(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであって、本発明は、発光装置を以下に限定するものではない。
【0014】
また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0015】
図1Aは、本実施の形態における発光装置100を示す斜視図、
図1Bは
図1AのX−X‘断面における一部断面斜視図、
図1Cは
図1Aの上面図を示す。本実施の形態において、の発光装置100は、上面に導体配線103A、103B、103Cが配された略矩形の基板101と、導体配線103A上に載置された複数の発光素子104とを有している。これら発光素子104の周囲には、発光素子からの光を反射させる光反射樹脂102が設けられており、導体配線103A、103Bと発光素子104とを導通させる(電気的に接続させる)導電性ワイヤ105を有している。導体配線103Cは、電極として機能する導体配線103A、103Bと同一材料からなるが、電気的に接続させるものではなく、発光装置の極性を示す目印(カソードマーク/アノードマーク)として設けられている。
【0016】
そして、本発明は、導電性ワイヤ105の少なくとも一部が光反射樹脂に埋設されていることを特徴とする。これにより、導電性ワイヤの露出をできるだけ少なくして、光の吸収を抑制することで出力を向上させることができる。
【0017】
(光反射樹脂)
本実施の形態において、光反射樹脂102は、発光素子104からの光を反射させるものであり、発光素子を取り囲むように設けられるとともに、少なくとも導電性ワイヤ105の一部を埋設するものである。これにより、導電性ワイヤによる光の吸収を抑制し、効率よく光を取り出すことができる。
【0018】
導電性ワイヤは、
図1Bに示すように、発光素子104から接続されたうちの一方が導体配線103Aに接続され、他方が導体配線103Bに接続されている。導体配線103Aは、発光素子が載置される領域と導電性ワイヤとが接続される領域とが、光反射樹脂102に埋設された部分で連続するように形成されている(図示せず)。そして、導体配線103A、103Bと接続される部分の導電性ワイヤ105が、光反射樹脂102内に埋設されている。導電性ワイヤ105を導体配線103A、103Bに接続した後に、光反射樹脂102を設けることで、このような構成とすることができる。なお、ここでは、導電性ワイヤ105と導体配線103A、103Bとの接続部分を被覆するように光反射樹脂102を設けているが、これに限らず、例えば、接合部分以外の領域の導電性ワイヤを埋設するように、接合部分と発光素子との間に設けてもよい。また、使用される全ての導電性ワイヤを埋設させる必要はなく、例えば
図1Aに示すように、複数の導電性ワイヤ105のうち、導体配線と直接接続されている導電性ワイヤだけを埋設させるなどとすることができる。
【0019】
また、本実施の形態においては、導体配線から露出される基板、すなわち、導体配線が設けられずにむき出しとなっている基板(以下、露出領域とする)の少なくとも一部が、光反射樹脂に埋設されていることを特徴とする。
【0020】
例えば
図1Bに示すように、発光素子が載置される導体配線103Aと、導電性ワイヤが接合される導体配線103Bの間などにおいて露出されている基板の露出領域101Aを光反射樹脂102で埋設することで、基板101を透過/吸収する光を抑制することができる。基板の材料は、機械的強度や作業性などを考慮してセラミックなどの絶縁性部材を用いるが、このとき、導体配線が設けられていない部分を介して、発光素子からの光を透過してしまう場合がある。基板側は、発光装置として発光させたい方向、すなわち
図1Aなどにおける上方向とは、異なる方向であり、そのような方向に光が透過してしまうのは好ましくなく、これによって目的の発光方向への光が損失して取り出し効率が低下する。本発明は、光反射樹脂として、少なくとも基板よりも光の透過率の悪いもの、そして、発光素子からの光の反射率が高いものを材料として選択し、この光反射樹脂で基板の露出領域を埋設する(被覆する)ように設けることで、目的外方向への光の透過による損失を低減させることができる。また、暗色系のセラミックなど光を吸収する性質を有する基板を用いる場合も、その露出領域を光反射樹脂で被覆しておく、すなわち埋設させることで吸収を低減し、結果として光の取り出し効率を向上させることができる。
【0021】
上述のような露出領域を光反射樹脂で埋設する場合は、導電性ワイヤを用いずに発光素子と導体配線とを接続させているときにも効果が得られるものである。例えば、サファイア基板を用いた窒化物系半導体からなる発光素子の場合、同一面側に電極が形成されるため、
図1Aに示すように、1つの発光素子に対して、少なくとも2本の導電性ワイヤが必要となるが、この電極を下にして、金属接合部材などを用いて導体配線と接続させる場合などは、導電性ワイヤ無しで接続可能である。このような場合は、基板の露出領域、すなわち絶縁部が発光素子の直下に形成されるため、この露出領域にも光反射樹脂を設けることができる。
【0022】
また、
図1Aなどに示すように導電性ワイヤを用いている場合は、導電性ワイヤの少なくとも一部と、基板の露出領域の少なくとも一部とを、埋設するように設けるのが好ましい。とくに、同一の光反射樹脂で埋設するようにすることで工程の簡略化などの効果も得られる。ただし、別工程で設けても、もちろん構わない。
【0023】
さらに、この光反射樹脂は、保護素子や集積回路などを埋設させてもよい。これにより、光の散乱や吸収を低減させるとともに、それら部材の載置領域を別途設ける必要がなくなるため、発光装置自体を小型化することもできる。保護素子を用いた発光装置については、
図3を用いて説明する。
【0024】
図3は、保護素子を用いた発光装置300の一部断面図である。尚、発光装置300の外観は
図1Aと同様の形状であり、光反射樹脂302の形状は
図1Aに示す発光装置100の光反射樹脂と同様の形状であり、その一部の断面が観察できるように図示してある。
図3に示すように、発光装置300は、基板301の上に導体配線303A、303B、が設けられている。発光素子304は、導体配線303A上に載置されるとともに、導電性ワイヤ305を用いて導体配線303A及び303Bと接続されている。保護素子307は、導体配線303B上に載置され、導電性接合部材によって固定されているとともに、導電性ワイヤを用いて導体配線303Aと接続されている。そして、この保護素子307を埋設するように光反射樹脂302が設けられている。
【0025】
ここでは、保護素子307は、その全体が光反射樹脂302に埋設されるように設けられており、このような構成とすることで発光素子304からの光の吸収を抑制することができる。尚、保護素子の全体ではなく、その少なくとも一部を被覆してもよい。また、保護素子と導体配線とを接続する導電性ワイヤも光反射樹脂に埋設するようにするのが好ましい。
【0026】
上記の保護素子を埋設させる光反射樹脂は、発光素子と導体配線とを接続している導電性ワイヤの少なくとも一部をもあわせて埋めるように設けるのが好ましい。また、基板の露出領域の少なくとも一部も、あわせて埋めるようにするのが好ましい。さらに、導電性ワイヤの少なくとも一部と基板の露出領域の少なくとも一部と保護素子の少なくとも一部を埋設するように光反射樹脂を設けるのが好ましい。
【0027】
上述のように、発光素子からの光を吸収する部材(導電性ワイヤ、保護素子、基板)や、光を目的の方向以外に透過させる部材((透光性)基板)を、光反射部材に埋設されるようにすることで、光の取り出し効率の低減を抑制することができる。
【0028】
上述のような光反射部材は、発光素子からの光が照射される領域に設けられていればよく、発光素子の周囲を取り囲むように設けられる。光反射樹脂の高さについては、
図4を用いて説明する。
【0029】
図4Aは、封止部材406を用いた発光装置400の斜視図であり、
図4Bは
図4AにおけるY−Y‘断面における断面図、
図4Cは
図4AにおけるZ−Z’断面における断面図を示す。尚、
図4Aに示す発光装置400は、
図1Aに示す発光装置100と同様の発光措置の配置及び導電性ワイヤなどを有しているものとし、これらが封止部材406内に埋設されているものとする。
【0030】
図4A、
図4Bに示すように、発光装置400は、基板401の上に導体配線403A、403Bを有しており、発光素子404は導体配線403A上に載置されるとともに、導電性ワイヤ405を用いて導体配線403Bと接続されている(導体配線403Aとも接続されているが、断面図には図示していない)。そして、発光素子404の周囲に光反射樹脂402が設けられており、この光反射樹脂402で囲まれた領域には封止部材406が充填されている。
【0031】
光反射樹脂の高さは、少なくとも発光素子の発光層と同等か、それ以上とすることが好ましい。また、導電ワイヤを用いる場合は、
図4Bに示すように、導電性ワイヤ405の最も高い部分よりも高くなるようにするのが好ましい。
【0032】
また、光反射樹脂402に囲まれた領域に封止部材406を充填する場合、充填される封止部材406によって導電ワイヤ405の最も高い部分が被覆されるように、光反射樹脂の高さを調整する。特に、封止部材406として、液状の樹脂を滴下するなどの方法で充填する場合は、その液状の樹脂が発光素子の周囲の光反射樹脂内から外に溢れないような高さとするのが好ましい。但し、封止部材を圧縮成型や印刷塗布などの方法で形成する場合は、発光素子の周囲の光反射樹脂の外側に封止部材が充填されてもよい。
【0033】
また、
図4Cの断面図に示すように、光反射樹脂402は、基板401の主面(上面、下面)に対して、一定の高さ(基板主面と略平行な高さ)となるようにするのが好ましい。ただし、これに限るものではなく、光反射樹脂の形成方法によっては、他の形状とするのが好ましい。
【0034】
例えば、
図5に示す発光装置500は、
図4AのZ−Z‘断面に相当する光反射樹脂の部分の断面図であり、
図4Cに示すような一定の高さの光反射樹脂402ではなく、その一部が部分的に盛り上がったような形状の光反射樹脂502を有する。具体的には、
図4Aで示す発光装置400の光反射樹脂402のうち、縦方向の光反射樹脂と横方向の光反射樹脂とが交差する位置に相当する光反射樹脂502Bが、それ以外の領域の光反射樹脂502Aよりもやや高くなっている。
【0035】
このような一部が盛り上がったような形状の光反射樹脂は、粘度の高い樹脂をノズルから噴出させて分割前の基板上に縦方向及び横方向に塗布(描画)するような方法で形成することで得られる。特に、
図3に示すような保護素子307を有する発光素子の場合、このように部分的に光反射樹脂が高くなる領域に保護素子を配置することで、比較的高さのある保護素子の全体を光反射樹脂で埋設させることができる。
【0036】
光反射部材のうち、発光素子と対向する面(内壁)は、例えば
図4Bの一部断面図に示すように、上方に向かって広がるような傾斜面とするのが好ましい。尚、
図1Bにおいては、内壁及び外壁とも傾斜面としているが、どちらか一方(例えば内壁)のみを傾斜させるようにしてもよい。また、
図1Bにおいては、内壁から外壁にかけて角部のない丸みを帯びた形状としているが、これに限らず、上面が平らな面とするなどの形状とすることもできる。
【0037】
また、光反射樹脂の内形と外形との距離、すなわち上面視における光反射樹脂の幅は、基板の大きさや、載置させる発光素子の大きさ等種々考慮して調整することができる。また、高さとのバランス等も考慮して選択するのが好ましい。
【0038】
発光素子の周囲に配される光反射樹脂の内形については、
図1C、
図8などを用いて説明する。
図1C、
図8は発光装置100、800の上面図であり、それぞれ略矩形状の基板101、801上に、導体配線103A、803Aが設けられ、その上に発光素子1040、804が載置されている。発光素子と導体配線とは、導電性ワイヤ105、805によって接続されているが、この接続部付近の導電性ワイヤは光反射樹脂102、802によって埋設されているため図示していない。発光素子の周囲に配される光反射樹脂の内形は、上面視において
図1Cのように、略矩形とすることができる。しかし、これに限らず、
図8に示すように略矩形の角部が丸みを帯びた形状とすることができる。特に、光反射樹脂として、粘度の高い樹脂を塗布することで形成させる場合は、縦方向及び横方向に形成される光反射樹脂が、それぞれ硬化される前に接するように設けると混ざり合って一体化され、その場合に
図8に示すように丸みを帯びた形状となる。このような形状とすることで、光の反射を均一に反射しやすくすることができる。また、上記形状に限らず、上面視において円形、楕円形、多角形など、所望の発光特性等に応じた形状とすることができる。
【0039】
さらに、本発明においては、光反射樹脂は、発光素子の側面に達するように形成されてもよい。その場合、内形は発光素子の形状やその配置に応じた形状となる。
【0040】
また、
図1Cなどに示す発光装置は、複数の発光素子の全てを囲むように光反射樹脂を形成してあるが、これに限らず、1つの発光素子の周囲に、或いは、2以上の複数個の周囲に光反射樹脂を設けることもできる。このように、より近接した位置に光反射樹脂を配し、光を吸収する導電性ワイヤや光を透過/吸収する基板などをその中に埋設させることで、光の損失を効率よく低減させることができる。
【0041】
発光素子の周囲に配される光反射樹脂の外形については、
図1、
図7などを用いて説明する。
図1C、
図7は発光装置100、700の上面図であり、それぞれ略矩形状の基板101、701上に、導体配線103A、703Aが設けられ、その上に発光素子1040、704が載置されている。発光素子と導体配線とは、導電性ワイヤ105、705によって接続されているが、この接続部付近の導電性ワイヤは光反射樹脂102、702によって埋設されているため図示していない。発光素子の周囲に配される光反射樹脂の外形は、上面視において
図7のように、基板701の外縁から光反射樹脂702の外縁が離間するように設けることができる。この場合、基板の外縁形状と光反射樹脂の外縁形状とを、互いに相似形状となるようにするのが好ましく、
図7に示すような略四角形の基板701の場合、光反射樹脂702の外縁も略四角形とし、各辺が略平行となるようにするのが好ましい。
【0042】
このように、基板の外縁と光反射樹脂の外縁とを離間させる、言い換えれば基板の外縁よりも光反射樹脂の外縁を小さくなるようにすることで、後工程において分割工程が容易になる。特に、基板と硬度などが異なる樹脂を用いて光反射樹脂とする場合、例えば、セラミック基板上に、それよりも硬度が低く、且つ展性のある光反射樹脂を設ける場合、後の分割工程(個片化工程)が行いにくい(切断しにくい)場合がある。そのため、基板の外縁(すなわち分割位置)を、基板のみとすることで生産性よく分割させることができる。
【0043】
ここで、分割工程について説明する。
図9A及び
図9Bは、基板を分割する前の発光装置の集合体の一部を示す図であり、
図9Aは光反射樹脂成形前、
図9Bは光反射樹脂902形成後を示す図である。
図9Aに示すように、基板901上に導体配線903A、903Bを設け、その上に発光素子904を載置し、導電性ワイヤ905を用いて発光素子と導体配線を電気的に接続させる。そして、その後に
図9Bに示すように光反射樹脂902を、発光素子904の周囲に設ける。ここでは、光反射樹脂902を縦横に交差するように設けており、図中の矢印の部分が分割位置である。このようにすることで、光反射樹脂の成形を容易にするとともに、分割工程を比較的容易に行うことができる。ただし、このような形状や方法にかかわらず、印刷塗布など他の方法を用いてもよい。
【0044】
また、光反射樹脂の外形(外縁)が、基板と一致するような形状とすることもできる。
【0045】
さらにまた、基板の外縁と光反射樹脂の外縁(外形)とを異なるようにすることもできる。例えば、
図1Aなどに示すように、光反射樹脂102は、基板101の外縁から離間する第1の領域Aと、基板の外縁と接する(一致する)第2の領域Bと、を設けることができる。
【0046】
光反射樹脂の一部のみを基板の外縁から離間するように設ける、言い換えると、基板の一部を露出させることで、分割(切断)位置の一部を基板のみとすることができ、生産性よく分割(切断)させることができる。このように分割位置の一部において、光反射樹脂をも切断する場合、基板のみを分割する場合に比して、やや生産性は劣るものの、光反射樹脂と基板との密着面積を大きくすることができ、さらには、光反射樹脂の形成工程の簡略化などのメリットがある。また、
図8に示すように、縦方向と横方向に設けられる光反射樹脂の交差部分が丸みを帯びたような形状とすることができる。
【0047】
また、光反射樹脂の第1の領域は、基板の一辺において第2の領域に挟まれるように形成されるのが好ましい。このようにすることで、光反射樹脂と基板との密着面積を大きくすることができる。また、光反射樹脂の上にレンズ部材を設ける場合は、そのレンズ部材との密着性も向上させることができる。
【0048】
さらに、光反射樹脂の第2の領域を、基板の角部から離間するように設けるのが好ましい。このようにすることで、光反射樹脂が基板から剥がれるのを抑制することができる。
また、基板の角部に分割位置を決める目印などを設け、これが光反射樹脂に覆われないようにすることで、分割位置精度を向上させることができる。
【0049】
光反射樹脂を構成する具体的な材料としては、発光素子からの光を吸収しにくく、且つ、効率よく反射する部材が好ましい。具体的な反射率としては、少なくとも50%以上とすることが好ましく、より好ましくは70%以上である。尚、光反射樹脂は光を散乱させる性質を有する場合は、その反射率の測定が困難な場合があるが、積分球を用いて標準拡散板との比率で求めるなどの方法で、参考値として測定することができる。
【0050】
また、絶縁性部材が好ましく、発光素子からの光や、外光によって劣化しにくい部材が好ましい。また、ある程度の強度を有するもので、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができ、より具体的には、フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂、BTレジン、PPAやシリコーン樹脂などが挙げられる。これら母体となる樹脂に、発光素子からの光を反射する反射部材(例えばTiO
2、Al
2O
3、ZrO
2,MgO)などを添加することで、効率よく光を反射させることができる。
【0051】
このような光反射樹脂は、発光素子や後述する保護素子を導体配線上に載置した後に、粘度の高い樹脂を、所望のサイズ(幅)に応じたノズル先端から噴出させることで容易に設けることができる。また、印刷塗布などの方法でも設けることができる。このようにして設けられる光反射樹脂は、熱や光などで硬化させることで、発光素子などを保護する保護部材として機能することができる。
【0052】
(基板)
基板は、導体配線が配される絶縁性の部材であり、光反射樹脂を設けることが可能な、略板状の部材である。基板の材料は、ガラスエポキシ樹脂、セラミックスあるいはガラスを挙げることができる。特に、セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、炭化ケイ素あるいは窒化ケイ素などが好ましい。これらを材料とすることにより、耐熱性の高い基板とすることができる。
【0053】
(導体配線)
導体配線は、基板の上面に形成され、基板の内部や表面などを介して裏面にまで連続するよう設けられ、外部と電気的な接続が取れるような機能を有するものである。導体配線の大きさや形状は、種々選択することができ、例えば
図1に示す発光装置100のように、光反射樹脂102に端部が埋設されるように大きく形成することもできるし、
図2に示す発光装置200のように、光反射樹脂202から離間する部分を有する導体配線203Aとし、この上に発光装置204を設けるようにすることもできる。また、外部とは電気的な接続が無く、光反射材として機能する物も含む。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、りん青銅、鉄入り銅等が挙げられる。
【0054】
(封止部材/レンズ部材)
封止部材は、光反射樹脂で囲まれた領域やその外側に設けられるものであり、発光素子や保護素子などを、塵芥、水分や外力などから保護する部材である。また、発光素子からの光を透過可能な透光性を有し、且つ、それらによって劣化のしにくい耐光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂やユリア樹脂を挙げることができる。このような材料に加え、所望に応じて着色剤、光拡散剤、フィラー、色変換部材(蛍光部材)などを含有させることもできる。
【0055】
封止部材の充填量は、発光素子、ツェナーダイオードなどの保護素子、導電性ワイヤなどが被覆される量であればよい。
【0056】
また、封止部材の表面の形状については配光特性などに応じて種々選択することができる。例えば、
図4Bに示すように、光反射樹脂402と同等或いはそれ以下の高さとなるよう充填することができる。ここでは、中央付近が周辺部分よりも若干低くなるような凹状としているが、これにかぎらず、表面が平らなものや、中央付近が周辺部分よりも高くなるような凸状とすることができる。
【0057】
また、封止部材とは別に、レンズ部材を設けてもよい。例えば、
図6に示す発光装置600のように、基板601の外縁まで達するとともに、半球面状のレンズ部材を設けることもできる。ここでは、光反射樹脂602のやや外側よりの上部から球面状となるようにレンズ部材608を設けている。
【0058】
光反射樹脂602の外側は、発光素子604からの光は届きにくいため、レンズ形状としなくてもよい。このような形状とすることで、レンズ部材を形成後に個片化(分割)する際に、レンズ部分(球面状の部分)を損傷することなく分割することができるため、光学特性に与える影響を抑制することができる。また、このように、レンズ部材608を封止部材606とは別部材として設けることで、例えば後述するような波長変換部材(蛍光部材)を用いる場合、封止部材606にのみ蛍光部材を混入させることで、所望の発光色とするための蛍光部材の量を規定しやすく、また、レンズ部分を樹脂のみとすることができるため、配光特性を調整しやすくなる。レンズの曲率や大きさなどは所望の配光特性となるよう、種々選択することができる。
【0059】
また、レンズ部材は、
図6に示すような凸状の半球面状のレンズとするだけでなく、凹部を設けて横方向に光を反射させる形状や、フレネルレンズ形状などとすることもできる。また、目的や用途に応じては、拡散材や顔料、波長変換部材等を混入させてもよい。
【0060】
(ダイボンド樹脂)
ダイボンド樹脂は、基体や導体配線上に発光素子や保護素子などを載置させるための接合部材であり、載置する素子の基板によって導電性ダイボンド部材又は縁性ダイボンド部材のいずれかを選択することができる。例えば、絶縁性基板であるサファイア上に窒化物半導体層を積層させた半導体発光素子の場合、ダイボンド部材は絶縁性でも導電性でも用いることができ、SiC基板などの導電性基板を用いる場合は、導電性ダイボンド部材を用いることで導通を図ることができる。絶縁性ダイボンド部材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。これらの樹脂を用いる場合は、半導体発光素子からの光や熱による劣化を考慮して、半導体発光素子裏面にAl膜などの反射率の高い金属層を設けることができる。この場合、蒸着やスパッタあるいは薄膜を接合させるなどの方法を用いることができる。また、導電性ダイボンド部材としては、銀、金、パラジウムなどの導電性ペーストや、Au−Sn共晶などの半田、低融点金属等のろう材を用いることができる。さらに、これらダイボンド部材のうち、特に透光性のダイボンド部材を用いる場合は、その中に半導体発光素子からの光を吸収して異なる波長の光を発光する蛍光部材を含有させることもできる。
【0061】
(導電性ワイヤ)
発光素子の電極と、基板に設けられる導電部材とを接続する導電性ワイヤは、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤが挙げられる。特に、熱抵抗などに優れた金を用いるのが好ましい。
【0062】
(波長変換部材)
上記透光性部材中に、波長変換部材として半導体発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光部材を含有させることもできる。
【0063】
蛍光部材としては、半導体発光素子からの光を、より長波長に変換させるものの方が効率がよい。蛍光部材は、1種の蛍光物質等を単層で形成してもよいし、2種以上の蛍光物質等が混合された単層を形成してもよいし、1種の蛍光物質等を含有する単層を2層以上積層させてもよいし、2種以上の蛍光物質等がそれぞれ混合された単層を2層以上積層させてもよい。
【0064】
蛍光部材としては、例えば、窒化物系半導体を発光層とする半導体発光素子からの光を吸収し異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、または、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩またはEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。好ましくは、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体である、Y
3Al
5O
12:Ce、(Y
0.8Gd
0.2)
3Al
5O
12:Ce、Y
3(Al
0.8Ga
0.2)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12の組成式で表されるYAG系蛍光体である。また、Yの一部もしくは全部をTb、Lu等で置換したTb
3Al
5O
12:Ce、Lu
3Al
5O
12:Ceなどもある。さらに、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、作用、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0065】
(半導体発光素子)
本発明においては、半導体発光素子として発光ダイオードを用いるのが好ましい。
【0066】
半導体発光素子は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSeや窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAs、InPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0067】
蛍光物質を有する発光装置とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。
【0068】
また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子とすることができる。さらには、半導体発光素子とともに、受光素子などを搭載することができる。
【実施例】
【0069】
<実施例1>
図9Aに示すように、板状のアルミナセラミックス上に、表面にAgメッキが施された導体配線が設けられた基板を用意する。この導体配線上に、各辺が500μmと290μmの窒化物系半導体からなる発光素子6個を、AuSnからなる共晶接合部材を用いて接合させる。ここで、用いる発光素子は、主波長が約450nmの青色発光を有し、6個ともほぼ同じ波長を有する。
【0070】
次にシリコーン樹脂に平均粒径0.25μmのチタニア(TiO
2)を重量比で50wt%分散させた白色系の樹脂(光反射樹脂)を、ディスペンサーを用いて前記6個の発光素子の周りに描画する(塗布する)。
【0071】
このようにして
図9Bに示すような光反射樹脂が形成された発光素子の集合体が作製される。この時、各光反射樹脂の線幅(縦横の光反射樹脂が交差していない部分)は、基板と接している光反射樹脂下部の幅(上面視において最大幅)が600μmであり、発光素子が載置された導体配線と、金ワイヤが直接接続された導体配線との間のアルミナセラミックス基板の剥き出し部(露出領域)を覆い、且つ、発光素子と光反射樹脂の間に基板の露出領域無いようにする。このとき、導電性ワイヤの一部も光反射樹脂に埋設されるように形成する。
【0072】
光反射樹脂を加熱硬化後、上記とは別のシリコーン樹脂に平均粒径6μmのYAG蛍光体を重量比で50wt%分散させて封止部材とし、これを白色系の光反射樹脂で囲まれた発光素子上に滴下(ポッティング)することで、封止する。
【0073】
封止部材硬化後、更にレンズ形状を持たせたシリコーン樹脂で封止部材の表面側を覆い、、その後、
図9Bの矢印の部分を、ダイシングによって分割し、基板の大きさが□3.5mmであり本発明の発光装置を得る。
【0074】
比較として、前記実施例1に対してチタニアを分散させていない透明樹脂を光反射樹脂の代わりとして作製した発光装置の電気光学的特性を測定した結果を下記に示す。
【0075】
<表1>
【0076】
以上のように、実施例1は、光反射樹脂によって導電性ワイヤや基板の露出部が埋設されているため、透明樹脂を用いた比較例に比して、約8%高光束となった。
【0077】
<実施例2>
実施例1において、
図9Aに示すように発光素子904を導体配線903A上に載置した後に、導体配線903B上に、各辺240μm角のSi(シリコン)からなる保護素子をAgペーストで載置し、この保護素子が埋設するように
図9Bに示すような光反射樹脂902を設ける以外は、実施例1と同様に行い、本発明の発光素子を得る。尚、実施例2では、保護素子を載置するために導体配線903Bをやや長く(大きく)形成しておく。
【0078】
<実施例3>
黒色系の窒化アルミ板上に、Auメッキの導体配線が施された基板を用い、各辺が1mm角の窒化物系半導体からなる発光素子1個を、AuSn共晶で接合させる。このとき、発光素子の電極は、導体配線側に向くように配置されており、導電性ワイヤを用いずに接合されている。ここで用いる発光素子は、実施例1と同様に青色系の発光波長を有する。
【0079】
次に各辺240μm角の保護素子をAgペーストで導体配線上に接合し、し各極の導体配線に金からなる導電性ワイヤで電気的結線を行う。
【0080】
次に低粘度シリコーン樹脂に平均粒径0.25μmのチタニアを重量比で20wt%分散させた白色系樹脂(光反射樹脂)を、ディスペンサーをもちいて発光素子の周りに形成(描画)する。
【0081】
この時の発光素子の載置面を除く全ての基板及び導体配線に光反射樹脂を形成するようにする。従って、発光素子の上面だけが露出される形となる。
【0082】
この様にすることで、発光素子から出た光が黒色の基板に入射することなく上面に取り出せる。