特許第6048491号(P6048491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048491
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】アモルファス合金薄帯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   B22D11/06 360B
   B22D11/06 380Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-504830(P2014-504830)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2013056354
(87)【国際公開番号】WO2013137117
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-58715(P2012-58715)
(32)【優先日】2012年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】茂木 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】板垣 肇
(72)【発明者】
【氏名】砂川 淳
(72)【発明者】
【氏名】備前 嘉雄
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−132351(JP,A)
【文献】 特開昭62−142055(JP,A)
【文献】 特開昭62−259645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/06,11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金溶湯が流通する溶湯流路を有し該溶湯流路の一端が矩形の開口部である溶湯ノズルの該開口部から、回転する冷却ロールの表面に前記合金溶湯を吐出してアモルファス合金薄帯を製造する工程を有し、
前記溶湯流路の壁面のうち前記合金溶湯の流通方向及び前記開口部の短辺方向に対して平行な面tの最大高さRz(t)が10.5μm以下であり、
前記溶湯流路の壁面のうち前記合金溶湯の流通方向及び前記開口部の長辺方向に対して平行な面sの最大高さRz(s)が、20.0μm〜60.0μmであるアモルファス合金薄帯の製造方法。
【請求項2】
前記アモルファス合金薄帯を製造する工程は、周速10m/s〜40m/sで回転する前記冷却ロールの表面に前記合金溶湯を吐出する請求項1に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法。
【請求項3】
前記アモルファス合金薄帯を製造する工程は、前記合金溶湯を10kPa〜30kPaの吐出圧力で吐出する請求項1又は請求項2に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法。
【請求項4】
前記開口部の長辺の長さが、100mm〜300mmである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法。
【請求項5】
前記開口部の短辺の長さが、0.1mm〜1.0mmである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス合金薄帯及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁心や磁気シールド材等に用いられるアモルファス合金薄帯を製造するための製造方法としては、液体急冷法が広く知られている。液体急冷法には、単ロール法(例えば、特許第3494371号公報参照)、双ロール法(例えば、特開平3−18459号公報参照)、遠心法等があるが、生産性やメンテナンス性から考えると、回転する一つの冷却ロールの表面に溶湯ノズルから合金溶湯を供給し、急冷凝固させてアモルファス合金薄帯を得る単ロール法が優れている。
単ロール法では、冷却ロール表面と溶湯ノズルとで合金溶湯による湯溜まり(「パドル」とも呼ばれている)を形成しながら薄帯を製造することが行われており、これにより広幅の薄帯を好適に作製できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば単ロール法により製造されたアモルファス合金薄帯では、薄帯の幅方向端部が滑らかな形状とはならず、該端部が鋸状に毛羽立った形状となる傾向がある(例えば、図5参照)。この鋸状に毛羽立った形状に含まれる突出部分の一本(鋸の歯一本に相当する部分)を、本発明では「毛羽」(feather)という。アモルファス合金薄帯は熱処理により脆化し易い傾向があるため、幅方向端部に毛羽(特に、薄帯の長手方向に沿って測定された長さが1mm以上の毛羽)が生じると、毛羽の脱落が問題となることがある。毛羽が脱落すると、アモルファス合金薄帯を例えば変圧器等の磁心として使用した際に、脱落した毛羽が電気的短絡を引き起こし、磁心の損失が増大し、最悪の場合には、変圧器が損傷する。
【0004】
上記毛羽の脱落という問題に関し、現状は、アモルファス合金薄帯を積層して磁心を作製し、次いで熱処理した後、前記毛羽が脱落しないように慎重にアモルファス合金薄帯の幅方向端部をエポキシ樹脂等で被覆することにより、後工程であるトランス組立工程等における毛羽の脱落を抑制している。
【0005】
しかしながら、毛羽の脱落を抑制する方法としては、毛羽の発生自体を抑制するという、より根本的な方法が求められている。
従って、本発明の課題は、薄帯の幅方向端部における毛羽の発生が抑制され、熱処理後の毛羽の脱落を抑制できるアモルファス合金薄帯の製造方法を提供することである。また、本発明の課題は、熱処理後の毛羽の脱落を抑制できるアモルファス合金薄帯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 合金溶湯が流通する溶湯流路を有し該溶湯流路の一端が矩形の開口部である溶湯ノズルの該開口部から、回転する冷却ロールの表面に前記合金溶湯を吐出してアモルファス合金薄帯を製造する工程を有し、前記溶湯流路の壁面のうち前記合金溶湯の流通方向及び前記開口部の短辺方向に対して平行な面tの最大高さRz(t)が10.5μm以下であるアモルファス合金薄帯の製造方法である。
<2> 前記アモルファス合金薄帯を製造する工程は、周速10m/s〜40m/sで回転する前記冷却ロールの表面に前記合金溶湯を吐出する<1>に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法である。
<3> 前記アモルファス合金薄帯を製造する工程は、前記合金溶湯を10kPa〜30kPaの吐出圧力で吐出する<1>又は<2>に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法である。
<4> 前記溶湯流路の壁面のうち前記合金溶湯の流通方向及び前記開口部の長辺方向に対して平行な面sの最大高さRz(s)が、60.0μm以下である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のアモルファス合金薄帯の製造方法である。
<5> 前記溶湯流路の壁面のうち前記合金溶湯の流通方向及び前記開口部の長辺方向に対して平行な面sの最大高さRz(s)が、20.0μm〜60.0μmである<1>〜<4>のいずれか1つに記載のアモルファス合金薄帯の製造方法である。
<6> 前記開口部の長辺の長さが、100mm〜300mmである<1>〜<5>のいずれか1つに記載のアモルファス合金薄帯の製造方法である。
<7> 前記開口部の短辺の長さが、0.1mm〜1.0mmである<1>〜<6>のいずれか1つに記載のアモルファス合金薄帯の製造方法である。
【0007】
<8> 薄帯の幅方向端部において、薄帯の長手方向に沿って測定された長さが1mm以上である毛羽が、薄帯の長手方向長さ1m当たり1本以下であるアモルファス合金薄帯である。
<9> 単ロール法により製造された<8>に記載のアモルファス合金薄帯である。
<10> 厚みが10μm〜40μmであり、幅が100mm〜300mmである<8>又は<9>に記載のアモルファス合金薄帯である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄帯の幅方向端部における毛羽の発生が抑制され、熱処理後の毛羽の脱落を抑制できるアモルファス合金薄帯の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、熱処理後の毛羽の脱落を抑制できるアモルファス合金薄帯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のアモルファス合金薄帯の製造方法に好適なアモルファス合金薄帯製造装置の一実施形態を概念的に示す概略断面図である。
図2図1に示したアモルファス合金薄帯製造装置における溶湯ノズルの斜視図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】実施例1のアモルファス合金薄帯の端部を撮影した光学顕微鏡写真である。
図5】比較例1のアモルファス合金薄帯の端部を撮影した光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のアモルファス合金薄帯の製造方法及びアモルファス合金薄帯について詳細に説明する。
【0011】
<アモルファス合金薄帯の製造方法>
本発明のアモルファス合金薄帯(以下、単に「薄帯」ともいう)の製造方法は、合金溶湯が流通する溶湯流路を有し該溶湯流路の一端が矩形の開口部(例えば、後述の図2中の開口部11)である溶湯ノズルの該開口部から、回転する冷却ロールの表面に前記合金溶湯を吐出してアモルファス合金薄帯を製造する工程を有し、前記溶湯流路の壁面のうち前記合金溶湯の流通方向及び前記開口部の短辺方向に対して平行な面t(例えば、後述の図2及び図3中の面t)の最大高さRz(t)が10.5μm以下である。
本明細書中において表面粗さ(最大高さRz及び後述する算術平均粗さRa)は、JIS B 0601(2001)に準拠して測定された表面粗さを指す。
更に、本明細書中における表面粗さ(最大高さRz及び後述する算術平均粗さRa)は、合金溶湯の流通方向(例えば、図2中では矢印Qの方向)に沿って測定された値を指す。
【0012】
従来のアモルファス合金薄帯の製造方法によって製造された薄帯は、幅方向端部が滑らかな形状とはならず、幅方向端部に毛羽(feather)が発生していた。アモルファス合金薄帯は熱処理により脆化し易い傾向があるため、幅方向端部に毛羽(特に、薄帯の長手方向に沿って測定された長さが1mm以上の毛羽)が生じると、熱処理後に毛羽の脱落が問題となることがある。
本明細書中では、薄帯の長手方向に沿って測定された長さが1mm以上の毛羽を、単に「長さ1mm以上の毛羽」ともいう。
上記従来の技術に対し、本発明のアモルファス合金薄帯の製造方法によれば、薄帯の幅方向端部における毛羽(特に、長さ1mm以上の毛羽)の発生を抑制できるので、熱処理後の毛羽の脱落を抑制できる。
【0013】
ここで、毛羽及び毛羽の長さについて、図5を参照しながら説明する。
図5は、後述する比較例1のアモルファス合金薄帯の端部を撮影した光学顕微鏡写真である。
図5中、下側のグレーの領域がアモルファス合金薄帯であり、上側の黒い領域は背景である。
図5に示した比較例1のアモルファス合金薄帯では、端部に3本の毛羽が確認できる(図5では、3本の毛羽のうち中央の1本を破線の丸で囲っている)。
図5中の長さLは、毛羽の、薄帯の長手方向に沿った長さを示している。
ここで、薄帯の長手方向は、冷却ロールの回転方向(例えば図1中の矢印P)と一致する。
【0014】
図5では、3本の毛羽のうち右側の1本は、薄帯の長手方向に沿って測定された長さが1mm以上となっている。即ち、この右側の1本は、「長さ1mm以上の毛羽」である。 「長さ1mm以上の毛羽」は、熱処理後に特に脱落し易いため、このような毛羽の発生を抑制することが求められる。
本発明の製造方法によれば、特に、この「長さ1mm以上の毛羽」の発生を抑制できる(例えば、後述の図4(実施例1)参照)。
【0015】
本発明によって毛羽の発生を抑制できる詳細な理由は明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、合金溶湯を溶湯ノズルの矩形の開口部から回転する冷却ロールの表面に吐出する製造方法では、上述した面tの近傍の合金溶湯の流れが乱流である場合、冷却ロールへの合金溶湯の供給が安定せず、冷却ロール表面に形成される湯溜まり(パドル)の幅方向端部の振動(具体的には、冷却ロールの軸方向についての振動)が大きくなると考えられる。そして湯溜まりの幅方向端部が振動しながら冷却ロールが回転することにより、前記振動によって外側に張り出した時の湯溜まり端部が回転方向に対して反対方向に引き伸ばされ、毛羽が形成されるものと推測される。
この現象に対し、上記面tの最大高さRz(t)を10.5μm以下とすることにより、この面tの近傍の合金溶湯の流れが層流となりやすくなり、その結果、冷却ロールへの合金溶湯の供給が安定し、上述の湯溜まりの幅方向端部の振動が抑制され、ひいては毛羽の発生が抑制されるものと考えられる。
【0016】
即ち、本発明者等は、薄帯の毛羽の有無には(後述の面sの粗さの影響と比較して)上記面tの粗さの影響が大きいという知見を見出し、更に、この面tの最大高さRz(t)を10.5μm以下とすることにより毛羽の発生を抑制できるという知見を見出し、これらの知見に基づき本発明を完成させた。
【0017】
前記最大高さRz(t)が10.5μmを超える場合には、毛羽の発生が顕著となる。この理由は、湯溜まりの幅方向端部の振動が大きくなるためと考えられる。
【0018】
前記最大高さRz(t)は、毛羽の発生をより抑制する観点からは、10.0μm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明において、前記溶湯流路の壁面のうち前記合金溶湯の流通方向及び前記開口部の長辺方向に対して平行な面s(例えば、後述の図2及び図3中の面s)の最大高さRz(s)には特に限定はないが、毛羽の発生をより抑制する観点からは、60.0μm以下であることが好ましく、50.0μm以下であることがより好ましい。
また、前記Rz(s)が60.0μm以下であると、上記面sへの介在物(合金溶湯に起因する析出物等)の付着をより抑制でき、アモルファス合金薄帯をより安定的に製造できる。
一方、前記Rz(s)は、広範囲にわたるRzの調整(研磨等)がより容易となる観点から、20.0μm以上が好ましく、30.0μm以上がより好ましい。
【0020】
なお、前記Rz(t)及び前記Rz(s)を上記の範囲に調整する方法には特に限定はなく、例えば、ヤスリ(例えばダイヤモンドヤスリ)やブラシ等による研磨等の方法を用いることができる。加工性および工程管理の観点などからは研磨が特に好適である。
【0021】
以下、本発明のアモルファス合金薄帯の製造方法の一実施形態を、図1図3を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明のアモルファス合金薄帯の製造方法に好適なアモルファス合金薄帯製造装置の一実施形態を概念的に示す概略断面図である。
図1に示すアモルファス合金薄帯製造装置100は、単ロール法によるアモルファス合金薄帯製造装置である。
図1に示すように、アモルファス合金薄帯製造装置100は、溶湯ノズル10を備えた坩堝20と、その表面が溶湯ノズル10の先端に対向する冷却ロール30と、を備えている。図1は、アモルファス合金薄帯製造装置100を、冷却ロール30の軸方向及びアモルファス合金薄帯22Cの幅方向(これらの2つの方向は同一である)に対して垂直な面で切断したときの断面を示している。
【0023】
坩堝20は、アモルファス合金薄帯の原料となる合金溶湯22Aを収容しうる内部空間を有しており、この内部空間と溶湯ノズル10の溶湯流路とが連通されている。これにより、坩堝20内に収容された合金溶湯22Aを、溶湯ノズル10によって冷却ロール30に吐出できるようになっている(図1及び図2では、合金溶湯22Aの吐出方向及び流通方向を矢印Qで示している)。なお、坩堝20及び溶湯ノズル10は、一体に構成されたものであってもよいし、別体として構成されたものであってもよい。
坩堝20の周囲の少なくとも一部には、加熱手段としての高周波コイル40が配置されている。これにより、アモルファス合金薄帯の母合金が収容された状態の坩堝20を加熱して坩堝20内で合金溶湯22Aを生成したり、外部から坩堝20に供給された合金溶湯22Aの液体状態を維持できるようになっている。
【0024】
溶湯ノズル10の先端と冷却ロール30の表面との距離(以下、「ギャップ」ともいう)は、溶湯ノズル10によって合金溶湯22Aを吐出したときに、合金溶湯22Aによる湯溜まり22Bが形成される程度に近接している。
この距離は、単ロール法において通常設定される範囲とすることができるが、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
また、この距離は、溶湯ノズル10の先端と冷却ロール30の表面との接触を抑制する観点からは、50μm以上であることが好ましい。
【0025】
冷却ロール30は矢印Pの方向に軸回転できるように構成されている。
冷却ロール30の内部には水等の冷却媒体が流通されており、これにより、冷却ロール30の表面に付与(吐出)された合金溶湯22Aを冷却しアモルファス合金薄帯22Cを生成できるようになっている。
冷却ロール30の軸方向長さは、製造するアモルファス合金薄帯の幅(後述するノズルの開口部の長辺の長さ)よりも長ければ特に限定はない。
冷却ロール30の直径は、冷却能の観点から、200mm以上が好ましく、300mm以上がより好ましい。一方、この直径は、冷却能の観点から、700mm以下が好ましい。
冷却ロール30の材質は、Cu、Cu合金(Cu−Be合金、Cu−Cr合金、Cu-Zr合金、Cu−Zn合金、Cu−Sn合金、Cu−Ti合金、等)の熱伝導性の高い材料が好ましい。
冷却ロール30表面の表面粗さには特に限定はないが、前述の湯溜まり端部の振動をより抑制する観点からは、冷却ロール30表面の最大高さ(Rz)は、1.5μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
同様に、湯溜まり端部の振動をより抑制する観点からは、冷却ロール30表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.5μm以下が好ましい。
その他、冷却ロール30としては、単ロール法において通常用いられる冷却ロールを用いることができる。
【0026】
冷却ロール30の表面の近傍(溶湯ノズル10よりも冷却ロール30の回転方向のついての下流側)には、剥離ガスノズル50が配置されている。これにより、冷却ロール30の回転方向(矢印P)とは逆向き(図1中の破線の矢印の方向)に剥離ガス(例えば窒素ガスや圧縮空気等の高圧ガス)を吹きつけることによって、冷却ロール30からのアモルファス合金薄帯22Cの剥離がより効率よく行われる。
【0027】
アモルファス合金薄帯製造装置100は、上述した構成以外のその他の構成(例えば、製造されたアモルファス合金薄帯22Cを巻き取る巻き取りロール、合金溶湯による湯溜まり22B又はその近傍にCOガスやNガス等を吹き付けるガスノズル等)を備えていてもよい。
その他、アモルファス合金薄帯製造装置100の基本的な構成は、従来の単ロール法によるアモルファス合金薄帯製造装置(例えば、特許第3494371号公報、特許第3594123号公報、特許第4244123号公報、特許第4529106号公報等参照)と同様の構成とすることができる。
【0028】
図2は、図1に示したアモルファス合金薄帯製造装置100における溶湯ノズル10の斜視図であり、図3は、図2のA−A線断面図である。
図3に示すように、溶湯ノズル10は合金溶湯を流通させる溶湯流路Fを有している。 この溶湯流路Fの合金溶湯流通方向についての一端は、合金溶湯を吐出するための矩形(スリット形状)の開口部11(図2)となっている。一方、この溶湯流路Fの合金溶湯流通方向についての他端は、図1に示す坩堝20の内部空間に連通されている。
なお、溶湯流路Fを合金溶湯の流通方向に垂直な面で切断したときの断面(図3)も、上記開口部11(図2)と同じ矩形(スリット形状)となっている。即ち、溶湯流路Fは、矩形の開口部(開口端)を有する角柱状空間となっている。
【0029】
上記開口部11の長辺の長さは、製造されるアモルファス合金薄帯の幅に対応する長さとなっている。上記開口部11の長辺の長さとしては、100mm以上が好ましく、125mm以上がより好ましい。一方、この長辺の長さは、300mm以下が好ましい。
また、上記開口部11の短辺の長さは、一般的な鋳造条件(速度、ギャップ、吐出圧力)において、アモルファス合金薄帯をより安定的に製造する観点から、0.1mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。同様の観点より、この短辺の長さは、1.0mm以下が好ましく、0.7mm以下がより好ましい。
【0030】
溶湯ノズル10の材質は、耐熱衝撃性の観点から、窒化ケイ素、サイアロン、アルミナ−ジルコニア、ジルコン等が好ましい。
また、溶湯流路Fの流路長(溶湯流路Fの合金溶湯流通方向についての長さ)は、溶湯整流化の観点から、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。
【0031】
本実施形態において溶湯流路Fの壁面のうち、面tの最大高さ(Rz(t))の範囲は前述のとおりであり、好ましい範囲も前述のとおりである。面sの最大高さ(Rz(s))の好ましい範囲も前述のとおりである。
【0032】
次に、図1に戻り、アモルファス合金薄帯製造装置100を用いたアモルファス合金薄帯22Cの製造の一例について説明する。
まず、坩堝20に母合金を収容し、母合金を高周波コイル40による高周波誘導加熱によって溶解させ合金溶湯22Aを生成する。このときの合金溶湯22Aの温度には特に限定はないが、合金溶湯22Aに起因する析出物が溶湯ノズルの壁面に付着することを抑制する観点から、母合金の融点+50℃以上であることが好ましい。また、合金溶湯22Aの温度は、冷却ロール30表面との接触面側に発生するエアポケットの生成を抑制する観点から、母合金の融点+250℃以下であることが好ましい。
【0033】
次に、矢印Pの方向に回転する冷却ロール30表面に、溶湯ノズル10によって合金溶湯を吐出して湯溜まり22Bを形成しながら前記冷却ロール30表面に前記合金溶湯による塗膜を形成するとともに、この塗膜を冷却してアモルファス合金薄帯22Cとする。次に、冷却ロール30の表面に形成されたアモルファス合金薄帯22Cを、剥離ガスノズル50からの剥離ガスの吹きつけにより冷却ロール30の表面から剥離し、不図示の巻き取りロールによってロール状に巻き取って回収する。
合金溶湯の吐出からアモルファス合金薄帯の巻き取り(回収)までの操作は連続的に行われ、これにより、例えば長手方向長さが3000m以上の長尺状のアモルファス合金薄帯が得られる。
【0034】
このときの合金溶湯の吐出圧力は、10kPa以上が好ましく、15kPa以上がより好ましい。一方、この吐出圧力は30kPa以下が好ましく、25kPa以下がより好ましい。
吐出圧力が上述した好ましい範囲であると、本発明による毛羽低減の効果(即ち、Rz(t)を10.5μm以下としたことによる毛羽低減の効果;以下同じ)がより顕著に得られる。
【0035】
また、冷却ロール30の回転速度は単ロール法において通常設定される範囲とすることができるが、周速40m/s以下が好ましく、周速30m/s以下がより好ましい。一方、この回転速度は、周速10m/s以上が好ましく、周速20m/s以上がより好ましい。
回転速度が上述した好ましい範囲であると、本発明による毛羽低減の効果がより顕著に得られる。
また、冷却ロール30表面の温度は、冷却ロール30表面への合金溶湯の供給が開始されてから5秒以上経過した後において、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。一方、この温度は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
冷却ロール30による合金溶湯の冷却速度は、1×10℃/s以上が好ましく、1×10℃/s以上がより好ましい。
【0036】
本製造方法において、母合金及び合金溶湯の組成には特に制限はなく、製造するアモルファス合金薄帯の組成に応じて適宜選択できる。アモルファス合金薄帯の組成の例については後述する。
【0037】
以上で説明した本発明のアモルファス合金薄帯の製造方法は、特に、下記のアモルファス合金薄帯を製造する方法として好適である。
【0038】
<アモルファス合金薄帯>
本発明のアモルファス合金薄帯は、薄帯の幅方向端部において、薄帯の長手方向に沿って測定された長さが1mm以上である毛羽(長さ1mm以上の毛羽)が、薄帯の長手方向長さ1m当たり1本以下である。
本発明において、「(前記の)毛羽が、薄帯の長手方向長さ1m当たり1本以下である」とは、薄帯の長手方向長さ1m分について該薄帯の幅方向両端部を観察したときに(即ち、合計で2mの範囲を観察したときに)、前記の毛羽の本数の合計が1本以下であることを指す。
【0039】
本発明者の検討により、長さ1mm以上の毛羽は、熱処理(例えば磁場中における熱処理)によってアモルファス合金が脆化したときに特に脱落し易いことが判明した。特に、長さ1mm以上の毛羽の本数が薄帯の長手方向長さ1m当たりに1本を超えると、熱処理によって脆化した毛羽の脱落が顕著となることが判明した。更に、この毛羽の本数を、薄帯の長手方向長さ1m当たり1本以下に調整することで熱処理によって脆化した毛羽の脱落が顕著に低減されることがわかった。
従って本発明のアモルファス合金薄帯によれば、熱処理によって脆化した毛羽の脱落が抑制される。
【0040】
前記長さ1mm以上の毛羽は、薄帯の長手方向長さ1m当たり0本であること(即ち、薄帯の長手方向長さ1m当たりに、長さ1mm以上の毛羽が存在しないこと)が特に好ましい。
【0041】
また、本発明のアモルファス合金薄帯の幅には特に限定はないが、アモルファス合金薄帯の実用性の観点から、100mm以上が好ましく、125mm以上がより好ましい。
一方、本発明のアモルファス合金薄帯の幅は、アモルファス合金薄帯製造装置の生産性の観点から、300mm以下が好ましい。
【0042】
また、本発明のアモルファス合金薄帯の厚み(板厚)には特に限定はないが、機械的強度をより向上させる観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。
一方、前記厚みは、アモルファス相がより安定的に得る観点から、40μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0043】
また、本発明のアモルファス合金薄帯は、例えば、単ロール法によって製造される。
特に、前述した本発明の製造方法によれば、本発明のアモルファス合金薄帯を好適に製造することができる。
【0044】
本発明のアモルファス合金薄帯を構成するアモルファス合金(組成)については特に限定はないが、例えば、Fe基アモルファス合金、Ni基アモルファス合金、CoCr基アモルファス合金等が挙げられる。
ここで、Fe基アモルファス合金とは、Feを主成分とするアモルファス合金を指す。
また、Ni基アモルファス合金とは、Niを主成分とするアモルファス合金を指す。
また、CoCr基アモルファス合金とは、Co及びCrを主成分とするアモルファス合金を指す。
なお、「主成分」とは、含有比率が最も高い成分を指す。
【0045】
前記Fe基アモルファス合金の組成としては、Feを50原子%以上含む組成が好ましく、Feを60原子%以上含む組成がより好ましく、Feを70原子%以上含む組成が好ましい。
更には、Siの比率が2〜25原子%であり、Bの比率が2〜25原子%であり、残部がFe及び不可避的不純物である組成が好ましく、Siの比率が2〜22原子%であり、Bの比率が5〜16原子%であり、残部がFe及び不可避的不純物である組成がより好ましく、Siの比率が2〜10原子%であり、Bの比率が10〜16原子%であり、残部がFe及び不可避的不純物である組成が特に好ましい。
前記Fe基アモルファス合金における前記不可避的不純物としては、例えば、C、Al、Cr、W、P、Mn、Zn、Ti、Cuが挙げられる。
前記Fe基アモルファス合金における前記不可避的不純物の含有量は、2原子%未満が好ましく、1原子%以下が特に好ましい。
【0046】
前記Ni基アモルファス合金の組成としては、Niを40原子%以上含む組成が好ましく、Niを50原子%以上含む組成がより好ましく、Niを60原子%以上含む組成が特に好ましい。
前記Ni基アモルファス合金の組成として、更には、Niの比率が60〜80原子%であり、Siの比率が2〜15原子%であり、Bの比率が5〜15原子%であり、(更に必要に応じ、Cr2〜20原子%、Fe2〜5原子%、W2〜5原子%、及びCo15〜20原子%の少なくとも1つを含み)、残部が不可避的不純物である組成、Niの比率が40〜70原子%であり、Bの比率が15〜20原子%であり、Crの組成が10〜15原子%であり、(更に必要に応じ、Co15〜20原子%、Fe2〜5原子%、及びMo2〜5原子%の少なくとも1つを含み)、残部が不可避的不純物である組成、又は、Niの比率が60〜85原子%であり、Pの比率が15〜20原子%であり、(更に必要に応じ、Cr15〜20原子%を含み)、残部が不可避的不純物である組成が特に好ましい。
前記Ni基アモルファス合金における前記不可避的不純物としては、例えば、C、Al、Mn、Zn、Ti、Cuが挙げられる。
前記Ni基アモルファス合金における前記不可避的不純物の含有量は、2原子%未満が好ましく、1原子%以下が特に好ましい。
【0047】
前記CoCr基アモルファス合金の組成としては、Co及びCrを合計で50原子%以上含む組成が好ましく、Co及びCrを合計で60原子%以上含む組成がより好ましい。
また、前記CoCr基アモルファス合金におけるCoの含有量は、30原子%以上であることが好ましく、50原子%以上であることがより好ましく、60原子%以上であることが特に好ましい。
また、前記CoCr基アモルファス合金におけるCrの含有量は、10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であることがより好ましく、20原子%以上であることが特に好ましい。
前記Co基アモルファス合金の組成として、更には、Coの比率が60〜80原子%であり、Bの比率が5〜15原子%であり、Crの比率が15〜25原子%であり、(更に必要に応じSi2〜5原子%含み)、残部が不可避的不純物である組成、又は、Coの比率が30〜60原子%であり、Bの比率が5〜15原子%であり、Crの比率が20〜40原子%であり、Wの比率が5〜15原子%であり、(更に必要に応じ、Fe2〜5原子%、Si2〜5原子%、Ni2〜5原子%、及びC2〜8原子%の少なくとも1つを含み)、残部が不可避的不純物である組成が挙げられる。
前記CoCr基アモルファス合金における前記不可避的不純物としては、例えば、C、Al、P、Mn、Zn、Tiが挙げられる。
前記CoCr基アモルファス合金における前記不可避的不純物の含有量は、2原子%未満が好ましく、1原子%以下が特に好ましい。
【0048】
下記表1に、本発明のアモルファス合金の組成の具体例を示す。但し、本発明は以下の具体例に限定されることはない。
下記表1において、「%」は原子%を示す。また、比率が2原子%未満の成分は不可避的不純物とみなして記載を省略している。また、不可避的不純物を除いた成分の比率の合計を100原子%としたときの比率を示している。
【0049】
【表1】
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
<アモルファス合金薄帯の作製>
図1に示したアモルファス合金薄帯製造装置100と同様の構成のアモルファス合金薄帯製造装置を準備した。溶湯ノズル及び冷却ロールとしては、以下の溶湯ノズル及び冷却ロールを準備した。
【0052】
−溶湯ノズル−
・材質 … 窒化ケイ素
・開口部のサイズ … 長辺の長さ142mm×短辺の長さ0.6mm
・溶湯流路の流路長 … 10mm
・溶湯流路の壁面の最大高さ(Rz(s)、Rz(t))は、下記表2に示す値となるように調整した。
ここで、Rz(s)及びRz(t)は、JIS B 0601(2001)に準拠して測定した。このとき、Rz(s)及びRz(t)は、合金溶湯の流通方向(例えば、図2中の矢印Qの方向)に沿って測定した。
また、最大高さの調整は、溶湯流路の壁面を180番のダイヤモンドヤスリを用いて研磨することにより行った。このとき、面積が狭い面tについては、合金溶湯の流通方向(例えば、図2中の矢印Qの方向)に沿って研磨した。面積が広い面sについては、研磨の方向を特定せずにまんべんなく研磨した。
【0053】
−冷却ロール−
・材質 … Cu−Be合金
・直径 … 400mm
・冷却ロール表面の最大高さRz … 1.5μm以下
・冷却ロール表面の算術平均粗さRa … 0.3μm以下
【0054】
まず、坩堝内に、Siの比率が9原子%であり、Bの比率が11原子%であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成のインゴット(母合金)を装入し、高周波誘導加熱により溶解させて合金溶湯を得た。
次に、この合金溶湯を上記溶湯ノズルから、回転する冷却ロール表面に吐出し、急冷凝固させて、幅が142mmで厚さが24μmのアモルファス合金薄帯を4200kg作製した。
【0055】
アモルファス合金薄帯の詳細な作製条件は以下の通りとした。
・合金溶湯の吐出圧力 … 20kPa
・冷却ロールの周速 … 25m/s
・合金溶湯温度 … 1300℃(母合金の融点は1150℃)
・溶湯ノズル先端と冷却ロール表面との距離(ギャップ) … 200μm
・冷却温度(冷却ロール表面への合金溶湯の供給が開始されてから5秒以上経過した後の温度) … 170℃
【0056】
<毛羽の本数の確認>
上記で得られたアモルファス合金薄帯の長手方向長さ1m分について、幅方向両端部を光学顕微鏡(倍率50倍)によって観察し(観察範囲は両端部合計で2m)、薄帯の長手方向に沿って測定された長さが1mm以上である毛羽(長さ1mm以上の毛羽)の本数を確認した。
上記で確認した幅方向両端部における上記毛羽の本数の合計を、薄帯の長手方向長さ1m当たりの上記毛羽の本数(以下、「本/m」と表記することがある)とした。例えば、上記幅方向両端部における上記毛羽の本数の合計が1本であった場合には、そのアモルファス合金薄帯における上記毛羽の本数は「1本/m」とした。
結果を下記表2に示す。
【0057】
〔実施例2〜3及び比較例1〜4〕
溶湯ノズルの溶湯流路の壁面の最大高さ(Rz(s)及びRz(t))を、研磨により下記表2に示すように調整したこと以外は実施例1と同様にしてアモルファス合金薄帯を作製し、実施例1と同様にして毛羽の本数を確認した。
結果を下記表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、長さ1mm以上の毛羽の本数は、Rz(s)ではなくRz(t)に依存していた。より詳細には、Rz(t)を10.5μm以下とすることにより、長さ1mm以上の毛羽を1本/m以下とすることができた。
また、詳細な測定は省略したが、比較例1〜4の薄帯の幅方向端部には、長さ0.1mm以上1mm未満の毛羽が非常に多く存在しており、この端部が鋸状に毛羽立っていた(例えば、下記図参照)。
【0060】
図4は、実施例1のアモルファス合金薄帯の端部を示す光学顕微鏡写真であり、図5は、比較例1のアモルファス合金薄帯の端部を示す光学顕微鏡写真である。
図4及び図5とも、下側のグレーの領域がアモルファス合金薄帯であり、上側の黒い領域が背景である。
図4に示すように、実施例1のアモルファス合金薄帯は、幅方向端部が極めて滑らか(直線状)であった。これに対し、比較例1のアモルファス合金薄帯は、幅方向端部が鋸状に毛羽立っており、この端部には、長さ1mm以上の毛羽及び長さ0.1mm以上1mm未満の毛羽を含めた多数の毛羽が存在していた。
【0061】
日本出願2012−058715の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図2
図3
図1
図4
図5