(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の分岐手段の一方の出力光3Bと前記位相変調器の出力光は、前記合波手段で干渉するよう偏波が調整されていることを特徴とする請求項1に記載のキャリア抑圧光発生装置。
前記第2の分岐手段の一方の出力光2Bと前記位相変調器の出力光は、前記合波手段または前記合分波手段で干渉するよう偏波が調整されていることを特徴とする請求項2、3および6のいずれか1項に記載のキャリア抑圧光発生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1において示された光強度変調器では、サブマッハツェンダー光導波路の光量調整を行う際、単純に当該光強度変調器の出力光強度をモニタする。この場合、メインマッハツェンダー光導波路への変調を同時に行うと、モニタした光強度に基づく光量調整が不可能となってしまう。そのため、光量調整は、変調を行わない状態で(すなわち、光強度変調器の実稼働に先立って事前に)行う必要があり、例えば環境変化などに応じるためリアルタイムで高い消光比を実現し維持することができないという問題があった。
【0010】
そこで、このような問題に対処することが可能な技術として、特許文献2が知られている。しかしながら、特許文献2では、光変調器の出力光からキャリア光を切り出すために光フィルタを用いているので、キャリア光と変調によるサイドバンド光との波長差が小さい場合には、光フィルタの波長特性が極めて急峻である必要がある。現状、波長特性が急峻なファイバーレーティング方式に限られており、この方式はその特性の維持に光フィルタ部の厳密な温度制御が必要であるとともに高価である。また、この方式は波長調整範囲が限られ、たとえばキャリア光の波長1540nmと1580nmへの対応を一つの光フィルタでまかなうことはできない。光フィルタの波長の特性を急峻にする技術にも限界があり、特殊な構成のファイバーグレーティングを用いてもキャリア光と変調サイドバンド光の波長差が0.008nm(波長1550nm帯において周波数差で1GHz)以下となる場合への対応は困難である。またサブマッハツェンダーを有さない所謂シングル型のマッハツェンダー光変調器を用いた場合にも、上述した同様の問題が生じていた。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャリア光を変調してサイドバンド光を発生するに際して、従来の構成と異なるより簡易な構成によりキャリア光を抑圧することが可能なキャリア抑圧光発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の態様は、入力されたキャリア光を1Aおよび1Bの2つに分岐する第1の分岐手段と、前記分岐された一方のキャリア光1Aを変調しサイドバンド光を含む光を出力する光変調器と、前記分岐された他方のキャリア光1Bを位相変調する位相変調器と、前記光変調器の出力光を2Aおよび2Bの2つに分岐する第2の分岐手段と、前記第2の分岐手段の一方の出力光2Aを3Aおよび3Bの2つに分岐する第3の分岐手段と、前記第3の分岐手段の一方の出力光3Bと前記位相変調器の出力光を合波する合波手段と、前記合波手段の出力光を検出する第1の光検出手段と、前記第2の分岐手段の他方の出力光2Bを検出する第2の光検出手段と、前記第1の光検出手段によって検出される光パワーの時間波形の振幅
が最小となり、且つ、前記第2の光検出手段によって検出される光パワー
が最大となるように、前記光変調器を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするキャリア抑圧光発生装置である。
【0013】
本発明の第2の態様は、
入力されたキャリア光を1Aおよび1Bの2つに分岐する第1の分岐手段と、
前記分岐された一方のキャリア光1Aを変調しサイドバンド光を含む光を出力する光変調器と、
前記分岐された他方のキャリア光1Bを位相変調する位相変調器と、
前記光変調器の出力光を2Aおよび2Bの2つに分岐する第2の分岐手段と、
前記第2の分岐手段の一方の出力光2Bと前記位相変調器の出力光を合波する合波手段と、
前記合波手段の出力光を検出する光検出手段と、
前記合波手段によって前記サイドバンドを含む出力光2Bと前記位相変調器の出力光が干渉し、その干渉光が前記位相変調器の変調周波数f
kの整数倍の干渉信号を有する光信号として前記光検出手段により検出され電気的信号に変換された後、前記光検出手段から出力される電気的信号から変調周波数f
kの整数倍のf
0_IM成分だけを抽出するf
0_IMフィルタと、
前記光検出手段から出力される前記電気的信号から前記変調周波数f
k以下の周波数成分のみを抽出する平均値出力フィルタと、
前記2つのフィルタからの出力信号に基づいて、制御信号を前記光変調器へ出力する制御手段とを備え
、
前記制御手段は、前記f0_IMフィルタからの出力信号の時間波形の振幅が最小となり、且つ、前記平均値出力フィルタからの出力信号の出力が最大となるように、前記光変調器へ制御信号を出力することを特徴とするキャリア抑圧光発生装置である。
【0014】
本発明の第3の態様は、
入力されたキャリア光を1Aおよび1Bの2つに分岐する第1の分岐手段と、
前記分岐された一方のキャリア光1Aを変調しサイドバンド光を含む光を出力する光変調器と、
前記分岐された他方のキャリア光1Bを位相変調する位相変調器と、
前記光変調器の出力光を2Aおよび2Bの2つに分岐する第2の分岐手段と、
前記第2の分岐手段の一方の出力光2Bと前記位相変調器の出力光を合波した後に一定の分岐比でM1およびM2の2つに分岐する合分波手段と、
前記合分波手段から出力された一方の分岐光M1を受光し、その光強度に応じて電気的信号を出力する第1の光検出手段と、
前記合分波手段から出力された他方の分岐光M2を受光し、その光強度に応じて電気的信号を出力する第2の光検出手段と、
前記第1の光検出手段からの電気的信号と前記第2の光検出手段からの電気的信号とを加算して出力する加算手段と、
前記第1の光検出手段からの電気的信号と前記第2の光検出手段からの電気的信号との差分を出力する減算手段と、
前記加算手段からの出力信号と前記減算手段からの出力信号とに基づいて、制御信号を前記光変調器へ出力する制御手段とを備え
、
前記制御手段は、前記減算手段からの出力信号の時間波形の振幅が最小となり、且つ、前記加算手段からの出力信号のDC成分が最大になるように、前記光変調器へ制御信号を出力することを特徴とするキャリア抑圧光発生装置である。
【0015】
また、本発明は、上記のキャリア抑圧光発生装置において、前記光変調器はSSB変調器であってもよい。
【0016】
また、本発明の第4の態様は、
入力されたキャリア光を1Aおよび1Bの2つに分岐する第1の分岐手段と、前記分岐された一方のキャリア光1Aを変調しサイドバンド光を含む光を出力する光変調器と、前記分岐された他方のキャリア光1Bを位相変調する位相変調器と、前記光変調器の出力光を2Aおよび2Bの2つに分岐する第2の分岐手段と、前記第2の分岐手段の一方の出力光2Bと前記位相変調器の出力光を合波する合波手段と、前記合波手段の出力光を検出する第1の光検出手段と、前記第1の光検出手段によって検出される光パワーの時間波形の振幅
が最小となるように、前記光変調器を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするキャリア抑圧光発生装置である。
【0017】
また、本発明は、上記のキャリア抑圧光発生装置において、前記光変調器はシングル型マッハツェンダー光変調器であってもよい。
【0018】
また、本発明の第1の態様は、上記のキャリア抑圧光発生装置において、前記第3の分岐手段の一方の出力光3Bと前記位相変調器の出力光は、前記合波手段で干渉するよう偏波が調整されていてもよい。
【0019】
また、本発明の第2から第4の態様は、上記のキャリア抑圧光発生装置において、前記第2の分岐手段の一方の出力光2Bと前記位相変調器の出力光は、前記合波手段または前記合分波手段で干渉するよう偏波が調整されていてもよい。
【0020】
また、本発明は、上記のキャリア抑圧光発生装置において、前記第1の分岐手段は分岐比が可変であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、キャリア光を変調してサイドバンド光を発生するに際して、簡易な構成によりキャリア光を抑圧することが可能である。また、本発明によれば、特性の温度調整が必要な光フィルタを用いる必要が無く、コスト的なメリットがあるとともに、光フィルタを用いた方式では不可能な光周波数間隔のキャリア抑圧光発生装置の実現が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態によるキャリア抑圧光発生装置1の構成を示す図である。
【0025】
同図において、キャリア抑圧光発生装置1への入力光である周波数f
0の光(キャリア光)は、分岐手段11aによって1Aおよび1Bの2つに分岐されて、その一方1Aが光変調器10への入力とされ、もう一方1Bが位相変調器12への入力とされる。
【0026】
光変調器10は、変調信号生成部15によって生成された周波数f
mの変調信号に応じて、入力光1Aを変調する。これにより、光変調器10からは、キャリア光f
0に加えて、キャリア光と異なる周波数f
+1およびf
−1のサイドバンド光を含む光が出力される。ただし、
f
+1=f
0+f
m
f
−1=f
0−f
mである。なお、周波数f
mで変調を行う際、さらなる高次成分f
0±2f
mやf
0±3f
mも発生するが、ここでは説明を簡単にするため、これらを無視するものとする。
【0027】
光変調器10からの出力光は、分岐手段11bによって2Aおよび2Bの2つに分岐されて、その一方2Aが分岐手段11cへの入力とされ、もう一方2Bが第2光検出手段14bへの入力とされる。分岐手段11cへの入力光2Aは、分岐手段11cによってさらに3Aおよび3Bの2つに分岐されて、その一方3Aがキャリア抑圧光発生装置1のメイン出力として伝送路へと出力され、もう一方3Bが合波手段13への第1の入力とされる。また、第2光検出手段14bへの入力光2Bは、第2光検出手段14bにより受光されて、その受光パワーP2に応じた電気的信号が、第2光検出手段14bから制御手段17へ出力される。
【0028】
位相変調器12は、分岐手段11aからの分岐光1Bを、不図示の変調信号生成部によって生成された位相変調信号に応じて位相変調する。これにより、位相変調器12からは、位相変調されたキャリア光f
0_PMが出力される。この位相変調されたキャリア光は、合波手段13への第2の入力とされる。但し、位相変調信号の変調周波数f
kは、光変調器10の変調周波数f
mよりも十分に小さい方が、最終的に得たいサイドバンド光f
+1およびf
−1への影響が少ないためより好ましい。たとえば、位相変調信号の変調周波数f
kは、光変調器10の変調周波数f
mに対して1/2以下とするのが好ましく、更に位相変調器12により位相変調された変調信号が変調周波数f
kの整数倍の高調波成分を含むことを考えると1/3以下とするのがより好ましい。
尚、位相変調器は、ドリフト等による干渉信号振幅への影響を少なくするためVπまたはそれ以上の高い電圧にて変調を行う場合もある。その場合は、位相変調における高調波成分による影響も考慮に入れ、変調周波数f
kを光変調器10の変調周波数fmに対して1/6以下とすることが望ましい。
たとえば、位相変調器12の変調周波数f
kを10Hz程度とすれば、光変調器10の変調周波数f
mを100Hzで駆動して制御することが可能であるが、実際にはレーザの線幅(最先端の超狭幅レーザでも1KHz程度)により、変調器10の変調周波数f
mの下限が制限される。
【0029】
合波手段13への第1の入力光3Bおよび第2の入力光は、合波手段13によって合波され、その合波光は第1光検出手段14aへの入力とされる。この第1光検出手段14aへの入力光は、第1光検出手段14aにより受光されて、その受光パワーP1に応じた電気的信号が、第1光検出手段14aから制御手段17へ出力される。
【0030】
ここで、合波手段13への第1の入力光3Bは、キャリア光f
0とサイドバンド光f
+1およびf
−1であり、合波手段13への第2の入力光は、位相変調されたキャリア光f
0_PMである。よって、この第1の入力光3Bと第2の入力光が合波手段13によって合波されると、第1の入力光3Bに含まれるキャリア光f
0と第2の入力光である位相変調されたキャリア光f
0_PMとが干渉することにより、キャリア光のみが変調周波数f
k(位相変調されたキャリア光f
0_PMと同じ変調周波数)で強度変調されることになる。キャリア光f
0と位相変調されたキャリア光f
0_PMは、両者が干渉するように例えば偏波保持ファイバによりそれぞれの偏波が調整されているものとする。尚、偏波の調整は最大の干渉光強度が得られるよう調整するのが望ましいが、最大の干渉光強度が得られなくとも必要な干渉光強度が得られる範囲であれば問題ない。
【0031】
したがって、合波手段13からは、周波数f
kで強度変調されたキャリア光f
0_IMと、強度変調されていないサイドバンド光f
+1およびf
−1とが出力され、その結果、第1光検出手段14aの受光パワーP1には、
図3に示すように、強度変調されたキャリア光f
0_IMに対応した時間波形が現れる。
一方、第2光検出手段14bの受光パワーP2は、時間変化しない一定値であり、キャリア光f
0とサイドバンド光f
+1およびf
−1からなるキャリア抑圧光発生装置1のメイン出力のパワーを示す。
【0032】
なお、分岐手段11a、11b、11c、および合波手段13は、固定の分岐比を有する例えばファイバ型の光カプラである。また、第1および第2光検出手段14a、14bは、受光した光のパワー(強度)を電気的信号に変換するフォトダイオード(PD)により構成される。
【0033】
制御手段17は、受光パワーP1およびP2に基づいて制御信号を生成し、この制御信号を光変調器10へ供給することにより、光変調器10の変調動作を制御する。この制御は、後述するように、光変調器10を構成する3つのマッハツェンダー光導波路(MZ−A、MZ−B、MZ−C)の各電極に印加する電圧(制御信号)を、個別に調整することによって行われる。
【0034】
次に、
図2を参照して光変調器10について説明する。
図2は、光変調器10の構成図である。
同図において、光変調器10は、メインマッハツェンダー光導波路(MZ−C)101と、MZ−C101の一方のアームに設けられた第1サブマッハツェンダー光導波路(MZ−A)102と、MZ−C101のもう一方のアームに設けられた第2サブマッハツェンダー光導波路(MZ−B)103とからなる光導波路を有している。さらに、MZ−A102およびMZ−B103には、それぞれの両アームを通過する光の位相差を調整するためのDC電極106a、106bが設けられ、MZ−C101には、その両アーム(MZ−A102、MZ−B103)を通過する光にバイアスの位相差を与えるDC電極104と、両アームの通過光を周波数f
mで変調するための変調電極105とが設けられている。そして、DC電極106a、106b、104へは、制御手段17からの電圧(制御信号)が印加され、変調電極105へは、RFドライバ16を介して周波数f
mの変調信号が印加される。
【0035】
なお、図示されていないが、光変調器10は、上記各要素が電気光学効果を有する結晶であるLN基板上に形成されたものであり、各電極から印加された電界によって光導波路の屈折率が変化することで、光導波路を通過する光に位相変化が与えられるようになっている。
【0036】
ここで、MZ−A102のDC電極106aへの印加電圧を変化させると、MZ−A102の各アームを通過する光の位相差を調整することができる。これにより、MZ−A102から出力される光のパワーを変化させることが可能である。MZ−B103についても同様であり、MZ−B103のDC電極106bへの印加電圧を変化させると、MZ−B103から出力される光のパワーを変化させることが可能である。
【0037】
また、MZ−C101のDC電極104への印加電圧を変化させると、MZ−A102から出力されてMZ−C101の一方のアームを通過する光とMZ−B103から出力されてMZ−C101のもう一方のアームを通過する光の位相差を調整することができる。
【0038】
DC電極104で位相差πを付与した場合には、MZ−C101の両アームを伝搬した光が合波される際に、キャリア光f
0は逆位相で干渉し、変調により発生したサイドバンド光f
+1およびf
−1は同位相で干渉する。この結果、光変調器10の出力は、キャリア光f
0が消失してサイドバンド光f
+1およびf
−1のみを含むものとなる。但し、MZ−A102とMZ−B103の出力光パワーが一致していないときは、逆位相のキャリア光f
0は干渉しても完全には打ち消しあわず、光変調器10の出力にキャリア光f
0が残留してしまう。
【0039】
そこで、本実施形態のキャリア抑圧光発生装置1では、光変調器10からキャリア光f
0が抑圧された出力光を得るために、第1光検出手段14aによる受光パワーP1と第2光検出手段14bによる受光パワーP2とに基づいて、受光パワーP1の時間波形の振幅が最小、且つ、受光パワーP2が最大となるよう、制御手段17が各DC電極106a、106b、および104への印加電圧を制御する。
制御の具体的な手順は、次の3段階のステップからなる。なお、以下の各ステップにおいて、変調電極105へは常時、変調信号を印加しておくものとする。
【0040】
まず、3つのDC電極106a、106b、および104の印加電圧を調整して、受光パワーP1の時間波形の振幅が最大となり、且つ、受光パワーP2が最大値をとる状態に設定する(第1ステップ)。この設定により、MZ−A102とMZ−B103では、それぞれの両アームにおける位相差がゼロとなり、MZ−A102およびMZ−B103の出力光パワーがいずれも最大(但し両者のパワーは一致しない)になる。また、MZ−C101においても2つのアームの位相差(MZ−A102とMZ−B103の出力光の位相差)はゼロとなる。
【0041】
次に、上記の状態でDC電極104の印加電圧を調整して、受光パワーP1の時間波形の振幅が最小(この段階での最小であり最終的な最小ではない)となる状態に設定する(第2ステップ)。この設定により、MZ−C101では2つのアームの位相差がπとなるため、光変調器10の出力光に含まれるキャリア光f
0のパワーが最小になる。但し、MZ−A102およびMZ−B103の出力光パワーが一致していないため、キャリア光f
0は完全には消失せず残留している。
【0042】
最後に、DC電極106aおよび106bの印加電圧を僅かずつ調整して、受光パワーP1の時間波形の振幅がさらに小さくなる方向に変化する方のDC電極を選択し、選択したDC電極の印加電圧を調整することによって、受光パワーP1の時間波形の振幅が最終的な最小となる状態に設定する(第3ステップ)。この設定により、出力光パワーが大きい方のサブマッハツェンダー光導波路(MZ−A102とMZ−B103の一方)からの出力光のパワーが減衰させられて、もう一方のサブマッハツェンダー光導波路(MZ−A102とMZ−B103のもう一方)からの出力光パワーに揃うようになる。その結果、光変調器10からの出力光は、キャリア光f
0が完全に抑圧され、サイドバンド光f
+1およびf
−1のみを含んだ光となる。
【0043】
尚、第1の分岐手段11aの分岐比については第3の分岐手段11cから合波手段13への出力光強度と位相変調器12のキャリア光強度が等しい方が、得られる干渉光の直流成分が少なくなり且つ振幅が大きくなるため、より高精度に電極バイアスの設定が可能となる。このため前記各ステップにおいて光変調器10と位相変調器12のキャリア光強度の比が略1:1となるように可変型の分岐手段を用いてもよい。尚、第1の分岐手段11aの分岐比は固定のものであっても本発明の効果を逸脱しない範囲であれば用いることができる。
【0044】
なお、上記の第1〜第3ステップによる制御を行った後、例えば環境温度の変化等によって、各マッハツェンダー光導波路の出力光の位相状態が経時的に変動してしまうことが起こり得る。この変動分を補正するため、第2および第3ステップの制御を常時、あるいは一定時間毎に繰り返し実行するようにすることで、リアルタイムで高精度な光変調を実現することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態によるキャリア抑制光発生装置1の構成を示す図である。
【0046】
同図において、キャリア抑圧光発生装置1への入力光である周波数f
0の光(キャリア光)は、分岐手段11aによって1Aおよび1Bの2つに分岐されて、その一方1Aが光変調器10への入力とされ、もう一方1Bが位相変調器12への入力とされる。
【0047】
光変調器10は、変調信号生成部15によって生成された周波数f
mの変調信号に応じて、入力光1Aを変調する。光変調器10は、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0048】
光変調器10からの出力光は、分岐手段11cによって2Aおよび2Bの2つに分岐されて、その一方2Aがキャリア抑圧光発生装置1のメイン出力として伝送路へと出力され、もう一方2Bが合波手段13への第1の入力とされる。
【0049】
位相変調器12は、分岐手段11aからの分岐光1Bを、不図示の変調信号生成部によって生成された位相変調信号に応じて位相変調する。位相変調器12は、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。これにより、位相変調器12からは、位相変調されたキャリア光f
0_PMが出力される。この位相変調されたキャリア光は、合波手段13への第2の入力とされる。
【0050】
合波手段13への第1の入力光2Bおよび第2の入力光は、合波手段13によって合波され、その合波光は光検出手段14への入力とされる。この光検出手段14への入力光は、光検出手段14により受光される。
【0051】
ここで、合波手段13への第1の入力光2Bは、キャリア光f
0とサイドバンド光f
+1およびf
−1であり、合波手段13への第2の入力光は、位相変調されたキャリア光f
0_PMである。この第1の入力光2Bと第2の入力光とが合波手段13によって合波されると、第1の入力光2Bに含まれるキャリア光f
0と第2の入力光である位相変調されたキャリア光f
0_PMとが干渉することにより、キャリア光のみが変調周波数f
k(位相変調されたキャリア光f
0_PMと同じ変調周波数)で強度変調されることになる。合波手段13からは、周波数f
kで強度変調されたキャリア光f
0_IMと、強度変調されていないサイドバンド光f
+1およびf
−1とが出力される。
【0052】
光検出手段14からは、入力された光強度に応じた電気的信号が出力され2分岐される。2分岐された電気的信号の各々は、それぞれ平均値フィルタ18aおよびf
0_IM抽出フィルタ18bの入力とされる。これらのフィルタは、電気的信号に含まれる不要な信号成分による制御エラーを抑止するために配置される。平均値フィルタ18aは、所定の周波数成分以下の周波数成分のみを抽出することにより、入力された電気的信号のうちパワー平均値|f
+1+f
−1|を出力する機能を有する。f
0_IM抽出フィルタ18bは、f
0_IM成分(位相変調器の変調周波数f
kの整数倍)のみを抽出することにより、入力された電気的信号のうち時間波形の振幅成分f
0_IMを出力する機能を有する。2つのフィルタから出力された電気的信号は、それぞれ制御手段17の入力とされる。
【0053】
ここでf
0_IMフィルタ18bによるf
0_IM成分の抽出についてより詳しく説明する。f
0_IMフィルタ18bに光検出手段14から電気的信号が入力されるのに先立って、合波手段13によってサイドバンドf
+1およびf
−1を含む出力光2Bと位相変調器12の出力光が干渉し、その干渉光が位相変調器12の変調周波数f
kの整数倍の干渉信号を有する光信号として光検出手段14により検出され電気的信号に変換される。その後、f
0_IMフィルタ18bでは、光検出手段14から出力される電気的信号から変調周波数f
kの整数倍のf
0_IM成分だけを抽出する。
【0054】
キャリア光f
0の前記干渉信号の成分には、位相変調器12の駆動の基本波である変調周波数f
kの成分だけでなく、f
kの二倍高調波成分や、三倍高調波成分などの高調波も含まれる。キャリア抑圧光発生装置1に入力されたキャリア光f
0が分岐手段11aで分岐されてから合波手段13で合波されるまでの構成は一種の光干渉計の構成であり、光変調器10側の光路と位相変調器12側の光路との実効光路長差(伝搬するキャリア光が感じる位相差)や、位相変調器12を駆動する電圧によっては、基本波f
kの成分よりも高調波の成分の方が大きくなる場合がある。前記の実効光路長差(位相差)は、特に二倍高調波2f
kの成分の発生に影響を与える。実効光路長差(位相差)がほぼ90°(光の波長の4分の1に相当)である場合は、二倍高調波2f
kの成分は小さいが、二倍高調波2f
kの成分は、前記の構成の光干渉計における環境変化や外乱による微小な温度変化や微弱な振動、機械的歪みなどに起因する実効光路長差(位相差)の変動にともなって、大きく変化する。一方、位相変調器12の駆動電圧の大きさは特に三倍高調波3f
kの成分の発生に影響を与え、駆動電圧が大きいほど三倍高調波3f
kの成分が大きくなる。なお、上記の光干渉計における高調波成分の発生については、非特許文献2に記載されている。
【0055】
以上のようにf
kの高調波成分への対策として、環境変化や外乱への対応をしたり、位相変調器12の駆動条件を変えながら光変調器10の制御最適化を行ったりする場合には、位相変調器12の駆動の基本波f
kの成分だけでなく、その高調波成分も含めてモニタすることが有効である。このとき、f
0_IMフィルタ18bが、基本波成分とその高調波成分とを通過させるものであって、その出力信号が基本波成分および高調波成分が混ざったものであってもよい。この場合には、いずれの成分についても時間波形信号の振幅成分を最小化するように光変調器10を制御するため、制御上の問題はない。なお、環境変化や外乱の影響が少ない場合や、位相変調器12を特定の条件で駆動する場合には、基本波成分あるいは特定の高調波成分の信号を選択して光変調器10の制御が可能であることは、言うまでもない。また、位相変調器12の駆動電圧が大きい場合には、四次以上の高調波成分も発生するが、その比率は二次、三次の成分に比べて小さいため、実用上は三次以下の成分を抽出していれば光変調器10の制御に必要な信号は得られる。
【0056】
なお、位相変調器12をVπあるいはVπの整数倍で駆動する場合は、光検出手段14で受光する光信号の平均レベルの安定化の効果や、位相変調器12のドリフトに起因する不安定性の低減効果があるとともに、二倍高調波2f
kの成分の発生の低減の効果がある。
【0057】
f
0_IM抽出フィルタ18bとして高調波成分を通すフィルタを選択することは、環境変化や外乱による光路差の変動への耐性改善の点や、位相変調器12の駆動条件を特に選ばないで済むようにする点で合理的である。また、高調波成分を含めて通すバンドパスフィルタは、設計製造が容易でかつ低価格で入手可能であり、コスト低減についてのメリットがある。平均値フィルタ18aとf
0_IM抽出フィルタ18bは個別のものを用いて光検出手段14からの入力信号を分岐して用いる必要は無く、入力信号部が共通で一体になったタイプのものを用いてもよいし、モニタタイミングに合わせて時間的に相互に切替えて用いても良いことは、言うまでもない。
【0058】
なお、分岐手段11a、11c、および合波手段13としては、第1の実施形態のものと同様のものを用いることができる。
【0059】
制御手段17は、平均値フィルタ18aおよびf
0_IM抽出フィルタ18bから出力された電気的信号に基づいて制御信号を生成し、この制御信号を光変調器10へ供給することにより、光変調器10の変調動作を制御する。この制御は、第1の実施形態と同様に、光変調器10を構成する3つのマッハツェンダー光導波路(MZ−A、MZ−B、MZ−C)の各電極に印加する電圧(制御信号)を、個別に調整することによって行われる。
【0060】
本実施形態での光変調器10の変調動作は、第1の実施形態における第1光検出手段14aによる受光パワーP1と第2光検出手段14bによる受光パワーP2とに代えて、平均値フィルタ18aおよびf
0_IM抽出フィルタ18bから出力されたそれぞれの電気的信号を用いることにより、第1の実施形態と同様に行なうことができる。制御手段17は、f
0_IM抽出フィルタ18bから出力された時間波形の振幅成分f
0_IMが最小、且つ、平均値フィルタから出力されたパワー平均値|f
+1+f
−1|が最大となるよう、制御手段17が各DC電極106a、106b、および104への印加電圧を制御する。これにより、キャリア抑圧光発生装置1では、光変調器10からキャリア光f
0が抑圧された出力光を得ることができる。
【0061】
第2の実施形態における構成は、第1の実施形態の構成と比べて分岐手段11bを削減することができるため、構成を簡略化することができるとともにコストを削減することも可能となる。
【0062】
また平均値フィルタ18aでは、所定の周波数成分以下の周波数成分のみを抽出することによりパワー平均値|f
+1+f
−1|を出力することができるものであればよいが、f
0_IM成分の1/2以下の周波数成分のみを抽出するようにすると、更に不要な信号成分による制御エラーを抑止できるためより効果的である。尚、本実施形態では光検出手段14からの電気的信号を2分岐して制御手段17に入力しているが、2分岐せず制御手段17へ入力し、制御手段17の中で2分岐してそれぞれの分岐路に上記2種類のフィルタを組み込んでもよい。
【0063】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態によるキャリア抑制光発生装置1の構成を示す図である。
この実施形態は、第2の実施形態の構成における合波手段13に代えて、2つの入力光を合波後に一定の分岐比で2つの出力光を出力する合分波手段13Aを採用し、その2つの出力光をディファレンシャルPDなどの差動型検出手段19で受光する構成としたものである。
【0064】
キャリア抑圧光発生装置1への入力光が合分波手段13aに入力されるまでの構成は、第2の実施形態と同様のため、説明を省略する。
分岐手段11cおよび位相変調器12のそれぞれから合分波手段13aへ入力された第1の入力光2Bおよび第2の入力光は、合分波手段13aによって合波、干渉された後、一定の分岐比によって分岐された2つの分岐光M1およびM2として出力される。一方の分岐光M1としては、周波数f
kで干渉によって強度変調されたキャリア光f
0_IMと、干渉によって強度変調されていないサイドバンド光f
+1およびf
−1とが合分波手段13aから出力され、その分岐光M1は差動型検出手段19の第1光検出手段19aへの入力とされる。また、他方の分岐光M2としては、周波数f
kで干渉によって強度変調されたキャリア光であってf
0_IMとは逆位相であるf
−0_IMと、干渉によって強度変調されていないサイドバンド光f
+1およびf
−1とが合分波手段13aから出力され、その分岐光M2は差動型検出手段19の第2光検出手段19bへの入力とされる。
【0065】
第1光検出手段19aでは、合分波手段13aからの分岐光M1が受光されて、その受光パワーに応じた電気的信号が2つに分岐されて加算手段19cおよび減算手段19dにそれぞれ出力される。第2光検出手段19bでは、合分波手段13aからの入力光M2が受光されて、その受光パワーに応じた電気的信号が2つに分岐されて加算手段19cおよび減算手段18dにそれぞれ出力される。
【0066】
加算手段19cでは、第1光検出手段19aおよび第2光検出手段19bからの電気的信号がそれぞれ入力され、その2つの信号が加算されて出力され、これが制御手段17への入力とされる。減算手段19dでは、第1光検出手段19aおよび第2光検出手段19bからの電気的信号がそれぞれ入力され、その2つの信号の差分が出力されて、これが制御手段17への入力とされる。
【0067】
なお、合分波手段13aは、固定の分岐比を有する例えばファイバ型の光カプラである。また、第1および第2光検出手段19a、19bは、受光した光のパワー(強度)を電気的信号に変換するフォトダイオード(PD)により構成される。
【0068】
制御手段17は、差動型検出手段19から出力された2つの電気的信号に基づいて制御信号を生成し、この制御信号を光変調器10へ供給することにより、光変調器10の変調動作を制御する。この制御は、第1の実施形態と同様に、光変調器10を構成する3つのマッハツェンダー光導波路(MZ−A、MZ−B、MZ−C)の各電極に印加する電圧(制御信号)を、個別に調整することによって行われる。
【0069】
本実施形態での光変調器10の変調動作は、第1の実施形態における第1光検出手段14aによる受光パワーP1と第2光検出手段14bによる受光パワーP2とに代えて、差動型検出手段19の減算手段19dおよび加算手段19cから出力されたそれぞれの電気的信号を用いることにより、第1の実施形態と同様に行なうことができる。制御手段17は、差動型検出手段19の減算手段19dによって検出される光パワー差分成分の時間波形の振幅f
0_IMが最小となり、且つ、差動型検出手段19の加算手段19cによって検出される光パワー成分のDC成分から|f
+1+f
−1|の値が最大になるよう、制御手段17が各DC電極106a、106b、および104への印加電圧を制御する。これにより、キャリア抑圧光発生装置1では、光変調器10からキャリア光f
0が抑圧された出力光を得ることができる。
【0070】
第3実施形態による構成では、特殊なフィルタを用意することなく必要な信号成分を制御手段17に入力できるため、構成を簡略化することができるとともにコストを削減することも可能となる。
尚、第2の実施形態と同様に、差動光検出手段19と制御手段17との間に、パワー平均値を透過する平均値フィルタや時間波形の振幅成分f
0_IMを透過するf
0_IM抽出フィルタを配置してもよい。この場合、S/Nが向上し制御精度を向上することができる。
【0071】
以上、図面を参照して本発明の各実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0072】
例えば、本発明は、光変調器の導波路構成がシングル型マッハツェンダー光導波路である場合にも適用可能である。シングル型マッハツェンダー光導波路とは、
図2、
図5または
図6において第1サブマッハツェンダー光導波路102と第2サブマッハツェンダー光導波路103が直線導波路に置き換わった構成である。このような導波路構成の光変調器10’を用いたキャリア抑圧光発生装置2の構成を
図6に示す。このキャリア抑圧光発生装置2は、
図1に示したキャリア抑圧光発生装置1から分岐手段11bと第2光検出手段14bを省略した構成である。本キャリア抑圧光発生装置2においては、光変調器10’からキャリア光f
0が抑圧された出力光を得るために、第1光検出手段14aによる受光パワーP1に基づいて、受光パワーP1の時間波形の振幅が最小となるよう、制御手段17がDC電極104への印加電圧を制御する。この制御により、光変調器10’のシングル型マッハツェンダー光導波路の2つのアーム(
図2のメインマッハツェンダー光導波路101の2つのアームに相当)の位相差がπとなるようにDC電極104への印加電圧が調整され、キャリア光f
0が抑圧される。