(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アーム部材は、前記複数の吸着部によって前記マスク基板をほぼ平面状に吸着するように構成され、前記移動装置は、ほぼ平面状に吸着された前記マスク基板のパターン面に沿って前記アーム部材を直線的に移動させる直線駆動源を有する
請求項3に記載のマスク搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、実施形態について説明する。実施形態において同様の要素については、同じ符号を付してその説明を簡略化または省略することがある。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のデバイス製造システムSYS(フレキシブル・ディスプレー製造ライン)の構成を示す図である。ここでは、供給ロールFR1から引き出された可撓性の基板P(シート、フィルム等)が、順次、n台の処理装置U1,U2,U3,U4,U5,・・・Unを経て、回収ロールFR2に巻き上げられるまでの例を示している。
【0016】
図1において、直交座標系XYZは、基板Pの表面(または裏面)がXZ面と垂直となるように設定され、基板Pの搬送方向(長尺方向)と直交する幅方向がY軸方向に設定されるものとする。以下の説明において、X軸方向の周りの回転方向をθX方向とし、同様に、Y軸方向、Z軸方向の周りの回転方向をそれぞれθY方向、θZ方向とする。
【0017】
供給ロールFR1に巻かれている基板Pは、ニップされた駆動ローラDR1によって引き出されて処理装置U1に搬送される。基板PのY軸方向(幅方向)の中心は、エッジポジションコントローラEPC1によって、目標位置に対して±十数μmから数十μm程度の範囲に収まるようにサーボ制御される。
【0018】
処理装置U1は、印刷方式で基板Pの表面に感光性機能液(フォトレジスト、感光性カップリング材、UV硬化樹脂液等)を、基板Pの搬送方向(長尺方向)に関して連続的または選択的に塗布する塗布装置である。処理装置U1内には、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラDR2、この圧胴ローラDR2上で、基板Pの表面に感光性機能液を一様に塗布するための塗布用ローラ等を含む塗布機構Gp1、基板Pに塗布された感光性機能液に含まれる溶剤または水分を急速に除去するための乾燥機構Gp2等が設けられている。
【0019】
処理装置U2は、処理装置U1から搬送されてきた基板Pを所定温度(例えば、数十℃から120℃程度)まで加熱して、表面に塗布された感光性機能層を安定に定着するための加熱装置である。処理装置U2内には、基板Pを折返し搬送するための複数のローラとエア・ターン・バー、搬入されてきた基板Pを加熱するための加熱チャンバー部HA1、加熱された基板Pの温度を、後工程(処理装置U3)の環境温度と揃うように下げるための冷却チャンバー部HA2、ニップされた駆動ローラDR3等が設けられている。
【0020】
基板処理装置としての処理装置U3は、処理装置U2から搬送されてきた基板Pの感光性機能層に対して、ディスプレー用の回路パターンや配線パターンに対応した紫外線のパターニング光を照射する露光装置を含む。処理装置U3内には、基板PのY軸方向(幅方向)の中心を一定位置に制御するエッジポジションコントローラEPC2、ニップされた駆動ローラDR4、所定のテンションでX軸方向に搬送される基板Pの裏面をエアベアリングの層で平面支持する基板ステージST、及び、基板Pに所定のたるみ(あそび)DLを与えるための2組の駆動ローラDR6、DR7等が設けられている。
【0021】
さらに処理装置U3内には、外周面にシート状のマスク基板(以下、マスクMという)が巻き付けられて、Y軸方向と平行な中心線の回りに回転する回転ドラムDM、その回転ドラムDMに巻き付けられたマスクMにY軸方向に延びたスリット状の露光用照明光を照射する照明ユニットIU、基板ステージSTによって平面状に支持される基板Pの一部分に、回転ドラムDMに巻き付けられたマスクにおけるパターンの一部分の像を投影する投影光学系PL、投影されるパターンの一部分の像と基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)するために基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出するアライメント顕微鏡AM、複数のマスクMを収納可能なマスクカセットMC、及び、露光に供するマスクMをマスクカセットMCから取り出して回転ドラムDMの外周面に巻付けるためのマスク搬送装置MLが設けられている。
【0022】
図1に示した処理装置U3の詳細な構成と動作については後で説明するが、処理装置U3は、回転ドラムDMの外周面にシート状のマスクMを貼り付けて円筒状のマスク体とする露光装置であれば、投影方式に限られない。例えば、処理装置U3は、円筒状のマスク体と基板Pとを所定の間隙(数十μm以内)で近接させるプロキシミティ方式、あるいは、円筒状のマスク体の外周に基板Pを巻付けるコンタクト方式の露光装置であってもよい。
【0023】
このようなプロキシミティ方式またはコンタクト方式の露光装置を採用する場合は、回転ドラムDMの内部に照明ユニットを配置し、回転ドラムDMの内部から外周面の透過型のマスクに向けて照明光を照射するように構成すればよい。回転ドラムDMの内部に照明ユニットを配置する構成は、投影光学系PLを介してマスクMのパターンの像を投影する投影方式にも適用できる。
【0024】
また、本実施形態では、透過型のマスクMを回転ドラムDMに巻き付けて円筒状のマスク体とするが、反射型のマスクMを回転ドラムDMに巻き付け円筒状マスク体としてもよい。反射型のマスクMは、例えば、パターンが高反射部と低反射部とで形成されたものである。例えば、反射型のマスクMを採用する場合に、露光装置は、落射照明によって反射型のマスクMを照明し、マスクMから出射した光を投影光学系PLによって基板Pに投射する構成であってもよい。
【0025】
さて、
図1の処理装置U4は、処理装置U3から搬送されてきた基板Pの感光性機能層に対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理等のような各種の湿式処理の少なくとも1つを行なうウェット処理装置である。処理装置U4内には、Z軸方向に階層化された3つの処理槽BT1、BT2、BT3と、基板Pを折り曲げて搬送する複数のローラと、ニップされた駆動ローラDR8等が設けられている。
【0026】
処理装置U5は、処理装置U4から搬送されてきた基板Pを暖めて、湿式プロセスで湿った基板Pの水分含有量を所定値に調整する加熱乾燥装置であるが、詳細は省略する。その後、幾つかの処理装置を経て、一連のプロセスの最後の処理装置Unを通った基板Pは、ニップされた駆動ローラDR9を介して回収ロールFR2に巻き上げられる。その巻上げの際も、基板PのY軸方向(幅方向)の中心、あるいはY軸方向の基板端が、Y軸方向にばらつかないように、エッジポジションコントローラEPC3によって、駆動ローラDR9と回収ロールFR2のY軸方向の相対位置が逐次補正制御される。
【0027】
上位制御装置CONTは、製造ラインを構成する各処理装置U1からUnの運転を統括制御するものである。上位制御装置CONTは、各処理装置U1からUnにおける処理状況や処理状態の監視、処理装置間での基板Pの搬送状態のモニター、事前・事後の検査・計測の結果に基づくフィードバック補正やフィードフォワード補正等も行なう。
【0028】
本実施形態で使用される基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等である。樹脂フィルムの材質は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含む。
【0029】
基板Pは、各種の処理工程において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度等に応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。また、基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、あるいは、表面に精密パターニングのための微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでもよい。
【0030】
本実施形態のデバイス製造システムSYSは、デバイス(ディスプレーパネル等)製造のための各種の処理を、基板Pに対して繰り返し、あるいは連続して実行する。各種の処理が施された基板Pは、デバイスごとに分割(ダイシング)されて、複数個のデバイスになる。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となるY軸方向)の寸法が10cmから2m程度であり、長さ方向(長尺となるX軸方向)の寸法が10m以上である。基板Pの幅方向(短尺となるY軸方向)の寸法は、10cm以下であってもよいし、2m以上であってもよい。基板Pの長さ方向(長尺となるX軸方向)の寸法は、10m以下であってもよい。
【0031】
次に、処理装置U3の構成について、より詳しく説明する。
図2は、本実施形態による処理装置U3(露光装置EX)の構成を示す図である。
【0032】
図2に示す処理装置U3は、基板を搬送する基板搬送装置PT、露光装置EX、マスクMを保管するマスクカセットMC、及びマスク搬送装置MLを含む。マスク搬送装置MLは、マスクカセットMCに保管されているマスクMを露光装置EXに搬入する。露光装置EXは、マスク搬送装置MLによって搬入されたマスクMを保持し、マスクMに形成されているパターンの一部分の像を、基板Pに投影する。
【0033】
ここで、処理装置U3の各部の説明に先立ち、
図3A及び
図3Bを参照してマスクMの構成について説明する。
図3Aは、本実施形態によるマスクMの平面図、
図3Bは、マスクMの送り方向に直交する断面図である。
【0034】
図3Aに示すマスクMは、例えば、透過型の平面状シートマスクとして作成され、平面状に展開した状態で概ね矩形状である。
図3A及び
図3Bに示す直交座標系は、Xa軸方向がマスクMの一辺(例えば長辺)に平行な方向に対応し、Ya軸方向がマスクMの他辺(例えば短辺)に平行な方向、Za軸方向がマスクMの厚み方向にそれぞれ対応する。
【0035】
マスクMは、円筒面に沿って湾曲させることが可能な程度の可撓性を有する。マスクMは、Ya軸方向に平行な軸周りの円筒面(回転ドラムDM、
図5参照)に巻きつけられて、Xa軸方向に延びる辺が円筒面の周方向に沿うように湾曲した状態で、露光処理に供される。円筒面は、線分(母線)をこの線分に平行な軸周りに回転した曲面のことであり、例えば円柱または円筒の外周面等である。
【0036】
図3Aに示すように、マスクMは、基材M1と、基材M1上に形成されたパターンM2と、基材M1に形成された磁性体M3と、アライメントマークM4とを含む。マスクMは、磁性体M3が磁力により吸着されることによって、磁力の発生源を有する各種の装置に保持される。アライメントマークM4は、マスクMを保持する各種の装置との位置合わせ等に利用される。
【0037】
基材M1は、例えばガラス等の誘電体のように、基板Pに投射される光(露光光)が透過する材質からなる。基材M1は、例えば平坦性のよい短冊状の極薄ガラス板(例えば厚さ100から500μm)である。
【0038】
図3Bに示すように、パターンM2は、基材M1の第1面M1aにおいて基材M1の外周から離れた領域(パターン形成領域MA1)に、クロム等の遮光層で形成されている。基材M1において、パターンM2が形成されていないパターン非形成領域MA2は、パターン形成領域MA1を枠状(環状)に囲むように配置されている。
【0039】
磁性体M3は、基材M1の第1面M1a(パターンM2と同一面)におけるパターン非形成領域MA2に配置されている。磁性体M3は、マスクMが配置される円筒面の周方向と対応する方向(基材M1上のXa軸方向、マスクMの送り方向)に延びる帯状であり、円筒面の軸方向に対応する方向(基材M1上のYa軸方向)の両端部に配置されている。磁性体M3は、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性体材料を基材M1に蒸着法等で成膜することによって、形成されている。なお、アライメントマークM4は、磁性体M3をマスク蒸着法等で形成する際に、磁性体M3と同じ材料で磁性体M3とともに形成されたものでもよい。
【0040】
マスクMは、第1面M1a側に磁石発生源が配置されることによって、磁性体M3が磁力発生源に向って吸着され、第1面M1a側が磁力発生源側に接触して保持される。この場合には、磁性体M3に対して基材M1を介することなく磁力を作用させることができ、吸着力の低下が抑制される。
【0041】
また、マスクMは、第1面M1aの反対の第2面M1b側に磁力発生源が配置されることによって、磁性体M3が基材M1を介して磁力発生源に向って吸着され、第2面M1b側が磁力発生源側に接触して保持される。この場合には、パターンM2と反対側の第2面M1b側が磁力発生源側に接触するので、パターンM2と磁力発生源側との接触が抑制される。
【0042】
なお、磁性体M3は、基材M1の第2面M1bに形成されていてもよいし、第1面M1a及び第2面M1bの双方に形成されていてもよい。磁性体M3が第2面M1bに形成されている場合に、マスクMを第2面M1b側で吸着すると、吸着力の低下が抑制され、かつパターンM2と磁力発生源側との接触が抑制される。
【0043】
また、磁性体M3は、パターンM2と同じ面に形成されている場合に、基材M1の厚み方向(Za軸方向)においてパターンM2よりも突出していてもよく、この場合にもパターンM2が他の部材に接触することが抑制される。また、マスクMは、パターンM2との間にギャップを有してパターンM2を覆うように形成されたペリクルを含んでいてもよく、この場合にもパターンM2と他の部材との接触が抑制される。
【0044】
また、マスクMは、1個の表示デバイスに対応するパネル用パターンの全体または一部が形成されていてもよいし、複数個の表示デバイスに対応するパネル用パターンが形成されていてもよい。例えば、マスクMは、Ya軸方向に繰り返し配置された複数のパターンを含んでいてもよいし、Xa軸方向に繰り返し配置された複数のパターンを含んでいてもよい。また、マスクMは、第1の表示デバイスのパネル用パターンと、第1の表示デバイスとサイズ等が異なる第2の表示デバイスのパネル用パターンとを含んでいてもよい。
【0045】
図2の説明に戻り、基板搬送装置PTは、基板Pを支持するローラ10と、ローラ10を駆動する第1駆動部11と、基板Pの位置情報を出力する第1検出部12と、制御装置13とを含む。
図1に示した基板ステージSTは、例えばローラ10の間に配置される。
【0046】
基板搬送装置PTは、基板Pを支持しているローラ10を第1駆動部11が回転駆動することによって、基板ステージST上で基板Pを搬送(移動)する。基板ステージSTは、例えば、基板搬送装置PTの一部としてもよいし、露光装置EXの一部としてもよい。
【0047】
第1検出部12は、例えば、基板Pに形成された基準マークを光学的あるいは磁気的に読み取ることによって、基板Pの位置を検出し、基板Pの位置情報を制御装置13に出力する。基板Pの位置情報は、基板Pの位置を示す情報、基板Pの速度(搬送速度)を示す情報、基板Pの加速度を示す情報の少なくとも1つを含む。なお、第1検出部12は、ローラ10の回転位置を検出することによって、基板Pの位置を検出してもよい。
【0048】
制御装置13は、第1検出部12から出力された位置情報に基づいて第1駆動部11を制御し、基板Pの位置、搬送速度、搬送加速度の少なくとも1つを管理する。制御装置13は、例えば上位制御装置CONTに制御指令に従って、基板搬送装置PTの各部を制御する。
【0049】
露光装置EXは、マスクMを保持するマスク保持装置20、照明ユニットIU、投影光学系PL、及び制御装置21を備える。露光装置EXは、いわゆる走査露光装置であり、基板搬送装置PTによって搬送されている基板Pと同期させて、マスク保持装置20に保持されているマスクMを移動(回転)させながら、基板Pを露光する。
【0050】
マスク保持装置20は、マスクMが配置される回転ドラムDMを含みマスクMを保持する保持部22と、回転ドラムDMを回転駆動する第2駆動部23と、回転ドラムDMの位置情報を出力する第2検出部24とを備える。露光装置EXの制御装置21は、マスク保持装置20の制御装置を兼ねており、マスク保持装置20の各部を制御する。マスク保持装置20の制御装置は、露光装置EXの制御装置21と別に設けられていてもよい。
【0051】
第2検出部24は、例えばロータリーエンコーダ等を含み、回転ドラムDMの位置を光学的に検出する。第2検出部24は、その検出結果に基づいて、回転ドラムDMの位置情報を制御装置21に出力する。回転ドラムDMの位置情報は、回転ドラムDMの位置を示す情報、回転ドラムDMの速度(角速度)を示す情報、回転ドラムDMの加速度(角加速度)を示す情報の少なくとも1つを含む。
【0052】
第2駆動部23は、例えば電動モータ等のアクチュエータを含み、制御装置21に制御されて回転ドラムDMを回転させる。制御装置21は、第2検出部24から出力された位置情報に基づいて第2駆動部23を制御し、回転ドラムDMの位置、速度、加速度の少なくとも1つを管理する。制御装置21は、例えば上位制御装置CONTに制御指令に従って第2駆動部23を制御することによって、回転ドラムDMに配置されているマスクMと、基板搬送装置PTに搬送されている基板Pとを同期移動(同期回転)させる。また、第2駆動部23は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθZ方向のそれぞれの方向に回転ドラムDMを移動できる。第2駆動部23は、例えば、回転ドラムDMにマスクを取り付ける際の位置合わせ、回転ドラムDMと基板ステージSTとの位置合わせ等において、回転ドラムDMの位置を微調整することができる。
【0053】
照明ユニットIUは、光源25及び照明光学系ILを含む。光源は、例えば水銀ランプ等のランプ光源、またはレーザーダイオード、発光ダイオード(LED)等の固体光源を含む。光源が射出する照明光は、例えば、輝線(g線、h線、i線)KrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)等である。照明光学系は、屈折系、反射屈折系、反射系のいずれかの光学系により構成される。照明光学系ILは、光源から射出された照明光の照度分布を均一化する均一化光学系を備え、マスク保持装置20に保持されているマスクMの一部(照明領域IR)を均一な明るさで照明する。均一化光学系は、例えば、フライアイレンズアレイまたはロッドレンズを含む。
【0054】
投影光学系PLは、照明ユニットIUにより照明されているマスクMの一部の像を、基板搬送装置PTによって搬送されている基板Pに投影する。投影光学系は、屈折系、反射屈折系、反射系のいずれかの光学系により構成される。露光装置EXは、マスクMの移動に伴って照明領域IRに配置されるマスクM上の部位が変化し、また基板Pの移動に伴って投影領域PAに配置される基板P上の部位が変化することによって、マスクM上の所定のパターン(マスクパターン)の像を基板Pに投影(走査露光)する。
【0055】
制御装置21は、例えば、コンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは、例えば、CPU及び各種メモリーやOS、周辺機器等のハードウェアを含む。処理装置の各部の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、各種処理が行われる。コンピュータシステムは、インターネットあるいはイントラネットシステムに接続可能な場合、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含む。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置を含む。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。また、プログラムは、処理装置U3の機能の一部を実現するためのものでもよく、処理装置U3の機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものでもよい。
【0056】
なお、制御装置21は、
図1に示したデバイス製造システムSYSの上位制御装置CONTの一部または全部であってもよい。また、露光装置EXの制御装置21は、デバイス製造システムSYSのうち露光装置EX以外の装置の制御装置を兼ねていてもよい。例えば、制御装置21は、基板搬送装置PTを制御してもよい。デバイス製造システムSYSが備える各種の制御装置の少なくとも1つ(例えば上位制御装置CONT)は、制御装置21と同様に、コンピュータシステムを利用して実現することができる。
【0057】
なお、
図2に示す露光装置EXは、基板Pが実質的に平面状である状態において、基板P上の平面状の投影領域にパターンの像を投影する。しかし、例えば、露光装置EXは、基板Pが基板搬送装置PTのローラ上で円筒面状に湾曲している状態において、基板P上の円筒面状の投影領域にパターンの像を投影してもよい。また、基板搬送装置PTは、投影光学系PLの投影領域PAに沿って基板Pを搬送可能であればよく、その構成を適宜変更可能である。また、基板搬送装置PTの少なくとも一部は、露光装置EXの一部であってもよい。
【0058】
次に、
図4及び
図5を参照しつつ、マスク保持装置20について詳しく説明する。
図4は、マスク保持装置20の構成を示す図であり、
図5は、マスク保持装置20の回転ドラムDMの外観を示す図である。
【0059】
図4に示すマスク保持装置20は、マスクMの磁性体M3(
図3A及び
図3B参照)を磁力によって保持部22に吸着して、マスクMを保持する。保持部22は、マスクMが配置される外周面26を有する回転ドラムDMと、外周面26に磁力を発生する磁力発生装置27とを備える。
【0060】
回転ドラムDMは、その中心軸28(回転軸)の周りで回転可能なように支持された可動部材である。回転ドラムDMは、一定の肉厚を有する円筒状であり、その外周面26が円筒面状である。
図5に示すように、回転ドラムDMは、その中心軸28に平行なY軸方向における端を含む端部30と、端部30を除く中央部31とを含む。マスクM(
図3A及び
図3B参照)は、パターンM2が回転ドラムDMの中央部31と重なるとともに端部30と重ならないように、回転ドラムDMに配置される。回転ドラムDMは、例えばガラスや石英等で構成され、回転ドラムDMの径方向から見てマスクMのパターンと重なる中央部31が照明光に対して透光性を有する。回転ドラムDMは、端部30と中央部31とが同じ材料で一体的に形成されている。
【0061】
磁力発生装置27は、電磁石32、駆動回路33、及び電力蓄積部(以下、バッテリー34という)を備える。バッテリー34は、駆動回路33を介して電磁石32に電力を供給し、電磁石32は、供給される電力に応じた磁力を発生する。露光装置EXの制御装置21は、駆動回路33を制御することによって、電磁石32による磁力の発生の有無と、電磁石32が発生する磁力の強さの一方又は双方を制御する。
【0062】
電磁石32は、電磁石32が発生する磁力が回転ドラムDMの外周面26の表面に作用する程度に、外周面26の表面の近傍に配置されている。
図5に示すように、電磁石32は、回転ドラムDMのY軸方向のそれぞれの端部30に配置されている。マスクM(
図3A及び
図3B参照)は、その磁性体M3が回転ドラムDMの径方向から見て電磁石32と重なるように位置合わせされて、保持部22に保持される。保持部22は、複数の電磁石32を備えており、複数の電磁石32は、回転ドラムDMの周方向において離散的に配置されている。電磁石32は、例えば回転ドラムDMに形成された孔部の内部に固定されており、回転ドラムDMに同伴して移動(回転)する。
【0063】
なお、回転ドラムDMにおいて電磁石32が配置される孔部は、回転ドラムDMの内周面35(
図5参照)から外周面26に向って形成されていてもよいし、外周面26から内周面35に向って形成されていてもよく、中心軸28に平行な方向の端面36側(
図5参照)から形成されていてもよい。また、回転ドラムDMにおいて電磁石32が配置される孔部は、樹脂等の充填材により充填されていてもよい。また、電磁石32は、回転ドラムDMの外周面26または内周面35に固定されていてもよい。
【0064】
駆動回路33は、複数の電磁石32のそれぞれと電気的に接続されており、またバッテリー34と電気的に接続されている。駆動回路33及びバッテリー34は、例えば、
図5に示す回転ドラムDMの端部30における内周面35に取り付けられる。電磁石32、駆動回路33、及びバッテリー34は、例えば、これらが取り付けられた回転ドラムDMの重心が中心軸28上に位置するように、重量バランスを加味して配置される。駆動回路33は、バッテリー34から電力の供給を受けて、複数の電磁石32のそれぞれに独立して電力を供給することができる。
【0065】
露光装置EXの制御装置21は、有線または無線で駆動回路33に制御信号(制御指令)を供給することによって、駆動回路33を制御する。制御装置21は、駆動回路33を制御することによって、複数の電磁石32のそれぞれに対して電力を供給するか否かと、供給する電力量の一方または双方を制御する。すなわち、制御装置21は、複数の電磁石32のそれぞれから発生する磁力の強さ(磁力が0である場合を含む)を制御する。
【0066】
なお、回転ドラムDMの内側に配置される1または2以上の要素は、回転ドラムDMの外部に対して固定されていてもよい。例えば、露光装置EXの光学系(照明光学系IL、投影光学系PL)の少なくとも一部を配置する場合に、回転ドラムDMの内側に配置される光学部材等は、回転ドラムDMの外部に対して固定されていてもよい。また、磁力発生装置27の駆動回路33とバッテリー34の一方または双方は、回転ドラムDMの外部に対して固定されていてもよい。この場合に、電磁石32等との電気的な接続は、ブラシ等の接点を介した接続であってもよいし、例えば電磁気の相互誘導作用を利用した非接触電力伝送(無接点電力転送)による接続であってもよい。
【0067】
次に、
図2に示したマスク搬送装置ML及びマスクカセットMCについて説明する。
図6は、本実施形態によるマスク搬送装置ML及びマスクカセットMCの構成を示す側面図である。
図7は、本実施形態によるマスク搬送装置ML及びマスクカセットMCの構成を示す上面図である。
【0068】
マスクカセットMCは、複数のマスクMを保管するマスク保管装置である。マスクカセットMCは、例えば、マスクMを吸着する吸着部を備え、吸着部の吸着力によりマスクMを保持する。マスクカセットMCの吸着部は、圧力、磁力、静電気力の少なくとも1つの吸着力により、
図3Bに示したマスクMのパターン非形成領域MA2を吸着する。マスクカセットMCは、マスクMのパターン非形成領域MA2を把持するものでもよい。
【0069】
マスクカセットMCの吸着部は、例えば、水平方向(X軸方向)に離散的又は連続的に分布して、配置される。このようなマスクカセットMC(
図6参照)は、例えば、平面状のマスクMが鉛直方向(Z軸方向)と平行になり、マスクMの磁性体M3が水平方向と平行になるように(マスクMの磁性体M3の延びる方向がX軸方向となるように)、マスクMを保持する。
【0070】
また、マスクカセットMC(
図7参照)は、マスクMのパターンM2が他のマスクMやマスクカセットMC等と接触しないように、マスクMを保持する。ここでは、マスクカセットMC(
図7参照)は、複数のマスクMが水平方向(Y軸方向)に離れて並ぶように、マスクMを保持する。マスクカセットMCは、複数のマスクMを鉛直方向に離して保持してもよい。
【0071】
マスクカセットMCは、マスクMを保持した状態でその磁性体M3が延びる方向(X軸方向)に開口MC1を有する。マスクカセットMCは、この開口MC1を通してマスクカセットMCの外部からマスクMを内部に搬入可能であり、また内部から開口MC1を通して外部にマスクMを搬出可能である。
【0072】
図2に示した上位制御装置CONTは、マスクMがマスクカセットMCから搬出される際に、マスクカセットMCの吸着力を制御し、搬出されるマスクMをリリースさせる。また、上位制御装置CONTは、マスクMがマスクカセットMCへ搬入される際に、マスクカセットMCの吸着力を制御し、搬入されるマスクMを保持させる。
【0073】
なお、マスクカセットMCは、マスクMを保管するものであればよく、その構成が適宜変更される。マスクカセットMCは、処理装置U3の外部の装置であってもよいし、電気部品を含まない収容ケースであってもよく、また省略されていてもよい。
【0074】
図6に示すように、マスク搬送装置MLは、マスクMを吸着するアーム部材40を有する吸着装置41と、アーム部材40とマスク保持装置20の保持部22とを相対移動させる移動装置42、及び制御装置43を備える。吸着装置41のアーム部材40は、平面状の吸着面44(
図7参照)を有し、マスクMが吸着面44に沿った平面状となるように、マスクMを保持する。制御装置43は、移動装置42を制御してアーム部材40の位置を制御しつつ、吸着装置41を制御してアーム部材40の吸着力を制御する。
【0075】
マスク搬送装置MLは、制御装置43が吸着装置41及び移動装置42を制御することによって、マスクMを所望の位置において吸着、保持、リリースすることができる。例えば、マスク搬送装置MLは、マスクカセットMCに保管されているマスクMを吸着し、マスクMを保持した状態でマスク保持装置20の回転ドラムDMの位置まで搬送して、マスクMをマスク保持装置20に搬入する。また、マスク搬送装置MLは、マスク保持装置20に保持されているマスクMを吸着し、マスク保持装置20からマスクMを搬出する。このように、マスク搬送装置MLは、マスク搬入装置とマスク搬出装置とを兼ねている。
【0076】
マスク搬送装置MLは、吸着装置41が吸着したマスクMを、回転ドラムDMの周方向に対応する方向に移動させながらマスク保持装置20に搬入する。「回転ドラムDMの周方向に対応する方向」とは、例えば、回転ドラムDMの外周面26に対する接平面の1つと平行であって、かつ回転ドラムDMの中心軸28と直交する方向である。「所定の接平面の1つ」とは、回転ドラムDMの外周面26の各位置に対する接平面から選択され、ここでは、鉛直方向(Z軸方向)と直交する水平面(XY平面と平行な面)であるとする。すなわち、回転ドラムDMの中心軸28がY軸方向に平行であるものとし、所定の接平面がXY平面に平行な面であるものとすると、回転ドラムDMの周方向に対応する方向は、X軸方向になる。
【0077】
移動装置42は、屈伸機構50、Y移動機構51、Z移動機構52、及びθX移動機構53を備える。吸着装置41のアーム部材40は、θX移動機構53を介して屈伸機構50に支持されている。屈伸機構50は、Z移動機構52を介してY移動機構51に支持されている。
【0078】
Y移動機構51は、Z移動機構52からアーム部材40までの部分をY軸方向に移動させる。Z移動機構52は、屈伸機構50からアーム部材40までの部分をZ軸方向に移動させる。屈伸機構50は、θX移動機構53及びアーム部材40をXY平面と平行な方向に移動させ、またθX移動機構53及びアーム部材40をXY平面と交差する軸周り(θZ方向)に回転させる。θX移動機構53は、アーム部材40をXY平面と平行な軸周りに回転する。制御装置43は、移動装置42の各機構を制御することによって、アーム部材40のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各位置と、アーム部材40のθZ方向の回転位置(ヨー)と、アーム部材40のXY平面に対する傾き(チルト)と、を制御する。
【0079】
次に、移動装置42の各部について詳しく説明する。
図7に示す屈伸機構50は、回転ドラムDMの外周面26に対する接平面(XY平面)と概ね平行な方向に屈伸する。屈伸機構50の一端部は、θX移動機構53(アーム部材40)に接続されており、屈伸機構50の他端部は、Z移動機構52に接続されている。屈伸機構50は、直線状に伸びたり、折れ線状に折れ曲がったりする(屈伸動作)ことによって、アーム部材40をXY平面に平行な方向に移動する。
【0080】
屈伸機構50は、複数の支柱部56(56aから56e)と、支柱部56を接続する複数の接続部57(57aから57e)とを備える。複数の支柱部56のそれぞれは、例えば、XY平面に平行な方向に延びる棒状である。ここでは、支柱部の数が5個である例を説明するが、支柱部の数に限定はない。各接続部57は、この接続部57に接続されている支柱部56を、θZ方向で回転可能なように別の支柱部56、θX移動機構53、又はZ移動機構52と接続している。
【0081】
詳しくは、第1の支柱部56aは、その一端部がθX移動機構53(アーム部材40)と接続されており、他端部が第1の接続部57aに接続されている。第2の支柱部56bは、第1の接続部57aを介して第1の支柱部56aと接続されている。同様に、第2の支柱部56bは、第2の接続部57bを介して第3の支柱部56cと接続されている。第3の支柱部56c、第4の支柱部56d、第5の支柱部56eは、第3の接続部57c、第4の接続部57dを介して接続されている。第5の支柱部56eは、第5の接続部57eを介してZ移動機構52に接続されている。
【0082】
複数の接続部57のそれぞれは、電動モータ等のアクチュエータを含み、接続されている支柱部56をアクチュエータの動作によって回転させる。例えば、第1の接続部57aは、第2の支柱部56bを支持とし、第1の支柱部56aを、第1の接続部57aを中心としてθZ方向に回転させる。また、第5の接続部57eは、Z移動機構52を支持とし、第5の支柱部56eを、第5の接続部57eを中心としてθZ方向に回転させる。
【0083】
ここで、第2の接続部57bから第5の接続部57eが第2の支柱部56bから第5の支柱部56eを回転させていない状態において、第1の接続部57aが第1の支柱部56aを反時計回りに回転させると想定する。この場合に、第1の支柱部56aに接続されたアーム部材40は、第1の接続部57aを中心としたθZ方向の反時計回りに、円弧を描くように移動する。その結果、アーム部材40は、−X軸方向及び+Y軸方向に移動するとともに、θZ方向の回転角(ヨー、姿勢)が変化する。
【0084】
また、第1の接続部57aが第1の支柱部56aを反時計回りに回転させた状態において、第3の接続部57cが第3の支柱部56cを時計回りに回転させると想定する。この場合に、アーム部材40は、第3の支柱部56cからアーム部材40までの部分が第3の接続部57cを回転中心としたθZ方向の時計回りに、円弧を描くように移動する。その結果、アーム部材40は、+X軸方向及び−Y軸方向に移動するとともに、第1の接続部57aによるθZ方向の回転角の変化を打ち消すように、θZ方向の回転角が変化する。
【0085】
また、移動装置42は、例えば、第2の支柱部56bから第5の支柱部56eが第3の接続部57cを中心として回転対称(例えば、S字状)となるように、複数の接続部57が協働することによって、θZ方向の回転位置及びY軸方向の位置がいずれも変化しないように、X軸方向とほぼ平行で直線的にアーム部材40を移動させることもできる。このように、屈伸機構50は、保持部22の円筒面に対する接平面と平行な方向に吸着装置41のアーム部材40を移動させる第1移動部、及び接平面に交差する軸周りに吸着装置41のアーム部材40を回転させる第2移動部として機能する。また、制御装置43は、第1の接続部57aから第5の接続部57eのそれぞれのアクチュエータを制御することによって、アーム部材40のX軸方向の座標、Y軸方向の座標、及びθZ方向の回転角をそれぞれ制御する。
【0086】
θX移動機構53は、アーム部材40を支持しており、アーム部材40を屈伸機構50に対して回転させる。例えば、θX移動機構53は、屈伸機構50がX軸方向に伸びている場合にアーム部材40をθX方向に回転させることができ、屈伸機構50がY軸方向に伸びている場合にアーム部材40をθY方向に回転させることができる。制御装置43は、θX移動機構53を制御してアーム部材40の回転角を制御することによって、アーム部材40に保持されたマスクMのXY平面に対する傾き(チルト、姿勢)を制御する。
【0087】
図6に示すように、Z移動機構52は、屈伸機構50を支持する支持部58と、支持部58をZ軸方向に駆動する駆動部59とを備える。制御装置43は、駆動部59を制御することによって、アーム部材40のZ軸方向の位置を制御する。これにより、制御装置43は、アーム部材40に平面状に吸着されているマスクMを、例えばその法線方向(Z軸方向)において、回転ドラムDMに接近させたり、離間させたりすることができる。
【0088】
図7(及び
図6)に示すように、Y移動機構51は、回転ドラムDMの中心軸28と平行な方向(Y軸方向)に延びる1対のレール部60(ガイド部材)と、レール部60に沿って(ガイドされて)移動する本体部61とを備える。本体部61は、Z移動機構52の支持部58とともにY軸方向に移動する。制御装置43は、Y移動機構51を制御することによって、アーム部材40のY軸方向の位置を制御する。
【0089】
ところで、アーム部材40の位置は、屈伸機構50によるアーム部材40の移動の態様に応じて、X軸方向及びY軸方向において変化することがある。移動装置42は、屈伸機構50によるアーム部材40のY軸座標の変化を打ち消すように、Y移動機構51をY軸方向に移動させることによって、アーム部材40をX軸方向とほぼ平行で直線的に移動させることもできる。すなわち、屈伸機構50及びY移動機構51は、回転ドラムDMの中心軸28に直交する方向であって回転ドラムDMの接平面(XY平面)に平行な方向(X軸方向)に、ほぼ平行で直線的にアーム部材40を移動する直線駆動源としても機能する。アーム部材40をX軸方向に直線的に移動させる際に、制御装置43は、屈伸機構50によるアーム部材40の移動量とY移動機構51によるアーム部材40の移動量とを関連付けて、屈伸機構50とY移動機構51とを制御する。
【0090】
処理装置U3は、
図6に示すように、アーム部材40に吸着されているマスクMの形状を検出する形状検出装置62を備える。形状検出装置62は、マスクMの形状を例えば光学的に検出する。形状検出装置62の検出結果は、例えば、アーム部材40に吸着されているマスクMの変形量(たるみ、たわみ)が許容範囲内であるか否かの判定等に用いられる。この判定は、例えば、作業者が行ってもよいし、形状検出装置62、又は処理装置U3のその他の装置が行ってもよい。
【0091】
また、処理装置U3は、マスクMに形成されているアライメントマークM4(
図3A参照)を検出するアライメント装置63を備える。アライメント装置63は、マスクMに形成されているアライメントマークM4と、マスク保持装置20の回転ドラムDMとの相対的な位置関係を光学的に検出する。アライメント装置63の検出結果は、例えば、マスク保持装置20にマスクMを搬入する際の位置合わせ等に用いられる。
【0092】
次に、
図8A、
図8B及び
図8Cを参照しつつ、吸着装置41のアーム部材40の構成について説明する。
図8Aは、Zb軸方向から見たアーム部材40の構成図である。
図8Bは、Yb軸方向から見たアーム部材40の構成図である。
図8Cは、Xb軸方向から見たアーム部材40の構成図である。なお、
図8A〜
図8Cに示すXb軸方向、Yb軸方向、Zb軸方向は、それぞれ、
図3A及び
図3Bに示したXa軸方向、Ya軸方向、Za軸方向に対応する。
【0093】
アーム部材40は、回転ドラムDMの外周面26に対する接平面に平行、かつ中心軸28に直交する方向(例えばX軸方向)に対応するXb軸方向に延在する吸着面44を有する。
図8Aに示すように、吸着面44は、Yb軸方向におけるアーム部材40の双方の端部40bに配置されている。
【0094】
図3A及び
図3Bに示したマスクMは、例えば、アーム部材40の端部40bを除いた中央部40aにパターンM2の全体を収めることができ、かつ中央部40aにマスクMのパターンM2の全体を収めた状態でパターン非形成領域MA2の少なくとも一部が吸着面44(端部40b)に張り出すように、寸法及び形状が設定される。
【0095】
アーム部材40は、吸着面44に配置された観察窓65を備える。観察窓65は、例えば、アーム部材40に設けられた貫通孔であり、アーム部材40の吸着面44と反対側から観察窓65を通してマスクMのアライメントマークM4を観察可能なように、設けられている。なお、アーム部材40は、アーム部材40を透かしてマスクMのアライメントマークM4を観察可能なように、透光性を有する材質で形成されていてもよく、この場合に観察窓65が省略されていてもよい。
【0096】
アーム部材40は、複数の吸着部66(66aから66e)、67(67aから67e)を備える。複数の吸着部66は、中央部40aに対して+Yb軸側の吸着面44に配置され、複数の吸着部67は、中央部40aに対して−Yb軸側の吸着面44に配置されている。ここでは、複数の吸着部66のそれぞれを、+Xb軸側から−Xb軸側に向かう順に第1吸着部66a、第2吸着部66b、・・・と称し、複数の吸着部67についても同様に、第1吸着部67a、第2吸着部67b、・・・と称する。
【0097】
第1吸着部66aは、第1吸着部67aと1対1で対応しており、Xb軸方向の座標がほぼ同じである。同様に、複数の吸着部67のそれぞれは、複数の吸着部66のいずれかと1対1で対応しており、対応関係にある一対の吸着部は、Xb軸方向の座標がほぼ同じである。
【0098】
図8Bに示すように、複数の吸着部66のそれぞれは、吸着面44に開口を有する孔部68、孔部68に接続された三方弁69、三方弁69の第1バルブを介して孔部68に接続されるとともに第1バルブと吸引装置70とを結ぶ第1流路71、及び三方弁69の第2バルブを介して孔部68に接続される第2流路72を備える。
【0099】
吸引装置70(減圧装置)は、三方弁69の第1バルブが開放された状態において、第1流路71及び三方弁69を介して孔部68の内側を吸気することができ、これにより孔部68の内側を減圧できる。第2流路72は、例えば大気開放されており、減圧されている孔部68の内側を、三方弁69の第2バルブが開放された状態において大気開放(昇圧)する。第2流路72は、気体を送出する送出装置(加圧装置)に接続されていてもよく、この送出装置は、第2流路72及び三方弁69の第2バルブを介して気体を孔部68の内側に供給することによって、孔部68の内側を昇圧してもよい。
【0100】
図8Cに示すように、第1吸着部66a及び第1吸着部67aは、それぞれの孔部68が第3流路73を介して同じ三方弁69に接続されており、第1吸着部66aと第1吸着部67aとで孔部68の内側が並行して減圧または昇圧される。また、第1吸着部66a及び第1吸着部67aは、第1流路71と第2流路72とが共通化されており、第1吸着部66a及び第1吸着部67aとで孔部68の内側の圧力がほぼ同じになるように設けられている。このように、複数の吸着部66、67のうち対応関係にある1対の吸着部は、三方弁69、第1流路71、及び第2流路72が共通化されている。
【0101】
制御装置43は、複数の三方弁69のそれぞれについて、第1バルブを制御することによって、三方弁69及び第1流路71を介して各孔部68と吸引装置70とを接続し、吸引装置70を制御することによって孔部68の内側を孔部68ごとに独立して減圧することができる。複数の吸着部66、67の近傍にマスクMが配置されている状態において孔部68の内側が減圧されると、マスクMは、孔部68に向って吸引されて吸着面44に接触し、アーム部材40に保持される。すなわち、マスクMは、孔部68の内側と外側の圧力差を吸着力として、アーム部材40に吸着される。
【0102】
ところで、
図8Cに示すように、アーム部材40は、Yb軸方向において吸着面44の間に配置されている中央部40aが吸着面44よりも窪んでいる(アーム部材40の中央部40aが外部からZb軸方向に向って凹である)。そのため、マスクMは、パターンM2が形成されている第1面M1a側が吸着面44に吸着された場合に、パターンM2がアーム部材40に接触しない。結果として、パターンM2が接触等により損傷すること等が抑制される。
【0103】
また、制御装置43は、三方弁69の第2バルブを制御することによって、三方弁69及び第2流路72を介して孔部68を大気開放し、減圧されている孔部68の内側を昇圧する。マスクMを吸着している吸着部66の孔部68の内側が昇圧すると、この孔部68の内側の外側との圧力差が減少し、この吸着部66の吸着力が減少する。
【0104】
また、制御装置43は、複数の三方弁69を独立して制御することにより、孔部68の内側の圧力を、各三方弁69に接続された孔部68ごとに独立して制御することができる。例えば、
図8Bに示した複数の吸着部66、67がいずれもマスクMを吸着しているとする。この場合に、制御装置43は、複数の吸着部66、67の三方弁69のうち第1吸着部66aの三方弁69の第2バルブのみを開放することによって、複数の吸着部66による吸着のうち第1吸着部66aの吸着のみを解除することができる。ここでは、第1吸着部66aと対になる第1吸着部67a(
図8C参照)は、第1吸着部66aと共通の三方弁69の第2バルブが開放されることによって、第1吸着部66aと同様に吸着を停止する。
【0105】
このように、制御装置43は、複数の吸着部66による吸着力の空間的な分布、時間的な分布を変化させることができ、例えば、マスクMの一部のみをアーム部材40に吸着すること、吸着されているマスクMの一部に対する吸着を解除すこと等ができる。なお、制御装置43は、複数の吸着部66の吸着を同時に開始させることもできるし、複数の吸着部66の吸着を同時に解除させることもできる。
【0106】
次に、マスク搬送装置ML及びマスク保持装置20の動作について説明する。まず、
図9及び
図10を参照して、マスクMをマスクカセットMCから回転ドラムDMの近傍まで搬送する動作を説明する。
【0107】
図9は、回転ドラムDMの中心軸28と平行な方向(Y軸方向)から見た処理装置U3を示す図である。
図10は、回転ドラムDMの接平面の法線方向(Z軸方向)から見た処理装置U3を示す図である。なお、
図9(A)と
図10(A)は、同じ状態を異なる視点から見た図である。
図9(B)と
図10(B)、
図9(C)と
図10(C)、
図9(D)と
図10(D)についても同様に、それぞれが対応している。
【0108】
処理装置U3(
図9(A)、
図10(A)参照)は、マスクMをマスク保持装置20に搬入する際に、アーム部材40をマスクMの保管位置(マスクカセットMC)まで移動させる。以下、マスク保持装置20に搬入する対象のマスクMを単に対象のマスクMという。
【0109】
ここで、マスク搬送装置MLの制御装置43は、例えば
図7に示した状態から、θX移動機構53を制御してアーム部材40の姿勢を調整し、アーム部材40の吸着面44をマスクカセットMCに保管されているマスクMとほぼ平行にする。また、制御装置43は、例えば
図7に示した状態から、Y移動機構51を制御してアーム部材40をY軸方向に移動し、アーム部材40の吸着面44のY軸方向の位置を対象のマスクMのY軸方向の位置と位置合わせする(例えば、Y軸方向の座標をほぼ同じにする)。
【0110】
そして、制御装置43は、屈伸機構50及びY移動機構51を制御し、屈伸機構50を伸ばすとともにY移動機構51によって屈伸機構50をY軸方向に移動させることによって、アーム部材40をX軸方向に沿ってほぼ直線的に移動させる。このようにして、アーム部材40は、マスクカセットMCの側面の開口MC1を通って、アーム部材40の吸着面44と対象のマスクMとが対向するように、位置合わせされる。
【0111】
そして、
図2に示した上位制御装置CONTは、マスク搬送装置MLの制御装置43を介して吸着装置41を制御して、対象のマスクMをアーム部材40に吸着させる。また、マスクカセットMCを制御して、マスクカセットMCによる対象のマスクMの保持を解除する。対象のマスクMは、
図8B及び
図8Cに示したように、アーム部材40の吸着面44にほぼ平面状に吸着される。
【0112】
次いで、処理装置(
図9(B)、
図10(B)参照)は、対象のマスクMをマスクカセットMCから搬出する。ここで、制御装置43は、屈伸機構50を制御して、屈伸機構50を折り曲げることによってアーム部材40を−X軸方向に移動させる。制御装置43は、少なくともマスクカセットMCから対象のマスクMが搬出されるまでの期間に、屈伸機構50及びY移動機構51を制御することによってアーム部材40をX軸方向に沿って直線的に移動させる。これにより、マスク搬送装置MLは、対象のマスクMを、そのパターンM2が他のマスクMやマスクカセットMCと接触しないように、マスクカセットMCの開口MC1を通して外部に搬出する。
【0113】
次いで、処理装置U3(
図9(C)、
図10(C)参照)は、アーム部材40に平面状に保持されているマスクMを、回転ドラムDMの接平面(XY平面)とほぼ平行にする。
ここで、マスク搬送装置MLの制御装置43は、θX移動機構53を制御することによって、アーム部材40をθX方向に回転させる。
【0114】
そして、
図9(C)に示すように、形状検出装置62は、アーム部材40に保持されたマスクMが回転ドラムDMの接平面(XY平面)にほぼ平行な状態において、このマスクMの形状を測定する。すなわち、形状検出装置62は、対象のマスクMがマスク保持装置20に搬入されるときと同じ姿勢(XY平面に対する傾き)である状態において、対象のマスクMの形状を測定する。
【0115】
そして、形状検出装置62の測定結果に基づいて、例えば、アーム部材40に保持されているマスクMのたわみが予め定められた許容範囲内であるか否かの判定が行われる。ここで、マスクMのたわみが許容範囲を超えていると判定された場合には、このマスクMがアーム部材40から取り外され、このマスクM又は同じパターンM2を有するマスクMがアーム部材40に保持し直される。
【0116】
また、アーム部材40に保持されているマスクMのたわみが許容範囲に収まっていると判定された場合に、処理装置U3(
図9(D)、
図10(D)参照)は、アーム部材40に保持されているマスクMを、回転ドラムDMから−X軸方向に離れた位置に配置する。ここで、制御装置43は、屈伸機構50及びY移動機構51を制御して、アーム部材40に保持されているマスクMの磁性体M3の延在方向と、回転ドラムDMに対するマスクMの搬入方向(X軸方向)とがほぼ平行になるように、θZ方向のアーム部材40の回転角を調整する。
【0117】
また、制御装置43は、Z移動機構52を制御することによって、アーム部材40に保持されているマスクMと回転ドラムDMの接平面とがZ軸方向において所定の間隔になるように、アーム部材40のZ軸方向の位置を調整する。以上のようにして、処理装置U3は、対象のマスクMをマスク保持装置20に取り付けるための準備を行う。
【0118】
次に、
図11を参照しつつ、マスク搬送装置ML及びマスク保持装置20により対象のマスクMをマスク保持装置20に取り付ける方法(マスク取り付け方法)を説明する。
図11は、マスクMの取り付け方法を示す図である。
【0119】
マスクMをマスク保持装置20に取り付ける際に、マスク搬送装置MLの制御装置43は、移動装置42の屈伸機構50及びY移動機構51を制御することによって、
図9(D)に示した状態からアーム部材40を+X軸方向に直線的に移動させる。ここで、制御装置43は、アーム部材40に保持されているマスクMの先端側(+X軸側)を、XY平面と回転ドラムDMとの接する部分の近傍に配置する。XY平面と回転ドラムDMとの接する部分は、例えば、回転ドラムDMのうち最も+Z軸側に配置されている頂上部DMt(
図11(A)参照)を含む。このようにして、アーム部材40に吸着されているマスクMは、マスク保持装置20の回転ドラムDMと所定の間隔で対向するように、配置される。
【0120】
そして、処理装置U3は、マスクMの取り付けに先立ち、アライメント装置63を回転ドラムDMの頂上部DMtを観察可能な位置に配置しておき、処理装置U3は、回転ドラムDMの外周面に形成されているアライメントマークがアライメント装置63の視野に収まるように、適宜、回転ドラムDMの回転位置を調整する。
【0121】
そして、処理装置U3は、マスク搬送装置MLのアーム部材40に保持されているマスクMと回転ドラムDMとを位置合わせする。ここで、アライメント装置63は、マスク搬送装置MLのアーム部材40に設けられた観察窓65(
図8A参照)を通して、マスクMのアライメントマークM4と回転ドラムDMのアライメントマークとの相対位置を検出する。マスクMと回転ドラムDMとの位置合わせは、アライメント装置63の検出結果を用いて行われる。これにより、処理装置U3は、マスクMと回転ドラムDMとを高精度に位置合わせすることができる。
【0122】
マスクMと回転ドラムDMとの位置合わせにおいて、マスク搬送装置MLの移動装置42は、アーム部材40を移動させることによってマスクMと回転ドラムDMの相対位置を粗調整する。また、マスク保持装置20の第2駆動部23は、回転ドラムDMを移動させることによってマスクMと回転ドラムDMの相対位置を微調整する。マスク搬送装置MLによる粗調整は、例えば、マスク保持装置20の微調整よりも大きいストロークで行われる。
【0123】
ここで、屈伸機構50は、アーム部材40をXY平面に沿って移動させることによって、マスクMと回転ドラムDMのX軸方向の相対位置及びY軸方向の相対位置を調整することができる。また、屈伸機構50は、アーム部材40をθZ方向に回転させることによって、マスクMと回転ドラムDMのθZ方向の相対位置を調整することができる。このように、処理装置U3は、アーム部材40に吸着されたマスクMと回転ドラムDMとを、高精度に位置合わせできる。
【0124】
そして、マスクMと回転ドラムDMが位置合わせされた状態で、
図11(A)に示すように、処理装置U3は、マスク搬送装置MLのアーム部材40がマスクMの吸着を部分的に解除し、これに同期して、マスク保持装置20の保持部22がマスクMを部分的に吸着する。
【0125】
ここで、マスク搬送装置MLの制御装置43は、
図2に示した上位制御装置CONTの制御に従って、アーム部材40の先端側(+X軸側)に配置されている第1吸着部66a、67a(
図8B参照)による吸着を解除し、第2吸着部66b、67bから第5吸着部66e、67eによる吸着を継続する。また、
図4に示した露光装置EXの制御装置13は、上位制御装置CONTの制御に従って、保持部22(マスク保持装置20)にマスクMを吸着させる。詳しくは、制御装置13は、複数の電磁石32のうち、マスクMの吸着が解除された部分に対向する位置に配置されている電磁石32を選択して磁力を発生させる。
【0126】
これにより、マスクMのうちアーム部材40による吸着が解除された部分は、磁性体M3が電磁石32に発生した磁力によって回転ドラムDMに引き寄せられ、回転ドラムDMに吸着される。このように、マスク保持装置20は、マスクMを部分ごとに順に回転ドラムDMに吸着することができ、例えばマスクMをたるみなく保持すること等ができる。
【0127】
ところで、処理装置U3は、マスクMに対するマスク搬送装置MLの吸着力(圧力)とマスク保持装置20の吸着力(磁力)とで発生原理(物理力の種類)が異なる。そのため、処理装置U3は、マスク搬送装置MLとマスク保持装置20とで吸着力を独立して制御しやすくなり、マスクMと回転ドラムDMとの位置ずれの発生を抑制できる。また、処理装置U3は、
図9(C)に示したように、マスクMを回転ドラムDMに装着するのに先立ち、アーム部材40に吸着されているマスクMの形状(変形、たわみ)を検出しているので、マスクMを回転ドラムDMにたるみなく装着すること等ができる。
【0128】
そして、アライメント装置63の観察結果を用いて、マスクMの搬入方向の先端側(+X軸側)が回転ドラムDMの外周面26の所定の位置に配置されているか否かが判定される。マスクMの搬入方向の先端側が回転ドラムDMの所定の位置に配置されていると判定された場合に、処理装置U3は、
図11(B)から
図11(D)に示すように、搬入方向の先端側から後端側に向かう順にマスクMを回転ドラムDMに取り付ける。
【0129】
詳しくは、マスク保持装置20は、マスクMを回転ドラムDMに巻き取るように回転ドラムDMを回転させる。マスク搬送装置MLは、アーム部材40を、回転ドラムDMの回転による外周面26の速度に対応する速度でX軸方向に直線的に移動させる。アーム部材40の速度は、例えば、アーム部材40の吸着が解除された部分のマスクMにたるまない程度のテンションがかかるとともに、このテンションによるマスクMの伸びが無視できるように、設定される。
【0130】
また、マスク搬送装置MLは、アーム部材40の第2吸着部66b、67bが回転ドラムDMにアーム部材40に最も接近するのとほぼ同じタイミング(若干早いタイミング)で、第2吸着部66b、67bによるマスクMの吸着を解除する。また、保持部22(マスク保持装置20)は、回転ドラムDMのうち巻き取られたマスクMと接触する部分に電磁石32が配置されている場合に、この電磁石32に磁力を発生させてマスクMを吸着し、マスクMのうち回転ドラムDMに巻き取られた部分を順に吸着により固定する。
【0131】
このようにして、
図11(E)に示すように、マスクMの全体がアーム部材40からリリースされる。そして、
図11(F)に示すように、マスク搬送装置MLは、適宜、アーム部材40を回転ドラムDM等と干渉(衝突)しない位置に退避させる。そして、マスク搬送装置MLがアーム部材40を退避させた後に、アライメント装置63は、回転ドラムDMに保持されているマスクMのアライメントマークM4と、回転ドラムDMのアライメントマークとの位置関係を検出する。この検出結果は、例えば、マスクMが回転ドラムDMの所定の位置に配置されているか否かを判定すること等に利用される。マスクMが回転ドラムDMの所定の位置に配置されていないと判定された場合には、マスクMは、回転ドラムDMから取り外され、上述したような手順に従って、このマスクM又は同一のパターンを有する他のマスクが回転ドラムDMに再度取り付けられる。
【0132】
以上のようにして、処理装置U3は、平面状のマスクMを円筒面状に湾曲させて、回転ドラムDMの円筒面状の外周面26に装着する。処理装置U3の露光装置EXは、マスクMが装着された回転ドラムDMを用いて、露光処理を実行する。また、露光装置EXによる露光処理が終了した後に、マスク搬送装置MLは、露光装置EXの回転ドラムDMからマスクMを搬出し、搬出したマスクMをマスクカセットMCに搬入することもできる。回転ドラムDMからのマスクMの搬出は、例えば、回転ドラムDMへのマスクMの搬入時と逆の手順で実行できる。
【0133】
本実施形態のマスク搬送装置MLは、回転ドラムDM(保持部22)の周方向に関してアーム部材40を相対移動させ、回転ドラムDMにマスクM受け渡す際、アーム部材40の相対移動に応じてアーム部材40によるマスクMの吸着状態を変化させる。そのため、マスク搬送装置MLは、平面状のマスクMを円筒面状の回転ドラムDMの外周面26に、効率よく装着すること、高い位置精度で装着すること等ができる。
【0134】
また、マスク搬送装置MLは、例えばマスクMをほぼ平面状に吸着するように構成され、マスクMがマスク保持装置20の保持部22と所定の間隔で対向するようにアーム部材40がマスクMを吸着する。そのため、マスク搬送装置MLは、マスクMを回転ドラムDMに高い位置精度で装着すること等ができる。また、移動装置42は、ほぼ平面状に吸着されたマスクMのパターンM2に沿ってアーム部材40を直線的に移動させる。そのため、マスク搬送装置MLは、マスクMを回転ドラムDMに効率よく装着すること等ができる。
【0135】
また、アーム部材40の複数の吸着部66は、例えばマスクMの円筒面の周方向に対応した方向に並ぶ複数部分を吸着し、制御装置21は、移動装置42の移動に伴う相対移動位置に応じて複数の吸着部66のそれぞれの吸着力を変えるように制御する。そのため、マスク搬送装置MLは、吸着装置41の吸着力の空間的な分布を高精度に調整可能になり、マスクMを回転ドラムDMに高い位置精度で装着すること等ができる。
【0136】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態のマスク保持装置20は、回転ドラムDMの中心軸28と平行な方向の端部30が中央部31と異なる材料で形成されている点で、第1実施形態と異なる。
【0137】
図12A及び
図12Bは、本実施形態によるマスク保持装置20の構成を示す図である。
図12Aには、マスク保持装置20及びマスクMの概観が図示されている。
図12Bには、回転ドラムDMのアライメントマーク82及びマスクMのアライメントマークM4の部分が拡大されて図示されている。
【0138】
図12A及び
図12Bに示す回転ドラムDMの中央部31は、回転ドラムDMの径方向から見てマスクMのパターンM2と重なる部分であり、石英等の透光性を有する材料で形成されている。
回転ドラムDMは、ガイドローラ80及び駆動ローラ81と外接しており、これらローラに支持されている。駆動ローラ81は、
図2に示した第2駆動部23の一部であり、電動モータ等から減速機等を介して供給されるトルクを端部30に伝えることで、回転ドラムDMを回転させる。
【0139】
回転ドラムDMの端部30は、ガイドローラ80及び駆動ローラ81と外接する部分を含む。端部30の材料は、例えば金属等のように、中央部31の材料(石英等)よりも脆性破壊しにくい材料、加工性が高い材料等から選択される。電磁石32は、例えば、端部30に形成された凹部の内側に配置される。この凹部は、回転ドラムDMの外周面26に開口を有し、その表面が電磁石32と導通しないように絶縁化されている。
【0140】
図12Bに示すように、本実施形態のマスクMは、アライメントマークM4がパターンM2の周囲の領域のうち磁性体M3と異なる領域に形成されている点で、第1実施形態と異なる。ここでは、回転ドラムDMのアライメントマーク82が回転ドラムDMの中央部31に形成されており、マスクMのアライメントマークM4は、回転ドラムDMのアライメントマーク82と重ねることができるように、配置されている。このようなマスクMのアライメントマークM4は、例えば、パターンM2と同一の形成材料(遮光層)でパターンM2とともに形成されたものでもよい。
【0141】
本実施形態のマスク保持装置20は、端部30を中央部31と異なる材料で形成するようにしたので、端部30の材料の選択自由度が高くなる。例えば、端部30を金属材料等で形成すれば、回転ドラムDMを製造する際の加工性が高くなり、電磁石32等を取り付けやすくなる。また、端部30を金属材料等で形成すれば、端部30とローラの接触等で端部30にカケやキズ等の損傷が発生することが抑制される。
【0142】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態のマスク保持装置20は、静電気力によってマスクMを吸着する点で、第1実施形態と異なる。
【0143】
図13A及び
図13Bは、本実施形態によるマスク保持装置20の保持部22の外観を示す図である。
図14は、マスク保持装置20の回路構成を模式的に示す図である。
図13Aには、保持部22が分解されて、模式的に図示されている。
図13Bでは、
図13Aの一部を省略して電極、配線等を見やすくしている。
図13A及び
図13Bには、回転ドラムDMの中心軸28に平行な方向の一部(一端部85a)が図示されている。回転ドラムDMの他端部85b(
図14参照)は、中心軸28に直交する面に関して一端部と対称的な構造であり、その要素が一端部85aと同様である。
【0144】
図13Aに示すように、マスク保持装置20の保持部22は、静電吸着用の電極部材としての電極パターン84が形成された円筒状の可動部材85(回転ドラムDM)と、可動部材85の中心軸28と平行な方向の端部に取り付けられ、電極パターン84を駆動する駆動回路86(電圧印加装置)が配置された転動リング87と、転動リング87の内側に配置された固定部材88とを備える。
【0145】
可動部材85は、マスクMが配置される外周面26を有し、例えば石英等の透光性を有する材質で形成される。転動リング87は、可動部材85の端部に接着等で固定された円環状の部材であり、可動部材85とともに回転する。転動リング87は、例えば、
図12A及び
図12Bに示した回転ドラムDMの端部30のように金属等の材料で形成される。固定部材88は、転動リング87との間にエアベアリング89を介して配置されており、可動部材85及び転動リング87が回転した際に外部に対して回転しないように、設けられている。なお、転動リング87及び固定部材88は、可動部材85の他端部にも一端部85aと同様に設けられている。
【0146】
固定部材88は、可動部材85の外側に配置される第1部分88aと、可動部材85の内側に配置される第2部分88bとを有する。固定部材88は、例えば第1部分88aが支持されることによって、可動部材85の外部に対して固定される。また、可動部材85の内側に照明光学系IL等の要素が配置される場合に、この要素は、第2部分88bに取り付けられる。これにより、第2部分88bは、可動部材85の内側に配置される要素を、可動部材85の外部に対して回転しないように固定する。
【0147】
固定部材88の第1部分88a及び第2部分88bは、それぞれ円筒状であり、第1部分88a及び第2部分88bの内側は、可動部材85の内側と外側とを結ぶ貫通孔88c(ダクト)になっている。この貫通孔88cは、例えば通気孔、ケーブルの引き出し口等として利用可能である。例えば、可動部材85の内側に光源装置等が配置される場合に、光源装置と接続されるケーブルは、貫通孔88cを通して可動部材85の外部へ引き出される。また、光源装置等によって可動部材85の内側に発生する熱は、貫通孔88cに通気すること等によって、貫通孔88cを通して可動部材85の外部に放熱される。
【0148】
図13Bに示すように、複数の電極パターン84のそれぞれは、第1電極84aおよび第2電極84bを含み、1つの第1電極84aと1つの第2電極84bとが組になって静電容量を形成する。各電極パターン84の第1電極84a及び第2電極84bは、例えば櫛歯状に形成され、互いに接近して配置される。電極パターン84の静電容量に吸着用の電荷が蓄積される際に、第1電極84aは、例えば陽極に設定され、第2電極84bは、例えば負極に設定される。
【0149】
可動部材85は、第1電極84aと電気的に接続された第1端子90と、複数の第2電極84bのそれぞれと電気的に接続された配線パターン91と、可動部材85の端部に形成されて配線パターン91と電気的に接続された第2端子92とを有する。
【0150】
第1端子90は、いわゆる電源端子であり、第2端子92の電位(基準電位)に対する所定の電位が印加される。第1端子90は、第1電極84aと1対1の対応で、回転ドラムDMの周方向に繰り返し複数配置されている。第1端子90は、例えば、回転ドラムDMの中心軸28と直交する端面に配置され、回転ドラムDMの中心軸28と平行な方向に延びる配線によって、第1電極84aと電気的に接続されている。
【0151】
第2端子92は、いわゆる接地端子であり、基準電位が印加される。第2端子92は、例えば回転ドラムDMの中心軸28と直交する端面に配置され、その数は1つでもよいし複数でもよい。配線パターン91は、いわゆる共通アース線であり、複数の第2電極84bをほぼ同電位に保持する。配線パターン91は、回転ドラムDMの周方向に延びる第1配線91aと、回転ドラムDMの中心軸28と平行な方向に延びる第2配線91bとを有する。第1配線91aは、可動部材85の一端部85aに設けられた複数の第1電極84aのそれぞれと連続しており、一端部85aの複数の第1電極84aのそれぞれと電気的に接続されている。
【0152】
図14に示すように、可動部材85の他端部85bには、一端部85aと同様に複数の電極パターン84が形成されている。他端部の電極パターン84は、一端部85aの電極パターン84と1対1の対応で設けられており、対応関係にある一端部85aの電極パターン84と可動部材85の周方向の位置(θY方向の角度位置)が揃うように、配置されている。例えば、一端部85aの電極パターン84の1つ(84−1)と他端部85bの電極パターン84の1つ(84−4)は、可動部材85の中心軸28と平行な方向に並ぶように、配置されている。
【0153】
また、可動部材85の他端部85bには、一端部85aと同様に第1配線91aが形成されている。他端部85bの第1配線91aは、他端部85bの複数の電極パターン84における第2電極84bのそれぞれと電気的に接続されている。一端部85aの第1配線91aと他端部85bの第1配線91aは、第2配線91bを介して電気的に接続されている。第2配線91bは、第2端子92と電気的に接続されており、基準電位に保持される。このように、一端部85a及び他端部85bの複数の第2電極84bは、いずれも、配線パターン91(共通アース線)を介して第2端子92と電気的に接続されており、ほぼ同電位(基準電位)に保持される。
【0154】
マスクMは、パターンM2が形成されていないパターン非形成領域MA2を有し、パターン非形成領域MA2の表面が誘電体で構成されている。このようなマスクMは、例えば、
図3A及び
図3Bに示したマスクMから磁性体M3が省かれたものでもよいし、磁性体M3を覆って誘電体膜が形成されたものでもよい。マスクMは、可動部材85の径方向から見て、パターンM2が複数の電極パターン84と重ならず、パターン非形成領域MA2が複数の電極パターン84と重なるように、配置される。
【0155】
駆動回路86は、電源部93(電圧印加装置)から駆動回路86に供給される電力(電圧)を切替える第1スイッチ部94と、複数の第1電極84aのうち少なくとも1つを選択して第1スイッチ部94と電気的に接続可能な第2スイッチ部95とを備える。
【0156】
電源部93は、電極パターン84が形成する静電容量に静電吸着用の電荷を蓄積するための高圧電源93aと、高圧電源93aとは逆バイアスの逆バイアス電源93bとを備える。電源部93は、例えば回転ドラムDMの外部に設けられ、高圧電源93aの正極及び逆バイアス電源93bの負極は、ブラシ等の接点を介して第1スイッチ部94と電気的に接続される。また、高圧電源93aの負極及び逆バイアス電源93bの正極は、第2端子92を介して電極パターン84の第2電極84bと電気的に接続される。
【0157】
なお、電源部93は、その配置、構成を適宜変更可能であり、例えば
図4に示したバッテリー34のように、回転ドラムDMの内側に配置されていてもよいし、
図13Aに示した転動リング87又は固定部材88に配置されていてもよい。
【0158】
第1スイッチ部94は、その接点94aが電源部93の高圧電源93aの正極に導通する第1状態と、接点94aが電源部93の逆バイアス電源93bの負極に導通する第2状態と、接点94aが高圧電源93a及び逆バイアス電源93bのいずれとも絶縁になる第3状態とを、択一的に切替可能である。
図4に示したような露光装置EXの制御装置21は、第1スイッチ部94を制御することによって、上記の第1から第3状態のいずれかを選択することができる。
【0159】
第2スイッチ部95は、第1スイッチ部94の接点94aと電気的に接続された接点95aと、
図13Bに示した第1端子90を介して電極パターン84の第1電極84aと電気的に接続された複数の接点96とを有する。第2スイッチ部95は、複数の接点96から選択される接点を第1スイッチ部94と電気的に接続可能である。
【0160】
複数の接点96のうち接点96aは、電極パターン84−1の第1電極84a、及びこの電極パターン84−1と対応関係にある電極パターン84−4の第1電極84aと電気的に接続されている。接点96bは、可動部材85の周方向に並ぶ2つの電極パターン84−1、84−2の第1電極84a、及びこれら電極パターン84−1、84−2と対応関係にある電極パターン84−4、84−5の第1電極84aと電気的に接続されている。接点96cは、可動部材85の周方向に並ぶ3つの電極パターン84−1から84−3の第1電極84a、及びこれら電極パターン84−1から84−3と対応関係にある電極パターン84−4から84−4の第1電極84aと電気的に接続されている。
【0161】
なお、
図14には、複数の接点96として3つの接点96aから96cが図示されているが、複数の接点96は、実際には、4つの電極パターン84に対応する接点、5つの電極パターン84に対応する接点、・・・、全ての電極パターン84に対応する接点というように、可動部材85の周方向に並ぶ複数の電極パターン84の第1電極84aに電気的に接続された接点を含む。また、
図14には、第1スイッチ部94と第2スイッチ部95のそれぞれが機械式スイッチとして図示されているが、第1スイッチ部94と第2スイッチ部95の一方又は、MOS等のスイッチング素子により構成されていてもよい。
【0162】
図4に示したような露光装置EXの制御装置21は、第2スイッチ部95を制御することによって、複数の接点96のいずれかを選択して第1スイッチ部94と電気的に接続することができる。
【0163】
ここで、駆動回路86において、第1スイッチ部94が高圧電源93aの正極と電気的に接続されている第1状態を想定する。第1状態において第2スイッチ部95の接点96aが第1スイッチ部94の接点94aと電気的に接続されると、電極パターン84−1、84−4のそれぞれの第1電極84aに正電圧が印加される。これにより、電極パターン84−1、84−4のそれぞれは、静電容量に電荷が蓄積されることによって、静電気力による吸着力を発生する。同様に、第1状態において、第2スイッチ部95の接点96bが第1スイッチ部94の接点94aと電気的に接続されると、電極パターン84−1、84−2、84−4、84−5は、静電気力による吸着力を発生する。また、第2スイッチ部95の接点96cが第1スイッチ部94の接点94aと電気的に接続されると、電極パターン84−1〜84−6は、静電気力による吸着力を発生する。このように、駆動回路86は、可動部材85において吸着力が発生する領域を変化させることができる。
【0164】
また、駆動回路86において、高圧電源93a及び逆バイアス電源93bのいずれとも絶縁になる第3状態を想定する。電極パターン84が充電されている箇所(吸着部66)は、第3状態において、吸着力を発生している状態が保持される。例えば、複数の電極パターン84は、いずれも充電されている状態で第3状態に設定されると、いずれも吸着力を発生したまま保持される。
【0165】
また、駆動回路86において、第1スイッチ部94が電源部93の逆バイアス電源93bの負極に導通している第2状態を想定する。第2状態において、第2スイッチ部95の接点96aが第1スイッチ部94と電気的に接続されると、電極パターン84−1、84−4のそれぞれの第1電極84aに負電圧が印加される。これにより、電極パターン84−1、84−4のそれぞれに電荷が蓄積されていた場合には、この電荷が静電容量から放電されることにより、電極パターン84−1、84−4は、ほとんど吸着力を発生しない状態に切り替えられる。同様に、第2状態において、第2スイッチ部95の接点96bが第1スイッチ部94の接点94aと電気的に接続されると、電極パターン84−1、84−2、84−4、84−5は、ほとんど吸着力を発生しない状態に切り替えられる。また、第2スイッチ部95の接点96cが第1スイッチ部94の接点94aと電気的に接続されると、電極パターン84−1〜84−6は、ほとんど吸着力を発生しない状態に切り替えられる。このように、駆動回路86は、可動部材85において吸着力が発生している領域の少なくとも一部を、ほとんど吸着力が発生しない状態に切替えることができる。
【0166】
本実施形態のマスク保持装置20は、
図11に示したのと同様に、可動部材85(回転ドラムDM)の周方向に順に吸着力を発生させることによって、マスクMを部分ごとに順に吸着することができる。これにより、処理装置U3は、マスクMを効率的に回転ドラムDMに装着すること、マスクMを高い位置精度で回転ドラムDMに装着すること等ができる。
【0167】
本発明の技術範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態で説明した要素の1つ以上は、省略されることがある。また、実施形態で説明した要素は、適宜組み合わせることができる。
【0168】
マスクMに対するマスク搬送装置MLの吸着力とマスクMに対するマスク保持装置20の吸着力は、圧力(減圧)による吸着力、磁力による吸着力、静電気力による吸着力等から、発生原理が互いに異なるように適宜選択されてもよいし、発生原理が同じになるように選択されてもよい。
【0169】
なお、屈伸機構50は、マスクMが回転ドラムDMに装着される際にマスクM(アーム部材40)を移動させる方向(X軸方向)を含む移動面において、屈伸可能であればよい。
このような移動面は、例えばXZ平面であってもよく、この場合に、屈伸機構50及びZ移動機構52は、屈伸機構50によるアーム部材40のZ軸方向の移動を相殺するように、Z移動機構52が屈伸機構50を移動させることによって、直線駆動源として機能する。
【0170】
なお、マスク搬送装置MLとマスクカセットMCとの間のマスクの受け渡しは、マスク搬送装置MLとマスク保持装置20との間のマスクの受け渡しと同様に行うことができる。
【0171】
[デバイス製造方法]
次に、デバイス製造方法について説明する。
図20は、本実施形態のデバイス製造方法を示すフローチャートである。
【0172】
図15に示すデバイス製造方法では、まず、例えば有機EL表示パネル等のデバイスの機能・性能設計を行う(ステップ201)。次いで、デバイスの設計に基づいて、マスクMを製作する(ステップ202)。また、デバイスの基材である透明フィルムやシート、あるいは極薄の金属箔等の基板を、購入や製造等によって準備しておく(ステップ203)。
【0173】
次いで、準備した基板をロール式、パッチ式の製造ラインに投入し、その基板上にデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、半導体膜等のTFTバックプレーン層や、画素部となる有機EL発光層を形成する(ステップ204)。ステップ204には、典型的には、基板上の膜の上にレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンをマスクにして上記膜をエッチングする工程とが含まれる。レジストパターンの形成には、レジスト膜を基板表面に一様に形成する工程、上記の各実施形態に従って、マスクMを経由してパターン化された露光光で基板のレジスト膜を露光する工程、その露光によってマスクパターンの潜像が形成されたレジスト膜を現像する工程、が実施される。
【0174】
印刷技術等を併用したフレキシブル・デバイス製造の場合は、基板表面に機能性感光層(感光性シランカップリング材等)を塗布式により形成する工程、上記の各実施形態に従って、マスクMを経由してパターン化された露光光を機能性感光層に照射し、機能性感光層にパターン形状に応じて親水化した部分と撥水化した部分を形成する工程、機能性感光層の親水性の高い部分にメッキ下地液等を塗工し、無電解メッキにより金属性のパターンを析出形成する工程、等が実施される。
【0175】
次いで、製造するデバイスに応じて、例えば、基板をダイシング、あるいはカットすることや、別工程で製造された他の基板、例えば封止機能を持ったシート状のカラーフィルターや薄いガラス基板等を貼り合せる工程が実施され、デバイスを組み立てる(ステップ205)。次いで、デバイスに検査等の後処理を行う(ステップ206)。以上のようにして、デバイスを製造することができる。