特許第6048591号(P6048591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048591
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20161212BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20161212BHJP
【FI】
   C01B31/02 101F
   B82Y30/00ZNM
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-545339(P2015-545339)
(86)(22)【出願日】2014年10月31日
(86)【国際出願番号】JP2014079655
(87)【国際公開番号】WO2015064772
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-227439(P2013-227439)
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】高井 広和
(72)【発明者】
【氏名】上島 貢
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−173639(JP,A)
【文献】 特開2013−193916(JP,A)
【文献】 特開2012−250862(JP,A)
【文献】 特開2012−213716(JP,A)
【文献】 特開2012−126599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口処理されておらず、吸着等温線から得られるtプロットが上に凸な形状を示し、前記tプロットの屈曲点が0.2≦t(nm)≦1.5の範囲にあることを特徴とするカーボンナノチューブ。
【請求項2】
前記tプロットから得られる全比表面積S1および内部比表面積S2が、0.05≦S2/S1≦0.30を満たす請求項1に記載のカーボンナノチューブ。
【請求項3】
平均外径が2〜5nmである請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する。)は炭素原子のみからなり、直径が0.4〜50nm、長さがおよそ1〜数100μmの一次元性のナノ材料である。その化学構造はグラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので表され、層の数が1枚だけのものを単層カーボンナノチューブという。
【0003】
単層CNTは、比較的大きい比表面積を有することから、物質やエネルギーの貯蔵体、分離膜、電極材料として幅広い応用が期待されている。特許文献1には、先端が開口しているCNTが記載されている。このようなCNTは、先端が開口していないCNTに比べて、比表面積が大きい。
【0004】
また、特許文献2には、酸化によって単層CNTの先端や側壁に穴をあける開口処理を行うことによって、単層CNTの比表面積を増大させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007− 84431号公報
【特許文献2】特開2011−207758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CNTの内部には原子・分子レベルの制限された空間が存在しており、当該空間には、物質を貯蔵等することができる。CNTが、物質やエネルギーの保持性、エネルギー伝達性、およびエネルギー分散性といった諸特性を発揮する上で比表面積が大きいことは重要な要素であるが、CNTの潜在的特性を充分に引き出す観点からは、比表面積が大きいことに加え、CNT内部の活用可能性が高いことが望まれる。
【0007】
CNT内部を活用可能にする方法としては、CNTの先端を開口させる方法と、CNTの側壁を開口させる方法とが挙げられる。しかしながら、特許文献1のように、CNTの先端が開口しているだけでは、CNT内部を有効に活用するには不充分であった。一方、特許文献2の技術では、側壁に細孔を形成することによって、上記物質やエネルギーの保持性等を改善している。側壁の開口は、先端の開口と異なり、CNTにランダムに多数存在させることができるため、物質等のCNT内部へのアクセシビリティーを高めることになり、CNT内部の活用可能性を向上させるのに好ましい。しかしながら、特許文献2の技術では、合成したCNT配向集合体に対して酸化処理等の開口処理が必要であり、多くの手間がかかる。よって、酸化処理等の開口処理が不要で、合成したままの状態で内部を有効に活用できるCNTが求められている。
【0008】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、開口処理を行わずとも合成したままで内部を有効に活用できるカーボンナノチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
CNTの開口の増加は、内部比表面積の増加によって捉えることができる。上記目的を達成すべく本発明者らが鋭意検討したところ、原料ガスを触媒に供給し、化学気相成長法(以下、「CVD法」とも称する。)によってCNTを成長させる方法において、特定の条件を適用することによって、成長後に開口処理を行わずとも、全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、先端は未開口のまま、側壁の開口を多数有するCNTが得られることが見出された。具体的には、面積が400cm以上の基材にウェットプロセスで触媒を形成した触媒基材上に、フォーメーション工程、成長工程、および冷却工程をそれぞれ行うユニットを連結した連続式のCNT製造装置を用いて、CNTを成長させることが重要であった。
【0010】
上記知見に基づき完成した本発明の要旨構成は以下のとおりである。
本発明のカーボンナノチューブは、開口処理されておらず、吸着等温線から得られるtプロットが上に凸な形状を示すことを大きな特徴の1つとする。
【0011】
本発明において、前記tプロットの屈曲点が0.2≦t(nm)≦1.5の範囲にあることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記tプロットから得られる全比表面積S1および内部比表面積S2が、0.05≦S2/S1≦0.30を満たすことが好ましい。
【0013】
本発明において、平均外径が2〜5nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカーボンナノチューブは、開口処理を行わずとも合成したままで内部を有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】表面に細孔を有する試料のtプロットの一例を示すグラフである。
図2】本発明に適用可能なCNT製造装置の構成の一例を示す模式図である。
図3】実施例1のtプロットを示すグラフである。
図4】実施例1のCNTのTEM画像である。
図5】比較例に用いたCNT製造装置の構成を示す模式図である。
図6】比較例のtプロットを示すグラフである。
図7】比較例のCNTのTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明のCNTの実施形態を説明する。本発明のCNTは、触媒層を表面に有する基材(以下、「触媒基材」という。)に原料ガスを供給し、CVD法によって触媒層上にCNTを成長させる方法により製造することができる。この方法では、触媒層上には多数のCNTが触媒基材に略垂直な方向に配向して集合体を形成する。本明細書において、これを「CNT配向集合体」という。そして、このCNT配向集合体をまとめて触媒基材から剥離して得られた物体を、本明細書において「CNT」と称する。
【0017】
本発明のCNTは、開口処理されておらず、吸着等温線から得られるtプロットが上に凸な形状を示すことを大きな特徴の1つとする。当該tプロットは、窒素ガス吸着法により測定されたデータに基づいて得られる。
【0018】
吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象であり、その原因から、物理吸着と化学吸着に分類される。窒素ガス吸着法では、物理吸着を利用する。吸着温度が一定であれば、CNTに吸着する窒素ガス分子の数は、圧力が大きいほど多くなる。横軸に相対圧(吸着平衡状態の圧力Pと飽和蒸気圧P0の比)、縦軸に窒素ガス吸着量をプロットしたものを「等温線」といい、圧力を増加させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「吸着等温線」、圧力を減少させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「脱着等温線」という。
【0019】
前記tプロットは、窒素ガス吸着法により測定された吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得られる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、CNTのtプロットが得られる(de Boerらによるt−プロット法)。
【0020】
表面に細孔を有する試料(CNTに限らない。)の典型的なtプロットを図1に示す。この場合、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)〜(3)の段階に分類される。すなわち、
(1)全表面への窒素分子による単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程を観測することができる。この(1)〜(3)の過程によってtプロットの傾きに変化が生じる。
【0021】
図3は、本発明のCNTのtプロットであるが、そこに示されるように、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となり、上に凸な形状を示す。かかるtプロットの形状は、CNTの全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、CNTの側壁に多数の開口が形成されていることを示している。このようなtプロットの形状を示すCNTは、合成後に酸化処理等の開囗処理を行えば従来も得ることができた。しかし、本発明のCNTは、開口処理を行っていない状態で、上記のようなtプロット形状を示す点が特徴である。なお、本発明のCNTには、その製造時に生じた、先端が開口したCNTが一部含まれていてもよい。
【0022】
本発明のCNTは、tプロットにおいて、その屈曲点が、通常、0.2≦t(nm)≦1.5の範囲にある。当該屈曲点は、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることが好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることがより好ましい。tプロットの屈曲点の位置が上記範囲であると、CNTの側壁の開口の孔径が適度であり、物質等のCNT内部へのアクセシビリティーが高まり、物質やエネルギーの保持性等が向上するので好適である。なお、図1を参照して、t−プロットにおいて、(1)の段階の近似直線Aと、(3)の段階の近似直線Bとの交点を「屈曲点の位置」とする。
【0023】
本発明のCNTは、前記の通り、全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きいものであるが、全比表面積S1および内部比表面積S2の比(S2/S1)としては0.05≦S2/S1≦0.30を満たすのが好ましい。開口処理をしていない従来のCNTの場合、S2/S1は最大で0.04程度であった。しかし、本発明のCNTでは、開口処理をしていない状態で、S2/S1を0.05以上にすることができる。また、S2/S1は大きいほど好ましいが、生産効率を考慮すると上限としては0.30が適度である。
【0024】
本発明のCNTの全比表面積S1および内部比表面積S2は、上記の関係を充足すれば特に限定されないが、個別には、S1は、600〜1800m/gであることが好ましく、800〜1500m/gであることが更に好ましい。S1が600m/g以上であれば、物質やエネルギーの保持性等に優れ好適である。また、生産効率を考慮するとS1の上限としては1800m/gが適度である。一方、S2は、30〜540m/gであることが好ましい。S2が30m/g以上であれば、物質やエネルギーの保持性等に優れ好適である。また、生産効率を考慮するとS2の上限としては540m/gが適度である。
【0025】
本発明のCNTの全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのtプロットから求めることができる。上述の図1に示すtプロットにより説明すると、(1)及び(3)の過程ではそれぞれほぼ直線であるが、まず、(1)での直線の傾きから全比表面積S1を、(3)での直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
【0026】
上記した、本発明のCNTの、吸着等温線の測定、tプロットの作成、およびtプロット解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2の算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)−mini」〔日本ベル(株)製〕を用いて行うことができる。
【0027】
本発明のCNTの平均外径は2〜5nmであることが好ましい。平均外径が2〜5nmであれば、全比表面積S1を大きくできるので好適である。なお、本発明において、「CNTの平均外径」は、透過型電子顕微鏡を用いて任意のCNT50本の外径を測定し、それらの算術平均値と定義する。また、CNTの外径は1〜10nmの範囲内に分布することが好ましい。
【0028】
また、本発明のCNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上であることが好ましく、50以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。10以下であることにより、側壁に開口が形成されることに由来する非晶箇所が多く存在していることを示している。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm−1付近)とDバンド(1350cm−1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性の高いCNTと評価できる。
【0029】
本発明のCNTは、通常、その製造時にCNT配向集合体として得られるが、製造時における高さ(長さ)が100〜5000μmであることが好ましい。
【0030】
本発明のCNTの炭素純度は、精製処理を行わなくても、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上、さらに好ましくは99.9質量%以上である。精製処理を行わない場合には、成長直後での炭素純度が最終品の純度となる。所望により、精製処理を行ってもよい。なお、炭素純度は、蛍光X線を用いた元素分析により求めることができる。
【0031】
次に、本発明のCNTの製造方法を説明する。本発明のCNTは、CVD法において種々の条件を適宜設定することにより得ることができる。特に重要な条件として、(1)面積が400cm以上の基材上にCNTを成長させること、(2)基材上に、ウェットプロセスで触媒を形成すること、(3)フォーメーション工程、成長工程、および冷却工程をそれぞれ行うユニットを連結した連続式のCNT製造装置を用いること、の3点が少なくとも必要である。以下、詳細に説明する。
【0032】
(基材)
触媒基材に用いる基材は、例えば平板状の部材であり、500℃以上の高温でも形状を維持できるものが好ましい。具体的には、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、及びアンチモンなどの金属、並びにこれらの金属を含む合金及び酸化物、又はシリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイト、及びダイヤモンドなどの非金属、並びにセラミックなどが挙げられる。金属材料はシリコン及びセラミックと比較して、低コスト且つ加工が容易であるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金などは好適である。
【0033】
基材の厚さに特に制限はなく、例えば数μm程度の薄膜から数cm程度までのものを用いることができる。好ましくは、0.05mm以上3mm以下である。
【0034】
本発明のCNTを得る観点から、基材の面積は400cm以上とすること、好ましくは2500cm以上とすることが重要である。基材の形状は特に限定されないが、長方形または正方形とすることができる。正方形の場合は、一片の長さは20cm以上、好ましくは50cm以上とする。
【0035】
(触媒)
触媒基材において、基材上(基材上に浸炭防止層を備える場合には当該浸炭防止層の上)には、触媒層が形成されている。触媒としては、CNTの製造が可能であればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、並びに、これらの塩化物及び合金が挙げられる。これらが、さらにアルミニウム、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンと複合化、あるいは層状になっていてもよい。例えば、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、及びアルミナ−鉄−モリブデン薄膜、アルミニウム−鉄薄膜、アルミニウム−鉄−モリブデン薄膜などを例示することができる。触媒の存在量としては、例えば、CNTの製造が可能な範囲であればよく、鉄を用いる場合、製膜厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上2nm以下が特に好ましい。
【0036】
本発明のCNTを得る観点から、基材表面への触媒層の形成はウェットプロセスによることが重要である。ウェットプロセスは、触媒となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解したコーティング剤を基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。コーティング剤には金属有機化合物及び金属塩の縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
【0037】
塗布工程としては、スプレー、ハケ塗り等により塗布する方法、スピンコーティング、ディップコーティング等、いずれの方法を用いてもよいが、生産性および膜厚制御の観点からディップコーティングが好ましい。
【0038】
塗布工程の後に加熱工程を行なうことが好ましい。加熱することで金属有機化合物及び金属塩の加水分解及び縮重合反応が開始され、金属水酸化物及び/又は金属酸化物を含む硬化皮膜が基材表面に形成される。加熱温度はおよそ50℃以上400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。加熱時間は5分以上20分以下が好ましく、15分以下がより好ましい。加熱温度及び加熱時間が上記範囲であれば、触媒層の膜厚の減少を抑えることができる。
【0039】
後述するCNTの成長工程中は、触媒層の焼成が進行して膜厚が減少すると推測される。その結果、触媒層中の触媒微粒子が動きやすい状態となり、CNTの直径の変化、折れ曲がりの頻度が増加し、欠陥(細孔)が多くなり、内部比表面積の大きいCNTが得られる。よって、成長工程より前の段階での触媒層の膜厚減少は極力抑えることが好ましい。
【0040】
例えば、触媒としてアルミナ−鉄薄膜を形成する場合、アルミナ膜を形成した後に鉄薄膜を形成する。
【0041】
アルミナ薄膜を形成するための金属有機化合物としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシドが挙げられる。アルミニウムを含む金属有機化合物としては他に、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)などの錯体が挙げられる。アルミナ薄膜を形成するための金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム等が挙げられる。これらのなかでも、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。これらは、単独あるいは混合物として用いることができる。
【0042】
鉄薄膜を形成するための金属有機化合物としては、例えば、鉄ペンタカルボニル、フェロセン、アセチルアセトン鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(II)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(III)等が挙げられる。鉄薄膜を形成するための金属塩としては、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、乳酸鉄等の有機酸鉄等が挙げられる。これらのなかでも、有機酸鉄を用いることが好ましい。これらは、単独あるいは混合物として用いることができる。
【0043】
安定剤としては、β−ジケトン類及びアルカノールアミン類からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。β−ジケトン類ではアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオルアセトン、フロイルアセトンおよびトリフルオルアセチルアセトンなどがあるが、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルを用いることが好ましい。アルカノールアミン類ではモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどがあるが、第2級又は第3級アルカノールアミンであることが好ましい。
【0044】
有機溶剤としては、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル類、炭化水素類等の種々の有機溶剤が使用できるが、金属有機化合物及び金属塩の溶解性が良いことから、アルコール又はグリコールを用いることが好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが、取り扱い性、保存安定性といった点で好ましい。
【0045】
(フォーメーション工程)
成長工程の前にフォーメーション工程を行なうことが好ましい。フォーメーション工程とは、触媒の周囲環境を還元ガス環境とすると共に、触媒及び還元ガスの少なくとも一方を加熱する工程である。この工程により、触媒の還元、CNTの成長に適合した状態としての触媒の微粒子化促進、触媒の活性向上の少なくとも一つの効果が現れる。例えば、触媒がアルミナ−鉄薄膜である場合、鉄触媒は還元されて微粒子化し、アルミナ層上にナノメートルサイズの鉄微粒子が多数形成される。これにより触媒はCNT配向集合体の製造に好適な状態となる。この工程を省略してもCNTを製造することは可能であるが、この工程を行なうことでCNT配向集合体の製造量及び品質を飛躍的に向上させることができる。
【0046】
還元性を有するガス(還元ガス)としては、CNTの製造が可能なものを用いればよく、例えば水素ガス、アンモニア、水蒸気及びそれらの混合ガスを適用することができる。また、水素ガスをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。還元ガスは、フォーメーション工程で用いてもよく、適宜成長工程に用いてもよい。
【0047】
フォーメーション工程における触媒及び/又は還元ガスの温度は、好ましくは400℃以上1100℃以下である。またフォーメーション工程の時間は、3分以上20分以下が好ましく、3分以上10分以下がより好ましい。これにより、フォーメーション工程中に触媒層の焼成が進行して膜厚が減少するのを抑えることができる。
【0048】
(成長工程)
成長工程とは、触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱することにより、触媒上にCNT配向集合体を成長させる工程である。均一な密度でCNTを成長させる観点からは、少なくとも原料ガスを加熱することが好ましい。加熱の温度は、400℃〜1100℃が好ましい。成長工程では、触媒基材を収容するCNT成長炉内に、原料ガス、不活性ガス、随意に還元ガス及び/又は触媒賦活物質を導入して行う。
【0049】
なお、CNTの製造効率を高める観点からは、還元ガス及び原料ガスをガスシャワーによって触媒基材上の触媒に供給するのが好ましい。
【0050】
<原料ガス>
原料ガスとしては、成長温度において炭素源を含むガス状物質が用いられる。なかでもメタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、プロピレン、及びアセチレンなどの炭化水素が好適である。この他にも、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトン、一酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物でもよい。これらの混合物も使用可能である。
【0051】
<不活性ガス>
原料ガスは不活性ガスで希釈されてもよい。不活性ガスとしては、CNTが成長する温度で不活性であり、且つ成長するCNTと反応しないガスであればよく、触媒の活性を低下させないものが好ましい。例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン及びクリプトンなどの希ガス;窒素;水素;並びにこれらの混合ガスを例示できる。
【0052】
<触媒賦活物質>
CNTの成長工程において、触媒賦活物質を添加してもよい。触媒賦活物質の添加によって、CNTの生産効率や純度をより一層改善することができる。ここで用いる触媒賦活物質としては、一般には酸素を含む物質であり、成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質であることが好ましい。例えば、水、酸素、オゾン、酸性ガス、酸化窒素、一酸化炭素、及び二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物;エタノール、メタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;アルデヒド類;エステル類;並びにこれらの混合物が有効である。この中でも、水、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、およびエーテル類が好ましく、特に水が好適である。
【0053】
触媒賦活物質の体積濃度は、特に限定されないが微量が好ましく、例えば水の場合、炉内への導入ガスにおいて、10〜10000ppm、好ましくは50〜1000ppmとする。
【0054】
<その他の条件>
成長工程における反応炉内の圧力、処理時間は、他の条件を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、圧力は10〜10Pa、処理時間は1〜60分程度をすることができる。
【0055】
(冷却工程)
冷却工程とは、成長工程後にCNT配向集合体、触媒、基材を冷却ガス下に冷却する工程である。成長工程後のCNT配向集合体、触媒、基材は高温状態にあるため、酸素存在環境下に置かれると酸化してしまうおそれがある。それを防ぐために冷却ガス環境下でCNT配向集合体、触媒、基材を例えば400℃以下、さらに好ましくは200℃以下に冷却する。冷却ガスとしては不活性ガスが好ましく、特に安全性、コストなどの点から窒素であることが好ましい。
【0056】
(剥離工程)
単層CNTを基材から剥離する方法としては、物理的、化学的あるいは機械的に基材上から剥離する方法があり、たとえば電場、磁場、遠心力、表面張力を用いて剥離する方法;機械的に直接、基材より剥ぎ取る方法;圧力、熱を用いて基材より剥離する方法などが使用可能である。簡単な剥離法としては、ピンセットで直接基材より、つまみ、剥離させる方法がある。より好適には、カッターブレードなどの薄い刃物を使用して基材より切り離すこともできる。またさらには、真空ポンプ、掃除機を用い、基材上より吸引し、剥ぎ取ることも可能である。また、剥離後、触媒は基材上に残余し、新たにそれを利用して垂直配向した単層CNTを成長させることが可能となる。
【0057】
(製造装置)
本発明のCNTを製造するためのCNT製造装置100を図2に模式的に示す。図2に示すように、製造装置100は、入口パージ部1、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、冷却ユニット4、出口パージ部5、搬送ユニット6、接続部7,8,9、ガス混入防止手段11,12,13を有する。
【0058】
〔入口パージ部1〕
入口パージ部1は、触媒基材10の入口から炉内へ外気が混入することを防止するための装置一式である。製造装置100内に搬送された触媒基材10の周囲環境を窒素などの不活性パージガスで置換する機能を有する。具体的には、パージガスを保持するためのチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部などを有する。
【0059】
〔フォーメーションユニット2〕
フォーメーションユニット2は、フォーメーション工程を実現するための装置一式である。具体的には、還元ガスを保持するためのフォーメーション炉2A、還元ガスを噴射するための還元ガス噴射部2B、並びに触媒及び還元ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター2Cなどを有する。
【0060】
〔成長ユニット3〕
成長ユニット3は、成長工程を実現するための装置一式である。具体的には、成長炉3A、原料ガスを触媒基材10上に噴射するための原料ガス噴射部3B、並びに触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター3Cを含んでいる。成長ユニット3の上部には排気口3Dが設けられている。
【0061】
〔冷却ユニット4〕
冷却ユニット4は、CNT配向集合体が成長した触媒基材10を冷却する冷却工程を実現する装置一式である。具体的には、冷却ガスを保持するための冷却炉4A、水冷式の場合は冷却炉内空間を囲むように配置した水冷冷却管4C、空冷式の場合は冷却炉内に冷却ガスを噴射する冷却ガス噴射部4Bを有する。
【0062】
〔出口パージ部5〕
出口パージ部5は、触媒基材10の出口から炉内へ外気が混入することを防止するための装置一式である。触媒基材10の周囲環境を窒素などの不活性パージガス環境にする機能を有する。具体的には、パージガスを保持するためのチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部などを有する。
【0063】
〔搬送ユニット6〕
搬送ユニット6は、製造装置の炉内に触媒基材10を搬送するための装置一式である。具体的には、ベルトコンベア方式におけるメッシュベルト6A、減速機付き電動モータを用いたベルト駆動部6Bなどを有する。メッシュベルト6Aによる基板の搬送速度は、300mm/min以上とするのが好ましい。300mm/min以上であることにより、フォーメーション工程で基板が速やかに加熱され、フォーメーション工程中に触媒層の焼成が進行して膜厚が減少するのを抑えることができる。
【0064】
〔接続部7,8,9〕
接続部7、8、9は、各ユニットの炉内空間を空間的に接続する装置一式である。具体的には、触媒基材10の周囲環境と外気を遮断し、触媒基材10をユニットからユニットへ通過させることができる炉又はチャンバなどが挙げられる。
【0065】
〔ガス混入防止手段11,12,13〕
ガス混入防止手段11,12,13は、製造装置100内の隣接する炉(フォーメーション炉2A、成長炉3A、冷却炉4A)間でガス同士が相互に混入することを防止するための装置一式であり、接続部7,8,9に設置される。ガス混入防止手段11,12,13は、各炉における触媒基材10の入口及び出口の開口面に沿って窒素等のシールガスを噴出するシールガス噴射部11B,12B,13Bと、主に噴射されたシールガスを外部に排気する排気部11A,12A,13Aとを、それぞれ有する。
【0066】
メッシュベルト6Aに載置された触媒基材10は装置入口から入口パージ部1の炉内へと搬送され、以降、各炉内で処理を受けた後、出口パージ部5から装置出口を介して装置外部に搬送される。
【0067】
(本発明における作用)
上記のような製造方法で本発明のCNTが得られる理由を、本発明者らは以下のように考えている。すなわち、本発明の作用は、フォーメーションユニット内に存在する基材の量に対するフォーメーション工程中に供給するガス量Vsが関係していると推測される。図5のようなバッチ式の小型製造装置では、例えば1cmの基材を積載し、1sLmのガスを供給することから、Vs=1sLm/cmとなる。一方、図2のような大型の連続式製造装置では、例えば15000cmの基材を積載し、150sLmのガスを供給することから、Vs=0.01sLm/cmとなり、前者と比較して1/100程度となる。触媒微粒子が生成されるガス雰囲気の違いから、触媒微粒子の生成状態が異なり、品質の異なるCNTが合成されるものと推測される。
【0068】
また、ウェットプロセスで形成した触媒を用いることにより、触媒微粒子が動きやすい状態となり、欠陥(細孔)の多いCNTが得られると推測される。また、CNTの平均外径が2〜5nmと大きく、直径分布が広いことから、CNTが蜜にパッキングされておらず、折れ曲がりの多いCNTが得られるものと推測される。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。初めに、本実施例における評価方法を説明する。
【0070】
<全比表面積S1、内部比表面積S2>
既述の方法で、合成後に開口処理をしていないCNTの窒素ガス吸着等温線を測定し、tプロットを得た。このtプロットに基づき、既述の方法で全比表面積S1、内部比表面積S2を算出した。
【0071】
<G/D比>
CNT配向集合体を試料とし、顕微レーザラマンシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製NicoletAlmega XR)を用い、基材中心部付近のCNTを測定した。
【0072】
<平均外径および炭素純度>
既述の方法で測定・算出した。
【0073】
<算術平均粗さ>
算術平均粗さRaは、レーザ顕微鏡(キーエンス製VK−9700)を用いて、対物倍率50倍で測定した。
【0074】
〔実施例1〕
(基材)
縦500mm×横500mm、厚さ0.6mmのFe−Cr合金SUS430(JFEスチール株式会社製、Cr:18質量%)の平板を用意した。レーザ顕微鏡を用いて複数個所の表面粗さを測定したところ、算術平均粗さRa≒0.063μmであった。
【0075】
(触媒の形成)
上記の基材上に以下のような方法で触媒を形成した。まず、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを2−プロパノール100mL(78g)に溶解させ、安定剤としてトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、アルミナ膜形成用コーティング剤を作製した。ディップコーティングにより、室温25℃、相対湿度50%の環境下で基材上に上述のアルミナ膜形成用コーティング剤を塗布した。塗布条件としては、基材を浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で基材を引き上げた後、5分間風乾した。次に、300℃の空気環境下で15分間加熱した後、室温まで冷却した。これにより、基材上に膜厚40nmのアルミナ膜を形成した。
【0076】
続いて、酢酸鉄174mgを2−プロパノール100mLに溶解させ、安定剤としてトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、鉄膜コーティング剤を作製した。ディップコーティングにより、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、アルミナ膜が成膜された基材上に鉄膜コーティング剤を塗布した。塗布条件としては、基材を浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度で基材を引き上げた後、5分間風乾した。次に、100℃の空気環境下で、15分加熱した後、室温まで冷却した。これにより、膜厚3nmの触媒生成膜を形成した。
【0077】
(CNT合成)
図2に示すような連続式製造装置で、フォーメーション工程と成長工程を含む工程を連続的に行なうことでCNT配向集合体を製造した。前述の触媒基材を製造装置のメッシュベルト上に載置し、メッシュベルトの搬送速度を一定(360mm/min)にして、基材上にCNT配向集合体を製造した。製造装置の各部の条件は以下のように設定した。
【0078】
【表1】
【0079】
(評価結果)
得られたCNT配向集合体を基材上から剥離して得られたCNTのtプロットを図3に示す。図3から明らかなように、tプロットは、t=0.6nm付近で上に凸な形状で屈曲していた。全比表面積S1、内部比表面積S2、S2/S1、屈曲点のt、および平均外径を表3に示す。また、基材上から剥離したCNTのTEM画像を図4に示す。図4では、CNTの側壁が開口されている箇所が多数観察された。他の特性は、G/D比3.0、外径分布1〜9nm、炭素純度99.9%であった。
【0080】
〔実施例2〕
実施例1で得られたCNT配向集合体を、樹脂製のブレードを用いて基材から剥離した。次に、その基材の表面に炭酸ナトリウムの粉末(和光純薬工業社製)を散布し、水を含ませた不織布で拭き取った後、さらに水を含ませたスポンジで基材表面を拭き取り、水洗浄した。こうして得られた洗浄基材を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒形成とCNT製造を実施した。
【0081】
得られたCNT配向集合体の評価結果を表3にまとめた。他の特性は、G/D比4.0、外径分布1〜8nm、炭素純度99.9%であった。
【0082】
〔比較例1〕
基材として、縦40mm×横40mm、厚さ0.6mmのFe−Cr合金SUS430(JFEスチール株式会社製、Cr18%)の平板を使用した。レーザ顕微鏡を用いて表面粗さを測定したところ、算術平均粗さRa≒0.063μmであった。
【0083】
この基材の表裏両面に、スパッタリング装置を用いて厚さ100nmの二酸化ケイ素膜(浸炭防止層)を製膜した。次いで、表面のみにスパッタリング装置を用いて、厚さ10nmの酸化アルミニウム膜および1.0nmの鉄膜を製膜した。
【0084】
図5に示すようなバッチ式製造装置200でフォーメーション工程と成長工程とを順次行うことでCNT配向集合体を製造した。この装置200は、石英からなる反応炉202と、反応炉202を外囲するように設けられた抵抗発熱コイルからなる加熱器204と、還元ガス及び原料ガスを供給すべく反応炉202の一端に接続されたガス供給口206と、反応炉202の他端に接続された排気口208と、基材を固定する石英からなるホルダー210とを含み構成される。さらに図示していないが、還元ガス及び原料ガスの流量を制御するため、流量制御弁及び圧力制御弁などを含む制御装置を適所に付設してなる。製造条件を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
得られたCNT配向集合体を基材上から剥離して得られたCNTのtプロットを図6に示した。図6から明らかなように、tプロットは、原点を通る直線状であった。得られたCNTの評価結果を表3にまとめた。また、基材上から剥離したCNTのTEM画像を図7に示す。図7では、CNTの側壁が開口している様子は見られなかった。他の特性は、G/D比4.5、炭素純度99.9%であった。
【0087】
【表3】
【0088】
上記の通り、実施例1と2のCNTは、面積が400cm以上の基材にウェットプロセスで触媒を形成した触媒基材により、フォーメーション工程、成長工程、および冷却工程をそれぞれ行うユニットを連結した連続式のCNT製造装置を用いて製造し、一方、比較例1のCNTは、面積が400cm未満の基材にドライプロセスで触媒を形成した触媒基材により、バッチ式のCNT製造装置を用いて製造した。表3より、実施例1と2のCNTは、比較例1のCNTと比較して、開口処理を行わずとも、全比表面積S1に対する内部比表面積S2の割合が大きく、先端は未開口のまま、側壁の開口を多数有するものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のカーボンナノチューブは、開口処理を行わずとも合成したままで内部を有効に活用できる。よって、本発明のカーボンナノチューブは、物質やエネルギーの保持性、エネルギー伝達性、およびエネルギー分散性に優れている。
【符号の説明】
【0090】
100 CNT製造装置
1 入り口パージ部
2 フォーメーションユニット
3 成長ユニット
4 冷却ユニット
5 出口パージ部
6 搬送ユニット
7,8,9 接続部
10 触媒基材
11,12,13 ガス混入防止手段
図1
図2
図3
図5
図6
図4
図7