特許第6048556号(P6048556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048556樹脂組成物およびそれを用いた光学補償フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048556
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれを用いた光学補償フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20161212BHJP
   C08L 35/02 20060101ALI20161212BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20161212BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20161212BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20161212BHJP
   B29C 41/12 20060101ALI20161212BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20161212BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20161212BHJP
   B29L 11/00 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   C08L1/00
   C08L35/02
   C08J5/18CEP
   C08J5/18CET
   G02B5/30
   G02F1/13363
   B29C41/12
   B29K1:00
   B29L7:00
   B29L11:00
【請求項の数】21
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-185764(P2015-185764)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-108536(P2016-108536A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-239366(P2014-239366)
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-239367(P2014-239367)
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正泰
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小峯 拓也
(72)【発明者】
【氏名】陶山 薫
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−131534(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013982(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/018651(WO,A1)
【文献】 特開2014−125609(JP,A)
【文献】 特開2014−125610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00
C08L 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分として下記一般式(1)で示されるセルロ−ス系樹脂30〜99重量%、および下記一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むケイ皮酸エステル共重合体1〜70重量%を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12の置換基を示す。)
【化2】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【請求項2】
ケイ皮酸エステル共重合体が下記一般式(3)で示されるフマル酸モノエステル残基単位5〜50モル%、下記一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位0〜85モル%および下記一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化4】
(式中、R7、はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化5】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【請求項3】
ケイ皮酸エステル共重合体が下記一般式(3)で示されるフマル酸モノエステル残基単位10〜50モル%、下記一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位0〜60モル%および下記一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位30〜90モル%を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化6】
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化7】
(式中、R7、はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化8】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【請求項4】
ケイ皮酸エステル共重合体が、フマル酸モノメチル残基単位、フマル酸モノエチル残基単位、フマル酸モノイソプロピル残基単位、フマル酸モノ−n−プロピル残基単位、フマル酸モノ−n−ブチル残基単位、フマル酸モノ−t−ブチル残基単位、フマル酸モノ−2−エチルヘキシル残基単位から選ばれるフマル酸モノエステル残基単位5〜50モル%、フマル酸ジメチル残基単位、フマル酸ジエチル残基単位、フマル酸ジイソプロピル残基単位、フマル酸ジ−n−プロピル残基単位、フマル酸ジ−n−ブチル残基単位、フマル酸ジ−t−ブチル残基単位、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル残基単位から選ばれるフマル酸ジエステル残基単位0〜85モル%、および下記一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【化9】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【請求項5】
ケイ皮酸エステル共重合体が下記一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位5〜85モル%、下記一般式(5)で示されるアクリル酸エステル残基単位、下記一般式(6)で示されるメタクリル酸エステル残基単位、下記一般式(7)で示されるアクリル酸アミド残基単位、下記一般式(8)で示されるメタクリル酸アミド残基単位からなる群より選ばれる残基単位5〜40モル%、および下記一般式(2)で示されアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化10】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
(式中、R、R10、R11、R12はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化15】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【請求項6】
ケイ皮酸エステル共重合体が下記一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位5〜65モル%、下記一般式(5)で示されるアクリル酸エステル残基単位、下記一般式(6)で示されるメタクリル酸エステル残基単位、下記一般式(7)で示されるアクリル酸アミド残基単位、下記一般式(8)で示されるメタクリル酸アミド残基単位からなる群より選ばれる残基単位5〜40モル%、および下記一般式(2)で示されアルコキシケイ皮酸エステル残基単位30〜90モル%を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化16】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
(式中、R、R10、R11、R12はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【化21】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【請求項7】
一般式(1)で示されるセルロ−ス系樹脂がセルロ−スエ−テルであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の樹脂化合物。
【請求項8】
セルロ−スエ−テルのエ−テル化度(置換度)が1.5〜3.0であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかの項に記載の樹脂組成物を用いてなり、厚みが5〜200μmであることを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれかの項に記載の樹脂組成物を用いてなり、厚みが20〜60μmであることを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項11】
下記式(1)で示される面内位相差(Re)が80〜300nmで、下記式(2)で示されるNz係数が0.35〜0.65であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の光学補償フィルム。
Re=(ny−nx)×d (1)
Nz=(ny−nz)/(ny−nx) (2)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
【請求項12】
下記式(1)で示される面内位相差(Re)が50〜300nmで、下記式(2)で示されるNz係数が−0.2〜0.2であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の光学補償フィルム。
Re=(ny−nx)×d (1)
Nz=(ny−nz)/(ny−nx) (2)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
【請求項13】
下記式(1)で示される面内位相差(Re)が0〜20nmで、下記式(3)で示される面外位相差(Rth)が、−150〜20nmであることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の光学補償フィルム。
Re=(ny−nx)×d (1)
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d (3)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
【請求項14】
光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項9〜請求項13のいずれかの項に記載の光学補償フィルム。
【請求項15】
ヘ−ズが1%以下であることを特徴とする請求項9〜請求項14のいずれかの項に記載の光学補償フィルム。
【請求項16】
450nmにおけるレタ−デ−ションと550nmにおけるレタ−デ−ションの比Re(450)/Re(550)が0.60<Re(450)/Re(550)<1.05であることを特徴とする請求項9〜請求項15のいずれかの項に記載の光学補償フィルム。
【請求項17】
589nmにおけるレタ−デ−ションとフィルム膜厚の比Re(589)(nm)/フィルム膜厚(μm)が4.0nm/μm以上であることを特徴とする請求項9〜請求項16のいずれかの項に記載の光学補償フィルム。
【請求項18】
樹脂成分として下記一般式(1)で示されるセルロ−ス系樹脂30〜99重量%、および下記一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むケイ皮酸エステル共重合体1〜70重量%を含有する樹脂組成物を溶剤に溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストし、乾燥後、基材より剥離することを特徴とする請求項9〜請求項17のいずれかの項に記載の光学補償フィルムの製造方法。
【化22】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12の置換基を示す。)
【化23】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【請求項19】
一般式(1)で示されるセルロ−ス系樹脂がセルロ−スエ−テルであるときのエ−テル化度(置換度)が1.5〜3.0であることを特徴とする請求項18に記載の光学補償フィルムの製造方法。
【請求項20】
キャストして得られた厚み10〜200μmのフィルムを一軸延伸またはアンバランス二軸延伸させることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の光学補償フィルムの製造方法。
【請求項21】
キャストして得られた厚み30〜100μmのフィルムを一軸延伸またはアンバランス二軸延伸させることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の光学補償フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびそれを用いた光学補償フィルムに関するものであり、より詳しくは、樹脂組成物ならびに位相差特性および波長分散特性に優れた液晶ディスプレイ用の光学補償フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、携帯電話、コンピュ−タ−用モニタ−、ノ−トパソコン、テレビまで幅広く使用されている。液晶ディスプレイには表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられている。特に光学補償フィルムは、正面や斜めから見た場合のコントラスト向上、色調の補償など大きな役割を果たしている。
【0003】
液晶ディスプレイには、垂直配向型(VA−LCD)、面内配向型液晶(IPS−LCD)、ス−パ−ツイストネマチック型液晶(STN−LCD)、反射型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイなどの多くの方式が有り、ディスプレイにあわせた光学補償フィルムが必要となっている。
【0004】
従来の光学補償フィルムとしては、セルロ−ス系樹脂、ポリカ−ボネ−トや環状ポリオレフィンなどの延伸フィルムが用いられている。特にトリアセチルセルロ−スフィルムなどのセルロ−ス系樹脂からなるフィルムは、偏光子であるポリビニルアルコ−ルとの接着性も良好なことから幅広く使用されている。
【0005】
しかしながら、セルロ−ス系樹脂からなる光学補償フィルムはいくつかの課題がある。例えば、セルロ−ス系樹脂フィルムは延伸条件を調整することで各種ディスプレイにあわせた位相差値を持つ光学補償フィルムに加工されるが、セルロ−ス系樹脂フィルムの一軸または二軸延伸により得られるフィルムの三次元屈折率は、ny≧nx>nzであり、それ以外の3次元屈折率、例えば、ny>nz>nxや、ny=nz>nxなどの3次元屈折率を有する光学補償フィルムを製造するためには、フィルムの片面または両面に熱収縮性フィルムを接着し、その積層体を加熱延伸処理して、高分子フィルムの厚み方向に収縮力をかけるなど特殊な延伸方法が必要であり屈折率(位相差値)の制御も困難である(例えば、特許文献1〜3参照)。ここでnxはフィルム面内の進相軸方向(最も屈折率の小さい方向)の屈折率、nyはフィルム面内の遅相軸方向(最も屈折率の大きい方向)の屈折率、nzはフィルム面外(厚み方向)の屈折率を示す。
【0006】
また、セルロ−ス系樹脂フィルムは一般に溶剤キャスト法により製造されるが、キャスト法により成膜したセルロ−ス系樹脂フィルムはフィルム厚み方向に40nm程度の面外位相差(Rth)を有するため、IPSモ−ドの液晶ディスプレイなどではカラ−シフトが起こるなどの問題がある。ここで面外位相差(Rth)は以下の式で示される位相差値である。
【0007】
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
また、フマル酸エステル系樹脂からなる位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
しかしながら、フマル酸エステル系樹脂からなる延伸フィルムの3次元屈折率は、nz>ny>nxであり、上記3次元屈折率を示す光学補償フィルムを得るためには他の光学補償フィルム等との積層などが必要である。
【0009】
そこで、上記3次元屈折率を示す光学補償フィルムとして、樹脂組成物およびそれを用いた光学補償フィルムが提案されている(例えば、特許文献5〜特許文献7参照)。
【0010】
特許文献5〜特許文献7は光学補償フィルムとして優れた性能を有するものの、目的とするReの発現のためには本発明よりも厚いフィルム厚が必要である。また、一般に位相差フィルムは反射型液晶表示装置、タッチパネルや有機ELの反射防止層としても用いられるものであり、該用途では、長波長域ほどレタ−デ−ションが大きい位相差フィルム(以下、「逆波長分散フィルム」という)が求められるものであるが、特許文献5〜特許文献7には逆波長分散フィルムとして用いられることについて何らの記載がないものである。
【0011】
反射防止層として逆波長分散フィルムが用いられる場合、位相差は測定波長λの1/4程度が好ましく、450nmにおけるレタ−デ−ションと550nmにおけるレタ−デ−ションの比Re(450)/Re(550)は0.81に近いことが好ましい。そして、表示装置の薄型化を鑑みた場合、使用される逆波長分散フィルムも薄いことが求められる。上記のような要求特性に対し、種々の位相差フィルムが開発されている。
【0012】
このような位相差フィルムとして、正の固有複屈折を有するポリマ−と、負の固有複屈折を有するポリマ−とをブレンドして得た、逆波長分散性を有する位相差板が開示されている(例えば、特許文献8参照)。しかし、当該文献には、正の固有複屈折を有するポリマ−としてノルボルネン系ポリマ−、負の固有複屈折を有するポリマ−としてスチレンと無水マレイン酸との共重合体、及びそれらポリマ−をブレンドして得られる組成物が開示されているが、該組成物を用いた位相差板は、位相差フィルムの位相差特性として望ましいReとNzの関係を満足するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許2818983号公報
【特許文献2】特開平5−297223号公報
【特許文献3】特開平5−323120号公報
【特許文献4】特開2008−64817号公報
【特許文献5】特開2013−28741号公報
【特許文献6】特開2014−125609号公報
【特許文献7】特開2014−125610号公報
【特許文献8】特開2001−337222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学補償フィルムに適する樹脂組成物ならびにそれを用いた位相差特性および波長分散特性に優れた光学補償フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のセルロ−ス系樹脂および特定のケイ皮酸エステル共重合体を含有する樹脂組成物、それを用いた光学補償フィルムおよびその製造方法が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、樹脂成分として所定の式で示されるセルロ−ス系樹脂30〜99重量%、および所定の式で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むケイ皮酸エステル共重合体1〜70重量%を含有することを特徴とする樹脂組成物、それを用いた光学補償フィルム、ならびにその製造方法である。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として下記一般式(1)で示されるセルロ−ス系樹脂30〜99重量%、および下記一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むケイ皮酸エステル共重合体1〜70重量%を含有する。
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12の置換基を示す。)
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
本発明のセルロ−ス系樹脂としては、例えば、セルロ−スエ−テル、セルロ−スエステル、セルロ−スエ−テルエステル、セルロ−スアシレ−ト等が挙げられる。そして、本発明の樹脂組成物は、これらのセルロ−ス系樹脂を1種または2種以上含有していてもよい。
【0022】
本発明のセルロ−ス系樹脂は、機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パ−ミエイション・クロマトグラフィ−(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10〜1×10であることが好ましく、5×10〜2×10であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明のセルロ−ス系樹脂としては、ケイ皮酸エステル共重合体との相溶性に優れ、かつ面内位相差Reが大きく、更に延伸加工性に優れるため、セルロ−スエ−テルが好ましい。
【0024】
以下、本発明の光学補償フィルムに用いられるセルロ−ス系樹脂として好ましいセルロ−スエ−テルについて説明する。
【0025】
本発明のセルロ−ス系樹脂であるセルロ−スエ−テルは、β−グルコース単位が直鎖状に重合した高分子であり、グルコ−ス単位の2位、3位および6位の水酸基の一部または全部をエ−テル化したポリマ−である。本発明のセルロ−スエ−テルとしては、例えば、メチルセルロ−ス、エチルセルロ−ス、プロピルセルロ−ス等のアルキルセルロ−ス;ヒドロキシエチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス等のヒドロキシアルキルセルロ−ス;ベンジルセルロ−ス、トリチルセルロ−ス等のアラルキルセルロ−ス;シアンエチルセルロ−ス等のシアノアルキルセルロ−ス;カルボキシメチルセルロ−ス、カルボキシエチルセルロ−ス等のカルボキシアルキルセルロ−ス;カルボキシメチルメチルセルロ−ス、カルボキシメチルエチルセルロ−ス等のカルボキシアルキルアルキルセルロ−ス;アミノエチルセルロ−ス等のアミノアルキルセルロ−ス等が挙げられる。
【0026】
該セルロ−スエ−テルにおけるセルロ−スの水酸基の酸素原子を介して置換している置換度(エ−テル化度)は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロ−スの水酸基がエ−テル化している割合(100%のエ−テル化は置換度1)を意味し、溶解性、相溶性、延伸加工性の点から、エ−テル基の全置換度DSは、好ましくは1.5〜3.0(1.5≦DS≦3.0)であり、さらに好ましくは1.8〜2.8である。セルロ−スエ−テルは、溶解性、相溶性の点から、炭素数1〜12の置換基を有することが好ましい。炭素数1〜12の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デカニル基、ドデカニル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェノニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。これらの中でも、溶解性、相溶性の点から、炭素数1〜5のアルキル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が好ましい。本発明で用いるセルロ−ス系ポリマ−のエ−テル基は1種類だけでもよいし、2種類以上のエ−テル基を有していてもよい。また、エ−テル基の他にエステル基を有していてもよい。
【0027】
セルロ−スエ−テルは一般に、木材又はコットンより得たセルロ−スパルプをアルカリ分解し、アルカリ分解したセルロ−スパルプをエ−テル化することで合成される。アルカリとしては、リチウム,カリウム,ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物やアンモニアなどが利用できる。前記アルカリ類は一般に、水溶液として使用される。そして、アルカリ性にされたセルロ−スパルプは、セルロ−スエ−テルの種類に応じて用いられるエ−テル化剤と接触されることによりエ−テル化されるものである。エ−テル化剤としては、例えば、塩化メチル、塩化エチル等のハロゲン化アルキル;ベンジルクロライド、トリチルクロライド等のハロゲン化アラルキル;モノクロロ酢酸、モノクロロプロピオン酸等のハロカルボン酸;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド等が挙げられ、これらのエ−テル化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
なお、必要であれば、反応終了後、粘度調整のため塩化水素、臭化水素、塩酸、及び硫酸等で解重合処理してもよい。
【0029】
本発明の樹脂組成物が含有するケイ皮酸エステル共重合体(以下、ケイ皮酸エステル共重合体という)は、一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むものである。本発明において、アルコキシケイ皮酸エステル残基単位が10モル%未満の場合、位相差発現性が低下し、90モル%を超える場合、相溶性が低下する。すなわち、本発明はケイ皮酸エステル共重合体がアルコキシケイ皮酸エステル残基単位を10〜90モル%含んでなるケイ皮酸エステル共重合体であることにより、該共重合体の相溶性が高く、かつ、本発明に係る樹脂組成物が光学補償フィルムとして用いられるとき、Reがより向上していることを特徴するものである。
【0030】
ケイ皮酸エステル共重合体における一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位のエステル置換基であるRは炭素数1〜12のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、セルロ−ス樹脂との相溶性から、炭素数1〜4のアルキル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。エステル置換基であるRは、炭素数1〜12のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、溶解性、相溶性の点から、炭素数1〜4のアルキル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位としては、溶解性、相溶性の点から、4−メトキシケイ皮酸メチル残基、4−メトキシケイ皮酸エチル残基、4−メトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4−メトキシケイ皮酸n−プロピル残基、4−メトキシケイ皮酸n−ブチル残基、4−メトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、4−メトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、4−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、4−エトキシケイ皮酸メチル残基、4−エトキシケイ皮酸エチル残基、4−エトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4−エトキシケイ皮酸n−プロピル残基、4−エトキシケイ皮酸n−ブチル残基、4−エトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、4−エトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、4−エトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸メチル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸エチル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸n−プロピル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸n−ブチル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸sec−ブチル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸tert−ブチル残基、4−イソプロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸メチル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸エチル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸n−プロピル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸n−ブチル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸sec−ブチル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸tert−ブチル残基、4−n−プロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸メチル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸エチル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、4−n−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸メチル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸エチル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、4−sec−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸メチル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸エチル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、4−tert−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、3−メトキシケイ皮酸メチル残基、3−メトキシケイ皮酸エチル残基、3−メトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3−メトキシケイ皮酸n−プロピル残基、3−メトキシケイ皮酸n−ブチル残基、3−メトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、3−メトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、3−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、3−エトキシケイ皮酸メチル残基、3−エトキシケイ皮酸エチル残基、3−エトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3−エトキシケイ皮酸n−プロピル残基、3−エトキシケイ皮酸n−ブチル残基、3−エトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、3−エトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、3−エトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸メチル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸エチル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸n−プロピル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸n−ブチル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸sec−ブチル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸tert−ブチル残基、3−イソプロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸メチル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸エチル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸n−プロピル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸n−ブチル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸sec−ブチル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸tert−ブチル残基、3−n−プロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸メチル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸エチル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、3−n−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸メチル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸エチル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、3−sec−ブトキシケイ皮酸3−エチルヘキシル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸メチル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸エチル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、3−tert−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、2−メトキシケイ皮酸メチル残基、2−メトキシケイ皮酸エチル残基、2−メトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2−メトキシケイ皮酸n−プロピル残基、2−メトキシケイ皮酸n−ブチル残基、2−メトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、2−メトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、2−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、2−エトキシケイ皮酸メチル残基、2−エトキシケイ皮酸エチル残基、2−エトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2−エトキシケイ皮酸n−プロピル残基、2−エトキシケイ皮酸n−ブチル残基、2−エトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、2−エトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、2−エトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸メチル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸エチル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸n−プロピル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸n−ブチル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸sec−ブチル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸tert−ブチル残基、2−イソプロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸メチル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸エチル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸n−プロピル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸n−ブチル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸sec−ブチル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸tert−ブチル残基、2−n−プロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸メチル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸エチル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、2−n−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸メチル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸エチル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、2−sec−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸メチル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸エチル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸n−プロピル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸n−ブチル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル残基、2−tert−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル残基から選ばれるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位が好ましい。
【0031】
本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体は、下記一般式(3)で示されるフマル酸モノエステル残基単位5〜50モル%、下記一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位0〜85モル%および一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むものであることが好ましく、下記一般式(3)で示されるフマル酸モノエステル残基単位10〜50モル%、下記一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位0〜60モル%および一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位30〜90モル%を含むものであることがさらに好ましい。
【0032】
【化3】
【0033】
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
【0034】
【化4】
【0035】
(式中、R7、はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
本発明において、フマル酸モノエステル残基単位が5モル%より大きい場合、より相溶性に優れる樹脂となる。そして、該残基単位が5〜50モル%である場合、位相差特性の発現が高く、かつ、より相溶性に優れる樹脂となるものである。
【0036】
本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体が一般式(3)で示されるフマル酸モノエステル残基単位を有する場合、該残基単位のエステル置換基であるRは炭素数1〜12のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、セルロ−ス樹脂との相溶性から、炭素数1〜4のアルキル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。一般式(3)で示されるフマル酸モノエステル残基単位としては、例えば、フマル酸モノメチル残基、フマル酸モノエチル残基、フマル酸モノ−n−プロピル残基、フマル酸モノイソプロピル残基、フマル酸モノ−n−ブチル残基、フマル酸モノ−s−ブチル残基、フマル酸モノ−t−ブチル残基、フマル酸モノ−n−ペンチル残基、フマル酸モノ−s−ペンチル残基、フマル酸モノ−t−ペンチル残基、フマル酸モノ−n−ヘキシル残基、フマル酸モノ−s−ヘキシル残基、フマル酸モノ−t−ヘキシル残基、フマル酸モノ−2−エチルヘキシル、フマル酸モノシクロプロピル残基、フマル酸モノシクロペンチル残基、フマル酸モノシクロヘキシル残基等が挙げられる。これらの中でも、セルロ−ス系樹脂との相溶性が良いことから、フマル酸モノメチル残基単位、フマル酸モノエチル残基単位、フマル酸モノイソプロピル残基単位、フマル酸モノ−n−プロピル残基単位、フマル酸モノ−n−ブチル残基単位、フマル酸モノ−s−ブチル残基単位、フマル酸モノ−t−ブチル残基単位から選ばれるフマル酸モノエステル残基単位が好ましい。
【0037】
本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体が一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位を有する場合、該残基単位のエステル置換基であるR、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、セルロ−ス樹脂との相溶性から、炭素数1〜4のアルキル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位としては、例えば、フマル酸ジメチル残基、フマル酸ジエチル残基、フマル酸ジ−n−プロピル残基、フマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ−n−ブチル残基、フマル酸ジ−s−ブチル残基、フマル酸ジ−t−ブチル残基、フマル酸ジ−n−ペンチル残基、フマル酸ジ−s−ペンチル残基、フマル酸ジ−t−ペンチル残基、フマル酸ジ−n−ヘキシル残基、フマル酸ジ−s−ヘキシル残基、フマル酸ジ−t−ヘキシル残基、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル残基、フマル酸ジシクロプロピル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基等が挙げられる。これらの中でも、重合性、位相差発現性、セルロ−ス系樹脂との相溶性が良いことから、フマル酸ジメチル残基単位、フマル酸ジエチル残基単位、フマル酸ジイソプロピル残基単位、フマル酸ジ−t−ブチル残基単位から選ばれるフマル酸ジエステル残基単位が好ましい。
【0038】
本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体は、フマル酸モノエステル残基単位5〜50モル%、フマル酸ジエステル残基単位0〜80モル%、およびアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%の割合で含む合計単量体を100モル%として、ケイ皮酸エステル類と共重合可能な単量体の残基単位0〜20モル%を含んでいてもよい。
【0039】
本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体は、一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位5〜85モル%、下記一般式(5)で示されるアクリル酸エステル残基単位、下記一般式(6)で示されるメタクリル酸エステル残基単位、下記一般式(7)で示されるアクリル酸アミド残基単位、下記一般式(8)で示されるメタクリル酸アミド残基単位からなる群より選ばれる残基単位5〜40モル%、および一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むものであることが好ましく、一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位5〜65モル%、下記一般式(5)で示されるアクリル酸エステル残基単位、下記一般式(6)で示されるメタクリル酸エステル残基単位、下記一般式(7)で示されるアクリル酸アミド残基単位、下記一般式(8)で示されるメタクリル酸アミド残基単位からなる群より選ばれる残基単位5〜40モル%、および一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位30〜90モル%を含むものであることがさらに好ましい。
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
(式中、R、R10、R11、R12はそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、アルキレン基またはエーテル基を示す。)
本発明において、一般式(5)で示されるアクリル酸エステル残基単位、一般式(6)で示されるメタクリル酸エステル残基単位、一般式(7)で示されるアクリル酸アミド残基単位、一般式(8)で示されるメタクリル酸アミド残基単位からなる群より選ばれる残基単位が5モル%より大きい場合、より相溶性に優れる樹脂となる。そして、これらの群より選ばれる残基単位が5〜40モル%である場合、位相差特性の発現が高く、かつ、より相溶性に優れる樹脂となるものである。また、本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体がこれらの群より選ばれる残基単位を含む場合において、一般式(4)で示されるフマル酸ジエステル残基単位が5モル%より大きい場合、より重合性に優れる樹脂となるものである。
【0045】
本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体が一般式(5)で示されるアクリル酸エステル残基単位、一般式(6)で示されるメタクリル酸エステル残基単位、一般式(7)で示されるアクリル酸アミド残基単位、一般式(8)で示されるメタクリル酸アミド残基単位からなる群より選ばれる残基単位を含む場合、アクリル酸エステル残基単位、メタクリル酸エステル残基単位、アクリル酸アミド残基単位またはメタクリル酸アミド残基単位のエステル置換基の一部であるR9、10、11、12は炭素数1〜12のアルキル基、アルキレン基またはエーテル基であり、例えば、メチル(メチレン)基、エチル(エチレン)基、プロピル(プロピレン)基、イソプロピル(イソプロピレン)基、s−ブチル(s−ブチレン)基、t−ブチル(t−ブチレン)基、s−ペンチル(s−ペンチレン)基、t−ペンチル(t−ペンチレン)基、s−ヘキシル(s−ヘキシレン)基、t−ヘキシル(t−ヘキシレン)基、2−エチルヘキシル(2−エチルヘキシレン)基、シクロプロピル(シクロプロピレン)基、シクロペンチル(シクロプロペンチレン)基、シクロヘキシル(シクロヘキシレン)基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、s−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、s−ブトキシエチル基、t−ブトキシエチル基等が挙げられる。
【0046】
ケイ皮酸エステル共重合体は、フマル酸ジエステル残基単位5〜85モル%、一般式(5)で示されるアクリル酸エステル残基単位、一般式(6)で示されるメタクリル酸エステル残基単位、一般式(7)で示されるアクリル酸アミド残基単位、一般式(8)で示されるメタクリル酸アミド残基単位からなる群より選ばれる残基単位5〜40モル%、およびアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%の割合で含む合計単量体を100モル%として、ケイ皮酸エステル類と共重合可能な単量体の残基単位0〜20モル%を含んでいてもよい。
【0047】
ケイ皮酸エステル類と共重合可能な単量体の残基単位としては、例えば、スチレン残基、α−メチルスチレン残基などのスチレン類残基;アクリル酸残基;アクリル酸メチル残基、アクリル酸エチル残基、アクリル酸ブチル残基などのアクリル酸エステル類残基;メタクリル酸残基;メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸エチル残基、メタクリル酸ブチル残基などのメタクリル酸エステル類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基などのビニルエステル類残基;メチルビニルエ−テル残基、エチルビニルエ−テル残基、ブチルビニルエ−テル残基などのビニルエ−テル残基;N−メチルマレイミド残基、N−シクロヘキシルマレイミド残基、N−フェニルマレイミド残基などのN−置換マレイミド残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;ケイ皮酸メチル残基、ケイ皮酸エチル残基、ケイ皮酸イソプロピル残基、ケイ皮酸−n−プロピル残基、ケイ皮酸−n−ブチル残基、ケイ皮酸−s−ブチル残基、ケイ皮酸−t−ブチル残基などのケイ皮酸エステル残基;ケイ皮酸残基;エチレン残基、プロピレン残基などのオレフィン類残基;ビニルピロリドン残基;ビニルピリジン残基等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0048】
ケイ皮酸エステル共重合体は、特に機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パ−ミエイション・クロマトグラフィ−(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10〜5×10のものであることが好ましく、5×10〜2×10であることがさらに好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物におけるセルロ−ス系樹脂とケイ皮酸エステル共重合体の組成の割合は、セルロ−ス系樹脂30〜99重量%およびケイ皮酸エステル共重合体1〜70重量%である。セルロ−ス系樹脂が30重量%未満の場合(ケイ皮酸エステル共重合体が70重量%を超える場合)、またはセルロ−ス系樹脂が99重量%を超える場合(ケイ皮酸エステル共重合体が1重量%未満の場合)は、位相差の制御が困難である。好ましくは、セルロ−ス系樹脂30〜90重量%およびケイ皮酸エステル共重合体10〜70重量%であり、さらに好ましくはセルロ−ス系樹脂40〜80重量%およびケイ皮酸エステル共重合体20〜60重量%である。
【0050】
ケイ皮酸エステル共重合体の製造方法としては、該ケイ皮酸エステル共重合体が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよい。
【0051】
本発明において、ケイ皮酸エステル共重合体がフマル酸ジエステル残基単位及びフマル酸モノエステル残基単位を含む場合、ケイ皮酸エステル共重合体の製造方法としては、例えば、フマル酸モノエステル類とフマル酸ジエステル類とアルコキシケイ皮酸エステル類、場合によってはフマル酸モノエステル類、フマル酸ジエステル類およびアルコキシケイ皮酸エステル類と共重合可能な単量体を併用し、ラジカル重合を行うことにより製造することができる。この際の該フマル酸モノエステル類としては、例えば、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノ−n−プロピル、フマル酸モノイソプロピル、フマル酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノ−s−ブチル、フマル酸モノ−t−ブチル、フマル酸モノ−s−ペンチル、フマル酸モノ−t−ペンチル、フマル酸モノ−s−ヘキシル、フマル酸モノ−t−ヘキシル、フマル酸モノ−2−エチルヘキシル、フマル酸モノシクロプロピル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル等が挙げられ、該フマル酸ジエステル類としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−プロピル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−s−ブチル、フマル酸ジ−t−ブチル、フマル酸ジ−s−ペンチル、フマル酸ジ−t−ペンチル、フマル酸ジ−s−ヘキシル、フマル酸ジ−t−ヘキシル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジシクロプロピル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル等が挙げられ、該アルコキシケイ皮酸エステル類としては、例えば、4−メトキシケイ皮酸メチル、4−メトキシケイ皮酸エチル、4−メトキシケイ皮酸イソプロピル、4−メトキシケイ皮酸n−プロピル、4−メトキシケイ皮酸n−ブチル、4−メトキシケイ皮酸sec−ブチル、4−メトキシケイ皮酸tert−ブチル、4−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−エトキシケイ皮酸メチル、4−エトキシケイ皮酸エチル、4−エトキシケイ皮酸イソプロピル、4−エトキシケイ皮酸n−プロピル、4−エトキシケイ皮酸n−ブチル、4−エトキシケイ皮酸sec−ブチル、4−エトキシケイ皮酸tert−ブチル、4−エトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−イソプロポキシケイ皮酸メチル、4−イソプロポキシケイ皮酸エチル、4−イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル、4−イソプロポキシケイ皮酸n−プロピル、4−イソプロポキシケイ皮酸n−ブチル、4−イソプロポキシケイ皮酸sec−ブチル、4−イソプロポキシケイ皮酸tert−ブチル、4−イソプロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−n−プロポキシケイ皮酸メチル、4−n−プロポキシケイ皮酸エチル、4−n−プロポキシケイ皮酸イソプロピル、4−n−プロポキシケイ皮酸n−プロピル、4−n−プロポキシケイ皮酸n−ブチル、4−n−プロポキシケイ皮酸sec−ブチル、4−n−プロポキシケイ皮酸tert−ブチル、4−n−プロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−n−ブトキシケイ皮酸メチル、4−n−ブトキシケイ皮酸エチル、4−n−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、4−n−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、4−n−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、4−n−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、4−n−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、4−n−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−sec−ブトキシケイ皮酸メチル、4−sec−ブトキシケイ皮酸エチル、4−sec−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、4−sec−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、4−sec−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、4−sec−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、4−sec−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、4−sec−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−tert−ブトキシケイ皮酸メチル、4−tert−ブトキシケイ皮酸エチル、4−tert−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、4−tert−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、4−tert−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、4−tert−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、4−tert−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、4−tert−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、3−メトキシケイ皮酸メチル、3−メトキシケイ皮酸エチル、3−メトキシケイ皮酸イソプロピル、3−メトキシケイ皮酸n−プロピル、3−メトキシケイ皮酸n−ブチル、3−メトキシケイ皮酸sec−ブチル、3−メトキシケイ皮酸tert−ブチル、3−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、3−エトキシケイ皮酸メチル、3−エトキシケイ皮酸エチル、3−エトキシケイ皮酸イソプロピル、3−エトキシケイ皮酸n−プロピル、3−エトキシケイ皮酸n−ブチル、3−エトキシケイ皮酸sec−ブチル、3−エトキシケイ皮酸tert−ブチル、3−エトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、3−イソプロポキシケイ皮酸メチル、3−イソプロポキシケイ皮酸エチル、3−イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル、3−イソプロポキシケイ皮酸n−プロピル、3−イソプロポキシケイ皮酸n−ブチル、3−イソプロポキシケイ皮酸sec−ブチル、3−イソプロポキシケイ皮酸tert−ブチル、3−イソプロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、3−n−プロポキシケイ皮酸メチル、3−n−プロポキシケイ皮酸エチル、3−n−プロポキシケイ皮酸イソプロピル、3−n−プロポキシケイ皮酸n−プロピル、3−n−プロポキシケイ皮酸n−ブチル、3−n−プロポキシケイ皮酸sec−ブチル、3−n−プロポキシケイ皮酸tert−ブチル、3−n−プロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、3−n−ブトキシケイ皮酸メチル、3−n−ブトキシケイ皮酸エチル、3−n−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、3−n−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、3−n−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、3−n−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、3−n−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、3−n−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、3−sec−ブトキシケイ皮酸メチル、3−sec−ブトキシケイ皮酸エチル、3−sec−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、3−sec−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、3−sec−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、3−sec−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、3−sec−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、3−sec−ブトキシケイ皮酸3−エチルヘキシル、3−tert−ブトキシケイ皮酸メチル、3−tert−ブトキシケイ皮酸エチル、3−tert−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、3−tert−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、3−tert−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、3−tert−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、3−tert−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、3−tert−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−メトキシケイ皮酸メチル、2−メトキシケイ皮酸エチル、2−メトキシケイ皮酸イソプロピル、2−メトキシケイ皮酸n−プロピル、2−メトキシケイ皮酸n−ブチル、2−メトキシケイ皮酸sec−ブチル、2−メトキシケイ皮酸tert−ブチル、2−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−エトキシケイ皮酸メチル、2−エトキシケイ皮酸エチル、2−エトキシケイ皮酸イソプロピル、2−エトキシケイ皮酸n−プロピル、2−エトキシケイ皮酸n−ブチル、2−エトキシケイ皮酸sec−ブチル、2−エトキシケイ皮酸tert−ブチル、2−エトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−イソプロポキシケイ皮酸メチル、2−イソプロポキシケイ皮酸エチル、2−イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル、2−イソプロポキシケイ皮酸n−プロピル、2−イソプロポキシケイ皮酸n−ブチル、2−イソプロポキシケイ皮酸sec−ブチル、2−イソプロポキシケイ皮酸tert−ブチル、2−イソプロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−n−プロポキシケイ皮酸メチル、2−n−プロポキシケイ皮酸エチル、2−n−プロポキシケイ皮酸イソプロピル、2−n−プロポキシケイ皮酸n−プロピル、2−n−プロポキシケイ皮酸n−ブチル、2−n−プロポキシケイ皮酸sec−ブチル、2−n−プロポキシケイ皮酸tert−ブチル、2−n−プロポキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−n−ブトキシケイ皮酸メチル、2−n−ブトキシケイ皮酸エチル、2−n−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、2−n−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、2−n−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、2−n−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、2−n−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、2−n−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−sec−ブトキシケイ皮酸メチル、2−sec−ブトキシケイ皮酸エチル、2−sec−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、2−sec−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、2−sec−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、2−sec−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、2−sec−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、2−sec−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−tert−ブトキシケイ皮酸メチル、2−tert−ブトキシケイ皮酸エチル、2−tert−ブトキシケイ皮酸イソプロピル、2−tert−ブトキシケイ皮酸n−プロピル、2−tert−ブトキシケイ皮酸n−ブチル、2−tert−ブトキシケイ皮酸sec−ブチル、2−tert−ブトキシケイ皮酸tert−ブチル、2−tert−ブトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。フマル酸モノエステル類、フマル酸ジエステル類およびアルコキシケイ皮酸エステル類と共重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、ブチルビニルエ−テルなどのビニルエ−テル;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸イソプロピル、ケイ皮酸−n−プロピル、ケイ皮酸−n−ブチル、ケイ皮酸−s−ブチル、ケイ皮酸−t−ブチルなどのケイ皮酸エステル;ケイ皮酸;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;ビニルピロリドン;ビニルピリジン等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0052】
ラジカル重合の方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法等のいずれもが採用可能である。
【0053】
ラジカル重合を行う際の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパ−オキサイド、ラウリルパ−オキサイド、オクタノイルパ−オキサイド、アセチルパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキサイド、t−ブチルクミルパ−オキサイド、ジクミルパ−オキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパ−オキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレ−ト、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0054】
そして、溶液重合法または沈殿重合法において使用可能な溶媒として特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノ−ル、エタノ−ル、プロピルアルコ−ル、ブチルアルコ−ルなどのアルコ−ル系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル等が挙げられ、これらの混合溶媒をも挙げられる。
【0055】
また、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には30〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、熱安定性を向上させるために酸化防止剤を含有していても良い。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、耐候性を高めるためヒンダ−ドアミン系光安定剤や紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾ−ル、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエ−ト等が挙げられる。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、いわゆる可塑剤として知られる化合物を、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、レタ−デ−ション調整等の目的で添加してもよく、可塑剤としては、例えば、リン酸エステルやカルボン酸エステル等が挙げられる。また、アクリル系ポリマ−なども用いられる。リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェ−ト、トリクレジルホスフェ−ト、フェニルジフェニルホスフェ−ト等を挙げることが出来る。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレ−ト、ジエチルフタレ−ト、ジシクロヘキシルフタレ−ト、ジオクチルフタレ−ト及びジエチルヘキシルフタレ−ト等、またクエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチル等を挙げることが出来る。またその他、オレイン酸ブチル、リシノ−ル酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロ−ルプロパントリベンゾエ−ト等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレ−トもこの目的で用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレ−トのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレ−トとしては、メチルフタリルメチルグリコレ−ト、エチルフタリルエチルグリコレ−ト、プロピルフタリルプロピルグリコレ−ト、ブチルフタリルブチルグリコレ−ト、オクチルフタリルオクチルグリコレ−ト、メチルフタリルエチルグリコレ−ト、エチルフタリルメチルグリコレ−ト、エチルフタリルプロピルグリコレ−ト、プロピルフタリルエチルグリコレ−ト、メチルフタリルプロピルグリコレ−ト、メチルフタリルブチルグリコレ−ト、エチルフタリルブチルグリコレ−ト、ブチルフタリルメチルグリコレ−ト、ブチルフタリルエチルグリコレ−ト、プロピルフタリルブチルグリコレ−ト、ブチルフタリルプロピルグリコレ−ト、メチルフタリルオクチルグリコレ−ト、エチルフタリルオクチルグリコレ−ト、オクチルフタリルメチルグリコレ−ト、オクチルフタリルエチルグリコレ−ト等を挙げることが出来る。これら可塑剤を2種以上混合して使用してもよい。
【0059】
本発明の樹脂組成物は位相差を調整する目的で、芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤を含有していてもよい。位相差を調整する目的で使用される添加剤の下記式(A)で示される複屈折Δnについては、特に制限はないが、光学特性に優れた光学補償フィルムとなることから、好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.05〜0.5、特に好ましくは0.1〜0.5である。添加剤のΔnは分子軌道計算によって求めることができる。
【0060】
Δn=ny−nx (A)
(式中、nxは添加剤分子の進相軸方向の屈折率を示し、nyは添加剤分子の遅相軸方向の屈折率を示す。)
本発明の樹脂組成物に芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤が含有される場合、本発明の樹脂組成物における芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤は、芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環の分子内の個数については、特に制限はないが、光学特性に優れた光学補償フィルムとなることから、好ましくは1〜12個であり、さらに好ましくは1〜8個である。芳香族炭化水素環としては、例えば、5員環、6員環、7員環または二つ以上の芳香族環からなる縮合環等が挙げられ、芳香族性ヘテロ環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロ−ル環、オキサゾ−ル環、チアゾ−ル環、イミダゾ−ル環、トリアゾ−ル環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、1,3,5−トリアジン環等が挙げられる。
【0061】
芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、エ−テル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられる。
【0062】
本発明で用いられる芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤としては、例えば、トリクレジルホスフェ−ト、トリキシレニルホスフェ−ト、トリフェニルホスフェ−ト、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェ−ト、クレジルジフェニルホスフェ−ト、ビスフェノ−ルAビス(ジフェニルホスフェ−ト)等のリン酸エステル系化合物;ジメチルフタレ−ト、ジエチルフタレ−ト、ジブチルフタレ−ト、ジヘキシルフタレ−ト、ジノルマルオクチルフタレ−ト、2−エチルヘキシルフタレ−ト、ジイソオクチルフタレ−ト、ジカプリルフタレ−ト、ジノニルフタレ−ト、ジイソノニルフタレ−ト、ジデシルフタレ−ト、ジイソデシルフタレ−ト等のフタル酸エステル系化合物;トリブチルトリメリテ−ト、トリ−ノルマルヘキシルトリメリテ−ト、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテ−ト、トリ−ノルマルオクチルトリメリテ−ト、トリ−イソクチルトリメリテ−ト、トリ−イソデシルトリメリテ−ト等のトリメリット酸エステル系化合物;トリ(2−エチルヘキシル)ピロメリテ−ト、テトラブチルピロメリテ−ト、テトラ−ノルマルヘキシルピロメリテ−ト、テトラ(2−エチルヘキシル)ピロメリテ−ト、テトラ−ノルマルオクチルピロメリテ−ト、テトラ−イソクチルピロメリテ−ト、テトラ−イソデシルピロメリテ−ト等のピロメリット酸エステル系化合物;安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル等の安息香酸エステル系化合物;フェニルサリシレ−ト、p−オクチルフェニルサリシレ−ト、p−tert−ブチルフェニルサリシレ−ト等のサリチル酸エステル系化合物;メチルフタリルエチルグリコレ−ト、エチルフタリルエチルグリコレ−ト、ブチルフタリルブチルグリコレ−ト等のグリコ−ル酸エステル系化合物;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル等のベンゾトリアゾ−ル系化合物;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、N−ベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド系化合物、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系化合物等が挙げられ、樹脂との相溶性の点から、好ましくはトリクレジルホスフェ−ト、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェ−ト、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられ、これらは必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
本発明の樹脂組成物に芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤が含有される場合、光学特性及び機械的特性の観点から、好ましくは本発明の樹脂組成物における芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤の割合は0.01〜30重量%であり(上記の樹脂成分:70〜99.99重量%)、さらに好ましくは0.01〜20重量%、特に好ましくは0.01〜15重量%である。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、発明の主旨を超えない範囲で、その他ポリマ−、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含有していてもよい。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、セルロ−ス系樹脂とケイ皮酸エステル共重合体をブレンドすることにより得ることができる。
【0066】
ブレンドの方法としては、溶融ブレンド、溶液ブレンド等の方法を用いることができる。芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤が本発明の樹脂組成物に含有される場合における溶融ブレンド法とは、加熱により樹脂と芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤を溶融させて混練することにより製造する方法である。溶液ブレンド法とは樹脂と芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤を溶剤に溶解しブレンドする方法である。溶液ブレンドに用いる溶剤としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルムなどの塩素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル等のアルコ−ル溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエ−テル溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を用いることができる。各樹脂および芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤を溶剤に溶解したのちブレンドすることも可能であり、各樹脂の粉体、ペレット等を混練後、溶剤に溶解させることも可能である。得られたブレンド樹脂溶液を貧溶剤に投入し、樹脂組成物を析出させることも可能であり、またブレンド樹脂溶液のまま光学補償フィルムの製造に用いることも可能である。
【0067】
本発明の樹脂組成物を用いた光学補償フィルムは、フィルムの取扱い性及び光学部材の薄膜化への適合性の観点から、厚みが5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、20〜80μmが特に好ましく、20〜60μmがもっとも好ましい。
【0068】
本発明の樹脂組成物を用いた光学補償フィルムの位相差特性は、目的とする光学補償フィルムにより異なるものであり、例えば、1)下記式(1)で示される面内位相差(Re)が好ましくは80〜300nm、さらに好ましくは100〜300nm、特に好ましくは100〜280nmであって、下記式(2)で示されるNz係数が好ましくは0.35〜0.65、さらに好ましくは0.45〜0.55であるもの、2)面内位相差(Re)が好ましくは50〜200nm、さらに好ましくは80〜160nmであって、Nz係数が好ましくは−0.2〜0.2、さらに好ましくは−0.1〜0.1であるもの、3)面内位相差(Re)が好ましくは0〜20nm、さらに好ましくは0〜5nm、下記式(3)で示される面外位相差(Rth)が好ましくは−150〜20nm、さらに好ましくは−150〜10nm、特に好ましくは−120〜0nmであるもの等が挙げられる。このときの位相差特性は全自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名KOBRA−21ADH)を用い、測定波長589nmの条件で測定されるものである。
【0069】
これらは、従来のセルロ−ス系樹脂からなる光学補償フィルムでは発現が困難な位相差特性を有している。
【0070】
Re=(ny−nx)×d (1)
Nz=(ny−nz)/(ny−nx) (2)
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d (3)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
本発明の光学フィルムの波長分散特性としては、色ずれ抑制のため、好ましくは0.60<Re(450)/Re(550)<1.05であり、さらに好ましくは0.61<Re(450)/Re(550)<1.02であり、特に好ましくは0.61<Re(450)/Re(550)<1.00である。
【0071】
本発明のセルロ−ス系樹脂としてセルロ−スエ−テルを使用した場合、単独では、低波長分散の光学フィルムを提供することができる。このフィルムに、延伸方向に対して負の複屈折性を示すケイ皮酸エステル共重合体をブレンドした樹脂組成物は、一般的に逆波長分散性を示す光学フィルムを提供することができるものである。
【0072】
これらの位相差特性および波長分散特性を同時に満足することは、従来のセルロ−ス系樹脂を用いた光学補償フィルムでは発現が困難であるが、本発明においてセルロ−スエ−テルを用いる場合には、本発明に係る樹脂組成物を用いた光学補償フィルムがこれらの特性を同時に満足するものである。
【0073】
本発明の光学補償フィルムは、必要膜厚を薄くするため、589nmにおけるレタ−デ−ションとフィルム膜厚の比Re(589)(nm)/フィルム膜厚(μm)が4.0nm/μm以上であることが好ましい。
【0074】
本発明の光学補償フィルムは、輝度向上のため、光線透過率が好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0075】
本発明の光学補償フィルムは、コントラスト向上のため、ヘ−ズが好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
【0076】
本発明の樹脂組成物を用いた光学補償フィルムの製造方法としては、本発明の光学補償フィルムの製造が可能であれば如何なる方法を用いてもよいが、光学特性、耐熱性、表面特性などに優れる光学補償フィルムが得られることから、溶液キャスト法により製造することが好ましい。ここで、溶液キャスト法とは、樹脂溶液(一般にはド−プと称する。)を支持基板上に流延した後、加熱することにより溶媒を蒸発させて光学補償フィルムを得る方法である。流延する方法としては、例えば、Tダイ法、ドクタ−ブレ−ド法、バ−コ−タ−法、ロ−ルコ−タ−法、リップコ−タ−法等が用いられ、工業的には、ダイからド−プをベルト状またはドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が一般的に用いられている。また、用いられる支持基板としては、例えば、ガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基板、ポリエチレンテレフタレ−ト等のプラスチック基板などがある。高度に表面性、光学均質性の優れた基板を工業的に連続製膜するには、表面を鏡面仕上げした金属基板が好ましく用いられる。溶液キャスト法において、厚み精度、表面平滑性に優れた光学補償フィルムを製造する際には、樹脂溶液の粘度は極めて重要な因子であり、樹脂溶液の粘度は樹脂の濃度、分子量、溶媒の種類に依存するものである。
【0077】
本発明の樹脂組成物を用いた光学補償フィルムを製造する際の樹脂溶液は、セルロ−ス系樹脂とケイ皮酸エステル共重合体を溶媒に溶解し調製する。樹脂溶液の粘度は、重合体の分子量、重合体の濃度、溶媒の種類で調整可能である。樹脂溶液の粘度としては特に制限はないが、フィルム塗工性をより容易にするため、好ましくは100〜10000cps、さらに好ましくは300〜5000cps、特に好ましくは500〜3000cpsである。
【0078】
本発明の樹脂組成物を用いた光学補償フィルムの製造方法としては、例えば、樹脂成分として下記一般式(1)で示されるセルロ−ス系樹脂30〜99重量%、および下記一般式(2)で示されるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位10〜90モル%を含むケイ皮酸エステル共重合体1〜70重量%を含有する樹脂組成物を溶剤に溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストし、乾燥後、基材より剥離することが挙げられる。
【0079】
【化9】
【0080】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12の置換基を示す。)
【0081】
【化10】
【0082】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
本発明の樹脂組成物を用いて得られた光学補償フィルムは、面内位相差(Re)を発現するために一軸延伸またはアンバランス二軸延伸することが好ましい。光学補償フィルムを延伸する方法としては、ロ−ル延伸による縦一軸延伸法やテンタ−延伸による横一軸延伸法、これらの組み合わせによるアンバランス逐次二軸延伸法やアンバランス同時二軸延伸法等を用いることができる。また本発明では、熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に延伸を行う特殊延伸法を用いずに位相差特性を発現させることができる。
【0083】
延伸する際の光学補償フィルムの厚みは、延伸処理のし易さおよび光学部材の薄膜化への適合性の観点から、10〜200μmが好ましく、30〜150μmがさらに好ましく、30〜100μmが特に好ましい。
【0084】
延伸の温度は特に制限はないが、良好な位相差特性が得られることから、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは100〜180℃である。一軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、良好な位相差特性が得られることから、1.05〜4.0倍が好ましく、1.1〜3.5倍がさらに好ましい。アンバランス二軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、光学特性に優れた光学補償フィルムとなることから長さ方向には1.05〜4.0倍が好ましく、1.1〜3.5倍がさらに好ましく、光学特性に優れた光学補償フィルムとなることから、幅方向には1.01〜1.2倍が好ましく、1.05〜1.1倍がさらに好ましい。延伸温度、延伸倍率により面内位相差(Re)を制御することができる。
【0085】
本発明の樹脂組成物を用いた光学補償フィルムは、必要に応じて他樹脂を含むフィルムと積層することができる。他樹脂としては、例えば、ポリエ−テルサルフォン、ポリアリレ−ト、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリナフタレンテレフタレ−ト、ポリカ−ボネ−ト、環状ポリオレフィン、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド等が挙げられる。また、ハ−ドコ−ト層やガスバリア層を積層することも可能である。
【発明の効果】
【0086】
本発明の樹脂組成物を用いた光学補償フィルムは、薄膜で特定の位相差特性を示すことから、液晶ディスプレイ用光学補償フィルムや反射防止用フィルムとして有用である。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
【0089】
<重合体の解析>
重合体の構造解析は核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名:JNM−GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)スペクトル分析より求めた。
【0090】
重合体がフマル酸モノエステル残基単位を含む場合において、H−NMRスペクトル分析より組成比解析が困難な場合はJIS K 2501(2003版)石油製品及び潤滑油−中和価試験方法に則ってフマル酸モノエステル濃度を求めた。
【0091】
<数平均分子量の測定>
ゲル・パ−ミエイション・クロマトグラフィ−(GPC)装置(東ソ−製、商品名:C0−8011(カラムGMHHR−Hを装着))を用い、テトラヒドロフラン、またはジメチルホルムアミドを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0092】
<光学補償フィルムの光線透過率およびヘ−ズの測定>
作成したフィルムの光線透過率およびヘ−ズは、ヘ−ズメ−タ−(日本電色工業製、商品名:NDH2000)を使用し、光線透過率の測定はJIS K 7361−1(1997版)に、ヘ−ズの測定はJIS−K 7136(2000年版)に、それぞれ準拠して測定した。
【0093】
<位相差特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器製、商品名:KOBRA−WR)を用いて波長589nmの光を用いて光学補償フィルムの位相差特性を測定した。
【0094】
<波長分散特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器製、商品名:KOBRA−WR)を用い、波長450nmの光による位相差Re(450)と波長550nmの光による位相差Re(550)の比として光学補償フィルムの波長分散特性を測定した。
【0095】
合成例1
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸モノエチル12g、4−メトキシケイ皮酸エチル37gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.40gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=50/50(重量%/重量%)2kg中に滴下して析出、メタノール/水=50/50(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フフマル酸モノエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体23gを得た。得られた重合体の数平均分子量は31,000、フマル酸モノエチル残基単位40モル%、4−メトキシケイ皮酸エチル残基単位60モル%であった。
【0096】
合成例2
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸モノエチル6.3g、フマル酸ジイソプロピル15g、4−エトキシケイ皮酸メチル29gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.48gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kg中に滴下して析出、メタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−エトキシケイ皮酸メチル共重合体31gを得た。得られた重合体の数平均分子量は38,000、フマル酸モノエチル残基単位22モル%、フマル酸ジイソプロピル残基単位40モル%、4−エトキシケイ皮酸メチル残基単位38モル%であった。
【0097】
合成例3
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸モノイソプロピル4.3g、フマル酸ジエチル13g、4−メトキシケイ皮酸イソプロピル33gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.46gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、10時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=60/40(重量%/重量%)中に滴下して析出、メタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸モノイソプロピル/フマル酸ジエチル/4−メトキシケイ皮酸イソプロピル共重合体29gを得た。得られた重合体の数平均分子量は33,000、フマル酸モノイソプロピル残基単位16モル%、フマル酸ジエチル残基単位41モル%、4−メトキシケイ皮酸イソプロピル残基単位43モル%であった。
【0098】
合成例4
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸モノエチル1.0g、フマル酸ジエチル11g、4−メトキシケイ皮酸エチル39gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.43gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、10時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=60/40(重量%/重量%)中に滴下して析出、メタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸モノエチル/フマル酸ジエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体27gを得た。得られた重合体の数平均分子量は33,000、フマル酸モノエチル残基単位4.5モル%、フマル酸ジエチル残基単位35.5モル%、4−メトキシケイ皮酸エチル残基単位60モル%であった。
【0099】
合成例5
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸モノエチル5.0g、フマル酸ジイソプロピル38g、4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル7.3gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.46gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=70/30(重量%/重量%)中に滴下して析出、メタノール/水=70/30(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル共重合体24gを得た。得られた重合体の数平均分子量は31,000、フマル酸モノエチル残基単位13モル%、フマル酸ジイソプロピル残基単位72モル%、4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル残基単位15モル%であった。
【0100】
合成例6
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸モノエチル1.6g、フマル酸ジイソプロピル4.8g、4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル44gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.18gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、60時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をヘキサン中に滴下して析出、ヘキサン2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル共重合体11gを得た。得られた重合体の数平均分子量は36,000、フマル酸モノエチル残基単位7モル%、フマル酸ジイソプロピル残基単位11モル%、4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル残基単位82モル%であった。
【0101】
合成例7
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル10g、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド5.0g、4−メトキシケイ皮酸エチル35gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.44gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kg中に滴下して析出、メタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体24gを得た。得られた重合体の数平均分子量は24,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位35モル%、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド残基単位15モル%、4−メトキシケイ皮酸エチル残基単位50モル%であった。
【0102】
合成例8
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジエチル9.3g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3.7g、4−メトキシケイ皮酸エチル37gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.52gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kg中に滴下して析出、メタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジエチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体22gを得た。得られた重合体の数平均分子量は22,000、フマル酸ジエチル残基単位36モル%、アクリル酸2−ヒドロキシエチル残基単位14モル%、4−メトキシケイ皮酸エチル残基単位50モル%であった。
【0103】
合成例9
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル23g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2.3g、4−メトキシケイ皮酸エチル25gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.50gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kg中に滴下して析出、メタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体29gを得た。得られた重合体の数平均分子量は36,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位58モル%、アクリル酸2−ヒドロキシエチル残基単位10モル%、4−メトキシケイ皮酸エチル残基単位32モル%であった。
【0104】
合成例10
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル18g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.30g、4−メトキシケイ皮酸エチル32.0gおよび重合開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン1.45gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン50gで溶解させた。このポリマー溶液をメタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kg中に滴下して析出、メタノール/水=60/40(重量%/重量%)2kgで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体27gを得た。得られた重合体の数平均分子量は37,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位57モル%、アクリル酸2−ヒドロキシエチル残基単位3モル%、4−メトキシケイ皮酸エチル残基単位40%モルであった。
【0105】
実施例1
セルロース系樹脂としてエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)105g、合成例1により得られたフマル酸モノエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体45gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:70重量%、フマル酸モノエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:30重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。
【0106】
得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0109】
実施例2
実施例1で用いたエチルセルロース105g、合成例2により得られたフマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−エトキシケイ皮酸メチル共重合体45gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:70重量%、フマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−エトキシケイ皮酸メチル共重合体:30重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0110】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0111】
実施例3
実施例1で用いたエチルセルロース97g、合成例3により得られたフマル酸モノイソプロピル/フマル酸ジエチル/4−メトキシケイ皮酸イソプロピル共重合体53gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:65重量%、フマル酸モノイソプロピル/フマル酸ジエチル/4−メトキシケイ皮酸イソプロピル共重合体:35重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0112】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0113】
実施例4
実施例1で用いたエチルセルロース105g、合成例4により得られたフマル酸モノエチル/フマル酸ジエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体45gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:70重量%、フマル酸モノエチル/フマル酸ジエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:30重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0114】
得られた光学補償フィルムは、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった
実施例5
実施例1で用いたエチルセルロース92g、合成例5により得られたフマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル58gをトルエン:アセトン=95:5(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度60℃の後140℃にて2段乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:重量60%、フマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル共重合体:重量40%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0115】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0116】
実施例6
実施例1で用いたエチルセルロース112g、合成例6により得られたフマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル38gをトルエン:アセトン=90:10(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度60℃にて乾燥した後140℃にて2段乾燥後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:重量%、フマル酸モノエチル/フマル酸ジイソプロピル/4−メトキシケイ皮酸n‐プロピル共重合体:重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0117】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0118】
実施例7
実施例1で用いたエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)97g、合成例7により得られたフマル酸ジイソプロピル/N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体53gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:65重量%、フマル酸ジイソプロピル/N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:35重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。
【0119】
得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0120】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0121】
実施例8
実施例1で用いたエチルセルロース97g、合成例8により得られたフマル酸ジエチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体53gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:65重量%、フマル酸ジエチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:35重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0122】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0123】
実施例9
実施例1で用いたエチルセルロース90g、合成例9により得られたフマル酸ジイソプロピル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体60gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:60重量%、フマル酸ジイソプロピル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:40重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0124】
得られた光学補償フィルムは、光線透過率が高く透明性に優れる、ヘーズが小さい、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0125】
実施例10
実施例1で用いたエチルセルロース97g、合成例10により得られたフマル酸ジイソプロピル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体53gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:65重量%、フマル酸ジイソプロピル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:35重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0126】
得られた光学補償フィルムは、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有するものであった。
【0127】
比較例1
実施例1で用いたエチルセルロース150gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持体に流延し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で1.4倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に示す。
【0128】
得られたフィルムは、厚み方向の面外位相差(Rth)が大きく目的とする光学特性を有していなかった。
【0129】
【表2】
【0130】
比較例2
実施例1で用いたフマル酸モノエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体180gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持体に流延し乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mm、厚み40μmのフィルム(樹脂組成物)を得た。得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0131】
得られたフィルムは、厚み方向の面外位相差(Rth)が小さく目的とする光学特性を有していなかった。
【0132】
比較例3
実施例7で用いたフマル酸ジイソプロピル/N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体180gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持体に流延し乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mm、厚み40μmのフィルム(樹脂組成物)を得た。得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0133】
得られたフィルムは、厚み方向の面外位相差(Rth)が小さく目的とする光学特性を有していなかった。
【0134】
比較例4
実施例1で用いたエチルセルロース30g、合成例1により得られたフマル酸モノエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体120gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持体に流延し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:20重量%、フマル酸モノエチル/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:80重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0135】
得られたフィルムは、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有していなかった。
【0136】
比較例5
実施例1で用いたエチルセルロース30g、合成例7により得られたフマル酸ジイソプロピル/N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体120gを塩化メチレン:アセトン=8:2(重量比)に溶解して18重量%の樹脂溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持体に流延し、乾燥温度25℃にて乾燥した後、幅150mmの光学補償フィルム(樹脂組成物)を得た(エチルセルロース:20重量%、フマル酸ジイソプロピル/N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/4−メトキシケイ皮酸エチル共重合体:80重量%)。得られた光学補償フィルムを50mm角に切り出し、150℃で2.0倍に一軸延伸した(延伸後の厚み30μm)。得られた光学補償フィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0137】
得られたフィルムは、面内位相差(Re)およびNz係数が目的とする光学特性を有していなかった。