A−2b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(A−2)−36〜(A−2)−43のものが挙げられる。
【化27】
【0060】
次に、上記式(A−3)においてR
L34、R
L35、R
L36は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素などのヘテロ原子を含んでもよく、R
L34とR
L35、R
L34とR
L36、R
L35とR
L36とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜20の環を形成してもよい。
式(A−3)で示される3級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−アミル基等を挙げることができる。
また、3級アルキル基としては、下記に示す式(A−3)−1〜(A−3)−18を具体的に挙げることもできる。
【化28】
【0061】
上記式(A−3)−1〜(A−3)−18中、R
L43は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のフェニル基、ナフチル基等のアリール基を示す。R
L44、R
L46は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R
L45は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。
【0062】
更に、下記式(A−3)−19、(A−3)−20に示すように、2価以上のアルキレン基、アリーレン基であるR
L47を含んで、ポリマーの分子内あるいは分子間が架橋されていてもよい。
【化29】
【0063】
上記式(A−3)−19、(A−3)−20中、R
L43は前述と同様、R
L47は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基等のアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。E1は1〜3の整数である。
【0064】
特に式(A−3)の酸不安定基としては下記式(A−3)−21に示されるエキソ体構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位が好ましく挙げられる。
【化30】
(式中、R
10は前述の通り、R
c3は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R
c4〜R
c9及びR
c12、R
c13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示し、R
c10、R
c11は水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。R
c4とR
c5、R
c6とR
c8、R
c6とR
c9、R
c7とR
c9、R
c7とR
c13、R
c8とR
c12、R
c10とR
c11又はR
c11とR
c12は互いに環を形成していてもよく、その場合には炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。またR
c4とR
c13、R
c10とR
c13又はR
c6とR
c8は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0065】
ここで、式(A−3)−21に示すエキソ構造を有する繰り返し単位を得るためのエステル体のモノマーとしては特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【化31】
【0066】
次に、式(A−3)に示される酸不安定基としては、下記式(A−3)−22に示されるフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの酸不安定基を挙げることができる。
【化32】
(式中、R
10は前述の通りである。R
c14、R
c15はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R
c14、R
c15は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R
c16はフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基から選ばれる2価の基を示す。R
c17は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0067】
フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基で置換された繰り返し単位を得るためのモノマーは下記に例示される。なお、Acはアセチル基、Meはメチル基を示す。
【化33】
【0069】
本発明のレジスト材料のベース樹脂とする高分子化合物としては、上記一般式(2)中のa1、a2で示される酸不安定基を有する繰り返し単位に加え、他成分との相溶性を向上させたり、レジスト表面の膜減りを抑えたりする目的のために、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カルボニル基、カーボネート基、エステル基、エーテル基、アミド基、スルホンアミド基、シアノ基、スルホン酸エステル基、ラクタム等の密着性基を有する繰り返し単位cを共重合することが好ましい。この場合、この繰り返し単位cとしては、電子ビーム及びEUV露光によって増感効果があるフェノール性水酸基を有するものが好ましく、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(4)で示されるc1〜c9から選ばれることが好ましい。
【0070】
【化35】
(式中、V
1、V
2、V
5は単結合、又は−C(=O)−O−R
23−であり、V
3、V
4は−C(=O)−O−R
24−であり、R
23、R
24は単結合、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよい。R
22は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基又はアシル基であり、R
21は同一又は異種の水素原子又はメチル基である。W
1、W
2はメチレン基又はエチレン基、W
3はメチレン基、酸素原子又は硫黄原子、W
4、W
5はCH又は窒素原子である。s、tは1又は2である。)
【0071】
上記フェノール性水酸基を有する繰り返し単位c1〜c9を得るためのモノマーは、下記に示すことができる。
【0078】
また、フェノール性水酸基以外のヒドロキシ基、ラクトン環、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シアノ基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、環状の−O−C(=O)−S−又は−O−C(=O)−NH−から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位cを得るためのモノマーとしては、具体的には下記に例示することができる。
【0087】
ヒドロキシ基を有するモノマーの場合、重合時にヒドロキシ基をエトキシエトキシ基などの酸によって脱保護し易いアセタールで置換しておいて、重合後に弱酸と水によって脱保護を行ってもよいし、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で置換しておいて重合後にアルカリ加水分解を行ってもよい。
【0088】
本発明のベース樹脂となる高分子化合物は、更に下記一般式(5)で示されるインデン、アセナフチレン、クロモン、クマリン、ノルボルナジエン及びこれらの誘導体に由来するd1〜d5から選ばれる繰り返し単位を共重合してなることが好ましい。
【0089】
【化50】
(式中、R
25は同一又は異種の水素原子、それぞれ炭素数1〜30のアルキル基、一部又は全てがハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基である。W
6はメチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。)
【0090】
この場合、インデン、アセナフチレン、クロモン、クマリン、ノルボルナジエン及びこれらの誘導体d1〜d5を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【化51】
【0091】
更に、本発明のベース樹脂となる高分子化合物には、重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤bを共重合することもできる。
特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報、特開2006−45311号公報には、特定のスルホン酸が発生する重合性オレフィンを有するスルホニウム塩、ヨードニウム塩が提案されている。特開2006−178317号公報には、スルホン酸が主鎖に直結したスルホニウム塩が提案されている。
【0092】
本発明では、下記一般式(3)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位b1〜b3を共重合することができる。
【化52】
(式中、R
020、R
024、R
028は水素原子又はメチル基、R
021は単結合、フェニレン基、−O−R
033−、又は−C(=O)−Y−R
033−である。Yは酸素原子又はNH、R
033は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R
022、R
023、R
025、R
026、R
027、R
029、R
030、R
031は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z
1は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
032−、又は−C(=O)−Z
2−R
032−である。Z
2は酸素原子又はNH、R
032は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0≦b3≦0.3、0≦b1+b2+b3≦0.3の範囲である。)
【0093】
M
-の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸を挙げることができる。
【0094】
ポリマー主鎖に酸発生剤を結合させることによって酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像性の低下を防止できる。また、酸発生剤が均一に分散することによってエッジラフネス(LER、LWR)が改善される。
【0095】
ここで、繰り返し単位a、b、c、dの割合は下記の通りである。
aは、0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0<a1+a2<1.0、好ましくは0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0.1≦a1+a2≦0.8、更に好ましくは0≦a1≦0.7、0≦a2≦0.7、0.2≦a1+a2≦0.7の範囲である。
bは、0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0≦b3≦0.3、0≦b1+b2+b3≦0.3の範囲である。
cは、0≦c<1.0、好ましくは0≦c≦0.9、更に好ましくは0≦c≦0.8、dは、0≦d≦0.5、好ましくは0≦d≦0.4、更に好ましくは0≦d≦0.3であり、0.5≦a1+a2+b1+b2+b3+c≦1.0、好ましくは0.6≦a1+a2+b1+b2+b3+c≦1.0、更に好ましくは0.7≦a1+a2+b1+b2+b3+c≦1.0であり、a1+a2+b1+b2+b3+c+d=1である。
なお、例えば、a+b+c=1とは、繰り返し単位a、b、cを含む高分子化合物において、繰り返し単位a、b、cの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a+b+c<1とは、繰り返し単位a、b、cの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa、b、c以外に他の繰り返し単位を有していることを示す。
【0096】
一般式(1)で示されるレジスト膜表面改質用添加ポリマー及び一般式(2)で示される酸不安定基を有するベースポリマーを合成するには、1つの方法としては、繰り返し単位p、q、r、a〜dを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加え加熱重合を行い、共重合体の高分子化合物を得ることができる。
【0097】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0098】
ヒドロキシアセナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシアセナフタレンの代わりにアセトキシアセナフタレンを用い、重合後上記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してヒドロキシポリアセナフタレンにする方法もある。
【0099】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0100】
本発明のレジスト材料に高分子添加剤あるいはベース樹脂として用いられる高分子化合物は、それぞれ重量平均分子量が1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料が耐熱性に劣るものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなってしまう。
なお、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリスチレン換算による測定値である。
【0101】
更に、本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物においては、それぞれ多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
また、レジストベースポリマーの組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0102】
本発明は、繰り返し単位としてp−1、p−2、q−1、q−2、rを有し、コート後のレジスト表面に配向することによってレジスト膜からのアウトガスの発生を低減し、ブリッジ欠陥やブロッブ欠陥の発生を防止してLWRを低減するためのアルカリ可溶性の添加剤と、繰り返し単位としてa1、a2、b1、b2、b3、c、dを有する酸によってアルカリ現像液に可溶となるポリマーをブレンドした樹脂をベースとする。表面配向の添加剤のブレンド割合は、酸不安定基含有ポリマー100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.2〜30質量部、更に好ましくは0.2〜20質量部である。表面配向の添加剤の単独のアルカリ溶解速度は0.1〜100,000nm/s、好ましくは1〜50,000nm/s、更に好ましくは10〜20,000nm/sの範囲である。
【0103】
本発明のレジスト材料には、本発明のパターン形成方法に用いる化学増幅ポジ型レジスト材料を機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。なお、ベース樹脂として上述した繰り返し単位bを共重合した高分子化合物を用いた場合、酸発生剤の配合を省略し得る。
【0104】
本発明のレジスト材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられ、塩基性化合物としては段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物を挙げることができ、界面活性剤は段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は段落[0179]〜[0182]に記載されている。特開2008−239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーを添加することもできる。このものは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0105】
なお、酸発生剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.01〜100質量部、特に0.1〜80質量部とすることが好ましく、有機溶剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し50〜10,000質量部、特に100〜5,000質量部であることが好ましい。また、ベース樹脂100質量部に対し、溶解制御剤は0〜50質量部、特に0〜40質量部、塩基性化合物は0〜100質量部、特に0.001〜50質量部、界面活性剤は0〜10質量部、特に0.0001〜5質量部の配合量とすることが好ましい。
【0106】
本発明のレジスト材料、例えば有機溶剤と、一般式(1)で示される高分子添加剤、一般式(2)で示される高分子化合物と、酸発生剤、塩基性化合物を含む化学増幅ポジ型レジスト材料を種々の集積回路製造に用いる場合は、特に限定されないが公知のリソグラフィー技術を適用することができる。
【0107】
例えば、本発明のレジスト材料を、集積回路製造用の基板(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi、SiO
2等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.1〜2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間プリベークする。次いで、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、真空紫外線(軟X線)等の高エネルギー線から選ばれる光源で目的とするパターンを所定のマスクを通じてもしくは直接露光を行う。露光量は1〜200mJ/cm
2程度、特に10〜100mJ/cm
2、又は0.1〜100μC/cm
2程度、特に0.5〜50μC/cm
2となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0108】
更に、0.1〜10質量%、好ましくは2〜10質量%、特に2〜8質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒〜3分間、好ましくは5秒〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも電子線、真空紫外線(軟X線)、X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに最適である。
【0109】
一般的に広く用いられているTMAH水溶液よりも、アルキル鎖を長くしたTEAH、TPAH、TBAHは現像中の膨潤を低減させてパターンの倒れを防ぐ効果がある。特許第3429592号公報には、アダマンタンメタクリレートのような脂環構造を有する繰り返し単位と、tert−ブチルメタクリレートのような酸不安定基を有する繰り返し単位を共重合し、親水性基がなくて撥水性の高いポリマーの現像のために、TBAH水溶液を用いた例が提示されている。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)現像液は2.38質量%の水溶液が最も広く用いられている。これは0.26Nに相当し、TEAH、TPAH、TBAH水溶液も同じ規定度であることが好ましい。0.26NとなるTEAH、TPAH、TBAHの質量は、それぞれ3.84質量%、5.31質量%、6.78質量%である。
EB、EUVで解像される32nm以下のパターンにおいて、ラインがよれたり、ライン同士がくっついたり、くっついたラインが倒れたりする現象が起きている。これは、現像液中に膨潤して膨らんだライン同士がくっつくのが原因と考えられる。膨潤したラインは、現像液を含んでスポンジのように軟らかいために、リンスの応力で倒れ易くなっている。アルキル鎖を長くした現像液はこのような理由で、膨潤を防いでパターン倒れを防ぐ効果がある。
【0110】
有機溶剤現像によってネガ型のパターンを得ることもできる。現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0111】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0112】
具体的に、炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンなどが挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどが挙げられる。炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチンなどが挙げられる。炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールなどが挙げられる。
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。
前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0114】
(高分子化合物の調製)
レジスト材料に添加される高分子化合物(高分子添加剤)として、各々のモノマーを組み合わせてメチルエチルケトン溶剤下で共重合反応を行い、ヘキサンに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して以下に示す組成の高分子化合物を得た。得られた高分子化合物の組成は
1H−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0115】
ポリマー1(Polymer 1)
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.85
【化53】
【0116】
ポリマー2(Polymer 2)
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.82
【化54】
【0117】
ポリマー3(Polymer 3)
分子量(Mw)=7,200
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化55】
【0118】
ポリマー4(Polymer 4)
分子量(Mw)=8,000
分散度(Mw/Mn)=1.80
【化56】
【0119】
ポリマー5(Polymer 5)
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.74
【化57】
【0120】
ポリマー6(Polymer 6)
分子量(Mw)=9,200
分散度(Mw/Mn)=1.84
【化58】
【0121】
ポリマー7(Polymer 7)
分子量(Mw)=6,800
分散度(Mw/Mn)=1.65
【化59】
【0122】
ポリマー8(Polymer 8)
分子量(Mw)=6,300
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化60】
【0123】
ポリマー9(Polymer 9)
分子量(Mw)=6,800
分散度(Mw/Mn)=1.65
【化61】
【0124】
ポリマー10(Polymer 10)
分子量(Mw)=6,100
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化62】
【0125】
ポリマー11(Polymer 11)
分子量(Mw)=6,600
分散度(Mw/Mn)=1.89
【化63】
【0126】
ポリマー12(Polymer 12)
分子量(Mw)=6,300
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化64】
【0127】
ポリマー13(Polymer 13)
分子量(Mw)=6,300
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化65】
【0128】
[実施例及び比較例]
(レジスト材料の調製)
EUV露光パターン形成評価
通常のラジカル重合で得られた上記レジスト膜表面改質用高分子化合物、下記レジスト用ポリマーを用いて、表1に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
得られたポジ型レジスト材料を直径4インチφのSi基板上に、膜厚35nmで積層された信越化学工業(株)製の珪素含有SOG膜SHB−A940上に塗布し、ホットプレート上で、110℃で60秒間プリベークして35nmのレジスト膜を作製した。NA0.3、Pseudo PSMを使ってEUV露光し、表2記載の温度条件でPEBを行い、0.20規定のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)水溶液で30秒間現像し、純水リンス後スピンドライしてレジストパターンを形成した。20nmラインアンドスペースを形成している感度とこの時に解像している最小寸法の限界解像度と、エッジラフネス(LWR)をSEMにて測定した。結果を表2に示す。
【0129】
EUV露光を想定したアウトガス評価
下記レジスト材料をHMDS処理した12インチウエハーに塗布し、60nm膜厚のレジスト膜を作製した。EUVテクノロジー社のアウトガス測定装置を用いて露光量を変えてEB露光を行い、表3記載の温度でPEBを行い、2.38質量%のTMAHアルカリ水の現像液で現像を行い、膜厚が0nmになる露光量をE0とし、E0の露光量でウエハー全面を露光し、WitnessPlateに付着したコンタミネーション膜厚を分光エリプソメトリで測定した。結果を表3に示す。
【化66】
【0130】
【化67】
【0131】
【化68】
【0132】
【表1】
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
CyH:シクロヘキサノン
FC−4430:フッ素系界面活性剤、住友3M社製
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】